説明

予作動式消火設備

【課題】流水検知装置を備えた予作動式消火設備において、設備費を安くできる様にする。
【解決手段】監視時、第2ピストン室34内は充水状態に保持され、第1ピストン33に第1中間室32内の充水圧力が作用する共に、第2ピストン36に第2ピストン室34内の充水圧力が作用し、弁体25は第1ピストン33及び第2ピストン36によりロッド26を介して閉方向に押圧されて閉状態が保持される様構成し、火災時、第2ピストン室34内の水が排出され、給水ポンプ14が起動され、第1ピストン室31内は充水状態となり、第1ピストン室31内の充水圧力が第1ピストン33に作用し、弁体25は第1ピストン33によりロッド26を介して開方向に押圧されて開動作し、開状態にされると共に、ロッド26の移動がセンサ38により検出され、流水信号として出力される様構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、湿式予作動式消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、閉鎖型スプリンクラヘッドを用いた消火設備として、予作動式のものが知られている。
【0003】
この予作動式消火設備は、常時は閉の開放弁の二次側配管にスプリンクラヘッドが設けられており、スプリンクラヘッドの作動だけでは、開放弁は開かずに、開放弁の一次側配管からの水がスプリンクラヘッドが設けられている二次側配管に供給されない様になっており、スプリンクラヘッドの誤作動による水損が生じ難い様になっている。
【0004】
尚、予作動式消火設備には、スプリンクラヘッドが設けられる二次側配管に気体を充填した乾式のものと消火水を充填した湿式のものとがある。湿式の設備の場合、火災時、スプリンクラヘッド作動後、直ちに消火水を放出させることができるとの利点がある。
【0005】
又、予作動式消火設備において、開放弁は流水検知機能を併せて備えていることから、流水検知装置と称されることもある。
【0006】
従来の予作動式消火設備においては、例えば特開2007−244735号公報(特許文献1)に記載の設備の様に、火災時の流水検知装置の弁体の開放動作は、火災感知器による火災感知信号(圧力検出器による二次側配管内の減圧検出信号に基づくものもある。)、制御部を介して電動弁を開動作させることで、流水検知装置における弁体の制御室内の水を流出させて、圧力を減圧し、それにより弁体を開動作させることで行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−244735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の予作動式消火設備においては、前記の様に、流水検知装置の弁体の開放動作は電動弁を開動作させることで行われる構成となっているので、流水検知装置の弁体の動作を制御するために、高価な電動弁が必要なだけでなく、その電動弁を制御するための専用の制御部及び信号線も必要である。
【0009】
従って、従来の予作動式消火設備は、設備費が高いものとなっている。
【0010】
この発明は、前記の事情に鑑み、流水検知装置を備えた湿式予作動式消火設備において、流水検知装置の弁体の動作を電動弁によらずに制御することができ、流水検知装置の弁体の動作を制御するための電動弁やその電動弁を制御するための制御部や信号線を備える必要をなくし、設備費を安くできる様にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、給水本管から分岐されて設けられた一次側配管と、警戒区画に配置されて設けられた二次側配管と、該一次側配管と該二次側配管との間に設けられ、該一次側配管と連通する一次室及び該二次側配管と連通する二次室を有すると共に、該一次室から該二次室へ通水させる通水口を開閉する弁体を有し、該一次室から該二次室への流水を検知する流水検知装置と、該二次側配管に設けられた複数のスプリンクラヘッドと、該警戒区画に配置されて設けられた火災感知器と、該火災感知器の火災信号及び該スプリンクラヘッドの作動による該二次側配管内の圧力低下信号を受信する制御盤とを備えた予作動式消火設備において、該流水検知装置は、該弁体の背面より起立し、該弁体を往復移動させるロッドと、該二次室に隣接し、該ロッドを支持するシリンダ部と、該ロッドの所定位置への移動を検出するセンサとを有し、該流水検知装置における該シリンダ部は、該シリンダ部内を第1隔室と第2隔室とに仕切る隔壁と、該第1隔室内を第1ピストン室と第1中間室とに仕切り、該ロッドに固定されて該第1隔室内を摺動自在に設けられた第1ピストンと、該第2隔室内を第2ピストン室と第2中間室とに仕切り、該ロッドに固定されて該第2隔室内を摺動自在に設けられた第2ピストンとを有しており、ここで、該第1ピストン室及び該第1中間室は、該第1隔室内で該二次室に近い側から該第1ピストン室、該第1中間室の順で配置され、該第2ピストン室及び該第2中間室は、該第2隔室内で該二次室に近い側から該第2中間室、該第2ピストン室の順で配置され、又、該第1ピストン室は、該一次側配管と該一次側配管内の増圧で開動作する常時は閉の第1制御弁を介して接続され、該第1中間室は該一次側配管と接続され、該一次側配管内の水が導入されて常に充水されており、該第2中間室は閉鎖されて常に大気圧の空間として保持され、そして該第2ピストン室は該二次側配管と該二次側配管内の減圧で開動作する常時は閉の第2制御弁を介して接続されており、監視時、該一次側配管内及び該第1中間室内に封入されている水は該一次側配管に圧力を供給する圧力タンクによって一次側監視圧に保持され、該第1制御弁は閉状態にあって、該第1ピストン室内には該一次側配管内の水は導入されずに、該第1ピストン室内は大気圧の空間として保持され、そして、該二次側配管内に封入されている水又は空気は二次側監視圧に保持され、常時は閉の該第2制御弁は閉状態にあって、該第2ピストン室内に導入されている水又は空気は排出されずに、該第2ピストン室内は充填状態に保持され、該第2中間室内は大気圧の空間として保持され、それにより、該第1ピストンに該第1中間室内の充水圧力が作用すると共に、該第2ピストンに該第2ピストン室内の充填圧力が作用し、該弁体は該第1ピストン及び該第2ピストンにより該ロッドを介して閉方向に押圧されて閉状態が保持される様構成されており、火災時、該スプリンクラヘッドの作動により該二次側配管内が減圧されると、該第2制御弁が開動作し、該第2ピストン室内の水又は空気が排出され、そして、該火災感知器の火災信号及び該二次側配管内の圧力低下信号を受信した該制御盤からの移報信号に基づいて、該給水本管に接続された給水ポンプが起動され、それにより該一次側配管内が増圧されると、該第1制御弁が開動作し、該第1ピストン室内に該一次側配管内の水が導入され、該第1ピストン室内は充水状態となり、該第1ピストン室内の充水圧力が該第1ピストンに作用し、該弁体は該第1ピストンにより該ロッドを介して開方向に押圧されて開動作し、開状態にされると共に、該弁体の開状態への変化が該ロッドの所定位置への移動を以って該センサにより検出されて、流水信号として出力される様構成されていることを特徴とする予作動式消火設備である。
【0012】
又、この発明は、該予作動式消火設備であって、該第2制御弁は該第2ピストン室内の水又は空気の排出機構を備えていることを特徴とする予作動式消火設備である。
【0013】
又、この発明は、該予作動式消火設備であって、該ロッドは該シリンダ部を貫通して設けられており、該センサは該ロッドの該シリンダ部からの露出端の移動軌跡上に設けられたリミットスイッチであることを特徴とする予作動式消火設備である。
【発明の効果】
【0014】
この発明において、流水検知装置は第1制御弁と第2制御弁により弁体の閉状態の保持と開状態への変動が制御されるが、第1制御弁と第2制御弁は何れも電動弁ではない。即ち、流水検知装置は電動弁によらずに弁体の閉状態の保持と開状態への変動の制御ができる様になっている。
【0015】
従って、この発明によれば、流水検知装置を備えた予作動式消火設備において、流水検知装置の弁体の動作を電動弁によらずに制御することができ、流水検知装置の弁体の動作を制御するための電動弁やその電動弁を制御するための制御部や信号線を備える必要がなく、設備費を安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の予作動式消火設備のシステム系統図である。
【図2】同上の予作動式消火設備が備える流水検知装置部分の略図であって、監視時、流水検知装置の非作動時(弁体閉鎖時)の状態を示したものである。
【図3】同上の略図であって、スプリンクラヘッド作動時の状態を示したものである。
【図4】同上の略図であって、スプリンクラヘッド及び給水ポンプ作動時の状態を示したものである。
【図5】同上の略図であって、火災時、流水検知装置の作動時(弁体開放時)の状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の形態を図1乃至5に基づき説明する。
【0018】
図1において、予作動式消火設備Sは、給水本管1から分岐されて設けられた一次側配管2と、警戒区画に配置されて設けられた二次側配管3と、一次側配管2と二次側配管3との間に設けられ、一次側配管2から二次側配管3への流水を検知する流水検知装置4と、二次側配管3に設けられた複数のスプリンクラヘッド5と、警戒区画に配置されて設けられた火災感知器6と、火災感知器6の火災信号やスプリンクラヘッド5の作動による二次側配管3内の圧力低下信号を受信する主制御盤7(例えば、中継器19を介して火災信号等を受信する所謂R型の火災受信機である。尚、この発明は所謂P型の火災受信機を備えた設備への適用も可能である。)等を備え、常時は二次側配管3内に水が充填されるものとなっており、即ち湿式の設備となっている。尚、図中、14は給水本管1に設けられ、モータMで駆動されて、水を一次側配管2に供給するための給水ポンプ、15は給水ポンプ14を制御するためのポンプ用制御盤、16は給水本管1に設けられ、給水ポンプ14の駆動時において給水本管1に接続される一次側配管2内を所定圧に増圧するための圧力タンクであって、常時は閉の電動弁16bを有する排出機構16aを備えた圧力タンク、17は圧力タンク16の電動弁16bを制御するための電動弁用制御盤、18は圧力タンク16と給水本管1との間の管路中に設けられ、その管路内、つまりは給水本管1及びそれに接続される一次側配管2内の圧力の所定圧への減圧で作動する圧力スイッチ、39は手動復旧等を行うメンテナンス用制御弁、40は常時において給水本管1に接続され、一次側配管2内を一次側監視圧に保持するための補助加圧ポンプである。
【0019】
流水検知装置4は、その本体20内が一次側配管2に連通する一次室21と二次側配管3に連通する二次室22とに隔壁23により仕切られており、その隔壁23に一次室21と二次室22とを連通させる通水口24を備えている。更に、流水検知装置4内には通水口24を開閉する常時は閉の弁機構が構成されており、その弁機構は二次室22内に設けられた弁体25と、弁体25の背面から二次室22側に起立し、弁体25を二次室22内で往復移動させるロッド26と、ロッド26を移動可能に支持するシリンダ部27等から構成されている。
【0020】
シリンダ部27はその内部を第1隔室28と第2隔室29とに仕切る隔壁30を有すると共に、第1隔室28内を第1ピストン室31と第1中間室32とに仕切り、第1隔室28内を摺動可能な第1ピストン33と、第2隔室29内を第2ピストン室34と第2中間室35とに仕切り、第2隔室29内を摺動可能な第2ピストン36とを有している。又、シリンダ部27は本体20における通水口24と二次室22を介して対向する位置より外方に立設され、二次室22に隣接している。ロッド26は二次室22から本体20の外壁(本実施の形態においてはシリンダ部27を画定する壁の一部をなすものでもある。)を水密に貫通し、更にシリンダ部27の隔壁30及び天壁37とを水密に貫通して設けられており、そしてロッド26はそれが貫通する本体20の外壁、シリンダ部27の隔壁30及び天壁37により往復移動可能に支持されている。このロッド26に第1ピストン33と第2ピストン36は何れも固定されており、ロッド26の往復移動と共に第1ピストン33と第2ピストン36は第1隔室28内と第2隔室29内をそれぞれ摺動可能となっている。尚、ロッド26の所定位置への移動を検出するセンサの一例としてのリミットスイッチ38が、シリンダ部27の天壁37からその外部へ露出するロッド26の露出端26aの移動軌跡上に設けられており、このリミットスイッチ38によって、露出端26aの所定位置への移動を以って、弁体25が開状態になり、水が一次室21から二次室22へ流れる状態への変化が検出され、それがリミットスイッチ38から流水信号として出力される様になっている。
【0021】
一次側配管2は2本の分岐管8a、8bを有する一次側枝管8を含んでおり、一次側枝管8の一方の分岐管8aにより第1ピストン室31が一次側枝管8、即ち一次側配管2と接続され、一次側枝管8のもう一方の分岐管8bにより第1中間室32が一次側枝管8、即ち一次側配管2に接続されているが、第1ピストン室31を一次側枝管8に接続する分岐管8aには管内の圧力の所定圧への増圧、つまりは一次側配管2内の圧力の所定圧への増圧で開動作する第1制御弁9が管路中に設けられている。即ち、第1ピストン室31は一次側枝管8により一次側配管2内の圧力の所定圧への増圧で開動作する常時は閉の第1制御弁9を介して一次側配管2に接続され、第1中間室32は一次側枝管8により直接一次側配管2に接続されている。これにより、第1ピストン室31内は常時は一次側配管2内の水は導入されずに大気圧の空間として保持されているが、第1制御弁9が開動作すると、一次側配管2内の水が導入されて充水状態になる様になっており、又第1中間室32内は常に一次側配管2内の水が導入されて充水状態に保持される様になっている(第1ピストン33の移動によってその体積は変化する。)。尚、第1制御弁9が設けられている分岐管8aには、第1制御弁9と第1ピストン室31との間に管内の圧力の所定圧への増圧で作動する一次側圧力スイッチ10が更に設けられている。
【0022】
二次側配管3は二次側枝管11を含んでおり、二次側枝管11は第2ピストン室34に接続され、二次側枝管11により第2ピストン室34は二次側配管3と接続されているが、二次側枝管11には管内の圧力の所定圧への減圧、つまりは二次側配管3内の圧力の所定圧への減圧で開動作する常時は閉の第2制御弁12が設けられている。即ち、第2ピストン室34は二次側枝管11により二次側配管3内の圧力の所定圧への減圧で開動作する常時は閉の第2制御弁12を介して二次側配管3に接続されている。湿式であるこの設備においては二次側配管3内には予め水が導入され、二次側配管3内は閉鎖型スプリンクラヘッド5の閉鎖機能により常時は充水状態に保持される様になっているが、第2ピストン室34内にも予め水が導入され、第2制御弁12の閉鎖機能により常時は充水状態に保持される様になっている。そして、第2制御弁12が開動作すると、第2ピストン室34内の水は二次側配管3内へ流出するか、又は第2制御弁12が備えているその開動作で管内の水を排出する排水機構12aから外部へ排水される様になっている。一方、第2中間室35は外部とは何等接続されておらず、閉鎖された空間として常に大気圧に保持される様になっている。尚、第2制御弁12が設けられている二次側枝管11にはその二次側に管内の圧力の所定圧への減圧で作動する二次側圧力スイッチ13が更に設けられている。
【0023】
シリンダ部27において、第1隔室28と第2隔室29は二次室22に近い側から第1隔室28、第2隔室29の順で配置されており、又、第1隔室28内において、第1ピストン室31と第1中間室32は二次室22に近い側から第1ピストン室31、第1中間室32の順で配置されており、又第2隔室29内において、第2ピストン室34と第2中間室35は、二次室22に近い側から第2中間室35、第2ピストン室34の順で配置されている。尚、シリンダ部27における第1隔室28と第2隔室29の配置は二次室に近い側から第2隔室29、第1隔室28の順とすることもできる。
【0024】
予作動式消火設備Sは、前記の様に構成され、監視時、火災時においてそれぞれ次の通り動作する様になっている。
【0025】
[監視時]
監視時、一次側配管2内及びシリンダ部27における第1中間室31内に充填されている水は、一次側配管2に圧力を供給する補助加圧ポンプ40によって一次側監視圧に保持され、第1制御弁9は動作せずに閉状態に保持されており、図2に示される様に、シリンダ部27において、第1ピストン室31内には一次側配管2内の水は導入されずに、第1ピストン室31内は大気圧の空間として保持され、一方、二次側配管3内に充填されている水は二次側監視圧に保持され、第2制御弁12は作動せずに閉状態に保持されており、図2に示される様に、シリンダ部27において、第2ピストン室34内に予め導入されている水は排出されずに、第2ピストン室34内は充水状態に保持され、閉鎖空間である第2中間室35内は常に大気圧に保持されている。従って、監視時においては、一次側圧力スイッチ10及び二次側圧力スイッチ13は作動しない状態にあり、シリンダ部27において、第1ピストン33には第1中間室32内の充水圧力が作用する共に、第2ピストン36には第2ピストン室34内の充水圧力が作用しており、流水検知装置4における弁体25は第1ピストン33及び第2ピストン36によりロッド26を介して閉方向に押圧されて閉状態が保持される様になっている。
【0026】
尚、監視状態からスプリンクラヘッド5のみが作動し場合は、二次側配管3内及び二次室22内の水はスプリンクラヘッド5から放水され、二次側配管3内の圧力が所定圧へ減圧されることで、第2制御弁12が開動作し、第2ピストン室34内の水が第2制御弁12の排水機構12aから排水され、図3に示される様に、二次室22内、第2ピストン室34内及び二次側配管3内は空の状態になる様になっている。尚、このとき、二次側配管3内の圧力の所定圧への減圧は二次側枝管11に設けられている二次側圧力スイッチ13により検出され、二次側配管3内の減圧信号として中継器19を介して主制御盤7に送信されるものの、火災感知器6は作動していないので、火災信号は主制御盤7には送信されておらず、減圧信号と火災信号の両方の受信により移報信号を送信する様設定されている主制御盤7からは移報信号は送信されないので、圧力タンク16の排出機構16aにおける電動弁16bも作動せず、閉状態が保持され、給水ポンプ15も起動されず、一次側配管2内は一次側監視圧に保持され、そして、第1制御弁9も作動せず、閉状態が保持され、一次側配管2内の水は第1ピストン室31に導入されず、第1ピストン室31内は空の状態が保持され、弁体25の閉方向への押圧力は第1中間室32内の充水圧力のみにはなるものの、その押圧力により弁体25は閉状態に保持される様になっている。従って、監視状態において、例えば誤作動によりスプリンクラヘッド5が作動してしまったとしても、二次室22内、第2ピストン室34内、二次側配管3内の水はスプリンクラヘッド5から放水されてしまうものの、更に水がスプリンクラヘッド5から放水されることはなく、水損を少なくできる様になっている。
【0027】
[火災時]
火災時、スプリンクラヘッド5が作動すると、前記の様に、二次室22内、第2ピストン室34内及び二次側配管3内は図3に示される無圧の状態となり、又二次側配管3内の減圧信号が中継器19を介して主制御盤7に送信され、そして、火災感知器6が作動すると、火災信号が主制御盤7に送信される。二次側減圧信号と火災信号の両方の受信により、それに基づく移報信号が主制御盤7から電動弁用制御盤17に送信され、それにより圧力タンク16の排出機構16aにおける電動弁16bが開動作し、圧力タンク16から給水本管1及び一次側配管2内へ供給される圧力が排出機構16aより排圧されて、一次側配管2内の圧力が一次側監視圧より所定の圧力へ減圧されると、圧力スイッチ18の作動信号がポンプ用制御盤15に送信され、それにより給水ポンプ14が起動し、給水源からの水が給水本管1及び一次側配管2に供給されて、一次側配管2内の圧力が所定の圧力へ増圧されると、第1制御弁9が開動作し、図4に示される様に、一次側配管2内の水が第1ピストン室31内に導入され、第1ピストン室31内が充水状態となり、更に、一次側配管2内の所定の圧力への増圧が一次側圧力スイッチ10により検出され、一次側配管2内の増圧信号として中継器19を介して主制御盤7に送信されると共に、図5に示される様に、第1ピストン室31の充水圧力の第1ピストン33への作用によりロッド26を介して弁体25が開方向に移動され、弁体25が開状態となり、これにより、一次室21から二次室22へ水が流れて流水状態、即ち一次側配管2から二次側配管3へ水が流れる状態となり、給水源からの水が連続的にスプリンクラヘッド5から放水され、火災の消火ができる様になっており、又、弁体25が開状態になるときのロッド26の露出端26aの移動がリミットスイッチ38により検出され、その作動信号が流水信号として中継器19を介して主制御盤7に送信される様になっている。
【0028】
尚、図5に示される様に、弁体25が開放して流水状態になったときに、二次側配管3から二次側枝管11に水が逆流しても第2制御弁12の排水機構12aから排水されるため、第2ピストン室34内が加圧されることはない。従って、本実施の形態においては、一次側配管2内の圧力は、一次側監視圧より十分減圧されてから増圧されるので、後述する主制御盤7から直接ポンプ制御盤15に移報信号を出力する場合と比較して、一次側圧力スイッチ10を作動し易く設定できる。又、流水信号の他に、一次側圧力スイッチ10の増圧信号及び二次側圧力スイッチ13の減圧信号を得ることにより、流水検知装置4の状態を詳細に把握できる。更に、本実施の形態においては、前記の様に、ポンプ用制御盤15が圧力スイッチ18からの一次側配管2内の減圧信号を受信することで、給水ポンプ14が起動される様にしているが、それに代えて、ポンプ用制御盤15が主制御盤7からの移報信号を受信するだけで給水ポンプ14が起動される様にしてもよい。
【0029】
予作動式消火設備Sは前記の様に構成され、流水検知装置4の弁体25の動作は第1制御弁9及び第2制御弁12によって制御される様になっており、即ち電動弁によらずに制御される様になっている。
【0030】
従って、予作動式消火設備Sによれば、従来例においては流水検知装置ごとに必要であった流水検知装置の弁体を制御するための電動弁及びその電動弁専用の制御部や信号線を備える必要をなくすることができ、その代わりの電動弁や電動弁用制御盤は各1台ずつで良いために、さらに流水検知装置の第1制御弁や第2制御弁の機器コスト増加分を考慮しても、従来例に比して設備費を安くすることができる。
【0031】
更に、予作動式消火設備Sについて述べる。
【0032】
予作動式消火設備Sにおいては、前記の様に、火災時において、二次側配管3内の減圧信号(スプリンクラヘッド5の作動による)と火災信号(火災感知器6の作動による)を受信した主制御盤7からの移報信号によって、直接、或いは圧力タンク16の排出機構16aの電動弁16bの作動による一次側配管2内の減圧信号を介して、ポンプ用制御盤15が給水ポンプ14を起動する様構成され、そして、給水ポンプ14の起動による一次側配管2内の増圧によって、第1制御弁9が開動作し、それにより流水検知装置4の弁体25が開動作する様構成されている。即ち、流水検知装置4の弁体25が開動作する時点で、給水ポンプ14は既に起動状態にある。
【0033】
ここで、従来の予作動式消火設備においては、水源からの水を配管に供給するための給水ポンプの起動は、流水検知装置の弁体が開動作し、一次側配管から二次側配管へ水が流れ、それによる一次側配管内の減圧を圧力検出器で検出し、その減圧検出信号に基づき、ポンプ制御盤を介して給水ポンプを起動させることで行われており(例えば特許文献1参照)、流水検知装置の弁体が開動作する時点では、給水ポンプは未だ起動状態にはなく、流水検知装置の弁体の開動作後、一次側配管内が減圧してから、給水ポンプが起動される様になっている。即ち、従来の予作動式消火設備は、流水検知装置の弁体が開動作する際、直ちには給水ポンプによる給水は開始されず、水源から配管への給水に遅れが発生し、その結果スプリンクラヘッドの放水遅れを引き起こすものとなっている。
【0034】
本発明における予作動式消火設備Sにおいては、前記の通り、流水検知装置4の弁体25が開動作する時点で、給水ポンプ14は既に起動状態にあるので、流水検知装置4の弁体25が開動作する際、その動作に連続して、直ちに水源から給水本管1、一次側配管2及び二次側配管3等の配管へ給水がされる。即ち、この発明の湿式の予作動式消火設備Sにおいては、流水検知装置4の弁体25が開動作する際に、弁体25の開動作するのに連続して、給水ポンプ14による給水が直ちに開始される様構成されており、水源から配管への給水に遅れが発生しないので、スプリンクラヘッド5の放水遅れとならない様になっている。
【0035】
更に、前記に関連し、予作動式消火設備Sにおいては、流水検知装置4の弁体25が開動作する時点で、流水検知装置4の上流の配管、即ち給水本管1及び一次側配管2は給水ポンプ14の起動によって既に増圧された状態にある。即ち、一次側配管2から二次側配管3への通水の当初から、スプリンクラヘッド5からの好適な放水圧力が得られる様な圧力で、一次側配管2から二次側配管3へ通水させる様にすることができる。そして、警戒区域ごとに必用な給水圧力は保持されるように設定されている。
【0036】
更に、予作動式消火設備Sにおいては、乾式としても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0037】
S 予作動式消火設備 1 給水本管
2 一次側配管 3 二次側配管
4 流水検知装置 5 スプリンクラヘッド
6 火災感知器 7 主制御盤
8 一次側枝管 8a 分岐管
8b 分岐管 9 第1制御弁
10 一次側圧力スイッチ 11 二次側枝管
12 第2制御弁 12a 排水機構
13 二次側圧力スイッチ 14 給水ポンプ
15 ポンプ用制御盤 16 圧力タンク
16a 排出機構 16b 電動弁
17 電動弁用制御盤 18 圧力スイッチ
19 中継器 20 本体
21 一次室 22 二次室
23 隔壁 24 通水口
25 弁体 26 ロッド
26a 露出端 27 シリンダ部
28 第1隔室 29 第2隔室
30 隔壁 31 第1ピストン室
32 第1中間室 33 第1ピストン
34 第2ピストン室 35 第2中間室
36 第2ピストン 37 天壁
38 リミットスイッチ 39 メンテナンス用制御弁
40 補助加圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水本管から分岐されて設けられた一次側配管と、警戒区画に配置されて設けられた二次側配管と、該一次側配管と該二次側配管との間に設けられ、該一次側配管と連通する一次室及び該二次側配管と連通する二次室を有すると共に、該一次室から該二次室へ通水させる通水口を開閉する弁体を有し、該一次室から該二次室への流水を検知する流水検知装置と、該二次側配管に設けられた複数のスプリンクラヘッドと、該警戒区画に配置されて設けられた火災感知器と、該火災感知器の火災信号及び該スプリンクラヘッドの作動による該二次側配管内の圧力低下信号を受信する制御盤とを備えた予作動式消火設備において、
該流水検知装置は、該弁体の背面より起立し、該弁体を往復移動させるロッドと、該二次室に隣接し、該ロッドを支持するシリンダ部と、該ロッドの所定位置への移動を検出するセンサとを有し、
該流水検知装置における該シリンダ部は、該シリンダ部内を第1隔室と第2隔室とに仕切る隔壁と、該第1隔室内を第1ピストン室と第1中間室とに仕切り、該ロッドに固定されて該第1隔室内を摺動自在に設けられた第1ピストンと、該第2隔室内を第2ピストン室と第2中間室とに仕切り、該ロッドに固定されて該第2隔室内を摺動自在に設けられた第2ピストンとを有しており、ここで、該第1ピストン室及び該第1中間室は、該第1隔室内で該二次室に近い側から該第1ピストン室、該第1中間室の順で配置され、該第2ピストン室及び該第2中間室は、該第2隔室内で該二次室に近い側から該第2中間室、該第2ピストン室の順で配置され、又、該第1ピストン室は、該一次側配管と該一次側配管内の増圧で開動作する常時は閉の第1制御弁を介して接続され、該第1中間室は該一次側配管と接続され、該一次側配管内の水が導入されて常に充水されており、該第2中間室は閉鎖されて常に大気圧の空間として保持され、そして該第2ピストン室は該二次側配管と該二次側配管内の減圧で開動作する常時は閉の第2制御弁を介して接続されており、
監視時、該一次側配管内及び該第1中間室内に封入されている水は該一次側配管に圧力を供給する補助加圧ポンプによって一次側監視圧に保持され、該第1制御弁は閉状態にあって、該第1ピストン室内には該一次側配管内の水は導入されずに、該第1ピストン室内は大気圧の空間として保持され、そして、該二次側配管内に封入されている水又は空気は二次側監視圧に保持され、該第2制御弁は閉状態にあって、該第2ピストン室内に導入されている水又は空気は排出されずに、該第2ピストン室内は充填状態に保持され、該第2中間室内は大気圧の空間として保持され、それにより、該第1ピストンに該第1中間室内の充水圧力が作用すると共に、該第2ピストンに該第2ピストン室内の充填圧力が作用し、該弁体は該第1ピストン及び該第2ピストンにより該ロッドを介して閉方向に押圧されて閉状態が保持される様構成されており、
火災時、該スプリンクラヘッドの作動により該二次側配管内が減圧されると、該第2制御弁が開動作し、該第2ピストン室内の水又は空気が排出され、そして、該火災感知器の火災信号及び該二次側配管内の圧力低下信号を受信した該制御盤からの移報信号に基づいて、該給水本管に接続された給水ポンプが起動され、それにより該一次側配管内が増圧されると、該第1制御弁が開動作し、該第1ピストン室内に該一次側配管内の水が導入され、該第1ピストン室内は充水状態となり、該第1ピストン室内の充水圧力が該第1ピストンに作用し、該弁体は該第1ピストンにより該ロッドを介して開方向に押圧されて開動作し、開状態にされると共に、該弁体の開状態への変化が該ロッドの所定位置への移動を以って該センサにより検出されて、流水信号として出力される様構成されていることを特徴とする予作動式消火設備。
【請求項2】
該第2制御弁は該第2ピストン室内の水又は空気の排出機構を備えていることを特徴とする請求項1記載の予作動式消火設備。
【請求項3】
該ロッドは該シリンダ部を貫通して設けられており、該センサは該ロッドの該シリンダ部からの露出端の移動軌跡上に設けられたリミットスイッチであることを特徴とする請求項1又は2記載の予作動式消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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