説明

予備系ルートの制御方式

【課題】本発明は多数の伝送装置で構成するGMPLSのネットワークの始点と終点の伝送装置間に設定される運用系ルートに対応する予備系ルートの制御方式に関し,GMPLSのネットワークにおいて運用系ルートを確定した状態で,予備系ルートを無駄に帯域を専有することなく予備系ルートを形成することを目的とする。
【解決手段】始点の伝送装置から予備系ルートの伝送装置に対して送信される予備系パス設定メッセージ中に,当該予備系ルート上の各伝送装置の予備系パスを仮予約することを指示する情報を設け,予備系パス設定メッセージを受け取った各伝送装置はそれぞれの帯域管理テーブルの該当する予備系のパスを外部からは空き状態として認識される仮予約の状態に設定するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,GMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching) のネットワークの始点と終点の伝送装置間に設定された運用系ルートに対応する予備系ルートの制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,IP網にラベルスイッチの概念を導入することでパスによる網の運用を可能とするMPLS(Multi-Protocol Label Switching) が利用されているが, IP網だけでなく,SDH(Synchronous Digital Hierachy) /SONET(Synchronous Optical NETwork) のようなTDM(Time Division Multiplexing) 網,波長スイッチ網等を含むパス網の運用を自律分散的に行う技術としてGMPLSがIETF(Internet Engineering Task Force)のCCAMP(Commn Control and Measurement Plane)−WG(Working Groop)OIF(Optical Internetworking Forum) ,ITU(International Telecommunication Union) 等で議論されて標準化作業がすすめられて一部が実用化されつつある。
【0003】
このGMPLSにより異なる装置間でのパス開通が標準化され,パスを高速に開通するBoD(Bandwidth on Demand)サービス,複数レイヤの一元管理による効率的な網運用が可能となる。GMPLSでは,IPパケットにMPLSヘッダを付与し,MPLSヘッダ内のラベルを基に網内を転送され,このようなパケット転送の仕組みがラベルスイッチと呼ばれる。ラベルとしては,タイムスロット,波長群,ファイバ等の様々なものが適用できる。
【0004】
GMPLSでは,シグナリング,ルーチング,リンク管理のプロトコルが定められ,それらのプロトコルではスイッチング・ケーパビリティ(Switching Capability) と呼ばれる概念が用いられ,IP網,L2スイッチ網,TDM網,波長スイッチ網,ファイバスイッチ網等でパス制御のための各ケーパブルが定義されている。シグナリングプロトコルとしては,経路に沿ってパスを設定するための手順としてRSVP−TE(Resource ReSerVation Protocol-Traffic Engineering)を拡張したものが定められている。ルーチングでは, 網内のリンクの状態をリンクステートとして網内にフラッディング(ネットワークを構成する各伝送装置が,それぞれが持つ情報をネットワーク全体に流し,全ての伝送装置が持つ情報を集めてデータベースとして共有することで,ネットワークの状態を検知・把握する仕組みであり,ルーチングプロトコルが自伝送装置データベースをフラッディングすることを「広告」と呼ぶ)し,各伝送装置が網内のリンクの状態を自律分散的に把握するための手順が定められている。ルーチングプロトコルとしてはリンクステート型のルーチングプロトコルであるOSPF−TF(Open Shortest Path First-Traffic Engineering) を拡張した種々のパス網のリンク情報をフラッディングできるようになっている。
【0005】
GMPLS機能を搭載した複数の装置によりリング(Ring) ネットワークを構築してパスを設定する場合の従来の技術について図16,図17を用いて説明する。図16はGMPLSネットワークの構成例,図17は従来の基本的なパス設定シーケンスである。
【0006】
図16において,50は入力伝送路,51〜56はネットワークを構成するGMPLS機能を搭載した伝送装置(♯1〜♯6で表す),57は出力伝送路である。各伝送装置♯1〜♯6は伝送路により順次接続され,GMPLS機能を用いて自動的にパスを設定(シグナリング)することができる。
【0007】
パス設定シーケンスを図17を用いて説明する。図17内の51(♯1)〜54(♯4)は図16の同じ符号の伝送装置(51〜54)を表し,♯1を始点(ingress で表示)とし,♯4を終点(egress で表示)とするパス設定を行うものとする。ここで,GMPLSの上記OSPF機能により,ネットワークのトポロジマップ,及び各伝送装置の帯域状況は,データベース化され,ネットワーク内の全装置が保持している。また,各伝送装置は自身が内部のデータが更新されると,自身のデータベースを周囲の装置へ広告することで,ネットワーク内の全装置がデータベースを同期させている。
【0008】
1.最初に始点装置である伝送装置♯1に対してパス設定コマンド(シグナリング要求)を投入する(図17のa)。
【0009】
2.伝送装置♯1では伝送装置♯1から伝送装置♯4までの経路計算を行い,データベースを基に最短経路を算出する。この結果,図16の(1) の経路(♯1〜♯4)が最短であることを検出する。
【0010】
3.伝送装置♯1では(1) の経路となるポートの帯域を“空き”(free)状態から“予約”(hold)状態に遷移させ(図17の51a),以降の経路に対してパスメッセージ(Path MSG) を送信する(図17のb〜d)。
【0011】
4.各パスメッセージを受信した各伝送装置♯2,♯3は,指定されたポートの帯域を“空き”状態から“予約”状態に遷移させ(図17の52a,53a),次伝送装置にパスメッセージを転送する。
【0012】
5.終点装置である伝送装置♯4は,帯域を“予約”状態から“確定”(inuse:使用中という場合もある)状態に遷移させ(図17の54a),伝送装置のパス設定(スイッチングを含むクロスコネクト)を実行して,自身のデータベースを更新し,前段の伝送装置♯3にリザーブメッセージ(Resv MSG) を送信する(図17のe)。帯域の状態が“予約”から“確定”(使用中)に遷移した時点で,伝送装置♯4は自身の内部データが更新されたとして,自身のデータベースを周囲の装置へ広告するためのOSPF広告のメッセージを送信する(図17のi)。
【0013】
6. 伝送装置♯3,♯2はパスメッセージが転送されてきた経路と逆順にリザーブメッセージを送信し(図17のf,g),リザーブメッセージを受けとった各伝送装置♯3〜♯1は,それぞれの帯域を“予約”から“確定”に状態を遷移させクロスコネクト(Xcon)を実行し(図17の53b,52b,51b),自身のデータベースを更新し,自身のデータベースを周囲の装置へ広告するOSPF広告のメッセージを送信する(図17のj〜m)。
【0014】
7.始点装置である伝送装置♯1がリザーブメッセージを受信し,自身の装置へクロスコネクト設定を行うことで,経路全体へのクロスコネクトを完了する(図17のh)。
【0015】
8.各伝送装置の広告が完了した後は,ネットワーク内の全伝送装置が経路(1) で使用した帯域は“確定”(使用中)状態であることを認識している。経路計算は常に“空き”の帯域を探すため,以降はどの伝送装置から経路計算を行ったとしても,経路(1)で使用した帯域を算出することはない。
【0016】
上記図16の(1) の経路を運用系ルートとして生成した後,運用系ルートに障害が発生した場合に直ちに予備系ルート(代替ルート)により転送を行うため,予備系ルートとして各伝送装置♯1〜♯6でパス生成処理を行うと,(2) の経路で示す伝送装置♯1,♯5,♯6,♯4のパスが生成される。
【0017】
不特定多数からの通信要求を,その転送情報の内容に応じて資源配分することを可能とし,且つ情報内容に応じて動的に資源配分を変更することができることを可能にするための通信装置及び通信方法が提案されている(特許文献1参照)。この提案された技術によれば,メッセージに付加されたメッセージ内容を示すインデックスを用いて,それに応じた通信帯域を割り当てる。その際,情報を伝送するために確保する通信帯域を固定帯域と変動帯域に分けて管理し,インデックスは,通信を開始する時点での固定帯域を確保する時と,変動帯域の帯域を融通する時に通信内容やメディアの特徴により客観的に優先度を決定するために用いる。固定帯域や変動帯域の確保において即時に確保できない場合を考慮して,スケジューリングによる通信予約の機能を実現する場合もインデックスを用いて客観的な優先度決定を行う。この技術によるサーバやルータにおけるデータ転送の手順では,データ選択(インデックス,サイズ,転送時間,帯域幅等)をし,ユーザリクエスト(転送開始希望日時等)を発行すると,ルータやサーバはリクエストされたデータについて固定帯域の優先度を決定し,端末,サーバや端末とサーバの間のルータは転送開始日時から転送が終了するまでの間の通信路を仮予約する。その仮予約は予め定められた入札期間内で通信要求を受け付け,複数の通信要求があるとそれぞれの優先度(評価値)に基づいて高い優先度のものを優先して帯域を仮予約し,入札期間終了後に通信資源の仮予約を本予約として登録し,ユーザにサービスの開始・終了時刻を通知する,という手順が用いられる。
【特許文献1】特開平10−303932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記図17に示す従来のGMPLSネットワークにおいて(1) の経路で示す伝送装置♯1〜♯4のパスを運用系ルートとして生成し,予備系ルートして(2) の経路で示す伝送装置♯1,♯5,♯6,♯4のパスを生成した場合,(2) の経路上のパスは使用されないにも関わらず帯域が確保され続け,帯域が有効に活用されないという問題があり,これを解決するため予備系ルート(2) を設定しないで,(1) のみを設定して(2) を設定しない方法がある。その場合,仮に伝送装置♯3〜♯4間で障害が発生すると,伝送装置♯3は(1) の経路の始点装置である伝送装置♯1に警告メッセージ(Notify message) を通知する。伝送装置♯1はこれを受け取ると,再度迂回経路を計算してシグナリングを実施し,(2) の経路へ迂回するという手法を用いる。しかし,この場合は必ずしも予備系ルートが確立できるとは限らず,(2) の経路に既に別のパスが設定されている場合等には, 救済不可能になってしまうという問題がある。また, 伝送装置♯1での迂回経路再計算処理及び再シグナリング処理等に時間を要するという問題がある。
【0019】
また,上記特許文献1による方法では,一定時間(入札期間等)だけ仮予約状態とし,その後に本予約状態にして帯域を確定する技術であり,上記GMPLSにおける運用系の予約の技術と同様であり,予備の経路を無駄に確保しないようにする技術を開示するものではない。
【0020】
本発明はGMPLSネットワークにおいて運用系ルートを確定した状態で,予備系ルートの帯域を専有することなく効率的に形成することができるGMPLSのネットワークの始点と終点の伝送装置間に設定された運用系ルートに対応する予備系ルートの制御方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
図1は本発明の原理構成を示す。1はGMPLSのネットワークを構成する複数の伝送装置であり,複数の伝送装置は♯1〜♯6により表し,この例では♯1が始点の伝送装置,♯4が終点の伝送装置である。10はシグナリング処理部,11は経路計算部,12は運用系処理部,12aは帯域予約部,12bは運用系パスメッセージ生成部,12cは帯域を確定(または使用)状態に設定する帯域確定部,13は予備系処理部,13aは帯域仮予約部,13bは予備系パスメッセージ生成部,14は各ポートの帯域の状態(空き,予約,確定(使用),仮予約)が格納される帯域管理テーブル,15は帯域管理テーブル14の状態変更を隣接する伝送装置に通知する広告部,101は運用系として選択したポート,102は予備系として選択したポート,(1) は運用系ルート,(2) は予備系ルートである。201,202は運用系ルートの伝送装置♯2の入力側と出力側のポート,301,302は伝送装置♯3の入力側と出力側のポート,401,402は伝送装置♯4の運用系ルートと,予備系ルートの入力側のポート,501,502は予備系ルートの伝送装置♯5の入力側と出力側のポート,601,602は予備系ルートの伝送装置♯6の入力側と出力側のポートである。
【0022】
始点の伝送装置♯1に対し伝送装置♯4への運用系(または現用系)と予備系の確立を要求する入力が発生すると,伝送装置♯1のシグナリング処理部10は経路計算部11において帯域管理テーブル14を参照して,最初に最短の経路の運用系ルート(1) を計算して,計算結果を運用系処理部12に出力し,次に予備系ルート(2) を計算して計算結果を予備系処理部13に出力する。なお,経路計算部11では従来から知られた経路解析手法(ダイクストラと呼ばれる)を用いる。
【0023】
運用系処理部12では,運用系ルートの始点の伝送装置♯1のポート101の帯域から帯域予約部12aで要求された帯域について帯域管理テーブル14の当該ポートの帯域について「空き」から「予約」の状態に設定することで帯域予約を行い,運用系パスメッセージを運用系パスメッセージ生成部12bで生成して運用系の次の伝送装置♯2に送信する。この運用系パスメッセージには上記経路計算部11の計算により求められたルート上の各伝送装置の帯域の情報が設定されている。伝送装置♯2では伝送装置♯1と同様の構成を備え,運用系ルートとして選択された入力側(伝送装置♯1と接続)のポート201と出力側のポート202についてそれぞれ帯域予約を行い,次の運用系ルート上の伝送装置♯3に対し運用系パスメッセージを生成して送信し,伝送装置♯3でも伝送装置♯2と同様に運用系ルートの帯域予約を行うと共に,運用系パスメッセージを伝送装置♯4に送信する。
【0024】
運用系ルートの帯域予約が従来技術として説明したのと同様の手順で伝送装置♯4まで実行されると,従来技術と同様に終点の伝送装置♯4で帯域を確定(使用)の状態に設定し,前方の伝送装置♯3〜♯1に対して順番にリザーブメッセージ(Resv MSG) を送ることにより,各伝送装置の運用系のポートの予約帯域を「確定」(使用)の状態に遷移させると共にクロスコネクト(パスのスイッチング)を実行することで運用系のルートは各ポートを通る予約帯域のパスが確定(使用)の状態に設定されて,その帯域については他のユーザによる使用が禁止される。なお,運用系ルートの各伝送装置♯4〜♯1の順にそれぞれ「予約」状態の帯域を「確定」状態にしてラベルスイッチのクロスコネクトが形成されると,従来の技術と同様に隣接する伝送装置に対して,「確定」により状態が変化した帯域管理テーブル14の情報を広告部15から隣接する伝送装置に通知し,これを受けた各伝送装置で保持する帯域管理データを受信した情報により更新して,各伝送装置が同じ内容を保持することができる。
【0025】
一方,予備系処理部13は,経路計算部11により伝送装置♯4への最短の予備系ルート(伝送装置♯1,♯5,♯6,♯4のルートとする)が求められると,当該伝送装置♯1では予備系ルートである伝送装置♯5に接続するポート102のパスについて,必要な帯域を本発明により新たに設けた帯域仮予約部13aにより帯域管理テーブル14の該当ポートについて帯域を「仮予約」という状態に設定し,新たなパスメッセージとして予備系パスメッセージを予備系パスメッセージ生成部13bで生成してポート102から予備系の次の伝送装置♯5のポート501に送信する。予備系パスメッセージには,経路計算部11により求めた予備系ルート上の各伝送装置のポートを含むパス情報が設定されており,予備系ルートの伝送装置♯5,♯6及び♯4でも,それぞれ予備系ルートの各伝送装置の入力側ポート,出力側ポートを通って予備系パスメッセージが転送されると,各予備系の伝送装置♯5,♯6及び♯4では,予備系パスメッセージであることを識別すると,各帯域管理テーブル14の予備系ポートについて帯域を「仮予約」の状態に設定する。この予備系パスメッセージが終点の伝送装置♯4に達すると,伝送装置♯4から予備系ルートの逆のルート(伝送装置♯6,♯5,♯1)をたどって逆方向に予備系のリザーブメッセージ(Resv MSG) が送信される。これにより,各伝送装置♯6,♯5,♯1では,それぞれの予備系ルートのポートの「仮予約」状態をそのまま維持し,広告部15から隣接伝送装置への広告は行われない。なお,「仮予約」状態の各ポートの帯域は,経路計算において「空き」状態と同じものとして認識される。
【0026】
運用系ルートに障害が発生した場合,障害を検出した伝送装置から始点の伝送装置♯1に警告メッセージが送信され,これを受けた伝送装置♯1は運用系ルートの伝送装置♯1〜♯4に対しパス削除のメッセージを送信して,運用系パスを削除して,各伝送装置の帯域管理テーブル14の運用系の帯域を確定(使用)状態から空き状態に戻し,変更したデータを他の伝送装置に広告する。また,伝送装置♯1は,予備系ルートの各伝送装置(♯1のポートを含む♯6,♯5,♯4)に対して「仮予約」の状態として設定した帯域を,「確定」(使用)の状態に設定すると共に,パスのクロスコネクトを実行し,各伝送装置から隣接伝送装置に対し変更した状態を広告し,予備系ルートを運用系ルートとして運用を開始する。この時,伝送装置♯1では新たな運用系ルートに対する予備系ルートを求めるため予備経ルートの計算を実行し,求められた予備系ルートの各伝送装置に対して上記したのと同様に予備系パスメッセージを送信して,各予備系ルートのパスを「仮予約」状態に設定する。
【0027】
予備系ルートの伝送装置(♯6,♯5等)において「仮予約」の状態に設定された帯域を,他のパスで使用する要求が発生すると,その要求を優先して,「仮予約」の解除を始点の伝送装置♯1に通知する。伝送装置♯1はこれを受けると,運用系が正常状態である間に,現在の予備系(仮予約状態)の伝送装置に対し「仮予約」解除を通知すると共に新たな予備系ルートの計算を実施し,対象装置に対し「仮予約」状態を通知することで,常時予備系ルートを確保することができる。
【0028】
上記予備系ルートの計算において,経路の確保ができない場合は,警告を発生することで,運用系経路の通話中に調査,保守が可能となり,障害発生による運用系から予備系への切替時に救済不可能な状態が発生することを防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば,GMPLSのネットワークにおいて運用系ルートを確定した状態で,予備系ルートは仮予約として予約を行うことで無駄に帯域を専有することがない。そして,運用系ルートに障害が発生した場合には,すみやかに仮予約の予備系ルートを運用系ルートに切替えることができる。また,本発明によれば予備系ルートを形成しても無駄に帯域を専有することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図2は上記図1に示す帯域管理テーブルの構成例である。図2の14−1〜14−nは一つの伝送装置に設けられた複数のポート(インタフェース・インデックス:ifindex)に対応して設定される情報であり, ポート番号1〜ポート番号nのそれぞれに対応して設けられ,各ポートは複数のコネクション(パス)により構成され,ポート14−1(ポート番号1)はm個のコネクションを備え,各コネクションの中の140はコネクションID,141は始点を構成する伝送装置を表す始点ノードIP(アドレス),142は終点ノードIP,143は当該コネクションに関連する情報,144は帯域情報であり,4つの状態,すなわち空き(FREE),予約(HOLD), 確定(または使用:IN USE),仮予約(TEMP HOLD:Temporaly Hold)の何れかの状態を表す。各コネクションIDは同様の構成である。
【0031】
図3は伝送装置内の運用系の動作を含む実施例の構成を示し,図4は伝送装置内の予備系の動作を含む実施例の構成を示す。図3,図4はネットワークの始点の伝送装置(図1の伝送装置♯1に対応)を表し,図3は主に運用系のシグナリング動作を表し,A.はパスメッセージを送信する場合,B.はリザーブメッセージを受信した場合を表し,図4は主に予備系のシグナリング動作を表し,A.はパスメッセージを送信する場合,B.はリザーブメッセージを受信した場合を表す。
【0032】
図3,図4中,1は上記図1の伝送装置(♯1)に対応し,1aはシグナリング部(図1の運用系処理部12,予備系処理部13を含むシグナリング処理部10),1bは経路計算部(図1の11に対応),1cは自装置が備える伝送路(ポート)の状態を格納したデータベースである帯域管理テーブル(LSDB(Label Switching Data-Base) と呼ぶこともある,図1の14に対応),1dは最短パスのルーチングプロトコルであるOSPF(Open Shortest Path First)機能を実行して帯域管理テーブルの広告を実行するOSPF部(図1の15に対応)である。
【0033】
図3について運用系の動作を,図3のA.の(1) 〜(6) 及びB.の(7) 〜(9) として示す各動作について以下に順番に説明する。
【0034】
(1) GMPLSシグナリング開始要求を始点の伝送装置♯1へ送信することで,シグナリング動作を開始する。
【0035】
(2) 上記(1) のシグナリング開始要求を受信したシグナリング部1aは,経路計算部1bへ経路計算依頼を行う。
【0036】
(3) 経路計算部1bは,それまでにOSPF部1dから受け取ったネットワーク情報を基に最短経路を計算し,結果をシグナリング部1aに回答する。
【0037】
(4) 上記(3) の回答を受信したシグナリング部1aは,自伝送装置(♯1)の使用帯域(使用するポートのパス(コネクション))を「予約」に遷移させるため,帯域管理テーブル1cへ状態更新依頼を行う。
【0038】
(5) 帯域管理テーブル1cでは,使用するポートのパス(コネクション)の帯域情報を「予約」に遷移して,シグナリング部1aに回答する。
【0039】
(6) シグナリング部1aは経路情報,予約帯域情報をパスメッセージに載せて,隣接伝送装置(図1の伝送装置♯2)へ送信する。この運用系ルートへ送信されるパスメッセージの構成は後述する図5に示す。
【0040】
(7) パスメッセージ送信後,ネットワークの終点の伝送装置(図1の伝送装置♯4)から生成されて,始点の伝送装置へ向けて逆方向に送信されたリザーブメッセージが伝送装置♯1で受信されると,帯域情報を「使用中」に遷移させるため,帯域管理テーブル1cに対して状態更新依頼を行う。
【0041】
(8) 帯域情報が「使用中」に遷移すると,OSPF部1dへ通知を行い,OSPF部1dは隣接装置(図1の伝送装置♯2)へ更新された帯域管理テーブルの内容の広告を行う。
【0042】
(9) OSPF部1dは,帯域管理テーブル1cが変化したことを経路計算部1bに通知し,ネットワークトポロジを更新させる。
【0043】
図5は始点の伝送装置(♯1)から運用系ルートへ送信されるパスメッセージ(Path MSG) の構成例を示す。この構成例は,上記図1の運用系ルート(伝送装置♯1,♯2,♯3,♯4)のパスを形成するために生成されて,隣接の伝送装置♯2に送信される場合の例である。
【0044】
パスメッセージの先頭にIP(Internet Protocol) ヘッダ(図5のa),次にRSVP(Resource Reservation Protocol)ヘッダ(同b),その後に各種のオブジェクト(同c)が設けられ,その中にルートオブジェクト(EROと略称される:Explicit Route Object ,図5のd)が含まれている。このルートオブジェクトには,図5に詳細な内容が示され,d1,d2は隣接する伝送装置♯2の入力側ポート201への設定情報が格納され,先頭のd1にEROサブオブジェクトとして伝送装置♯2の入力側のポート番号「201」,d2にラベルサブオブジェクトとして「ラベル(Label) =X」(使用帯域としてXを確保することを表す)が設定されている。次のd3,d4は伝送装置♯3の入力側のポート301への設定情報が格納され,ラベル=Yの帯域が設定され,更にd5,d6は伝送装置♯4の入力側のポート401への設定情報が格納され,ラベル=Zの帯域が設定される。
【0045】
図4について予備系の動作を説明する。但し,上記の運用系と異なる部分を中心に説明する。すなわち,図3における上記(1),(2),(3) の動作により経路計算部1bによる予備系ルートの経路計算依頼の結果が得られると図4のA.に示す(1) 〜(3) の動作及びB.に示す(4),(5) の動作が行われる。
【0046】
(1) 図4のシグナリング部1aは,自伝送装置♯1の帯域情報を「仮予約」に遷移させるため,帯域管理テーブル1cへ状態更新依頼を行う。
【0047】
(2) 帯域管理テーブル1cでは,使用するポートのパス(コネクション)の帯域情報を「仮予約」に遷移して,シグナリング部1aに回答する。
【0048】
(3) シグナリング部1aは経路情報,仮予約帯域情報をパスメッセージに載せて,予備系ルートの隣接装置(図1の伝送装置♯5)へ送信する。この仮予約のパスを設定するためのパスメッセージの構成は後述する図6に示す。
【0049】
(4) パスメッセージ送信後,ネットワークの終点の伝送装置(図1の伝送装置♯4)から生成されて,始点の伝送装置へ向けて逆方向に送信されたリザーブメッセージが伝送装置♯1で正常に受信されても,帯域情報の遷移を行わない。
【0050】
(5) 帯域情報が「確定」(使用)に状態変更(遷移)しないため,OSPF部1dは隣接伝送装置♯5に広告することはなく,経路計算部1bにも帯域管理テーブル1cの情報は通知されない。
【0051】
図6は予備系ルートへ送信されるパスメッセージ中に新たに設けたオブジェクトの構成例を示す。
【0052】
このオブジェクトは従来のパスメッセージに含まれるオブジェクトを本発明により新たに拡張したものであり,始点の伝送装置(♯1)から予備系ルートへ送信されるパスメッセージ中に新たに設けたものである。図6の例は,予備系ルート(伝送装置♯1,♯5,♯6,♯4)を形成するためのパスメッセージ(Path MSG) (2)を伝送装置♯1から♯5に送信するが,上記図5に示すパスメッセージと同様のIPヘッダ,RSVPヘッダと複数のオブジェクトが付加される構成となるが,図5に示すルートオブジェクト(ERO)とは異なる帯域状態として「仮予約」を設定するために図6のeに示す第2ルートオブジェクト(SERO:Secondary Explicit Route Object)を使用する。その先頭のe1の「仮予約サブオブジェクト」(Temporary Reserve Subobject)として,本発明による予備系用(仮予約)パスメッセージを表示するビット(4ビット)が設定される。この例では,「0x01」により予備系用(仮予約)パスメッセージを表す。なお,予備系から運用系への切替を指示する切替用パスメッセージは,「0x02」により表す。
【0053】
この第2ルートオブジェクト(SERO)の中のe2,e3の情報は伝送装置♯5の入力側のポート501に関する設定情報であり,e2はポート番号(501)を表すEROサブオブジェクトであり,e3は使用する帯域を含むラベルサブオブジェクトを表し,この例ではラベル=Xの帯域が仮予約される。e4,e5は伝送装置♯6の入力側ポート601への設定情報であり,e4は伝送装置♯6の入力側のポート番号(601)を表すEROサブオブジェクトであり,e5はラベル=Yの帯域を表すラベルサブオブジェクトを表し,e6,e7は伝送装置♯4の入力側のポート402への設定情報としてラベル=Zが設定されていることを表す。
【0054】
図7はラベルサブオブジェクトを予備系識別子に使用するための構成を示し,上記図6の構成を採用しない場合に使用する。
【0055】
このラベルサブオブジェクト(Label Subobject)は,既存のパスメッセージの第2のルートオブジェクト(SERO)に含まれるものであり,その中のリザーブビットを予備系識別子として拡張したものである。すなわち,ラベルサブオブジェクトは,図7に示すように1行32ビットで複数行により構成され,その先頭行の32ビットは,「L」(1ビット),「Type」(6ビット),「Length」(8ビット),「U 」(1ビット),の後の「P」で表す(2ビット:Pビットという)リザーブビットがあり,これを用いて予備系を識別するために使用する。具体的には,Pビットが「00」の場合は通常(運用系),「01」の場合は予備系用を表すものとし,「10」は切替用のパスメッセージを表すものとして使用する。
【0056】
上記の図6に示す方法(SEROの中の予備系用パスメッセージを示すビット(Temp Reserve Subobject)を使用)を用いるか,上記図7に示すサブオブジェクトを使用するか,または予備系を仮予約しない(予備系を使用しない)動作の,3つの何れを用いるかは,ネットワークの立ち上げ時等にオプションとして選択することができる。
【0057】
図8,図9は伝送装置♯1からの帯域予約動作の流れ(その1),(その2)を示す。図8は伝送装置♯1から♯2までの運用系と,伝送装置♯1から♯5への予備系の各メッセージの流れを示し,その動作の概要を以下に説明する。
【0058】
a.運用・予備系の確立要求を受けた伝送装置♯1は運用系(1) と予備系(2) のそれぞれのルートを計算する。
【0059】
b.伝送装置♯1の運用系ルートのポート=101は指定された帯域を「空き」状態から「予約」状態に設定する。
【0060】
c.伝送装置♯1の予備系ルートのポート=102は,指定された帯域を「仮予約」状態に設定する。
【0061】
d.それぞれのルート用パスメッセージ(Path MSG)を生成し,該当ポートから次の装置へパスメッセージを送信する。
【0062】
e.パスメッセージを受信したポートは, 運用系であれば帯域を「予約」に,予備系であれば帯域を「仮予約」に設定し,パスメッセージを次の装置へ転送する。
【0063】
図9は伝送装置♯3から♯4,♯3への運用系と,伝送装置♯6から♯4,♯6への予備系の各メッセージの流れを示し,その動作の概要を以下に説明する。
【0064】
a.伝送装置♯3と♯6からそれぞれパスメッセージを受信した伝送装置♯4は,それぞれの帯域を「予約」,「仮予約」に設定する。
【0065】
b.運用系に指定されたポート=401は,指定された帯域を「予約」状態から「使用」(確定)状態に設定する。
【0066】
c.予備系に指定されたポート=402は,指定された帯域を「仮予約」状態のまま変更しない。
【0067】
d.それぞれのルート用パスメッセージを生成し,該当ポートから次の装置へリザーブメッセージ(Resv MSG) を送信する。
【0068】
e.リザーブメッセージを受信したポートは,運用系であれば帯域を「使用」(確定)に,予備系であれば帯域を「仮予約」とし,リザーブメッセージを次の装置へ転送する。
【0069】
図10はOSPF部(図3の1d)による帯域更新広告の処理を示す。
【0070】
図10のA.はネットワークにおいて伝送装置♯1から♯4へ運用系(1) と予備系(2) のシグナリングが実行される状態を示す。図10のB.は,運用系(1) のルートで,♯4から♯1へリザーブメッセージが返り,装置内の帯域状態が「使用」(確定)に更新される様子を示す。図10のC.は運用系(1) のルートの各伝送装置が帯域を更新したリンク情報(LSA:Link State Advertising) を周辺装置へ広告する様子を示す。
【0071】
上記図10のA.〜C.に示す運用系(1) に対し,図10のD.は予備系(2) において,終点の伝送装置♯4からリザーブメッセージ(Resv MSG) を逆方向に送信した時, 各伝送装置(♯6,♯5,♯1)においてそれぞれで受信されて,帯域情報を「仮予約」に更新しても,帯域更新の広告を行わない様子を示す。
【0072】
図11,図12は複数のネットワークで共用する伝送装置を含む場合の処理動作(その1),(その2)を示す。図11,図12では伝送装置♯1〜♯4,♯6,♯5,♯1により第1のネットワークを構成し,伝送装置♯A,♯B,♯6,♯C,♯E,♯D,♯Aにより第2のネットワークを構成している。
【0073】
図11のa.は第1のネットワークにおいて伝送装置♯1を始点として伝送装置♯4を終点とする運用系ルート(1)が伝送装置♯1,♯2,♯3,♯4により形成され,予備系ルート(2)が伝送装置♯1,♯5,♯6,♯4により形成された場合,伝送装置♯6の入力側と出力側のポートの帯域は「仮予約」であり,その帯域更新は広告されないため,他方の第2のネットワークの始点の伝送装置♯Aから終点の伝送装置♯Cに接続する運用系ルートの経路計算では,伝送装置♯B及び♯C(同様に伝送装置♯5,♯4)と伝送装置♯6の間の伝送路は「空き」として参照される。そのため,第2のネットワークにおいて,♯A,♯B,♯6,♯Cを通過する運用系ルートの経路計算を行うことができる。
【0074】
この場合,図11のb.に示すように伝送装置♯6の各ポートの状態(伝送装置♯B及び伝送装置♯Cから伝送装置♯6に接続するためのポートの状態)が「空き」状態(仮予約は内部状態であり,外部からは空き状態)であるものとして計算される。
【0075】
図11のb.の状態で,伝送装置♯6が第2のネットワークの運用系ルートを構成する伝送装置として経路計算により求められた場合,その運用系の始点の伝送装置♯Aから生成された運用系パスメッセージの送信を行って,これを伝送装置♯Bを介して伝送装置♯6で受信すると,伝送装置♯6ではポートの帯域状態を『仮予約』から『予約』(確定)の状態に設定変更する(第1のネットワークでは予備系を構成するため「仮予約」であったが,第2のネットワークでは運用系パスメッセージにより運用系を構成するため「予約」となり,その後,後述するように「使用中」となる)。
【0076】
このパスメッセージが終点の伝送装置♯Cに達すると,伝送装置♯Cからリザーブメッセージ(Resv MSG) が逆方向(伝送装置♯6,♯B,♯Aの方向)に送信される。これを受信すると伝送装置♯6は,図11のc.に示すように先に「予約」状態に設定された帯域が「使用中」(確定)状態に設定変更される。なお,リザーブメッセージを受信した他の伝送装置♯B,♯Aでも順番に同様の設定変更が行われる。
【0077】
図11のc.に示す伝送装置♯6において,帯域の状態が「仮予約」から「予約」に変化すると,図12のd.に示すようにその変化を検出することにより伝送装置♯6は,第1のネットワークの始点の伝送装置♯1に対して警告メッセージ(Notify Message) を送信し, 予備系ルートの状態が変化したことを通知する。
【0078】
警報メッセージを受信した伝送装置♯1は,図12のe.に示すように予備系ルート(♯1,♯5,♯6,♯4)に対し予備系用パスに対してパス削除(Path Tear)メッセージを送信し,「仮予約」を「空き」に変更する。これにより,該当する予備系ルートの各伝送装置のポートのパスの帯域は空きになる。
【0079】
伝送装置♯1は予備系用パスのパス削除(Path Tear)メッセージを送信すると,改めて予備系ルートを確立するため,経路計算を実施し,図12のf.に示すように新経路に予備系(3)パスメッセージ(Path MSG) を送信し,新たな予備系ルート(3)を確立する。この例では,新たな予備系ルート(3)は,伝送装置♯1,♯5,♯7,♯4である。
【0080】
なお,伝送装置♯6は帯域が「使用中」になった時点で,帯域更新の広告としてLSA(Link State Advertising) を周辺装置へ送信する。
【0081】
図13は運用系切り替え発生時の処理を示す。
【0082】
図13のA.は運用系・予備系のパス設定が正常に行われている状態を示し,(1) の運用系ルート上で使用している帯域は「使用中」状態,(2) の予備系ルート上で使用している帯域は「仮予約」状態である。
【0083】
運用系で障害が発生すると,図13のB.に示すように障害を検出した伝送装置♯3が伝送装置♯1へ警告メッセージ(Notify MSG) を送信する。これを受信した伝送装置♯1は障害を検知して切替処理を行う。そのために切替用パスメッセージ(Path MSG) を作成する。
【0084】
次に図13のC.に示すように,運用系ルートのパスを削除するためパス削除(Path Tear)メッセージを運用系ルートに送信し, 同時に予備系ルートに切替用パスメッセージを送信する。
【0085】
図13のD.に示すように,上記切替用パスメッセージを受信した予備系ルートの各伝送装置♯5,♯6,♯4は運用系ルートに切替えられると,伝送装置♯1は元の運用系ルート(♯1,♯2,♯3,♯4)を再計算して新たな予備系ルートを求め,得られたルートに対し予備系用パスメッセージを送信する。
【0086】
上記図13のC.のパスメッセージにより予備系から運用系に切替えられ,帯域が「使用中」になった各伝送装置は,帯域更新広告としてLSAを周辺伝送装置へ送信する。
【0087】
図14,図15は同一ポートに複数のパスが形成された場合の切り替え処理(その1),(その2)を示す。図14のa.に示す構成は上記図11のa.と同様に2つのネットワークが伝送装置♯6を共通の装置として構成され,伝送装置♯1〜♯6により第1のネットワークが構成され,伝送装置♯A〜♯Eにより第2のネットワークが構成されている。但し,第1のネットワークは,伝送装置♯1,♯2,♯3,♯4により運用系ルート(1)が構成され,伝送装置♯1,♯5,♯6,♯4により予備系ルート(2)が構成され,第2のネットワークは,伝送装置♯A,♯D,♯E,♯Cにより運用系ルート(3)が構成され,伝送装置♯A,♯B,♯6,♯Cにより予備系ルート(4)が構成されている。この構成では,伝送装置♯6は2つのネットワークに対して予備系ルートを構成する。この時,伝送装置♯6では同一のポートを2本のルートが予備系として使用しているものとし,図14のc.に示すポート601内のチャネル1(CH1)を2つの予備系ルート(2)と(4)が使用しているが,予備系ルートであるため帯域は「仮予約」の状態に設定されている。この時,伝送装置♯6のポート(またはインタフェースインデックス)601についての帯域管理テーブルには図14のb.に示す内容が設定されている。すなわち,コネクションID(2)は始点が伝送装置♯1であり,帯域情報としてCH1は仮(仮予約を表す),CH2は空き,CH3は使用(使用中)の状態であり,コネクションID(4)は,始点が伝送装置♯Aで,帯域情報はコネクションID(2)と同様である。
【0088】
上記図14のa.のように,伝送装置♯6のポート601のCH1が予約状態であったのに対して,新たに伝送装置♯α,♯β,♯γ,♯6から成るネットワークが追加された場合を図15のd.に示す。この場合,その運用系ルート(5)が伝送装置♯α,♯6及び♯γで,予備系ルート(6)が伝送装置♯α,♯β,♯γとなる。このように伝送装置♯6のポート601のチャネルCH1に新たに運用系のパスがパスメッセージにより形成されると,帯域の状態が「仮予約」から「予約」に切替えられる。すると,上記図12のd.に示す原理によりポート601のCH1を仮予約していた予備系ルートの始点の伝送装置♯1と伝送装置♯Aに対してそれぞれ(2)用警告メッセージと(4)用警告メッセージが送信される。これを受信した伝送装置♯1と伝送装置♯Aは,それぞれの予備系ルート上のコネクションIDに対して「仮予約」を「空き」にするためパス削除メッセージを送信し,新たな予備系ルートの経路計算を始める。
【0089】
これにより,ポート601の帯域管理テーブルには新しくコネクションID(5)が追加され,図15のe.に示すようなデータが追加される。この場合,CH1を「予約」としてテーブルに新規追加する。この時,CH1を「仮予約」として使用していた予備系(2)と予備系(4)は,テーブルに登録してある始点の伝送装置をそれぞれの宛先にして警告メッセージを送信する。予備系ルートの(2)と(4)は始点の伝送装置♯1と♯Aからのパス削除メッセージを受け取ると帯域管理テーブルからコネクションIDを含むデータを消去する。
【0090】
(付記1) 多数の伝送装置で構成するGMPLSのネットワークの始点と終点の伝送装置間に設定される運用系ルートに対応する予備系ルートの制御方式において,前記始点の伝送装置から予備系ルートの伝送装置に対して送信される予備系パス設定メッセージ中に,当該予備系ルート上の各伝送装置の予備系パスを仮予約することを指示する情報を設け,前記予備系パス設定メッセージを受け取った各伝送装置はそれぞれの帯域管理テーブルの該当する予備系パスを外部からは空き状態として認識される仮予約の状態に設定することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【0091】
(付記2) 付記1において,前記伝送装置の帯域管理テーブルの予備系パスが仮予約に設定されると,前記ネットワークの終点の伝送装置から,始点の伝送装置側へ送られるリザーブメッセージ(Reserve MSG) を受け取っても前記帯域管理テーブルの仮予約の状態を変更しないで維持すると共に,隣接する他の伝送装置に対して前記帯域管理テーブルの状態の広告を行わないことを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【0092】
(付記3) 付記1または2のいずれかにおいて,前記伝送装置の帯域管理テーブルに仮予約状態に設定された帯域は,他の始点と終点の伝送装置により形成されるネットワークにおける予備系パスの帯域の仮予約状態として共存できることを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【0093】
(付記4) 付記1において,前記予備系パス設定メッセージ中の各伝送装置の予備系パスを仮予約することを指示する情報は,第2のルートオブジェクト(SERO)の先頭に設けた予備系パス設定メッセージを表すビット列により構成することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【0094】
(付記5) 付記1において,前記予備系パス設定メッセージ中の各伝送装置の予備系パスを仮予約することを指示する情報は,前記パス設定メッセージ中のラベルサブオブジェクトの中のリザーブビットにより構成することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【0095】
(付記6) 多数の伝送装置で構成するGMPLSのネットワークの始点と終点の伝送装置間に設定される運用系ルートに対応する予備系ルートの制御方式において,前記始点の伝送装置から予備系ルートの伝送装置に対して送信される予備系パス設定メッセージにより当該予備系ルート上の各伝送装置の予備系パスを仮予約することを指示する情報として,第2のルートオブジェクト(SERO)の先頭に設けた予備系パス設定メッセージを表すビット列により構成するか,前記予備系パス設定メッセージ中のラベルサブオブジェクトの中のリザーブビットにより構成するか,または予備系パスの仮予約を行わないかの何れか一つを予め選択し,前記予備系パス設定メッセージを受け取った各伝送装置はそれぞれの帯域管理テーブルの該当する予備系パスを外部からは空き状態として識別される仮予約の状態に設定することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【0096】
(付記7) 付記1乃至6の何れかにおいて,前記運用系ルートに故障が発生すると,故障を検出した伝送装置から前記始点の伝送装置に対して警告メッセージを送信し,前記始点の伝送装置は,前記警告メッセージを受信すると前記予備系ルートに対して運用系への切替用パスメッセージを送信し,前記切替用パスメッセージを受けた各伝送装置はそれぞれの帯域管理テーブルの予備系パスの状態を仮予約から使用中の状態に更新して予備系ルートを運用系ルートに切替えると共に,更新した帯域管理テーブルを隣接する他の伝送装置に広告して各伝送装置の帯域管理テーブルを更新することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【0097】
(付記8) 付記7において,前記始点の伝送装置は,前記障害が発生した運用系ルートに対してパス削除メッセージを送信して,該当する各伝送装置の帯域管理テーブルの運用系パスの状態を使用中から空きの状態に設定し,経路計算部により前記更新した帯域管理テーブルを用いて計算を行い新たな予備系ルートを求めることを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【0098】
(付記9) 付記1において,前記予備系ルート上の予備系パスが設定された伝送装置が,前記予備系ルートの始点と終点が異なる別のネットワークの伝送装置を始点とするネットワークの運用系パスとして使用する場合,前記予備系パスに対して設定された仮予約の状態を開放し,改めて経路計算部による計算により予備経路を再構築することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
(付記10) 付記9において,前記経路計算部による計算により予備系ルートの再構築ができないと,警告メッセージを発生することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の原理構成を示す図である。
【図2】帯域管理テーブルの構成例を示す図である。
【図3】伝送装置内の運用系の動作を含む実施例の構成を示す図である。
【図4】伝送装置内の予備系の動作を含む実施例の構成を示す図である。
【図5】始点の伝送装置から運用系ルートへ送信されるパスメッセージの構成例を示す図である。
【図6】予備系ルートへ送信されるパスメッセージ中に新たに設けたオブジェクトの構成例を示す図である。
【図7】ラベルサブオブジェクトを予備系識別子に使用する構成を示す図である。
【図8】始点の伝送装置からの帯域予約動作の流れ(その1)を示す図である。
【図9】始点の伝送装置からの帯域予約動作の流れ(その2)を示す図である。
【図10】OSPF部による帯域更新広告の処理を示す図である。
【図11】複数のネットワークで共用する伝送装置を含む場合の処理動作(その1)を示す図である。
【図12】複数のネットワークで共用する伝送装置を含む場合の処理動作(その2)を示す図である。
【図13】運用系切り替え発生時の処理を示す図である。
【図14】同一ポートに複数のパスが形成された場合の切り替え処理(その1)を示す図である。
【図15】同一ポートに複数のパスが形成された場合の切り替え処理(その2)を示す図である。
【図16】GMPLSネットワークの構成例を示す図である。
【図17】従来の基本的なパス設定シーケンスを示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1 伝送装置(♯1〜♯6)
10 シグナリング処理部
11 経路計算部
12 運用系処理部
12a 帯域予約部
12b 運用系パスメッセージ生成部
12c 帯域確定部
13 予備系処理部
13a 帯域仮予約部
13b 予備系パスメッセージ生成部
14 帯域管理テーブル
15 広告部
101 ポート
102 ポート
(1) 運用系ルート
(2) 予備系ルート
201,202 伝送装置♯2の入力側と出力側のポート
301,302 伝送装置♯3の入力側と出力側のポート
401,402 伝送装置♯4の運用系ルートと予備系ルートの入力側のポート
501,502 伝送装置♯5の入力側と出力側のポート
601,602 伝送装置♯6の入力側と出力側のポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の伝送装置で構成するGMPLSのネットワークの始点と終点の伝送装置間に設定される運用系ルートに対応する予備系ルートの制御方式において,
前記始点の伝送装置から予備系ルートの伝送装置に対して送信される予備系パス設定メッセージ中に,当該予備系ルート上の各伝送装置の予備系パスを仮予約することを指示する情報を設け,
前記予備系パス設定メッセージを受け取った各伝送装置はそれぞれの帯域管理テーブルに該当する予備系パスを外部からは空き状態として認識される仮予約の状態に設定することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【請求項2】
請求項1において,
前記伝送装置の帯域管理テーブルの予備系パスが仮予約に設定されると,前記ネットワークの終点の伝送装置から,始点の伝送装置側へ送られるリザーブメッセージ(Reserve MSG) を受け取っても前記帯域管理テーブルの仮予約の状態を変更しないで維持すると共に,隣接する他の伝送装置に対して前記帯域管理テーブルの状態の広告を行わないことを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【請求項3】
請求項1において,
前記予備系パス設定メッセージ中の各伝送装置の予備系パスを仮予約することを指示する情報は,第2のルートオブジェクト(SERO)の先頭に設けた予備系パス設定メッセージを表すビット列により構成することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【請求項4】
多数の伝送装置で構成するGMPLSのネットワークの始点と終点の伝送装置間に設定される運用系ルートに対応する予備系ルートの制御方式において,
前記始点の伝送装置から予備系ルートの伝送装置に対して送信される予備系パス設定メッセージにより当該予備系ルート上の各伝送装置の予備系パスを仮予約することを指示する情報として,第2のルートオブジェクト(SERO)の先頭に設けた予備系パス設定メッセージを表すビット列により構成するか,前記予備系パス設定メッセージ中のラベルサブオブジェクトの中のリザーブビットにより構成するか,または予備系パスの仮予約を行わないかの何れか一つを予め選択し,
前記予備系パス設定メッセージを受け取った各伝送装置はそれぞれの帯域管理テーブルの該当する予備系パスを外部からは空き状態として識別される仮予約の状態に設定することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて,
前記運用系ルートに故障が発生すると,故障を検出した伝送装置から前記始点の伝送装置に対して警告メッセージを送信し,
前記始点の伝送装置は,前記警告メッセージを受信すると前記予備系ルートに対して運用系への切替用パスメッセージを送信し,
前記切替用パスメッセージを受けた各伝送装置はそれぞれの帯域管理テーブルの予備系パスの状態を仮予約から使用中の状態に更新して予備系ルートを運用系ルートに切替えると共に,更新した帯域管理テーブルを隣接する他の伝送装置に広告して各伝送装置の帯域管理テーブルを更新することを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【請求項6】
請求項5において,
前記始点の伝送装置は,前記障害が発生した運用系ルートに対してパス削除メッセージを送信して,該当する各伝送装置の帯域管理テーブルの運用系パスの状態を使用中から空きの状態に設定し,経路計算部により前記更新した帯域管理テーブルを用いて計算を行い新たな予備系ルートを求めることを特徴とする予備系ルートの制御方式。
【請求項7】
請求項1において,
前記予備系ルート上の予備系パスが設定された伝送装置が,前記予備系ルートの始点と終点が異なる別のネットワークの伝送装置を始点とするネットワークの運用系パスとして使用する場合,前記予備系パスに対して設定された仮予約の状態を開放し,改めて経路計算部による計算により予備系ルートを再構築することを特徴とする予備系ルートの制御方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−60755(P2008−60755A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233076(P2006−233076)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】