予測装置、予測方法およびプロセス制御システム
【課題】次回の処理結果の予測精度を向上させ、プロセス状態の急激な変化に迅速に追随させて制御精度を向上させる。
【解決手段】測定値取得部13によって取得された測定値データ保存部11の処理結果の測定値と、予測値データ保存部12の予測値とを用いて、平滑化定数算出部14が指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数が算出され、リセット判定部15によって測定値データ保存部11のデータの削除が判定されて、データを削除する場合は、リセット部16が測定値データ保存部11の最新の測定値以外のデータを削除し、データを削除しない場合は、予測値算出部17が指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値を算出するようにする。
【解決手段】測定値取得部13によって取得された測定値データ保存部11の処理結果の測定値と、予測値データ保存部12の予測値とを用いて、平滑化定数算出部14が指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数が算出され、リセット判定部15によって測定値データ保存部11のデータの削除が判定されて、データを削除する場合は、リセット部16が測定値データ保存部11の最新の測定値以外のデータを削除し、データを削除しない場合は、予測値算出部17が指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値を算出するようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は予測装置、予測方法およびプロセス制御システムに関し、特に対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測装置、予測方法およびプロセス制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスでは、コンピュータの主要機能を1つのチップに詰め込んだSoC(System on a Chip)などの多品種少量生産に対応した技術の確立に向けた開発が進められている。そして、半導体デバイスの微細化が進むにつれて、プロセス結果のばらつきに対する製造装置側のマージンが著しく縮小されてきているため、半導体デバイスの生産ラインではプロセス結果のばらつきを減らすAPC(Advanced Process Control)技術の導入が進んでいる。
【0003】
APC技術において、ランツゥラン(Run-to-Run)制御により、前回の処理の測定結果から、次回の処理の測定結果の予測が行われている。例えば、半導体デバイスの生産ラインなどにおいて、エッチング処理が行われた膜厚の測定結果から、次回のエッチング処理が行われた時の膜厚の測定結果の予測が行われ、所望の膜厚が得られるように次回の処理レシピのパラメータを調節することが自動的に行われる。
【0004】
さらに、APC技術を多品種少量生産に対応させるためには、プロセス状態の変化や外乱に対して迅速に追随できるプロセス制御技術の確立が望まれている。そこでの、ランツゥラン制御においては、例えば、EWMA(Exponentially Weighted Moving Average:指数加重移動平均)モデルなどが広く用いられており(例えば、特許文献1参照)、EWMAモデルは、一般に次式で表すことができる。
【0005】
次回の予測値=λ×今回の測定値+(1−λ)×前回の予測値・・・・・・式(1)
=前回の予測値+λ×(今回の測定値−前回の予測値)・・・式(2)
ただし、λは平滑化定数と呼ばれ、一般に、0と1の間の値が使われる。
【0006】
そして、式(2)は、今回の測定値と前回の予測値との差によって前回の予測値のずれ具合を算出し、その値に一定の平滑化定数を乗じて得た値を前回の予測値に加減して次回の予測値を算出している。また、式(2)では、今回の測定値は前回の予測値のずれ具合を示す値の算出に利用されているが、平滑化定数が0.5未満の場合に次回の予測値への影響が大きいのは前回の予測値である。つまり、小さな平滑化定数を使うことによりプロセス状態の変動などによる特異な測定値が得られた場合の次回への予測値への影響を抑えることができる。
【0007】
さらに、式(2)は前回の予測値と今回の測定値とがあれば、次回の予測値を算出できる簡便さも特徴である。ただし、前回の予測値は前々回の予測値から算出されるため、連続する過去の予測値の影響がわずかではあるが残ると考えられる。
【0008】
そして、平滑化定数はこの過去の予測値の影響度も決定し、平滑化定数が1に近いほど直近の測定値を重視し、0に近いほど過去の経過を重視することになる。通常、平滑化定数は0.2から0.3が適当であるといわれている。
【特許文献1】特表2004−509407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、既述のように、EWMAモデルでは、蓄積された過去のプロセス結果のデータを解析して算出された適切な一定の平滑化定数が用いられて計算が行われていたため、製造装置のプロセス状態が急に変動した場合や、製造装置自体が不安定である場合などに、制御特性が劣化するという問題点があった。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、EWMAモデルに適用される最適な平滑化定数を処理ごとに自動的に求めることによって、次回の処理結果の予測精度を向上させ、プロセス状態の急激な変化に迅速に追随させて制御精度を向上させた予測装置、予測方法およびプロセス制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では上記課題を解決するために、対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測装置10において、図1に示すように、処理結果の測定値を取得する測定値取得部13と、測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部11と、指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値を算出する予測値算出部17と、測定値および予測値を用いて、平滑化定数を更新する平滑化定数算出部14と、平滑化定数を更新するごとに測定値データ保存部11のデータの削除を判定するリセット判定部15と、リセット判定部15によりデータを削除する場合は、測定値データ保存部11の最新の測定値以外のデータを削除するリセット部16と、を有することを特徴とする予測装置10が提供される。
【0012】
このような予測装置によれば、測定値取得部によって取得された測定値データ保存部の処理結果の測定値と、予測値データ保存部の予測値とを用いて、平滑化定数算出部で指数加重移動平均モデルに適用される平滑化定数が算出され、リセット判定部によって測定値データ保存部のデータの削除が判定されて、データを削除する場合は、リセット部が測定値データ保存部の最新の測定値以外のデータを削除し、データを削除しない場合は、予測値算出部が指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値を算出するようになる。
【0013】
また、本発明では上記課題を解決するために、対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測方法において、測定値データ保存部が前記処理結果の測定値をデータとして順に保存し、測定値取得部が前記測定値を取得し、平滑化定数算出部が前記測定値および予測値を用いて、前記指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出し、リセット判定部が前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定し、リセット部が前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除し、予測値算出部が前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する、ことを特徴とする予測方法が提供される。
【0014】
このような予測方法によれば、測定値データ保存部に処理結果の測定値がデータとして順に保存され、測定値取得部によって測定値が取得され、平滑化定数算出部によって測定値および予測値を用いて、指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数が算出され、リセット判定部によって平滑化定数を算出するごとに測定値データ保存部のデータの削除が判定され、リセット部によってリセット判定部によりデータを削除する場合は、測定値データ保存部の最新の測定値以外のデータが削除され、予測値算出部によってリセット判定部によりデータを削除しない場合は、指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値が算出される。
【0015】
また、本発明では上記課題を解決するために、対象物の処理結果を測定する測定装置と、前記処理結果の測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部と、前記測定値を取得する測定値取得部と、前記測定値および予測値を用いて、指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出する平滑化定数算出部と、前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定するリセット判定部と、前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除するリセット部と、前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する予測値算出部と、を有する予測装置と、前記予測値を利用して前記対象物に処理を施す処理装置と、を備えるプロセス制御システムが提供される。
【0016】
このようなプロセス制御システムでは、測定装置によって対象物の処理結果が測定され、予測装置によって測定値データ保存部に処理結果の測定値がデータとして順に保存され、測定値取得部によって測定値が取得され、平滑化定数算出部によって測定値および予測値を用いて、指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数が算出され、リセット判定部によって平滑化定数を算出するごとに測定値データ保存部のデータの削除が判定され、リセット部によってリセット判定部によりデータを削除する場合は、測定値データ保存部の最新の測定値以外のデータが削除され、予測値算出部によってリセット判定部によりデータを削除しない場合は、指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値が算出され、処理装置によって予測値を利用して対象物に処理が施されるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、測定値取得部によって取得された測定値データ保存部の処理結果の測定値と、予測値データ保存部の予測値とを用いて、平滑化定数算出部が指数加重移動平均モデルに適用される平滑化定数を算出し、リセット判定部が測定値データ保存部のデータの削除を判定して、データを削除する場合は、リセット部が測定値データ保存部の最新の測定値以外のデータを削除し、データを削除しない場合は、予測値算出部が指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値を算出するようにした。これにより、プロセス制御装置の状態の急激な変動の発生やプロセス制御装置自体が不安定であっても、測定値を取得するごとに最適な平滑化定数を適用させることにより、自動的に予測精度を向上させることができ、製造ばらつきを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の概要について図面を参照して説明し、その後に、本発明の概要に基づいた実施の形態および本実施の形態を具体的に利用した実施例について、同様に図面を参照して説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0019】
では、本発明の概要について図1を用いて以下に説明する。
図1は、本発明の予測装置における概要図である。
予測装置10は、測定値データ保存部11、予測値データ保存部12、測定値取得部13、平滑化定数算出部14、リセット判定部15、リセット部16および予測値算出部17から構成されている。
【0020】
なお、このような予測装置10は、例えば、処理装置および測定装置などと合わせてプロセス制御装置にて利用される。具体的には、処理装置にて処理が施されたある加工物に対して、測定装置にて測定されたその加工物のサイズなどの測定値から予測装置10にて次回の処理結果の予測値を算出し、算出した予測値を処理装置に適用させて、再び処理を行うようなプロセス制御装置に適用させる場合が考えられる。そして、予測装置10の各構成要素は以下のような動作を行う。
【0021】
測定値データ保存部11は、測定装置(不図示)によって測定されて、後に説明する測定値取得部13によって取得された測定値を時系列的に保存する。
予測値データ保存部12は、測定値データ保存部11に保存された測定値を用いて算出された予測値を保存する。後に説明する平滑化定数算出部14でEWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する際に用いる。
【0022】
測定値取得部13は、測定装置(不図示)によって測定された測定値を取得し、測定値データ保存部11に保存する。
平滑化定数算出部14は、測定値データ保存部11および予測値データ保存部12にそれぞれ保存されている測定値および予測値を用いて、EWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する。
【0023】
リセット判定部15は、平滑化定数算出部14によって平滑化定数が算出されるごとに、測定値データ保存部11のデータの削除を判定する。
リセット部16は、リセット判定部15にて測定値データ保存部11のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部11の取得した最新の測定値以外のデータを削除する。
【0024】
予測値算出部17は、リセット判定部15にて測定値データ保存部11のデータを削除しないと判定した場合、EWMAモデルに平滑化定数と測定値とを適用して、予測値を算出する。
【0025】
このような構成要素からなる予測装置10の予測方法の概要について、以下に説明する。
まず、測定値取得部13が測定装置(不図示)によって測定されたある加工物の例えば、膜厚などの測定値を取得し、測定値データ保存部11に保存する。
【0026】
平滑化定数算出部14が、取得した測定値と予測値とから平滑化定数を算出する。
リセット判定部15が、平滑化定数算出部14で平滑化定数が算出されるごとに、平滑化定数を監視して、測定値データ保存部11のデータを削除するかを判定する。
【0027】
リセット部16は、リセット判定部15が測定値データ保存部11のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部11の最新の測定値以外のデータを削除する。
予測値算出部17は、リセット判定部15が測定値データ保存部11のデータを削除しないと判定した場合、平滑化定数と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する。
【0028】
そして、このようにして算出した予測値を処理装置(不図示)へ反映させて処理を行う。さらに、測定装置(不図示)によって処理が施された加工物を測定して、再び、測定値取得部13によって測定値が取得されて、以上のような予測値算出処理が、所望の回数繰り返される。
【0029】
このように、従来は、測定値を新たに取得しても一定の平滑化定数をEWMAモデルに適用させて予測値を算出していたが、本発明の予測装置では、測定値を取得するごとに平滑化定数を算出して、そのような平滑化定数をEWMAモデルに適用させて予測値を算出することによって、プロセス制御装置の状態の急激な変動の発生やプロセス制御装置自体が不安定であっても、測定値を取得するごとに最適な平滑化定数を適用させることにより、自動的に予測精度を向上させることができ、製造ばらつきを低減させることができるようになる。
【0030】
次に、実施の形態について図面を参照して以下に説明する。
本実施の形態では、上記本発明の概要に基づいて、半導体デバイスのプロセス制御の場合を例に挙げて説明する。
【0031】
図2は、本実施の形態におけるプロセス制御システムを示すブロック図である。
プロセス制御システム20は、測定装置21、予測装置30、最適レシピパラメータ算出部22および処理装置23から構成されている。
【0032】
測定装置21は、半導体デバイスの膜厚、トレンチ深さ、ゲート幅などを測定する。
予測装置30は、測定装置21で測定した膜厚、トレンチ深さ、ゲート幅などの測定値に対して、次回再び測定される測定値の予測値を算出する。なお、予測装置30については後ほど詳細に説明を行う。
【0033】
最適レシピパラメータ算出部22は、予測装置30で算出された予測値を利用して、次回に所望の測定値が得られるように次の処理で利用されるレシピのパラメータを調整する。
【0034】
処理装置23は、最適レシピパラメータ算出部22で算出されたレシピのパラメータを利用して、半導体デバイスに対してエッチングやCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)などの処理を行う。
【0035】
このような構成要素からなるプロセス制御システム20の動作原理について、以下に半導体デバイスに対して処理としてエッチングを行って、測定値として膜厚を測定する場合について説明する。
【0036】
測定装置21によって、半導体デバイスの膜厚を測定する。
予測装置30は、測定装置21が測定した膜厚のデータを取得する。そして、予測装置30は、半導体デバイスに対して次回行われるエッチング処理後、再び測定装置21にて測定される膜厚の予測値を算出する。
【0037】
最適レシピパラメータ算出部22は、予測装置30が算出した予測値から、次回に所望の測定値が得られるように次のエッチング処理で利用されるレシピのパラメータを算出する。
【0038】
処理装置23は、最適レシピパラメータ算出部22で算出されたレシピのパラメータを利用して、半導体デバイスにエッチング処理を行う。
再び、測定装置21は、エッチング処理が行われた半導体デバイスの膜厚を測定して、上記プロセス制御を所望の回数繰り返す。
【0039】
このようなプロセス制御システム20の構成要素の1つである予測装置30について以下に説明する。
図3は、本実施の形態における予測装置のブロック図である。
【0040】
予測装置30は、測定値データ保存部31、予測値データ保存部32、測定値取得部33、平滑化定数算出部34、リセット判定部35、リセット部36および予測値算出部37から構成されている。
【0041】
測定値データ保存部31は、測定装置21によって測定されて、後に説明する測定値取得部33によって取得された測定値を時系列的に保存する。
予測値データ保存部32は、測定データ保存部31に保存されている測定値を用いて算出された予測値を保存する。後に説明する平滑化定数算出部34でEWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する際に用いる。
【0042】
測定値取得部33は、測定装置21によって測定された測定値を取得し、測定値データ保存部31に保存する。
平滑化定数算出部34は、測定値データ保存部31および予測値データ保存部32にそれぞれ保存されている測定値および予測値を用いて、EWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する。
【0043】
リセット判定部35は、さらに、測定値データ保存部35a、予測値データ保存部35b、測定値取得部35c、平滑化定数算出部35d、平滑化定数判定部35e、予測値算出部35fおよびデータ削除部35gから構成されており、平滑化定数算出部34によって平滑化定数が算出されるごとに、測定値データ保存部31のデータの削除を判定する。
【0044】
測定値データ保存部35aは、測定装置21によって測定されて、後に説明する測定値取得部35cによって取得された測定値を時系列的に保存する。
予測値データ保存部35bは、予測値算出部35fによって算出された予測値を保存する。後に説明する平滑化定数算出部35dでEWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する際に用いる。
【0045】
測定値取得部35cは、図2に示した測定装置21によって測定された測定値を取得し、測定値データ保存部35aに保存する。
平滑化定数算出部35dは、測定値データ保存部35aおよび予測値データ保存部35bにそれぞれ保存されている測定値および予測値を用いて、EWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する。なお、平滑化定数の算出方法には、平均二乗誤差に測定値および予測値を適用させる。すなわち、測定値および予測値が適用された平均二乗誤差が最小になるように平滑化定数を決めることで算出する。
【0046】
平滑化定数判定部35eは、平滑化定数が1であるか、または、あらかじめ設定された閾値よりも大きいか否かを判定する。
予測値算出部35fは、EWMAモデルに平滑化定数と測定値とを適用して、予測値を算出する。
【0047】
以上が、リセット判定部35の構成である。以下に予測装置30の構成の説明を続ける。
リセット部36は、リセット判定部35の平滑化定数判定部35eにて測定値データ保存部31のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部31の取得した最新の測定値以外のデータを削除する。
【0048】
予測値算出部37は、リセット判定部35の平滑化定数判定部35eにて測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定した場合、EWMAモデルに平滑化定数と測定値とを適用して、予測値を算出する。
【0049】
以上のように本実施の形態における予測装置30が構成される。
次に、このような構成要素からなる予測装置30の予測方法について説明する。
本実施の形態における予測装置30の予測方法は、本発明の概要で説明したように、まず、測定値取得部33が測定装置21によって測定された半導体デバイスの膜厚などの測定値を取得し、測定値データ保存部31に保存する。
【0050】
平滑化定数算出部34が、取得した測定値と予測値の初期値とから平滑化定数を算出する。
リセット判定部35が、平滑化定数算出部34で算出された平滑化定数を監視して、平滑化定数に従って、測定値データ保存部31のデータを削除するか判定する。
【0051】
リセット部36は、リセット判定部35の平滑化定数判定部35eが測定値データ保存部31のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部31の最新の測定値以外のデータを削除する。
【0052】
予測値算出部37は、リセット判定部35の平滑化定数判定部35eが測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定した場合、平滑化定数と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する。
【0053】
そして、このようにして算出した予測値を処理装置23などへ反映させて処理を行う。さらに、測定装置21によってエッチング処理が施された半導体デバイスの膜厚を測定して、再び、測定値取得部33によって測定値が取得されて、以上のような予測値の算出処理が、所望の回数繰り返される。
【0054】
一方、リセット判定部35では、予測装置30の平滑化定数算出部34が平滑化定数を算出するごとに、別途、平滑化定数算出部35dが別の平滑化定数を算出して、平滑化定数判定部35eが別の平滑化定数から、測定値データ保存部31のデータを削除するか判定し、その結果をリセット部36および予測値算出部37へ出力するようにしている。
【0055】
以下に、予測装置30およびリセット判定部35についてフローチャート図を用いて詳細に説明する。
図4は、本実施の形態における予測装置の予測方法を示すフローチャート図、図5は、本実施の形態における予測装置のリセット判定部のリセット判定方法を示すフローチャート図である。なお、本実施の形態では、予測装置30において測定値をM回測定することとして説明する。この回数はプロセス制御システムなどに応じて適宜決定することができる。
【0056】
まず、予測装置30の予測方法について図4を用いて以下に説明する。
[ステップS41] 測定値取得部33は、測定装置21で測定した測定値を取得する。
【0057】
[ステップS42] 測定値取得部33は、測定値データ保存部31に保存されているデータ数がN個未満であるか否かを判断する。N個未満でない、つまりN個以上であれば、ステップS43へ進められ、N個未満であれば、ステップS44へ進められる。なお、測定値データ保存部31に保存できるデータ数N個は適宜決定することができるが10個から30個程度とする。
【0058】
[ステップS43] 測定値取得部33は、測定値データ保存部31に保存されているデータ数がN個未満でない、つまりN個以上である場合、最も古い測定値データを削除してステップS44へ進められる。
【0059】
[ステップS44] 測定値取得部33は、測定値データ保存部31に保存されているデータ数がN個未満である場合、または、ステップS43から、新たに取得した測定値を測定値データ保存部31に保存する。
【0060】
[ステップS45] 平滑化定数算出部34は、測定値データ保存部31に保存されている測定値および、以下で説明する平滑化定数を用いて以下の(3)式から予測値を逐次計算し、予測値データ保存部32に保存する。
【0061】
Yi=λ×yi+(1−λ)×Yi-1・・・・・・・・・・式(3)
ただし、λは、平滑化定数で0≦λ≦1、Yiはi番目の予測値、yiはi番目の測定値
MSE=1/(N−1)×Σi=1m(yi+1−Yi)2・・・・式(4)
ただし、MSE(Mean Square Error)は平均二乗誤差、2≦m≦N−1、とする。
【0062】
そして、式(4)にて、平滑化定数λを0から1の間で例えば0.01刻みで変化させてMSEの値を最も小さくする平滑化定数λを算出する。
なお、制約条件として、あらかじめ平滑化定数λの上限の平滑化定数Λを設定しておいて、式(3)および式(4)で算出された平滑化定数λが制約条件を超える場合は、平滑化定数Λとして算出する。
【0063】
[ステップS46] リセット判定部35の平滑化定数判定部35eは、ステップS45において平滑化定数算出部34で平滑化定数λが算出されるたびに、測定値データ保存部31のデータを削除するか判定する。削除すると判定した場合は、ステップS47へ進められ、削除しないと判定した場合は、ステップS48へ進められる。なお、この判定については後ほど詳細に説明する。
【0064】
[ステップS47] リセット部36は、ステップS46で測定値データ保存部31のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部31の最新の測定値以外のデータを削除する。そしてステップS41へ進められる。
【0065】
[ステップS48] 予測値算出部37は、ステップS46で測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定した場合、ステップS45で算出した平滑化定数と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する。
【0066】
以上のステップがM回繰り返されて予測値が算出されて、予測値が算出されるごとに算出された予測値を利用してプロセス制御が行われる。
平滑化定数算出部34が平滑化定数λを算出するごとに、リセット判定部35でも、別途、算出した平滑化定数λ’によって、測定値データ保存部31のデータの削除が判定される。以下にリセット判定部35の判定方法について、図5を用いて以下に説明する。
【0067】
[ステップS51] 測定値取得部35cは、測定装置21で測定した測定値を取得する。
[ステップS52] 測定値取得部35cは、測定値データ保存部35aに保存されているデータ数がN個未満であるか否かを判断する。N個未満でない、つまりN個以上であれば、ステップS53へ進められ、N個未満であれば、ステップS54へ進められる。なお、測定値データ保存部35aに保存できるデータ数N個は適宜決定することができるが10個から30個程度とする。
【0068】
[ステップS53] 測定値取得部35cは、測定値データ保存部35aに保存されているデータ数がN個未満でない、つまりN個以上である場合、最も古い測定値データを削除してステップS54へ進められる。
【0069】
[ステップS54] 測定値取得部35cは、測定値データ保存部35aに保存されているデータ数がN個未満である場合、または、ステップS53から、新たに取得した測定値を測定値データ保存部35aに保存する。
【0070】
[ステップS55] 平滑化定数算出部35dは、測定値データ保存部35aおよび予測値データ保存部35bにそれぞれ保存されている測定値および予測値を、上記ステップS45と同様に式(3)および式(4)を用いて、MSEを最も小さくする平滑化定数λ’を算出する。
【0071】
[ステップS56] 平滑化定数判定部35eは、判定処理が初回またはデータリセット後初回であるか否かを判断する。初回であればステップS57へ進められ、初回でなければステップS58へ進められる。
【0072】
[ステップS57] 平滑化定数判定部35eは、ステップS55で算出した平滑化定数λ’が1であるか否かを判断する。1でない場合、ステップS60へ進められ、1である場合、ステップS59へ進められる。
【0073】
[ステップS58] 平滑化定数判定部35eは、ステップS55で算出した平滑化定数λ’があらかじめ設定した閾値以下であるか否かを判断する。閾値以下でない場合、つまり閾値よりも大きい場合、ステップS59へ進められ、閾値以下である場合、ステップS61へ進められる。
【0074】
[ステップS59] データ削除部35gは、測定値データ保存部35aの最新の測定値データを削除して、ステップS60へ進められる。
[ステップS60] 平滑化定数判定部35eは、測定値データ保存部31のデータを削除しないように判定する。そして、ステップS51へ進められる。
【0075】
[ステップS61] 平滑化定数判定部35eは、測定値データ保存部31のデータを削除するように判定する。
平滑化定数算出部34で平滑化定数λがM回算出されるたびに、以上のステップにより平滑化定数λ’が繰り返し算出され、データのリセットが判定される。
【0076】
次に、このような予測装置30を実際に利用して予測値を算出する場合について3つの実施例を挙げて、特に、平滑化定数算出部34,35dで算出される平滑化定数λ,λ’の変化に注目して説明する。このため、以下の実施例では、図4および図5のフローチャートを参照しながら説明を行う。なお、以下の実施例では、半導体デバイスのエッチングレートを測定した場合について説明する。エッチングレートは、エッチング後に膜厚を測定して得られるエッチング量をエッチング処理時間で割って求めた値である。したがって、エッチングレートは膜厚のデータを加工することによって得ることができる。このため、膜厚の測定装置とは別に、データ加工装置などが必要となる。しかし、以下に説明する実施例では、測定装置1つで膜厚の測定からエッチングレートの算出までを行うこととする。また、式(4)にて、平滑化定数λ,λ’は0から1の間を0.01間隔で変化させて、最小のMSEとなるような平滑化定数λ,λ’を算出するものとする。平滑化定数λには制約条件として平滑化定数Λ=0.5を、平滑化定数λ’に対して閾値(=0.3)を設定している。そして、比較のために、平滑化定数λ=0.3と固定した場合についても記載している。
【0077】
(実施例1)
実施例1は、エッチングレートが途中で大きく増加する場合を例に挙げて説明する。
図6は、実施例1における平滑化定数を示すグラフ、図7は、実施例1におけるエッチングレートを示すグラフである。
【0078】
図6は、縦軸に平滑化定数、横軸にラン数を示し、実施例1における平滑化定数算出部34,35dで算出された平滑化定数λi(図6(A))および平滑化定数λ’i(図6(B))をランごとにグラフに示している。なお、平滑化定数λi,λ’iはiラン目の平滑化定数であることを示す。
【0079】
まず、1ラン目から16ラン目までの平滑化定数λi,λ’iの算出について説明する。なお、以下の説明では、主に平滑化定数の算出に関する処理に触れるが、実際には図4および図5のフローチャートにしたがって処理が行われている。
【0080】
1ラン目では、図4にしたがって、測定値取得部33が半導体デバイスのエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
そして、平滑化定数算出部34は、測定値およびその予測値の初期値(この場合、1ラン目の前のランの測定値)により平滑化定数λ1を算出する(ステップS45)。
【0081】
一方、図5にしたがって、測定値取得部35cが、半導体デバイスのエッチングレートの測定値を取得する(ステップS51)。
そして、平滑化定数算出部35dが、同様に平滑化定数λ’1を算出する(ステップS55)。この時、算出した平滑化定数λ’1は1ではなく、平滑化定数判定部35eは測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定する(ステップS60)。
【0082】
その後、ステップS51へ進められ、2ラン目の算出が始まる。
図4に戻って、平滑化定数判定部35eの判定により、予測値算出部37は平滑化定数λ1と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する(ステップS48)。
【0083】
2ラン目では、再び、図4にしたがって、測定値取得部33がエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
そして、平滑化定数算出部34は、測定値およびその予測値により平滑化定数λ2を算出する(ステップS45)。
【0084】
一方、図5にしたがって、測定値取得部35cが、エッチングレートの測定値を取得する(ステップS51)。
そして、平滑化定数算出部35dが、同様に平滑化定数λ’2を算出する(ステップS55)。この時、算出した平滑化定数λ’2は1ではなく、平滑化定数判定部35eは測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定する(ステップS60)。
【0085】
その後、ステップS51へ進められ、3ラン目の算出が始まる。
図4に戻って、平滑化定数判定部35eの判定により、予測値算出部37は平滑化定数λ2と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する(ステップS48)。
【0086】
以上のように、図4および図5のフローチャートにしたがって、図6に示すように、次々と16ラン目までの平滑化定数λ,λ’が算出される。ちなみにこの例であれば、16ラン目までの平滑化定数λ,λ’は同じ値が算出される。
【0087】
次に、17ラン目から19ラン目までの平滑化定数λi,λ’iの算出について説明する。
17ラン目では、図4にしたがって、測定値取得部33がエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
【0088】
そして、平滑化定数算出部34は、測定値およびその予測値により平滑化定数λ17を算出する(ステップS45)。ただし、平滑化定数λ17=1であるため、制約条件(平滑化定数Λ=0.5)によって、平滑化定数λ17=0.5と算出される。
【0089】
一方、図5にしたがって、測定値取得部35cが、エッチングレートの測定値を取得する(ステップS51)。
そして、平滑化定数算出部35dが、同様に平滑化定数λ’17を算出する(ステップS55)。この時、算出した平滑化定数λ’17は1であって、データ削除部35gは、測定値データ保存部35aに保存した最新の測定値データを削除し(ステップS59)、平滑化定数判定部35eは測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定する(ステップS60)。
【0090】
その後、ステップS51へ進められ、18ラン目の算出が始まる。
図4に戻って、平滑化定数判定部35eの判定により、予測値算出部37は平滑化定数λ17と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する(ステップS48)。
【0091】
18ラン目では、図4にしたがって、測定値取得部33がエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
そして、平滑化定数算出部34は、測定値およびその予測値により平滑化定数λ18を算出する(ステップS45)。ただし、平滑化定数λ18=0.8であるため、制約条件(平滑化定数Λ=0.5)によって、平滑化定数λ18=0.5と算出される。
【0092】
一方、図5にしたがって、測定値取得部35cが、エッチングレートの測定値を取得する(ステップS51)。
平滑化定数算出部35dが、同様に平滑化定数λ’18を算出する(ステップS55)。
【0093】
平滑化定数判定部35eは、今回の判定処理が初回でなく、またデータリセット後の初回でもないと判断する(ステップS56)。
平滑化定数判定部35eは、平滑化定数λ’18と閾値(=0.3)との大小関係を判定して、閾値よりも大きいと判断する(ステップS58)。
【0094】
データ削除部35gは、測定値データ保存部35aに保存した最新の測定値データを削除する(ステップS59)。
そして、平滑化定数判定部35eは測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定する(ステップS60)。
【0095】
その後、ステップS51へ進められ、19ラン目の算出が始まる。
図4に戻って、平滑化定数判定部35eの判定により、予測値算出部37は平滑化定数λ18と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する(ステップS48)。
【0096】
19ラン目では、図4にしたがって、測定値取得部33がエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
そして、平滑化定数算出部34は、測定値およびその予測値により平滑化定数λ19を算出する(ステップS45)。
【0097】
一方、図5にしたがって、測定値取得部35cが、エッチングレートの測定値を取得する(ステップS51)。
平滑化定数算出部35dが、同様に平滑化定数λ’19を算出する(ステップS55)。
【0098】
平滑化定数判定部35eは、今回の判定処理が初回でなく、またデータリセット後の初回でもないと判断する(ステップS56)。
平滑化定数判定部35eは、平滑化定数λ’19=0.2と閾値(=0.3)との大小関係を判定して、閾値よりも小さいと判断する(ステップS58)。
【0099】
平滑化定数判定部35eは測定値データ保存部31のデータを削除すると判定する(ステップS61)。
図4に戻って、平滑化定数判定部35eの判定により、リセット部36が、測定値データ保存部31の最新の測定値以外のデータを削除する(ステップS47)。
【0100】
なお、20ラン目では、図4にしたがって、測定値取得部33がエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
そして、平滑化定数算出部34は、測定値とその前回(19ラン目)の測定値を予測値の初期値として平滑化定数λ20を算出する(ステップS45)。
【0101】
以上の判定処理を行って算出した平滑化定数λ,λ’を適用して得られたエッチングレートの予測値について示したのが図7である。なお、図7は、本発明によって算出された予測値(黒四角印)に対して、測定値(黒丸印)、そして比較のために、平滑化定数を一定(λ=0.3)として算出した予測値(黒三角印)について示している。また、図7では、20ラン目以降についても上記の算出処理を行ったエッチングレートおよびその測定値について示している。
【0102】
図7によれば、測定値のエッチングレートは、測定開始直後、測定値にぶれがあるものの、エッチングレートが5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まっている。その後、測定値のエッチングレートは、15ラン目から17ラン目で大きく増加し、そして、17ラン目から19ラン目で大きく減少し、5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まっている。
【0103】
これに対して、本発明により算出した予測値では、算出開始直後は、測定値と同様に、予測値が5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まっている。その後、15ラン目から17ラン目で測定値が増加すると、これに迅速に追随するように、16ラン目から19ラン目で増加する。そして、17ラン目から19ラン目で測定値が減少して、5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まると、本発明による予測値も、19ラン目から20ラン目で減少し、5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まる。
【0104】
なお、参考までに示した平滑化定数λ=0.3に固定して予測値(以後、「固定予測値」と呼ぶ)を算出した場合では、測定値の増加にともなって、固定予測値もなだらかに増加している。しかし、測定値が減少しても、固定予測値はゆっくり減少して、5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まるまでに時間を要していることがわかる。
【0105】
このように、本発明によって算出された予測値は、測定値の大きな変動が生じても、迅速に追随できることがわかる。
(実施例2)
実施例2では実施例1と同様に本実施の形態に基づいて予測値を算出する。
【0106】
図8は、実施例2における平滑化定数を示すグラフ、図9は、実施例2におけるエッチングレートを示すグラフである。
図8は、図6と同様に、縦軸に平滑化定数、横軸にラン数を示しており、上記実施の形態に基づいて平滑化定数算出部34,35dで算出された平滑化定数λi(図8(A))および平滑化定数λ’i(図8(B))をランごとにグラフに示している。なお、平滑化定数λi,λ’iはiラン目の平滑化定数である。
【0107】
実施例2では、実施例1と同様にして平滑化定数λ,λ’を算出しており、その結果を図8に示している。なお、実施例2でも制約条件(平滑化定数Λ=0.5)を設定しており、平滑化定数λが0.5となっているものは、当初の算出では、平滑化定数λが0.5を超えているものである。
【0108】
このような平滑化定数λ,λ’を適用して算出した予測値について示したものが図9である。図9でも、本発明によって算出された予測値が、固定予測値の場合よりも、測定値の変動に対して、迅速に追随していることがわかる。
【0109】
(実施例3)
実施例3では実施例1および実施例2と同様に本実施の形態に基づいて予測値を算出する。
【0110】
図10は、実施例3における平滑化定数を示すグラフ、図11は、実施例3におけるエッチングレートを示すグラフである。
図10は、図6および図8と同様に、縦軸に平滑化定数、横軸にラン数を示し、実施例1における平滑化定数算出部34,35dで算出された平滑化定数λi(図10(A))および平滑化定数λ’i(図10(B))をランごとにグラフに示している。なお、平滑化定数λi,λ’iはiラン目の平滑化定数であることを示す。
【0111】
実施例3では、実施例1および実施例2と同様にして平滑化定数λ,λ’を算出しており、その結果を図10に示している。これによれば、16ラン目で算出された平滑化定数λ’が閾値よりも小さくなっているため、測定値データ保存部31の最新の測定値以外のデータの削除を行うようにしている。なお、実施例3でも同様に制約条件(平滑化定数Λ=0.5)を設定している。
【0112】
このような平滑化定数λ,λ’を適用して算出した予測値について示したものが図11である。図11でも、本発明によって算出された予測値が、固定予測値の場合よりも、測定値の変動に対して、迅速に追随していることがわかる。
【0113】
なお、従来の平滑化定数を固定する方法でも、MSEが最小になる平滑化定数(制約条件を適用する前の平滑化定数)の値を毎回監視して、測定値データ保存部のデータを削除する必要があるかどうかを判定し、測定データ保存部のデータを削除する必要があると判定した場合、最新の測定値以外のデータを削除する処理を行うことにより、従来の方法でも、予測精度をある程度向上させることができる。
【0114】
また、本実施の形態では、対象となる加工物として半導体デバイスの場合を例にして説明したが、その他、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などにも適用させることが可能である。
【0115】
以上、本実施の形態で説明したように、測定値取得部が測定装置によって測定されたある加工物の、例えば膜厚などの測定値を取得し、測定値データ保存部に保存して、平滑化定数算出部が、取得した測定値と予測値とから平滑化定数を算出して、リセット判定部が、平滑化定数算出部で算出されるごとに平滑化定数を監視し、平滑化定数に従って、測定値データ保存部のデータを削除するか判定して、リセット部が、リセット判定部が測定値データ保存部のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部の最新の測定値以外のデータを削除して、予測値算出部が、リセット判定部が測定値データ保存部のデータを削除しないと判定した場合、平滑化定数と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する。
【0116】
従来は、測定値を新たに取得しても一定の平滑化定数をEWMAモデルに適用させて予測値を算出していたが、本発明の予測装置では、測定値ごとに最適な平滑化定数を算出して、そのような平滑化定数をEWMAモデルに適用させて予測値を算出することによって、プロセス制御装置の状態の急激な変動の発生やプロセス制御装置自体が不安定であっても、測定値ごとに平滑化定数を適用させることにより、自動的に予測精度を向上させることができ、製造ばらつきを低減させることができるようになる。
【0117】
(付記1) 対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測装置において、
処理結果の測定値を取得する測定値取得部と、
前記測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部と、
前記指数加重移動平均モデルに平滑化定数と前記測定値とを適用して予測値を算出する予測値算出部と、
前記測定値および前記予測値を用いて、前記平滑化定数を更新する平滑化定数算出部と、
前記平滑化定数を更新するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定するリセット判定部と、
前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除するリセット部と、
を有することを特徴とする予測装置。
【0118】
(付記2) 前記平滑化定数算出部は、前記測定値と前記予測値との平均二乗誤差が最小になる前記平滑化定数を算出することを特徴とする付記1記載の予測装置。
(付記3) 前記リセット判定部は、
別の測定値をデータとして保存する別の測定値データ保存部と、
前記別の測定値を取得する別の測定値取得部と、
前記別の測定値および別の予測値を用いて、前記別の測定値と前記別の予測値との平均二乗誤差が最小となる別の平滑化定数を算出する別の平滑化定数算出部と、
前記別の平滑化定数が1、または、あらかじめ設定した閾値より大きい場合、前記別の測定値データ保存部の最新の前記別の測定値を削除するデータ削除部と、
前記データ削除部が最新の前記別の測定値を削除した場合、前記測定値データ保存部を削除しないと判定し、前記別の平滑化定数が前記閾値以下の場合、前記測定値データ保存部を削除すると判定する平滑化定数判定部と、
を有し、前記平滑化定数判定部の判定にしたがって、前記リセット部および前記予測値算出部が処理を行うことを特徴とする付記1または2記載の予測装置。
【0119】
(付記4) 前記平滑化定数算出部で算出された前記平滑化定数が、あらかじめ設定された上限値を超えた場合、前記平滑化定数として前記上限値を算出することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の予測装置。
【0120】
(付記5) 対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測方法において、
測定値データ保存部が前記処理結果の測定値をデータとして順に保存し、
測定値取得部が前記測定値を取得し、
平滑化定数算出部が前記測定値および予測値を用いて、前記指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出し、
リセット判定部が前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定し、
リセット部が前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除し、
予測値算出部が前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する、
ことを特徴とする予測方法。
【0121】
(付記6) 前記平滑化定数算出部は、前記測定値と前記予測値との平均二乗誤差が最小になる前記平滑化定数を算出することを特徴とする付記5記載の予測方法。
(付記7) 前記リセット判定部は、
別の測定値データ保存部が別の測定値をデータとして保存し、
別の測定値取得部が前記別の測定値を取得し、
別の平滑化定数算出部が前記別の測定値および別の予測値を用いて、前記別の測定値と前記別の予測値との平均二乗誤差が最小となる別の平滑化定数を算出し、
データ削除部が、前記別の平滑化定数が1、または、あらかじめ設定した閾値より大きい場合、前記別の測定値データ保存部の最新の前記別の測定値を削除し、
平滑化定数判定部が、前記データ削除部が最新の前記別の測定値を削除した場合、前記測定値データ保存部を削除しないと判定し、前記別の平滑化定数が前記閾値以下の場合、前記測定値データ保存部を削除すると判定して、
前記平滑化定数判定部の判定にしたがって、前記リセット部および前記予測値算出部が処理を行うことを特徴とする付記5または6に記載の予測方法。
【0122】
(付記8) 前記平滑化定数算出部で算出された前記平滑化定数が、あらかじめ設定された上限値を超えた場合、前記平滑化定数として前記上限値を算出することを特徴とする付記5乃至7のいずれか1項に記載の予測方法。
【0123】
(付記9) 対象物の処理結果を測定する測定装置と、
前記処理結果の測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部と、前記測定値を取得する測定値取得部と、前記測定値および予測値を用いて、指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出する平滑化定数算出部と、前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定するリセット判定部と、前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除するリセット部と、前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する予測値算出部と、を有する予測装置と、
前記予測値を利用して前記対象物に処理を施す処理装置と、
を備えることを特徴とするプロセス制御システム。
【0124】
(付記10) 前記平滑化定数算出部は、前記測定値と前記予測値との平均二乗誤差が最小になる前記平滑化定数を算出することを特徴とする付記9記載のプロセス制御システム。
【0125】
(付記11) 前記リセット判定部は、
別の測定値をデータとして保存する別の測定値データ保存部と、
前記別の測定値を取得する別の測定値取得部と、
前記別の測定値および別の予測値を用いて、別の平滑化定数を算出する別の平滑化定数算出部と、
前記別の平滑化定数が1、または、あらかじめ設定した閾値より大きい場合、前記別の測定値データ保存部の最新の前記別の測定値を削除するデータ削除部と、
前記データ削除部が最新の前記別の測定値を削除した場合、前記測定値データ保存部を削除しないと判定し、前記別の平滑化定数が前記閾値以下の場合、前記測定値データ保存部を削除すると判定する平滑化定数判定部と、
を有し、前記平滑化定数判定部の判定にしたがって、前記リセット部および前記予測値算出部が処理を行うことを特徴とする付記9または10記載のプロセス制御システム。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の予測装置における概要図である。
【図2】本実施の形態におけるプロセス制御システムを示すブロック図である。
【図3】本実施の形態における予測装置のブロック図である。
【図4】本実施の形態における予測装置の予測方法を示すフローチャート図である。
【図5】本実施の形態における予測装置のリセット判定部のリセット判定方法を示すフローチャート図である。
【図6】実施例1における平滑化定数を示すグラフである。
【図7】実施例1におけるエッチングレートを示すグラフである。
【図8】実施例2における平滑化定数を示すグラフである。
【図9】実施例2におけるエッチングレートを示すグラフである。
【図10】実施例3における平滑化定数を示すグラフである。
【図11】実施例3におけるエッチングレートを示すグラフである。
【符号の説明】
【0127】
10 予測装置
11 測定値データ保存部
12 予測値データ保存部
13 測定値取得部
14 平滑化定数算出部
15 リセット判定部
16 リセット部
17 予測値算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は予測装置、予測方法およびプロセス制御システムに関し、特に対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測装置、予測方法およびプロセス制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスでは、コンピュータの主要機能を1つのチップに詰め込んだSoC(System on a Chip)などの多品種少量生産に対応した技術の確立に向けた開発が進められている。そして、半導体デバイスの微細化が進むにつれて、プロセス結果のばらつきに対する製造装置側のマージンが著しく縮小されてきているため、半導体デバイスの生産ラインではプロセス結果のばらつきを減らすAPC(Advanced Process Control)技術の導入が進んでいる。
【0003】
APC技術において、ランツゥラン(Run-to-Run)制御により、前回の処理の測定結果から、次回の処理の測定結果の予測が行われている。例えば、半導体デバイスの生産ラインなどにおいて、エッチング処理が行われた膜厚の測定結果から、次回のエッチング処理が行われた時の膜厚の測定結果の予測が行われ、所望の膜厚が得られるように次回の処理レシピのパラメータを調節することが自動的に行われる。
【0004】
さらに、APC技術を多品種少量生産に対応させるためには、プロセス状態の変化や外乱に対して迅速に追随できるプロセス制御技術の確立が望まれている。そこでの、ランツゥラン制御においては、例えば、EWMA(Exponentially Weighted Moving Average:指数加重移動平均)モデルなどが広く用いられており(例えば、特許文献1参照)、EWMAモデルは、一般に次式で表すことができる。
【0005】
次回の予測値=λ×今回の測定値+(1−λ)×前回の予測値・・・・・・式(1)
=前回の予測値+λ×(今回の測定値−前回の予測値)・・・式(2)
ただし、λは平滑化定数と呼ばれ、一般に、0と1の間の値が使われる。
【0006】
そして、式(2)は、今回の測定値と前回の予測値との差によって前回の予測値のずれ具合を算出し、その値に一定の平滑化定数を乗じて得た値を前回の予測値に加減して次回の予測値を算出している。また、式(2)では、今回の測定値は前回の予測値のずれ具合を示す値の算出に利用されているが、平滑化定数が0.5未満の場合に次回の予測値への影響が大きいのは前回の予測値である。つまり、小さな平滑化定数を使うことによりプロセス状態の変動などによる特異な測定値が得られた場合の次回への予測値への影響を抑えることができる。
【0007】
さらに、式(2)は前回の予測値と今回の測定値とがあれば、次回の予測値を算出できる簡便さも特徴である。ただし、前回の予測値は前々回の予測値から算出されるため、連続する過去の予測値の影響がわずかではあるが残ると考えられる。
【0008】
そして、平滑化定数はこの過去の予測値の影響度も決定し、平滑化定数が1に近いほど直近の測定値を重視し、0に近いほど過去の経過を重視することになる。通常、平滑化定数は0.2から0.3が適当であるといわれている。
【特許文献1】特表2004−509407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、既述のように、EWMAモデルでは、蓄積された過去のプロセス結果のデータを解析して算出された適切な一定の平滑化定数が用いられて計算が行われていたため、製造装置のプロセス状態が急に変動した場合や、製造装置自体が不安定である場合などに、制御特性が劣化するという問題点があった。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、EWMAモデルに適用される最適な平滑化定数を処理ごとに自動的に求めることによって、次回の処理結果の予測精度を向上させ、プロセス状態の急激な変化に迅速に追随させて制御精度を向上させた予測装置、予測方法およびプロセス制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では上記課題を解決するために、対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測装置10において、図1に示すように、処理結果の測定値を取得する測定値取得部13と、測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部11と、指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値を算出する予測値算出部17と、測定値および予測値を用いて、平滑化定数を更新する平滑化定数算出部14と、平滑化定数を更新するごとに測定値データ保存部11のデータの削除を判定するリセット判定部15と、リセット判定部15によりデータを削除する場合は、測定値データ保存部11の最新の測定値以外のデータを削除するリセット部16と、を有することを特徴とする予測装置10が提供される。
【0012】
このような予測装置によれば、測定値取得部によって取得された測定値データ保存部の処理結果の測定値と、予測値データ保存部の予測値とを用いて、平滑化定数算出部で指数加重移動平均モデルに適用される平滑化定数が算出され、リセット判定部によって測定値データ保存部のデータの削除が判定されて、データを削除する場合は、リセット部が測定値データ保存部の最新の測定値以外のデータを削除し、データを削除しない場合は、予測値算出部が指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値を算出するようになる。
【0013】
また、本発明では上記課題を解決するために、対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測方法において、測定値データ保存部が前記処理結果の測定値をデータとして順に保存し、測定値取得部が前記測定値を取得し、平滑化定数算出部が前記測定値および予測値を用いて、前記指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出し、リセット判定部が前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定し、リセット部が前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除し、予測値算出部が前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する、ことを特徴とする予測方法が提供される。
【0014】
このような予測方法によれば、測定値データ保存部に処理結果の測定値がデータとして順に保存され、測定値取得部によって測定値が取得され、平滑化定数算出部によって測定値および予測値を用いて、指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数が算出され、リセット判定部によって平滑化定数を算出するごとに測定値データ保存部のデータの削除が判定され、リセット部によってリセット判定部によりデータを削除する場合は、測定値データ保存部の最新の測定値以外のデータが削除され、予測値算出部によってリセット判定部によりデータを削除しない場合は、指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値が算出される。
【0015】
また、本発明では上記課題を解決するために、対象物の処理結果を測定する測定装置と、前記処理結果の測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部と、前記測定値を取得する測定値取得部と、前記測定値および予測値を用いて、指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出する平滑化定数算出部と、前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定するリセット判定部と、前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除するリセット部と、前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する予測値算出部と、を有する予測装置と、前記予測値を利用して前記対象物に処理を施す処理装置と、を備えるプロセス制御システムが提供される。
【0016】
このようなプロセス制御システムでは、測定装置によって対象物の処理結果が測定され、予測装置によって測定値データ保存部に処理結果の測定値がデータとして順に保存され、測定値取得部によって測定値が取得され、平滑化定数算出部によって測定値および予測値を用いて、指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数が算出され、リセット判定部によって平滑化定数を算出するごとに測定値データ保存部のデータの削除が判定され、リセット部によってリセット判定部によりデータを削除する場合は、測定値データ保存部の最新の測定値以外のデータが削除され、予測値算出部によってリセット判定部によりデータを削除しない場合は、指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値が算出され、処理装置によって予測値を利用して対象物に処理が施されるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、測定値取得部によって取得された測定値データ保存部の処理結果の測定値と、予測値データ保存部の予測値とを用いて、平滑化定数算出部が指数加重移動平均モデルに適用される平滑化定数を算出し、リセット判定部が測定値データ保存部のデータの削除を判定して、データを削除する場合は、リセット部が測定値データ保存部の最新の測定値以外のデータを削除し、データを削除しない場合は、予測値算出部が指数加重移動平均モデルに平滑化定数と測定値とを適用して予測値を算出するようにした。これにより、プロセス制御装置の状態の急激な変動の発生やプロセス制御装置自体が不安定であっても、測定値を取得するごとに最適な平滑化定数を適用させることにより、自動的に予測精度を向上させることができ、製造ばらつきを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の概要について図面を参照して説明し、その後に、本発明の概要に基づいた実施の形態および本実施の形態を具体的に利用した実施例について、同様に図面を参照して説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0019】
では、本発明の概要について図1を用いて以下に説明する。
図1は、本発明の予測装置における概要図である。
予測装置10は、測定値データ保存部11、予測値データ保存部12、測定値取得部13、平滑化定数算出部14、リセット判定部15、リセット部16および予測値算出部17から構成されている。
【0020】
なお、このような予測装置10は、例えば、処理装置および測定装置などと合わせてプロセス制御装置にて利用される。具体的には、処理装置にて処理が施されたある加工物に対して、測定装置にて測定されたその加工物のサイズなどの測定値から予測装置10にて次回の処理結果の予測値を算出し、算出した予測値を処理装置に適用させて、再び処理を行うようなプロセス制御装置に適用させる場合が考えられる。そして、予測装置10の各構成要素は以下のような動作を行う。
【0021】
測定値データ保存部11は、測定装置(不図示)によって測定されて、後に説明する測定値取得部13によって取得された測定値を時系列的に保存する。
予測値データ保存部12は、測定値データ保存部11に保存された測定値を用いて算出された予測値を保存する。後に説明する平滑化定数算出部14でEWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する際に用いる。
【0022】
測定値取得部13は、測定装置(不図示)によって測定された測定値を取得し、測定値データ保存部11に保存する。
平滑化定数算出部14は、測定値データ保存部11および予測値データ保存部12にそれぞれ保存されている測定値および予測値を用いて、EWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する。
【0023】
リセット判定部15は、平滑化定数算出部14によって平滑化定数が算出されるごとに、測定値データ保存部11のデータの削除を判定する。
リセット部16は、リセット判定部15にて測定値データ保存部11のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部11の取得した最新の測定値以外のデータを削除する。
【0024】
予測値算出部17は、リセット判定部15にて測定値データ保存部11のデータを削除しないと判定した場合、EWMAモデルに平滑化定数と測定値とを適用して、予測値を算出する。
【0025】
このような構成要素からなる予測装置10の予測方法の概要について、以下に説明する。
まず、測定値取得部13が測定装置(不図示)によって測定されたある加工物の例えば、膜厚などの測定値を取得し、測定値データ保存部11に保存する。
【0026】
平滑化定数算出部14が、取得した測定値と予測値とから平滑化定数を算出する。
リセット判定部15が、平滑化定数算出部14で平滑化定数が算出されるごとに、平滑化定数を監視して、測定値データ保存部11のデータを削除するかを判定する。
【0027】
リセット部16は、リセット判定部15が測定値データ保存部11のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部11の最新の測定値以外のデータを削除する。
予測値算出部17は、リセット判定部15が測定値データ保存部11のデータを削除しないと判定した場合、平滑化定数と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する。
【0028】
そして、このようにして算出した予測値を処理装置(不図示)へ反映させて処理を行う。さらに、測定装置(不図示)によって処理が施された加工物を測定して、再び、測定値取得部13によって測定値が取得されて、以上のような予測値算出処理が、所望の回数繰り返される。
【0029】
このように、従来は、測定値を新たに取得しても一定の平滑化定数をEWMAモデルに適用させて予測値を算出していたが、本発明の予測装置では、測定値を取得するごとに平滑化定数を算出して、そのような平滑化定数をEWMAモデルに適用させて予測値を算出することによって、プロセス制御装置の状態の急激な変動の発生やプロセス制御装置自体が不安定であっても、測定値を取得するごとに最適な平滑化定数を適用させることにより、自動的に予測精度を向上させることができ、製造ばらつきを低減させることができるようになる。
【0030】
次に、実施の形態について図面を参照して以下に説明する。
本実施の形態では、上記本発明の概要に基づいて、半導体デバイスのプロセス制御の場合を例に挙げて説明する。
【0031】
図2は、本実施の形態におけるプロセス制御システムを示すブロック図である。
プロセス制御システム20は、測定装置21、予測装置30、最適レシピパラメータ算出部22および処理装置23から構成されている。
【0032】
測定装置21は、半導体デバイスの膜厚、トレンチ深さ、ゲート幅などを測定する。
予測装置30は、測定装置21で測定した膜厚、トレンチ深さ、ゲート幅などの測定値に対して、次回再び測定される測定値の予測値を算出する。なお、予測装置30については後ほど詳細に説明を行う。
【0033】
最適レシピパラメータ算出部22は、予測装置30で算出された予測値を利用して、次回に所望の測定値が得られるように次の処理で利用されるレシピのパラメータを調整する。
【0034】
処理装置23は、最適レシピパラメータ算出部22で算出されたレシピのパラメータを利用して、半導体デバイスに対してエッチングやCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)などの処理を行う。
【0035】
このような構成要素からなるプロセス制御システム20の動作原理について、以下に半導体デバイスに対して処理としてエッチングを行って、測定値として膜厚を測定する場合について説明する。
【0036】
測定装置21によって、半導体デバイスの膜厚を測定する。
予測装置30は、測定装置21が測定した膜厚のデータを取得する。そして、予測装置30は、半導体デバイスに対して次回行われるエッチング処理後、再び測定装置21にて測定される膜厚の予測値を算出する。
【0037】
最適レシピパラメータ算出部22は、予測装置30が算出した予測値から、次回に所望の測定値が得られるように次のエッチング処理で利用されるレシピのパラメータを算出する。
【0038】
処理装置23は、最適レシピパラメータ算出部22で算出されたレシピのパラメータを利用して、半導体デバイスにエッチング処理を行う。
再び、測定装置21は、エッチング処理が行われた半導体デバイスの膜厚を測定して、上記プロセス制御を所望の回数繰り返す。
【0039】
このようなプロセス制御システム20の構成要素の1つである予測装置30について以下に説明する。
図3は、本実施の形態における予測装置のブロック図である。
【0040】
予測装置30は、測定値データ保存部31、予測値データ保存部32、測定値取得部33、平滑化定数算出部34、リセット判定部35、リセット部36および予測値算出部37から構成されている。
【0041】
測定値データ保存部31は、測定装置21によって測定されて、後に説明する測定値取得部33によって取得された測定値を時系列的に保存する。
予測値データ保存部32は、測定データ保存部31に保存されている測定値を用いて算出された予測値を保存する。後に説明する平滑化定数算出部34でEWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する際に用いる。
【0042】
測定値取得部33は、測定装置21によって測定された測定値を取得し、測定値データ保存部31に保存する。
平滑化定数算出部34は、測定値データ保存部31および予測値データ保存部32にそれぞれ保存されている測定値および予測値を用いて、EWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する。
【0043】
リセット判定部35は、さらに、測定値データ保存部35a、予測値データ保存部35b、測定値取得部35c、平滑化定数算出部35d、平滑化定数判定部35e、予測値算出部35fおよびデータ削除部35gから構成されており、平滑化定数算出部34によって平滑化定数が算出されるごとに、測定値データ保存部31のデータの削除を判定する。
【0044】
測定値データ保存部35aは、測定装置21によって測定されて、後に説明する測定値取得部35cによって取得された測定値を時系列的に保存する。
予測値データ保存部35bは、予測値算出部35fによって算出された予測値を保存する。後に説明する平滑化定数算出部35dでEWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する際に用いる。
【0045】
測定値取得部35cは、図2に示した測定装置21によって測定された測定値を取得し、測定値データ保存部35aに保存する。
平滑化定数算出部35dは、測定値データ保存部35aおよび予測値データ保存部35bにそれぞれ保存されている測定値および予測値を用いて、EWMAモデルに適用させる平滑化定数を算出する。なお、平滑化定数の算出方法には、平均二乗誤差に測定値および予測値を適用させる。すなわち、測定値および予測値が適用された平均二乗誤差が最小になるように平滑化定数を決めることで算出する。
【0046】
平滑化定数判定部35eは、平滑化定数が1であるか、または、あらかじめ設定された閾値よりも大きいか否かを判定する。
予測値算出部35fは、EWMAモデルに平滑化定数と測定値とを適用して、予測値を算出する。
【0047】
以上が、リセット判定部35の構成である。以下に予測装置30の構成の説明を続ける。
リセット部36は、リセット判定部35の平滑化定数判定部35eにて測定値データ保存部31のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部31の取得した最新の測定値以外のデータを削除する。
【0048】
予測値算出部37は、リセット判定部35の平滑化定数判定部35eにて測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定した場合、EWMAモデルに平滑化定数と測定値とを適用して、予測値を算出する。
【0049】
以上のように本実施の形態における予測装置30が構成される。
次に、このような構成要素からなる予測装置30の予測方法について説明する。
本実施の形態における予測装置30の予測方法は、本発明の概要で説明したように、まず、測定値取得部33が測定装置21によって測定された半導体デバイスの膜厚などの測定値を取得し、測定値データ保存部31に保存する。
【0050】
平滑化定数算出部34が、取得した測定値と予測値の初期値とから平滑化定数を算出する。
リセット判定部35が、平滑化定数算出部34で算出された平滑化定数を監視して、平滑化定数に従って、測定値データ保存部31のデータを削除するか判定する。
【0051】
リセット部36は、リセット判定部35の平滑化定数判定部35eが測定値データ保存部31のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部31の最新の測定値以外のデータを削除する。
【0052】
予測値算出部37は、リセット判定部35の平滑化定数判定部35eが測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定した場合、平滑化定数と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する。
【0053】
そして、このようにして算出した予測値を処理装置23などへ反映させて処理を行う。さらに、測定装置21によってエッチング処理が施された半導体デバイスの膜厚を測定して、再び、測定値取得部33によって測定値が取得されて、以上のような予測値の算出処理が、所望の回数繰り返される。
【0054】
一方、リセット判定部35では、予測装置30の平滑化定数算出部34が平滑化定数を算出するごとに、別途、平滑化定数算出部35dが別の平滑化定数を算出して、平滑化定数判定部35eが別の平滑化定数から、測定値データ保存部31のデータを削除するか判定し、その結果をリセット部36および予測値算出部37へ出力するようにしている。
【0055】
以下に、予測装置30およびリセット判定部35についてフローチャート図を用いて詳細に説明する。
図4は、本実施の形態における予測装置の予測方法を示すフローチャート図、図5は、本実施の形態における予測装置のリセット判定部のリセット判定方法を示すフローチャート図である。なお、本実施の形態では、予測装置30において測定値をM回測定することとして説明する。この回数はプロセス制御システムなどに応じて適宜決定することができる。
【0056】
まず、予測装置30の予測方法について図4を用いて以下に説明する。
[ステップS41] 測定値取得部33は、測定装置21で測定した測定値を取得する。
【0057】
[ステップS42] 測定値取得部33は、測定値データ保存部31に保存されているデータ数がN個未満であるか否かを判断する。N個未満でない、つまりN個以上であれば、ステップS43へ進められ、N個未満であれば、ステップS44へ進められる。なお、測定値データ保存部31に保存できるデータ数N個は適宜決定することができるが10個から30個程度とする。
【0058】
[ステップS43] 測定値取得部33は、測定値データ保存部31に保存されているデータ数がN個未満でない、つまりN個以上である場合、最も古い測定値データを削除してステップS44へ進められる。
【0059】
[ステップS44] 測定値取得部33は、測定値データ保存部31に保存されているデータ数がN個未満である場合、または、ステップS43から、新たに取得した測定値を測定値データ保存部31に保存する。
【0060】
[ステップS45] 平滑化定数算出部34は、測定値データ保存部31に保存されている測定値および、以下で説明する平滑化定数を用いて以下の(3)式から予測値を逐次計算し、予測値データ保存部32に保存する。
【0061】
Yi=λ×yi+(1−λ)×Yi-1・・・・・・・・・・式(3)
ただし、λは、平滑化定数で0≦λ≦1、Yiはi番目の予測値、yiはi番目の測定値
MSE=1/(N−1)×Σi=1m(yi+1−Yi)2・・・・式(4)
ただし、MSE(Mean Square Error)は平均二乗誤差、2≦m≦N−1、とする。
【0062】
そして、式(4)にて、平滑化定数λを0から1の間で例えば0.01刻みで変化させてMSEの値を最も小さくする平滑化定数λを算出する。
なお、制約条件として、あらかじめ平滑化定数λの上限の平滑化定数Λを設定しておいて、式(3)および式(4)で算出された平滑化定数λが制約条件を超える場合は、平滑化定数Λとして算出する。
【0063】
[ステップS46] リセット判定部35の平滑化定数判定部35eは、ステップS45において平滑化定数算出部34で平滑化定数λが算出されるたびに、測定値データ保存部31のデータを削除するか判定する。削除すると判定した場合は、ステップS47へ進められ、削除しないと判定した場合は、ステップS48へ進められる。なお、この判定については後ほど詳細に説明する。
【0064】
[ステップS47] リセット部36は、ステップS46で測定値データ保存部31のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部31の最新の測定値以外のデータを削除する。そしてステップS41へ進められる。
【0065】
[ステップS48] 予測値算出部37は、ステップS46で測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定した場合、ステップS45で算出した平滑化定数と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する。
【0066】
以上のステップがM回繰り返されて予測値が算出されて、予測値が算出されるごとに算出された予測値を利用してプロセス制御が行われる。
平滑化定数算出部34が平滑化定数λを算出するごとに、リセット判定部35でも、別途、算出した平滑化定数λ’によって、測定値データ保存部31のデータの削除が判定される。以下にリセット判定部35の判定方法について、図5を用いて以下に説明する。
【0067】
[ステップS51] 測定値取得部35cは、測定装置21で測定した測定値を取得する。
[ステップS52] 測定値取得部35cは、測定値データ保存部35aに保存されているデータ数がN個未満であるか否かを判断する。N個未満でない、つまりN個以上であれば、ステップS53へ進められ、N個未満であれば、ステップS54へ進められる。なお、測定値データ保存部35aに保存できるデータ数N個は適宜決定することができるが10個から30個程度とする。
【0068】
[ステップS53] 測定値取得部35cは、測定値データ保存部35aに保存されているデータ数がN個未満でない、つまりN個以上である場合、最も古い測定値データを削除してステップS54へ進められる。
【0069】
[ステップS54] 測定値取得部35cは、測定値データ保存部35aに保存されているデータ数がN個未満である場合、または、ステップS53から、新たに取得した測定値を測定値データ保存部35aに保存する。
【0070】
[ステップS55] 平滑化定数算出部35dは、測定値データ保存部35aおよび予測値データ保存部35bにそれぞれ保存されている測定値および予測値を、上記ステップS45と同様に式(3)および式(4)を用いて、MSEを最も小さくする平滑化定数λ’を算出する。
【0071】
[ステップS56] 平滑化定数判定部35eは、判定処理が初回またはデータリセット後初回であるか否かを判断する。初回であればステップS57へ進められ、初回でなければステップS58へ進められる。
【0072】
[ステップS57] 平滑化定数判定部35eは、ステップS55で算出した平滑化定数λ’が1であるか否かを判断する。1でない場合、ステップS60へ進められ、1である場合、ステップS59へ進められる。
【0073】
[ステップS58] 平滑化定数判定部35eは、ステップS55で算出した平滑化定数λ’があらかじめ設定した閾値以下であるか否かを判断する。閾値以下でない場合、つまり閾値よりも大きい場合、ステップS59へ進められ、閾値以下である場合、ステップS61へ進められる。
【0074】
[ステップS59] データ削除部35gは、測定値データ保存部35aの最新の測定値データを削除して、ステップS60へ進められる。
[ステップS60] 平滑化定数判定部35eは、測定値データ保存部31のデータを削除しないように判定する。そして、ステップS51へ進められる。
【0075】
[ステップS61] 平滑化定数判定部35eは、測定値データ保存部31のデータを削除するように判定する。
平滑化定数算出部34で平滑化定数λがM回算出されるたびに、以上のステップにより平滑化定数λ’が繰り返し算出され、データのリセットが判定される。
【0076】
次に、このような予測装置30を実際に利用して予測値を算出する場合について3つの実施例を挙げて、特に、平滑化定数算出部34,35dで算出される平滑化定数λ,λ’の変化に注目して説明する。このため、以下の実施例では、図4および図5のフローチャートを参照しながら説明を行う。なお、以下の実施例では、半導体デバイスのエッチングレートを測定した場合について説明する。エッチングレートは、エッチング後に膜厚を測定して得られるエッチング量をエッチング処理時間で割って求めた値である。したがって、エッチングレートは膜厚のデータを加工することによって得ることができる。このため、膜厚の測定装置とは別に、データ加工装置などが必要となる。しかし、以下に説明する実施例では、測定装置1つで膜厚の測定からエッチングレートの算出までを行うこととする。また、式(4)にて、平滑化定数λ,λ’は0から1の間を0.01間隔で変化させて、最小のMSEとなるような平滑化定数λ,λ’を算出するものとする。平滑化定数λには制約条件として平滑化定数Λ=0.5を、平滑化定数λ’に対して閾値(=0.3)を設定している。そして、比較のために、平滑化定数λ=0.3と固定した場合についても記載している。
【0077】
(実施例1)
実施例1は、エッチングレートが途中で大きく増加する場合を例に挙げて説明する。
図6は、実施例1における平滑化定数を示すグラフ、図7は、実施例1におけるエッチングレートを示すグラフである。
【0078】
図6は、縦軸に平滑化定数、横軸にラン数を示し、実施例1における平滑化定数算出部34,35dで算出された平滑化定数λi(図6(A))および平滑化定数λ’i(図6(B))をランごとにグラフに示している。なお、平滑化定数λi,λ’iはiラン目の平滑化定数であることを示す。
【0079】
まず、1ラン目から16ラン目までの平滑化定数λi,λ’iの算出について説明する。なお、以下の説明では、主に平滑化定数の算出に関する処理に触れるが、実際には図4および図5のフローチャートにしたがって処理が行われている。
【0080】
1ラン目では、図4にしたがって、測定値取得部33が半導体デバイスのエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
そして、平滑化定数算出部34は、測定値およびその予測値の初期値(この場合、1ラン目の前のランの測定値)により平滑化定数λ1を算出する(ステップS45)。
【0081】
一方、図5にしたがって、測定値取得部35cが、半導体デバイスのエッチングレートの測定値を取得する(ステップS51)。
そして、平滑化定数算出部35dが、同様に平滑化定数λ’1を算出する(ステップS55)。この時、算出した平滑化定数λ’1は1ではなく、平滑化定数判定部35eは測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定する(ステップS60)。
【0082】
その後、ステップS51へ進められ、2ラン目の算出が始まる。
図4に戻って、平滑化定数判定部35eの判定により、予測値算出部37は平滑化定数λ1と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する(ステップS48)。
【0083】
2ラン目では、再び、図4にしたがって、測定値取得部33がエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
そして、平滑化定数算出部34は、測定値およびその予測値により平滑化定数λ2を算出する(ステップS45)。
【0084】
一方、図5にしたがって、測定値取得部35cが、エッチングレートの測定値を取得する(ステップS51)。
そして、平滑化定数算出部35dが、同様に平滑化定数λ’2を算出する(ステップS55)。この時、算出した平滑化定数λ’2は1ではなく、平滑化定数判定部35eは測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定する(ステップS60)。
【0085】
その後、ステップS51へ進められ、3ラン目の算出が始まる。
図4に戻って、平滑化定数判定部35eの判定により、予測値算出部37は平滑化定数λ2と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する(ステップS48)。
【0086】
以上のように、図4および図5のフローチャートにしたがって、図6に示すように、次々と16ラン目までの平滑化定数λ,λ’が算出される。ちなみにこの例であれば、16ラン目までの平滑化定数λ,λ’は同じ値が算出される。
【0087】
次に、17ラン目から19ラン目までの平滑化定数λi,λ’iの算出について説明する。
17ラン目では、図4にしたがって、測定値取得部33がエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
【0088】
そして、平滑化定数算出部34は、測定値およびその予測値により平滑化定数λ17を算出する(ステップS45)。ただし、平滑化定数λ17=1であるため、制約条件(平滑化定数Λ=0.5)によって、平滑化定数λ17=0.5と算出される。
【0089】
一方、図5にしたがって、測定値取得部35cが、エッチングレートの測定値を取得する(ステップS51)。
そして、平滑化定数算出部35dが、同様に平滑化定数λ’17を算出する(ステップS55)。この時、算出した平滑化定数λ’17は1であって、データ削除部35gは、測定値データ保存部35aに保存した最新の測定値データを削除し(ステップS59)、平滑化定数判定部35eは測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定する(ステップS60)。
【0090】
その後、ステップS51へ進められ、18ラン目の算出が始まる。
図4に戻って、平滑化定数判定部35eの判定により、予測値算出部37は平滑化定数λ17と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する(ステップS48)。
【0091】
18ラン目では、図4にしたがって、測定値取得部33がエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
そして、平滑化定数算出部34は、測定値およびその予測値により平滑化定数λ18を算出する(ステップS45)。ただし、平滑化定数λ18=0.8であるため、制約条件(平滑化定数Λ=0.5)によって、平滑化定数λ18=0.5と算出される。
【0092】
一方、図5にしたがって、測定値取得部35cが、エッチングレートの測定値を取得する(ステップS51)。
平滑化定数算出部35dが、同様に平滑化定数λ’18を算出する(ステップS55)。
【0093】
平滑化定数判定部35eは、今回の判定処理が初回でなく、またデータリセット後の初回でもないと判断する(ステップS56)。
平滑化定数判定部35eは、平滑化定数λ’18と閾値(=0.3)との大小関係を判定して、閾値よりも大きいと判断する(ステップS58)。
【0094】
データ削除部35gは、測定値データ保存部35aに保存した最新の測定値データを削除する(ステップS59)。
そして、平滑化定数判定部35eは測定値データ保存部31のデータを削除しないと判定する(ステップS60)。
【0095】
その後、ステップS51へ進められ、19ラン目の算出が始まる。
図4に戻って、平滑化定数判定部35eの判定により、予測値算出部37は平滑化定数λ18と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する(ステップS48)。
【0096】
19ラン目では、図4にしたがって、測定値取得部33がエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
そして、平滑化定数算出部34は、測定値およびその予測値により平滑化定数λ19を算出する(ステップS45)。
【0097】
一方、図5にしたがって、測定値取得部35cが、エッチングレートの測定値を取得する(ステップS51)。
平滑化定数算出部35dが、同様に平滑化定数λ’19を算出する(ステップS55)。
【0098】
平滑化定数判定部35eは、今回の判定処理が初回でなく、またデータリセット後の初回でもないと判断する(ステップS56)。
平滑化定数判定部35eは、平滑化定数λ’19=0.2と閾値(=0.3)との大小関係を判定して、閾値よりも小さいと判断する(ステップS58)。
【0099】
平滑化定数判定部35eは測定値データ保存部31のデータを削除すると判定する(ステップS61)。
図4に戻って、平滑化定数判定部35eの判定により、リセット部36が、測定値データ保存部31の最新の測定値以外のデータを削除する(ステップS47)。
【0100】
なお、20ラン目では、図4にしたがって、測定値取得部33がエッチングレートの測定値を取得する(ステップS41)。
そして、平滑化定数算出部34は、測定値とその前回(19ラン目)の測定値を予測値の初期値として平滑化定数λ20を算出する(ステップS45)。
【0101】
以上の判定処理を行って算出した平滑化定数λ,λ’を適用して得られたエッチングレートの予測値について示したのが図7である。なお、図7は、本発明によって算出された予測値(黒四角印)に対して、測定値(黒丸印)、そして比較のために、平滑化定数を一定(λ=0.3)として算出した予測値(黒三角印)について示している。また、図7では、20ラン目以降についても上記の算出処理を行ったエッチングレートおよびその測定値について示している。
【0102】
図7によれば、測定値のエッチングレートは、測定開始直後、測定値にぶれがあるものの、エッチングレートが5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まっている。その後、測定値のエッチングレートは、15ラン目から17ラン目で大きく増加し、そして、17ラン目から19ラン目で大きく減少し、5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まっている。
【0103】
これに対して、本発明により算出した予測値では、算出開始直後は、測定値と同様に、予測値が5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まっている。その後、15ラン目から17ラン目で測定値が増加すると、これに迅速に追随するように、16ラン目から19ラン目で増加する。そして、17ラン目から19ラン目で測定値が減少して、5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まると、本発明による予測値も、19ラン目から20ラン目で減少し、5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まる。
【0104】
なお、参考までに示した平滑化定数λ=0.3に固定して予測値(以後、「固定予測値」と呼ぶ)を算出した場合では、測定値の増加にともなって、固定予測値もなだらかに増加している。しかし、測定値が減少しても、固定予測値はゆっくり減少して、5.2nm/sから5.4nm/sの間に収まるまでに時間を要していることがわかる。
【0105】
このように、本発明によって算出された予測値は、測定値の大きな変動が生じても、迅速に追随できることがわかる。
(実施例2)
実施例2では実施例1と同様に本実施の形態に基づいて予測値を算出する。
【0106】
図8は、実施例2における平滑化定数を示すグラフ、図9は、実施例2におけるエッチングレートを示すグラフである。
図8は、図6と同様に、縦軸に平滑化定数、横軸にラン数を示しており、上記実施の形態に基づいて平滑化定数算出部34,35dで算出された平滑化定数λi(図8(A))および平滑化定数λ’i(図8(B))をランごとにグラフに示している。なお、平滑化定数λi,λ’iはiラン目の平滑化定数である。
【0107】
実施例2では、実施例1と同様にして平滑化定数λ,λ’を算出しており、その結果を図8に示している。なお、実施例2でも制約条件(平滑化定数Λ=0.5)を設定しており、平滑化定数λが0.5となっているものは、当初の算出では、平滑化定数λが0.5を超えているものである。
【0108】
このような平滑化定数λ,λ’を適用して算出した予測値について示したものが図9である。図9でも、本発明によって算出された予測値が、固定予測値の場合よりも、測定値の変動に対して、迅速に追随していることがわかる。
【0109】
(実施例3)
実施例3では実施例1および実施例2と同様に本実施の形態に基づいて予測値を算出する。
【0110】
図10は、実施例3における平滑化定数を示すグラフ、図11は、実施例3におけるエッチングレートを示すグラフである。
図10は、図6および図8と同様に、縦軸に平滑化定数、横軸にラン数を示し、実施例1における平滑化定数算出部34,35dで算出された平滑化定数λi(図10(A))および平滑化定数λ’i(図10(B))をランごとにグラフに示している。なお、平滑化定数λi,λ’iはiラン目の平滑化定数であることを示す。
【0111】
実施例3では、実施例1および実施例2と同様にして平滑化定数λ,λ’を算出しており、その結果を図10に示している。これによれば、16ラン目で算出された平滑化定数λ’が閾値よりも小さくなっているため、測定値データ保存部31の最新の測定値以外のデータの削除を行うようにしている。なお、実施例3でも同様に制約条件(平滑化定数Λ=0.5)を設定している。
【0112】
このような平滑化定数λ,λ’を適用して算出した予測値について示したものが図11である。図11でも、本発明によって算出された予測値が、固定予測値の場合よりも、測定値の変動に対して、迅速に追随していることがわかる。
【0113】
なお、従来の平滑化定数を固定する方法でも、MSEが最小になる平滑化定数(制約条件を適用する前の平滑化定数)の値を毎回監視して、測定値データ保存部のデータを削除する必要があるかどうかを判定し、測定データ保存部のデータを削除する必要があると判定した場合、最新の測定値以外のデータを削除する処理を行うことにより、従来の方法でも、予測精度をある程度向上させることができる。
【0114】
また、本実施の形態では、対象となる加工物として半導体デバイスの場合を例にして説明したが、その他、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などにも適用させることが可能である。
【0115】
以上、本実施の形態で説明したように、測定値取得部が測定装置によって測定されたある加工物の、例えば膜厚などの測定値を取得し、測定値データ保存部に保存して、平滑化定数算出部が、取得した測定値と予測値とから平滑化定数を算出して、リセット判定部が、平滑化定数算出部で算出されるごとに平滑化定数を監視し、平滑化定数に従って、測定値データ保存部のデータを削除するか判定して、リセット部が、リセット判定部が測定値データ保存部のデータを削除すると判定した場合、測定値データ保存部の最新の測定値以外のデータを削除して、予測値算出部が、リセット判定部が測定値データ保存部のデータを削除しないと判定した場合、平滑化定数と測定値とをEWMAモデルに適用して、予測値を算出する。
【0116】
従来は、測定値を新たに取得しても一定の平滑化定数をEWMAモデルに適用させて予測値を算出していたが、本発明の予測装置では、測定値ごとに最適な平滑化定数を算出して、そのような平滑化定数をEWMAモデルに適用させて予測値を算出することによって、プロセス制御装置の状態の急激な変動の発生やプロセス制御装置自体が不安定であっても、測定値ごとに平滑化定数を適用させることにより、自動的に予測精度を向上させることができ、製造ばらつきを低減させることができるようになる。
【0117】
(付記1) 対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測装置において、
処理結果の測定値を取得する測定値取得部と、
前記測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部と、
前記指数加重移動平均モデルに平滑化定数と前記測定値とを適用して予測値を算出する予測値算出部と、
前記測定値および前記予測値を用いて、前記平滑化定数を更新する平滑化定数算出部と、
前記平滑化定数を更新するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定するリセット判定部と、
前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除するリセット部と、
を有することを特徴とする予測装置。
【0118】
(付記2) 前記平滑化定数算出部は、前記測定値と前記予測値との平均二乗誤差が最小になる前記平滑化定数を算出することを特徴とする付記1記載の予測装置。
(付記3) 前記リセット判定部は、
別の測定値をデータとして保存する別の測定値データ保存部と、
前記別の測定値を取得する別の測定値取得部と、
前記別の測定値および別の予測値を用いて、前記別の測定値と前記別の予測値との平均二乗誤差が最小となる別の平滑化定数を算出する別の平滑化定数算出部と、
前記別の平滑化定数が1、または、あらかじめ設定した閾値より大きい場合、前記別の測定値データ保存部の最新の前記別の測定値を削除するデータ削除部と、
前記データ削除部が最新の前記別の測定値を削除した場合、前記測定値データ保存部を削除しないと判定し、前記別の平滑化定数が前記閾値以下の場合、前記測定値データ保存部を削除すると判定する平滑化定数判定部と、
を有し、前記平滑化定数判定部の判定にしたがって、前記リセット部および前記予測値算出部が処理を行うことを特徴とする付記1または2記載の予測装置。
【0119】
(付記4) 前記平滑化定数算出部で算出された前記平滑化定数が、あらかじめ設定された上限値を超えた場合、前記平滑化定数として前記上限値を算出することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の予測装置。
【0120】
(付記5) 対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測方法において、
測定値データ保存部が前記処理結果の測定値をデータとして順に保存し、
測定値取得部が前記測定値を取得し、
平滑化定数算出部が前記測定値および予測値を用いて、前記指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出し、
リセット判定部が前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定し、
リセット部が前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除し、
予測値算出部が前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する、
ことを特徴とする予測方法。
【0121】
(付記6) 前記平滑化定数算出部は、前記測定値と前記予測値との平均二乗誤差が最小になる前記平滑化定数を算出することを特徴とする付記5記載の予測方法。
(付記7) 前記リセット判定部は、
別の測定値データ保存部が別の測定値をデータとして保存し、
別の測定値取得部が前記別の測定値を取得し、
別の平滑化定数算出部が前記別の測定値および別の予測値を用いて、前記別の測定値と前記別の予測値との平均二乗誤差が最小となる別の平滑化定数を算出し、
データ削除部が、前記別の平滑化定数が1、または、あらかじめ設定した閾値より大きい場合、前記別の測定値データ保存部の最新の前記別の測定値を削除し、
平滑化定数判定部が、前記データ削除部が最新の前記別の測定値を削除した場合、前記測定値データ保存部を削除しないと判定し、前記別の平滑化定数が前記閾値以下の場合、前記測定値データ保存部を削除すると判定して、
前記平滑化定数判定部の判定にしたがって、前記リセット部および前記予測値算出部が処理を行うことを特徴とする付記5または6に記載の予測方法。
【0122】
(付記8) 前記平滑化定数算出部で算出された前記平滑化定数が、あらかじめ設定された上限値を超えた場合、前記平滑化定数として前記上限値を算出することを特徴とする付記5乃至7のいずれか1項に記載の予測方法。
【0123】
(付記9) 対象物の処理結果を測定する測定装置と、
前記処理結果の測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部と、前記測定値を取得する測定値取得部と、前記測定値および予測値を用いて、指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出する平滑化定数算出部と、前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定するリセット判定部と、前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除するリセット部と、前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する予測値算出部と、を有する予測装置と、
前記予測値を利用して前記対象物に処理を施す処理装置と、
を備えることを特徴とするプロセス制御システム。
【0124】
(付記10) 前記平滑化定数算出部は、前記測定値と前記予測値との平均二乗誤差が最小になる前記平滑化定数を算出することを特徴とする付記9記載のプロセス制御システム。
【0125】
(付記11) 前記リセット判定部は、
別の測定値をデータとして保存する別の測定値データ保存部と、
前記別の測定値を取得する別の測定値取得部と、
前記別の測定値および別の予測値を用いて、別の平滑化定数を算出する別の平滑化定数算出部と、
前記別の平滑化定数が1、または、あらかじめ設定した閾値より大きい場合、前記別の測定値データ保存部の最新の前記別の測定値を削除するデータ削除部と、
前記データ削除部が最新の前記別の測定値を削除した場合、前記測定値データ保存部を削除しないと判定し、前記別の平滑化定数が前記閾値以下の場合、前記測定値データ保存部を削除すると判定する平滑化定数判定部と、
を有し、前記平滑化定数判定部の判定にしたがって、前記リセット部および前記予測値算出部が処理を行うことを特徴とする付記9または10記載のプロセス制御システム。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の予測装置における概要図である。
【図2】本実施の形態におけるプロセス制御システムを示すブロック図である。
【図3】本実施の形態における予測装置のブロック図である。
【図4】本実施の形態における予測装置の予測方法を示すフローチャート図である。
【図5】本実施の形態における予測装置のリセット判定部のリセット判定方法を示すフローチャート図である。
【図6】実施例1における平滑化定数を示すグラフである。
【図7】実施例1におけるエッチングレートを示すグラフである。
【図8】実施例2における平滑化定数を示すグラフである。
【図9】実施例2におけるエッチングレートを示すグラフである。
【図10】実施例3における平滑化定数を示すグラフである。
【図11】実施例3におけるエッチングレートを示すグラフである。
【符号の説明】
【0127】
10 予測装置
11 測定値データ保存部
12 予測値データ保存部
13 測定値取得部
14 平滑化定数算出部
15 リセット判定部
16 リセット部
17 予測値算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測装置において、
処理結果の測定値を取得する測定値取得部と、
前記測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部と、
前記指数加重移動平均モデルに平滑化定数と前記測定値とを適用して予測値を算出する予測値算出部と、
前記測定値および前記予測値を用いて、前記平滑化定数を更新する平滑化定数算出部と、
前記平滑化定数を更新するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定するリセット判定部と、
前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除するリセット部と、
を有することを特徴とする予測装置。
【請求項2】
前記平滑化定数算出部は、前記測定値と前記予測値との平均二乗誤差が最小になる前記平滑化定数を算出することを特徴とする請求項1記載の予測装置。
【請求項3】
前記リセット判定部は、
別の測定値をデータとして保存する別の測定値データ保存部と、
前記別の測定値を取得する別の測定値取得部と、
前記別の測定値および別の予測値を用いて、前記別の測定値と前記別の予測値との平均二乗誤差が最小となる別の平滑化定数を算出する別の平滑化定数算出部と、
前記別の平滑化定数が1、または、あらかじめ設定した閾値より大きい場合、前記別の測定値データ保存部の最新の前記別の測定値を削除するデータ削除部と、
前記データ削除部が最新の前記別の測定値を削除した場合、前記測定値データ保存部を削除しないと判定し、前記別の平滑化定数が前記閾値以下の場合、前記測定値データ保存部を削除すると判定する平滑化定数判定部と、
を有し、前記平滑化定数判定部の判定にしたがって、前記リセット部および前記予測値算出部が処理を行うことを特徴とする請求項1または2記載の予測装置。
【請求項4】
対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測方法において、
測定値データ保存部が前記処理結果の測定値をデータとして順に保存し、
測定値取得部が前記測定値を取得し、
平滑化定数算出部が前記測定値および予測値を用いて、前記指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出し、
リセット判定部が前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定し、
リセット部が前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除し、
予測値算出部が前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する、
ことを特徴とする予測方法。
【請求項5】
対象物の処理結果を測定する測定装置と、
前記処理結果の測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部と、前記測定値を取得する測定値取得部と、前記測定値および予測値を用いて、指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出する平滑化定数算出部と、前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定するリセット判定部と、前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除するリセット部と、前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する予測値算出部と、を有する予測装置と、
前記予測値を利用して前記対象物に処理を施す処理装置と、
を備えることを特徴とするプロセス制御システム。
【請求項1】
対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測装置において、
処理結果の測定値を取得する測定値取得部と、
前記測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部と、
前記指数加重移動平均モデルに平滑化定数と前記測定値とを適用して予測値を算出する予測値算出部と、
前記測定値および前記予測値を用いて、前記平滑化定数を更新する平滑化定数算出部と、
前記平滑化定数を更新するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定するリセット判定部と、
前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除するリセット部と、
を有することを特徴とする予測装置。
【請求項2】
前記平滑化定数算出部は、前記測定値と前記予測値との平均二乗誤差が最小になる前記平滑化定数を算出することを特徴とする請求項1記載の予測装置。
【請求項3】
前記リセット判定部は、
別の測定値をデータとして保存する別の測定値データ保存部と、
前記別の測定値を取得する別の測定値取得部と、
前記別の測定値および別の予測値を用いて、前記別の測定値と前記別の予測値との平均二乗誤差が最小となる別の平滑化定数を算出する別の平滑化定数算出部と、
前記別の平滑化定数が1、または、あらかじめ設定した閾値より大きい場合、前記別の測定値データ保存部の最新の前記別の測定値を削除するデータ削除部と、
前記データ削除部が最新の前記別の測定値を削除した場合、前記測定値データ保存部を削除しないと判定し、前記別の平滑化定数が前記閾値以下の場合、前記測定値データ保存部を削除すると判定する平滑化定数判定部と、
を有し、前記平滑化定数判定部の判定にしたがって、前記リセット部および前記予測値算出部が処理を行うことを特徴とする請求項1または2記載の予測装置。
【請求項4】
対象物の処理結果を、指数加重移動平均モデルを利用して、予測する予測方法において、
測定値データ保存部が前記処理結果の測定値をデータとして順に保存し、
測定値取得部が前記測定値を取得し、
平滑化定数算出部が前記測定値および予測値を用いて、前記指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出し、
リセット判定部が前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定し、
リセット部が前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除し、
予測値算出部が前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する、
ことを特徴とする予測方法。
【請求項5】
対象物の処理結果を測定する測定装置と、
前記処理結果の測定値をデータとして順に保存する測定値データ保存部と、前記測定値を取得する測定値取得部と、前記測定値および予測値を用いて、指数加重移動平均モデルに適用させる平滑化定数を算出する平滑化定数算出部と、前記平滑化定数を算出するごとに前記測定値データ保存部の前記データの削除を判定するリセット判定部と、前記リセット判定部により前記データを削除する場合は、前記測定値データ保存部の最新の前記測定値以外の前記データを削除するリセット部と、前記リセット判定部により前記データを削除しない場合は、前記指数加重移動平均モデルに前記平滑化定数と前記測定値とを適用して前記予測値を算出する予測値算出部と、を有する予測装置と、
前記予測値を利用して前記対象物に処理を施す処理装置と、
を備えることを特徴とするプロセス制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−32183(P2009−32183A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197692(P2007−197692)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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