説明

二層成形固体水精製産物

本発明は、少なくとも一の第一層と少なくとも一の第二層を具備し、前記第一層は、少なくとも一のフロキュレーションシステムと少なくとも一の分散システムを含有し、前記第二層は、水との接触により遊離塩素を放出する少なくとも一の抗感染薬と該抗感染薬のための少なくとも一の賦形剤を含有し、該賦形剤は、賦形剤及び抗感染薬の組合せにより、一時間当たり0.1〜100mg/lの遊離塩素が放出されるよう、水中に抗感染薬を調節された速度で放出することを特徴とする、二層成形固体水精製産物に関するものである。さらに、本発明は、かかる産物の製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二層の形態を有する、水を精製するための成形固体産物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水を精製することを目的とした水の処理、および/または、水を飲料に適したものとすることを目的とした水の処理は、多大な調査の対象を形成し、且つ人類に不可欠な課題である。
【0003】
特に産業国においては、大きな市街地の水処理用大規模精製プラントの開発と並行して、アクセスの困難や経済的理由から、水処理用の工業プラントからの恩恵を享受できない世界の地域において、例えば、井戸または池などの自然の水供給地から得られる水を飲料に適したものとすべく、所定量の水を効率的且つ迅速に処理する簡便な手段を開発するために調査もまた進行中である。かかる手段はまた、日常の消費を意図するものではないが、何の気なしに水を摂取する人の健康への危害なしに、飲まれることが必要とされる水を精製するために使用され得る。
【0004】
水の精製(特に、水を飲料に適したものとするための精製)は、いくつかの処理と、特に、水中で懸濁されやすい有機物を分離することを目的とした清澄段階、および水中に存在し得る細菌を殺すための殺菌段階が含意される。清澄化は、通常、綿状沈澱および/または凝固、次いで沈降分離および有機物の濾過により行われる。殺菌は、通常、殺菌性活性塩素の放出により行われる。
【0005】
さらに、操作および保管の実用的な理由から、また所望される使用を考慮して、精製される所定量の水に単純に投げ込むだけでよく、単に限られた攪拌よりも複雑な手段を使用する必要のない固体組成物、例えばペレットやタブレットなどで、好ましくは予め適量に分けられている固体組成物の形態における水の精製手段を用意する試みがなされている。
【0006】
水を清澄化し殺菌するための固体組成物は、既に公知である。
特許文献1には、とりわけフロキュレート試薬、活性塩素を放出する抗感染薬、および発泡性試薬を含有し、所定量の水を精製するためのタブレット形状組成物が開示されている。しかしながら、同文献では、これら3つの化合物は同時に、精製される水容積中の同じ一部分に放出される。この場合、活性塩素は急速に消費され、水を精製するために大量の抗感染薬が必要であることがわかった。
【0007】
特許文献2には、隣接して分離された成分を含有する構造体、特に、二層を有する圧縮タブレットの形態において、各層は、異なる抗感染薬、すなわち一方は急速に溶解し、他方は徐々に溶解する抗感染薬を含有する構造体が開示されている。同文献においては、第一段階において、急速に溶解する抗感染薬の活性塩素の放出による超塩素処理、第二段階において、長期間に亘り水泳プール中の塩素の必要レベルを維持するために、徐々に溶解する抗感染薬の利用可能な塩素の緩慢な放出、により、水泳プールの水を処理することを目的とする。このような同文献に開示の構造体は、大量の抗感染薬を消費するものである。
【0008】
実際は、大量に接種された抗感染薬を含有する水は、官能特性をかなり悪化させる。これは、特に、処理目的が水を日常的に消費される飲料用にすることである場合に問題となる。そのような水は風味がよくなく、好んで飲まれない。
【0009】
さらに、環境保護および経済的理由の双方のため、既に公知の精製と同じ程度の効果的でありながら、抗感染薬に関しては殆ど消費しない手段を利用できることが有意である。
【0010】
従って、所定量の水を、大量の抗感染薬の消費を必要とすることなく特に飲料として適したものとするために、フロキュレーションによる浄化、殺菌作用による殺菌双方を可能とする、処理、貯蔵および使用が簡単な組成物が必要とされている。
【特許文献1】WO96/32194
【特許文献2】FR2243156
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、抗感染薬を過剰消費することなく、水を効果的に浄化し殺菌することができる、特にペレット又はタブレットの形態におけるたった一つの固体組成物を提供することによりこの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様は、
少なくとも一の第一層と少なくとも一の第二層を具備し、
− 前記第一層は、少なくとも一のフロキュレーションシステムと少なくとも一の崩壊システムを含有し、
− 前記第二層は、水との接触により活性塩素を放出する少なくとも一の抗感染薬と該抗感染薬のための少なくとも一の賦形剤を含有し、前記賦形剤は、賦形剤−抗感染薬の組合せにより、一時間当たり0.1〜100mg/lの活性塩素が放出されるよう、水中に抗感染薬を調節された速度で放出することを特徴とする、水を精製するための成形固体産物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る産物により、いかなる水もその水源や状態にかかわらず、効率的に清澄し且つ殺菌することが可能となる。したがって、本発明に係る産物を用いて池や井戸からの水を精製することができる。
【0014】
本発明の産物は、その二つの層の特定の配置並びに特定組成により、第一段階において、懸濁有機物を析出させるフロキュレート化試薬を放出させることができ、次いで、第二段階において、有機物の沈殿およびフロキュレート化試薬の析出により形成されるフロックは、沈殿により分離されつつ、水中に存在する細菌を標的とする殺菌活性のために、抗感染薬を放出させることができる。
【0015】
本発明の産物は、生態学的且つ経済的であり、必要以上に多くの抗感染薬を消費しない。その固体形態により、使用、貯蔵並びに処理において簡便且つ実用的である。
【0016】
本発明の産物により、水を濾過する必要はない。
【0017】
本発明の産物により、水中に抗感染薬が溶解する固有の速度にかかわらず、活性塩素の放出が調節される。したがって、いかなる抗感染薬も使用することができ、これにより産物の製造が簡便化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の産物は、少なくとも二層を有する成形固体産物である。
本発明の産物における第一の層は、少なくとも一のフロキュレーションシステムと少なくとも一の崩壊システムを含む。
【0019】
本発明において用語「フロキュレーションシステム」とは、精製される水中懸濁液に存在する有機物と反応し得る一又は二以上の化合物を有し、これにより有機物をフロック、すなわち、1を超える密度を有する固体の形態において析出させ、沈殿による分離後、有機物は沈殿して精製される水の容積底部に沈殿物を形成することを意味する。このように、フロキュレーションシステムは、処理水を清澄化することを可能とする。
【0020】
好ましくは、フロキュレーションシステムは、少なくとも一の三価金属塩と少なくとも一の水溶性カチオン性ポリマーを含有する。コアグリゲート化試薬としての三価金属塩と、フロキュレーション化試薬としてのカチオン性ポリマーとの組合せにより、良好なフロキュレーションと析出により形成されるフロックのよりよい凝集が可能となる。
【0021】
好ましくは、三価金属塩は、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、ポリアルミニウムヒドロキシクロリド、およびこれらの混合物から選択される。より好ましくは、三価金属塩は、ポリアルミニウムヒドロキシクロリドである。
【0022】
これらの化合物は周知であり、商業的に入手可能である。本発明の三価金属塩に特に好適な化合物は、SNFにより商品名「PAC(登録商標)32」において粉末形状で販売されているポリアルミニウムヒドロキシクロリド固体である。
【0023】
好ましくは、三価金属塩は、Alとして表わされたときに10〜30ppmの範囲となる含有率において処理水の容積中に存在する。
【0024】
好ましくは、水溶性カチオン性ポリマーは、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶性カチオン性ポリマーであり、極めて高い分子量、例えば、500000D以上の分子量を有することが好ましい。本発明に特に好適な化合物は、SNFにより商品名「POLYDADMAC(登録商標)DB45 SH」において粉末形状で販売されているジアリルジメチルアンモニウムクロリドポリマー固体である。
【0025】
好ましくは、カチオン性ポリマーは、1〜2ppmの範囲となる含有率において処理水の容積中に存在する。
【0026】
本発明において用語「崩壊システム」とは、水との接触により直ちに反応して第一の層の迅速な崩壊、好ましくは1分未満、より好ましくは30秒未満における崩壊をもたらし得る一又は二以上の化合物を有するシステムを意味する。
【0027】
好ましくは、該崩壊システムは、セルロース及びその誘導体、水溶性ポリ有機酸と弱塩基との発泡性化合物、およびこれらの混合物から選択される少なくとも一の崩壊剤を含有する。
【0028】
本発明の一態様において、崩壊剤はセルロースであり、例えば、非晶質セルロースまたは結晶セルロースである。本発明において好適な非晶質セルロースの具体例としては、J.Rettenmaier&Sohneにより商品名「ARBOCEL(登録商標) A300」において販売されている固体産物が挙げられる。
【0029】
本発明において好適な結晶セルロースの具体例としては、J.Rettenmaier&Sohneにより商品名「VIVAPUR(登録商標) 12」において販売されている固体産物が挙げられる。
【0030】
本発明の他の態様において、崩壊剤は、水溶性ポリ有機酸と弱塩基との発泡性化合物である。この場合において、水溶性ポリ有機酸は、好ましくは、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、およびこれらの混合物から選択される。好ましくは、弱塩基は、重炭酸ナトリウムである。
【0031】
好ましくは、崩壊剤は、第一層の質量に対して50質量%以下の含有率、好ましくは20質量%以上40質量%以下の含有率において第一層に存在する。
【0032】
これは、第一層中の崩壊剤の濃度が50質量%を超えると、形成されるフロックの沈殿による分離が著しく減速し、処理水の清澄化を遅延させることが見出されたためである。
【0033】
本発明の産物の第一層中における上記フロキュレーションシステムと崩壊システムの組合せにより、コアグリゲート化試薬およびフロキュレート化試薬の処理水中への迅速な拡散が可能となり、これは、この第一層の水との接触による即座の崩壊、好ましくは1分未満、より好ましくは30秒未満での崩壊のためである。したがって、水の清澄化は遅延することなくなされる。析出した物質の沈殿は数分で起こり、濁度の極めて低い水が得られる。
【0034】
本発明の産物の第二層は、水との接触により活性塩素を放出する少なくとも一の抗感染薬と、該抗感染薬のための少なくとも一の賦形剤を含有し、前記賦形剤は、水中に抗感染薬を調節された速度において放出することで、賦形剤−抗感染薬の組合せが一時間当たり0.1〜100mg/lの活性塩素を放出する。
【0035】
活性塩素を放出する抗感染薬は、活性塩素を放出することが知られたいかなる塩素誘導体であってもよく、その誘導体が水中に溶解する固有速度は問題とされない。好ましくは、抗感染薬は、N−クロロ−4−メチルベンゼンスルホンアミドのナトリウム塩の無水物または二水和物、1,3−ジクロロ−s−トリアジン−2,4,6−トリオンのナトリウム塩の無水物または二水和物、およびこれらの混合物から選択される。
これらの化合物は周知であり、OXYCHEMから商業的に入手可能である。
【0036】
用語「賦形剤」は、本発明においては、抗感染薬以外の一又は二以上の化合物であって、抗感染薬のための賦形剤として機能し更に該抗感染薬に関して化学的に不活性、すなわち、本発明の産物が保管形態にある時や、精製される水中で使用される時のいずれにおいても抗感染薬と反応しない化合物を意味する。
【0037】
本発明の産物における第二層の賦形剤は、水中に抗感染薬を調節された速度において放出することで、賦形剤−抗感染薬の組合せが一時間当たり0.1〜100mg/l、好ましくは0.2〜10mg/lの速度において活性塩素を放出する。したがって、処理水中への抗感染薬の拡散は緩やか且つ調節され、清澄化段階を妨害しない。
【0038】
本発明の一態様において、賦形剤は徐々に溶解する水溶性化合物から選択される。従って、好ましくは、賦形剤は、アラビアまたはアカシアゴム、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム、およびこれらの混合物から選択される。
【0039】
このように、水中で賦形剤が段階的に溶解する間に、抗感染薬が処理水中に段階的に放出され拡散する。
【0040】
他の態様において、賦形剤は、水に膨潤性の親水性不溶性化合物から選択される。したがって、好ましくは、賦形剤は、修飾澱粉、ゼラチン化澱粉、ジャガイモ澱粉、およびこれらの混合物から選択される。本発明において特に好適なゼラチン化澱粉の例としては、Roquetteにより商品名「LYCATAB(登録商標) PGS」において販売されている産物固体が挙げられる。
【0041】
賦形剤が上記のように水に膨潤性の親水性不溶性化合物である場合においては、抗感染薬の処理水中への段階的放出は、不溶性賦形剤内において水の拡散により起こる。
【0042】
このように、第二層中に抗感染薬の放出を調節する特定の賦形剤が存在し、更にこの第二層が第一層と分離されているという事実により、抗感染薬は第一層のコアグレート化試薬およびフロキュレート化試薬に取り込まれることなく、崩壊システムにより水中に極めて迅速に拡散する。従って、抗感染薬は、懸濁液中の物質が析出し処理水の容積の底部に沈殿物を形成する前に、懸濁液中の物質により尚早に消費されない。
【0043】
本発明の産物の第二層が、第一段階の間、すなわち、清澄化の間、変わらないままであり、この状態が持続するのは、通常は1分未満、実際には実に30秒未満である。次いで、第二層が、第一段階において形成され、処理される容積の底部に蓄積するフロックに干渉することなく、数時間の間、処理水中に存在しがちな病原性微生物に作用することができる抗感染薬の段階的且つ継続的な放出による殺菌の役割を実行する。
【0044】
本発明の好ましい態様において、第二層の密度は、正確に1未満であり、好ましくは0.70〜0.95である。これにより、第一段階の終局において、第一層が完全に破壊した時、第二層が再び上がって浮く。その後、第一段階において形成したフロックからすっかり離れ、最良の状態において、抗感染薬を過剰且つ無意味に消費することなく、抗感染薬の段階的且つ継続的な拡散が起こる。
【0045】
本発明の産物には、着色剤や香料等の添加化合物が含まれていてもよい。
【0046】
好ましくは、本発明の産物を構成するすべての化合物は、人の健康を損なうことなく摂取することができる食品用である。
【0047】
本発明の産物は、どのような幾何学的形状であってもよい。本発明の一態様において、産物は二つの層が隣接したペレット又はタブレットの形態である。
【0048】
本発明の他の態様において、本発明の産物は、第一層が第二層をコーティングし核を形成している圧縮タブレット又は球状である。
【0049】
本発明は、他の態様において、少なくとも一の第一層と少なくとも一の第二層とを含有し、下記段階:
−a) 少なくとも一のフロキュレーションシステムと少なくとも一の崩壊システムとの第一の混合物が、粉末形状において調製されること、
−b) 水との接触により活性塩素を放出する少なくとも一の抗感染薬と、該抗感染薬のための少なくとも一の賦形剤との第二の混合物であって、前記賦形剤は、水中に抗感染薬を調節された速度において放出することにより、賦形剤−抗感染薬の組み合わせが、活性塩素を1時間当たり0.1〜100mg/lにおいて放出する第二の混合物が、粉末形状において調製されること、
−c) b)において得られる混合物が錠剤形成装置で予め成形されること、
−d) a)において得られる混合物が錠剤形成装置に加えられ、混合された混合物が2層産物を得るように成形されること、
を含むことを特徴とする、水を精製するための成形固体産物の製造方法である。
【0050】
本発明の産物は、好ましくは、錠剤形成装置を使用する直接圧縮により調製される。この方法は公知である。
【0051】
他の態様において、本発明の産物は、第一層および第二層に加え、例えば第一層と第二層を分離する中間層、あるいはまた外層のような、一または二以上の追加の層を有し得る。
【0052】
第一層の圧縮度および第二層の圧縮度は、これら各層に所望される処理水中における溶解速度に従い調節される。
以下に実施例を用いて本発明を説明する。
【実施例】
【0053】
本実施例において使用される用語の意味を以下に示す。
【0054】
−PAC(登録商標) 32:ポリアルミニウムヒドロキシクロリド(粉末形状)、SFN製;
−PolyDADMAC(登録商標) DB45SH:ジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶性カチオン性ポリマー(粉末形状)、SFN製;
−DCCNa・2HO:1,3−ジクロロ−s−トリアジン−2,4,6−トリオンのナトリウム塩の二水和物(粉末形状);
−LYCATAB(登録商標) PGS:ゼラチン化澱粉(粉末形状)、Roquette製;
−ARBOCEL(登録商標) A300:非晶質セルロース、J.Rettenmaier&Sohne製。
【0055】
例1(本発明)
本例は、第二層の賦形剤が徐々に溶解する水溶性化合物である場合の本発明を説明する。
【0056】
当初は飲料用の水から0.015g/lのフミン酸と0.5g/lのカオリンを加えて調製した濁った水(約400FTU)10リットルを利用することができる。pHは8付近である。
【0057】
濁った水10リットルのこの量を処理する目的のために、第一層(A層と称する。)が清澄化するための1.000gの層で、第二層(B層と称する。)が処理水を殺菌するための1.000gの層である、2.000gの二層ペレットが調製される。該ペレットの直径及び厚みは、各々20mmおよび3.6mmである。ペレットは直接圧縮により調製される。層の組成および結果として生じる処理水の量中の各成分の値を以下に示す。
【表1】

【表2】

【0058】
B層の密度は、ペレットに施される成形圧75MPaにおいて0.87である。その多孔度は45%である。
【0059】
二層ペレットを2分間機械攪拌しながら水中に導入する。ペレットは容器の底部に落ち、ペレットのA層は発泡により約20秒で崩壊する。
【0060】
攪拌を停止し、懸濁した物質は沈殿により分離するために放置される。ペレットの残っている部分(B層)が表面に再び上がって浮き、表面に残りつつも徐々に溶解する。このようにして、23℃において3時間後に完全に溶解するまでB層は活性塩素を放出する。
【0061】
活性塩素の値は、沈殿により分離される間に、23℃にて時間の関数として(水10リットルを含む容器の中間の高さにおいて)水中で測定される。FTU単位(NTUに相当)において調整された濁度計を用いて濁度を測定する。
【0062】
結果を下記表Iに示す。
【表3】

【0063】
水はもはや濁っておらず、24時間後における活性塩素の含有率は0.53mg/lことがわかる。処理水のpHは6.5である。
【0064】
極めて効率的なフロキュレーション/沈殿による分離を生じさせる水溶性カチオン性ポリマー/ポリアルミニウムヒドロキシクロリド(Alと表記される。)比は、殺菌のために用いられる賦形剤のタイプとレベルに依存する。この最適な比率は、ペレットのB層の溶解性賦形剤(例えば、アカシアゴム等)が約0.5gであるときは少なくとも2ppm/20ppmでなければならず、賦形剤が約1gであるときは少なくとも2ppm/30ppmでなければならない。
【0065】
例2(本発明)
本例は、賦形剤が水に膨潤性の親水性不溶性化合物である場合の本発明を説明する。
【0066】
例1と同じ組成の濁った水10リットルを利用することができる。
【0067】
濁った水10リットルのこの量を処理する目的のために、第一層(A層)が0.921gで、第二層(B層)が0.500gである、1.421gの二層ペレットが調製される。該ペレットの直径及び厚みは、各々20mmおよび1.9mmである。ペレットは直接圧縮により調製される。層の組成および結果として生じる処理水の量中の各成分の値を以下に示す。
【表4】

【表5】

【0068】
B層の密度は、ペレットに施される成形圧62MPaにおいて0.79である。その多孔度は51%である。
【0069】
二層ペレットを2分間機械攪拌しながら水中に導入する。ペレットは容器の底部に落ち、ペレットのA層は発泡により約20秒で崩壊する。攪拌を停止し、懸濁した物質は沈殿により分離するために放置される。ペレットの残っている部分(B層)が表面に再び上がって浮かぶ。
【0070】
活性塩素の値は、沈殿により分離される間に、23℃にて時間の関数として(水10リットルを含む容器の中間の高さにおいて)水中で測定される。濁度を例1と同様の方法に従い測定する。結果を下記表IIに示す。
【表6】

【0071】
処理水のpHは6.5である。処理水中の活性塩素の残渣値は、24時間後において0.51mg/lである。ペレットのB層はまだ浮遊し、取り除くことができる。
【0072】
周囲空気に晒した状態できれいな水に導入される活性塩素の消費を測定することにより、約0.03mg/時間、すなわち、0.7mg/24時間の損失が確認される。これは、このようにして処理される水が1日から3日の間、当初の有機物汚染のその値に照らして、特別な予防措置をすることなく維持され得ることを示す。
【0073】
例3(本発明)
A層中、クエン酸に替えてマレイン酸59.3mgを用いた以外は例1と同様の操作を行う。他の成分並びにそれら各々の値は変更しない。A層の合計質量は0.960gである。B層の組成は変更しない。
【0074】
処理水の濁度は例1における様に変化する。1時間沈殿させて分離した後に、例1と同様の条件で測定され、処理水の濁度は7FTUに達する。
【0075】
例4(本発明)
A層中、クエン酸に替えてARBOCEL(登録商標) A300、355mgを用い、重炭酸ナトリウムを除いた以外は例2と同様の操作を行った。他の成分並びにそれら各々の値は変更しない。A層の合計質量は1.000gである。B層の組成は変更しない。
【0076】
1時間沈殿させて分離した後に、例1と同様の条件で測定され、処理水の濁度は8FTUである。
【0077】
例5(比較例)
例1と同様の組成を有する濁った水5リットルを利用することができる。
【0078】
以下に示す粉末形状の成分が、機械攪拌されながらこの量の水に同時に導入される。
【0079】
−19.1mgのDCCNa・2HO、すなわち、濃度3.3mg/lのDCCNa;
−156.6mgのPAC 32(登録商標)、すなわち、Alにおいて濃度10mg/l;
−5.3mgのPolyDADMAC(登録商標) 45DBSH、すなわち、濃度1mg/l。
【0080】
23℃における貯蔵時間の関数として測定される、活性塩素の含有率を表IIIに示す。
【0081】
活性塩素の値がかなり急速に減少し、露出後4時間後には、再汚染されるのを防ぐために処理水において維持されるべき最小含有率(0.50mg/l)を規定するWHO(世界保健機関)基準より少なくなっているのがわかる。
【表7】

【0082】
このことから、水中に懸濁する有機物質により活性塩素が急速に消費されていることがわかる。
【0083】
活性塩素、フロキュレート化試薬およびコアグリゲート化試薬の処理水中における同時放出は、絶対確実な殺菌処理を提供することを可能とするものではない。これは、WHOに従い、利用可能な殺菌水を有するために、活性塩素の水中濃度を少なくとも0.50mg/lに維持することが必要であるためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一の第一層と少なくとも一の第二層を具備し、
− 前記第一層は、少なくとも一のフロキュレーションシステムと少なくとも一の崩壊システムを含有し、
− 前記第二層は、水との接触により活性塩素を放出する少なくとも一の抗感染薬と該抗感染薬のための少なくとも一の賦形剤を含有し、該賦形剤は、賦形剤−抗感染薬の組合せにより、一時間当たり0.1〜100mg/l、好ましくは一時間当たり0.2〜10mg/lの活性塩素が放出されるよう、水中に抗感染薬を調節された速度で放出することを特徴とする、水を精製するための成形固体産物。
【請求項2】
第二層の密度が正確に1未満であり、好ましくは0.70〜0.95であることを特徴とする、請求項1に記載の産物。
【請求項3】
前記フロキュレーションシステムが、少なくとも一の三価金属塩と少なくとも一の水溶性カチオン性ポリマーを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の産物。
【請求項4】
前記三価金属塩が、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、ポリアルミニウムヒドロキシクロリド、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の産物。
【請求項5】
前記水溶性カチオン性ポリマーが、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶性カチオン性ポリマーであることを特徴とする、請求項3又は4に記載の産物。
【請求項6】
前記崩壊システムが、セルロース及びその誘導体、水溶性ポリ有機酸と弱塩基との発泡性化合物、およびこれらの混合物から選択される少なくとも一の崩壊剤を含有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の産物。
【請求項7】
前記崩壊剤が、セルロース(例えば、非晶質セルロースまたは結晶セルロース)であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の産物。
【請求項8】
前記崩壊剤が、水溶性ポリ有機酸と弱塩基との発泡性化合物であることを特徴とする、請求項6に記載の産物。
【請求項9】
前記水溶性有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の産物。
【請求項10】
前記弱塩基が、重炭酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項8又は9に記載の産物。
【請求項11】
前記崩壊剤が、第一層の質量に対して50質量%以下、好ましくは20質量%〜40質量%の範囲の濃度において第一層中に存在することを特徴とする、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の産物。
【請求項12】
前記抗感染薬が、N−クロロ−4−メチルベンゼンスルホンアミドのナトリウム塩の無水物または二水和物、1,3−ジクロロ−s−トリアジン−2,4,6−トリオンのナトリウム塩の無水物または二水和物、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の産物。
【請求項13】
前記抗感染薬が、1,3−ジクロロ−s−トリアジン−2,4,6−トリオンのナトリウム塩の二水和物であることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の産物。
【請求項14】
前記賦形剤が、徐々に溶解する水溶性化合物であることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の産物。
【請求項15】
前記賦形剤が、アラビアまたはアカシアゴム、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の産物。
【請求項16】
前記賦形剤が、水に膨潤性の親水性不溶性化合物であることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の産物。
【請求項17】
前記賦形剤が、修飾澱粉、ゼラチン化澱粉、ポテト澱粉、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の産物。
【請求項18】
前記産物を構成するすべての化合物が、食品用であることを特徴とする、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の産物。
【請求項19】
少なくとも一の第一層と少なくとも一の第二層とを含有し、下記段階:
−a) 少なくとも一のフロキュレーションシステムと少なくとも一の崩壊システムとの第一の混合物が、粉末形状において調製されること、
−b) 水との接触により活性塩素を放出する少なくとも一の抗感染薬と、該抗感染薬のための少なくとも一の賦形剤との第二の混合物であって、前記賦形剤は、水中に抗感染薬を調節された速度において放出することにより、賦形剤−抗感染薬の組み合わせが、活性塩素を1時間当たり0.1〜100mg/lにおいて放出する第二の混合物が、粉末形状において調製されること、
−c) b)において得られる混合物が錠剤形成装置で予め成形されること、
−d) a)において得られる混合物が錠剤形成装置に加えられ、結合した混合物が2層産物を得るために成形されること、
を含むことを特徴とする、水を精製するための成形固体産物の製造方法。

【公表番号】特表2008−506755(P2008−506755A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521980(P2007−521980)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001834
【国際公開番号】WO2006/016073
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507020602)
【Fターム(参考)】