説明

二枚貝の再資源化方法

【課題】大量に回収された二枚貝の処理費用を削減し、該二枚貝を再資源化するための二枚貝の再資源化方法を提供する。
【解決手段】本二枚貝の再資源化方法は、二枚貝におが屑や木材チップを混合して消臭効果を得るステップS3(消臭ステップ)と、おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を盛土状に放置して有機物を腐敗・分解するステップS4(発酵ステップ)と、おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を洗浄して貝殻以外の異物を除去するステップS5(洗浄ステップ)と、該貝殻を加熱処理するステップS8(熱処理ステップ)とを含むので、大量に回収された二枚貝の処理費用を削減でき、該二枚貝を養鶏用飼料として再資源化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出された大量の二枚貝を貝殻のみに処理して再資源化する二枚貝の再資源化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海上土木工事や臨海工場における排水口の維持管理などにおいて、汚濁防止膜や構造物などに付着した二枚貝、特に、イガイを撤去処分する必要がある。これら回収された大量の二枚貝には有機物や水分が含まれており、一般廃棄物処理場では、大量の二枚貝を処理することができないため、従来では、産業廃棄物の「動物性残渣」または「汚泥」として、焼却処分や埋立処分されていた。しかしながら、この処理方法ではその費用負担が重く、別の処理方法を検討する必要があった。
【0003】
また、特許文献1には、帆立貝のウロの溶液処理後において、籾殻・おが屑・ビール粕などの有機物を主成分に構成される材料を濾過材とする濾過方式、または帆立貝の貝殻粉を主成分に構成される材料を濾過材とする濾過方式で固液分離し、溶液と分離した帆立貝のウロを濾過材と混合して、肥料・飼料・餌料とする帆立貝のウロの利用方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−286068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る発明のような帆立貝のウロに限定されることなく、二枚貝全般の再資源化方法の確立が要求されている。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、大量に回収された二枚貝の処理費用を削減し、該二枚貝を再資源化するための二枚貝の再資源化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、排出された大量の二枚貝を処理して再資源化する方法であって、前記大量の二枚貝におが屑や木材チップを混合して消臭効果を得る消臭ステップと、おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を盛土状に放置して有機物を腐敗・分解する発酵ステップと、おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を洗浄して貝殻以外の異物を除去する洗浄ステップと、該貝殻を加熱処理する熱処理ステップと、を含むことを特徴とするものである。
請求項1の発明では、まず、消臭ステップでは、二枚貝の容量に対して40%以上のおが屑や木材チップを混合すれば消臭効果を得ることができる。次に、発酵ステップでは、おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を盛土状にすることで発酵を促進させることができる。次に、洗浄ステップでは、おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を金網籠の中に入れて空気中で分級した後、該金網籠を洗浄水内に入れておが屑や木材チップや二枚貝内の有機物を除去して貝殻だけを残すようにする。次に、熱処理ステップでは、貝殻を所定温度で加熱して、貝殻に残存した有機物を除去して殺菌する。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、前記洗浄ステップの後に、貝殻を天日干しで乾燥させる乾燥ステップを備えることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、乾燥ステップにより、貝殻に含まれる水分を蒸発させる。なお、貝殻に含まれる水分が5%以下となるように、乾燥期間を設定したほうがよい。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した発明において、前記発酵ステップでは、盛土状のおが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を一定時間おきに攪拌することを特徴とするものである。
請求項3の発明では、発酵を促進させることで、発酵期間を短縮することができる。
【0010】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれかに記載した発明において、前記熱処理ステップでは、貝殻を略100℃で加熱処理することを特徴とするものである。
請求項4の発明では、熱処理ステップにおいて、貝殻を略100℃で加熱処理することにより、貝殻の炭化を抑制しつつ、貝殻に付着している有機物を除去して殺菌することが可能になる。
【0011】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれかに記載した発明において、前記熱処理ステップの後に、貝殻を所定粒度以下に粉砕する粒度調整ステップを備えることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、粒度調整ステップにおいて、大量の貝殻を所定粒度以下に粉砕することで養鶏用飼料として最適なものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二枚貝の再資源化方法によれば、大量に排出された二枚貝の処理費用を大幅に削減できると共に、養鶏用飼料として再資源化できるので環境に優しく効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る二枚貝の再資源化方法を示すフローである。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る二枚貝の再資源化方法にて得た飼料の有害物質の分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
例えば、海上土木工事や臨海工場における排水口の維持管理のために二枚貝、例えば、ムラサキイガイが大量に排出される。該排出された大量のムラサキイガイは水密容器に収容された状態で排出場所から処理施設に運搬される。
【0015】
処理施設においては、図1に示すように、まず、ステップS1にて、ムラサキイガイの容量に対して相当量の魚やヒトデ等の生物が混入しているか否かが判定され、混入していないと判定された場合にはステップS2に進み、混入していると判定された場合には、飼料化として不適合であるとして焼却処分される。
次に、ステップS2では、大量のムラサキイガイ内への土砂の混入率が5割以下であるか否かが判定され、5割以下でなければステップS50に進み分級処理が行われ、その後再びステップS2に戻される。なお、ステップS50の分級処理にて排出された土砂は汚泥処理される。また、ステップS2にて大量のムラサキイガイ内への土砂の混入率が5割以下と判定された場合はステップS3に進む。なお、ステップS3は、大量のムラサキイガイの異臭が発生する懸念がある場合に実施される。
【0016】
次に、ステップS3では、大量のムラサキイガイにおが屑や木材チップを混合して消臭効果を得る(消臭ステップ)。その際、消臭のみの観点からはムラサキイガイの容量に対して約40%以上の量のおが屑や木材チップを混合したほうがよいが、おが屑や木材チップを含む全体量との兼ね合いからムラサキイガイの容量に対して40%〜60%の量のおが屑や木材チップを混合したほうが好ましい。なお、消臭効果を得るために大量のムラサキイガイにおが屑だけを混合してもよいし、木材チップだけを混合してもよいし、おが屑と木材チップとの混合物を混合してもよい。
そこで、二枚貝の対象は異なるが、ミドリイガイに対して木材チップの消臭検証を行った。その結果、ミドリイガイの容量に対して略50%の量の木材チップを混合した場合、異臭が略50%程度まで低減し、ミドリイガイの容量に対して略95%の量の木材チップを混合した場合、異臭が略20%程度まで低減することが解った。
【0017】
次に、ステップS4では、大量のムラサキイガイにおが屑や木材チップを混合したものを、盛土状(例えば、底面の幅長:4m,底面の長さ:3.5〜10m,高さ:1.5〜1.8m)に放置した状態とする(発酵ステップ)。これは、盛土状に放置することで内部の温度を上昇させて、ムラサキイガイの中身の有機物等を腐敗・分解して発酵させるためである。なお、周辺温度が25℃〜35℃の場合、盛土状の内部温度は40℃〜75℃まで上昇している。また、放置期間は、おが屑や木材チップを含んだムラサキイガイの容量、季節や気候等に対応して適宜設定される。本実施の形態では、おが屑や木材チップを含んだムラサキイガイの全容量が約20mであり、季節が夏であったため3日間程度盛土状に放置した。なお、放置期間中、盛土状のおが屑や木材チップを含んだムラサキイガイを1日に一回程度攪拌したほうがよい。これにより、発酵を促進させることができる。なお、本ステップS4にて、貝が開かないなど、発酵が十分ではないものは堆肥処分となる。
【0018】
次に、ステップS5では、おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を洗浄して貝殻以外の異物を除去する(洗浄ステップ)。具体的には、まず、おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝(例えば、約0.8m)を金網籠(例えば、長さ:1.2m,幅:1.2m,高さ:1.2m)内に入れて空気中で分級する。続いて、該二枚貝の入った金網籠を洗浄水内に入れて振るように洗浄する。その結果、金網籠内には貝殻だけが残り、貝殻の中身、おが屑や木材チップ及び小さなゴミ等が除去される。また、洗浄水には農業用水を使用しており、該農業用水は微生物が含有しているために腐りにくく繰り返し使用することができる。なお、本実施の形態では洗浄水として農業用水を使用したが、農業用水が入手できない場所で実施する場合には上水などを使用することとなるが、この場合には適切に水処理して排水または処分する。なお、本ステップS5にて取り除かれたおが屑や木材チップ、土砂や身が発酵した養分等は堆肥処分となる。
【0019】
次に、ステップS6では、ステップS5にて洗浄された貝殻を天日干しにより乾燥する(乾燥ステップ)。乾燥期間は気温との兼ね合いで設定されるが、乾燥の程度は水分量が5%以下となることを目安にしている。なお、本ステップS6にて、乾燥後に身などが多く残っているものは堆肥処分となる。
このステップS6の完了時点において、二枚貝(貝殻)の強熱減量(揮発性物質を含む有機物の量)は5%未満にまで到達しており、このことからも上述のステップS4〜S6の間に有機物と水分の大部分が除去されたと考えられる。また、強熱減量では試料を600℃で加熱すると、貝の成分である炭酸カルシウムが揮発するために、有機物だけに着目するとその残存量は微量なものとなる。
【0020】
ところで、上述したステップS2の後、大量のムラサキイガイに異臭がなく該ムラサキイガイに有機物が残存すると判断された場合には、ステップS4へ進み、また、ステップS2の後、大量のムラサキイガイに異臭がなく該ムラサキイガイに有機物が残存しないと判断された場合には、ステップS5に進む。さらに、ステップS2の後、大量のムラサキイガイに異臭がなく該ムラサキイガイに有機物も残存せず、しかも土砂の混入もないと判断された場合には、ステップS6へ進む。
【0021】
次に、ステップS7では、貝殻は、次のステップS8の熱処理に必要な所定量に到達するまで、倉庫等で保管される。
次に、ステップS8では、貝殻を、例えば、ロータリーキルン等のプラント設備を利用して、貝殻が炭化しないように略100℃で熱処理する(熱処理ステップ)。これは、貝殻に付着している残存有機物の除去と殺菌を目的としている。なお、本実施の形態では、ロータリーキルンは、キルン長:12m(有効長11m),バーナ部:1m,キルン径:φ1.4mを使用した。貝殻の供給ピッチは1kg/sとして、キルン内の処理速度は30m/minとした。また、キルン内温度は、初期が80℃であり、運転中に炉内及び貝殻の保温効果により120℃まで上昇した。そこで、貝殻の容量4.5mを処理するのに40分程度を要した。本実施の形態では、貝殻を熱処理する設備として上述したロータリーキルンを採用したが、該ロータリーキルンに限らず、適宜の熱処理設備を使用してもよい。なお、ステップS8の完了時点での強熱減量は、ステップS6の完了時点での強熱減量よりも減少している。
なお、ステップS8の直前では、その異臭が搬入時の5%未満に低減されていたが、ステップS8の直後には、その異臭が搬入時の1%未満にまで低減されていた。
【0022】
次に、ステップS9では、貝殻を養鶏用飼料とするために所定粒度以下(本実施の形態では10mm以下)に粉砕する(粒度調整ステップ)。具体的には、貝殻を、例えば、ショベルカーで叩いたり踏んだりして、最終的に篩いにかけて通過分だけを飼料として再資源化する。そこで、ステップS8及びS9の処理を行った後、貝殻が飼料として満足しないものは堆肥処理される。なお、搬入時の容積(52.1m)から生成された飼料容積は7.6mであり、資源化率は約15%であった。また、搬入時の重量(31.8t)から生成された飼料重量は11.8tであり、資源化率は約37%であった。
【0023】
最終的に処理された飼料における有害物質の分析結果については、図2に示すように、問題無しとの結果を得ている。また、最終的に処理された飼料において塩化物イオン濃度を調査した結果、該塩化物イオン濃度は、分析値:40〜520mg-Cl/kgであり、1000mg-Cl/kg未満であった。
【0024】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る二枚貝の再資源化方法では、大量の二枚貝(例えば、ムラサキイガイ)におが屑や木材チップを混合して消臭効果を得るステップS3(消臭ステップ)と、おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を盛土状に放置して有機物を腐敗・分解するステップS4(発酵ステップ)と、おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を洗浄して貝殻以外の異物を除去するステップS5(洗浄ステップ)と、該貝殻を加熱処理するステップS7(熱処理ステップ)とを少なくとも備えているので、大量に排出された二枚貝の処理費用を大幅に削減することができると共に、大量の二枚貝を飼料化して再資源化することができ環境的に良好となる。
【0025】
本実施の形態では、処理する二枚貝としてムラサキイガイを例にして説明したが、これに限定されることなく、例えば、ミドリイガイ、カラスイガイ、帆立貝やアサリ等の二枚貝も適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出された大量の二枚貝を処理して再資源化する方法であって、
前記大量の二枚貝におが屑や木材チップを混合して消臭効果を得る消臭ステップと、
おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を盛土状に放置して有機物を腐敗・分解する発酵ステップと、
おが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を洗浄して貝殻以外の異物を除去する洗浄ステップと、
該貝殻を加熱処理する熱処理ステップと、
を含むことを特徴とする二枚貝の再資源化方法。
【請求項2】
前記洗浄ステップの後に、貝殻を天日干しで乾燥させる乾燥ステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の二枚貝の再資源化方法。
【請求項3】
前記発酵ステップでは、盛土状のおが屑や木材チップを含む大量の二枚貝を一定時間おきに攪拌することを特徴とする請求項1または2に記載の二枚貝の再資源化方法。
【請求項4】
前記熱処理ステップでは、貝殻を略100℃で加熱処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二枚貝の再資源化方法。
【請求項5】
前記熱処理ステップの後に、貝殻を所定粒度以下に粉砕する粒度調整ステップを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二枚貝の再資源化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−110795(P2012−110795A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259089(P2010−259089)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(510307646)株式会社ビジネスサポートOJT (1)
【出願人】(510307657)株式会社新栄重機 (1)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【Fターム(参考)】