説明

二次元コード読取装置、二次元コード読取方法、中心軸に直交する断面が略円形の部材の製造履歴情報管理方法、及び、該管理方法を用いた前記部材の製造方法

【課題】中心軸に直交する断面が略円形の部材に加工形成された二次元コードを読み取る二次元コード読取装置及び方法と、該読取装置を用いた製造履歴情報管理方法と、該管理方法を用いた前記部材の製造方法とを提供する。
【解決手段】二次元コード10を形成する前記部材に加工形成された凹部11は、前記部材の表面の法線方向Rに対して角度βを成すように傾斜した傾斜部12、13を有している。二次元コード読取装置20は、法線方向Rに対して式(1)を満たす角度θを成す方向に傾斜部で反射した光を受光する撮像手段22と、法線方向Rに対して式(2)を満たす角度αを成す方向から傾斜部を照射する照明手段21とを備える。
30°≦θ≦35°…(1)
Δθ=θ−180°+α+2β…(2)
但し、βは、90°未満であり、
Δθは、−10°以上10°以下であり、
θ及びαは、傾斜部が法線方向Rに対して角度βを成す回り方向と、反対回り方向の角度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心軸に直交する断面が略円形の部材(以下、適宜「部材」という)に加工形成された二次元コードを読み取る二次元コード読取装置及び二次元コード読取方法と、1つの部材毎の製造履歴情報を適正に且つ効率良く管理することを可能とする部材の製造履歴情報管理方法と、該管理方法を用いた部材の製造方法とに関する。なお、中心軸に直交する断面が略円形の部材には、前記断面における外周縁が略円形の管状又は棒状の部材などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管の製造工程において、鋼管の製造履歴情報を管理するために、鋼管を識別するための番号を鋼管に手書きで記入し、鋼管に記入した番号に紐付けた製造履歴情報をシートに記載することが行われている。しかし、各製造工程における鋼管の搬送中に鋼管に記入した番号が消失する場合があり、上述の方法では、鋼管の製造履歴情報を適正に管理できなくなる恐れがある。本出願人は、特許文献1において、鋼管等の管を識別するための識別子を示す二次元コードを刻印等によって管に加工形成することを提案している。刻印等によって管に二次元コードを加工形成すれば、各製造工程における管の搬送中に二次元コードが消失することを防止できる。
【0003】
このような二次元コードが管に加工形成された場合においては、例えば、各製造工程を管に施す前に又は施しながら二次元コードを照明手段や撮像手段等からなる光学的な読取手段によって読み出し、各製造工程において取得された製造履歴情報と、読み出した二次元コードによって示される識別子とを紐付けて記憶することで、各製造工程における管の製造履歴情報を適正に管理することができる。
【特許文献1】国際公開WO2008/015871号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、刻印等によって管に加工形成された二次元コードを安定的に精度良く読み取ることが可能な二次元コードの最適な読取条件(例えば、二次元コードの照明方向や撮像方向についての最適な方向)が見出されていなかった。このため、刻印等によって管に加工形成された二次元コードを用いて、各製造工程における管の製造履歴情報を適正に且つ効率良く管理することができない場合があった。
【0005】
本発明は、部材に加工形成された二次元コードを安定的に精度良く読み取ることが可能な二次元コード読取装置及び二次元コード読取方法と、各部材の製造履歴情報を適正に且つ効率良く管理することを可能とする1つの部材毎の製造履歴情報管理方法と、該管理方法を用いた部材の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、まず、刻印等によって部材に加工形成された二次元コードを安定的に精度良く読み取ることが可能な方法として、該二次元コードを形成する凹部を暗く、部材の表面(該二次元コードの凹部が加工形成されていない部分)を明るく撮像することを考えた。しかし、部材の表面は、地肌ムラがあると共に曲率を有している。このため、部材の表面全体を明るく撮像することは困難であった。そこで、本発明者は、二次元コードを形成する凹部を明るく、部材の表面を暗く撮像することを考えた。刻印等によって加工形成された凹部は、同一の刻印部材(例えば、部材に押し付けて凹部を加工形成するピン等)によって加工形成されている限りにおいて、互いに同一の方向に傾斜した傾斜部を有するのが一般的である。本発明者は、この傾斜部の傾斜角に応じて、二次元コードを照射する照明方向や二次元コードを撮像する撮像方向を変更すれば、凹部を明るく撮像でき、ひいては二次元コードを安定的に精度良く読み取ることができるのではないかと考えた。
【0007】
上記考えに基づき、本発明者は、鋭意検討し、図1に示すように、二次元コードを形成する凹部11が、部材の中心軸Z及び該凹部11の中心を含む断面において、鋼管Pなどの部材の表面(凹部11が形成されていない部分)の法線方向Rに対して、所定回り方向(ここでは、説明の便宜上、反時計回り方向とする。)に角度βを成すように傾斜した傾斜部13を有している場合、下記の事項が得られることを見出した。即ち、法線方向Rに対して時計回り方向に角度αを成す方向から傾斜部13を照射した場合、法線方向Rに対して時計回り方向に30°未満の角度θを成す方向に傾斜部13で反射した光L2を受光するように撮像手段22を配置すると、鋼管Pの表面(特に、凹部11周辺の表面)で反射した光L4が撮像手段22に受光され易いことを見出した。
【0008】
このように角度θが30°未満であると、鋼管Pの表面で反射した光L4が撮像手段22に受光され易い理由について、本発明者は次のように考えた。まず、角度θを小さくすると、図2に示すように、鋼管Pの表面で正反射した正反射光L5の鋼管Pの表面における反射方向と、撮像手段22に受光される光L2の傾斜部13における反射方向とが成す角度(α+θ)が小さくなる。鋼管Pの表面で反射する光は一定の広がりを持っており、よって、角度(α+θ)が小さくなると、鋼管Pの表面で反射した光の一部が撮像手段22に受光され易くなると考えた。そこで、鋼管Pの表面で反射した光が撮像手段22に受光され難くするために、角度αを大きくして角度(α+θ)を大きくすることが考えられるが、本発明者は、図1の一点鎖線で示すように照明手段21を配置して、角度αを大きくすると、照明手段21からの光L1’が部材の表面に遮られて、該光L1’が凹部11の内側に入り難くなり、このため、傾斜部13のうち、照明手段21によって照射される領域の面積が小さくなり、明るく撮像できる凹部11の領域が小さくなることを見出した。
【0009】
本発明は、これらの新しい知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
本発明は、中心軸に直交する断面が略円形の部材に加工形成された複数の凹部からなる二次元コードを読み取る二次元コード読取装置であって、前記二次元コード読取装置は、前記二次元コードに対して光を前記部材の中心軸方向に沿った方向から照射する照明手段と、前記二次元コードを前記中心軸方向に沿った方向から撮像する撮像手段とを備え、前記凹部は、前記中心軸及び前記凹部の中心を含む断面において、前記部材の径方向内側に向かうに従い前記中心軸方向の互いの間隔が狭くなる一対の傾斜部を有し、一方の傾斜部は、前記断面における前記部材の表面の法線方向に対して時計回り方向に角度βを成すように傾斜し、他方の傾斜部は、前記法線方向に対して反時計回り方向に角度βを成すように傾斜し、前記撮像手段は、何れか一方の傾斜部で、前記断面における前記法線方向に対して下記式(1)を満たす角度θを成す方向に反射した光を受光するように配置され、前記照明手段は、前記何れか一方の傾斜部を、前記断面における前記法線方向に対して下記式(2)を満たす角度αを成す方向から照射するように配置されたことを特徴とする二次元コード読取装置を提供する。
30°≦θ≦35°…(1)
Δθ=θ−180°+α+2β…(2)
但し、βは、90°未満であり、
Δθは、−10°以上10°以下であり、
θ及びαは、前記法線方向に対して、前記何れか一方の傾斜部が角度βを成す回り方向と、反対回り方向の角度である。
【0011】
角度α、θ及びβが、式(2)を満足する値を採るため、本発明においては、撮像手段は、照明手段によって傾斜部に照射され、該傾斜部で正反射した正反射光を受光し易い位置に配置される。撮像手段が前記の正反射光を受光し易い位置に配置される理由を図1を用いて説明する。なお、説明の便宜上、図1を用いて説明するが、本発明に係る二次元コード読取装置の構成は、図1に示す構成に限定されるものでない。図1に示すように、照明手段21が傾斜部13に照射した光L1のうち傾斜部13で正反射した正反射光L3を最も受光し易い位置に撮像手段22(図1の破線参照)が配置されているとすると、照明手段21が傾斜部13を照射する方向と該傾斜部13との成す角度θ1、及び、傾斜部13における正反射光L3の反射方向と傾斜部13との成す角度θ2は同一である。角度θ1は、{(90°−α)+(90°−β)}であり、角度θ2は、(β+θ)である。よって、正反射光L3を最も受光し易い位置に撮像手段22が配置されているとすると、角度θ1と角度θ2との差Δθ(Δθ=θ2−θ1=θ−180°+α+2β)が0となる。本発明においては、差Δθ(Δθ=θ−180°+α+2β)が−10°以上10°以下とされており、よって、撮像手段22が正反射光L3を受光し易い位置に配置されている。このように、撮像手段が前記の正反射光を受光し易い位置に配置されているので、撮像手段は、凹部を非常に明るく撮像することができる。一方、本発明においては、角度θが30°以上とされていることで、上述のように、部材の表面(凹部が加工形成されていない部分)で反射した光が撮像手段に受光され難く、よって、撮像手段は、部材の表面を非常に暗く撮像することができる。このため、撮像手段が撮像した鋼管Pの撮像画像において、凹部と部材の表面とのコントラストが高い。
【0012】
また、角度θが30°以上とされていることで、部材の表面で反射した光が撮像手段に受光され難くするために角度αを大きくする必要がない。よって、角度αを大きくすることで、明るく撮像できる凹部の領域が小さくなることがなく、撮像手段が撮像した撮像画像において凹部に対応する領域(輝度の高い領域)が小さくなることを防止できる。
【0013】
また、本発明においては、角度θが35°以下とされていることで、撮像手段が撮像した部材の撮像画像において、二次元コードのひずみが大きくなることが防止されている。更に、本発明においては、二次元コードに対して光を部材の中心軸方向に沿った方向から照射し、二次元コードを部材の中心軸方向に沿った方向から撮像する。即ち、本発明においては、照射方向及び撮像方向が部材の中心軸に沿った方向となっている。このため、撮像手段が撮像した部材の撮像画像において、部材の曲率によって、二次元コードがひずむことも抑えられている。
【0014】
以上のような理由によって、本発明に係る二次元コード読取装置によれば、二次元コードを安定的に精度良く読み取ることができる。なお、中心軸に直交する断面が略円形の部材には、前記断面における外周縁が略円形の管状、又は、棒状の部材が含まれる。
【0015】
本発明は、中心軸に直交する断面が略円形の部材に加工形成された複数の凹部からなる二次元コードを読み取る二次元コード読取方法であって、前記二次元コード読取方法は、前記二次元コードに対して光を前記部材の中心軸方向に沿った方向から照射する照明ステップと、前記二次元コードを前記中心軸方向に沿った方向から撮像する撮像ステップとを含み、前記凹部は、前記中心軸及び前記凹部の中心を含む断面において、前記部材の径方向内側に向かうに従い前記中心軸方向の互いの間隔が狭くなる一対の傾斜部を有し、一方の傾斜部は、前記断面おける前記部材の表面の法線方向に対して、時計回り方向に角度βを成すように傾斜し、他方の傾斜部は、前記法線方向に対して反時計回り方向に角度βを成すように傾斜しており、前記撮像ステップにおいては、何れか一方の傾斜部で、前記断面における前記法線方向に対して下記式(3)を満たす角度θを成す方向に反射した光を受光し、前記照明ステップにおいては、前記何れか一方の傾斜部を、前記断面における前記法線方向に対して下記式(4)を満たす角度αを成す方向から照射することを特徴とする二次元コード読取方法としても提供される。
30°≦θ≦35°…(3)
Δθ=θ−180°+α+2β…(4)
但し、βは、90°未満であり、
Δθは、−10°以上10°以下であり、
θ及びαは、前記法線方向に対して前記何れか一方の傾斜部が角度βを成す回り方向と、反対回り方向の角度である。
【0016】
また、本発明は、端部にねじ切削が施される中心軸に直交する断面が略円形の部材の製造工程における製造履歴情報を管理する方法であって、前記製造履歴情報の管理対象となる各製造工程の内、最初の製造工程を施す前に、前記部材を識別するための識別子を示す二次元コードを加工形成手段によって前記部材のねじ切削が施される予定の部位に加工形成する加工形成ステップと、前記各製造工程を施す前に又は前記各製造工程を施しながら、前記部材に加工形成された前記二次元コードを読取手段によって読み取る読取ステップと、前記各製造工程において取得した前記部材の製造履歴情報と、当該部材について読み取った二次元コードが示す識別子とを紐付けて記憶する記憶ステップと、前記製造履歴情報の管理対象となる各製造工程の内、前記部材の端部にねじ切削を施す工程において当該部材に加工形成された前記二次元コードを除去する除去ステップとを含み、前記二次元コードは、前記部材に加工形成された複数の凹部からなり、前記凹部は、前記部材の中心軸及び前記凹部の中心を含む断面において、前記部材の径方向内側に向かうに従い前記中心軸方向の互いの間隔が狭くなる一対の傾斜部を有し、一方の傾斜部は、前記断面における前記部材の表面の法線方向に対して、時計回り方向に角度βを成すように傾斜し、他方の傾斜部は、前記法線方向に対して反時計回り方向に角度βを成すように傾斜しており、前記読取手段は、請求項1に記載の二次元コード読取装置であることを特徴とする前記部材の製造履歴情報管理方法としても提供される。
【0017】
本発明に係る中心軸に直交する断面が略円形の部材の製造履歴情報管理方法によれば、製造履歴情報の管理対象となる各製造工程の内、最初の製造工程を施す前に、部材のねじ切削が施される予定の部位に二次元コードを加工形成し、部材の端部にねじ切削を施す工程において当該部材に加工形成された二次元コードを除去することになる。従って、製造履歴情報の管理対象となる各製造工程においては、二次元コード読取装置によって読み取る際には部材に二次元コードが加工形成されており、取得した部材の製造履歴情報と、当該部材について読み取った二次元コードが示す識別子とを紐付けて記憶することができる。一方、部材の端部にねじ切削を施す工程において二次元コードが除去され、製品としての部材に二次元コードが残存しないため、本発明が適用される部材が耐食性等についての要求仕様が厳格化している油井用鋼管等であったとしても何ら問題は生じない。
【0018】
また、本発明は、前記方法によって部材の製造履歴情報が管理される製造工程を含むことを特徴とする前記部材の製造方法としても提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、部材に加工形成された二次元コードを安定的に精度良く読み取ることが可能であると共に、1つの部材毎の製造履歴情報を適正に且つ効率良く管理することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明を油井用鋼管の製造工程に適用した場合の一実施形態について説明する。
【0021】
図3は、本発明の一実施形態に係る部材の製造履歴情報管理方法を用いて、油井用鋼管の製造履歴情報を管理する管理装置の概略機能ブロック図である。まず、最初に図3を参照して、管理装置100によって製造履歴情報が管理される油井用鋼管の製造工程について概要を説明する。
【0022】
図3に示すように、油井用鋼管は、例えばマンネスマン・マンドレルミル方式による造管工程、熱処理炉における熱処理工程、寸法・形状・外観等の検査や非破壊検査(N1I)を施す工程(以下、単に「検査工程」という)、水圧検査工程を順次経て、検査結果が正常な鋼管については、続いて端部にねじ切削を施すねじ切削工程を経た後、ステンシル表示が施されて梱包されるという一連の製造工程によって製造される。これらの製造工程は、鋼管を順次搬送する製造ライン(オンライン)において実施される。
【0023】
一方、検査工程や水圧検査工程における検査結果が不良であった鋼管については、オンラインから取り出され、管端の切断、管内外面の手入れ、曲がりの矯正、再検査(曲がりが矯正されたか否か等)などのオフラインでの製造工程(以下、単に「オフライン製造工程」という)が実施された後、再びオンラインに戻されて、前述したのと同様に、ねじ切削工程が施される。
【0024】
本実施形態に係る管理装置100は、以上に説明した油井用鋼管の各製造工程の内、検査工程、水圧検査工程、オフライン製造工程、ねじ切削工程における製造履歴情報を管理対象としている。以下、管理装置100の構成と共に、管理装置100が行う製造履歴情報管理方法について説明する。
【0025】
管理装置100は、加工形成手段1と、読取手段2と、管理手段3と、ねじ切削手段4とを備えている。
【0026】
加工形成手段1は、製造履歴情報の管理対象となる各製造工程の内、最初の製造工程(本実施形態では検査工程)を施す前に、鋼管を識別するための識別子を示す二次元コードを鋼管のねじ切削が施される予定の部位に加工形成する。具体的には、鋼管の仕様情報(客先や納期等の情報も含む)に応じて、識別情報(以下、「ワーク番号」という)が上位コンピュータから管理手段3に送信される一方、管理手段3は、同一のワーク番号が付された鋼管であって熱処理工程の熱処理炉から順次排出された鋼管に、その排出順に応じて識別情報(以下、「ピース番号」という)を付与する。そして、これらのワーク番号及びピース番号が管理手段3から加工形成手段1に送信される。加工形成手段1は、送信されたワーク番号及びピース番号に相当する情報から構成される識別子を示す二次元コードを鋼管に加工形成する。なお、二次元コードのコード化アルゴリズムはJISやISO等で規格化されており、加工形成手段1でも、規格化された公知のアルゴリズムに従って、二次元コードを作成すればよい。なお、本実施形態では、二次元コードとしてデータマトリックスを用いる。
【0027】
このように、油井用鋼管に加工形成される二次元コード10(図4(a)参照)は、熱処理炉から順次排出された鋼管Pの表面に加工形成された複数の凹部から構成される。図1は、鋼管Pの中心軸Z及び凹部11の中心を含む鋼管Pの断面図である。凹部11は、図1に示す断面において、鋼管Pの径方向内側に向かうに従い鋼管Pの中心軸Z方向の互いの間隔が狭くなる一対の傾斜部12、13を有している。一方の傾斜部12は、図1に示す断面における鋼管Pの表面(凹部11が形成されていない部分)の法線方向Rに対して時計回り方向に角度βを成すように傾斜している。他方の傾斜部13は、法線方向Rに対して反時計回り方向に角度βを成すように傾斜している。図1に示す断面において、凹部11のうち、一対の傾斜部12、13として現れる部分は、例えば、鋼管Pの径方向内側に向かうに従い細くなる円錐の斜面14(図5(a)参照)や、角錐の対向する1対の斜面15、16(図5(b)参照)や、鋼管Pの径方向内側に向かうに従い互の間隔が狭くなる1対の斜面17、18(図5(c)参照)から構成されるものでもよい。なお、凹部11の中心は、例えば、凹部11における鋼管Pの中心軸Z方向の中央部であり、且つ、鋼管Pの周方向の中央部である部分とすることができる。
【0028】
このような二次元コード10を加工形成する加工形成手段1としては、例えば、機械的なドット刻印装置が好適に用いられる。具体的に説明すれば、加工形成手段1にドット刻印装置が用いられる場合には、熱処理炉から順次排出された鋼管P(図4(b)に示す状態の鋼管P)の表面に、硬質材料からなるピンなどの刻印部材を高速振動させながら押し付ける。そして、形成すべき二次元コード10に応じて、刻印部材を押し付ける位置を変更することにより、複数の凹部11から構成される二次元コード10が加工形成される。なお、二次元コード10は、後述するように、ねじ切削手段4によってねじ切削を施すことにより除去する必要がある。このため、刻印部材を押し付けることによって加工形成される凹部11の深さが、ねじ切削によって形成されるねじの深さ以下となるように、刻印部材の先端形状や刻印部材の押し付け力を適宜調整すれば良い。また、鋼管Pの刻印部材の押し付け位置に加工形成される凹部11において、応力集中や硬度上昇により組織変化が発生する。従って、特に耐食性を要求される油井用鋼管Pでは、その部分の耐食性の劣化が懸念されるため、最終工程までにその部分を除去することが重要な要素となる。
【0029】
読取手段2は、管理対象となる各製造工程を施す前に又は前記各製造工程を施しながら、鋼管Pに加工形成された二次元コード10を読み取る。本実施形態では、読取手段2として、検査工程の直前に二次元コード10を読み取る読取手段2a、水圧検査工程の直前に二次元コード10を読み取る読取手段2b、オフライン製造工程の直前に二次元コード10を読み取る読取手段2c、ねじ切削工程の直前に二次元コード10を読み取る読取手段2dが配置されている。
【0030】
各読取手段2a〜2dには、図4(a)に示す二次元コード読取装置20が用いられている。二次元コード読取装置20は、鋼管Pの中心軸Z周りに鋼管Pを回転させながら、鋼管Pを撮像し、鋼管Pに加工形成された二次元コード10を読み取る。二次元コード読取装置20は、図4(a)に示すように、二次元コード10に対して光L1を照射する照明手段21と、二次元コード10を撮像する撮像手段22と、画像処理手段23とを備える。
【0031】
鋼管Pに加工形成された二次元コード10を読み取る際には、照明手段21及び撮像手段22は、二次元コード10に対して、鋼管Pの径方向外側(図4(c)参照)に配置される。
【0032】
撮像手段22は、二次元コード10を読み取る際には、鋼管Pの径方向外側から撮像手段22を見ると、鋼管Pの中心軸Z方向に沿い(図4(d)参照)、図1に示す断面においては、法線方向Rと角度θを成す方向に傾斜部13で反射した光L2を受光する。なお、角度θは、図1に示す断面において、撮像手段22によって反射した光L2が受光される傾斜部13が法線方向Rに対して角度βを成す回り方向と反対回り方向の角度である。具体的には、傾斜部13は反時計回り方向に法線方向Rに対して角度βを成すので、角度θは、時計回り方向の角度である。この角度θは、式(1)に示す範囲の値を採る。
30°≦θ≦35°…(1)
【0033】
一方、照明手段21は、二次元コード10を読み取る際には、鋼管Pの径方向外側から照明手段21を見ると、鋼管Pの中心軸Z方向に沿い(図4(d)参照)、図1に示す断面においては、法線方向Rと角度αを成す方向から、反射した光L2が撮像手段22に受光される傾斜部13に対して光L1を照射する。なお、角度αは、角度θと同様に、照明手段21が光L1を照射する傾斜部13が法線方向Rに対して角度βを成す回り方向と反対回り方向、即ち、時計回り方向の角度である。
【0034】
角度α、θ及びβは、式(2)を満足する値を採る。
Δθ=θ−180°+α+2β…(2)
角度α、θ及びβが、式(2)を満足する値を採るため、撮像手段22は、照明手段21が傾斜部13によって照射され、傾斜部13で正反射した正反射光L3を受光し易い位置に配置される。図1に示すように、正反射光L3を最も受光し易い位置に撮像手段22(図1の破線参照)が配置されているとすると、照明手段21が傾斜部13を照射する方向と該傾斜部13との成す角度θ1、及び、傾斜部13における正反射光L3の反射方向と傾斜部13との成す角度θ2は同一である。角度θ1は、{(90°−α)+(90°−β)}であり、角度θ2は、(β+θ)である。よって、正反射光L3を最も受光し易い位置に撮像手段22が配置されているとすると、角度θ1と角度θ2との差Δθ(Δθ=θ2−θ1=θ−180°+α+2β)が0となる。本実施形態においては、差Δθが、−10°以上10°以下とされており、よって、撮像手段22が正反射光L3を受光し易い位置に配置されている。このように、撮像手段22が正反射光L3を受光し易い位置に配置されているので、撮像手段22は、凹部11を非常に明るく撮像することができる。一方、角度θが30°以上とされていることで、鋼管Pの表面(凹部11が加工形成されていない部分)で反射した光L4が撮像手段22に受光され難く、よって、撮像手段22は、鋼管Pの表面を非常に暗く撮像することができる。このため、撮像手段22が撮像した鋼管Pの撮像画像において、凹部11と鋼管Pの表面とのコントラストが高い。
【0035】
また、角度θが30°以上とされていることで、鋼管Pの表面で反射した光L4が撮像手段22に受光され難くするために角度αを大きくする必要がない。よって、角度αを大きくすることで、明るく撮像できる凹部11の領域が小さくなることがなく、撮像手段22が撮像した鋼管Pの撮像画像において凹部11に対応する領域(輝度の高い領域)が小さくなることを防止できる。
【0036】
また、角度θが35°以下とされていることで、撮像手段22が撮像した鋼管Pの撮像画像において、二次元コード10のひずみが大きくなることが防止されている。更に、図4(d)に示すように、本実施形態においては、二次元コード10に対して光L1を鋼管Pの中心軸Z方向に沿った方向から照射し、二次元コード10を鋼管Pの中心軸Z方向に沿った方向から撮像する。即ち、本実施形態においては、照射方向及び撮像方向が鋼管Pの中心軸Zに沿った方向となっている。このため、撮像手段22が撮像した鋼管Pの撮像画像において、鋼管Pの曲率によって、二次元コード10がひずむことも抑えられている。
【0037】
撮像手段22は、撮像した鋼管Pの撮像画像を画像処理手段23に送信する。画像処理手段23は、撮像手段22が撮像した二次元コード10を読み取り、読み取った二次元コード10を識別子に変換する手段である。具体的には、画像処理手段23は、該撮像画像を撮像手段22から受信すると、該撮像画像に対して二次元コード10のパターンマッチングを行い、該撮像画像中に二次元コード10に対応する領域があるか否かを判別する。このパターンマッチングにおいて用いられるパターンは、二次元コード10の輪郭である矩形状に輝度の高い画素(凹部11に対応する画素)が並んだパターンである。上述のように、撮像画像においては、凹部11と鋼管Pの表面とのコントラストが高いため、凹部11に対応する画素と鋼管Pの表面に対応する画素との判別が容易である。よって、上述のようなパターンマッチングを精度良く行うことができる。
【0038】
画像処理手段23は、パターンマッチングによって、撮像画像中に二次元コード10に対応する領域があると判別した場合は、二次元コード10に対応する領域について、膨張処理を施す。この膨張処理は、所定輝度以上の画素についてのみ行う。即ち、この膨張処理は、二次元コード10に対応する領域のうち凹部11に対応する領域についてのみ行なわれる。このように、凹部11に対応する領域に膨張処理を施すことで、照明手段21によって照射される領域の面積が小さい凹部11であっても、撮像画像上において面積を大きくすることができる。照明手段21によって照射される領域の面積が小さくなる例として、鋼管Pに付着したスケール等によって照明手段21からの光L1が遮られ、光L1の一部が傾斜部13に届かない場合を挙げることができる。このように、膨張処理を施すことで、例えば、凹部11に対応する輝度の高い領域が、次に説明する二次元コードの認識ソフトにおいて、凹部11として認識されずに、ノイズとして認識されることを防止することができる。
【0039】
画像処理手段23は、膨張処理後、公知の二次元コード10の認識ソフト(例えば、コグネックス社製、IDMax)を用いて、撮像画像から二次元コード10を読み取る。上述のように、撮像画像においては、凹部11と鋼管Pの表面とのコントラストが高いと共に、二次元コード10がひずむことが抑えられているため、二次元コード10の認識ソフトによって二次元コード10を安定的に精度良く読み取ることができる。画像処理手段23は、読み取った二次元コード10を解読して、該二次元コード10を識別子に変換し、該識別子を管理手段3に送信する。
【0040】
なお、画像処理手段23は、上述のパターンマッチングによって、二次元コード10に対応する領域を検出できないときは、撮像手段22に二次元コード10の撮像を再度行うように指示する。画像処理手段23は、例えば、所定枚数の撮像画像に対してパターンマッチングを行っても、二次元コード10に対応する領域を検出できないときは、その時点で二次元コード10のパターンマッチングを終了し、その旨をモニタ等に表示して作業者に報知する。
【0041】
各読取手段2(本実施形態では、二次元コード読取装置20)で二次元コード10が読み取られた鋼管Pには各製造工程が施され、該各製造工程において取得した鋼管Pの製造履歴情報が手動又は自動で管理手段3に入力される。具体的には、読取手段2aで二次元コード10が読み取られた鋼管Pには検査工程が施され、その検査結果(寸法・形状・外観等の検査や非破壊検査の結果)が製造履歴情報として管理手段3に入力される。読取手段2bで二次元コード10が読み取られた鋼管Pには水圧検査工程が施され、その水圧検査結果が製造履歴情報として管理手段3に入力される。読取手段2cで二次元コード10が読み取られた鋼管Pにはオフライン製造工程が施され、その結果(管端の切断、管内外面の手入れ、曲がりの矯正、再検査等に関する情報)が製造履歴情報として管理手段3に入力される。読取手段2dで二次元コード10が読み取られた鋼管Pにはねじ切削工程が施され、そのねじ切削の結果が製造履歴情報として管理手段3に入力される。
【0042】
管理手段3は、各製造工程において取得され入力された鋼管Pの製造履歴情報と、各読取手段2によって送信された当該鋼管Pの識別子とを紐付けて記憶する。換言すれば、管理手段3に鋼管Pの識別子を入力すれば、当該識別子に紐付けられて記憶された鋼管Pの各製造工程における製造履歴情報を抽出することができ、これにより鋼管Pの1本毎の製造履歴情報を適正に管理することが可能である。なお、本実施形態においては、鋼管Pの製造ラインに配設された各製造設備を制御するためのプロセスコンピュータが、管理手段3として機能する構成とされている。
【0043】
ねじ切削手段4は、本実施形態における製造履歴情報の管理対象となる製造工程の最後において、鋼管Pの端部にねじ切削を施して当該鋼管Pに加工形成された二次元コードを除去する(図4(e)参照)。ねじ切削手段4としては、例えば、ねじ山形状の複数の刃部が直線状に配列されたチェザーを用いることができ、当該チェザーの刃部の配列方向を鋼管Pの軸方向に平行に位置決めした後、鋼管Pを回転させながら軸方向に送ることにより各刃部で順次鋼管Pの端部が切削される。
【0044】
なお、ねじ切削工程と後続するステンシル・梱包工程とは、連続したオンラインでの工程であり、両工程において鋼管Pの搬送順序が入れ替わる可能性が無く、且つ両工程はプロセスコンピュータ3で管理されている。従って、上記のようにねじ切削工程を施すことにより鋼管Pに加工形成された二次元コード10を除去したとしても、当該二次元コード10が示す識別子をねじ切削工程における鋼管Pの搬送順序に紐付けてプロセスコンピュータ3に記憶することにより、ステンシル・梱包工程においても、鋼管Pの搬送順序に応じて、前記記憶された識別子を各鋼管Pに紐付けることが可能である。換言すれば、ねじ切削工程で二次元コード10を除去しても、ステンシル・梱包工程を経て出荷される製品としての各鋼管Pと、当該各鋼管Pの識別子・製造履歴情報との紐付けを維持することが可能である。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態において読取手段2として用いた二次元コード読取装置20は、鋼管Pに加工形成された二次元コード10を安定的に精度良く読み取ることができる。このため、二次元コード読取装置20を用いれば、刻印等によって鋼管Pに加工形成された二次元コード10を用いて、製造履歴情報を適正に且つ効率良く管理することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る部材の製造履歴情報管理方法によれば、製造履歴情報の管理対象となる各製造工程の内、最初の製造工程を施す前に、鋼管Pのねじ切削が施される予定の部位に二次元コード10を加工形成し、鋼管Pの端部にねじ切削を施す工程において当該鋼管Pに加工形成された二次元コード10を除去することになる。従って、製造履歴情報の管理対象となる各製造工程においては、二次元コード読取装置20によって読み取る際には鋼管Pに二次元コード10が加工形成されており、取得した鋼管Pの製造履歴情報と、当該鋼管Pについて読み取った二次元コード10が示す識別子とを紐付けて記憶することができる。換言すれば、オンラインでの製造工程のみならず、オフライン製造工程を経た鋼管Pについても、鋼管Pの1本毎の製造履歴情報を識別子によって管理することができる。一方、鋼管Pの端部にねじ切削を施す工程において二次元コード10が除去され、製品としての鋼管Pに二次元コード10が残存しないため、本実施形態に係る部材の製造履歴情報管理方法によって製造履歴情報が管理される製造工程を含む鋼管Pが耐食性等についての要求仕様が厳格化している油井用鋼管等であったとしても何ら問題は生じない。なお、加工形成した二次元コード10をねじ切削で除去した後に、対応する二次元コード10を、オンライン工程であり且つプロセスコンピュータ3で一括管理されているステンシル・梱包工程でステンシル表示しておけば、各鋼管Pの製造履歴情報を後で参照する場合に好都合である。つまり、ステンシル表示された二次元コード10を読み取って該二次元コード10が示す識別子を管理手段3に入力することにより、当該識別子に紐付けられて記憶された鋼管Pの各製造工程における製造履歴情報を容易に抽出することが可能である。
【実施例】
【0047】
【表1】


表1は、各実施例1〜10及び各比較例1〜7における角度θ、角度α、差Δθ、及び、画像処理手段23が二次元コード10を正しく読み取れたか否かの読取結果を示す。なお、各実施例1〜10及び各比較例1〜7においては、角度βは45°とした。
【0048】
図6は、実施例3において、撮像手段22が撮像した鋼管Pの撮像画像である。図6に示すように、撮像画像のうち白い部分が凹部11であり、黒い部分が凹部11の形成されていない鋼管Pの表面である。表1に示すように、実施例3においては、二次元コード10を正しく読み取れた。これは、図6に示すように、撮像画像において、凹部11と凹部11が形成されていない鋼管Pの表面とのコントラストが高く、各凹部11の面積が画像処理手段23によって凹部11として認識されるために充分な大きさであり、二次元コード10のひずみが少ないためである。
【0049】
一方で、比較例2においては、二次元コード10を正しく読み取れなかった。これは、比較例2では、角度θが30°未満であるため、凹部11が形成されていない鋼管Pの表面で反射した光が撮像手段22に受光され易く、撮像画像において、凹部11が形成されていない鋼管Pの表面の輝度が高くなり、凹部11と凹部11が形成されていない鋼管Pの表面とのコントラストが低いからである。また、比較例1においては、角度θが30°未満であっても、凹部11が形成されていない鋼管Pの表面で反射した光が撮像手段22に受光され難くするために、比較例2によりも角度αを大きくした。しかし、比較例1においても、二次元コード10を正しく読み取れなかった。これは次のように考える。角度αを大きくすることにより、照明手段21からの光が凹部11の内側に光が入り難くなるため、傾斜部12、13のうち、照明手段21によって照射される領域の面積が小さくなり、明るく撮像できる凹部11の領域が小さくなる。明るく撮像できる領域が小さいと、二次元コードの認識ソフトが、当該明るい領域を凹部11に対応する領域として認識し難くなるため、二次元コード10が正しく読み取れなかったと考える。また、比較例7においては、二次元コード10を正しく読み取れなかった。これは、角度θが35°を超えることで、鋼管Pの撮像画像において、二次元コード10の撮像手段22に近い側と遠い側とにおいて、鋼管Pの中心軸Z方向と直交する方向(図6の矢印X方向)の寸法が大きく異なり、二次元コード10が大きくひずむためである。また、比較例3〜6においては、二次元コード10が正しく読み取れなかった。比較例3〜6においては、何れも差Δθの絶対値が10°を超え、凹部11からの正反射光が撮像手段22に受光され難いため、撮像画像において、凹部11の輝度が低くなり、凹部11と凹部11が形成されていない鋼管Pの表面とのコントラストが低くなるためである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、鋼管の中心軸及び凹部の中心を含む鋼管の断面図である。
【図2】図2は、鋼管の表面で反射した反射光の一部が撮像手段に受光されることを模式的に示す図である。
【図3】図3は、油井用鋼管の製造履歴情報を管理する管理装置の概略機能ブロック図である。
【図4】図4は、鋼管、及び、二次元コード読取装置を模式的に示す図である。図4(a)は二次元コードが加工形成されている鋼管及び二次元コード読取装置を、図4(b)は熱処理工程が施された直後の鋼管を、図4(c)は鋼管の中心軸方向から見たときの、照明手段及び撮像手段と鋼管との位置関係を、図4(d)は鋼管の径方向外側から見たときの、照明手段及び撮像手段と鋼管との位置関係を、図4(e)はねじ切削手段によってねじ切削が施され二次元コードが除去された鋼管を示す。
【図5】図5は、図1に示す断面において一対の傾斜部として現れる部分の形状の具体例を示す。
【図6】図6は、実施例3における鋼管の撮像画像を示す。
【符号の説明】
【0051】
100…管理装置、20…二次元コード読取装置、21…照明手段、22…撮像手段、23…画像処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に直交する断面が略円形の部材に加工形成された複数の凹部からなる二次元コードを読み取る二次元コード読取装置であって、
前記二次元コード読取装置は、
前記二次元コードに対して光を前記部材の中心軸方向に沿った方向から照射する照明手段と、
前記二次元コードを前記中心軸方向に沿った方向から撮像する撮像手段とを備え、
前記凹部は、前記中心軸及び前記凹部の中心を含む断面において、前記部材の径方向内側に向かうに従い前記中心軸方向の互いの間隔が狭くなる一対の傾斜部を有し、
一方の傾斜部は、前記断面における前記部材の表面の法線方向に対して時計回り方向に角度βを成すように傾斜し、
他方の傾斜部は、前記法線方向に対して反時計回り方向に角度βを成すように傾斜し、
前記撮像手段は、何れか一方の傾斜部で、前記断面における前記法線方向に対して下記式(1)を満たす角度θを成す方向に反射した光を受光するように配置され、
前記照明手段は、前記何れか一方の傾斜部を、前記断面における前記法線方向に対して下記式(2)を満たす角度αを成す方向から照射するように配置されたことを特徴とする二次元コード読取装置。
30°≦θ≦35°…(1)
Δθ=θ−180°+α+2β…(2)
但し、βは、90°未満であり、
Δθは、−10°以上10°以下であり、
θ及びαは、前記何れか一方の傾斜部が前記法線方向に対して角度βを成す回り方向と、反対回り方向の角度である。
【請求項2】
中心軸に直交する断面が略円形の部材に加工形成された複数の凹部からなる二次元コードを読み取る二次元コード読取方法であって、
前記二次元コード読取方法は、
前記二次元コードに対して光を前記部材の中心軸方向に沿った方向から照射する照明ステップと、
前記二次元コードを前記中心軸方向に沿った方向から撮像する撮像ステップとを含み、
前記凹部は、前記中心軸及び前記凹部の中心を含む断面において、前記部材の径方向内側に向かうに従い前記中心軸方向の互いの間隔が狭くなる一対の傾斜部を有し、
一方の傾斜部は、前記断面おける前記部材の表面の法線方向に対して、時計回り方向に角度βを成すように傾斜し、
他方の傾斜部は、前記法線方向に対して反時計回り方向に角度βを成すように傾斜しており、
前記撮像ステップにおいては、何れか一方の傾斜部で、前記断面における前記法線方向に対して下記式(3)を満たす角度θを成す方向に反射した光を受光し、
前記照明ステップにおいては、前記何れか一方の傾斜部を、前記断面における前記法線方向に対して下記式(4)を満たす角度αを成す方向から照射することを特徴とする二次元コード読取方法。
30°≦θ≦35°…(3)
Δθ=θ−180°+α+2β…(4)
但し、βは、90°未満であり、
Δθは、−10°以上10°以下であり、
θ及びαは、前記何れか一方の傾斜部が前記法線方向に対して角度βを成す回り方向と、反対回り方向の角度である。
【請求項3】
端部にねじ切削が施される中心軸に直交する断面が略円形の部材の製造工程における製造履歴情報を管理する方法であって、
前記製造履歴情報の管理対象となる各製造工程の内、最初の製造工程を施す前に、前記部材を識別するための識別子を示す二次元コードを加工形成手段によって前記部材のねじ切削が施される予定の部位に加工形成する加工形成ステップと、
前記各製造工程を施す前に又は前記各製造工程を施しながら、前記部材に加工形成された前記二次元コードを読取手段によって読み取る読取ステップと、
前記各製造工程において取得した前記部材の製造履歴情報と、当該部材について読み取った二次元コードが示す識別子とを紐付けて記憶する記憶ステップと、
前記製造履歴情報の管理対象となる各製造工程の内、前記部材の端部にねじ切削を施す工程において当該部材に加工形成された前記二次元コードを除去する除去ステップとを含み、
前記二次元コードは、前記部材に加工形成された複数の凹部からなり、
前記凹部は、前記部材の中心軸及び前記凹部の中心を含む断面において、前記部材の径方向内側に向かうに従い前記中心軸方向の互いの間隔が狭くなる一対の傾斜部を有し、
一方の傾斜部は、前記断面における前記部材の表面の法線方向に対して、時計回り方向に角度βを成すように傾斜し、
他方の傾斜部は、前記法線方向に対して反時計回り方向に角度βを成すように傾斜しており、
前記読取手段は、請求項1に記載の二次元コード読取装置であることを特徴とする前記部材の製造履歴情報管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造履歴情報管理方法によって前記部材の製造履歴情報が管理される製造工程を含むことを特徴とする前記部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−9274(P2010−9274A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166930(P2008−166930)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(592244376)住友金属テクノロジー株式会社 (43)
【Fターム(参考)】