説明

二次監視レーダによるモードS質問の送信方法及び二次監視レーダ

【課題】ATCRBSトランスポンダによるモードS質問への応答を低減できる二次監視レーダによるモードS質問の送信方法及び二次監視レーダを提供する。
【解決手段】二次監視レーダ1は、最初に送信される第1パルスP1と、パルスの電力レベルを制御する電力制御器27によって、第1パルスP1の電力レベルLよりも電力レベルLが高く設定され、第1パルスP1の次に送信される第2パルスP2とを含むモードS質問QA1、QA2を、モードSトランスポンダ92Sを搭載した航空機91Sへ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モードS信号により質問応答を行う二次監視レーダによるモードS質問の送信方法及び二次監視レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、航空機に搭載されているトランスポンダに対して質問を送信するとともに、その質問に対する様々な情報を応答として受信することにより航空管制のための監視に関わる情報を取得する二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)が知られている。二次監視レーダは、従来から使用されているATCRBSトランスポンダへのモードA/C質問と、近年開発されたモードSトランスポンダへのモードS質問とを送信している。
【0003】
上述した二次監視レーダでは、ビームドエルタイムを複数のスイープに分割する。ここで、ビームドエルタイムとは、二次監視レーダの方位方向に回転走査するアンテナの回転速度と送信ビーム幅とに基づく角度範囲に対応した時間である。そして、二次監視レーダは、各スイープをオールコール期間とロールコール期間とに分割して監視が行われる。
【0004】
オールコール期間では、二次監視レーダは、ATCRBSトランスポンダを搭載した航空機を対象とするモードA/C専用オールコール質問を送信するとともに、モードSトランスポンダを搭載した航空機を対象とするモードS専用オールコール質問を送信する。このように、オールコール期間では、2つのモードの質問を送信して、2つのトランスポンダを捕捉している。
【0005】
一方、ロールコール期間では、二次監視レーダは、モードSトランスポンダを搭載した航空機を対象とするモードSロールコール質問を送信して、応答が重ならないように捕捉を行っている。このモードSロールコール質問は、モードSアドレスを含み個別の航空機を対象として送信される。
【0006】
両モードへの質問は、最初に送信される第1パルスと、次に送信される第2パルスとを含む。いずれのモードにおいても、第1パルスと第2パルスとのパルス間隔は等しい状態で送信されるとともに、第1パルスの電力レベルと第2パルスの電力レベルとが等しい状態で送信される。尚、これらのオールコール質問及びモードSロールコール質問のパルス間隔等は、国際的に統一された規格に基づいて運営されている(非特許文献1参照)。
【0007】
ここで、モードA/C専用オールコール質問では、第1パルスが指向性のINTパルスなのに対し、第2パルスは、無指向性のサイドローブ抑圧(SLS:Side Lobe Suppression)パルスである。ATCRBSトランスポンダは、サイドローブから受信した質問への応答を抑圧するために、第1パルスの電力レベルと第2パルスの電力レベルとを比較して、
「第1パルスの電力レベル>第2パルスの電力レベル」
の時にのみ応答するように設定されている。これにより、ATCRBSトランスポンダは、ビームの中心及びその近傍に位置するときに受信した質問にのみ応答することができる。
【0008】
ここで、モードS質問では、第1パルス及び第2パルスの両方が指向性を有するINTパルスなので、略同じ電力レベルで第1パルス及び第2パルスが航空機のトランスポンダに受信される。このため、上述した電力レベルの比較によって、ATCRBSトランスポンダは、モードS質問の誤認識によるモードS質問への応答をも抑圧することができる。
【非特許文献1】ICAO、「Aeronautical Telecommunications Annex 10 VolumeIV Surveillance Radar and Collision Avoidance System」、1998年7月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、「第1パルスの電力レベル>第2パルスの電力レベル」の判定条件は調整によって異なるとともに、電波環境によっては、ATCRBSトランスポンダが、第1パルスと第2パルスの電力レベルが等しくなるように送信しているモードS質問をモードA/C専用オールコール質問と誤認識してしまい、応答するといった課題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、ATCRBSトランスポンダによるモードS質問への応答を低減できる二次監視レーダによるモードS質問の送信方法及び二次監視レーダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る二次監視レーダによるモードS質問の送信方法は、モードSトランスポンダを搭載した航空機への二次監視レーダによるモードS質問の送信方法において、最初に第1パルスを送信する第1パルス送信ステップと、パルスの電力を制御する電力制御手段によって、第1パルスの電力レベルよりも電力レベルが高く設定された第2パルスを第1パルスの次に送信する第2パルス送信ステップとを含む。
【0012】
本発明に係る二次監視レーダは、最初に送信する第1パルス及び第1パルスの次に送信する第2パルスを含むモードS質問を生成する送信制御手段と、送信制御手段に、第2パルスの電力レベルを第1パルスの電力レベルよりも大きくする電力レベル信号を供給する電力制御手段とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1パルスの電力レベルよりも第2パルスの電力レベルを高く設定することによって、ATCRBSトランスポンダがモードS質問に対して応答することを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明による第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態による二次監視レーダと航空機との関係を示す概略図である。図2は、二次監視レーダのブロック図である。図3は、モードS質問に含まれるパルスを説明する図である。図4は、モードA/C質問に含まれるパルスを説明する図である。図5は、質問及び応答のタイムスケジュールを説明する図である。尚、図3及び図4における縦軸は電力レベルを示し、横軸は時間を示す。
【0015】
図1に示すように、第1実施形態による二次監視レーダ1は、トランスポンダ92A、92Sが搭載された航空機91A、91Sと質問及び応答を送受信して、種々の情報を得て監視するためのものである。
【0016】
二次監視レーダ1は、地上局2に設置される。二次監視レーダ1は、アンテナ3と、送受信部4と、処理部5とを備えている。
【0017】
図2に示すように、送受信部4は、ミキサー11と、送信器12と、受信器13とを備えている。
【0018】
ミキサー11は、アンテナ3と、送信器12及び受信器13とを中継する。ミキサー11は、送信器12から送られる質問Q、QA1、QA2をアンテナ3へと送信する。また、ミキサー11は、アンテナ3から送られる応答R、RA1、RA2を受信器13へと送信する。
【0019】
送信器12は、処理部5から入力された質問Q、QA1、QA2をミキサー11及びアンテナ3を介して、航空機91A、91Sへと送信する。送信器12は、メインビームから送信されるINTパルスを出力する主送信器(図示略)と、オムニビームから送信されるサイドローブ抑圧(SLS)パルスを出力する副送信器(図示略)とを含む。
【0020】
受信器13は、質問Q、QA1、QA2に対する航空機91A、91Sからの応答R、RA1、RA2を、アンテナ3及びミキサー11を介して受信する。受信器13は、受信した応答R、RA1、RA2を、増幅検波及び量子化によるデジタル化した後、後述するATCRBS応答処理器24及びモードS応答処理器23に供給する。
【0021】
図2に示すように、処理部5は、送信制御器21と、チャネル管理器22と、モードS応答処理器23と、ATCRBS応答処理器24と、タイミング信号発生器25と、監視処理器26と、電力制御器27とを備えている。
【0022】
送信制御器21は、送信器12と、チャネル管理器22と、タイミング信号発生器25と、監視処理器26とに接続されている。
【0023】
送信制御器21は、オールコール期間TAにおいて、監視処理器26から供給される自サイトID(識別符号)及びPR値(応答確率値)に基づき、モードS専用オールコール質問QA1とモードA/C専用オールコール質問Qを生成する。
【0024】
モードS専用オールコール質問QA1は、図3に示すように、指向性のINTパルスである第1パルスP1、第2パルスP2及び第6パルスP6と、無指向性のSLSパルスである第5パルスP5とを含む。第5パルスP5は、モードSトランスポンダ92Sがサイドローブやバックローブの質問に対して応答することを抑制するためのものである。送信制御器21は、監視処理器26を介して電力制御器27から送られる電力レベル信号LSに基づき、モードS専用オールコール質問QA1の第2パルスP2の電力レベルLが第1パルスP1の電力レベルLに比べて大きくなるように生成する。第1パルスP1の電力レベルLに対して、第2パルスP2の電力レベルLは3dB以上大きいことが好ましいが、特に限定されるものではない。尚、第5パルスP5及び第6パルスP6の電力レベルは、第1パルスP1の電力レベルと同じLである。
【0025】
モードA/C専用質問Qは、図4に示すように、指向性のINTパルスである第1パルスP1及び第4パルスP4と、無指向性のSLSパルスである第2パルスP2を含む。送信制御器21は、モードA/C専用質問Qに含まれるパルスP1〜P4の電力レベルLを全て等しくなるように生成する。
【0026】
送信制御器21は、ロールコール期間TRにおいて、監視処理器26から供給される航空機91SのモードSアドレス、距離及び方位等の航空機情報に基づき、モードSロールコール質問QA2を生成する。モードSロールコール質問QA2は、図3に示すモードS専用オールコール質問QA1と同様に、指向性のINTパルスである第1パルスP1、第2パルスP2及び第6パルスP6と、無指向性のSLSパルスである第5パルスP5とを含む。ロールコール期間TRにおいても、送信制御器21は、チャネル管理器22及び監視処理器26を介して電力制御器27から送られる電力レベル信号LSに基づき、モードSロールコール質問QA2の第2パルスP2の電力レベルLが第1パルスP1の電力レベルLに比べて大きくなるように生成する。
【0027】
送信制御器21は、送信器12及びミキサー11を介して、生成した各質問Q、QA1、QA2をアンテナ3から送信する。
【0028】
チャネル管理器22は、送信制御器21と、モードS応答処理器23と、ATCRBS応答処理器24と、タイミング信号発生器25と、監視処理器26とに接続されている。
チャネル管理器22は、タイミング信号発生器25からの信号に基づき、図5に示したように、ビームドエルタイムTにおけるオールコール期間TA及びロールコール期間TRの割り当て設定を行う。
【0029】
また、チャネル管理器22は、オールコール期間TAにおいて、図5に示すように、モードS専用オールコール質問QA1及びモードA/C専用オールコール質問Qに対する応答を受信するための、検出ウインドウWのスケジューリングを設定する。
【0030】
チャネル管理器22は、ロールコール期間TRにおいて、モードSロールコール質問QA2に対応するモードSロールコール質問応答RA2を検出するための検出ウインドウWRのスケジューリングを設定する。更に、チャネル管理器22は、送信制御器21及びモードS応答処理器23のRFチャネルにおける動作を統括制御する。具体的には、チャネル管理器22は、ロールコール期間TRにおいて、RFチャネルの有効活用のために、距離が遠い航空機91Sから順番に、モードSロールコール質問QA2及びモードSロールコール質問応答RA2が重ならないようにスケジュールする。
【0031】
モードS応答処理器23は、受信器13と、チャネル管理器22と、タイミング信号発生器25と、監視処理器26とに接続されている。モードS応答処理器23は、モードSトランスポンダ92Sを搭載した航空機91SからのモードS専用オールコール質問応答RA1及びモードSロールコール質問応答RA2を検出して、処理する。
【0032】
具体的には、オールコール期間TAにおいて、モードS応答処理器23は、受信器13から供給されたオールコール質問応答RA1に含まれる各航空機91SのモードSアドレスや位置等の航空機情報から、自サイト(地上局)から当該航空機91Sまでの距離や方位を測定する。モードS応答処理器23は、自サイトIDとPI( Parity/InterrogatorID )フィールドが一致するか否かを判定し、一致した応答を処理対象応答として、監視処理器26に供給する。一方、自サイトIDとPIフィールドとが、一致しないオールコール質問応答RA1は処理対象外として破棄する。
【0033】
また、ロールコール期間TRにおいて、モードS応答処理器23は、先のオールコール期間TAにおいて受信したモードSアドレスを予測アドレスとし、予測アドレスと受信したモードSアドレスとが一致する場合のみモードSロールコール質問応答RA2を処理対象として、監視処理器26に供給する。予測アドレスと受信したモードSアドレスとが一致しない場合は、処理対象外として、取得したモードSロールコール質問応答RA2を破棄する。
【0034】
ATCRBS応答処理器24は、受信器13と、チャネル管理器22と、タイミング信号発生器25と、監視処理器26とに接続されている。ATCRBS応答処理器24は、オールコール期間TAにおいて、ATCRBSトランスポンダ92Aを搭載した航空機91AからのモードA/C専用オールコール質問応答Rを検出して、処理する。具体的には、ATCRBS応答処理器24は、受信器13から供給されたモードA/C専用オールコール質問応答Rを解読して、航空機91Aの方位及び距離の測定等を行い、航空機91Aの航空機情報を航空機91A毎に編集する。
【0035】
タイミング信号発生器25は、送信制御器21と、チャネル管理器22と、モードS応答処理器23と、ATCRBS応答処理器24と、監視処理器26とに接続されている。タイミング信号発生器25は、処理部5全体のシステムを統括制御すべく、アンテナ3の方位方向におけるシステムの動作や質問信号形成等のためのタイミングを形成して供給する。
【0036】
監視処理器26は、送信制御器21と、チャネル管理器22と、モードS応答処理器23と、ATCRBS応答処理器24と、タイミング信号発生器25とに接続されている。
【0037】
監視処理器26には、航空機91A、91Sとの間の質問及び応答に必要な自サイトID(識別符号)やPR(応答確率)値等のパラメータが予め設定され、メモリに記憶されている。監視処理器26は、相関判定を行うための相関値や、応答処理器23、24から供給された航空機情報がメモリに記憶されている。そして、監視処理器26は、次に応答処理器23、24から供給される航空機情報と、既に記憶されている航空機情報との相関を相関値に基づいて判定し、相関がある場合は、検出レポートとして出力するとともに、当該航空機情報を含む制御信号を送信制御器21及びチャネル管理器22に供給する。
【0038】
電力制御器27は、監視処理器26に接続されている。電力制御器27は、モードS質問QA1、QA2の第2パルスP2の電力レベルLを調整する。具体的には、電力制御器27は、オールコール期間TAにおいて、監視処理器26を介して、第2パルスP2の電力レベルLを第1パルスP1の電力レベルLに比べて大きくする電力レベル信号LSを送信制御器21に供給する。電力制御器27は、ロールコール期間TRにおいて、監視処理器26及びチャネル管理器22を介して、第2パルスP2の電力レベルLを第1パルスP1の電力レベルLに比べて大きくする電力レベル信号LSを送信制御器21に供給する。
【0039】
次に、二次監視レーダ1と送受信する航空機91S、91Aについて簡潔に説明する。
【0040】
図1に示すように、航空機91Aは、二次監視レーダ1のアンテナ3から送信されたモードA/C専用オールコール質問Qを受信するとともに、そのモードA/C専用オールコール質問Qに対するモードA/C専用オールコール質問応答Rを、地上局2の二次監視レーダ1に向けて送信するためのアンテナ93A及びATCRBSトランスポンダ92Aとが搭載されている。ATCRBSトランスポンダ92Aは、送受信部94Aと、送受信部94Aに接続された信号処理部95Aを備えている。信号処理部95Aは、質問Q、QA1、QA2に含まれる最初の第1パルスP1の電力レベルL及び第2パルスP2の電力レベルLを比較して「L>L」の場合のみ応答するように構成されている。
【0041】
航空機91Sは、二次監視レーダ1のアンテナ3から送信されたモードS質問QA1、QA2を受信するとともに、そのモードS質問QA1、QA2に対するモードS質問応答RA1、RA2を、地上局2の二次監視レーダ1に向けて送信するためのアンテナ93S及びモードSトランスポンダ92Sとが搭載されている。モードSトランスポンダ92Sは、送受信部94Sと、送受信部94Sに接続された信号処理部95Sとを備えている。
【0042】
次に、図面を参照して、二次監視レーダ1と航空機91A、91Sとの送受信方法について説明する。
【0043】
まず、チャネル管理器22によって設定された図5に示すオールコール期間TAでは、二次監視レーダ1の監視処理器26が、送信制御器21に自サイトID及びPR値を供給する。送信制御器21は、これらの情報に基づきオールコール質問QA1、Qを生成する。そして、送信制御器21は、送信器12及びアンテナ3を介して、オールコール質問QA1、Qを送信する。以下、送信制御器21によって生成される各オールコール質問QA1、Qに含まれるパルスの構成について個別に説明する。
【0044】
まず、モードS専用オールコール質問QA1に含まれるパルスについて図3を参照して説明する。モードS専用オールコール質問QA1を送信する際には、図3に示すように、最初に、INTパルスである0.8μsのパルス幅の第1パルスP1が送信される。次に、第1パルスP1が送信開始から2.0μs後に、INTパルスである0.8μsのパルス幅の第2パルスP2が送信される。ここで、第2パルスP2の電力レベルLは、電力制御器27から監視処理器26を介して送信制御器21に供給される電力レベル信号LSによって、第1パルスP1の電力レベルLよりも大きくなるように制御される。その後、INTパルスである第6パルスP6が送信されるともに、SLSパルスである第5パルスP5が送信される。
【0045】
次に、モードA/C専用オールコール質問Qに含まれるパルスについて図4を参照して説明する。図4に示すように、INTパルスである0.8μsのパルス幅の第1パルスP1が送信される。次に、第1パルスP1が送信開始から2.0μsの後に、SLSパルスである0.8μsのパルス幅の第2パルスP2が送信される。ここで、モードA/C専用オールコール質問Qを生成する際には、電力レベル信号が供給されないので、第2パルスP2の電力レベルLは、第1パルスP1の電力レベルLと等しくなるように制御される。その後、INTパルスである、0.8μsのパルス幅の第3パルスP3及び0.8μsのパルス幅の第4パルスP4が送信される。
【0046】
次に、チャネル管理器22によって設定されたオールコール期間TAの検出ウインドウWの間には、航空機91A、91Sから応答R、RA1が送信される。
【0047】
具体的には、航空機91Sに搭載されたモードSトランスポンダ92Sは、モードS専用オールコール質問QA1に含まれる第1パルスP1と第2パルスP2とに含まれるプリアンブルによりモードS専用オールコール質問QA1であると判別して、モードS専用オールコール質問応答RA1を送信する。
【0048】
一方、航空機91Aに搭載されたATCRBSトランスポンダ92Aは、モードS専用オールコール質問QA1の第1パルスP1の電力レベルLと第2パルスP2の電力レベルLとを比較する。ここで、モードS専用オールコール質問QA1は、第1パルスP1及び第2パルスP2の両方が指向性のINTパルスなので、受信されても「L<L」状態を維持する。従って、ATCRBSトランスポンダ92Aは、モードS専用オールコール質問QA1に対しては応答しない。尚、ATCRBSトランスポンダ92Aが搭載された航空機91Aでは、モードA/C専用オールコール質問Qの第1パルスP1の電力レベルLと第2パルスP2の電力レベルLを比較して、受信時に「L>L」と判定されたモードA/C専用オールコール質問Qに対しては、モードA/C専用オールコール質問応答Rを送信する。
【0049】
次に、チャネル管理器22によって設定されたオールコール期間TAの検出ウインドウWの間にオールコール質問応答R、RA1を受信した二次監視レーダ1では、以下の処理が行われる。
【0050】
まず、モードS専用オールコール質問応答RA1が入力されたモードS応答処理器23では、モードS専用オールコール質問応答RA1の有するモードSアドレスを取得するとともに、位置等の航空機情報から、地上局2から当該航空機91Sまでの距離や方位等を測定する。そして、モードS応答処理器23は、自サイトIDとPIフィールドが一致するか否かを判定し、一致した応答を処理対象応答として、監視処理器26に供給し、一致しない不一致応答データは処理対象外として破棄する。
【0051】
モードA/C専用オールコール質問応答Rが入力されたATCRBS応答処理器24では、地上局2から当該航空機91Aまでの距離や高度等を測定するとともに、自サイトIDとPIフィールドが一致するか否かを判定し、一致した応答を処理対象応答として、監視処理器26に供給し、一致しない不一致応答データは処理対象外として破棄する。
【0052】
次に、チャネル管理器22によって設定された図5に示すロールコール期間TRでは、モードSトランスポンダ92Sを搭載した航空機91SにモードSロールコール質問QA2が送信される。モードSロールコール質問QA2は、モードSアドレスに基づいていずれかの航空機91Sを特定して送信する。モードSロールコール質問QA2は、図3に示すモードS専用オールコール質問QA1と同様の波形を有する。即ち、第2パルスP2の電力レベルLは、電力制御器27から監視処理器26及びチャネル管理器22を介して送信される電力レベル信号LSによって、第1パルスP1の電力レベルLよりも大きくなるように制御されて、モードSロールコール質問QA2は送信される。
【0053】
次に、チャネル管理器22によって設定されたロールコール期間TRの検出ウインドウWRの間に、モードSトランスポンダ92Sを搭載した航空機91Sから応答RA2が送信される。
【0054】
具体的には、モードSトランスポンダ92Sが搭載された航空機91Sでは、モードSロールコール質問QA2に含まれるモードSアドレスを解読して、自機へのモードSロールコール質問QA2に対してのみモードSロールコール応答RA2を送信する。
【0055】
一方、ATCRBSトランスポンダ92Aが搭載された航空機91Aでは、モードSロールコール質問QA2を受信しても、第1パルスP1及び第2パルスP2の電力レベルが「L<L」なので、モードSロールコール質問QA2に対しては応答しない。
【0056】
以後、同様の動作によって、これらの質問Q、QA1、QA2及び応答R、RA1、RA2が、二次監視レーダ1及び航空機91A、91Sとの間で送受信される。
【0057】
上述したように、第1実施形態による二次監視レーダ1は、第1パルスP1の電力レベルLよりも第2パルスP2の電力レベルLを大きく設定した状態で、モードS質問QA1、QA2を送信している。このため、「L>L」の場合のみ応答するように設定されたATCRBSトランスポンダ92Aが、モードS質問QA1、QA2を誤認識して、応答することを低減できる。
【0058】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
【0059】
上述した実施形態における数値等は適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態による二次監視レーダと航空機との関係を示す概略図である。
【図2】二次監視レーダのブロック図である。
【図3】モードS質問に含まれるパルスを説明する図である。
【図4】モードA/C質問に含まれるパルスを説明する図である。
【図5】質問及び応答のタイムスケジュールを説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
1 二次監視レーダ
2 地上局
3 アンテナ
4 送受信部
5 処理部
11 ミキサー
12 送信器
13 受信器
21 送信制御器
22 チャネル管理器
23 応答処理器
24 応答処理器
25 タイミング信号発生器
26 監視処理器
27 電力制御器
91S、91A 航空機
92S、92A トランスポンダ
93S、93A アンテナ
94S、94A 送受信部
95S、95A 信号処理部
、L、L 電力レベル
LS、LS 電力レベル信号
P1〜P6 パルス
Q モードA/C専用オールコール質問
QA1 モードS専用オールコール質問
QA2 モードSロールコール質問
R モードA/C専用オールコール質問応答
RA1 モードS専用オールコール質問応答
RA2 モードSロールコール質問応答
T ビームドエルタイム
TA オールコール期間
TR ロールコール期間
W 検出ウインドウ
WR 検出ウインドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モードSトランスポンダを搭載した航空機への二次監視レーダによるモードS質問の送信方法において、
最初に第1パルスを送信する第1パルス送信ステップと、
パルスの電力を制御する電力制御手段によって、前記第1パルスの電力レベルよりも電力レベルが高く設定された第2パルスを前記第1パルスの次に送信する第2パルス送信ステップとを備えることを特徴とする二次監視レーダによるモードS質問の送信方法。
【請求項2】
前記第2パルス送信ステップは、
全ての航空機に同じ質問を送信するオールコール期間、及び、各航空機に個別の質問を送信するロールコール期間の両方の期間で行われることを特徴とする請求項1に記載の二次監視レーダによるモードS質問の送信方法。
【請求項3】
最初に送信する第1パルス及び前記第1パルスの次に送信する第2パルスを含むモードS質問を生成する送信制御手段と、
前記送信制御手段に、前記第2パルスの電力レベルを前記第1パルスの電力レベルよりも大きくする電力レベル信号を供給する電力制御手段とを備えることを特徴とする二次監視レーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−71745(P2010−71745A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238067(P2008−238067)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】