説明

二次監視レーダ制御装置及び二次監視レーダ制御方法

【課題】航空機を迅速且つ正確に捕捉可能とする。
【解決手段】応答信号がビーム内で受信されたかを判定するビーム内/外判定処理部14と、応答信号に高度情報が含まれているか否かを判定し、応答信号がサイドローブ受信されておらず、且つビーム外で受信され、さらに高度情報が含まれていない場合、正常な応答であると判定し、質問信号の送信を少なくとも所定の期間停止させ、応答信号がサイドローブ受信されておらず、且つビーム外で受信され、さらに高度情報が含まれている場合、正常ではない応答であると判定し、応答信号がビーム内で受信されるまで質問信号を反復して送信させるターゲット判定処理部17とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空管制に使用される二次監視レーダの制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制に使用される航空機監視用レーダは、一次監視レーダ(PSR:Primary Surveillance Radar)と二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)とに大別される。
【0003】
上記のPSRは、地上から電波を発し、これの反射波を受信処理することにより航空機の位置情報を取得するものである。
【0004】
一方、SSRは、航空機に搭載されたトランスポンダに質問信号を送信し、これに対する応答信号を受信することにより航空機に関する各種情報を得るものである。
【0005】
なお、このSSRは、得ようとする情報の種別によりモードA、モードC、モードSに分類され、モードAは航空機の識別情報を得るためのものであり、モードCは高度情報を得るためのものであり、モードSは個別選択呼び出し機能を有し、上記の情報(識別情報及び高度情報)に加えて進路情報や速度情報等を得ることができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
また、以降の説明においては、上記のモードAとモードCを“ATCRBS(Air Traffic Control Rader Beacon System)”もしくは“モードA/C”と総称する。
【非特許文献1】橋田芳男、大友恒、久慈義則「航空管制用二次監視レーダ−SSRモードS」、東芝レビューVol.59 No.2(2004)、p58-61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のSSRにおいては、航空機の捕捉を行う期間がオールコール期間(モードS及びATCRBSトランスポンダの捕捉を行う期間)と、ロールコール期間(モードSトランスポンダに対する個別質問・応答受信期間)とに分け、地上局のアンテナから照射されるビームの範囲(幅)内に位置する航空機の捕捉を行う。このため、上記の期間をどのように設定し、このなかで如何に効率よく質問信号を送信し、応答を受信するかが重要となる。
【0008】
従来の技術においては、図5(a)に示すように、ビーム幅(レーダの監視幅)18内にあり、且つ測角の精度の高い範囲(119)内で受信した応答信号112のみを採用し、それ以外は、正常な応答としては使用していない。
【0009】
つまり、図中の120の範囲内で受信した応答信号112aや121の範囲内で受信された応答信号112bは正常な応答と認識せず、上記の正常な応答が受信されるまで質問信号111を送信し続ける。
【0010】
しかしながら、モードSにおいてデータリンク機能等が付加されると、質問長が33.75us,応答長が120usとなり、さらに、図5(b)に示すように、1回の質問で複数の応答(最大で16応答:136μs×16=約2.2msもの時間が必要となる)を受信する場合もあり、今後予想される航空機数の増加を考慮すると、時間的に全ての航空機を捕捉することが困難となる可能性がある。
【0011】
上記の事情に鑑み本発明は、航空機を迅速且つ正確に捕捉可能な二次監視レーダ制御装置及び二次監視レーダ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、質問信号を航空機に搭載されるトランスポンダへ送信し、質問信号に対する応答信号を受信することにより航空機の状態を監視する二次監視レーダを制御する二次監視レーダ制御装置であって、応答信号がサイドローブ受信されているか否かを判定し、さらに応答信号がビーム内で受信されたかを判定する受信状態判定手段と、応答信号に高度情報が含まれているか否かを判定し、応答信号がサイドローブ受信されておらず、且つビーム外で受信され、さらに高度情報が含まれていない場合、正常な応答であると判定し、質問信号の送信を少なくとも所定の期間停止させ、応答信号がサイドローブ受信されておらず、且つビーム外で受信され、さらに高度情報が含まれている場合、正常ではない応答であると判定し、応答信号がビーム内で受信されるまで質問信号を反復して送信させる送信制御手段とを有することを要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、質問信号を航空機に搭載されるトランスポンダへ送信し、質問信号に対する応答信号を受信することにより航空機の状態を監視する二次監視レーダを制御する二次監視レーダ制御方法であって、応答信号がサイドローブ受信されているか否かを判定し、さらに応答信号がビーム内で受信されたかを判定する受信状態判定工程と、応答信号に高度情報が含まれているか否かを判定し、応答信号がサイドローブ受信されておらず、且つビーム外で受信され、さらに高度情報が含まれていない場合、正常な応答であると判定し、質問信号の送信を少なくとも所定の期間停止させ、応答信号がサイドローブ受信されておらず、且つビーム外で受信され、さらに高度情報が含まれている場合、正常ではない応答であると判定し、応答信号がビーム内で受信されるまで質問信号を反復して送信させる送信制御工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、応答信号がサイドローブ受信されておらず、且つビーム外で受信され、さらに高度情報が含まれていない場合、正常な応答であると判定し、質問信号の送信を少なくとも所定の期間停止させ、応答信号がサイドローブ受信されておらず、且つビーム外で受信され、さらに高度情報が含まれている場合、正常ではない応答であると判定し、応答信号がビーム内で受信されるまで質問信号を反復して送信させるため、航空機を迅速且つ正確に捕捉可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を提示しつつ本発明の二次監視レーダ制御装置及び二次監視レーダ制御方法について説明する。
なお、以下の実施例は、あくまでも本発明の説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素又は全要素を含んだ各種の実施例を採用することが可能であるが、これらの実施例も本発明の範囲に含まれる。
また、以下の実施例を説明するための全図において、同一の要素には同一の符号を付与し、これに関する反復説明は省略する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例に係るSSR(二次監視レーダ)システム1の構成図である。このSSRシステム1は、航空機2に搭載されるトランスポンダ3及びアンテナ6と、地上に設置されるインタロゲータ7及び水平方向に360°回転可能に構成されたアンテナ10とからなる。
【0017】
トランスポンダ3は、アンテナ6に接続された送受信部4と、これに接続された制御部5とからなり、インタロゲータ7は、アンテナ10に接続された送受信部8と、これに接続された制御部(2値化処理部)9からなる。なお、本図においては、ユーザによる操作や各種情報の表示等を行うためのインタフェース部などの記載は省略している。
【0018】
質問信号(モードS質問信号)11は、送受信部8及びアンテナ10により送信され、これを受信したトランスポンダ3は、これに対する応答信号(モードS応答信号)12を送信し、この応答信号12は、アンテナ10及び送受信部8により受信され、制御部9により2値化処理される。
【0019】
図2は、図1の制御部9の構成図である。この制御部9は、プリアンブル検出処理部13と、ビーム内/外判定処理部14と、応答デコード処理部15と、モノパルス算出処理部16と、ターゲット判定処理部17とからなる。
【0020】
プリアンブル検出処理部13は、送受信部8により応答信号12が受信されると、この内容を解読し、プリアンブルパルスを検出する。
【0021】
応答デコード処理部15は、プリアンブルパルスが検出されると、パリティをはずし、モードSアドレスや応答情報(モードSアドレス以外の情報)等の種別判定、干渉や電波環境に起因する受信エラーの有無の判定を行う。
【0022】
また、ビーム内/外判定処理部14は、応答信号12の受信状態を判定するためのものであり、Σビーム(後述)のレベルとΔビーム(後述)のレベルとを比較することにより受信された応答信号12がビーム幅(図3の18)内で受信されたか、それともビーム幅外で受信されたかを判定する。また、ΣビームのレベルとΩビーム(後述)のレベルとを比較することにより応答信号12がサイドローブ受信された信号であるか否かを判定する。
【0023】
また、モノパルス算出処理部16は、応答信号12のモノパルス値を算出し、受信エラーの有無を判定する。
【0024】
なお、前記のΣビームとは図3の19の領域において受信されたビームを、Δビームとは図3の20の領域において受信されたビームを、Ωビームとは図3の21の領域において受信されたビームをそれぞれ指す。
【0025】
また、前記の処理においては、“Σビームのレベル>Δビームのレベル” の条件を満たしている場合に、応答信号12がビーム幅18内で受信されたと判定し、“Σビームのレベル>Ωビームのレベル”の条件を満たしている場合に応答信号12がサイドローブ受信された信号ではないと判定する。
【0026】
なお、上記の判定処理の結果、つまり、サイドローブ判定結果、ビーム内/外判定結果は、それぞれが区別された情報として応答デコード処理部15に通知される。なお、これらは最終的にターゲット判定処理部に送られる。
【0027】
従来の技術では、サイドローブ判定結果と、ビーム内/外判定結果と、受信エラー判定結果とを単一の情報として通知していたが、本発明においては、これら3種類(応答デコード処理部15の受信エラー判定結果と、モノパルス算出処理部16の受信エラー判定結果とは同一種類としている)の判定結果を区別しているため、ターゲット判定処理部17は受信された応答信号12がどのような状態で受信されたかを判定することが可能となる。
【0028】
このターゲット判定処理部17は、受信された応答信号に12に航空機の高度情報が含まれているか否かを判定するとともに、この結果に基づいて送受信部8における質問信号11の送信処理を制御する。
【0029】
高度情報が含まれている場合は、図4(a)に示すように、上記のビーム内/外判定結果及び受信エラー判定結果に基づいて、応答信号12がビーム幅18内で受信され、且つ受信エラーではない場合のみ正常な応答として判定し、これらの条件を満たす応答が受信されるまで、送受信部8を制御して質問信号11の送信を反復実行させる。つまり、ビーム幅18内で受信されていない信号や受信エラーが発生している信号(図中の12a、12b)は正常な応答として認識しない。
【0030】
一方、高度情報が含まれていない場合は、図4(b)に示すように、受信エラーが生じていなければ、ビーム幅18内で受信されていない信号(図中の12a、12b)もビーム幅18内で受信された応答信号12と同様に正常な応答として認識し、送受信部8を制御して質問信号11の反復送信を少なくとも所定の期間において行わせない。このため、質問信号11の送信回数及び応答信号12の受信回数を削減でき、モードSにデータリンク機能が付加された場合においても時間あたりの捕捉航空機数が減少することを防止できる。
【0031】
なお、上記の質問信号の送信を停止させる期間は、任意に設定可能である。
【0032】
以上のとおり本発明においては、応答信号に高度情報が含まれる場合は、この応答信号がビーム内で受信されるまで質問信号が反復送信される。
【0033】
上記の高度情報、航空機の方位及び距離は、航空管制において必要不可欠な航空機の3次元位置情報(平面位置及び高度)を得るために必要な情報であり、高度情報を送信する航空機の方位及び距離は正確に測定されなければならず、また、この航空機は早期に捕捉しなければならない。
【0034】
本発明においては、応答信号に高度情報が含まれる場合は、この応答信号がビーム内で受信されるまで質問信号を反復送信し、一方、高度情報を送信していない航空機に関してはビーム外受信であっても応答を正常なものとし、質問信号の反復送信を行わないため、高度情報を送信していない航空機を捕捉することに時間を浪費し、これにより優先的に捕捉しなければならない航空機を失探することを防止でき、3次元位置の検出性能を維持できる。
【0035】
なお、上記のような装置を用いる二次監視レーダ制御方法も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例に係る二次監視レーダシステムの構成を示す図である。
【図2】図1の制御部の構成図である。
【図3】図1のインタロゲータ7の質問信号送受信方法(高度情報が含まれる場合)を説明するための図である。
【図4】図1のインタロゲータ7の質問信号送受信方法(高度情報が含まれない場合)を説明するための図である。
【図5】従来のインタロゲータの質問信号送信方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0037】
1…SSR(二次監視レーダ)システム、2…航空機、3…トランスポンダ、4…送受信部、5…制御部、6…アンテナ、7…インタロゲータ、8…送受信部、9…制御部、10…アンテナ、11…質問信号、12…応答信号、13…プリアンブル処理部、14…ビーム内/外判定処理部、15…応答デコード処理部、16…モノパルス算出処理部、17…ターゲット判定処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問信号を航空機に搭載されるトランスポンダへ送信し、当該質問信号に対する応答信号を受信することにより前記航空機の状態を監視する二次監視レーダを制御する二次監視レーダ制御装置であって、
前記応答信号がサイドローブ受信されているか否かを判定し、さらに前記応答信号がビーム内で受信されたかを判定する受信状態判定手段と、
前記応答信号に高度情報が含まれているか否かを判定し、前記応答信号が前記サイドローブ受信されておらず、且つ前記ビーム外で受信され、さらに前記高度情報が含まれていない場合、正常な応答であると判定し、前記質問信号の送信を少なくとも所定の期間停止させ、前記応答信号が前記サイドローブ受信されておらず、且つ前記ビーム外で受信され、さらに前記高度情報が含まれている場合、正常ではない応答であると判定し、当該応答信号が前記ビーム内で受信されるまで前記質問信号を反復して送信させる送信制御手段と
を有することを特徴とする二次監視レーダ制御装置。
【請求項2】
質問信号を航空機に搭載されるトランスポンダへ送信し、当該質問信号に対する応答信号を受信することにより前記航空機の状態を監視する二次監視レーダを制御する二次監視レーダ制御方法であって、
前記応答信号がサイドローブ受信されているか否かを判定し、さらに前記応答信号がビーム内で受信されたかを判定する受信状態判定工程と、
前記応答信号に高度情報が含まれているか否かを判定し、前記応答信号が前記サイドローブ受信されておらず、且つ前記ビーム外で受信され、さらに前記高度情報が含まれていない場合、正常な応答であると判定し、前記質問信号の送信を少なくとも所定の期間停止させ、前記応答信号が前記サイドローブ受信されておらず、且つ前記ビーム外で受信され、さらに前記高度情報が含まれている場合、正常ではない応答であると判定し、当該応答信号が前記ビーム内で受信されるまで前記質問信号を反復して送信させる送信制御工程と
を有することを特徴とする二次監視レーダ制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−10510(P2007−10510A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192323(P2005−192323)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】