説明

二次電池の充放電方法

【課題】二次電池を充電から放電に切替える場合、及び放電から充電に切替える場合のタイムラグ(即ち、無電流時間)を無くし、かつ確実に充放電を切替えることができる二次電池の充放電方法を提供する。
【解決手段】二次電池21に電力を充電する充電回路12と、二次電池21からの電力を放電する放電回路15を切替えて二次電池21の充放電を行う方法であって、充電回路12の出力側と放電回路15の入力側を芸列に接続して二次電池21への充放電を行い、かつ充電回路12から放電回路15に、二次電池21に定常充電する電流より小さい電流を流して充電回路12及び放電回路15を常時作動状態とし、二次電池21の充放電の切替を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は充放電が可能な二次電池(例えば、リチウムイオン電池)の放電及び充電の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池等の二次電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車の電源として使用され、使用にあっては充電と放電が繰り返されるので、特許文献1に記載されているように、その時の電池の特性や性状(電圧降下、発熱状態、電池の電圧、化学物質の変化)を検査する必要があり、このため、電池の充電放電装置が必要である。
【0003】
図3には従来の二次電池の充放電方法の典型例を示すが、DC高圧側の電源に接続されるDC−DCコンバータ充電回路(充電装置)60とDC−DCコンバータ放電回路(放電装置)61を用意し、これらをスイッチ62、63によって切替えて使用している。ここで、DC−DCコンバータ充電回路60は、トランス64の一次側に接続されてオンオフするトランジスタ65と、トランス64の二次側に接続されたダイオード66、67、チョークコイル68及びコンデンサ69とを有する整流回路と、負荷に直列に接続された電流検出抵抗70と、トランジスタ65のオンオフを行う制御装置71とを有し、直流高電圧を二次電池72の低電圧に変換すると共に充電電流の波形制御を行っている。
【0004】
また、DC−DCコンバータ放電回路61は、二次電池72に接続されるコンデンサ74及びリアクトル75と、チョッパー回路を構成するトランジスタ76、77と、チョッパー回路に一次側が接続されるトランス78と、トランス78の二次側に接続されるダイオード79と、二次電池72に直列に接続されて負荷電流を測定する電流検出抵抗80及び電流検出抵抗80に接続される制御装置81とを有し、二次電池72の負荷電流を制御してDC高圧側に電力を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−88934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来例に係る試験方法において、二次電池72の充電と放電を切替える場合は、スイッチ62、63を用いているが、スイッチ62とスイッチ63を同時に切替えると切替時に時間的なバラツキが発生し、充電回路60と放電回路61が短時間ではあるがショートする可能性があるので、図4に示すように、完全に二次電池72の充電電流が無くなって停止時間を設けて、二次電池72の放電回路61を作動させるようにしていた。
ところが、充電と放電の繰り返しテストを行う場合、停止時間が繰り返されることになり、実験時間が長引くという問題があった。また、ハイブリッド車のように充電と放電を繰り返す車両の限界データ(即ち、充放電の間隔が非常に短いか0)を得にくいという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、二次電池を充電から放電に切替える場合、及び放電から充電に切替える場合のタイムラグ(即ち、無電流時間)を無くし、かつ確実に充放電を切替えることができる二次電池の充放電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る二次電池の充放電方法は、二次電池に電力を充電する充電回路と、前記二次電池からの電力を放電する放電回路を切替えて前記二次電池の充放電を行う方法であって、
前記充電回路の出力側と前記放電回路の入力側を並列に接続して前記二次電池への充放電を行い、かつ前記充電回路から前記放電回路に、前記二次電池に定常充電する電流より小さい電流を流して前記充電回路及び前記放電回路を常時作動状態とし、前記二次電池の充放電の切替を行う。
【0009】
本発明に係る二次電池の充放電方法において、前記充電回路及び前記放電回路は、前記二次電池の充放電の切替時に、スローダウン制御により前記二次電池を流れる電流が0になった後、直ちに切替えて前記二次電池を流れる電流のスローアップ制御を行うのが好ましい。
また、本発明に係る二次電池の充放電方法において、前記充電回路から前記放電回路に流す定常電流は、前記二次電池に充電する定常電流の0.01〜0.2倍の範囲にあるのが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る二次電池の充放電方法において、前記充電回路の電流制御は充電側チョッパー回路を、前記放電回路の電流制御は放電側チョッパー回路を用いて行われているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る二次電池の充放電方法においては、常時充電回路から放電回路に少しの電流が流れ、充電回路及び放電回路が常時作動状態となっているので、それぞれの回路に有しているコンデンサ等に起因する作動時間が無くなり、スローダウン制御をした後、充放電の切替を瞬時に行うことができる。
これによって、充放電試験を行う時間が短縮され、より効率的に二次電池の充放電の試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の充放電方法を適用した充放電装置の回路図である。
【図2】同二次電池の充放電方法を適用をした場合の充電電流と放電電流の波形図である。
【図3】従来例に係る二次電池の充放電方法の説明図である。
【図4】従来例に係る二次電池の充放電方法の充電電流と放電電流の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る二次電池の充放電方法に使用する充放電回路10は、直流高電圧をトランジスタ11によってチョッパー制御して直流低電圧を発生させる充電回路12と、直流低電圧をトランジスタ13、14によってチョッパー制御した直流高電圧に変換する放電回路15とを有し、充電回路12と放電回路15の出力端子(出力側)16、17及び入力端子(入力側)18、19を並列に接続し、負荷電流検出抵抗20を解して二次電池21に接続されている。
【0014】
充電回路12は図3に示す充電回路60と基本的には同一で、DC高圧(電源)をトランジスタ11によって充電側チョッパー制御し、その電流をトランス23の一次側に流し、トランス23の二次側に発生する電圧をダイオード24、25で整流して直流とし、更にリアクトル26、コンデンサ27を用いてその電流を平滑化している。充電電流は電流検出抵抗28で検知し、制御部29に与え、制御部29の信号によってトランジスタ11のオンオフ時間を制御し、予め設定された電流及び電圧特性によって二次電池21を充電するようになっている。
【0015】
放電回路15は、図3に示す従来例の放電回路61と基本的構成は同一で、入力端子18、19に並列にコンデンサ31が接続されると共にリアクトル32が直列に接続され、放電側チョッパー制御を行うトランジスタ13、14を解してトランス33の一次側の電流をオンオフし、二次側に高電圧を発生させ、ダイオード34で整流して直流高電圧とし、図示しない負荷に供給している。負荷電流の制御は電流検出抵抗35で行い、制御部36で処理を行いトランジスタ13、14のオンオフ制御を行い、所定の電流及び電圧特性の負荷を形成するようにしている。
【0016】
この充電回路12と放電回路15とは芸列に接続されて、二次電池21の充放電を行っているが、二次電池21の充放電電流は負荷電流検出抵抗20で検出され制御部30に入力されている。制御部30からの信号は、充電制御を行う制御部29と、放電制御を行う制御部36に入力されて、この充放電回路10の全体の制御を行っている。
【0017】
ここで、充電回路12から放電回路15に、二次電池21を充電する定常電流(平均電流であってもよい)より少ない小電流(例えば、定常電流の0.01〜0.2倍程度)の循環電流を流して、充電回路12及び放電回路15を常時作動状態としておく。
この制御は、充電中であっても放電中であっても、電流検出抵抗28、35の両方に、循環電流kが流れるように制御する。即ち、負荷電流検出抵抗20に流れる充放電電流をPとすると、充電を行っている場合には電流検出抵抗28の検出電流は(P+k)となり、電流検出抵抗35の検出電流は(k)となるように制御部29、36に指令を与える。
【0018】
そして、二次電池21が放電中の場合は、電流検出抵抗35で検出される電流は(P+k)となり、電流検出抵抗28で検出される電流が(k)となるように、制御部29、36を制御することになる。電流kは外部から調整可能とする。
なお、制御部29には、二次電池21への充電を終了する(充電電流が0になる)場合に、従来通りスローダウン制御を行うプログラムが設けられているが、電流値が(P+k)から(k)に徐々に変わるように制御されている。そして、充電を始める場合には、電流値が(k)から(P+k)にスローアップ制御を行うプログラムが設けられている。
【0019】
また、制御部36には、二次電池21の放電を流量する場合に、電流検出抵抗35の電流を(P+k)から(k)にするように、二次電池21の放電を開始する場合には、電流検出抵抗35が流れる電流が(k)から(P+k)となるように制御するプログラムが設けられている。なお、これらの電流はスローアップ制御とスローダウン制御が行われている。
【0020】
一方、制御部30には負荷電流検出抵抗20を流れる電流を検知して、二次電池21の充放電状況を把握して、予め設定されたプログラムに基づいて、二次電池21の充放電を繰り返す場合には、図2に示すように、充電回路12による充電が完了した後、負荷電流検出抵抗20に流れる電流が0になったことを確認して、放電回路15をスタートさせている。この場合、充電回路12及び放電回路15は作動しているので、円滑に充放電の切替ができる。なお、この時の充放電の切替は制御部30にあるプログラムによって行う。
【0021】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。
また、充電回路12及び放電回路15のチョッパー制御については、周知であるので、詳しい説明を省略した。
【符号の説明】
【0022】
10:充放電回路、11:トランジスタ、12:充電回路、13、14:トランジスタ、15:放電回路、16、17:出力端子、18、19:入力端子、20:負荷電流検出抵抗、21:二次電池、23:トランス、24、25:ダイオード、26:リアクトル、27:コンデンサ、28:電流検出抵抗、29、30:制御部、31:コンデンサ、32:リアクトル、33:トランス、34:ダイオード、35:電流検出抵抗、36:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に電力を充電する充電回路と、前記二次電池からの電力を放電する放電回路を切替えて前記二次電池の充放電を行う方法であって、
前記充電回路の出力側と前記放電回路の入力側を並列に接続して前記二次電池への充放電を行い、かつ前記充電回路から前記放電回路に、前記二次電池に定常充電する電流より小さい電流を流して前記充電回路及び前記放電回路を常時作動状態とし、前記二次電池の充放電の切替を行うことを特徴とする二次電池の充放電方法。
【請求項2】
請求項1記載の二次電池の充放電方法において、前記充電回路及び前記放電回路は、前記二次電池の充放電の切替時に、スローダウン制御により前記二次電池を流れる電流が0になった後、直ちに切替えて前記二次電池を流れる電流のスローアップ制御を行うことを特徴とする二次電池の充放電方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の二次電池の充放電方法において、前記充電回路から前記放電回路に流す定常電流は、前記二次電池に充電する定常電流の0.01〜0.2倍の範囲にあることを特徴とする二次電池の充放電方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の二次電池の充放電方法において、前記充電回路の電流制御は充電側チョッパー回路を、前記放電回路の電流制御は放電側チョッパー回路を用いて行われていることを特徴とする二次電池の充放電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−257405(P2012−257405A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129373(P2011−129373)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【特許番号】特許第5073847号(P5073847)
【特許公報発行日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【出願人】(000233697)株式会社日鉄エレックス (51)
【Fターム(参考)】