説明

二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法およびシステム

【課題】 負荷周波数制御の速応性を高めかつ発電効率を向上させるとともに、瞬動予備力・運転予備力・待機予備力などアンシラリーサービスへ対応させる二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法およびシステムを実現する。
【解決手段】 一次,二次,配電用変電所21,22,24や需要家の設備構内にレドックスフロー電池などの二次電池31…36が分散配置され、これらの二次電池31…36の高速応答性と過負荷能力を利用し、負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持などアンシラリーサービスへ対応させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法およびシステムに関し、特に、レドックスフロー電池やナトリウム硫黄電池などの二次電池を用いて、電力系統異常時に需要家構内の設備の電力供給,電力品質維持を行うとともに、常時は瞬動予備力,運転予備力,待機予備力などのアンシラリーサービスへ対応させるアンシラリーサービス提供方法およびシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】電力取引市場とは、基本的には1時間単位で電力量を取引する市場であるが、一方で電気の生産即消費という性質による貯蔵が困難という特性を踏まえると、電力系統の運用については、その安定性や品質を維持することを目的として瞬時瞬時の需給バランスをとる必要がある。
【0003】欧米などにおいても電力自由化以前は、周波数制御などの連系系統の運用に伴って提供される電力品質の維持に関する機能(付加価値)は、電気事業の垂直統合体制のもと、一括して顧客へ提供されていた。
【0004】しかしながら、電力自由化後は、各種の電力品質の維持に関する機能が分離され、負荷周波数制御などの連系系統運用サービスは、一般にアンシラリサービス(Ancillary Service;補助的サービス)として、電力量取引とは別に取引されることになった。アンシラリーサービスは補助的なサービスという意味であるが、電力品質の維持の観点からは必要不可欠なサービスであり、この付加価値の提供がなされなければ、電力系統を安定にかつ信頼性を維持した運用はできない。
【0005】アンシラリーサービスについては、NERC(The North America Electric Reliability Council;北米電力信頼度協議会)において、各種アンシラリーサービス項目について定義されており、以下にその代表的な項目について説明する。
(a) レギュレーション分単位の負荷変動が発生した場合、制御地域がそれに応じて均衡を保つことができるようにAGC(Automatic Generation Control)によって適切な発電機応答容量を提供して、10分未満の需給アンバランスをNERCの制御評価指数CPS(Control Performance Standard)に合致するようにリアルタイムで発電機の出力をISO(Individual System Operation)などの制御信号に従って自動制御するサービスである。
(b) ロードフォローイングレギュレーションではより長い時間および日間にわたる負荷変動に対応するために必要な発電および電力融通容量を提供するサービスである。
(c) エネルギーインバランスエネルギーインバランスは制御地域の境界内における受電点または需給点における計画値と実測値の差分を補償するサービスであり、このサービスは負荷と発電の両方に適用される。インバランスの決済に際しては、許容偏差の逸脱有無により異なった価格を用いて決済することにより、需給バランスが確保される。
(d) 瞬動予備力ISOなどから指令を受けてから10分以内に出力可能な容量を系統に同期並列している発電機により提供するサービスである。
(e) 運転予備力ISOなどから指令を受けてから10分以内に出力可能な容量を発電機により提供する。または、10分以内に抑制可能な負荷により提供するサービスである。
(f) バックアップ供給バックアップ供給とは、発電容量であり、発電停止または送電系統の停止による送電不可時には代替として、また顧客負荷が発電容量を超過した場合は不足分を補足するために使用されるサービスである。
(g) システムコントロール連系系統の信頼性を補償するために必要な総合的な活動からなり、送電制約を最小限にするため、および偶発事故または外乱後の復旧を行うために必要なサービスである。
(h) 無効電力補償電源の発生する無効電力を制御して送電系統の運用をサポートするサービスであり、系統の変化に応じて送電系統の電圧を連続的に調整する能力を含む。
(i) 送電ロス補償電力損失の代替および送電サービスに伴う送電線提供者の送電系統での損失を補う電力量を提供するサービスである。
(j) 系統安定化送電線提供者または制御地域がNERCやその地域の信頼性要件を満たすことを可能とするため、発電所において必要とされる特定機器,装置,ソフトウエアまたはシステムの購入,運用および保守を提供するサービスである。
(k) 全停復旧全停時に、運転状態ヘ復旧して電力を供給するまでの過程を電力系統の支援なしに行える発電機の能力を提供するサービスである。
【0006】ところで、レドックスフロー電池やナトリウム硫黄電池といった二次電池は夜間の電力で充電し、昼間に放電するという負荷平準化としての役割が期待されている。また、これら二次電池は、出力指令に対する応答速度が非常に高く、充放電の繰り返しに対する劣化が少ないことから需給制御への適用などが期待されている。さらに、これら二次電池は、短時間の過負荷に対する耐性が高いことから過負荷領域を使用することによって短周期の周波数変動などを吸収する需給制御や瞬動予備などのアンシラリーサービス全般へ適用することも可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】現在、図8に示すように、各発電所からの電力が変電所21…25を介して各需要家に供給されている。そして、負荷周波数制御は、中央給電指令所から出力調整に融通性がある火力発電所,水力発電所,可変速水力発電所といった周波数調整用発電所11,12に対して出力調整信号を送り、各発電所の発電出力を調整し、負荷変動を吸収することで行っている。
【0008】一方、負荷周波数制御やガバナフリー制御や予備力出力などのアンシラリーサービスは発電機で行われており、高速に応答でき過負荷能力のある二次電池を用いてアンシラリーサービスを提供できれば周波数安定性の向上と発電効率の向上が期待できる。
【0009】また、二次電池を用いた常時インバータ給電方式により、瞬時電圧低下や瞬時停電や短時間停電などの系統事故時に負荷を停電させないようにすることが行われている。さらに、系統側との連系をコンバータではなく、安価で損失の低い半導体スイッチまたは遮断器で行って系統事故時に連系を分離して二次電池システムにより負荷に給電するシステムが実用化されている。その場合に、二次電池制御システムの短時間過負荷能力が活かされておらず、そのための具体的な制御方法は考えられていない。
【0010】それゆえに、この発明の主たる目的は、二次電池の高速応答性と過負荷能力を生かして電力系統異常時に需要家構内の設備の電力供給,電力品質維持を行い、常時は負荷周波数制御の速応性を高めかつ発電効率を向上させるとともに、瞬動予備力・運転予備力・待機予備力などアンシラリーサービスへ対応させる二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法およびシステムを実現することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明は、電力系統の負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持などのアンシラリーサービスを提供する方法であって、電力系統に接続される充電可能な二次電池と、二次電池からの電力を変換する変換器とを含む二次電池システムを介して電力系統に電力を供給し、負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持の少なくともいずれかを二次電池システムに分担させることを特徴とする。
【0012】また、二次電池システムを設置し、アンシラリーサービスの分担を許容する需要家に対して、能力の分担・確保に対するインセンティブを設けることを特徴とする。
【0013】さらに、二次電池システムの外部における電圧値および電流値を測定し、その測定値に基づき二次電池システムの出力における上下限値の推定値を算出し、必要な出力変更指令量の総量を二次電池システムと他の発電設備を含む調整対象設備のそれぞれにおける能力値の範囲内で配分し、配分された出力変更指令量を二次電池システムに出力することを特徴とする。
【0014】また、出力変更指令量は所定の時間ごとに二次電池システムに出力することを特徴とする。
【0015】さらに、電力系統の周波数状況に基づき必要な出力変更指令量を算出し、その出力変更指令量と、上下限値の推定値に基づく出力変更指令量とに基づいて能力値の範囲内で配分することを特徴とする。
【0016】また、出力変更指令は負荷周波数制御システムまたは予備力制御システムが出力変更指令量を二次電池システムに出力することを特徴とする。
【0017】アンシラリーサービスとして、需要家における電力系統との連系点の電力潮流を測定し、測定した電力潮流が設定した範囲を超えるときには、超えない方向に予め設定した値または推定した能力値の範囲で二次電池システムの出力を増加または減少させることを特徴とする。
【0018】さらに、需要家の構内で系統事故を検知したことに応じて、該構内設備の周波数および電圧値を計測し、その計測値に基づいて二次電池システムの出力指令値を算出することを特徴とする。
【0019】さらに、二次電池システムの外部における電圧値および電流値を測定し、その測定値に基づき二次電池システムの出力における上下限値の推定値を算出して出力指令値と上下限値の推定値とを比較し、推定値が出力指令値よりも大きいときは出力指令値を二次電池システムに出力し、出力指令値が推定値よりも大きいときは推定値を二次電池システムに出力することを特徴とする。
【0020】また、推定値が出力指令値よりも小さいときは、両者の差に相当する需要家構内の負荷を選定し、選定した負荷への電力供給を遮断することを特徴とする。
【0021】他の発明は電力系統の負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持などのアンシラリーサービス提供システムであって、電力系統に接続される充電可能な二次電池と、該二次電池からの電力を変換する変換器とを含む二次電池システムと、二次電池システムを介して電力系統に電力を供給し、負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持の少なくともいずれかを二次電池システムに分担させるように制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0022】また、制御手段は、二次電池システムを設置し、アンシラリーサービスの分担を許容する需要家に対して、予め設定された期間の二次電池のアンシラリーサービス提供量または提供能力を積算して記録することを特徴とする。
【0023】さらに、制御手段は、アンシラリーサービスとして、需要家における電力系統との連系点の電力潮流の測定値がが設定した範囲を超えるときには、超えない方向に予め設定した値または推定した能力値の範囲で前記二次電池システムの出力を増加または減少させるように制御することを特徴とする。
【0024】さらに、制御手段は、需要家の構内で系統事故を検知したことに応じて、該構内設備の周波数および電圧値の計測値に基づいて二次電池システムの出力指令値を算出することを特徴とする。
【0025】また、制御手段は、二次電池システムの外部における電圧値および電流値の測定値に基づき二次電池システムの出力における上下限値の推定値を算出して出力指令値と上下限値の推定値とを比較し、推定値が出力指令値よりも大きいときは前記出力指令値を二次電池システムに出力し、出力指令値が推定値よりも大きいときは推定値を二次電池システムに出力することを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】図1はこの発明の一実施形態における二次電池を用いたアンシラリーサービスである負荷周波数制御の概念図である。この発明では電圧管理や周波数管理を高速応答性があり、立上げの速いレドックスフロー電池のような二次電池に分担させる。このために、図1に示すように、一次,二次,配電用変電所21,22,24や需要家の設備構内にレドックスフロー電池などの二次電池31…36が分散配置される。レドックスフロー電池は時間が短ければ、定格以上の特性が得られるという特徴があるので、短い時間の瞬時停電対策などをとることができる。
【0027】各二次電池の設置箇所31…36には、図示しない中央給電指令所との間に通信手段が設けられており、中央給電指令所からの出力調整信号を受け、各個所要の出力調整を行うことで電力系統の負荷周波数制御が行なわれる。二次電池の高速応答性と過負荷能力とを利用し、負荷周波数制御の信号としてACE(Area Control Error)の瞬時値を用い、二次電池を高速に応答させて制御効率を上げる。
【0028】ここで、上記需要家で特別高圧受電の需要家の場合、電力会社が設置している光ファイバケーブルを通信手段として兼用することができる。また、二次電池を設置し、アンシラリーサービスの分担を許容する需要家に対してアンシラリーサービスの割戻しなど、二次電池設置・負荷周波数制御能力の分担・予備力確保に対するインセンテイブが設けられる。
【0029】図2はこの発明の一実施形態の二次電池を用いたアンシラリーサービスを実現するための二次電池システムにおける全体の構成を示すブロック図である。
【0030】図1に示した発電所11,12や変電所21…25を接続する系統10は、系統制御システム40によって制御される。系統制御システム40は中央給電指令所に設置されており、負荷周波数制御システム41と予備力制御システム42とを含む。負荷周波数制御システム41および予備力制御システム42は、常時、周波数制御およびガバナフリー制御を行うための指令値を、また、電源が電力需要家に比べて大幅に不足したような場合には予備力制御を行うための指令値を、それぞれ各需要家の構内に設置されている二次電池制御システム50に出力する。
【0031】このために、負荷周波数制御システム41および予備力制御システム42は、それぞれ特願2002−35710号に示されているように、二次電池の電気的等価回路モデルを作成し、二次電池システムの電圧値・電流値という外部状態量に基づき二次電池システムの出力における上下限値の推定値を算出するための二次電池シミュレーション装置を有している。
【0032】また、各需要家の構内ごとに検出器51と遮断器52とDC/ACコンバータ53とレドックスフロー電池などの二次電池54が配置されている。検出器51は電圧低下や周波数変動や電力変動などを検出し、その検出信号を需要家設備制御システム60に与える。遮断器52は半導体スイッチなどによって構成されており、検出器51が系統事故による異常を検出したとき、需要家の構内設備を系統10から切り離す。
【0033】二次電池制御システム50からDC/ACコンバータ53に電力指令が与えられている。DC/ACコンバータ53はその電力指令に応じて、二次電池54からの直流電圧を交流電圧に変換して、常時は系統10と需要家構内の負荷L1〜L3に電力を供給するか、または系統10から電力が供給されて交流電圧を直流電圧に変換して二次電池54を充電する。パイロットセル検出器55は二次電池54内のパイロットセルの電圧低下を検出して、その検出信号を二次電池制御システム50に与える。
【0034】二次電池制御システム50は二次電池システムの外部状態量を負荷周波数制御システム41と予備力制御システム42とに送信し、負荷周波数制御システム41と予備力制御システム42とから出力変更指令量が二次電池制御システムに送信される。また、二次電池制御システム50が負荷周波数制御システム41および予備力制御システム42が有するような、二次電池システムの外部状態量に基づき、二次電池システムの出力における上下限値の推定値を算出するための二次電池シミュレーション装置を有している場合には、上記外部状態量を負荷周波数制御システム41と予備力制御システム42とに送信しなくてもよい。
【0035】需要家設備制御システム60には各負荷L1〜L3から負荷電力値が与えられ、二次電池制御システム50から系統事故時の電力不足値が与えられ、系統事故時に電力が不足するときは需要家設備制御システム60から負荷L1〜L3に対して遮断指令が与えられる。また、需要家設備制御システム60には、系統事故が発生したときのために、二次電池システムの外部状態量に基づき二次電池システムの出力における上下限値の推定値を算出するための二次電池シミュレーション装置を有していることもある。
【0036】図3はこの発明の一実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。次に、図1〜図3を参照して、予備力指令優先時の動作について説明する。図2に示す二次電池制御システム50は、ステップ(図示ではSPと略称する)SP1において、検出器51の検出出力に基づいて当該二次電池システムの外部状態量である、電圧値および電流値を測定する。次に、ステップSP2で負荷周波数制御を行うのと平行して、ステップSP3において予備力制御を行う。負荷周波数制御ではステップSP21〜25の処理が行われ、予備力制御ではステップSP31〜35の処理が行なわれる。
【0037】まず、ステップSP2の負荷周波数制御について説明する。ステップSP21において、二次電池システムはステップSP1で推定された外部状態量を系統制御システム40の負荷周波数制御システム41に送信する。ステップSP22において、系統制御システム40内の負荷周波数制御システム41は二次電池システム50の外部状態量を受信し、ステップSP23において、負荷周波数制御システム41内の二次電池システムシミュレーション装置が二次電池システム50の外部状態量に基づき、当該二次電池システム50の出力における上下限値(推定能力値)を算出する。また、平行してステップSP26において、負荷周波数制御システム41は必要な出力変更指令量の総量を算出する。
【0038】ステップSP24において、負荷周波数制御システム41は必要な出力変更指令量の総量を当該二次電池システムと火力発電所などとを含む調整対象設備のそれぞれの能力値の範囲内で配分する。ステップSP25において、負荷周波数制御システム41は当該二次電池システムに配分された出力変更指令値PB12を二次電池制御システム50に送信するとともに、他の火力発電所などにも平行して送信する。このステップSP2に含まれる各処理は、たとえば2秒ごとに1回行なわれる。
【0039】次に、ステップSP3の予備力制御について説明する。ステップSP31において、二次電池制御システム50はステップSP1で推定された外部状態量を系統制御システム40内の予備力制御システム42に送信する。ステップSP32において、予備力制御システム42が二次電池システムの外部状態量を受信し、ステップSP33において、予備力制御システム42内の2次電池システムシミュレーション装置が二次電池システムの外部状態量に基づき、当該二次電池システムの出力における上下限値(推定能力値)を算出する。
【0040】また、平行してステップSP36において予備力制御システム42は必要な出力変更指令量の総量を算出する。ステップSP34において、予備力制御システム42は必要な出力変更指令量の総量を当該二次電池システムと火力発電所などとを含む調整対象設備のそれぞれの能力値の範囲内で配分する。ステップSP35において、予備力制御システム42は当該二次電池システムに配分された出力変更指令値PC12を二次電池制御システム50に送信するとともに、他の火力発電所などにも平行して送信する。
【0041】ステップSP3の各処理のうち、ステップSP31からステップSP33まではたとえばステップSP2内の各処理と同じく2秒ごとに1回行われ、ステップSP36は常時は行われず(つまり総量0が算出され)、周波数低下などにより予備力制御が必要なときに起動されて総量が算出され、そのときにステップSP34以下の処理が行なわれる。つまり、常時はステップSP3内の各処理により0が出力されているが、必要時に正の配分値が出力される。
【0042】ステップSP4において、ステップSP2で配分された負荷周波数制御配分値PB12と、ステップSP3で配分された予備力制御配分値PC12を二次電池制御システム50が受信し、ステップSP5において二次電池制御システム50が二次電池システム50の有効電力指令値Pを予備力指令優先方式で決定する。すなわち、予備力制御配分値PC12=0であれば有効電力指令値P=負荷周波数制御配分値PB12に設定し、予備力制御配分値PC12>0であれば有効電力指令値P=予備力制御配分値PC12に設定する。この動作は、常時はたとえば2秒ごとに指令値が更新されるが、予備力制御が行われたときには割り込みにより、予備力制御配分値が優先されて指令値Pになるというように制御が行なわれる。
【0043】ステップSP6において、二次電池制御システム50は有効電力出力指令値PをDC/ACコンバータ53に出力する。DC/ACコンバータ53は二次電池54からの電力量が出力された有効電力指令値Pになるように変換する。
【0044】上述のごとく、図3の実施形態では、ステップSP2の負荷周波数制御において、二次電池システムの推定能力値を負荷周波数制御システム41が算出していた。しかし、負荷周波数制御システム41が、この推定能力値を算出せず予め設定された上下限値の範囲内でその配分値を二次電池システムに送信し、二次電池制御システム50が自ら算出した推定能力値の範囲内でその配分値を制限し、その結果をステップSP5で使用するという方法も考えられる。この場合には、ステップSP21において、二次電池制御システム50が、当該二次電池システムの外部状態量を負荷周波数制御システム41に送信する必要はない。同様に、ステップSP3の予備力制御システム42においても、このような方法も考えられる。
【0045】また、系統制御システム40が行っている指令量の配分機能を、二次電池制御システム50自体が、検出器51から得た周波数情報と予め設定した周波数垂下率から算出した出力変化量に基づいて行う方法もある。これは、中央給電指令所の遠隔指令を受けないローカル制御である発電機のガバナフリー機能と類似の方法である。この場合にはステップSP21において、二次電池制御システム50が、当該二次電池システムの外部状態量を負荷周波数制御システム41に送信する必要はない。同様に、ステップSP3の予備力制御システム42においても、このようなローカル制御が考えられる。このようなローカル制御を採用した場合には、二次電池制御システム50が、その推定能力値を算出して、その範囲内で有効電力指令値を制限する。
【0046】さらに、図3の実施形態では、ステップSP5において、負荷周波数制御配分値PB12と予備力制御配分値PC12の両者のうち、予備力制御配分値を優先する方法をとっていた。他の方法として、単純にこれらの数値を組合せて有効電力指令値Pとする「指令合成方式」、下記のような「場合分け合成方式」など、各種の合成方式が考えられる。
【0047】PB12>0、PC12>0のときには、P=Max(PB12,PC12)
PB12>0、PC12<0のときには、P=PB12+PC12PB12<0、PC12>0のときには、P=PB12+PC12PB12<0,PC12<0のときには、P=Min(PB12,PC12)
図4は推定能力値の範囲で逆潮流を防止する動作を説明するためのフローチャートである。この実施形態では系統の連系点の電力潮流を測定し、電力潮流が設定した範囲を超えるときには、超えない方向に予め設定した値または推定能力値の範囲で、二次電池システムの出力を増加または減少させるように制御する。
【0048】図4を参照して具体的に説明する。ステップSP11において、二次電池制御システム50は検出器51の検出出力に基づいて当該二次電池システムの外部状態量である、電圧値および電流値を測定し、ステップSP12において、二次電池制御システム50内の2次電池システムシミュレーション装置が二次電池システムの外部状態量に基づき、当該二次電池システムの出力の上下限値(推定能力値)を算出する。また、平行して、ステップSP14において、当該二次電池制御システム50が系統10との連係点の電力潮流Piを測定し、電力潮流Piの正負を次のように定義する。
【0049】系統10 → 需要家のときPi>0系統10 ← 需要家のときPi<0ステップSP13において、二次電池制御システム50が逆潮流を防止するために、当該二次電池システムの有効電力出力指令値を算出し、次の指令を出力する。
【0050】Pi<0:推定能力値の範囲内で有効電力出力指令値を|Pi|だけ減少させる。
【0051】Pi≧0:有効電力出力指令値を維持する。
これらのステップSP11〜SP14の処理は、たとえば1分ごとに1回行なわれる。
【0052】上述のごとくこの実施形態によれば、電力潮流が設定した範囲を超えるときには、超えない方向に予め設定した値または推定能力値の範囲で、二次電池システムの出力を増加または減少させるように二次電池制御システム50により制御することができる。
【0053】図4の実施形態では、逆潮流を防止するための機能を実現したが、系統から負荷に流れる電力の最大値を設定値Pmax以下に制限する(ピークカット)のための機能を実現するには、ステップSP13において次のようにする。
【0054】Pi>Pmaxのとき:推定能力値の範囲内で有効電力出力指令値を|Pi−Pmax|だけ増加させる。
【0055】Pi≦Pmaxのとき:有効電力出力指令値を維持する。もちろん、逆潮流を防止するための機能とピークカットを行うための機能とを、同様に行うこともできる。
【0056】図5は、瞬時電圧低下や短時間停電などの系統事故時の動作を示すフローチャートである。このような事故時には速やかに遮断器52が開放されて、系統側の電圧低下の影響が需要家構内に及ばないようにされる。つまり、DC/ACコンバータ53から出力される交流電圧により、需要家構内の電圧が維持される。
【0057】次に、図5に示すステップSP41において、需要家設備制御システム60が検出器51の検出出力に基づいて系統事故の発生を検知すると、ステップSP42において需要家設備制御システム60が検出器51の検出出力に基づいて、需要家構内の周波数・電圧値を計測し、それを基に二次電池システムへの出力指令値Pを算出し、二次電池制御システム50へ指令値Pを送信する。
【0058】ステップSP43において二次電池制御システム50は需要家設備制御システム60から指令値Pを受信し、ステップSP44において二次電池制御システム50は二次電池システムの外部状態量である電圧,電流を測定する。ステップSP45において、二次電池制御システム50内の二次電池シミュレーション装置が二次電池システムの外部状態に基づき、二次電池システムの出力における上下限値の推定値(推定能力値)を算出する。
【0059】ステップSP46において、二次電池制御システム50は、推定能力値と指令値Pとを比較し、次のように処理を行なう。
推定能力値≧Pのとき:指令値PをDC/ACコンバータ53に指令し、推定能力値の方が等しいか大きいことを需要家設備制御システム60に送信する。
推定能力値<Pのとき:推定能力値をDC/ACコンバータ53に指令し、指令値P推定能力値の方が等しいか大きいことを需要家設備制御システム60に送信する。
【0060】ステップSP47において、需要家設備制御システム60が二次電池制御システム50から判定結果を受信し、推定能力値の方が小さい場合には、その差に相当する需要家構内の負荷L1〜L3を選定し、選定された負荷を制御するシステムに遮断指令を送信する。これらの制御がたとえば10秒ごとに繰り返される。このようにして、二次電池システムの能力を最大限に生かして短時間停電が発生したときの影響を最小限に抑制することができる。さらに、停電が継続する場合には、別に設置されたディーゼルエンジンによる発電などの外部用電源システムが起動されることもある。
【0061】図5の実施形態では、ステップSP42において、需要家設備システム60が、需要家構内の周波数・電圧値を計測し、それを基に二次電池システムへの出力指令値を算出していた。しかし、系統事故が発生して需要家構内が系統から分離された直後は、周波数・電圧の変動が激しいので、安定して負荷機器が稼動を継続できるようにするために、分離後に最初に測定・指令が行なわれるまでの時間は、分離直前に予め計測していた需要家構内の負荷電力量をそのまま二次電池システムへの出力指令値として採用し、測定と計算の時間を省略することが好ましい。また、次のサイクルからは、測定・指令サイクルの中間では、以前の指令値が保持される。
【0062】また、ステップSP45,SP46において、需要家設備制御システム60からの指令値を、二次電池制御システム50が、二次電池システムの推定能力値を算出してその範囲内で、制約していた。ここで、二次電池の推定能力値を使用しない次のような方法で、二次電池制御システム50が指令値を制約する方法が考えられる。
【0063】予め設定された図6に示すような系統事故時の出力指令値の上限値により制限する方法。
【0064】二次電池制御システム50が、二次電池システムの内部状態量が時々刻々入力され(たとえばパイロットセル検出器55から送信されたパイロットセルの電圧値を二次電池システム50が受信し、)その内部状態量(たとえばパイロットセルの電圧値)が予め設定した運転限界値に達すると、予め設定した変化速度で二次電池システムの有効電力出力指令値を減少させ、その後運転限界値に復帰すると、このような制約動作を取りやめる方法。
【0065】図7は二次電池の充放電波形図である。図7R>7において、この発明では、負荷平準化運転a,過負荷能力を活用した負荷平準化運転+周波数制御運転b,過負荷能力を考慮した負荷救済c,非常用電源機能への切り替え(過負荷出力低減)dおよび過負荷能力を考慮した瞬動予備力・運転予備力などアンシラリーサービスの提供eが行なわれる。
【0066】従来より、需要家側において負荷平準化を図るために、需要家側で二次電池を設置し、最適な充放電が行われている。その際、需要家側での電力使用料金から、電力会社側のメリットと等価の金額を料金割引することにより、需要家側の享受できるメリットをアピールすることにより、二次電池の設置の普及が行われてきた。
【0067】ところが、レドックスフロー電池などの二次電池は高速応答性と過負荷能力があることから、単なる需要家側での負荷平準化だけでなく、その他のアンシラリーサービスの提供が可能になる。
【0068】上述のごとく、この発明の実施形態によれば、負荷周波数制御に高速応答性に優れるレドックスフロー電池などの二次電池を適用することで、負荷周波数制御の速応性を高め、火力発電所の発電効率を高め、運用費用を低減し、温室効果ガス排出量を低減できるとともに瞬動予備力,運転予備力、待機予備力などのアンシラリーサービスへ対応させることができる。しかも、このようなレドックスフロー電池などの二次電池の過負荷能力を活用することにより、従来の火力発電所による制御性能をわずかな容量の二次電池で代替できる。
【0069】さらに、中央給電指令所において二次電池システムの能力を把握することができるので、それを経済的価値に換算することにより、二次電池システムを設置し、能力の分担・確保に対するインセンティブを設けることができる。たとえば、日間,月間,年間のピークまたはオフピーク帯にその二次電池システムの推定能力値の時間積分値を算出することにより、その値をアンシラリーサービス提供量として、決済時に連系系統運用サービス者が提供量に対応した金銭を二次電池システムの設置者に支払う。
【0070】今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0071】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、電力系統に接続される需要家の負荷の近傍に充電可能な二次電池と、二次電池からの直流電圧を交流電圧に変換して電力系統に供給する変換回路とを配置し、負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持の少なくともいずれかを二次電池に分担させることにより、電力系統の負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持などのアンシラリサービスを提供することができる。
【0072】しかも、このような二次電池の過負荷能力を活用することにより、従来の火力発電所による制御性能をわずかな容量の二次電池で代替することが可能となり、火力発電所の発電効率を高め、運用費用を低減し、温室効果ガス排出量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態における二次電池を用いたアンシラリーサービスである負荷周波数制御の概念図である。
【図2】 この発明の一実施形態の二次電池を用いたアンシラリーサービスを実現するための二次電池システムを示すブロック図である。
【図3】 この発明の一実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】 推定能力値の範囲で逆潮流を防止する動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】 系統事故時の動作を示すフローチャートである。
【図6】 系統事故時の出力指令値の上限値として予め設定された例を示しす図である。
【図7】 二次電池の充放電波形図である。
【図8】 従来の発電所から需要家への電力系統を示す図である。
【符号の説明】
10 系統、11,12 発電所、21〜25 変電所、31〜36,54二次電池、40 系統制御システム、41 負荷周波数制御システム、42 予備力制御システム、50 二次電池制御システム、51 検出器、52 遮断器、53 DC/ACコンバータ、55 パイロットセル検出器、60 需要家設備制御システム、L1〜L3 負荷。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電力系統の負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持などのアンシラリーサービスを提供する方法であって、前記電力系統に接続される充電可能な二次電池と、該二次電池からの電力を変換する変換器とを含む二次電池システムを介して前記電力系統に電力を供給し、前記負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持の少なくともいずれかを前記二次電池システムに分担させることを特徴とする、二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法。
【請求項2】 前記二次電池システムを設置し、アンシラリーサービスの分担を許容する需要家に対して、予め設定された期間の二次電池のアンシラリーサービス提供量または提供能力を積算して記録することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法。
【請求項3】 前記二次電池システムの外部における電圧値および電流値を測定し、その測定値に基づき前記二次電池システムの出力における上下限値の推定値を算出し、必要な出力変更指令量の総量を前記二次電池システムと他の発電設備を含む調整対象設備のそれぞれにおける能力値の範囲内で配分し、配分された出力変更指令量を前記二次電池システムに出力することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法。
【請求項4】 前記出力変更指令量は所定の時間ごとに前記二次電池システムに出力することを特徴とする、請求項3に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法。
【請求項5】 さらに、前記電力系統の周波数状況に基づき必要な出力変更指令量を算出し、その出力変更指令量と、前記上下限値の推定値に基づく出力変更指令量とに基づいて前記能力値の範囲内で配分することを特徴とする、請求項3に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法。
【請求項6】 前記出力変更指令は負荷周波数制御システムまたは予備力制御システムが前記出力変更指令量を前記二次電池システムに出力することを特徴とする、請求項3ないし5のいずれかに記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法。
【請求項7】 前記アンシラリーサービスとして、前記需要家における前記電力系統との連系点の電力潮流を測定し、測定した電力潮流が設定した範囲を超えるときには、超えない方向に予め設定した値または推定した能力値の範囲で前記二次電池システムの出力を増加または減少させることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法。
【請求項8】 前記需要家の構内で系統事故を検知したことに応じて、該構内設備の周波数および電圧値を計測し、その計測値に基づいて前記二次電池システムの出力指令値を算出することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法。
【請求項9】 前記二次電池システムの外部における電圧値および電流値を測定し、その測定値に基づき前記二次電池システムの出力における上下限値の推定値を算出して前記出力指令値と前記上下限値の推定値とを比較し、前記推定値が前記出力指令値よりも大きいときは前記出力指令値を前記二次電池システムに出力し、前記出力指令値が前記推定値よりも大きいときは前記推定値を前記二次電池システムに出力することを特徴とする、請求項8に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法。
【請求項10】 前記推定値が前記出力指令値よりも小さいときは、両者の差に相当する前記需要家構内の負荷を選定し、選定した負荷への電力供給を遮断することを特徴とする、請求項9に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供方法。
【請求項11】 電力系統の負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持などのアンシラリーサービスを提供するシステムであって、前記電力系統に接続される充電可能な二次電池と、該二次電池からの電力を変換する変換器とを含む二次電池システムと、前記二次電池システムを介して前記電力系統に電力を供給し、前記負荷周波数制御,瞬動予備力,運転予備力,待機予備力,電圧維持の少なくともいずれかを前記二次電池システムに分担させるように制御する制御手段を備えたことを特徴とする、二次電池を用いたアンシラリーサービス提供システム。
【請求項12】 前記制御手段は、前記二次電池システムを設置し、アンシラリーサービスの分担を許容する需要家に対して、予め設定された期間の二次電池のアンシラリーサービス提供量または提供能力を積算して記録することを特徴とする、請求項11に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供システム。
【請求項13】 前記制御手段は、前記アンシラリーサービスとして、前記需要家における前記電力系統との連系点の電力潮流の測定値が設定した範囲を超えるときには、超えない方向に予め設定した値または推定した能力値の範囲で前記二次電池システムの出力を増加または減少させるように制御することを特徴とする、請求項11に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供システム。
【請求項14】 前記制御手段は、前記需要家の構内で系統事故を検知したことに応じて、該構内設備の周波数および電圧値の計測値に基づいて前記二次電池システムの出力指令値を算出することを特徴とする、請求項11に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供システム。
【請求項15】 前記制御手段は、前記二次電池システムの外部における電圧値および電流値の測定値に基づき、前記二次電池システムの出力における上下限値の推定値を算出して前記出力指令値と前記上下限値の推定値とを比較し、前記推定値が前記出力指令値よりも大きいときは前記出力指令値を前記二次電池システムに出力し、前記出力指令値が前記推定値よりも大きいときは前記推定値を前記二次電池システムに出力することを特徴とする、請求項14に記載の二次電池を用いたアンシラリーサービス提供システム。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2003−284244(P2003−284244A)
【公開日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−78906(P2002−78906)
【出願日】平成14年3月20日(2002.3.20)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】