説明

二次電池セル、電池パック及び電力消費機器

【課題】二次電池セルに備えられた集積回路が二次電池セルから取り外されることを確実に防止することができる二次電池セルを提供する。
【解決手段】二次電池セル20は、識別情報[例えば、集積回路それ自体に付与された識別番号(ID番号)]を記憶した集積回路(ICチップ)50を備えており、集積回路50は配線異常検出回路を備えており、集積回路50が二次電池セル20から取り外されたとき、配線異常検出回路は配線異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池セル、電池パック及び電力消費機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックは、携帯電話やデジタルスチルカメラ、携帯ゲーム機、ノート型パーソナルコンピュータ、電動工具等、多様なポータブル機器に既に使用されている。そして、現在、これに留まらず、電動アシスト自転車や電気自動車、更には、家庭用蓄電装置等の、より高出力、高容量を要求される分野に使用されつつある。
【0003】
電池パックに組み込まれた二次電池セルとして、現在、最も主力的に用いられているものの1つに、リチウムイオン二次電池セルがある。リチウムイオン二次電池セルは、充電により繰返し使用できる、高電圧出力である、高エネルギー密度である、自己放電が少ない、長寿命であるといった多数の特徴により、非常に広い範囲で使用されている。また、より高出力、高容量という機器の要求に対応するため、二次電池セル(単セル)を多直列接続や多並列接続とし、組電池の形態で使用されるケースも増加している。このような使用方法は、利点も大きいが、扱われるエネルギー量が非常に大きくなるため、従来よりも、より一層注意深く取り扱う必要がある。
【0004】
電力消費機器に装着された電池パックが電力消費機器にとって安全に使用できるものか否かを判断するために、電池パックに備えられた二次電池セルの認証を行う電池認証システムが多く導入されており、無線ICタグ(集積回路)を具備する二次電池セルからID番号等の個別認識情報を読み出す技術が、例えば、特開2006−236806から周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−236806
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特開2006−236806に開示された無線ICタグ(集積回路)にあっては、無線ICタグを剥がす際、無線ICタグのメモリ部と無線送受信部との間の溝部が切断され、即ち、剥がすことで無線ICタグの回路構成が分断され、破壊される構造となっている。しかしながら、無線ICタグのメモリ部と無線送受信部との間の溝部が切断されないように無線ICタグを剥がすことは不可能ではなく、このような事態が生じた場合、無線ICタグを二次電池セルから取り外して別の二次電池セルに取り付けることを防止することが困難であるといった問題がある。また、無線ICタグのメモリ部と無線送受信部との間の溝部が容易に切断されるように設計した場合、無線ICタグの製造時、メモリ部と無線送受信部との間の溝部が切断される事故が頻繁に発生する虞がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、二次電池セルに備えられた集積回路が二次電池セルから取り外され、別の二次電池セルに転用されることを確実に防止することができる二次電池セル、係る二次電池セルを備えた電池パック、更には、係る電池パックを備えた電力消費機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る二次電池セルは、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)を備えており、
集積回路は配線異常検出回路を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、配線異常検出回路は配線異常を検出する。ここで、本発明の第1の態様に係る二次電池セルにおいて、配線異常検出回路は、限定するものではないが、信号発生回路、及び、比較回路から成る形態とすることができる。
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る二次電池セルは、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)を備えており、
集積回路は光検出手段を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、光検出手段は光を検出する。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る二次電池セルは、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)を備えており、
集積回路は圧力検出手段を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、圧力検出手段は圧力変化を検出する。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の第4の態様に係る二次電池セルは、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)を備えており、
集積回路は、二次電池セルの端子電圧を測定する電圧測定手段を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、電圧測定手段は電圧変化を検出する。ここで、本発明の第4の態様に係る二次電池セルにおいて、電圧測定手段は、限定するものではないが、基準電圧発生回路、及び、比較回路から成る形態とすることができる。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の第5の態様に係る二次電池セルは、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)を備えており、
集積回路は、二次電池セルにおける抵抗値を測定する抵抗値測定手段を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、抵抗値測定手段は抵抗値変化を検出する。ここで、本発明の第5の態様に係る二次電池セルにおいて、抵抗値測定手段は、限定するものではないが、二次電池セルにおける電解液の抵抗値を測定する形態とすることができる。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の第6の態様に係る二次電池セルは、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)を備えており、
集積回路は、外部から供給されるクロック周波数をモニタするモニタ回路を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、モニタ回路はクロック周波数の変化を検出する。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の第7の態様に係る二次電池セルは、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたことを検出するための検出手段を備えている。
【0015】
上記の目的を達成するための本発明の電池パックは、好ましい形態を含む本発明の第1の態様〜第7の態様に係る二次電池セルを、複数、有する。
【0016】
上記の目的を達成するための本発明の電力消費機器は、好ましい形態を含む本発明の第1の態様〜第7の態様に係る二次電池セルを、複数、有する電池パックを備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の態様に係る二次電池セル、本発明の電池パックにおける本発明の第1の態様に係る二次電池セル、あるいは、本発明の電力消費機器における本発明の第1の態様に係る二次電池セル(以下、これらの二次電池セルを総称して、『本発明の第1の態様に係る二次電池セル等』と呼ぶ場合がある)にあっては、配線異常を検出する配線異常検出回路が備えられているので、また、
本発明の第2の態様に係る二次電池セル、本発明の電池パックにおける本発明の第2の態様に係る二次電池セル、あるいは、本発明の電力消費機器における本発明の第2の態様に係る二次電池セル(以下、これらの二次電池セルを総称して、『本発明の第2の態様に係る二次電池セル等』と呼ぶ場合がある)にあっては、光を検出する光検出手段が備えられているので、また、
本発明の第3の態様に係る二次電池セル、本発明の電池パックにおける本発明の第3の態様に係る二次電池セル、あるいは、本発明の電力消費機器における本発明の第3の態様に係る二次電池セル(以下、これらの二次電池セルを総称して、『本発明の第3の態様に係る二次電池セル等』と呼ぶ場合がある)にあっては、圧力変化を検出する圧力検出手段が備えられているので、また、
本発明の第4の態様に係る二次電池セル、本発明の電池パックにおける本発明の第4の態様に係る二次電池セル、あるいは、本発明の電力消費機器における本発明の第4の態様に係る二次電池セル(以下、これらの二次電池セルを総称して、『本発明の第4の態様に係る二次電池セル等』と呼ぶ場合がある)にあっては、電圧変化を検出する電圧測定手段が備えられているので、また、
本発明の第5の態様に係る二次電池セル、本発明の電池パックにおける本発明の第5の態様に係る二次電池セル、あるいは、本発明の電力消費機器における本発明の第5の態様に係る二次電池セル(以下、これらの二次電池セルを総称して、『本発明の第5の態様に係る二次電池セル等』と呼ぶ場合がある)にあっては、抵抗値変化を検出する抵抗値測定手段が備えられているので、また、
本発明の第6の態様に係る二次電池セル、本発明の電池パックにおける本発明の第6の態様に係る二次電池セル、あるいは、本発明の電力消費機器における本発明の第6の態様に係る二次電池セル(以下、これらの二次電池セルを総称して、『本発明の第6の態様に係る二次電池セル等』と呼ぶ場合がある)にあっては、クロック周波数の変化を検出するモニタ回路が備えられているので、また、
本発明の第7の態様に係る二次電池セル、本発明の電池パックにおける本発明の第7の態様に係る二次電池セル、あるいは、本発明の電力消費機器における本発明の第7の態様に係る二次電池セル(以下、これらの二次電池セルを総称して、『本発明の第7の態様に係る二次電池セル等』と呼ぶ場合がある)にあっては、検出手段が備えられているので、
二次電池セルに備えられた集積回路が、その二次電池セルから取り外されたことを確実に検出することができる。それ故、集積回路を別の二次電池セルに取り付けることを確実に防止することができる。しかも、集積回路は、識別情報[例えば、集積回路それ自体に付与された識別番号(ID番号)]を記憶しているので、電力消費機器に装着された電池パックに備えられた二次電池セルの認証を、容易に、且つ、確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1の(A)、(B)及び(C)は、実施例1の二次電池セルの模式的な斜視図、集積回路等の模式的な一部端面図、及び、シールド配線の模式的な部分的平面図である。
【図2】図2は、実施例1における配線異常検出回路のブロック図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1及び実施例2における集積回路のブロック図である。
【図4】図4は、実施例1の電池パックにおける二次電池セルの接続状態を示す図である。
【図5】図5の(A)及び(B)は、それぞれ、電池パックの模式的な斜視図、及び、電池パックの蓋を外した状態の模式図である。
【図6】図6は、実施例1の二次電池セルの模式的な端面図である。
【図7】図7の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例1の二次電池セルの変形例における二次電池セル等の模式的な一部断面図、模式的な部分的平面図である。
【図8】図8の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例3及びその変形例における集積回路のブロック図である。
【図9】図9は、実施例4の二次電池セルの模式的な斜視図である。
【図10】図10の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例4の二次電池セルの変形例の模式的な斜視図、及び、集積回路とアンテナとの集合体の模式図である。
【図11】図11は、実施例4の電池パックにおける二次電池セルの接続状態を示す図である。
【図12】図12は、実施例5の二次電池セルの模式的な斜視図である。
【図13】図13は、実施例5の電池パックにおける二次電池セルの接続状態を示す図である。
【図14】図14の(A)及び(B)は、実施例6の二次電池セルの模式的な斜視図である。
【図15】図15は、実施例6の二次電池セルの変形例の模式的な斜視図である。
【図16】図16は、実施例7において、集積回路と制御回路との間の通信処理における電気信号を模式的に示す図である。
【図17】図17の(A)及び(B)は、実施例8の二次電池セルの模式的な斜視図、及び、集積回路等の模式的な一部端面図である。
【図18】図18は、実施例8の二次電池セルの変形例の模式的な端面図である。
【図19】図19の(A)及び(B)は、実施例8の二次電池セルの別の変形例の模式的な斜視図である。
【図20】図20は、実施例8の二次電池の更に別の変形例の模式的な分解斜視図である。
【図21】図21の(A)及び(B)は、実施例9の二次電池セルの模式的な斜視図、及び、集積回路等の模式的な一部端面図である。
【図22】図22の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例9の二次電池セルにおける圧力検出手段の模式的な平面図、模式的な端面図、及び、圧力検出のための回路図である。
【図23】図23は、実施例9の二次電池セルの変形例を説明するための二次電池セル等の模式的な部分的平面図である。
【図24】図24の(A)及び(B)は、実施例12における集積回路のブロック図である。
【図25】図25の(A)及び(B)は、電池パックの本体部、閉鎖部材等の変形例の模式的な一部断面図である。
【図26】図26は、従来の電池パックの一形態における二次電池セルの接続状態を示す図である。
【図27】図27は、従来の電池パックの一形態における二次電池セルの模式的な端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の第1の態様〜第7の態様に係る二次電池セル、電池パック及び電力消費機器、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、電池パック及び電力消費機器)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例1の別の変形)
6.実施例5(実施例1の別の変形)
7.実施例6(実施例1の別の変形)
8.実施例7(実施例1の別の変形)
9.実施例8(本発明の第2の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、電池パック及び電力消費機器)
10.実施例9(本発明の第3の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、電池パック及び電力消費機器)
11.実施例10(本発明の第4の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、電池パック及び電力消費機器)
12.実施例11(本発明の第5の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、電池パック及び電力消費機器)
13.実施例12(本発明の第6の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、電池パック及び電力消費機器)、その他
【0020】
[本発明の第1の態様〜第7の態様に係る二次電池セル、電池パック及び電力消費機器、全般に関する説明]
本発明の第1の態様に係る二次電池セル等において、配線異常検出回路は、二次電池セルに設けられた異常検出用配線あるいはシールド配線に接続された形態とすることができるし、集積回路にアンテナが備えられている場合、配線異常検出回路は、二次電池セルに設けられた異常検出用配線あるいはシールド配線に接続された形態とすることができる。尚、異常検出用配線、シールド配線、アンテナを総称して『シールド配線等』と呼ぶ場合がある。ここで、シールド配線は、具体的には、例えば、アクティブシールドから構成することができ、より具体的には、所謂ガード電圧が印加される構成とすることができる。そして、このような形態にあっては、集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、シールド配線等は、例えば切断されて非導通状態となり、又は、短絡状態となる形態とすることができる。あるいは又、二次電池セルが二次電池セル固定部から取り外されたとき、シールド配線等は、非導通状態となり、又は、短絡状態となる形態とすることができる。具体的には、例えば、二次電池セルが二次電池セル固定部にボルトを用いて取り付けられており、シールド配線等がボルト及び接触部に接続されている構成を挙げることができる。そして、ボルトを二次電池セル固定部に取り付けている状態にあってはボルトと接触部とは接触状態にあり、シールド配線等は導通状態にあるが、ボルトを二次電池セル固定部から外したとき、ボルトと接触部とが非接触状態となる結果、シールド配線等は非導通状態となる。あるいは又、ボルトを二次電池セル固定部に取り付けている状態にあってはボルトと接触部とは非接触状態にあり、シールド配線等は非導通状態にあるが、ボルトを二次電池セル固定部から外したとき、ボルトと接触部とが接触状態となる結果、シールド配線等は導通状態(短絡状態)となる。シールド配線等は、集積回路の上から二次電池セルの外側表面に亙り、連続して形成されている形態、二次電池セルの外側表面に形成されている形態、二次電池セルの外側表面に形成され、集積回路とは配線を介して接続され、あるいは又、集積回路が装着された基板から配線を介して接続されている形態といった各種形態を挙げることができる。そして、これらの形態にあっては、例えば、
[A]シールド配線等を、集積回路の上から二次電池セルの外側表面に亙り連続してスクリーン印刷法に基づき形成する方法
[B]集積回路の上から二次電池セルの外側表面に亙り連続してフィルムを積層し、このフィルム上に、集積回路に接続されたシールド配線等をスクリーン印刷法に基づき形成する方法
[C]予め、シールド配線等をフィルム上にスクリーン印刷法にて形成しておき、適切な手段を用いて、集積回路の上から二次電池セルの外側表面に亙りフィルムを亙り貼り合わせ、且つ、シールド配線等と集積回路とを接続する方法
[D]シールド配線等を、二次電池セルの外側表面にスクリーン印刷法に基づき形成し、且つ、シールド配線等と集積回路とを接続する方法
[E]予め、シールド配線等をフィルム上にスクリーン印刷法にて形成しておき、適切な手段を用いて二次電池セルの外側表面にフィルムを亙り貼り合わせ、且つ、シールド配線等と集積回路とを接続する方法
[F]上述した各種の形態において、二次電池セルの外側表面ではなく、適宜、二次電池セルの内側に形成する方法
といった方法に基づき形成することができる。尚、シールド配線等をボルトや接触部と接続するために、シールド配線等とボルトや接触部とを配線によって接続してもよいし、場合によっては、集積回路とボルトや接触部とを配線によって直接接続してもよい。また、電池パックを構成する本体部の内部に二次電池セルを納め、本体部に閉鎖部材を被せ、閉鎖部材をボルトを用いて本体部に固定することで電池パックを組み立てるが、このボルトと集積回路とを配線で接続してもよい。
【0021】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様〜第7の態様に係る二次電池セル等において、集積回路は記憶領域を備えており、
[1]本発明の第1の態様に係る二次電池セル等にあっては、配線異常検出回路が配線異常を検出したとき、記憶領域は、配線異常が検出された旨(即ち、集積回路が二次電池セルから取り外された旨)を記憶し、
[2]本発明の第2の態様に係る二次電池セル等にあっては、光検出手段(例えば、ホトダイオードやホトトランジスタ、ホトサイリスタ)が光を検出したとき、記憶領域は、集積回路が二次電池セルから取り外された旨を記憶し、
[3]本発明の第3の態様に係る二次電池セル等にあっては、圧力検出手段(例えば、半導体圧力センサ)が圧力変化を検出したとき、記憶領域は、集積回路が二次電池セルから取り外された旨を記憶し、
[4]本発明の第4の態様に係る二次電池セル等にあっては、電圧測定手段が電圧変化を検出したとき、記憶領域は、集積回路が二次電池セルから取り外された旨を記憶し、
[5]本発明の第5の態様に係る二次電池セル等にあっては、抵抗値測定手段が抵抗値変化を検出したとき、記憶領域は、集積回路が二次電池セルから取り外された旨を記憶し、
[6]本発明の第6の態様に係る二次電池セル等にあっては、モニタ回路がクロック周波数の変化を検出したとき、記憶領域は、集積回路が二次電池セルから取り外された旨を記憶し、
[7]本発明の第7の態様に係る二次電池セル等にあっては、検出手段が、集積回路が二次電池セルから取り外されたことを検出したとき、記憶領域は、集積回路が二次電池セルから取り外された旨を記憶する、
といった構成を採用することができる。
【0022】
ここで、記憶領域は、例えば、RAMやレジスタ、EEPROM等から構成することができる。また、記憶領域は、複数ビットから構成され、集積回路が二次電池セルから取り外されたか否かを記憶するフラグ領域と、このフラグ領域に対するエラー検知ビット領域とから構成することが好ましい。集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、記憶領域(具体的には、フラグ領域及びエラー検知ビット領域)に格納されていたデータが消去され、あるいは又、書き換えられる形態とすることが好ましく、これによって、例えば、後述する制御回路が、記憶領域に記憶されている情報(データ)を調べることで、集積回路を二次電池セルから取り外したことを確実に判別することが可能となる。
【0023】
あるいは又、ヒューズ(あるいは、回路切断手段)を更に備えており、
[1]本発明の第1の態様に係る二次電池セル等にあっては、配線異常検出回路が配線異常を検出したとき、集積回路はヒューズ(回路切断手段)を切断し、
[2]本発明の第2の態様に係る二次電池セル等にあっては、光検出手段が光を検出したとき、集積回路はヒューズ(回路切断手段)を切断し、
[3]本発明の第3の態様に係る二次電池セル等にあっては、圧力検出手段が圧力変化を検出したとき、集積回路はヒューズ(回路切断手段)を切断し、
[4]本発明の第4の態様に係る二次電池セル等にあっては、電圧測定手段が電圧変化を検出したとき、集積回路はヒューズ(回路切断手段)を切断し、
[5]本発明の第5の態様に係る二次電池セル等にあっては、抵抗値測定手段が抵抗値変化を検出したとき、集積回路はヒューズ(回路切断手段)を切断し、
[6]本発明の第6の態様に係る二次電池セル等にあっては、モニタ回路がクロック周波数の変化を検出したとき、集積回路はヒューズ(回路切断手段)を切断し、
[7]本発明の第7の態様に係る二次電池セル等にあっては、検出手段が、集積回路が二次電池セルから取り外されたことを検出したとき、集積回路はヒューズ(回路切断手段)を切断する、
といった構成を採用することができる。尚、回路切断手段を切断するとは、回路切断手段を物理的に切断する形態だけでなく、電気的に切断する形態を含む。
【0024】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様〜第7の態様に係る二次電池セル等(以下、これらを総称して、単に、『本発明の二次電池セル等』と呼ぶ場合がある)において、集積回路は二次電池セルの外側表面あるいは内部に配置されている。即ち、種々の好ましい形態、構成を含む本発明の二次電池セル等においては、
[1]集積回路が二次電池セルの外側表面に配置されており、電源は外部電源であり、情報の伝達は無線方式である形態
[2]集積回路が二次電池セルの外側表面に配置されており、電源は外部電源であり、情報の伝達は有線方式である形態
[3]集積回路が二次電池セルの外側表面に配置されており、電源は二次電池セルであり、情報の伝達は無線方式である形態
[4]集積回路が二次電池セルの外側表面に配置されており、電源は二次電池セルであり、情報の伝達は有線方式である形態
[5]集積回路が二次電池セルの内部に配置されており、電源は外部電源であり、情報の伝達は無線方式である形態
[6]集積回路が二次電池セルの内部に配置されており、電源は外部電源であり、情報の伝達は有線方式である形態
[7]集積回路が二次電池セルの内部に配置されており、電源は二次電池セルであり、情報の伝達は無線方式である形態
[8]集積回路が二次電池セルの内部に配置されており、電源は二次電池セルであり、情報の伝達は有線方式である形態
の、合計、8つの形態がある。ここで、「情報」とは、識別情報を指し、場合によっては、更に、後述する個体情報、電池状態を含む。また、有線方式には電力線通信方式が包含される。
【0025】
集積回路を二次電池セルの外側表面に配置する場合、集積回路を二次電池セルの外側表面に貼り合わせればよいし、あるいは又、集積回路を二次電池セルの外側表面に適切な手段によってラミネートすればよい。また、外装用フィルムの一部をアンテナや配線等として利用して、集積回路を接続することもできる。異常検出用配線あるいはシールド配線もラミネートされていることが好ましい。
【0026】
一方、集積回路を、円筒型の二次電池セルの内部に配置する場合、集積回路を、二次電池セルの内部に配された上部絶縁板と安全弁機構とに間に存在する隙間や、電池蓋やキャップの直下に存在する隙間といった適切な空間内に配置すればよい。また、集積回路を、ラミネートタイプを含む角型の二次電池セルの内部に配置する場合、集積回路を、例えば、封口板(キャッププレート)の直下に配置された絶縁スペーサで囲まれた隙間といった適切な空間内やラミネート部分に配置すればよい。
【0027】
本発明の二次電池セル等において、集積回路は、更に、個体情報を記憶している形態とすることができる。ここで、個体情報として、二次電池セルに付与された識別番号(ID番号)、二次電池セルに付与された認証番号、二次電池セルの製造者名、二次電池セルの販売者名、二次電池セルの型番、二次電池セルの定格、二次電池セルの仕様、及び、二次電池セルの認証のための鍵情報から成る群から選択された少なくとも1種類の情報を例示することができる。個体情報を二次電池セルに付与された識別番号や認証番号とすれば、二次電池セルが認証された正規の二次電池セルであるか否かの判定を、容易に、且つ、確実に行うことができる。
【0028】
集積回路の電源を二次電池セルとする場合、即ち、集積回路を二次電池セルからの電力で駆動するためには、集積回路を、適切な手段を用いて、正極や正極延在部(例えば、正極リードや正極ピン、電池蓋)及び負極や負極延在部(例えば、負極リードや電池缶)に接続すればよいし、あるいは又、熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient、PCT素子)及び負極や負極延在部に接続すればよい。後述するように、集積回路によって電池電流及び/又は電池端子電圧を計測する場合も、同様の接続形態とすればよい。一方、集積回路の電源を外部電源とする場合、集積回路は、二次電池セルの外部からの電気信号に基づく電力によって動作する形態とすればよい。即ち、集積回路は、二次電池セルの外部からの電気信号を有線又は無線で受け取り、この電気信号を整流することで電力を得る構成とすることができる。
【0029】
本発明の二次電池セル等において、前述したとおり、集積回路は、識別情報、あるいは、識別情報と個体情報(以下、これらを総称して、『識別情報等』と呼ぶ場合がある)を無線によって二次電池セルの外部に送出する構成とすることができ、これによって電池パックの構成を簡素化することができる。通信が無線の場合、その方式として、ZigBeeやIrDAを含む赤外線、無線LANのプロトコルの1つであるBluetoothやHomeRF、Wi−Fi、NFC、RFID、Felica、ISO/IEC 18092、ISO/IEC 14443等を含めることができる。あるいは又、集積回路は、識別情報等を有線によって二次電池セルの外部に送出する構成とすることができる。尚、集積回路が二次電池セルの内部に配置されている場合、集積回路は、二次電池セルに設けられた情報入力端子及び情報出力端子、あるいは、情報入出力端子に接続されている構成とすることが好ましく、電池パック全体でセンシング用配線を簡略化することができるし、制御回路との間の接続点数を減らすことができ、電池パックの信頼性の向上を図ることができる。
【0030】
識別情報等の伝達等を無線方式とする場合、集積回路はアンテナを備えている構成とすることができるし、場合によっては、二次電池セルの電極や電池蓋をアンテナとして用いることもできるし、二次電池セルの外装材料をパターニングすることでアンテナを形成してもよい。アンテナは、例えば、コイル状のアンテナとすることもできるし、ダイポール型のアンテナとすることもできる。識別情報等の伝達を有線方式とする場合、制御回路と二次電池セルとの間を配線(センシング用配線)で結べばよい。
【0031】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の電池パックあるいは電力消費機器における電池パックにあっては、制御回路を更に備えており、制御回路は、各二次電池セルに備えられた集積回路からの識別情報に基づき、集積回路が二次電池セルから取り外されたものであるか否かの判断(集積回路の認証)を行い、集積回路からの個体情報に基づき、各二次電池セルの認証を行う構成とすることができる。そして、この場合、制御回路には、各二次電池セルの識別情報と同じ情報、あるいは、識別情報及び個体情報と同じ情報が格納されている構成とすることが好ましい。更には、これらの好ましい構成において、制御回路は、各二次電池セルに備えられた集積回路からの識別情報等を、場合によっては更に後述する電池状態を、無線を介して受け取る形態とすることができ、これによって、電池パックの構成を簡素化することができる。あるいは又、これらの好ましい構成において、制御回路は、各二次電池セルに備えられた集積回路からの識別情報等を、場合によっては更に後述する電池状態を、容量性カップリング(容量結合、ACカップリング)に基づき受け取る形態とすることができ、これによって、制御回路に高い耐圧を要求する必要が無くなる。尚、この形態にあっては、集積回路は、識別情報等を有線によって制御回路に送出することになるが、集積回路が二次電池セルの内部に配置されている場合には、集積回路は、二次電池セルに設けられた情報入力端子及び情報出力端子、あるいは、情報入出力端子に接続されている構成とすることが好ましく、これによって、電池パック全体でセンシング用配線を簡略化することができるし、制御回路との間の接続点数を減らすことができ、電池パックの信頼性の向上を図ることができる。また、電池状態を、電力線に重畳させて、受け取る形態とすることもできる。
【0032】
制御回路は、MPUや記憶手段(例えば、EEPROMから成る)を備えた回路から構成することができるし、必要に応じて、集積回路からの識別情報等や後述する電池状態を受け取り、また、集積回路との間の情報交換を行うための通信回路を備えている。前述したとおり、二次電池セルに備えられたメモリ部に記憶された識別情報等や情報(データ)と同じ識別情報等や情報(データ)を、制御回路の記憶手段に記憶させておくことが好ましい。場合によっては、MPUの代替としてシーケンサを用いることもできる。制御回路から二次電池セルに対して制御信号あるいは電気信号を送ることで集積回路の制御を行うことができる。制御回路が「外部」に相当する。
【0033】
集積回路に記憶された識別情報等や各種情報、及び/又は、通信経路を暗号化してもよく、これによって、第三者の解読が困難となる。
【0034】
集積回路は電池状態(電池情報)を計測する計測機能を有していてもよく、これによって、二次電池セルそれ自体が電池状態の情報を収集することができ、電池パック全体の構成の簡素化を図ることができる。ここで、集積回路が計測する電池状態は、電池温度、電池電流及び電池端子電圧から成る群から選択された少なくとも1つの物理量である形態とすることができる。電池温度とは、二次電池セルのどこに集積回路を配置するかにも依るが、二次電池セル内部の温度あるいは二次電池セル外面の温度を意味する。また、電池電流とは、二次電池セルの正極と負極との間を流れる電流値を意味する。更には、電池端子電圧とは、二次電池セルの正極と負極との間の電圧値を意味する。電池状態を、識別情報等と併せて、外部あるいは制御回路に送り出せばよい。電池温度を計測するためには、集積回路は、例えば、pn接合部を有していればよい。pn接合部におけるビルトイン・ポテンシャル(ビルトイン電圧)は温度依存性を有するので、pn接合部に順方向の電流を流して電圧値を計測することで、あるいは、pn接合部に順方向の一定電圧を印加して電流値を計測することで、二次電池セルの温度を求めることができる。電池電流の計測のためには周知の電流計測回路を集積回路内に設ければよいし、電池端子電圧の計測のためにも周知の電圧計測回路を集積回路内に設ければよい。
【0035】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の電池パック、あるいは、本発明の電力消費機器における電池パックにおいて、複数の二次電池セルの接続形態(組電池の状態)として、限定するものではないが、複数の二次電池セルを並列接続し、係る並列接続ユニットを複数、直列接続する形態、複数の二次電池セルを直列接続し、係る直列接続ユニットを複数、並列接続する形態を例示することができる。
【0036】
二次電池セルとしてリチウムイオン二次電池を挙げることができるが、これに限定するものではなく、要求される特性に応じて、適宜、使用する二次電池の種類を選択すればよい。二次電池セルそれ自体の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができるし、二次電池セルの形状も、上述したとおり、周知の円筒型や、ラミネートタイプを含む角型とすることができる。二次電池セルの充電及び放電を制御するための充放電制御回路は、MPUや記憶手段(例えば、EEPROMから成る)を備えた周知の回路から構成することができる。充放電制御回路には周知の電池保護回路が備えられていてもよく、必要に応じて電池パックの機能を停止させるために電池保護回路を作動させればよい。尚、充放電制御回路を前述した制御回路に組み込んでもよい。
【0037】
本発明における電池パックは、例えば、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)、ゴルフカート、電動カート、電動オートバイ、電動アシスト自転車、鉄道車両、電動ドリル等の電動工具、電力供給ユニットあるいはホームエネルギーサーバ(家庭用蓄電装置)、パーソナルコンピュータ、携帯電話、PDA(携帯情報端末)、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダ、電子書籍、電子辞書、音楽プレーヤ、ラジオ、ヘッドホン、コードレス電話子機、電気シェーバー、冷蔵庫、 エアコンディショナー、テレビジョン受像機や画像表示装置、モニター、ステレオ装置、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、室内灯等の照明機器、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、医療機器、玩具、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等といった各種の電力消費機器に適用することができ、これらの電力消費機器の駆動用電源又は補助用電源とすることができる。あるいは又、本発明における電池パックは、例えば、住宅をはじめとする建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源等の機器に適用することができるし、これらの機器に電力を供給するために使用することもできるし、所謂スマートグリッドにおける蓄電装置としても用いることができる。尚、このような蓄電装置は、電力を供給するだけでなく、他の電力源から電力の供給を受けることにより蓄電することができる。更には、本発明における電池パックを、ホーム・エネルギー・マネジメント(管理)・システム(HEMS,Home Energy Management System)、ビル・エネルギー管理システム(BEMS,Building Energy Management Systems)に組み込むこともできる。電池パックを構成する二次電池セルを充電するための電源として、商用電源だけでなく、種々の太陽電池、燃料電池、火力発電設備、原子力発電設備、水力発電設備、風力発電装置、マイクロ水力発電装置、地熱発電装置等を例示することができるし、電力消費機器が生成する回生エネルギーを例示することもできるが、これらに限定するものではない。
【実施例1】
【0038】
実施例1は、本発明の第1の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、本発明の第1の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電池パック、本発明の第1の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電力消費機器に関する。実施例1において、集積回路は二次電池セルの外側表面に配置されており、集積回路の電源は二次電池セルであり、情報の伝達は有線方式である。
【0039】
実施例1の二次電池セルの模式的な斜視図を図1の(A)に示し、図1の(A)の矢印B−Bに沿った集積回路等の模式的な一部端面図を図1の(B)に示し、異常検出用配線あるいはシールド配線の模式的な部分的平面図を図1の(C)に示す。更には、実施例1における配線異常検出回路のブロック図を図2に示し、実施例1における集積回路のブロック図を図3の(A)に示し、実施例1の電池パックにおける二次電池セルの接続状態を図4に示す。また、電池パックの模式的な斜視図及び電池パックの蓋を外した状態の模式図を、それぞれ、図5の(A)及び(B)に示し、実施例1の二次電池セルの模式的な端面図を図6に示す。尚、図1の(B)において、電池缶等の断面を平坦に図示しているが、実際には、電池缶等の断面は円弧を描いている。
【0040】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例12の二次電池セル20は、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)50を備えている。ここで、識別情報は、具体的には、集積回路50それ自体に付与された識別番号(ID番号)である。また、実施例1において、集積回路50は二次電池セル20からの電力で駆動される。
【0041】
実施例1の集積回路50のブロック図を図3の(A)に示すように、実施例1〜実施例12において、集積回路50は、入出力信号を処理する信号処理部51、RAMから構成された記憶領域52、識別情報等の記憶及び各種処理に必要なメモリ部53を備えている。記憶領域52は、集積回路50が二次電池セル20から取り外されたか否かを記憶している。具体的には、RAMから構成された記憶領域52は、複数ビットから構成され、集積回路50が二次電池セル20から取り外されたか否かを記憶するフラグ領域と、このフラグ領域に対するエラー検知ビット領域とから構成されている。更には、集積回路50のメモリ部53には、識別情報等(識別情報及び個体情報)が記憶されている。ここで、個体情報は、例えば、各二次電池セル20に付与された識別番号(ID番号)及び認証番号である。尚、個体情報として、更に、二次電池セル20の製造者名、販売者名、二次電池セルの型番、定格、仕様、二次電池セルの認証のための鍵情報等のいずれか1種類、あるいは、任意の複数種の組合せを加えてもよい。
【0042】
更には、実施例1〜実施例7において、集積回路50は配線異常検出回路60を備えている。そして、実施例1〜実施例7にあっては、集積回路50が二次電池セル20から取り外されたとき、配線異常検出回路60は配線異常を検出する。あるいは又、集積回路50が二次電池セル20から取り外されたことを検出するための検出手段(具体的には、実施例1〜実施例7にあっては配線異常検出回路60)を備えている。
【0043】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例12の電池パック10は、二次電池セル20を、複数、有する。即ち、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例12の電池パック10は、識別情報等を記憶した集積回路(ICチップ)50を備えた二次電池セル20を、複数、有し、集積回路50は二次電池セル20あるいは外部電源からの電力で駆動される。実施例1における二次電池セル20の接続状態(組電池の状態)を図4に示すが、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例12における電池パック10にあっては、限定するものではないが、複数の二次電池セル20が直列接続され、係る直列接続ユニットが複数、並列接続されている。より具体的には、この電池パック10にあっては、7つの二次電池セル20が直列接続され、係る直列接続された二次電池群から成る直列接続ユニットが3つ、並列接続されている。二次電池セル20は、ABS樹脂といったプラスチック材料から構成された筐体17に格納されている。尚、実施例1にあっては、集積回路50は所謂カスケード接続方式にて接続されている。
【0044】
そして、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例12の電池パック10は制御回路(制御装置)90を更に備えており、制御回路90は、各二次電池セル20に備えられた集積回路50からの識別情報に基づき、更には、必要に応じて、個体情報に基づき、集積回路が二次電池セルから取り外されたものであるか否かの判断(集積回路の認証)、各二次電池セル20の認証を行う。制御回路90は、MPU91、及び、例えば、EEPROMから成る記憶手段92を備えた回路から構成されており、また、集積回路50からの識別情報を受け取り、集積回路50との間の情報交換を行うための通信回路93を備えており、所定の時間間隔で制御信号を二次電池セル20に送る。制御回路90には、更に、二次電池セル20の充電及び放電を制御する充放電制御回路が組み込まれている。制御回路90の記憶手段92には識別情報が記憶されており、制御回路90は、集積回路50からの識別情報との照合を行う。更には、制御回路90の記憶手段92には個体情報も記憶されており、制御回路90は、集積回路50からの個体情報との照合を行う。制御回路90の電源は、電池パック10を構成する二次電池セル20である。制御回路90には周知の電池保護回路94が備えられており、必要に応じて電池パック10の機能を停止させるために、電池保護回路94を作動させればよい。具体的には、電池保護回路94はヒューズから成り、電池パック10の機能を停止させるためには、この電池保護回路94を作動させる。即ち、MPU91の制御下、ヒューズを溶断すればよい。あるいは又、電池保護回路94に備えられた過放電防止スイッチや過充電防止スイッチの機能を停止させてもよい。但し、電池保護回路94は、このような構成に限定するものではない。
【0045】
実施例1において、二次電池セル20は円筒型の二次電池セルであり、リチウムイオン二次電池から成る。二次電池セル20それ自体の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができる。
【0046】
模式的な端面図を図6に示すように、実施例1のリチウムイオン二次電池から成る二次電池セル20にあっては、ほぼ中空円柱状の電池缶31の内部に、正極材料41及び負極材料42がセパレータ43を介して巻回された巻回電極体40と、一対の絶縁板(上部絶縁板32及び下部絶縁板33)とが収納されている。セパレータ43は、正極材料41と負極材料42とを隔離し、正極材料41と負極材料42との接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させる。電池缶31は、例えば、ニッケルめっきが施された鉄から作製されており、その一端部は閉鎖され、他端部は開放されて開口端部を構成している。一対の絶縁板32,33は、巻回電極体40を挟み、その巻回周面に対して垂直に位置するように配置されている。
【0047】
電池缶31の開口端部には、電池蓋34と、その内側に設けられた安全弁機構35及び熱感抵抗素子(PTC素子)36とが、ガスケット37を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶31の内部は密閉されている。電池蓋34は、例えば、電池缶31と同様の材料から作製されている。安全弁機構35は、熱感抵抗素子36を介して電池蓋34と電気的に接続されている。安全弁機構35にあっては、内部短絡あるいは外部からの加熱等に起因して内圧が一定以上となった場合にディスク板35Aが反転することにより、電池蓋34と巻回電極体40との間の電気的接続が切断される構成となっている。熱感抵抗素子36は、温度の上昇に応じて抵抗が増加することにより、電流を制限して大電流に起因する異常な発熱を防止する。ガスケット37は、例えば絶縁材料から構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0048】
巻回電極体40の中心には、例えば、センターピン44が挿入されている。この巻回電極体40においては、アルミニウム等から構成された正極リード45が、正極材料41に接続されており、ニッケル等から構成された負極リード46が、負極材料42に接続されている。正極リード45は、安全弁機構35に溶接されることにより、電池蓋34と電気的に接続されている。一方、負極リード46は電池缶31に溶接されている。
【0049】
リチウムイオン二次電池は、例えば、以下のようにして製造される。
【0050】
先ず、周知の方法で正極材料41及び負極材料42を作製する。次いで、正極材料41に正極リード45を溶接して取り付けると共に、負極材料42に負極リード46を溶接して取り付ける。その後、正極材料41と負極材料42とをセパレータ43を介して巻回させることにより巻回電極体40を形成し、正極リード45の先端部を安全弁機構35に溶接すると共に、負極リード46の先端部を電池缶31に溶接した後、巻回電極体40を一対の絶縁板32,33で挟みながら電池缶31の内部に収納する。そして、電池缶31の内部に電解液を注入して、セパレータ43に電解液を含浸させる。最後に、電池缶31の開口端部に電池蓋34、安全弁機構35及び熱感抵抗素子36をガスケット37を介してかしめることにより固定する。こうして、図6に示したリチウムイオン二次電池を完成させることができる。
【0051】
実施例1において、集積回路50は二次電池セル20の外側表面上に配置されており、集積回路50の電源は二次電池セル20であり、情報の伝達は有線方式である。即ち、識別情報等を有線によって(具体的には、配線48を介して)二次電池セル20の外部(具体的には、制御回路90)に送出する。集積回路50は、二次電池セル20の正極(具体的には、電池蓋34)と負極(具体的には、電池缶31)とに配線58を介して接続されている。
【0052】
そして、実施例1の電池パック10にあっては、21個の二次電池セル20のそれぞれを、筐体17に設けられた格納部に格納する。全ての二次電池セル20が格納部に格納されたならば、筐体17を電池パック10の本体部11の内部に納め、その上方に、MPU91等が取り付けられたプリント配線板95を本体部11に適切な方法で取り付け(図5の(B)参照)、本体部11に閉鎖部材(具体的には、蓋)12を被せ、本体部11に設けられた固定部(例えば、タップ部14が設けられたブッシュ)に固定用部材(例えば、ネジ)13を螺合させる。尚、参照番号15は、本体部11の側壁に貼り付けられた識別標識(シリアルID、バーコード)であり、参照番号16は出力部である。本体部11の形状は、本質的に任意であるが、実施例1においては、直方体とした。本体部11へ複数の二次電池セル20を出し入れするための開口部が、本体部11の頂面に設けられており、閉鎖部材12はこの開口部を塞いでいる。但し、開口部は、本体部11の側面に設けてもよいし、本体部11の底面に設けてもよい。
【0053】
実施例1において、図1の(B)に模式的な一部端面図を示すように、集積回路50は、二次電池セル20の外側表面に接着剤(図示せず)を用いて貼り合わされている。そして、配線異常検出回路60は、二次電池セル20に設けられた異常検出用配線あるいはシールド配線66に接続されている。シールド配線66は、集積回路50の上から二次電池セル20の外側表面に亙り、連続して形成されている。具体的には、シールド配線66は、アクティブシールドから構成されており、ガード電圧が印加される。より具体的には、集積回路50の上から二次電池セル20の外側表面に亙り連続してフィルム65を積層し、このフィルム65上に、集積回路50と端子部(パッド部)64Cにおいて接続されたシールド配線66をスクリーン印刷法に基づき形成する。その後、全体を外装用フィルム67でラミネートする。外装用フィルム67には開口部68A,68Bが設けられており、開口部68A,68Bの底部には端子部(パッド部)64A,64Bが露出している。そして、配線58(図1の(B)には図示せず)が端子部64Aに取り付けられ、配線48(図1の(B)には図示せず)が端子部64Bに取り付けられている。
【0054】
図2に配線異常検出回路60のブロック図を示すように、配線異常検出回路60は、信号発生回路61、比較回路62、及び、アンド(AND)回路63から成る。尚、図2には、3本のシールド配線66を図示しているが、シールド配線66の数はこれに限定されるものではない。信号発生回路61からは、所定の電圧がシールド配線66に印加される。
【0055】
電池パック10の組立完了後、各種情報(データ)の初期化を行う。即ち、全ての二次電池セル20の識別情報等を、筐体17における二次電池セル20の位置に対応させて、制御回路90は記憶手段92に記憶する。あるいは又、ポーリング方式に基づき、全ての二次電池セル20の識別情報等を制御回路90は記憶手段92に記憶する。各集積回路50のメモリ部53には、予め、識別情報が記憶されている。そして、制御回路90の制御下、各集積回路50のメモリ部53に個体情報を記憶させる。また、制御回路90の制御下、集積回路50の記憶領域52のフラグ領域に、「集積回路が二次電池セルから取り外されていない旨の情報」(以下、『非取外し情報』と呼ぶ)を記憶させておき、フラグ領域に対するエラー検知ビット領域には適切なデータを書き込んでおく。制御回路90の記憶手段92にも非取外し情報を記憶する。
【0056】
集積回路50を二次電池セル20から取り外すことを試みるときには、外装用フィルム67を除去し、更に、シールド配線66、フィルム65を除去しなければならないが、このような作業にあっては、シールド配線66に必ずや断線あるいは短絡が生じ、シールド配線66は、非導通状態となり、又は、短絡状態となる。その結果、配線異常検出回路60の比較回路62にシールド配線66を経由して入力される電圧に変化が生じ、AND回路63の出力に変化が生じる。こうして、配線異常検出回路60は配線異常を検出することができる。そして、AND回路63の出力の変化を集積回路50の信号処理部51は検出し、記憶領域52に、配線異常が検出された旨(即ち、集積回路50が二次電池セル20から取り外された旨)を記憶する。あるいは又、検出手段が、集積回路50が二次電池セル20から取り外されたことを検出したとき、記憶領域52は、集積回路50が二次電池セル20から取り外された旨を記憶する。即ち、記憶領域52(具体的には、フラグ領域及びエラー検知ビット領域)に格納されていたデータ(非取外し情報)は消去されてしまい、あるいは、書き換えられてしまう。
【0057】
所定の時間間隔で、筐体17における二次電池セル20の位置情報に基づき、制御回路90は、二次電池セル20に備えられた集積回路50に対して、具体的には、通信回路93及び配線48を介して、集積回路50が二次電池セル20から取り外されたか否かを問い合わせるコマンド、及び、識別情報等を問い合わせるコマンドを送出する。このコマンドを受信した集積回路50の信号処理部51は、メモリ部53に記憶された識別情報等及び記憶領域52のフラグ領域に記憶された情報を制御回路90に送出する。識別情報等及びフラグ領域に記憶された情報を受信した制御回路90は、フラグ領域に記憶された情報が非取外し情報に相当するか否かを調べる。そして、非取外し情報に相当しない場合、即ち、集積回路が認証されない場合、集積回路50が二次電池セル20から取り外されたものであると判断し、電池パック10を使用する使用者に警告等を与え、場合によっては、電池パック10からの出力を停止させる。また、非取外し情報に相当する場合、制御回路90は、受信した識別情報等が、記憶手段92に記憶されている識別情報等と一致するか否かを調べる。尚、フラグ領域に記憶された情報を調べる前に識別情報等の一致・不一致を調べてもよい。このような操作、処理を、全ての二次電池セル20に対して、順次、行う。そして、識別情報が不一致の場合、あるいは又は、識別情報は一致しているが、個体情報が不一致の場合、即ち、認証が成立しない場合、制御回路90は、電池パック10内の二次電池セル20が不正に入れ替えられたと判断し、電池パック10を使用する使用者に警告等を与え、場合によっては、電池パック10からの出力を停止させる。
【0058】
集積回路50が二次電池セル20から取り外されると、記憶領域52(具体的には、フラグ領域及びエラー検知ビット領域)に格納されていたデータ(非取外し情報)は消去されてしまい、あるいは、書き換えられてしまう。従って、例えば、制御回路90が記憶領域52に記憶されている情報(データ)を調べることで、上述したとおり、集積回路50を二次電池セル20から取り外したことを確実に判別することができる。
【0059】
加えて、制御回路90、及び、各二次電池セル20に備えられた集積回路50は、識別情報だけでなく、二次電池セル20に付与された識別番号及び認証番号といった個体情報を記憶しているので、各二次電池セル20の識別を容易に行うことができるし、二次電池セルが認証された正規の二次電池セルであるか否かの判定を、容易に、且つ、確実に行うことができる。
【0060】
一般に、二次電池セル20の放電電圧が或る値以下になると、電池パックからの電力の出力は停止させられる。しかしながら、このような状態にあっても、制御回路90や集積回路50を駆動するには十分な電力を二次電池セル20は有しているので、何ら、問題は生じない。しかしながら、長期間、電池パックを放置しておくと、二次電池セル20は、制御回路90や集積回路50を駆動するのに十分な電力を失う場合がある。このような場合には、電池パックの製造者等において、電池パックの充電、及び、電池パックにおける各種情報(データ)の初期化を行えばよい。
【0061】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例12においては、電池パック10を、例えば、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)、ゴルフカート、電動カート、電動オートバイ、電動アシスト自転車、鉄道車両といった電力消費機器に適用することができる。即ち、電力消費機器は、電池状態を計測する計測機能を有する集積回路50を具備した二次電池セル20を、複数、有する電池パック10を具備している。そして、これらに備えられた、電力を供給することにより電力を駆動力に変換する変換装置(具体的には、例えば、モータ)の駆動のために電池パック10を放電させ、また、係る装置からの回生エネルギーを用いて電池パック10を充電することができる。尚、これらの電力消費機器には、例えば、電池残量表示を含む制御装置や、二次電池セル20に関する情報に基いて電力消費機器の制御に関する情報処理を行なう制御装置が備えられている。
【0062】
実施例1にあっては、配線異常を検出する配線異常検出回路が備えられているので、二次電池セルに備えられた集積回路が、その二次電池セルから取り外されたことを確実に検出することができ、別の二次電池セルに転用され、あるいは又、別の二次電池セルに取り付けることを確実に防止することができる。しかも、集積回路は、識別情報を記憶しているので、電力消費機器に装着された電池パックが電力消費機器にとって安全に使用できるものか否かを判断するために、電池パックに備えられた二次電池セルの認証を、容易に、且つ、確実に行うことができる。また、実施例1にあっては、集積回路50の接続方式として所謂カスケード接続方式を採用し、逐次、集積回路の認証を行うので、少ない配線で電池パック内の全ての二次電池セルの識別情報等を知ることができ、複雑な配線を必要としない。それ故、電池パック全体で配線を簡略化することができるし、制御回路との間の接続点数を減らすことができ、電池パックの信頼性の向上を図ることができる。
【0063】
場合によっては、記憶領域52を設ける代わりに、あるいは、記憶領域52と併せて、集積回路50の電力入力側や、信号処理部51等の集積回路50の内部に、ヒューズ(あるいは、回路切断手段)を配してもよい。そして、配線異常検出回路60が配線異常を検出したとき、集積回路50はヒューズ(あるいは、回路切断手段)を溶断(あるいは切断)する。これによって、集積回路50は動作ができなくなり、二次電池セル20に備えられた集積回路50が、その二次電池セルから取り外されたことを確実に検出することができ、別の二次電池セルに取り付けることを確実に防止することができる。
【0064】
また、角型の二次電池セル等の模式的な一部断面図を図7の(A)及び(B)に示し、模式的な部分的平面図を図7の(C)に示すように、二次電池セル120が、筐体17’の二次電池セル固定部79にボルト75を用いて取り付けられており、異常検出用配線74がボルト75及び接触部76に接続されている構成とすることもできる。二次電池セル120には、例えば、タップ部78が設けられたブッシュ77が取り付けられており、異常検出用配線74をブッシュ77に接続することで、異常検出用配線74をボルト75に接続することができる。異常検出用配線74は、また、配線異常検出回路60に接続されている。そして、ボルト75を二次電池セル固定部79に取り付けている状態(図7の(B)参照)にあっては、ボルト75と接触部76とは接触状態にあり、異常検出用配線74は導通状態にある。一方、ボルト75を二次電池セル固定部79から外したとき、ボルト75と接触部76とが非接触状態となる結果、異常検出用配線74は非導通状態となる。それ故、二次電池セル120に備えられた集積回路50が、その二次電池セル120から取り外されたことを確実に検出することができ、別の二次電池セルに取り付けることを確実に防止することができる。
【実施例2】
【0065】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2の二次電池セル20において、集積回路(ICチップ)50は、電池状態(電池情報)を計測する計測機能を有している。そして、集積回路50は、計測した電池状態を有線によって二次電池セル20の外部(具体的には制御回路90)に送出する。即ち、集積回路50は、電池パック10に備えられた制御回路90に配線48を介して接続されており、集積回路50の電池状態は配線48を介して制御回路90に送られる。
【0066】
実施例2にあっては、集積回路50が計測する電池状態は、電池温度、電池電流及び電池端子電圧から成る群から選択された少なくとも1つの物理量であり、より具体的には、電池温度、電池電流及び電池端子電圧の3つの物理量である。但し、これに限定するものではなく、電池温度のみ、電池電流のみ、電池端子電圧のみ、電池温度及び電池電流、電池温度及び電池端子電圧、あるいは、電池電流及び電池端子電圧とすることもできる。そして、電池温度を計測するために、集積回路50はpn接合部を有している。また、電池電流の計測のために周知の電流計測回路(具体的には、例えば、シャント抵抗とOPアンプとADコンバータの組合せ、電流トランスやホール素子型電流センサ、磁気共鳴型電流センサとOPアンプとADコンバータの組合せ、リファレンス電圧発生回路と抵抗とADコンバータの組合せから構成された電流計測回路)を集積回路50内に備えているし、電池端子電圧の計測のために周知の電圧計測回路(具体的には、例えば、OPアンプとADコンバータの組合せや、基準電圧発生回路と比較回路の組合せ、OPアンプとADコンバータの組合せから構成された電圧計測回路)を集積回路50内に備えている。
【0067】
実施例2の集積回路50のブロック図を図3の(B)に示すように、集積回路50は、入出力信号を処理する信号処理部51、記憶領域52、個体情報の記憶及び各種処理に必要なメモリ部53の他に、電池温度を計測する温度計測部(温度計測回路)54、電池電流を計測する電流計測部(電流計測回路)55、電池端子電圧を計測する電圧計測部(電圧計測回路)56を備えている。尚、温度計測部54、電流計測部55、電圧計測部56の全てを集積回路50に実装する必要はなく、用途に応じて機能を選択して実装すればよい。集積回路50の電流計測部55及び電圧計測部56は、電流及び電圧を計測するために、配線58を介して電池蓋34及び電池缶31に接続されている。
【0068】
所定の第2の時間間隔で制御回路90から発される指令に基づき、集積回路50は二次電池セル20の電池状態を計測し、計測した電池状態を送出し、制御回路90が受け取ることで電池状態を知ることができる。そして、制御回路90は、受け取った電池状態に基づき二次電池セル20に異常があるか否かを判定する。このような操作、処理を、全ての二次電池セル20に対して、順次、行う。そして、もしも、二次電池セル20に異常が発生したならば、即ち、二次電池セル20の異常な温度上昇、二次電池セル20における異常な電流の流れ、二次電池セル20における異常な電圧値変化が発生したならば、制御回路90の制御下、直列接続ユニットに備えられたスイッチSWをオフ状態とし、異常が発生した二次電池セル20を含む直列接続ユニットを電池パック10から切り離せばよい。場合によっては、電池パック10からの出力を停止させてもよい。そして、電池パック10を使用する使用者に、二次電池セルに異常が発生した旨の警告等を与えればよい。尚、集積回路50に異常が発生し、情報交換不能の状態になった場合にも同様の処置を行なうことが好ましい。
【0069】
このように、実施例2の二次電池セル、電池パック10あるいは電力消費機器において、二次電池セル20における集積回路50は、電池状態を計測する計測機能を有している。従って、二次電池セル20それ自体が電池状態の情報を収集することができ、電池パック全体の構成の簡素化を図ることができる。尚、実施例2の集積回路、電池パックを、以下に説明する各実施例に対して、適宜、適用することができる。
【実施例3】
【0070】
実施例3も、実施例1の変形である。実施例3にあっては、集積回路50に記憶された各種情報や識別情報等は暗号化されている。具体的には、集積回路50のブロック図を図8の(A)に示すように、集積回路50は、更に、暗号処理部71及び乱数発生器72を備えている。暗号処理部71及び乱数発生器72は、周知の暗号処理部及び乱数発生器とすることができるので、詳細な説明は省略するし、二次電池セル、電池パック、電力消費機器も、実施例1あるいは実施例2において説明した二次電池セル、電池パック、電力消費機器と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。実施例3にあっては、集積回路50に記憶された各種情報や識別情報等が暗号化されているので、第三者の解読が困難となる。尚、通信経路を同様に暗号化してもよい。上述したとおり、実施例3の集積回路を、図8の(B)のブロック図に示すように、実施例2において説明した集積回路と組み合わせることもできる。また、実施例3の集積回路、電池パックを、以下に説明する各実施例に対して、適宜、適用することができる。
【実施例4】
【0071】
実施例4も、実施例1の変形である。実施例4にあっては、情報の伝達を無線方式とした。即ち、実施例4の電池パックにおける二次電池セルの接続状態を図11に示すように、実施例4の二次電池セル20において、集積回路50は、非取外し情報及び識別情報等を無線によって二次電池セル20の外部(具体的には、電池パック10に備えられた制御回路90)に送出する。図9に模式的な斜視図を示すように、集積回路50は、二次電池セル20の電池蓋34に配線58’によって接続されており、電池蓋34をアンテナとして用いる。場合によっては、模式的な斜視図を図10の(A)に示し、集積回路とアンテナとの集合体の模式図を図10の(B)に示すように、集積回路50は独立したアンテナ57を備えていてもよい。尚、図10の(A)及び(B)においては、集積回路50及びアンテナ57の集合体を集積回路集合体(無線ICタグ)50’で示した。
【0072】
実施例4にあっては、電池パック内の全ての二次電池セルにおける非取外し情報及び識別情報等を無線を介して知ることができ、複雑な配線を必要としない。また、所定の時間間隔で、筐体17における二次電池セル20の位置情報に基づき、制御回路90から無線を介して非取外し情報及び識別情報を問い合わせるコマンドが送出される。以上の点を除き、認証等のための操作、処理は、実施例1と同様とすることができるので、詳細な説明は省略するが、実施例4にあっては、電池パック10の全体の構成の簡素化を図ることができる。実施例4の集積回路、電池パックを、以下に説明する各実施例に対して、適宜、適用することができる。
【0073】
アンテナを異常検出用配線として機能させてもよい。具体的には、アンテナを、実施例1において説明したシールド配線66と同様の構成(但し、形成パターンは異なる)、方法で形成し、アンテナを配線異常検出回路にも接続する。このような構成によっても、二次電池セルからの集積回路の取り外しを試みたとき、アンテナに必ずや断線が生じる結果、配線異常が検出された旨(即ち、集積回路50が二次電池セル20から取り外された旨)を確実に検出することができる。
【実施例5】
【0074】
実施例5も、実施例1の変形である。前述した実施例1にあっては、各二次電池セル20の外側表面に配置された集積回路50は、2本の配線(センシング用配線)48を介して制御回路90に接続されている。
【0075】
ところで、従来の電池パック10における二次電池セル20の接続状態(組電池の状態)の一形態を図26に示し、二次電池セルの模式的な端面図を図27に示すように、各二次電池セル20の外側表面に配置された集積回路50は、情報入出力端子47及び配線(センシング用配線)48を介して制御回路90に接続されている。即ち、集積回路50は、所謂バス接続方式にて接続されている。このような状態にあっては、例えば、図26の二次電池セル20Aと二次電池セル20Bとでは、集積回路50から配線(センシング用配線)48を介して制御回路90に出力される信号における直流成分の電圧値が大きく異なってしまう。従って、集積回路50が識別情報等を有線によって二次電池セル20の外部(具体的には、制御回路90)に送出すると、制御回路90に入力される電圧値の幅が大きくなってしまい、例えば、制御回路90を構成する種々の回路の耐圧を高くしなければならないといった問題が生じる。
【0076】
このような問題の発生を回避するために、実施例5にあっては、電池パック10における二次電池セル20の接続状態(組電池の状態)を図13に示し、二次電池セル20の模式的な斜視図を図12に示すように、集積回路50は所謂バス接続方式にて接続されているが、制御回路90は、各二次電池セル20に備えられた集積回路50からの識別情報等を、容量性カップリング73に基づき受け取る。このような容量性カップリング73によって、集積回路50から配線(センシング用配線)48を介して制御回路90に出力される信号における直流成分が除去されるので、制御回路90に高い耐圧を要求する必要が無くなる。実施例5の集積回路、電池パックを、以下に説明する各実施例に対して、適宜、適用することができる。
【0077】
容量性カップリング73は、制御回路90における通信回路93内に形成してもよいし、制御回路90内に独立して形成してもよいし、集積回路50における信号処理部51内に形成してもよいし、集積回路50内に独立して形成してもよいし、集積回路50と制御回路90との間に配置(形成)してもよい。具体的には、例えば、回路内の絶縁層を挟んで2つの導電体層(例えば、回路の内部に設けられた配線や電極等)から成るコンデンサ(容量部)を形成すればよい。
【実施例6】
【0078】
実施例6も実施例1の変形である。実施例6において、二次電池セル120は角型の二次電池セルである。二次電池セル120の内部には、正極材料及び負極材料がセパレータを介して巻回された巻回電極体が納められている。そして、図14の(A)及び(B)に二次電池セル120の模式的な斜視図を示すように、集積回路は二次電池セル120の外側表面に配置されている。具体的には、集積回路(より具体的には集積回路集合体50’)あるいは集積回路50は、二次電池セル120の外側表面に貼り合わされている。また、集積回路50の電源は二次電池セル120であり、集積回路50は配線58を介して二次電池セル120の正極端子121及び負極端子122に接続されている。図14の(A)に図示した例では情報の伝達は無線方式であり、集積回路はアンテナ(図示せず)を備えている。必要に応じて、集積回路の電流計測部及び電圧計測部が、電流及び電圧を計測するために、配線58を介して正極端子121及び負極端子122に接続されている。あるいは又、図14の(B)に二次電池セル120の模式的な斜視図を示すように、情報の伝達は有線方式である。具体的には、集積回路50は、二次電池セル120の正極端子121及び負極端子122に配線58を介して接続されているし、集積回路50は、実施例1と同様に、配線48によって制御回路90に接続されており、あるいは又、実施例5と同様に、容量性カップリング及び配線によって制御回路90に接続されている。尚、集積回路50あるいは集積回路集合体50’は、実施例1と同様に、シールド配線で被覆されているが、図14の(A)及び(B)、並びに、次に述べる図15においては、シールド配線の図示を省略している。
【0079】
二次電池セルをラミネートタイプとすることもできる。図15に模式的な分解斜視図を示すように、二次電池セル220は、正極材料板231と負極材料板232との間に絶縁のためセパレータ233が挿入され、これらが複数層、積層された積層構造体を備え、この積層構造体を電解液と共に上下からアルミニウムラミネート234で封止した構造を有する。正極材料板231及び負極材料板232には、それぞれ、正極端子221及び負極端子222が形成されており、アルミニウムラミネート234の貼合わせ部分から外部へ突出している。集積回路50あるいは集積回路集合体50’は、正極端子221及び負極端子222に接続されている。集積回路50あるいは集積回路集合体50’は、アルミニウムラミネート234の外側表面に位置している。そして、集積回路50の電源は二次電池セルであり、情報の伝達は無線方式あるいは有線方式である形態とすることができる。実施例6の集積回路、電池パックを、以下に説明する各実施例に対して、適宜、適用することができる。
【実施例7】
【0080】
実施例7も実施例1の変形である。実施例7において、集積回路50は二次電池セルの外側表面に配置されている点は実施例1と同様であるが、集積回路50の電源は外部電源であり、情報の伝達は有線方式あるいは無線方式である。
【0081】
図3の(A)に示した集積回路50と制御回路90との間の通信処理における電気信号を図16に示す。先ず、制御回路90から通信回路93を介してプレアンブル信号を含む外部電気信号が集積回路50に送信される。集積回路50の側では、送信された外部電気信号を受信し、この外部電気信号を整流して、動作に必要な電力を集積回路50の内部に確保する。その後、制御回路90から通信回路93を介してコマンド及び二次電池セル20のID番号が集積回路50に送信される。集積回路50の側では、制御信号(具体的には、コマンド及びID番号といった外部電気信号)に従い、送信されてきたID番号が集積回路自体のID番号と一致したならば、この集積回路50の信号処理部51は、メモリ部53に記憶された識別情報及び個体情報、並びに、記憶領域52のフラグ領域に記憶された情報を制御回路90に送出する。このような操作、処理を、全ての二次電池セル20に対して、順次、行う。このような方法によれば、集積回路50は外部(具体的には、制御回路90)からの外部電気信号に基づき動作に必要な電力を得るので、電源部を必要としない。また、この方法では、外部(具体的には、制御回路90)から送信されてきたID番号と集積回路自体のID番号とを比較し、一致した場合に二次電池セル20に備えられた集積回路50から電池状態を送出するので、多数の二次電池セル20から成る電池パック10内の個々の電池状態を混同することなく得ることができる。
【実施例8】
【0082】
実施例8は、本発明の第2の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、本発明の第2の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電池パック、本発明の第2の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電力消費機器に関する。実施例8において、集積回路50Aは二次電池セル20の外側表面に配置されており、集積回路50Aの電源は二次電池セル20であり、情報の伝達は有線方式である。即ち、識別情報等を有線によって(具体的には、配線48を介して)二次電池セル20の外部(具体的には、制御回路90)に送出する。集積回路50Aは、二次電池セル20の正極(具体的には、電池蓋34)と負極(具体的には、電池缶31)とに配線58を介して接続されている。
【0083】
実施例8の二次電池セルの模式的な斜視図を図17の(A)に示し、図17の(A)の矢印B−Bに沿った集積回路等の模式的な一部端面図を図17の(B)に示すように、実施例8の二次電池セルは、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)50Aを備えている。そして、集積回路50Aは光検出手段(具体的にはホトダイオード)80を備えており、集積回路50Aが二次電池セル20から取り外されたとき、光検出手段80は光を検出する。あるいは又、集積回路50Aが二次電池セル20から取り外されたことを検出するための検出手段を備えている。尚、図17の(B)において、電池缶等の断面を平坦に図示しているが、実際には、電池缶等の断面は円弧を描いている。
【0084】
具体的には、集積回路50Aは、光検出手段80が集積回路50Aの外側表面と面するように、集積回路50Aは二次電池セル20の外側表面に接着剤を用いて接着されている。この状態にあっては、光検出手段80には光が届かない。例えば室内や野外において、集積回路50Aを二次電池セル20から取り外したとき、通常、光検出手段80は光を検出する。そして、光検出手段80が光を検出したとき、記憶領域52は、集積回路50Aが二次電池セル20から取り外された旨を記憶する。あるいは又、検出手段(実施例8にあっては、具体的には、光検出手段80)が、集積回路50Aが二次電池セル20から取り外されたことを検出したとき、記憶領域52は、集積回路50Aが二次電池セル20から取り外された旨を記憶する。即ち、記憶領域52(具体的には、フラグ領域及びエラー検知ビット領域)に格納されていたデータ(非取外し情報)は消去されてしまい、あるいは、書き換えられてしまう。あるいは又、光検出手段80が光を検出したとき、また、検出手段が集積回路50Aが二次電池セル20から取り外されたことを検出したとき、集積回路50Aはヒューズ(あるいは、回路切断手段)を切断する。
【0085】
以上の点を除き、実施例8の二次電池セルは、実施例1の二次電池セルと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。尚、実施例8の二次電池セルに対して、実施例2〜実施例7にて説明した二次電池セルを、適宜、適用することもできる。
【0086】
図18に二次電池セルの模式的な端面図を示すように、場合によっては、集積回路50Aを二次電池セル20の内部に配置してもよい。この場合、図18に示す円筒型の二次電池セル20にあっては、集積回路50Aを、二次電池セル20の内部に配された上部絶縁板32と安全弁機構35とに間に存在する空間Aに配置し、あるいは又、電池蓋34の直下に存在する空間Bに配置すればよい。そして、集積回路50Aは、配線59を介して正極リード45及び電池缶31に接続すればよい。また、図19の(A)、(B)、図20に模式的な斜視図、模式的な分解斜視図を示すように、角型の二次電池セル120,220にあっては、集積回路50Aを、例えば、封口板(キャッププレート)の直下に配置された絶縁スペーサで囲まれた隙間といった適切な空間内やラミネート部分に配置すればよい。尚、集積回路50A及びアンテナの集合体を集積回路集合体(無線ICタグ)50”で示した。また、二次電池セル20,120,220の内部に配置された集積回路の情報出力部等として、二次電池セル20,120,220に、集積回路に接続された情報入出力端子(例えば、図19の(B)の情報入出力端子47を参照)を設ければよい。このような二次電池セル20,120,220に対しても、実施例2〜実施例7にて説明した二次電池セルを、適宜、適用することができる。
【実施例9】
【0087】
実施例9は、本発明の第3の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、本発明の第3の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電池パック、本発明の第3の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電力消費機器に関する。実施例9においても、集積回路50Bは二次電池セル20の外側表面に配置されており、集積回路50Bの電源は二次電池セル20であり、情報の伝達は有線方式である。即ち、識別情報等を有線によって(具体的には、配線48を介して)二次電池セル20の外部(具体的には、制御回路90)に送出する。集積回路50Bは、二次電池セル20の正極(具体的には、電池蓋34)と負極(具体的には、電池缶31)とに配線58を介して接続されている。
【0088】
実施例9の二次電池セルの模式的な斜視図を図21の(A)に示し、図21の(A)の矢印B−Bに沿った集積回路等の模式的な一部端面図を図21の(B)に示すように、実施例9の二次電池セル20は、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)50Bを備えている。そして、集積回路50Bは圧力検出手段81を備えており、集積回路50Bが二次電池セル20から取り外されたとき、圧力検出手段81は圧力変化を検出する。あるいは又、集積回路50Bが二次電池セル20から取り外されたことを検出するための検出手段を備えている。尚、図21の(B)において、電池缶等の断面を平坦に図示しているが、実際には、電池缶等の断面は円弧を描いている。
【0089】
具体的には、集積回路50Bは、光検出手段80が集積回路50Bの外側表面と面するように、集積回路50Bは二次電池セル20の外側表面に接着剤を用いて接着されており、しかも、全体を外装用フィルム67でラミネートされている。この状態において、圧力検出手段81は圧力が加わった状態にある。集積回路50Bを二次電池セル20から取り外したとき、圧力検出手段81には圧力が加わらない状態となる。そして、圧力検出手段81が圧力変化を検出したとき、記憶領域52は、集積回路50Bが二次電池セル20から取り外された旨を記憶する。あるいは又、検出手段(実施例9にあっては、具体的には、圧力検出手段81)が、集積回路50Bが二次電池セル20から取り外されたことを検出したとき、記憶領域52は、集積回路50Bが二次電池セル20から取り外された旨を記憶する。即ち、記憶領域52(具体的には、フラグ領域及びエラー検知ビット領域)に格納されていたデータ(非取外し情報)は消去されてしまい、あるいは、書き換えられてしまう。あるいは又、圧力検出手段81が圧力変化を検出したとき、また、検出手段が集積回路50Bが二次電池セル20から取り外されたことを検出したとき、集積回路50Bはヒューズ(あるいは、回路切断手段)を切断する。
【0090】
圧力検出手段81として、例えば、模式的な平面図を図22の(A)に示し、図22の(A)の矢印B−Bに沿った模式的な端面図を図22の(B)に示すように、N型シリコン半導体基板をエッチングすることで、ダイヤフラム構造部を形成し、ダイヤフラム構造部にP型不純物を導入することで、ダイヤフラム構造部に抵抗R1,R2,R3,R4を設ける。ダイヤフラム構造部が圧力を受けて撓むと、各抵抗R1,R2,R3,R4には撓み量に応じた応力が発生し、この応力に比例して抵抗の抵抗値が変化する。このような抵抗値の変化を、電圧V0として、図22の(C)に図示するホイーストンブリッジ回路によって測定すればよい。
【0091】
0=i(R1・R3−R2・R4)/(R1+R2+R3+R4
【0092】
あるいは又、図23に模式的な部分的平面図を示すように、二次電池セル120が、筐体17’にボルト83及び抑え板84によって固定される場合、抑え板84と二次電池セル120との間に圧力検出手段81を挟み込んだ構造としてもよい。
【0093】
以上の点を除き、実施例9の二次電池セルは、実施例1の二次電池セルと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。尚、実施例9の二次電池セルに対して、実施例2〜実施例8にて説明した二次電池セルを、適宜、適用することもできる。
【実施例10】
【0094】
実施例10は、本発明の第4の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、本発明の第4の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電池パック、本発明の第4の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電力消費機器に関する。
【0095】
実施例10の二次電池セルは、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)50を備えており、
集積回路50は、二次電池セル20の端子電圧を測定する電圧測定手段(電圧計測部56)を備えており、
集積回路50が二次電池セル20から取り外されたとき、電圧測定手段は電圧変化を検出する。ここで、電圧測定手段(電圧計測部56)は、基準電圧発生回路及び比較回路から成る。比較回路の一入力部は、二次電池セルの電池蓋34あるいは正極端子121,221に接続されている。
【0096】
一般に、集積回路50を二次電池セル20から取り外すことを試みたとき、集積回路50に供給される電圧にノイズが加わったり、集積回路50に供給される電圧に突然の大きな変化が生じる。実施例10の二次電池セルにあっては、実施例2において説明した電池状態における電池端子電圧を電圧測定手段(電圧計測部56)によって測定し、電池端子電圧に、電圧に所定のノイズが加わったり、所定の変化が生じたことを電圧測定手段(電圧計測部56)が検出したとき、記憶領域52は、集積回路50が二次電池セルから取り外された旨を記憶する。あるいは又、検出手段(実施例10にあっては、具体的には、電圧計測部56)が、集積回路50が二次電池セル20から取り外されたことを検出したとき、記憶領域52は、集積回路50が二次電池セル20から取り外された旨を記憶する。即ち、記憶領域52(具体的には、フラグ領域及びエラー検知ビット領域)に格納されていたデータ(非取外し情報)は消去されてしまい、あるいは、書き換えられてしまう。あるいは又、電圧測定手段が電圧変化を検出したとき、また、検出手段が集積回路50が二次電池セル20から取り外されたことを検出したとき、集積回路50はヒューズ(あるいは、回路切断手段)を切断する。
【0097】
以上の点を除き、実施例10の二次電池セルは、実施例1の二次電池セルと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。尚、実施例10の二次電池セルに対して、実施例2〜実施例9にて説明した二次電池セルを、適宜、適用することもできる。また、電圧測定手段(電圧計測部56)の代わりに、実施例2において説明した電流計測部(電流計測回路)55とし、集積回路50は、二次電池セル20の電池電流を測定する電流測定手段(電流計測部55)を備えており、集積回路50が二次電池セル20から取り外されたとき、電流測定手段は電流変化を検出する構成としてもよい。
【実施例11】
【0098】
実施例11は、本発明の第5の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、本発明の第5の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電池パック、本発明の第5の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電力消費機器に関する。
【0099】
実施例11の二次電池セルは、識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)を備えており、
集積回路は、二次電池セルにおける抵抗値を測定する抵抗値測定手段を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、抵抗値測定手段は抵抗値変化を検出する。
【0100】
具体的には、抵抗値測定手段は、二次電池セルにおける電解液の抵抗値を測定する。より具体的には、実施例11にあっては、集積回路は、電解液の抵抗値を測定するための測定用電極、及び、抵抗値測定回路から成る抵抗値測定手段を備えており、測定用電極は電解液中に浸漬されている。
【0101】
一般に、集積回路を二次電池セルから取り外すことを試みたとき、測定用電極の電解液中に浸漬された状態に変化が生じる。具体的には、例えば、測定用電極が電解液から抜き出される。実施例11の二次電池セルにあっては、抵抗値測定手段が抵抗値変化を検出したとき、記憶領域は、集積回路が二次電池セルから取り外された旨を記憶する。あるいは又、検出手段(実施例11にあっては、具体的には、抵抗値測定手段)が、集積回路が二次電池セルから取り外されたことを検出したとき、記憶領域は、集積回路が二次電池セルから取り外された旨を記憶する。即ち、記憶領域(具体的には、フラグ領域及びエラー検知ビット領域)に格納されていたデータ(非取外し情報)は消去されてしまい、あるいは、書き換えられてしまう。あるいは又、抵抗値測定手段が抵抗値変化を検出したとき、また、検出手段が、集積回路が二次電池セルから取り外されたことを検出したとき、集積回路はヒューズ(あるいは、回路切断手段)を切断する。
【0102】
以上の点を除き、実施例11の二次電池セルは、実施例1の二次電池セルと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。尚、実施例11の二次電池セルに対して、実施例2〜実施例10にて説明した二次電池セルを、適宜、適用することもできる。
【実施例12】
【0103】
実施例12は、本発明の第6の態様及び第7の態様に係る二次電池セル、本発明の第6の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電池パック、本発明の第6の態様及び第7の態様に係る二次電池セルを組み込んだ本発明の電力消費機器に関する。
【0104】
実施例12の二次電池セルは、集積回路のブロック図を図24の(A)あるいは(B)に示すように、
識別情報を記憶した集積回路(ICチップ)を備えており、
集積回路は、外部から供給されるクロック周波数をモニタするモニタ回路85を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、モニタ回路85はクロック周波数の変化を検出する。
【0105】
一般に、集積回路を二次電池セルから取り外すことを試みたとき、外部から供給されるクロック周波数に変化が生じる。具体的には、異常な周波数がクロック周波数に重畳され、あるいは又、クロック信号の供給が遮断される。実施例12の二次電池セルにあっては、モニタ回路85がクロック周波数の変化を検出したとき、記憶領域は、集積回路が二次電池セルから取り外された旨を記憶する。あるいは又、検出手段(実施例12にあっては、具体的には、モニタ回路85)が、集積回路が二次電池セルから取り外されたことを検出したとき、記憶領域は、集積回路が二次電池セルから取り外された旨を記憶する。即ち、記憶領域(具体的には、フラグ領域及びエラー検知ビット領域)に格納されていたデータ(非取外し情報)は消去されてしまい、あるいは、書き換えられてしまう。あるいは又、抵抗値測定手段が抵抗値変化を検出したとき、また、検出手段が、集積回路が二次電池セルから取り外されたことを検出したとき、集積回路はヒューズ(あるいは、回路切断手段)を切断する。
【0106】
以上の点を除き、実施例12の二次電池セルは、実施例1の二次電池セルと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。尚、実施例12の二次電池セルに対して、実施例2〜実施例11にて説明した二次電池セルを、適宜、適用することもできる。
【0107】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例にて説明した電池パック、二次電池セル、集積回路、制御回路等の構成、構造、接続関係等は例示であり、適宜、変更することができる。集積回路を二次電池セルの外側表面に配置するとき、集積回路のパッケージを構成する樹脂と同じ樹脂あるいは同種の樹脂を用いて、二次電池セルの外側表面に配置された集積回路を被覆してもよい。このような構造にすることで、集積回路は被覆樹脂層と一体化し、集積回路を二次電池セルから取り外すことが極めて困難となり、実質的に、集積回路を二次電池セルから取り外すことができなくなるし、集積回路を二次電池セルから取り外そうとしても、集積回路が破壊されてしまう。場合によっては、ベアチップから成り、溝部が形成された集積回路を基板に実装し、基板から集積回路を取り外したとき、溝部から集積回路が破損するような構成を併用してもよい。あるいは又、ベアチップから成る集積回路を基板に実装し、基板と集積回路とをワイヤボンディング部を介して接続し、基板から集積回路を取り外したとき、ワイヤボンディング部が破損するような構成を併用してもよい。あるいは又、厚さ50μm以下の薄いベアチップから集積回路を構成することで、集積回路を取り外したとき、集積回路が破損するような構成を併用してもよい。更には、これらの構成を、適宜、組み合わせてもよい。
【0108】
図25の(A)及び(B)に本体部11、閉鎖部材(蓋)12等の模式的な一部断面図を示すように、電池パック10を構成する本体部11を、非導電材料(絶縁材料)、例えば、プラスチック材料から作製し、本体部11の固定用部材13を取り付ける固定部には、導電材料、具体的には、金属や合金(より具体的にはステンレス鋼)から成るブッシュ14Aが取り付けられている構造としてもよい。ブッシュ14Aは、第1の配線18を介して集積回路50に接続されている。尚、第1の配線18はブッシュ14Aに溶接にて取り付けられている。ブッシュ14Aは、固定用部材13と係合する。ブッシュ14Aと本体部11とを一体的に成形することで得ることができる。また、閉鎖部材12は、非導電材料(絶縁材料)、例えば、プラスチック材料から成る。閉鎖部材12に取り付けられた固定用部材13は、第2の配線19A,19B、更には、図示しない配線を介して集積回路50に接続されている。具体的には、固定用部材13は、第2の配線19A,19B及び図示しない配線を介して接地されており、この図示しない配線の一端は、ステンレス鋼から成る取付用ネジ(図示せず)によって第1の配線19Aに電気的に接続されている。第2の配線の一部19Bには、固定用部材13を通すための貫通孔19Cが設けられている。第2の配線19A,19Bと閉鎖部材12とを一体的に成形することで得ることができる。固定用部材13は、導電材料(例えば、金属や合金)から作製されたネジ、具体的には、ステンレス鋼のネジから成る。そして、ブッシュ14Aと固定用部材13との間の導通が無くなることを検出することで、本体部11に設けられた固定部(タップ部14Bが設けられたブッシュ14A)から固定用部材(ネジ)13が外されたことを検出することができ、二次電池セル20に備えられた集積回路50が、その二次電池セル20から取り外され得る状態となったことを検出することができる。そして、電池パック10を使用する使用者に警告等を与え、場合によっては、電池パック10からの出力を停止させればよい。
【符号の説明】
【0109】
10・・・電池パック、11・・・本体部、12・・・閉鎖部材(蓋)、13・・・固定用部材(ネジ)、14,14B・・・タップ部、14A・・・ブッシュ、15・・・識別標識(シリアルID)、16・・・出力部、17,17’・・・筐体、18・・・第1の配線、19A,19B・・・第2の配線、19C・・・貫通孔、20,120,220・・・二次電池セル、31・・・電池缶、32・・・上部絶縁板、33・・・下部絶縁板、34・・・電池蓋、35・・・安全弁機構、35A・・・ディスク板、36・・・熱感抵抗素子(PTC素子)、37・・・ガスケット、40・・・巻回電極体、41・・・正極材料、42・・・負極材料、43・・・セパレータ、44・・・センターピン、45・・・正極リード、46・・・負極リード、47・・・情報入出力端子、48・・・配線(センシング用配線)、50・・・集積回路、50A・・・集積回路及びアンテナの集合体である集積回路集合体、51・・・信号処理部、52・・・記憶領域、53・・・メモリ部、54・・・温度計測部、55・・・電流計測部、56・・・電圧計測部、57・・・アンテナ、58,58’,59・・・配線、60・・・配線異常検出回路、61・・・信号発生回路、62・・・比較回路、63・・・アンド(AND)回路、64A,64B,64C・・・端子部(パッド部)、65・・・フィルム、66・・・シールド配線、67・・・外装用フィルム、68A,68B・・・開口部、71・・・暗号処理部、72・・・乱数発生器、73・・・容量性カップリング、74・・・異常検出用配線、75・・・ボルト、76・・・接触部、77・・・ブッシュ、78・・・タップ部、79・・・二次電池セル固定部、80・・・光検出手段、81・・・圧力検出手段、82・・・シリコン半導体基板、83・・・ボルト、84・・・抑え板、85・・・モニタ回路、90・・・制御回路、91・・・MPU、92・・・記憶手段、93・・・通信回路、94・・・電池保護回路、95・・・プリント配線板、121,221・・・正極端子、122,222・・・負極端子、231・・・正極材料板、232・・・負極材料板、233・・・セパレータ、234・・・アルミニウムラミネート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別情報を記憶した集積回路を備えた二次電池セルであって、
集積回路は配線異常検出回路を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、配線異常検出回路は配線異常を検出する二次電池セル。
【請求項2】
配線異常検出回路は、二次電池セルに設けられたシールド配線に接続されている請求項1に記載の二次電池セル。
【請求項3】
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、シールド配線は、非導通状態となり、又は、短絡状態となる請求項2に記載の二次電池セル。
【請求項4】
二次電池セルが二次電池セル固定部から取り外されたとき、シールド配線は、非導通状態となり、又は、短絡状態となる請求項2に記載の二次電池セル。
【請求項5】
集積回路は記憶領域を備えており、
配線異常検出回路が配線異常を検出したとき、記憶領域は配線異常が検出された旨を記憶する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の二次電池セル。
【請求項6】
ヒューズを更に備えており、
配線異常検出回路が配線異常を検出したとき、集積回路はヒューズを切断する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の二次電池セル。
【請求項7】
識別情報を記憶した集積回路を備えた二次電池セルであって、
集積回路は光検出手段を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、光検出手段は光を検出する二次電池セル。
【請求項8】
識別情報を記憶した集積回路を備えた二次電池セルであって、
集積回路は圧力検出手段を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、圧力検出手段は圧力変化を検出する二次電池セル。
【請求項9】
識別情報を記憶した集積回路を備えた二次電池セルであって、
集積回路は、二次電池セルの端子電圧を測定する電圧測定手段を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、電圧測定手段は電圧変化を検出する二次電池セル。
【請求項10】
電圧測定手段は、基準電圧発生回路及び比較回路から成る請求項9に記載の二次電池セル。
【請求項11】
識別情報を記憶した集積回路を備えた二次電池セルであって、
集積回路は、二次電池セルにおける抵抗値を測定する抵抗値測定手段を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、抵抗値測定手段は抵抗値変化を検出する二次電池セル。
【請求項12】
抵抗値測定手段は、二次電池セルにおける電解液の抵抗値を測定する請求項11に記載の二次電池セル。
【請求項13】
識別情報を記憶した集積回路を備えた二次電池セルであって、
集積回路は、外部から供給されるクロック周波数をモニタするモニタ回路を備えており、
集積回路が二次電池セルから取り外されたとき、モニタ回路はクロック周波数の変化を検出する二次電池セル。
【請求項14】
識別情報を記憶した集積回路を備えた二次電池セルであって、
集積回路が二次電池セルから取り外されたことを検出するための検出手段を備えている二次電池セル。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の二次電池セルを、複数、有する電池パック。
【請求項16】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の二次電池セルを、複数、有する電池パックを備えている電力消費機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−114019(P2012−114019A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263351(P2010−263351)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】