説明

二次電池パックまたは一次電池パック

本発明は、電圧を供給し、且つ相互に接続されている複数の個別セル(12;112)を有する装置、例えば二次電池パックまたは一次電池パック(10;100)に関する。各セル(12;112)には該セル(12;112)の機能を監視し、且つ、該監視に依存してセル情報を提供するために1つの監視回路(14;114)が対応付けられており、各監視回路(14;114)は前記セル情報に依存して導電分離させる状態信号を提供する結合装置(16;116)と接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧を供給する個別セルの動作を監視する監視回路が組み込まれている二次電池パックまたは一次電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の二次電池パックまたは一次電池パックは例えばラップトップまたはパワーツールに使用され、例えばリチウムイオン二次電池においては個別セルが各々監視され、セルの電圧が所定の限界値を下回っていることを監視回路が確認すると、セルの誤動作が充電装置または負荷に出力される。
【0003】
しかしながら従来のシステムにおいては、各監視回路が信号評価回路と通常は並列に接続されているので、個々のセル情報信号の検出を実現するためには10〜20より多くのセルで既に全体の電圧が過度に高くなってしまうので、限定された数の個別セルしか監視できない。しかしながら、殊に非常に高性能の二次電池パックまたは一次電池パックが必要とされる用途に関しては、数百、それどころか数千のオーダの大量の個別セルを1つの二次電池パックまたは一次電池パックに統合することができ、またその二次電池パックまたは一次電池パックにおいてもさらに個別セルの各々の機能を確実に監視できれば有利である。
【0004】
したがって本発明の課題は、任意の数の個別セルを簡単に監視することができる二次電池パックまたは一次電池パックを提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1に記載されている二次電池パックまたは一次電池パックよって解決される。
【0006】
従属請求項には本発明の別の有利な実施形態が記載されている。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明によれば、電圧を供給し、且つ相互に接続されている複数の個別セルを有する装置、殊に二次電池パックまたは一次電池パックが提供され、各セルにはセルの機能を監視し、且つその監視に依存してセル情報を提供するために1つの監視回路が対応付けられており、各監視回路はセル情報に依存して導電分離させる状態信号を提供する結合装置と接続されている。これによって、導電分離させる状態信号が供給され、したがってセルとその監視回路が信号評価回路から導電的に分離されることにより、個別セルの数が大量であっても過度に高い電圧は信号評価回路に印加されないことを保証することができる。信号評価回路を二次電池パックまたは一次電池パックの外部に設けることもでき、この場合、二次電池パックまたは一次電池パックは電圧を供給する個別セル、所属の監視回路および結合装置のみを有する。例えば充電装置内に設けられている外部の信号評価回路は、状態信号を評価するために、二次電池パックまたは一次電池パック内に設けられている結合装置と接続されている。
【0008】
したがって、原則としては任意の数に拡張可能な個別セルを監視することができるので、非常に多くの数の個別セルを備えた二次電池パックまたは一次電池パックを簡単に実現することができる。さらには、この種の導電分離によって所属の監視回路と共に個別セルを簡単に交換することもできる。
【0009】
結合装置は二次電池パックまたは一次電池パックの外部に配置されている第2の結合エレメントと通信するための第1の結合エレメントを有することができる。したがって、1つの結合エレメントしか二次電池パックまたは一次電池パック内に包含されていないので、この二次電池パックまたは一次電池パックを組み込む際には信号評価回路との有線接続は必要なく、二次電池パックまたは一次電池パック内に設けられている第1の結合エレメントと、例えば充電装置内に設けられている第2の結合エレメントとの間の導電分離された信号結合部を形成するだけでよい。
【0010】
この種の二次電池パックまたは一次電池パックにおいては、それぞれが結合装置と接続されており、またセル情報に依存して信号を充電装置または負荷に供給する信号評価回路を設けることができる。したがって、二次電池パックまたは一次電池パック内に設けられている信号評価回路によって、個別セルの誤動作時の誤動作信号の供給も含む、セルの包括的な監視部が既に二次電池パックまたは一次電池パック内に設けられているので、この種の二次電池パックまたは一次電池パックを殊に簡単に器機に組み込むことができる。
【0011】
結合装置は、単一の構成部材でもって殊に簡単に実現できる結合装置を提供するためにオプトカプラを有することができる。結合装置は二次電池パックまたは一次電池パックの外部に設けられている第2の結合エレメント、殊に光電セルと通信するために、第1の結合エレメント、殊に発光ダイオードを有することができる。1つの光電セルを複数の発光ダイオードに対応付けることができるので、提供しなければならない第2の結合エレメントの数は少なくなる。さらには、結合装置が無線接続、誘導性の結合または容量性の結合を確立するための装置を有することができる。
【0012】
各セルに固有の監視回路を対応付けることは必ずしも必要ではなく、電圧を供給する複数のセルをそれぞれ1つの監視回路に対応付けることができる。二次電池セルおよび監視回路からなるこの種のカスケード化された装置構成によって、電圧を供給する多数の個別セルをより簡単に監視することができる。さらには、各セルに対して固有の監視回路を提供することに比べて、監視回路および結合装置を削減することができる。
【0013】
各監視回路はそれぞれ所属のセルの電圧および/または温度および/または内部圧力および/または内部抵抗および/または湿度を監視することができる。この種の典型的なセルパラメータの監視によって、各個別セルの充電状態も考えられる誤動作(例えば電解質の漏れ)も迅速に検出することができる。
【0014】
信号評価回路が二次電池パックまたは一次電池パック内に設けられている場合には、本発明の別の態様として、結合装置を介して信号評価回路に伝送されたセル情報に依存する信号をどのようにして可能な限り僅かなコストで、例えば充電過程を終了させるか、僅かな充電状態においては負荷の電流要求を制限するために充電装置または負荷に供給することができるかという問題が生じる。ここで最も簡単に実現できる結合部は信号評価回路にコンタクトを設けることであり、このコンタクトを介して充電装置または負荷には、二次電池パックまたは一次電池パックの負極または正極に対する電圧レベルが出力される。
【0015】
しかしながらこの付加的なコンタクトは、例えば二次電池パックまたは一次電池パック内に既に温度センサが設けられており、この温度センサが自身で既に充電装置または負荷に二次電池パックまたは一次電池パックの温度に依存する信号を供給する場合には不要である。この場合、信号評価回路は、二次電池パックまたは一次電池パック内に設けられている温度センサの電気的な量を制御することによって、セル情報に依存する信号をこの温度センサを介して充電装置または負荷に伝送することができる。このことは、温度センサとしてNTC抵抗が設けられている場合には、NTC抵抗に別の抵抗が並列接続されることによって行うことができる。これによって高温を示唆する温度センサ信号が形成され、この温度センサ信号によって充電過程または放電過程が終了される。択一的に、温度センサにはセル情報に依存する信号を重畳することができるか、温度センサを短絡または遮断することができるので、二次電池パックまたは一次電池パックから充電装置または負荷へと信号を伝送するための別の端子を既存の温度センサの他に提供する必要なく、セル情報に依存する信号をやはり充電装置または負荷に伝送することができる。
【0016】
信号評価回路はセル情報に依存する信号を光学的なインタフェースまたは無線インタフェースを介して、もしくは誘導性または容量性の結合ユニットを介して充電装置または負荷に提供することができる。ここでもまた、信号評価回路を充電装置または負荷に直接的に接続する必要はない。
【0017】
さらに、信号評価回路はセル情報に依存して、二次電池への電流の流れまたは二次電池からの電流の流れを二次電池パックまたは一次電池パック内に設けられているスイッチを介して遮断することができ、したがって充電装置または負荷に信号を伝送する必要なく自発的に充電過程または放電過程を終了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下では添付の図面に基づき、本発明の有利な実施例を説明する。
【図1】本発明による二次電池パックまたは一次電池パックの第1の実施形態の概略的な回路構造を示す。
【図2】本発明による二次電池パックまたは一次電池パックの第2の実施形態の概略的な回路構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から見て取れるように、本発明の第1の実施形態による二次電池パックまたは一次電池パック10は、電圧を供給する複数の個別セル12(再充電可能または再充電不可能なもの、例えば二次電池セルまたは一次電池セル)を有し、これらの個別セル12はそれぞれ1つの監視回路14と接続されている。監視回路14は(電解質の漏れを検出できるようにするために)所属の個別セル12の動作パラメータ、例えばセル電圧(過電圧または不足電圧)、温度、内部圧力、内部抵抗またはセルの湿度を監視し、相応のセル情報を提供する。この種の監視回路14は基本的に既知のものであり、個々の二次電池セルを監視するために従来の二次電池パックにおいても使用されている。
【0020】
さらには、信号評価回路18が設けられており、この信号評価回路18は各監視回路14と導電分離されて(電位フリー)、オプトカプラ16を介して接続されている。信号評価回路18を二次電池パックまたは一次電池パック10の一部として設けることができるか、二次電池パックまたは一次電池パック10に接続することができ、且つ、例えば二次電池パックまたは一次電池パック10を充電することができる充電装置または二次電池パックまたは一次電池パックによって駆動される負荷に組み込むことができる別個の構成部材として設けることができる。
【0021】
オプトカプラ16は単一の構成部材として実施されている結合装置16である。オプトカプラ16の代わりに、二次電池パックまたは一次電池パックの外部に設けられている第2の結合エレメント、例えば光電セルと通信する、第1の結合エレメント、例えば発光ダイオードのみを有する結合装置を設けてもよい。この場合には、第2の結合エレメントを二次電池パックまたは一次電池パック10の外部に設けられている信号評価回路と接続することができる。
【0022】
さらに結合装置は無線接続部(例えば二次電池パック内の局所的な無線ネットワーク)もしくは誘導性または容量性の結合部を有することができる。この種の結合装置においては、第1の結合エレメントのみが二次電池パックまたは一次電池パックの一部としてそれぞれ設けられていればよく、第2の結合エレメントは同様に二次電池パックまたは一次電池パック10とは別個の構成部材として設けられている信号評価回路18と接続されている。
【0023】
監視回路14と信号評価回路18との間の導電分離によって、多数の個別セル12が1つの二次電池パックまたは一次電池パック10に統合されていても信号評価回路18に高電圧は生じないので、原則として無制限の数の個別セル12を設けることができる。さらには、本発明による二次電池パックまたは一次電池パック10をさらなる個別セル12および監視回路14について簡単に拡張することができ、またこのために信号評価回路18における煩雑な措置を講じる必要はない。(所属の監視回路14を伴う、または伴わない)個別セル12の交換も問題なく実現されるので、例えば従来のものよりも比較的高い許容差を有する比較的廉価な個別セル12を使用することができる。
【0024】
信号評価回路18は二次電池パックまたは一次電池パック10の端子20を介して充電装置または負荷に対して直接的に、個別セルの充電状態および/または誤動作を表す信号を供給することができる。このために信号として例えば電圧レベルまたはバス通信信号を使用することができる。
【0025】
さらには、高まった温度をシグナリングするために既に二次電池パックまたは一次電池パック10内に設けられている温度センサ22、例えば温度抵抗、殊にNTC抵抗22を介して、電気的な量、例えば電気抵抗、または熱応力、または信号評価回路18からの信号を充電過程または放電過程を終了させるために充電装置および/または負荷に出力することができる。
【0026】
ここでは例えば、信号評価回路18によって接続可能である別の抵抗24をNTC抵抗22に並列に接続することも考えられる。抵抗24の接続によって装置全体の抵抗が低減され、したがって信号評価回路18は充電装置または負荷に、相応の抵抗変化によって、過度に高い温度が存在していないにもかかわらず、そのような過度に高い温度をシグナリングすることができ、またこれによって例えば、接続されている充電装置ないし負荷の側で充電過程または放電過程を終了させることができる。択一的に、この種の温度センサに充電装置または負荷によって評価されるアナログ信号またはディジタル信号を重畳するか、この種の温度センサまたは二次電池パックまたは一次電池パック内に設けられているその他の構成要素(例えばコーディング抵抗)を充電過程または放電過程の終了のために短絡させるか、遮断することも考えられる。
【0027】
信号評価回路が二次電池パックまたは一次電池パック10に組み込まれている実施形態においては、信号評価回路18から充電装置または負荷への信号伝送をさらに光学的なインタフェース、無線接続部もしくは誘導性または容量性の結合部を介して行うこともできるか、信号評価回路18が二次電池パックまたは一次電池パック10に組み込まれている電力スイッチを、監視回路14の信号に依存して二次電池パックまたは一次電池パック10への電流の流れ、または二次電池パックまたは一次電池パック10からの電流の流れを遮断できるように制御することができる。
【0028】
図2は、本発明の第2の実施形態による二次電池パック100を示す。この二次電池パック100は第1の実施形態による二次電池パック10とは監視回路114の構造に関してのみ異なる。この監視回路114は第1の実施形態の監視回路14とは異なり、1つの監視回路114がそれぞれ複数の個別二次電池セル112の動作パラメータを監視し、相応のセル情報をオプトカプラ116を介して信号評価回路118に供給できるように構成されている。
【0029】
このカスケード化された構造によって、1つの二次電池パック100においてさらに多くの個別二次電池セル112をより簡単に監視することができる。何故ならば、それぞれが複数の二次電池セル112およびこれらの二次電池セル112に対応付けられている1つの監視回路114を有する事前に製造されたモジュールを信号評価回路118およびオプトカプラ116(または、例えば第1の実施形態に関連させて説明したような別の結合装置)と組み合わせるだけでよいからである。さらにはこの実施形態においても監視回路114および結合装置116を削減することができる。
【0030】
信号評価回路118から充電装置または負荷への信号伝送に関しては、第1の実施形態と同様に、直接的な端子120も、二次電池パックまたは一次電池パック100内に既に設けられている温度センサ(図示せず)または導電分離された結合部を介する信号伝送も考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧を供給し、且つ相互に接続されている複数の個別セル(12;112)を有する装置、例えば二次電池パックまたは一次電池パック(10;100)において、
各セル(12;112)には該セル(12;112)の機能を監視し、且つ、該監視に依存してセル情報を提供するために1つの監視回路(14;114)が対応付けられており、各監視回路(14;114)は前記セル情報に依存して導電分離させる状態信号を提供する結合装置(16;116)と接続されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記結合装置(16;116)は前記二次電池パックまたは一次電池パック(10;100)の外部に配置されている第2の結合エレメントと通信するための第1の結合エレメントを有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記結合装置(16;116)と接続されており、且つ、前記セル情報に依存して信号を充電装置または負荷に供給する信号評価回路(18;118)が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記信号評価回路(18;118)は、前記二次電池パックまたは一次電池パック(10;100)内に設けられている温度センサ(22)の電気的な量を制御することによって、前記セル情報に依存する信号を前記温度センサ(22)を介して前記充電装置または前記負荷に伝送する、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記信号評価回路(18;118)は前記セル情報に依存する信号を光学的なインタフェースまたは無線インタフェースを介して、もしくは誘導性または容量性の結合ユニットを介して前記充電装置または前記負荷に供給する、請求項3記載の装置。
【請求項6】
前記信号評価回路(18;118)は、前記セル情報に依存して、前記二次電池パックまたは一次電池パック(10;100)内に設けられているスイッチを介して、前記二次電池パックまたは一次電池パック(10;100)への電流の流れ、または、前記二次電池パックまたは一次電池パック(10;100)からの電流の流れを遮断する、請求項3記載の装置。
【請求項7】
前記結合装置(16;116)はオプトカプラ(16;116)を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置(10;100)。
【請求項8】
前記結合装置(16;116)は、前記装置の外部に設けられている第2の結合エレメント、例えば光電セルと通信するための第1の結合エレメント、例えば発光ダイオードを有する、請求項1または2記載の装置(10;100)。
【請求項9】
前記結合装置(16;116)は無線接続、誘導性の結合または容量性の結合を確立するための装置を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置(10;100)。
【請求項10】
電圧を供給する複数のセル(112)が1つの監視装置(114)にそれぞれ対応付けられている、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置(10;100)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−537362(P2010−537362A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520511(P2010−520511)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058315
【国際公開番号】WO2009/021771
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】