説明

二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置

【課題】各電池に発生する劣化有無・進行を、簡単な構成・処理で早期に判断できる二次電池劣化判定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の直列接続電池BT1〜BTnの各電圧を電池電圧検出部21〜2nで検出し、制御演算部5に取り込んだ電圧V1〜Vnを基準電圧と比較し、基準電圧より大なる電池に対応するバランス回路をONし、この各バランス回路の稼働率を時間順次に記憶部6に記憶し、各バランス回路の稼働率を比較し、他のバランス回路の稼働率とは異なる稼働率のバランス回路に対応する電池に劣化の疑い有りと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次電池劣化判定方法、特に劣化開始の早期に、二次電池の劣化を判定し得る二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池としてリチウムイオン電池が広く使用されている。
【0003】
このリチウムイオン電池は、入出力効率が非常に良く(約98%)、そのため充電エネルギーは、ほとんど内部に蓄積される。
【0004】
一方、リチウムイオン電池は、高電圧(約4.2V)以上に弱い性質があり、一般的には、過充電圧、過電流、過放電電圧、高温異常などに対する保護回路を付けて電池モジュールとしている(例えば引用文献1,引用文献2参照)。
【0005】
また、最近、EV等の大型モジュールの需要が大きくなり、上記保護機能とは別に、個々の電池電圧を調整する回路として、直列に接続された二次電池を効率よく充電するために、二次電池を直列に接続し、その直列接続の両端に接続端子を有する主回路と、各二次電池に並列に接続され、抵抗とスイッチが直列に接続されたバイパス回路(バランス回路)と、各二次電池の電圧を計測し、スイッチのオンオフ制御をする計測制御回路とを、備え、主回路の端部端子間に定電流の充電電流を流し、又は放電電流を流し、各二次電池の電圧を計測し、この二次電池の充放電を調整するようにした二次電池の充放電装置が開示されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−210120号公報
【特許文献2】特開2003―284237号公報
【特許文献3】特許第3517844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1記載の電池保護装置により過充電、過放電等の保護が可能であり、又引用文献3の二次電池の充放電装置により、過充電、過放電等に関する情報が得られたとしても、これらの装置では、電池内部に起こっている非常に、ゆっくりとした劣化を検出することの判断は難しい。
【0008】
例えば、電池内部で小さなリークが起こり、その電池の電圧が少しずつ低下しても、電圧自動バランス機能が働きリアルタイムで測定しても序々なリークが起こりつつあることは、とても判り得ない。そのため、保護回路で異常が確認出来たときは、すでに、その電池が使用出来なくなっているという問題がある。
【0009】
この発明は、上記問題点に着目してなされたものであって、簡単な構成、処理で、各電池の劣化の有無・進行を早期に、つまり電池の異常判断を、異常が発生した後で無く、事前に判断することが可能となり、精度の高い電池メンテナンスと安全性を確保するこができる二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の二次電池劣化判定方法は、直列に接続された複数個の二次電池と、各二次電池の電圧を検出する電池電圧検出部と、各電池電圧検出部で検出される各二次電池の電圧が基準内である場合にオンしてその二次電池への電流を通電して電池電圧を調整するバランス回路と、前記各二次電池電圧に応じてバランス回路を制御する制御装置とを備える二次電池劣化判定装置を用いて、各二次電池の劣化を判定する二次電池劣化判定方法であって、前記二次電池電圧が前記基準内である場合に対応するバランス回路をON(オン)する第1のステップと、前記各バランス回路のONを稼働情報として記憶する第2のステップと、前記各バランス回路の稼働情報の比較により、各二次電池の劣化有無を判定する第3のステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明では、前記稼働情報は、具体的には、前記バランス回路の稼働率であり、各バランス回路の稼働率の比較により電池の劣化を判定するものとできる。
【0012】
また、具体的には、前記バランス回路の稼働率の比較によって、他のバランス回路の稼働率に比べて小なる稼働率のバランス回路に対応する電池を劣化電池と判定するものとできる。
【0013】
また、具体的には、前記バランス回路の稼働率の比較によって、他のバランス回路の稼働率に比べて大なる稼働率のバランス回路に対応する電池を劣化電池と判定するものとできる。
【0014】
また、本発明の二次電池劣化判定方法は、前記制御装置にネットワークを介して接続されるデータ通信装置を備える二次電池劣化判定装置を用いて、各二次電池の劣化を判定する二次電池劣化判定方法であって、前記データ通信装置からの所要の呼出時に、前記各二次電池の劣化有無判定情報を前記データ通信装置に伝送し、出力するようにしたことを特徴とするものであっても良い。
【0015】
さらにまた、本発明の二次電池劣化判定方法は、前記制御装置にネットワークを介して接続されるデータ通信装置を備える二次電池劣化判定装置を用いて、各二次電池の劣化を判定する二次電池劣化判定方法であって、前記制御装置より、各二次電池の劣化有無判定情報を前記データ通信装置に伝送し、前記各二次電池の劣化有無判定情報を前記データ通信装置より出力するようにしたことを特徴とするものであっても良い。
【0016】
また、本発明の二次電池劣化判定装置は、直列に接続された複数個の二次電池と、各二次電池の電圧を検出する電池電圧検出部と、この各二次電池に並列に接続されるバランス回路と、各電池電圧検出部で検出される各二次電池の電圧が基準内である場合にその二次電池に流れる電流を分流通電するバランス回路をオン稼働する回路制御手段、所定のタイミング毎に各バランス回路の稼働情報を記憶する稼働情報記憶手段、この稼働情報記憶手段で記憶された各二次電池に対応する各バランス回路の稼働情報の比較により劣化電池を判定する劣化判定手段を有する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、具体的には、本発明の二次電池劣化判定装置は、前記制御装置に、ネットワークを介してデータ通信装置を接続可能とした二次電池劣化判定装置であって、前記データ通信装置よりの呼出時に、前記各二次電池の劣化有無判定情報を前記データ通信装置に伝送し、出力するようにしても良い。
【0018】
また、具体的には、本発明の二次電池劣化判定装置は、前記制御装置に、ネットワークを介してデータ通信装置を接続可能とした二次電池劣化判定装置であって、前記制御装置より、前記データ通信装置に各二次電池の劣化有無判定情報を伝送し、前記各二次電池の劣化有無判定情報を前記データ通信装置より出力するようにしても良い。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、所定のタイミング毎に各バランス回路の稼働情報を記憶し、この記憶された各バランス回路の稼働情報から、その二次電池の劣化を判定するので、二次電池の異常判断を異常が発生した後でなく、事前に判断することが可能となり、精度の高いメンテナンスと安全性を確保することができる。
【0020】
また、この発明のうち、制御装置にネットワークを介して接続されるデータ通信装置を備える二次電池劣化判定装置を用いて、各二次電池の劣化を判定する方法では、二次電池が設置された場所より遠く離れた所からも劣化判定データを確認し得、二次電池がオペレータの確認し難い場所に設置されている場合でも、遠く離れた箇所より劣化判定を直に行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態に係る二次電池劣化判定装置の概略構成を説明する回路図である。
【図2】同実施形態二次電池劣化判定装置における電池劣化判定動作を説明するためのフロー図である。
【図3】同実施形態二次電池劣化判定装置の電池劣化判定動作を説明するため各バランス回路のON,OFF時の電池電圧変化の一例を示すタイミング波形図である。
【図4】同実施形態二次電池劣化判定装置の電池劣化判定動作を説明するため各バランス回路のON,OFF動作の一例を示すタイミング波形図である。
【図5】同実施形態二次電池劣化判定装置の信号処理装置の記憶部に記憶される稼働率のデータマップを示す図である。
【図6】直列接続の電池の一つが、インピーダンス増加した場合の電圧遷移とバランス回路の稼働率変化の測定例を示す図である
【図7】直列接続の電池の一つが容量低下を起こしている場合の電圧変化とバランス回路の稼働率変化の測定例を示す図である。
【図8】直列接続の電池の一つが電流リークを起こしている場合の電圧変化とバランス回路の稼働率変化の測定例を示す図である。
【図9】この発明の他の実施形態に係る二次電池劣化判定システムの概略構成を説明するブロックである。
【図10】同実施形態二次電池劣化判定システムの二次電池端末装置の概略構成を説明する回路図である。
【図11】同実施形態二次電池劣化判定システムにおける電池劣化判定処理を説明するためのフロー図である。
【図12】さらに、他の実施形態二次電池劣化判定システムにおける電池劣化判定処理を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態により、本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池劣化判定装置の回路構成を示すブロック図である。
【0023】
図1において、n個の二次電池(リチュウムイオン電池)BT1、BT2、・・・、BTnが直列接続されている。各電池BT1、BT2、・・・、BTnには、スイッチSW1を介して充電源1より、充電される。また、各電池BT1、BT2、・・・、BTnの充電電圧は、スイッチSW2を介して負荷8に放電される。
各電池BT1、BT2、・・・、BTnには、それぞれ並列に、電池電圧を個別に検出する電池電圧検出部21、22、・・・、2nが接続されている。また、各電池BT1、BT2、・・・、BTnには、それぞれに、並列に各電池電圧をバランスするため、過電圧の電池から調整電流を流すためONされるバランス回路31、32、・・・、3nが接続されている。
【0024】
信号処理装置4は、電池BT1、BT2、・・・、BTnの充電時、放電時の制御を行うために配備され、制御演算部5、記憶部6、及び表示部7を備えている。制御演算部5は、スイッチSW1のON時の電池への充電時や、スイッチSW2のON時のスイッチSW2より負荷8への放電時に、電池電圧検出部21、22、・・・、2nより所定周期で各電池BT1、BT2、・・・,BTnの電圧V1、V2、・・・、Vnを取り込み、取り込んだ各電池の電圧V1、V2、・・・、Vnより最小値を抽出し、この最小値に所定値を加算して、バランス回路31、32、・・・、3nの通電の要否を判定するための基準電圧Vkを算出する機能を備えている。
【0025】
なお、この実施形態の基準電圧Vkに代えて、取り込んだ各電池の電圧V1、・・・、Vnの平均電圧を算出し、この平均電圧に所定値を加算して基準電圧Vkとしても良い。
また、制御演算部5は、各電池電圧検出部21、22、・・・、2nで検出した各電池電圧V1、V2、・・・、Vnと前記基準電圧Vkと比較してVi>Vkの場合、その電池BTiに対応するバランス回路3iをON(通電)する機能を備えている。
【0026】
また、制御演算部5は、時間の経過とともに、各バランス回路31、32、・・・、3nの通電状況を記憶部6に記憶する機能を備えている。制御演算部5は、所定のタイミング毎に、上記各バランス回路31、32、・・・、3nの記憶部6に記憶している通電状況(稼働情報)を参照して、各バランス回路31、32、・・・、3nの稼働情報より、各電池BT1、BT2、・・・、BTnの劣化の有無を判定する機能を備えている。具体的には稼動情報は、ここでは、例えば10回のタイミング中何回ONするかを%で示した稼働率を示し、例えば10回のタイミング中6回のONがなされ場合、6/10×100=60%となる。
【0027】
信号処理装置4の記憶部6は、電池電圧検出部21、22、・・・、2nで検出した各電池電圧V1、V2、・・・、Vn、この各電池電圧V1、V2、・・・、Vnより算出する基準電圧Vk、各バランス回路31、32、・・・、3nの通電状況(各バランス回路のON回数及び稼働率)を記憶する。もっとも、この稼動率は、これに限るものではなく、他の例えば式Xn×(n―1)+X(n−1)/nによる統計手法を用いて各タイミングに、そのタイミングにおける過去n回分のON回数データより稼働率を求めても良い。
【0028】
また、表示部7は、制御演算部5で、各バランス回路の稼働率が算出されると、その稼働率を表示する。この表示部7は、各タイミング10回分のON回数を時間順次に表示しても良いし、各電圧と各バランス回路の稼働率をグラフ表示しても良い。この表示部7に表示される各バランス回路の稼働率により、劣化電池を判定できる。
【0029】
以上のように、この実施形態二次電池劣化判定装置により、各二次電池の劣化判定を行うことが出来る。次に、この実施形態二次電池劣化判定装置により行う二次電池劣化判定の概要を説明する。
【0030】
先ず、電池BT1、BT2、・・・、BTnへの充電時に、所定のタイミング毎に、電池電圧検出部21,22、・・・、2nで電池BT1、BT2、・・・、BTnの端子電圧V1,V2、・・・、Vnを検出し制御演算部5に取り込み、記憶部6に記憶する。制御演算部5では、取り込んだ各電池電圧V1、V2、・・・、Vnと所定の基準電圧Vkとを比較し、制御演算部5の指令で電池電圧Viが大なるバランス回路3iをONにし、対応する電池BTiへの電流をバランス回路3iにバイパスして調整電流を流す。
【0031】
また、バランス回路3iのON/OFFと同時に、バランス回路3iの稼働(ON動作)の有無を記憶部6に記憶する。そして、この各バランス回路31、32、・・・、3n(1≦i≦n)の所定期間毎の稼働率特性を比較し、他の電池のバランス回路と異なる稼動率特性のバランス回路を持つ電池の抽出により、その電池の劣化の推定を早期に行う。
【0032】
上記バランス回路31、32、・・・、3nのONにより、端子電圧の大なる電池BTiは、その電池BTiの充電電流をバランス回路3iにバイパスすることにより、その端子電圧Viを下げるので、各電池間の電圧はバランス調整され、大なる電池電圧と小なる電池電圧の差は小さくなるので、電池電圧V1、V2、・・・,Vnの比較のみでは、各電池の劣化を判断することは出来ない。
【0033】
この実施形態装置では、さらに、バランス回路31、32、・・・、3nの各ON回数(稼働率)を記憶し、この稼動率及びその変化状況の差に応じ、従来よりも早期に、しかも格別の回路・装置の付加を要することなく電池の劣化判定を行うことが出来る。
【0034】
次に、この実施形態二次電池劣化判定装置の充電時の処理動作を、図2に示すフロー図、図3、図4に示す波形タイムチャートを参照して、詳細に説明する。信号処理装置4からの指令、あるいは手動によりスイッチSW1がONされると、各電池へ充電処理動作が開始される。先ず、ステップST1において、処理タイミングを示す変数TをT=1とする。次にステップST2へ移行する。
【0035】
ステップST2においては、電池BT1、BT2、・・・、BTnの電池電圧V1、V2、・・・、Vnを電池電圧検出部21、22、・・・、2nで検出し、記憶部6に記憶する。次にステップST3へ移行する。ステップST3においては、電池電圧V1、V2、・・・、V4(n=4としている)のうち最小値(たとえばV4)を求める。続いてステップST4へ移行し、求めた最小値V4に一定値aを加算したVk=V4+aを基準電圧として設定する。
【0036】
次にステップST5へ移行する。ステップST5においては、変数i=1とする。この変数iは、電池BT1、BT2、・・・、BTnの1からnまでの何れかを示す変数である。次にステップST6へ移行する。ステップST6においては、電池電圧Vi、つまりV1が基準電圧Vkより大きいか否か判定する。判定の結果V1>Vkの場合は、判定YESで、ステップST7へ移行する。一方、V1>Vkでない場合は、ステップST9へ移行する。
【0037】
ここで、今一例としてn=4であり、電池BT1,BT2、・・・、BTnのnが4である場合を仮定し、さらに電池BT1,BT2、・・・、BTnの電圧が、V1>V2>V3>V4であると仮定する(図3の波形例参照)。この仮定下では、電圧V1>Vkか、が判定YESとなり、ステップST6の判定YESで、次のステップST7へ移行する。
【0038】
ステップST7においては、バランス回路31をONとする。つまりバランス回路31を通電状態とする。これにより、高電圧V1の電池BT1への充電電流が、バランス回路31に調整電流として流されることになる。この時のバランス回路31の通電を図4のI11に示す。また、この通電により、電池電圧V1は図3に示すようにV11から所定値降下する。次にステップST8へ移行する。
【0039】
ステップST8においては、バランス回路31のON回数(稼働回数)1(図4のI11)を計数する。次にステップST9へ移行する。ステップST9においては、i=n(n=4)か否か、判定する。ここではi=1なので、判定NOでステップST10へ移行する。ステップST10では、変数iをインクリメントし、i=2とし、ステップST6へ戻る。ステップST6では、電池電圧V2>Vkか、否か判定する。図3の仮定波形例では、判定YESで、ステップST7へ移行する。
【0040】
ステップST7においては、バランス回路32をONする。このバランス回路32のONにより、電池BT2への充電電流がバランス回路32に調整電流として流される。この時のバランス回路32の通電を図4のI21に示す。また、この通電により、電池電圧V2は図3に示すようにV21から所定値降下する。次にステップST8へ移行する。
【0041】
ステップST8においては、バランス回路32のON回数1(図4のI21)を計数する。次にステップST9へ移行する。ステップST9においては、ここではi=2なので,i=n(n=4)か、の判定がNOであり、ステップST10へ移行する。ステップST10では、変数iをインクリメントしてi=3とし、ステップST6へ戻る。
【0042】
以後、ステップST6〜ST9の処理を電池BT3に関して実行し、電池電圧V3>Vkか否か、を判定し、図3の波形例では、V31>Vkであり、判定YESで、バランス回路33をONしてバランス回路33のON回数1(図4のI31)を計数する。さらに、ステップST9において、i=3なので、i=n(n=4)か否か、の判定NOでステップST10へ移行する。ここで、変数iをインクリメントして,i=4とし、ステップST6へ戻る。
【0043】
さらに、ステップST6〜ST9の処理を電池BT4に関して実行する。ステップST6においては、電池電圧V4>Vkか否かが判定される。図3の仮定下ではV4が基準電圧Vkより小であり、この判定がNOであるので、ステップST7,ST8の処理をスキップしてステップST9へ移行する。したがって、ここでは、バランス回路34はONせず、またバランス回路34のON回数も記憶されない。ステップST9においては、i=4(n=4)か否か、が判定され、判定YESで処理はステップST11へ移行する。
【0044】
以上の処理で、電池BT1、・・・、BT4につきタイミングT1における電池電圧の検出と、各電池電圧V1、・・・、V4が基準電圧Vkよりも大なるものにつき、バランス回路をONするとともに、ONしたバランス回路のON回数1が記憶部6に記憶される。図3、図4の例では、電池BT1,BT2、BT3につき、バランス回路31,32,33がONし、そのON回数1が記憶部6に記憶されたことになる。
【0045】
その後の時間の経過で、ステップST11においては、変数TがT=Tk(Tk=10)か否か判定する。この判定NOでステップST12へ移行し、変数Tをインクリメントし、T=2とする。次にステップST2へ戻る。
【0046】
続いて、タイミングT1の時と同様に、ステップST2〜ST11の処理を実行する。図3の仮定例では、電池BT1の電圧V12、電池BT2の電圧V22、電池BT3の電圧V32が、前タイミングでのバランス調整により電圧低下しているものの、いずれもなお基準電圧Vkよりも高く、バランス回路31、32、33をONして、バランス回路31、32、33のON回数1(図4のI12,I22,I32)をそれぞれ加算計数する。
【0047】
次にタイミングT2における処理が終了すると、ステップST12において、変数Tがインクリメントされ、T=3となり、ステップST2へ戻り、タイミングT2の場合と同様の処理を実行する。以下、同様に、変数T=10(Tk=10)となるまで、同様の処理が繰り返される。
【0048】
以上のタイミングT=1からタイミングT=10までの処理により、図3、図4の仮定例では、電池BT1が、各タイミングにおける電圧V11、・・・、V110がいずれも基準電圧Vkより高く、バランス回路31が、I11、・・・、I110と10回ONしている。電池BT2は第1のタイミングから第6のタイミングまで、電圧V21,・・・,V26が基準電圧Vkより高く、バランス回路32がI21、・・・、I26と6回ONしている。また電池BT3は第1のタイミングから第3のタイミングまで、電圧V31,V32、V33が基準電圧Vkより高く、バランス回路33がI31、I32、I33と3回ONしている。T=10となると、ステップST11におけるT=Tk(Tk=10)か、の判定がYESとなり、ステップST13へ移行する。ステップST13においては、各電池BT1、・・・、BT4の稼働率を計算し記憶部6に記憶する。
【0049】
上記実施形態では、バランス回路31の稼働率が図4におけるON回数が10回で100%、バランス回路32の稼働率が図4におけるON回数が6回で60%、バランス回路33の稼働率が図4におけるON回数が3回で30%、バランス回路34の稼働率が図4におけるON回数が0回で0%であり、それぞれ、この稼働率(%)が図5に示す記憶領域t1に記憶される。
【0050】
ステップST13における稼働率算出に続いて、ステップST14へ移行し、劣化評価モードが設定されているか否か判定し、判定NOであればステップST1へ戻り、稼働率算出期間であるt2における処理を開始する。一方、ステップST14で判定YESの場合にステップST15へ移行し、各電池の稼働率を劣化度合いとして表示部7に表示する。なお、ここでの劣化度合いは、時間経過t1、・・・における各バランス回路の稼働率を表示し、稼働率の変化状況より劣化電池を判定している。
【0051】
例えば、劣化電池として、電気を取り出す金属電極と電荷を蓄積する正極材、負極材との部分分離等による電池内部抵抗(インピーダンス)が増加した場合、内部抵抗の増加により充電した状態で他の電池より電圧が高くなり、他の電池より稼働率が高くなり、表示した稼働率より劣化を判定できる。
【0052】
この場合の具体例を図6に示す。この例では、12個の電池(セル)のそれぞれの測定例を時間0(h)から1.2(h)まで示しており、上図は電圧(mv)の変化例を、下図は、バランス回路稼働率(%)を示している。この例では、セル番号11の電池の内部抵抗(インピーダンス)が増加し、電圧が処理開始当初に他の電池よりも高く、それゆえにセル番号11の電池の対応バランス回路のみ稼働率が図6の下図の太線で示す如く高くなっている。この電池のバランス回路のみ、他の電池のバランス回路より稼働率が高く、この電池の劣化を判定することができる。
【0053】
また、例えば、劣化電池として、正極材、負極材の劣化による容量低下した場合も、上記電池内部抵抗の増加している場合と同様、充電した状態で、容量低下によるインピーダンスの増加で、その発生した電池は他の電池に比べて電圧が大となるため、この電池に比べ他の電池のバランス回路の稼働率が小となり、やはり求められた、あるいは表示された稼働率により、ある電池の劣化を判定できる。
【0054】
容量低下した、この場合の具体例を図7に示す。この例では、12個の電池(セル)のそれぞれの測定例を時間0(h)から0.8(h)まで示しており、この例でも図7の上図のようにセル番号11の電池の電圧が開始当初に電圧が高くなっている。この電池のバランス回路のみ稼働率が図7の下図に示すように高くなっている。この電池のバランス回路のみ、他の電池のバランス回路より稼働率が高く、この電池の劣化を判定することができる。
【0055】
また、劣化電池として、デントライト等の発生で内部に小さなリークが発生している場合、発生した電池は、他の電池に比べ電圧が低下するため、他の電池の稼働率が高いのに比べ、その電池は低い稼働率になり、表示された稼働率により劣化を判定できる。
【0056】
この場合の測定例を図8に示す。この例では、12個の電池(セル)のそれぞれの測定例を時間0(h)から70(h)まで示している。図8の上図を参照すると、セル番号10の電池電圧が時間の経過と共に、他の電池よりも序々に低下しており、また図8の下図にはバランス回路の稼働率も他の電池のバランス回路よりも低く、バランス回路の稼働率の推移より、この電池の劣化を判定することができる。なお、上記図6,図7、図8の測定例は、稼働率を上記統計手法により、求めたものである。
【0057】
上記した実施形態においては、二次電池劣化判定装置10は、劣化を判定すべき二次電池BT1、BT2、・・・、BTnと、電池電圧検出部21、22、・・・、2nと、バランス回路31、32、・・・、3nと、さらに信号制御装置4が一体的に構成されものであり、劣化判定の結果は、電池の設置箇所で確認し得るものである。
【0058】
本発明は、これに限るものではなく、二次電池劣化判定装置の判定データ、判定結果が、電池の設置箇所と遠く離れた箇所で確認し得るものであっても良い。このタイプの実施形態として図9に示す二次電池劣化判定システム(装置)について説明する。
【0059】
図9において、複数個の二次電池端末装置(二次電池劣化判定装置)10−1、10−2、・・・、10−qに、データ通信装置30が、ネットワーク20を介して接続可能に構成されている。なお、ここでは二次電池端末装置10は、複数台設置しているが、勿論1台であってもよいこと云うまでもない。二次電池端末装置10−1、10−2、・・・、10−qは、図10に示すように、図1に示す二次電池劣化判定装置と同様の回路構成及び動作をなし、さらに入/出力部9を介してネットワーク20に接続可能に構成されている。
【0060】
この実施形態二次電池劣化判定システムにおいて、各二次電池端末装置10−1、10−2、・・・、10−qは、図1の二次電池劣化判定装置と同様に、各バランス回路の稼働率、及び各電池の劣化判定結果を記憶している。データ通信装置30は、所望のタイミングに、ネットワーク20を介して、二次電池端末装置10−1、10−2、・・・、10−qのいずれかの目的とする装置をアクセスし、各バランス回路の稼働率、電池の劣化状況を表示出力することができる。
【0061】
図11に示すフロー図を参照して、この実施形態二次電池劣化判定システムの処理動作の概要を説明する。先ず、データ通信装置30において、二次電池端末装置10に、二次電池劣化状態を示すデータを呼び出すために目的とする二次電池端末装置の呼出を入力する。データ通信装置30では、ステップST31において、自装置で呼出操作有りか否か判定しており、装置自身の入力部より呼出操作有りの場合に、判定YESで、ステップST32へ移行する。ステップST32においては、目的とする二次電池端末装置10に対し、劣化判定データ要請のアクセス信号を送付する。
【0062】
二次電池端末装置10では、ステップST21において、劣化判定処理要か否か判定しており、劣化判定処理要の場合は、ステップST22へ移行し、ステップST22において、劣化判定処理を実行する。この劣化判定処理は、具体的には、例えば図2のフロー図の処理を実行するもので有り、各バランス回路の稼働率、劣化有無のデータ等を記憶部6に記憶する。次にステップST23へ移行する。一方、ステップST21において、二次電池端末装置10の動作モードで、劣化判定処理が必要でない場合は、ステップST22の処理をスキップしてステップST23へ移行する。
【0063】
ステップST23においては、データ通信装置30よりの呼出アクセス有りか否か判定する。呼出有か、の判定YESの場合は、ステップST24へ移行する。呼出有りか、の判定NOの場合には、ステップST24をスキップしてリターンする。ステップST24においては、呼出アクセスのあったデータ通信装置30に、二次電池端末装置10の記憶部6に記憶している各バランス回路の稼働率、劣化有無データ等の劣化判定データを送信する。
【0064】
一方、データ通信装置30では、ステップST33において劣化判定データを受信したか否か判定する。上記した二次電池端末装置10から劣化判定データを受信した場合は、この判定YESでステップST34へ移行する。一方、劣化判定データを受信していない場合は、ステップST34をスキップしてリターンする。ステップST34においては、データ通信装置30において二次電池端末装置10からの受信した劣化判定用データを表示器に表示する。
【0065】
この実施形態の二次電池劣化判定方法によれば、二次電池端末装置より離れたデータ通信装置より、任意の時点でネットワークを介して、二次電池端末装置で測定した劣化判定データを読み出し、表示し得るので、二次電池端末装置が設置された場所より遠く離れた所からも劣化判定データを確認し得、二次電池がオペレータの確認し難い場所に設置されている場合でも、遠く離れた場所より劣化判定を直に行うことができる。
【0066】
さらに、電池設置箇所と異なる箇所で電池劣化判定を可能とした他の実施形態について説明する。この実施形態による二次電池劣化判定方法も、図9に示す二次電池劣化判定システムにより劣化判定を行う。また、二次電池端末装置10−1、10−2、・・・、10−qは、上記ネットワークを使用した実施形態と同様に図10に示す二次電池劣化判定装置10を使用している。
【0067】
この実施形態における特徴は、二次電池端末装置10それ自身、各二次電池のバランス回路の稼働率、および劣化判定データを測定し得るとともに、所定時間毎に、稼働率、劣化判定データをネットワーク20を介してデータ通信装置30に送信し、データ通信装置30においても、稼働率、劣化判定データを表示出力し得るようにしたことである。
【0068】
図12に示すフロー図を参照して、この実施形態二次電池劣化判定システムの処理動作を説明する。二次電池端末装置10は、上記実施形態の場合と同様に、各バランス回路の稼働率の測定・記憶、劣化判定処理及びその記憶を継続する。一方、更に所定のタイミング毎に各電池電圧、各バランス回路の稼働率、その他の劣化判定処理データを、ネットワーク20を介してデータ通信装置30に送信する。
【0069】
二次電池端末装置10では、図12に示す劣化判定処理ルーチンに入ると、ステップST41において、劣化判定処理要か、否か判定し、判定YESの場合は、ステップST42へ移行する。ステップST42においては、この二次電池端末装置10でのバランス回路の稼働率測定、及び電池劣化判定処理を行い、ステップST43へ移行する。
【0070】
一方、ステップST41において判定NOの場合は、ステップST42の処理をスキップしてステップST43へ移行する。ステップST43においては、送信タイミングであるか否かを判定する。送信タイミング到来の場合は、判定YESでステップST44へ移行する。ステップST44においては、記憶部6に記憶している電池電圧、バランス回路の稼働率等の、劣化判定データを、ネットワーク20を介して、データ通信装置30へ送信する。ステップST43において、送信タイミング到来でない場合は、判定NOでリターンする。
【0071】
データ通信装置30では、図12に示す劣化判定処理ルーチンに入ると、ステップST51において劣化判定データ受信か否か判定する。二次電池端末装置10からデータを受信しており判定YESの場合は、ステップST52へ移行する。ステップST52においては、受信した劣化判定データを記憶する。次にステップST53へ移行する。
【0072】
一方、ステップST51において、二次電池端末装置10から劣化判定データを受信していず、判定NOの場合は、ステップST52の処理をスキップして、ステップST53へ移行する。ステップST53においては、劣化判定データ表示か否か判定する。データ通信装置30で二次電池の劣化の有無を確認したい場合で、その旨、入力設定されていると、ステップST53の判定YESで、処理はステップST54へ移行する。ステップST54においては、データ通信装置30の表示器に劣化判定データを表示する。
【0073】
一方、ステップST53において、劣化判定データ表示の入力が無く判定NOの場合はリターンする。
【0074】
この、実施形態の二次電池劣化判定方法によれば、二次電池の劣化判定可能な二次電池端末装置からも、この二次電池端末装置より離れたデータ通信装置に所定のタイミング毎に稼働率及び劣化判定データを、ネットワークを介して送信し、必要に応じデータ通信装置でも電池劣化判定を行うことができ、二次電池端末装置とデータ通信装置のいずれからでも劣化判定をより早く行うことが出来る。
【符号の説明】
【0075】
BT1、BT2、・・・、BTn 電池
V1、V2、・・・、Vn 電池電圧
SW1 充電用スイッチ
SW2 放電用スイッチ
1 充電源
21、22、・・・、2n 電池電圧検出部
31、32、・・・、3n バランス回路
4 信号制御装置
5 制御演算部
6 記憶部
7 表示部
8 負荷
9 入/出力部
10、10−1、・・・、10−q 二次電池劣化判定装置(二次電池端末装置)
20 ネットワーク
30 データ処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数個の二次電池と、各二次電池の電圧を検出する電池電圧検出部と、各電池電圧検出部で検出される各二次電池の電圧が基準内である場合にオンしてその二次電池への電流を通電して電池電圧を調整するバランス回路と、前記各二次電池電圧に応じてバランス回路を制御する制御装置とを備える二次電池劣化判定装置を用いて、各二次電池の劣化を判定する二次電池劣化判定方法であって、
前記二次電池電圧が前記基準内である場合に対応するバランス回路をONする第1のステップと、
前記各バランス回路のONを稼働情報として記憶する第2のステップと、
前記各バランス回路の稼働情報の比較により、各二次電池の劣化有無を判定する第3のステップと、
を備えることを特徴とする二次電池劣化判定方法。
【請求項2】
前記稼働情報は、前記バランス回路の稼働率であり、各バランス回路の稼働率の比較により電池の劣化を判定するものであることを特徴とする請求項1記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項3】
前記バランス回路の稼働率の比較によって、他のバランス回路の稼働率に比べて小なる稼働率のバランス回路に対応する電池を劣化電池と判定するものであることを特徴とする請求項2記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項4】
前記バランス回路の稼働率の比較によって、他のバランス回路の稼働率に比べて大なる稼働率のバランス回路に対応する電池を劣化電池と判定するものであることを特徴とする請求項2記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項5】
前記制御装置にネットワークを介して接続されるデータ通信装置を備える二次電池劣化判定装置を用いて、各二次電池の劣化を判定する二次電池劣化判定方法であって、前記データ通信装置からの所要の呼出時に、前記各二次電池の劣化有無判定情報を前記データ通信装置に伝送し、出力するようにしたことを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3及び請求項4記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項6】
前記制御装置にネットワークを介して接続されるデータ通信装置を備える二次電池劣化判定装置を用いて、各二次電池の劣化を判定する二次電池劣化判定方法であって、前記制御装置より、前記データ通信装置に各二次電池の劣化有無判定情報を前記データ通信装置に伝送し、前記各二次電池の劣化有無判定情報を前記データ通信装置より出力するようにしたことを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3及び請求項4記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項7】
直列に接続された複数個の二次電池と、各二次電池の電圧を検出する電池電圧検出部と、この各二次電池に並列に接続される各バランス回路と、各電池電圧検出部で検出される各二次電池の電圧が基準内である場合にその二次電池に流れる電流を分流通電するバランス回路をオン稼働する回路制御手段、所定のタイミング毎に各バランス回路の稼働情報を記憶する稼働情報記憶手段、この稼働情報記憶手段で記憶された各二次電池に対応する各バランス回路の稼働情報の比較により劣化電池を判定する劣化判定手段を有する制御装置と、を備えることを特徴とする二次電池劣化判定装置。
【請求項8】
前記制御装置に、ネットワークを介してデータ通信装置を接続可能とした二次電池劣化判定装置であって、
前記データ通信装置よりの呼出時に、前記各二次電池の劣化有無判定情報を前記データ通信装置に伝送し、出力するようにしたことを特徴とする請求項7記載の二次電池劣化判定装置。
【請求項9】
前記制御装置に、ネットワークを介してデータ通信装置を接続可能とした二次電池劣化判定装置であって、
前記制御装置より、前記データ通信装置に各二次電池の劣化有無判定情報を伝送し、前記各二次電池の劣化有無判定情報を前記データ通信装置より出力するようにしたことを特徴とする請求項7記載の二次電池劣化判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−186985(P2012−186985A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109002(P2011−109002)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(500091520)株式会社アイケイエス (7)
【Fターム(参考)】