説明

二液分別塗布型接着剤及びこの接着剤を用いた接着方法

【課題】主剤の保存安定性に優れ、長い閉鎖堆積時間が取れるため生産性が高く、かつ耐水接着力に優れる。木材用接着剤、特に構造用集成材に最適である。
【解決手段】本発明の二液分別塗布型接着剤は、ポリビニルアルコール水溶液とカルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスとイソシアネート化合物を必須成分とする第一液とポリアミドエポキシ樹脂水溶液を必須成分として含有する第二液とからなる。そして上記二液分別塗布型接着剤を用いた接着方法は、二液分別塗布型接着剤の第一液を第1の被着体の片面に塗布し、接着剤の第二液を第2の被着体の片面に塗布し、両方の塗布面同士を貼り合わせて第1の被着体及び第2の被着体を圧締することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液分別塗布型接着剤及びこの接着剤を用いた接着方法に関するものである。詳しくは、木材用接着剤、特に構造用集成材の接着に最適な二液分別塗布型接着剤及びこの接着剤を用いた接着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、木材製品工業においては、生産工程を連続化することが検討されており、そのために接着速度の立ち上がりの大きい接着剤が求められている。この目的に対して、例えば、A液として分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物の水性溶液及び/又は水性エマルジョンとイソシアネート化合物を配合し、B液としてヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、ポリエチレンイミンのうちの1種類を含む水溶液或いは水性分散液を使用する2液分別塗布型接着剤において、B液としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂を混合した耐水性に優れる速硬化接着剤が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、1級アミノ基及び2級アミノ基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有しアセトアセチル基を持たないポリビニルアルコールを含む水性液よりなる第一液と、水溶性アルデヒド化合物及び多価イソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第二液からなる2液分別塗布型の接着剤組成物であり、特に第二液が水溶性アルデヒド化合物を含む液であり、第一液及び第二液の少なくとも一方が多価エポキシ化合物を更に含有する2液分別塗布型接着剤組成物も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平6−256748号公報(請求項1及び2、段落[0003])
【特許文献2】特許3874859号公報(請求項1〜4、段落[0005])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
A液として分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物の水性溶液及び/又は水性エマルジョンとイソシアネート化合物を配合し、B液としてヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、ポリエチレンイミンのうちの1種類を含む水溶液或いは水性分散液に更にグリシジルアミン型エポキシ樹脂を混合した上記特許文献1に示される速硬化接着剤は、確かに耐水性に優れる。しかし、仮に室温(20℃)においてA液とB液との混合使用を試みた場合には、特にA液に配合される分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物とB液に含まれるヒドラジン化合物、アルデヒド化合物又はポリエチレンイミンとの間で直ちに強い相互作用由来のゲル化を生起して十分な閉鎖堆積時間が取れない。従って、現行の十分な閉鎖堆積時間を必要とする生産設備において、その生産性を維持するためには大幅な生産設備の変更を必要とするため、実際に使用する上で課題が残る。
【0005】
また、1級アミノ基及び2級アミノ基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有しアセトアセチル基を持たないポリビニルアルコールを含む水性液よりなる第一液と、水溶性アルデヒド化合物及び多価イソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第二液からなる2液分別塗布型の接着剤組成物であり、特に第二液が水溶性アルデヒド化合物を含む液であり、第一液及び第二液の少なくとも一方が多価エポキシ化合物を更に含有する上記特許文献2に示される2液分別塗布型の接着剤組成物は、架橋密度が低いため、耐煮沸接着強度が低く課題が残る。架橋密度が低い理由は、架橋剤に水溶性アルデヒドを用いた場合、高い反応性が得られないためであり、また、イソシアネート化合物を用いる場合は、多価エポキシ化合物との反応によりイソシアネート化合物が消費されることによる。
【0006】
本発明の目的は、主剤の保存安定性に優れ、長い閉鎖堆積時間が取れるため生産性が高く、かつ耐水接着性に優れた二液分別塗布型接着剤及びこの接着剤を用いた接着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特定の組成条件を満足する接着剤において課題の効果的な解決を見出したものである。
【0008】
即ち、請求項1に係る発明は、ポリビニルアルコール水溶液とカルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスとイソシアネート化合物を含む第一液と、ポリアミドエポキシ樹脂水溶液を含む第二液とからなることを特徴とする二液分別塗布型接着剤である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、カルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスがカルボキシル基含有スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスである二液分別塗布型接着剤である。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、ポリアミドエポキシ樹脂が、ジカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との重縮合物である二液分別塗布型接着剤である。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1記載の二液分別塗布型接着剤の第一液を第1の被着体の片面に塗布し、上記接着剤の第二液を第2の被着体の片面に塗布し、両方の塗布面同士を貼り合わせて上記第1の被着体及び上記第2の被着体を圧締することを特徴とする二液分別塗布型接着剤を用いた接着方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二液分別塗布型接着剤は、第一液のポリビニルアルコールと必須成分のカルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスとの間での相互作用が小さいために、主剤としての第一液の貯蔵安定性が優れる。また、第一液の硬化剤であるイソシアネート化合物と第二液の必須成分であるポリアミドエポキシ樹脂との間では相互作用が小さい。従って、閉鎖堆積時間が長く取れるので、木材接着における生産性が向上する。更に、第一液の必須成分のカルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスのカルボキシル基と第二液の必須成分であるポリアミドエポキシ樹脂の分子内アミド基との間で効果的に硬化反応が促進されるために、耐水接着力に優れる。即ち、冷圧及び熱圧条件下での接着において耐煮沸接着性能が高いため、木材接着用接着剤、特に構造用集成材に最適な接着剤であり、従来接着が困難とされる硬木木質系の接着が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
本発明の二液分別塗布型接着剤は第一液と第二液とから構成され、第一液は、ポリビニルアルコール水溶液とカルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスとイソシアネート化合物が含まれ、第二液は、ポリアミドエポキシ樹脂水溶液が含まれる。
【0015】
本発明の二液分別塗布型接着剤の第一液を構成するポリビニルアルコール水溶液に使用されるポリビニルアルコールは、変性或いは未変性の何れでもよい。但し、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールの使用は、主剤である第一液の貯蔵安定性が低いため好ましくない。
【0016】
使用するポリビニルアルコールの重合度は500〜2500であるものが好ましい。更には1000〜2000であるものが特に好ましい。上記重合度は、本発明の水性接着剤組成物において粘度や、接着強度に影響を及ぼす。重合度を上記範囲内としたのは、下限値未満のものを使用すると、接着強度が不足し易いためである。また上限値を越えるものを使用すると、接着剤組成物の増粘が生じ易いためである。
【0017】
使用するポリビニルアルコールの鹸化度は80〜100モル%であるものが好ましい。上記鹸化度は、本発明の水性接着剤組成物において耐水接着性に影響を及ぼす。鹸化度を上記範囲内としたのは、鹸化度が下限値未満のものを使用すると、耐水接着性が低下し易いためである。また鹸化度が上限値を越えるものを使用すると、粘度安定性が低下し易いためである。このうち、鹸化度は85〜99モル%であるものが特に好ましい。
【0018】
本発明の二液分別塗布型接着剤の第一液の必須構成成分の一つであるカルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスは、ブタジエン、クロロプレン、1,3−ヘキサジエン、イソプレンからなる群より選ばれた1種又は2種以上のジエン系不飽和単量体と、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル等のエチレン性不飽和ジカルボン酸又はその半エステル、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸等から群より選ばれた1種又は2種以上の不飽和酸単量体と、アクリロニトリル、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の不飽和単量体とからなるカルボキシル基含有共重合体ラテックスである。
【0019】
本発明の二液分別塗布型接着剤の第一液が、これらのカルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスを含むことで、このラテックスに含有されるカルボキシル基と第二液のポリアミドエポキシ樹脂の分子内アミド基との間で生起する硬化反応が促進されることによって、特に耐水接着性が著しく向上するものと推察される。
【0020】
上記カルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスは、20〜99質量%のゲル含有率を有するラテックスが好ましい。このようなゲル含有率を有するカルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスが好ましいのは、特に高い接着強度が得られる理由からである。また上記ラテックスのゲル含有率を上記範囲内としたのは、ゲル含有率が下限値未満であると、二液分別塗布型接着剤の耐水接着性が低下する不具合が生じ易く、上限値を越えるとカルボキシ変性ジエン系共重合体ラテックスの常温成膜能の極端な低下による接着強度不足が生じ易いからである。このうち、ゲル含有率は30〜85質量%が特に好ましい。上記カルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスとしては、最も汎用性があるためコスト的に有利なカルボキシル基含有スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスが特に好ましい。
【0021】
カルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスのカルボキシル基変性量は、好ましくは0.5〜10質量%である。カルボキシル基変性量を上記範囲内としたのは、変性量が上限値を越えると、二液分別塗布型接着剤が極端に増粘する不具合を生じるためであり、変性量が下限値未満であると、充分な耐水接着性を得ることが難しいためである。このうち、カルボキシル基変性量は、1.0〜8質量%が特に好ましい。
【0022】
本発明の二液分別塗布型接着剤の第一液の硬化剤として、イソシアネート化合物を用いることによって更に優れた耐水接着性が発揮される。このようなイソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネート系化合物を用いることができる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト等が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン等が挙げられる。また、上記例示の脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環式ポリイソシアネ−ト、芳香族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−トによる二量体や三量体、反応生成物又は重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物)等も用いることができる。なお、これら化合物を単独で用いてもよいが、複数選択して使用してもよい。これらイソシアネート化合物の添加量は、第一液接着剤100質量部に対して2〜40質量部であり、好ましくは、10〜20質量部である。2質量部未満では耐水性が得られ難く、40質量部を越えると第一液接着剤の可使時間が短くなる等の制約が生じて作業性が大幅に低下する。
【0023】
本発明の二液分別塗布型接着剤の第二液の必須構成成分であるポリアミドエポキシ樹脂の具体例としては、ポリアミンポリアミド類にエピハロヒドリンを反応して得られる樹脂等が挙げられる。ここで、ポリアミンポリアミド類としては、例えば、ジカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との重縮合物などが挙げられる。ポリアミンポリアミド類に使用されるジカルボン酸類としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸及びジカルボン酸類のナトリウム、カリウム等の塩などが挙げられる。ジカルボン酸類として、異なる2種類以上のジカルボン酸類を混合して使用しても良い。ジカルボン酸類としては、中でも、炭素数3〜10程度の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、特にアジピン酸が好適である。
【0024】
ポリアミンポリアミド類に使用されるポリアルキレンポリアミン類としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。ポリアルキレンポリアミン類として、異なる2種類以上のポリアルキレンポリアミン類を混合して使用しても良い。ポリアルキレンポリアミン類としては、中でもジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンが好ましい。
【0025】
ポリアミンポリアミド類を与える重縮合反応において、ポリアルキレンポリアミン類の1級アミノ基(末端アミノ基)1当量に対してジカルボン酸類を通常、0.9〜1.4当量程度、好ましくは0.9〜1.2当量程度使用する。また、該重縮合反応においてアミノカルボン酸類やジアミン類を併用しても良い。アミノカルボン酸類としては、例えば、グリシン、アラニン、アミノカプロン酸等のアミノカルボン酸及びそのエステル、カプロラクタム等のラクタム類が挙げられる。ジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン等が挙げられる。
【0026】
重縮合反応としては、例えば、常圧下又は減圧下にて、約50〜250℃程度の反応温度により、生成する水又はアルコールを系外に除去する方法などが挙げられる。かくして得られるポリアミンポリアミド類の水溶液は次に、エピハロヒドリンの反応に供される。ここで用いるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリンやエピブロムヒドリン等が挙げられるが、中でもエピクロルヒドリンが好適である。ポリアミンポリアミド類とエピハロヒドリンとの反応は、樹脂分濃度約10〜70質量%程度、好ましくは25〜60質量%の水溶液中で行われる。ポリアミンポリアミド類とエピハロヒドリンとの反応において、ポリアミンポリアミド類の2級アミノ基(分子内アミノ基)1当量に対し、通常、約0.85〜2モル程度、好ましくは1〜1.8モル程度のエピハロヒドリンを使用する。また、該反応は、通常、10〜80℃程度で実施される。
【0027】
第二液におけるポリアミドエポキシ樹脂水溶液の好ましい濃度範囲は、3〜30質量%である。3質量%未満では、本願の特徴である耐水接着性の発現効果が認められなくなり、30質量%を越えると、接着剤のコストが高くなる上に、耐水接着性が低下する。なお、本発明に好ましく用いることが出来る具体的な市販のポリアミドエポキシ樹脂製品としては、例えば、星光PMC株式会社製「WS4020」、住化ケムテックス株式会社製「スミレーズレジン675A」、荒川化学工業株式会社製「アラフィックス」等が挙げられる。
【0028】
なお、一般的な接着剤組成物を構成するエポキシ樹脂成分として、第3級アミノ窒素原子をもつ4官能性エポキシ化合物もよく知られている。しかしこの第3級アミノ窒素原子を持つ4官能性エポキシ化合物は、危険物(第2石油類)に属するため安全上取扱いに難がある上に、仮に二液分別塗布型接着剤の構成成分として使用した場合、本発明の必須構成成分であるポリアミドエポキシ樹脂の場合には短時間圧締で耐水接着性能が発現するのに対して、この第3級アミノ窒素原子を持つ4官能性エポキシ化合物の場合には短時間圧締での耐水接着性能が劣り、しかも高価である等の欠点を有している。
【0029】
本発明の二液分別塗布型接着剤において、その第一液は、上記主要構成成分の他に、必要に応じて増量或いは接着層の強化の目的で、充填剤を含有しても良い。充填剤の例としては、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、小麦粉等を挙げることができ、それらの一種又は二種以上を含有することができる。更に、第一液は、必要に応じて、分散剤、増粘剤、乳化剤、可塑剤、着色剤等を単独で、或いは2種以上組み合わせて適宜添加使用することができる。
【0030】
本発明の二液分別塗布型接着剤は、これを用いて接着作業を行なうに当たっては、二液分別塗布型接着剤の第一液を第1の被着体の片面に塗布し、第二液を第2の被着体の片面に塗布し、しかる後、室温にて双方の塗布面同士を貼り合わせ、第1の被着体及び第2の被着体を圧締する。これにより両方の塗布面同士を密着させて各液を反応硬化させることにより優れた接着性能を発現することに特徴がある。そして、本発明の二液分別塗布型接着剤を用いた二液分別塗布方法によって接着を行なうと、その速硬化性、高い耐水接着性等の特性が充分発揮されて、極めて良好な作業性でかつ低エネルギーコストで、短時間で生産性良く接着作業を行なうことができる。上記の二液分別塗布方法によって接着作業を行なう場合には、第一液を塗布した第1の被着体の塗布面と第二液を塗布した第2の被着体の塗布面とを貼り合わせて両塗布面を密着させて、圧締すると、室温において例えば通常工程では20〜30分を要するのに対して、1〜5分以内の極めて短時間で良好な耐水接着性を発現するので、圧締を短時間で終了することができ、作業時間の短縮、作業工程の簡略化、装置の簡略化、エネルギーコストの削減等が達成できるため極めて有用である。本発明の二液分別塗布型接着剤を用いた二液分別塗布方法によって接着を行なう場合の各被着体への第一液及び第二液の塗布量は特に制限されず、被着体の種類や状態、接着剤の各液の成分内容に応じて調節することができるが、通常は、第1の被着体の片面への第一液の塗布量は10〜500g/m2程度とし、第2の被着体の片面への第二液の塗布量は5〜100g/m2程度とすることが、接着剤を有効に用いながら高い耐水接着性を得ることができるので好ましい。
【実施例】
【0031】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0032】
<実施例1>
先ず、ポリビニルアルコール(重合度;1500、鹸化度;85モル%、アセトアセチル基含有量0モル%、カルボキシル基含有量0モル%)を12質量%含有する水溶液48質量部と、カルボキシル基含有スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(旭化成ケミカルズ株式会社製 A−7351、固形分濃度48質量%、ゲル含有率85質量%)29質量部と、重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製 スーパーSS)23質量部とを十分に混合して主剤組成物を得た。上記主剤組成物は、40℃の静置状態において少なくとも3ヶ月間、粘度上昇或いはゲル化を全く示さず放置安定性は良好であった。
【0033】
続いて、上記主剤組成物100質量部に対して、硬化剤としてイソシアネート化合物である4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI)15質量部を混合、調製して接着剤組成物(第一液)を得た。
【0034】
次いで、ポリアミドエポキシ樹脂(住化ケムテックス株式会社製 スミレーズレジン675A)を希釈して濃度12.5%としたプライマー(第二液)を用意した。
【0035】
次に、被着体として28℃の環境温度下において用意した厚さ15mmの2枚のホワイトウッド材の一方の片面に、上記第一液を250g/m2の塗布量で塗布し、また、他方の片面に、上記第二液を50g/m2の塗布量で塗布した。そして、これらの塗布面同士を重ね合わせて5秒間放置した後、8kg/m2の冷圧条件で180秒間圧締した。圧締後、JISK6806の圧縮せん断接着強さに準じて試験片を作製した。
【0036】
更に、閉鎖堆積時間を5秒間から180秒間に代えた以外は上記と同様にして試験片を作製した。
【0037】
<実施例2>
実施例1の第二液のプライマーを、ポリアミドエポキシ樹脂(住化ケムテックス株式会社製スミレーズレジン675A)を希釈して濃度5%のものに変更した以外、同一の液構成の接着剤を用い、実施例1と同一条件で試験片を作製した。
【0038】
<実施例3>
実施例1の第二液のプライマーを、ポリアミドエポキシ樹脂(住化ケムテックス株式会社製 スミレーズレジン675A)を希釈せずに濃度25%のものに変更した以外、同一の液構成の接着剤を用い、実施例1と同一条件で試験片を作製した。
【0039】
<実施例4>
実施例1の第一液及び第二液と同一の接着剤を用い、被着体として28℃の環境温度下において用意した厚さ12mmの2枚の硬木のカバ材を用い、実施例1と同一条件で試験片を作製した。
【0040】
<実施例5>
実施例4の第一液のポリビニルアルコールの水溶液を62質量部、及びカルボキシル基含有スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを15質量部に変更した以外、同一の液構成の接着剤を用い、実施例4と同一条件で試験片を作成した。
【0041】
<実施例6>
実施例4の第一液のポリビニルアルコールの水溶液を27質量部、及びカルボキシル基含有スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを50質量部に変更した以外、同一の液構成の接着剤を用い、実施例4と同一条件で試験片を作成した。
【0042】
<比較例1>
先ず、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール(重合度;1500、鹸化度;99モル%、アセトアセチル基含有量5モル%、カルボキシル基含有量5モル%)を15質量%含有する水溶液27質量部と、カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(住化ケムテックス株式会社製 SF−456HQ、固形分濃度55質量%)40質量部と、重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製 スーパーSS)33質量部とを十分に混合して主剤組成物を得た。上記主剤組成物は、40℃の静置状態において直ちに粘度上昇を起こしたため、放置安定性は不良であった。
【0043】
続いて、上記主剤組成物100質量部に対して、硬化剤としてイソシアネート化合物である4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI)15質量部を混合、調製して接着剤組成物(第一液)を得た。
【0044】
次いで、カルボジヒドラジド(日本ファインケム株式会社製)を6質量%含有するプライマー水溶液(第二液)を用意した。
【0045】
次に、28℃の環境温度下において用意した厚さ15mmの2枚のホワイトウッド材の一方の片面に、上記第一液を250g/m2の塗布量で塗布し、また、他方の片面に、上記第二液を50g/m2の塗布量で塗布した。そして、これらの塗布面同士を重ね合わせて5秒間放置した後、8kg/m2の冷圧条件で180秒間圧締した。圧締後、JISK6806の圧縮せん断接着強さに準じて試験片を作製した。
【0046】
更に、閉鎖堆積時間を5秒間から180秒間に代えた以外は上記と同様にして試験片を作製した。
【0047】
<比較例2>
実施例1の第一液のカルボキシル基含有スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスに代えて、カルボキシル基非含有スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(旭化成ケミカルズ株式会社製 DL−612、固形分濃度50質量%、ゲル含有率85質量%)を用いた以外は同じ液構成の接着剤を用い、実施例1と同一条件で試験片を作製した。
【0048】
<比較例3>
実施例1の第一液のカルボキシル基含有スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスに代えて、カルボキシル基含有アクリル−スチレン共重合体エマルジョン(中央理化工業株式会社製 FK−900、固形分濃度50質量%)を用いた以外、同じ液構成の接着剤を用い、実施例1と同一条件で試験片を作製した。
【0049】
<比較例4>
実施例1の第一液のカルボキシル基含有スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスに代えて、カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(住化ケムテックス株式会社製 SF−456HQ、固形分濃度55質量%)を用いた以外、同じ液構成の接着剤を用い、実施例1と同一条件で試験片を作製した。
【0050】
<比較例5>
比較例1の第一液及び第二液と同一の接着剤を用い、被着体として28℃の環境温度下において用意した厚さ12mmの2枚の硬木のカバ材を用い、比較例1と同一条件で試験片を作製した。
【0051】
<比較例6>
実施例4の第二液のプライマーであるポリアミドエポキシ樹脂に代えて、4官能エポキシ化合物(三菱ガス化学株式会社製 TETRAD−X)を希釈して濃度12.5%としたものを用いた以外、同じ液構成の接着剤を用い、実施例4と同一条件で試験片を作製した。
【0052】
<比較例7>
実施例4の第二液のプライマーに用いたポリアミドエポキシ樹脂に代えて、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテック株式会社製 EX−850)を希釈して12.5%としたものを用いた以外、同じ液構成の接着剤を用い、実施例4と同一条件で試験片を作製した。
【0053】
<比較試験及び評価>
実施例1〜6及び比較例1〜7で使用した二液分別塗布型接着剤の第一液及び第二液の原材料(第一液は配合比率)を表1及び表2にそれぞれ示す。なお、実施例1の主剤組成物は、40℃静置状態において、少なくとも3ヶ月間、粘度上昇或いはゲル化を全く示さず放置安定性が良好であったのに対して、比較例1の主剤組成物は、40℃静置状態において、直ちに粘度上昇を起こしたため放置安定性は不良であった。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

実施例1〜6及び比較例1〜7で作製した各試験片について、JISK6806に規定する煮沸繰り返しによる圧縮せん断接着強さにより接着性能を調べた。即ち、煮沸繰り返し試験では、試験片を煮沸水中に4時間浸漬した後に60±3℃の温度で20時間乾燥し、更に煮沸水中に4時間浸漬した後に室温水で冷却して、濡れたままの状態で圧縮せん断接着強さ及び木破率を測定した。
【0056】
圧縮せん断接着強さとは、ブロックせん断強度試験(JIS K−6852[接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法」参照。)において、試験片に接着剤を塗布して貼り合わせ、接着面に平行に圧縮せん断力を加え、せん断破壊させた時の破壊荷重を接着面積で除して表す。木破率とは、この試験において被着体の接着面で剥離することなく被着体内部で破壊が生じる率である。閉鎖堆積時間とは、第一液と第二液を被着体に塗布し重ね合わせるなどで接触させた後、圧締が開始されるまでの時間である。以上の試験を、閉鎖堆積時間を5秒又は180秒とした場合で比較した。その結果を以下の表3に示す。
【0057】
【表3】

表3から明らかなように、実施例1〜6と比較例1〜7を比較すると、本発明の二液分別塗布型接着剤は、高い圧縮せん断接着強さ及び木破率を示し、耐煮沸接着性能が良好であることが判る。特に、実施例1と比較例2〜4を比較すると、第一液にカルボキシル基含有スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを用いた二液分別塗布型接着剤が高い圧縮せん断接着強さ及び木破率を有することが判る。一方、実施例4と比較例6及び7を比較すると、従来多用されているエポキシ化合物に比べて本願の特定なエポキシ化合物であるアミドエポキシ樹脂化合物の系の圧縮せん断接着強さ並びに同試験における木破率が高いことが分かる。またこれらの傾向は、閉鎖堆積時間を5秒から180秒延長した場合にも同様であることが判る。
【0058】
以上のことから、本発明の二液分別塗布型接着剤は、実用に耐え得る非常に効果的な接着剤であること及び従来の接着剤に比べて閉鎖堆積時間を長く取ることができ作業時間の短縮、作業工程の簡略化、装置の簡略化、エネルギーコストの削減等が達成できるため極めて有用であるが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の2液分別塗布型接着剤は、十分な耐水接着性を発現し、また長い閉鎖堆積時間後にも優れた接着強度を有するため、集成材等の各種木材の接着剤として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール水溶液とカルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスとイソシアネート化合物を含む第一液と、ポリアミドエポキシ樹脂水溶液を含む第二液とからなることを特徴とする二液分別塗布型接着剤。
【請求項2】
カルボキシル基含有ジエン系共重合体ラテックスがカルボキシル基含有スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスである請求項1記載の二液分別塗布型接着剤。
【請求項3】
ポリアミドエポキシ樹脂が、ジカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との重縮合物である請求項1又は2記載の二液分別塗布型接着剤。
【請求項4】
請求項1記載の二液分別塗布型接着剤の第一液を第1の被着体の片面に塗布し、前記接着剤の第二液を第2の被着体の片面に塗布し、両方の塗布面同士を貼り合わせて前記第1の被着体及び前記第2の被着体を圧締することを特徴とする二液分別塗布型接着剤を用いた接着方法。

【公開番号】特開2010−150386(P2010−150386A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329878(P2008−329878)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(390001339)光洋産業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】