説明

二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造法ならびにその使用

【課題】CVD法またはPECVD法により所望の高酸素ガスバリヤ層を好適に形成でき、フィルムの巻取り特性、製造・加工特性に優れ、高グロス且つ高透明性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】80%以上の熱可塑性ポリエステルから成るベース層Bと熱可塑性樹脂から成る外層A及び外層Cと外層A表面上に積層されているアクリレート含有層Dとから成る二軸延伸ポリエステルフィルムであって、外層Aは実質的に添加粒子を含有せず、外層A表面は平坦であって、外層Cは添加粒子を含有し、外層C表面は、1mm当りの突起数をNc、突起の高さをh(μm)とした場合にAh1−Bh1・log10h ≦ log10であり、且つ0.01(μm) ≦ h ≦ 1(μm)である(ただし、Ah1=0.05、Bh1=3.3)ことを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
 本発明は二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものであり、詳しくは、化学蒸着法またはプラズマ増強化学蒸着法により、ガスバリヤ被覆層を好適に形成することができる二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。本発明は、さらに、上記二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法およびその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
 ポリエステルフィルムに於て、片方の表面Aが平滑であるフィルムは公知である。例えば表面A側に添加粒子を含有しない平滑な表面を有するポリエステルフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のフィルムは、特にメタル化またはセラミック化処理を施したフィルムはガスバリヤ性が良好である。しかしながら、化学蒸着法(CVD法)またはプラズマ増強化学蒸着法(PECVD法)によりメタル化またはセラミック化処理を施してガスバリヤ層を形成するためには、表面Aの平坦性をさらに改良する必要がある。さらに、高速機械にも対応できるように、フィルムの製造および加工特性を改良する必要がある。上記のフィルムの表面A側の反対面である表面Cに於て、添加粒子が充分添加されてない。そのため、CVD法やPECVD法による被覆処理を行なう際、次のような問題が生じる。すなわち、被覆処理前に高真空にするため、フィルムロール中の空気が脱気され、フィルム同士が密に接するようになる。そのため、添加粒子の添加量が少ないとブロッキングが生じ、フィルムの処理効率が低下する。さらに、被覆処理後のフィルムに於ても巻取り特性が悪いため、後加工(積層、印刷など)に於ける加工特性が悪化する。さらに、この種のフィルムは著しい帯電性を有する。
【0003】
 また、少なくとも1つの外層を有する配向結晶性熱可塑性多層フィルムが知られている(例えば、特許文献2参照)。外層は無機または有機粒子を含有する。粒子が二酸化ケイ素の場合、粒径は2〜20μmで、含有量は外層の重量に対し1〜25重量%である。この多層フィルムはアルミニウムでメタル化され、装飾品や磁気テープとして使用される。しかしながら、この種のフィルムに於て、表面形態と酸素ガスバリヤ性との関係が明らかになっていない。
【0004】
 更に、少なくとも2層から成る二軸延伸ポリエステルフィルムと磁性金属薄層とから成る磁気記録媒体が知られている(例えば、特許文献3参照)。ポリエステルフィルムは、a)磁性金属薄層を有するポリエステルフィルムの表面側の層に於て粒子を含有せず、厚さが4μm以上でかつフィルムの総厚みの50%以上であり、b)反対側の層はポリマーAから成る粒子1%以上とポリマーBから成る粒子1%以上とを含有しする粗表面である。しかしながら、この種のフィルムに於て、表面形態と酸素ガスバリヤ性との関係が明らかになっていない。
【0005】
 また、熱可塑性樹脂から成る外層Aと熱可塑性樹脂および微粒子から成るベース層Bとから成る二軸延伸共押出しポリエステルフィルムが知られている(例えば、特許文献4参照)。外層A側の表面の表面粗度Raは5nm未満で、ベース層B側の表面は、a)表面粗度Raが5〜40nmであり、多数の窪み及び突起が特定の配列を有するか、又は、b)平滑な表面に突起が形成されており、さらにこの表面は滑剤から成るC層に被覆されており、表面粗度Raが5〜40nmであるという特徴を有する。
【0006】
 更に、ポリマー材料から成る基材層と、所定の粒径分布を有するガラスビーズ及び二酸化ケイ素粒子を所定量含有する少なくとも1つの外層とから成る透明多層フィルムが知られている(例えば、特許文献5参照)。外層は基材層の片面または両面に積層される。この種のフィルムは、不透明性および加工性が改良されることが記載されているが、グロス及びガスバリヤ特性の改良については明らかでない。更に、この種のフィルムに於て、グロス及び酸素ガスバリヤ性を同時に改良する場合の表面形態との関係が明らかになっていない。
【0007】
 また、実質的にフィラーを含有しないポリマー材料から成る基材層と、1.5〜12.5μmのメジアン粒径を有するシリコン樹脂を100〜1000ppm含有する少なくとも1つの外層とから成る透明多層フィルムが知られている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、シリコン樹脂粒子を使用した場合、包装市場に於ては容認できないほどコスト高になる。また、この種の粒子を添加した場合、フィルムの巻取りの際にわん状変形が生じる。更に、この種のフィルムに於て、グロス及び酸素ガスバリヤ性を同時に改良する場合の表面形態との関係が明らかになっていない。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0903222号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第1694404号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第2230970号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0088635号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0514129号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0604057号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
 従って、CVD法またはPECVD法によりガスバリヤ層を形成できる平坦な表面を有し、高真空下で処理を行なうのに適したポリエステルフィルムは得られてないのが実情である。
【0009】
 本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、CVD法またはPECVD法(例えばヘキサメチルジシロキサン、メタン等のプラズマ重合)により所望の高酸素ガスバリヤ層を形成するのに好適であり、フィルムの巻取り特性、製造特性および加工特性に優れ、ガスバリヤ層を形成するA側表面が高グロスであり、高透明性である二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。さらに、上記二軸延伸ポリエステルフィルムは、包装用フィルムとしての使用を目的とするため、その他の物性は従来のフィルムと同等以上であり、製造が容易で、低コストで製造でき、従来の加工機械により容易に加工することが出来ることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
 本発明者は、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、特定の表面粗度を有する2つの外層A及び外層Cとベース層Bと外層A上に積層された被覆層Dとから成る積層ポリエステルフィルムにより上記課題が達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
 すなわち、本発明の第1の要旨は、80%以上の熱可塑性ポリエステルから成るベース層Bと熱可塑性樹脂から成る外層A及び外層Cと外層A表面上に積層されているアクリレート含有層Dとから成る二軸延伸ポリエステルフィルムであって、外層Aは実質的に添加粒子を含有せず、外層A表面は平坦であって、外層Cは添加粒子を含有し、外層C表面は、1mm当りの突起数をNc、突起の高さをh(μm)とした場合に以下の式(1)及び(2)を満足することを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
【0012】
【数2】



【0013】
 本発明の第2の要旨は、第1の要旨に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、溶融ポリマーを押出または共押出することにより溶融シートを得、積層シートを形成する工程と、得られた積層シートにアクリレート含有層を塗布により形成する工程と、塗布された積層シートを二軸延伸する工程し、積層フィルムを得る工程と、得られた積層フィルムを熱固定する工程とから成る二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法に存する。
【0014】
 本発明の第3の要旨は、第1の要旨に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムから成る空気および/または光に対して劣化しやすい食品または物品の包装材に存する。
【発明の効果】
【0015】
 本発明によれば、CVD法またはPECVD法により所望の高酸素ガスバリヤ層を形成するのに好適であり、フィルムの巻取り特性、製造特性および加工特性に優れ、高グロス且つ高透明性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
 以下、本発明を詳細に説明する。本発明の二軸延伸ポリエステルフィルム(以下、単にフィルムと略すことがある)は、ベース層B、2つの外層A及びC及び外層A上に積層されたアクリレート含有層Dから成り、D−A−B−C構造を有する。ベース層Bは80重量%以上の熱可塑性ポリエステルから成る。
【0017】
 ベース層Bを構成する熱可塑性ポリエステルとしては、エチレングリコールとテレフタル酸から製造されるポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸から製造されるポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンとテレフタル酸から製造されるポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCDT)、エチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸とビフェニル−4,4’−ジカルボン酸から製造されるポリ(エチレン2,6−ナフタレートビベンゾエート)(PENBB)が好ましい。特にエチレングリコールとテレフタル酸から成るエチレンテレフタレート単位またはエチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸から成るエチレン−2,6−ナフタレート単位が90%以上、好ましくは95%以上のポリエステルが好ましい。ベース層BがPETから成ることが特に好ましい。
【0018】
 上記のモノマー以外の残余のモノマー単位は、他のジオール及び/又はジカルボン酸から誘導されたモノマーである。
【0019】
 共重合ジオールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、HO−(CH−OHの式で示される脂肪族グリコール(nは3〜6の整数を表す、具体的には、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる)、炭素数6までの分岐型脂肪族グリコール、HO−C−X−C−OHで示される芳香族ジオール(式中Xは−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−を表す)、式:HO−C−C−OHで表されるビスフェノールが好ましい。
【0020】
 共重合ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0021】
 脂肪族ジカルボン酸の好ましい例としては、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレン−1,4−又は−1,6−ジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸などのビフェニル−x,x’−ジカルボン酸、ジフェニルアセチレン−4,4’−ジカルボン酸などのジフェニルアセチレン−x,x−ジカルボン酸、スチルベン−x,x−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0022】
 脂環式ジカルボン酸の好ましい例としては、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の好ましい例としては、C−C19のアルカンジカルボン酸が挙げられ、当該アルカンは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0023】
 外層A及び外層Cを構成する熱可塑性樹脂は、好ましくはベース層を構成する上記ポリエステルから成り、べース層Bを構成するポリエステルと同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じポリエステルから成る。外層A及び外層Cを構成する熱可塑性樹脂として、好ましくはエチレンテレフタレート単位および/またはエチレン−2,6−ナフタレート単位を含有する単独重合体または共重合体であり、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートから成る。構成単位の10モル%以下の割合でべース層Bで説明した共重合モノマー単位を含有してもよい。
【0024】
 上記のポリエステルは、通常エステル交換反応により製造される。エステル交換反応についての詳細は、例えば、Polyesters, V.V. Korshak and S.V. Vinogradova, Pergamon Press, 1965, and Encyclopedia of Chemical Technology, Fourth Edition, Vol. 19, Pigments to Powders, Handling, Wiley & Sonsに記載されている。その出発原料は、ジカルボン酸エステルとジオール及び亜鉛塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム、マンガン塩などの公知のエステル交換反応用触媒である。生成した中間体は、更に、三酸化アンチモンやチタニウム塩などの重縮合触媒の存在下で重縮合に供される。また、ポリエステルの製造は、出発原料のジカルボン酸とジオールに重縮合触媒を存在させて直接または連続的にエステル化反応を行う方法であってもよい。
【0025】
 上記のエステル交換反応用触媒の中でも、外層A表面の平坦性に大きな影響を及ぼさない観点から、マグネシウム又はマンガン塩が好ましい。これらのエステル交換反応用触媒は、本発明のフィルムを構成するポリエステル原料用に、好ましくは外層Aを構成するポリエステル原料用に使用される。
【0026】
 外層A表面の平坦性を達成するためのエステル交換反応用触媒の使用量は、マグネシウム塩の場合50〜200ppm、マンガン塩の場合100〜300ppm、カルシウム塩
の場合50〜300ppmであることが好ましい。これらのエステル交換反応用触媒残渣から生じる外層A表面の表面粗度Raは、通常28nm以下、好ましくは25nm以下、より好ましくは21nm以下である。もちろん、このような表面粗度を達成できるのであれば、他のエステル交換反応用触媒を所定量使用してもよい。
【0027】
 原料ポリマーの製造の観点から、ベース層用ポリマーの粘度と2つの外層用ポリマーの粘度とが大きく異ならないことが好ましい。ベース層と外層とであまり粘度が異なるポリマーを使用すると、溶融体の流れが不均一または中断し、フィルムに縞が生じることがある。各層に使用するポリマーの溶融体の粘度としては固有粘度(IV)を使用するが、市販の二軸延伸用PETのIVは0.54〜0.76である。欠陥の無いフィルムを製造するために、外層A及び外層C用のポリマーのSV(標準粘度)は、通常0.55〜0.75、好ましくは0.56〜0.74、より好ましくは0.57〜0.73である。上記のSV値の範囲内にするために、必要であれば、それぞれのポリマーペレットを固相重縮合する。ベース層Bと2つの外層とのIVの差は、通常0.1以下、好ましくは0.08以下、より好ましくは0.06以下である。
【0028】
 ベース層B及び2つの外層A及びCには、安定剤などの公知の添加剤を添加してもよい。添加剤は、例えば、ポリマー又はポリマーの混合物に、溶融に先立って添加する。安定剤としては、リン酸やリン酸エステル等のリン化合物が例示される。
【0029】
 ベース層Bは実質的に耐ブロッキング剤などの添加粒子のみを含有することが、フィルム製造工程で生じるフィルム端材を再利用する点から好ましい。
【0030】
 外層Aは実質的に耐ブロッキング剤などの添加粒子を含有せず、好ましくは添加粒子を含有しない。従って、外層Aの表面は平坦であり、グロスが高い。
【0031】
 外層Cは、フィルムの製造および加工特性を良好とするために、添加粒子を含有する。添加粒子としては耐ブロッキング剤または顔料が好ましい。耐ブロッキング剤(顔料も含む)としては、無機および/または有機粒子が好ましく、具体的には、炭酸カルシウム、非晶シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、LiF、ジカルボン酸のカルシウム、バリウム、亜鉛またはマンガン塩、カーボンブラック、二酸化チタン、カオリン、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリレート粒子などが例示される。これらの耐ブロッキング剤は、ベース層Bにも使用できる。
【0032】
 添加剤として、2種以上の異なる耐ブロッキング剤を添加してもよく、また、同じ種類で且つ粒径が異なる粒子の混合物を添加してもよい。重縮合中のグリコール分散系または押出し中マスターバッチを介して個々の層に添加する粒子を所定量添加することも出来る。耐ブロッキング剤に関する詳細は欧州特許EP−A−0602964号公開公報に記載されている。
【0033】
 外層Cに添加する耐ブロッキング剤としては、SiO粒子(シリカ粒子)が好ましく、形状がコロイド状または鎖状であることが好ましい。
【0034】
 外層Cに含有される添加粒子の一次平均粒子径は、好ましくは60nm未満、より好ましくは55nm未満、特に好ましくは50nm未満、および/または、好ましくは1〜4μm、より好ましくは1.5〜3.5μm、特に好ましくは2.5〜3.0μmである。
【0035】
 高透明性および高グロスを達成するために、外層Cに含有される添加粒子の粒径分布に於て、SPAN98法で表される粒径分布(粒径dの偏位)が1.9未満であることが好ましい。
【0036】
 外層Cに含有される添加粒子の含有量は、特にフィルムの所望とする製造条件により、外層Cの重量を基準として、通常0.1〜0.5重量%、好ましくは0.15〜0.45重量%、より好ましくは0.2〜0.4重量%、特に好ましくは0.25〜0.35重量%である。添加粒子の種類、添加粒子の含有量、層の厚み及び各層の厚み比を適宜選択することにより、良好な光学的特性、フィルムの製造特性および加工特性を得ることが出来る。これらのパラメーターは、簡単な数回の予備実験により決定することが出来る。
【0037】
 外層C表面は、1mm当りの突起数をNc、突起の高さをh(μm)とした場合に以下の式(1)及び(2)を満足する。なお、突起は、平面の表面から突出した通常円すい形の形状を有する。
【0038】
【数3】



【0039】
 式(1)中、Ah1=0.05、Bh1=3.3、好ましくはAh1=0.624、Bh1=3.229、より好ましくはAh1=1.1、Bh1=3.0、特に好ましくはAh1=2.477、Bh1=2.22である。
【0040】
 1mm当りの突起数Nc及び突起の高さh(μm)は、下記式(3)及び(4)を満足することが好ましい。
【0041】
【数4】



【0042】
 式(3)中、Ah1=0.05、Bh1=3.3、Ah2=4.08、Bh2=1.5、好ましくはAh1=0.624、Bh1=3.229、Ah2=4.08、Bh2=1.5、より好ましくはAh1=1.1、Bh1=3.0、Ah2=4.08、Bh2=1.5、特に好ましくはAh1=2.477、Bh1=2.22、Ah2=4.08、B=1.5である。
【0043】
 外層C表面の表面形状を表す式(1)に於て、log10が左辺より小さい場合、フィルムの製造および加工特性が悪化し、ブロッキングが生じることがある。
【0044】
 外層A及びCの厚さは、通常0.6μm以上、好ましく0.6〜2.5μm、より好ましくは0.7〜2.3μm、よりさらに好ましくは0.8〜2.2μm、特に好ましくは0.9〜2.1μmである。外層A及びCの厚さは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
 本発明のフィルムの総厚さは、通常4〜50μm、好ましくは5〜45μm、特に好ましくは6〜40μmである。なお、ベース層Bの厚さが、フィルムの総厚さの5〜95%の範囲を占めることが好ましい。
【0046】
 本発明のフィルムの外層A表面のグロス(20°)は、通常190より大きく、好ましくは200より大きく、より好ましくは210より大きい。外層A表面の高グロスは、外層A表面上に形成する印刷層やメタル層にも反映され、外観に優れ、商品価値が向上する。本発明のフィルムの不透明度は、通常2.5%未満、好ましくは2.0未満、より好ましくは1.7未満である。
【0047】
 本発明のフィルムの外層A表面の表面粗度Raは、通常28nm以下、好ましくは25nm以下、より好ましくは21nm以下である。本発明のフィルムの外層C表面の表面粗度Raは、通常30〜150nm、好ましくは40〜123nm、より好ましくは50〜110nmである。本発明のフィルムの外層C表面のそれ自身に対する摩擦係数は、通常0.45未満、好ましくは0.42未満、より好ましくは0.39未満である。
【0048】
 本発明のフィルムは外層A上にアクリレート含有層Dが積層されている。アクリレート含有層Dを外層A上に積層することにより、ロール形成特性や、製造・加工特性が向上する。更に、CVD法やPECVD法によりアクリレート含有層D上に被覆層を形成した場合、ガスバリヤ性が更に向上する。
【0049】
 アクリレート含有層Dは、好ましくは1つ以上のアクリル系および/またはメタクリル系モノマーと分子間架橋能を有する共重合モノマーとの共重合体から成る。アクリレート含有層Dは、通常、外層A表面に上記共重合体の水分散体を塗布して形成される。塗布乾燥後のアクリレート含有層Dの厚さは、通常5〜2000nm、好ましくは10〜500nm、より好ましくは20〜200nmである。
【0050】
 塗布は、通常、インライン法(フィルム製造工程中に行われる)によって行われ、好ましくは横方向の延伸に先立って行われる。好ましくはリバースグラビュア−ロール法によって塗布することが好ましく、100nmの厚さまで極めて均一に塗布できる。より厚い塗布層を形成する場合は、メイヤーロッド法によって塗布するのが好ましい。詳細はDie Kunststoffe、Kunststoffhandbuch、Dr.Bod Carlowitz著、Hanser、1990に記載されている。
【0051】
 塗布液は、溶液、乳化液、分散液の何れであってもよく、水性塗布液が好ましい。アクリレート含有層Dを設けることにより、摩擦係数(COF)の低減、製造性の改良、ロール形成の改良、帯電防止効果の改良の他、他の特性を付与することが出来る。例えば、印刷性の向上、芳香のバリヤ性の改良、接着性の改良、写真用エマルジョン等の接着性の無い未被覆層との接着などの特性を付与できる。
【0052】
 アクリレート含有層Dは、通常、外層A表面または外層A及びC表面に、希釈溶液、乳化液、分散液から成る塗布液を塗布し、溶媒を蒸発させて形成される。横方向延伸に先立って塗布液をインラインコーティングする場合、横方向の延伸中の熱処理および後続する熱固定処理によって溶媒が蒸発し、乾燥した塗布層が形成される。
【0053】
 架橋部分を有するアクリル系および/またはメタクリル系の共重合体は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは50〜99重量%のアクリル系および/またはメタクリル系モノマー単位と、1〜15重量%の分子間架橋能を有する共重合モノマーとのモノマー単位とを含有する。分子間架橋能を有する共重合モノマーは、共重合された状態で加熱により架橋する能力を有し、その際、他の樹脂系架橋剤などを必要としない。なお、アクリレート含有層Dを構成する共重合体は、他のモノマー単位を含有していてもよい。
【0054】
 アクリル系および/またはメタクリル系モノマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、アルキルアクリル酸エステルまたはアルキルメタクリル酸エステルがより好ましい。アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル及びn−オクチル基などの炭素数10以下のアルキル基が好ましい。艶消し層や複写用の層をアクリレート含有層D上に設ける場合、低級アルキルアクリレート(C−C)、好ましくはエチルアクリレートと、低級アルキルメタクリレートとを共重合して得られるアクリル系共重合体をアクリレート含有層Dに使用すると、ポリエステルフィルムと艶消し層や複写用の層との接着性が良好となる。特に、エチルアクリレート又はブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとメチルメタクリレート等のアルキルメタクリレートとの共重合体が好ましく、そのアクリレート含有層D中の含有量は70〜95重量%であることが好ましい。この場合、アクリル系および/またはメタクリル系モノマー中のアクリル系モノマーの比率は好ましくは15〜65モル%、アクリル系および/またはメタクリル系モノマー中のメタクリル系モノマーの比率は好ましくは35〜85モル%であって、メタクリル系モノマーの比率がアクリル系モノマーの比率に比べて5〜20モル%上回っていることが特に好ましい。
【0055】
 アクリレート含有層Dは、アクリル系および/またはメタクリル系の共重合体は分子間架橋能を有する架橋部分を有する。そのため、アクリレート含有層Dは耐溶媒性を有する。架橋部分を形成するための分子間架橋能を有する共重合モノマーとしては、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド及びその誘導体であるエーテルモノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びアリルグリシジルエーテル等のエポキシモノマー;クロトン酸、イタコン酸およびアクリル酸などのカルボキシ含有モノマー;マレイン酸およびイタコン酸無水物などの酸無水物;アリルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド及びマレイミド等のアミド系モノマー;ビニルイソシアナート及びアリルイソシアナート等のイソシアナート系モノマー等が挙げられる。
【0056】
 加熱により縮合反応が生じ、架橋が形成出来る観点から、上記の分子間架橋能を有する共重合モノマーの中でもN−メチロールアクリルアミド及びN−メチロールメタクリルアミドが好ましい。また、特に優れた耐溶媒性が必要な場合には、架橋部分を有するアクリル系および/またはメタクリル系の共重合体以外に、耐溶媒性を付与するために、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物や尿素−ホルムアルデヒド縮合物などを添加してもよい。耐溶媒性が不要の場合、分子間架橋能を有する架橋部分を有する共重合モノマーを使用しなくてもよい。
【0057】
 具体的な塗布方法については、欧州特許出願公開第0144948号明細書(特に第5〜17頁)に記載されており、参照によりこの公開公報の内容を本願に含める。
【0058】
 アクリレート含有層Dは、外層A上(平坦表面を有するガスバリヤ性層側)に形成するが、必要に応じて外層C上に或いは、他の部分(例えば層間)に形成してもよい。なお、アクリレート含有層Dには、帯電防止剤、濡れ剤、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、染料、顔料、コロイダルシリカ等の耐ブロッキング剤などの公知の添加剤を含有させてもよい。ポリエステルフィルムの濡れ性を向上させ、水性塗布を容易にするために界面活性剤を含有させることが好ましい。
【0059】
 アクリレート含有層Dを積層した外層A側表面同士の摩擦係数は、アクリレート含有層Dを有しない外層A表面と比較して低く、通常0.6未満、好ましくは0.55未満、より好ましくは0.5未満である。本発明のフィルムは、外層A側表面同士の摩擦係数が低いことにより、製造特性、加工特性、ロール形成特性が優れる。
【0060】
 次いで、本発明のフィルムの製造方法を説明する。本発明のフィルムの製造方法は、溶融ポリマーを押出または共押出することにより溶融シートを得、積層シートを形成する工程と、得られた積層シートにアクリレート含有層を塗布により形成する工程と、塗布された積層シートを二軸延伸する工程し、積層フィルムを得る工程と、得られた積層フィルムを熱固定する工程とから成る。なお、得られた積層シートにアクリレート含有層を塗布により形成する工程は、二軸延伸工程に於ける長手方向延伸と横方向延伸の間に行われるのが好ましい。
【0061】
 先ず、ベースB及び2つの外層用の粒状ポリマー(外層は好ましくはPETから成る)を個々の押出し機に供給し、300℃に溶融する。押出しを行う前に、溶融ポリマーから不純物などを濾過する。多層ノズルを介して溶融ポリマーを押出または共押出することにより溶融シートを得、積層シートを形成し、冷却ロール又は他のロールによって引出し、冷却して積層シートを得る。
【0062】
 次いで、得られた積層シートを二軸延伸する。通常、二軸延伸は連続的に行われる。このため、初めに長手方向(長手方向)に延伸し、次いで横方向に延伸するのが好ましい。これにより分子鎖が配向する。通常、長手方向の延伸は、延伸比に対応する異なる回転速度を有するロールを使用して行われ、横手方向の延伸はテンターフレームを使用して行われる。
【0063】
 延伸時の温度は、所望とするフィルムの物性によって決定され、広い範囲で選択できる。フィルムのガラス転移温度(Tg)とすると、通常、長手方向の延伸は80〜130℃の温度で、横方向の延伸は80〜150℃温度で行われる。長手方向の延伸比は、通常3:1〜6:1、好ましくは3.5:1〜5.5:1である。横方向の延伸比は、通常3.0:1〜5.0:1、好ましくは3.5:1〜4.5:1である。
【0064】
 続いてフィルムの熱固定が150〜250℃の温度において0.1〜10秒間行われる。フィルムは冷却後、通常の方法で巻取られる。
【0065】
 本発明のフィルムの製造コストは、従来のポリエステルフィルムを製造するのに要するコストとほぼ同等またはわずかに高いだけであり、本発明のフィルムの加工や使用における他の物性は、基本的に変化しないか或いは改良されている。本発明のフィルムは、再生原料(例えば、製造工程において発生するフィルム端材)をフィルムの重量に対して、通常60重量%以下、好ましくは10〜50重量%、好ましくはベース層Bに含有させることができる。再生原料の添加によって、本発明のフィルムの物性に影響を受けることはない。
【0066】
 本発明のフィルムは、空気および/または光に対して劣化しやすい食品または物品の包装材に好適に使用できる。特にコーヒー(特に挽いたコーヒー粉)、お茶、スパイス等の包装材として好適である。
【0067】
 CVD法またはPECVD法により、本発明のフィルムの外層A表面上に被覆層を形成したフィルムは高酸素ガスバリヤ性を有する。本発明のフィルムの外層A表面上は高グロスであり、本発明のフィルムは高透明性を有する。また、本発明のフィルムは良好な巻取り特性、製造特性および加工特性を有する。更に、本発明のフィルムは、アクリレート含有層Dを有しない他のフィルムと比較して帯電防止性が極めて優れている。本発明のフィルムに於てアクリレート含有層Dを架橋処理すると、印刷、特にニトロセルロース染料による印刷に優れる。
【0068】
 CVD法またはPECVD法により、本発明のフィルムの外層A表面上に被覆層を形成したフィルムの酸素ガス透過度は、通常3.0cm/(mbar・d)未満、好ましくは2.5cm/(mbar・d)未満、より好ましくは2.0cm/(mbar・d)未満である。
【0069】
 本発明のフィルムは、上記のCVD法またはPECVD法により、プラズマ重合されたヘキサメチルジシロキサン又はメタンが外層A上に被覆することが出来る。その方法については、1993年7月9日に福井市で開催された、Research of Polymerized Compound Surfaces学会に於ける、R.J.Nelson著、「AIRCO Coating Technology」に記載されている。
【0070】
 本発明のフィルムの特性を、表1に纏めて示す。
【0071】
【表1】



【実施例】
【0072】
 以下本発明を実施例により更に詳細に説明する。以下にポリマー及びフィルムの評価方法について示す。なお、以下の評価方法において、DINはDeutsches Institut Normung、ISOはInternational Organization for Standardizationをそれぞれ表す。
【0073】
 (1)酸素ガス遮断性(酸素ガス透過度):
 酸素ガス透過度は、米国Mocon Modern Controls社製OX−TRAN 2/20を使用し、DIN53380、Part3に準じて測定した。
【0074】
 (2)標準粘度SV、固有粘度IV:
 ポリエステルの標準粘度SV(DCA)はジクロロ酢酸中25℃でDIN 53726に従って測定した。ポリエステルの固有粘度IVは、標準粘度SV値を使用して以下の式より算出した。
【0075】
【数5】



【0076】
 (3)摩擦係数:
 摩擦係数は、製造後14日後に、DIN 53375に準じて測定した。摩擦係数が1を超えた場合または摩擦力を計測した際の摩擦力の変化が不連続になった場合にブロッキングが生じるとした。
【0077】
 (4)不透明度:
 フィルムの不透明度(ヘーズ)は、ASTM−D 1003−52に準じて測定した。ヘルツ不透明度は、ASTM−D 1003−52を基にして決定した。しかしながら、もっとも効果的な測定範囲を使用するために、4枚のフィルムを重ね、1°の隔壁スリットを4°のピンホールの代りに使用して測定を行った。
【0078】
 (5)グロス値:
 グロス値はDIN 67530に準じて測定した。反射率を、フィルム表面の光学的特性として測定した。ASTM-D 523−78及びISO 2813を基準とし、入射角を20°又は60°とした。所定の入射角で試料の平坦な表面に光線を照射すると、反射および/または散乱が起こる。光電検知器に当った光が電気的な比率変数として表示される。得られた無次元値は入射角と共に表示される。
【0079】
 (6)フィルム表面の粒子の大きさの測定:
 フィルム表面の突起の大きさ及び分布は走査型電子顕微鏡(SEM)及びその画像解析によって決定した。SEMとしては、積分式画像解析プログラム(Soft−Imaging System)が付随したフィリップス社製走査型電子顕微鏡XL30CPを使用した。
【0080】
 まず、試料ホルダーに試料フィルムを設置する。水平面から角度αの方向から金属蒸着(例えば銀)を行い金属層を蒸着する。金属蒸着の方向から見て突起の背後に影が生じる。影の部分には金属層が無いので導電性が無い。次に第2のスパッタリング(例えば金)を試料に対して垂直方向から行う。第2のスパッタリングに於ては影が生じない。
【0081】
 SEM画像は以下の様にして得る。金属蒸着を2段階で行っているため、突起の影を肉眼で認めることが出来る。影が像の一つの端に対して平行になるようににSEM中の試料を配置する。SEMの測定条件は、第2電子検知器を使用し、操作距離は10mm、加速電圧は10kV、スポットは4.5の条件で行った。輝度およびコントラストは以下の様に設定した。バックグランドノイズを影として検知しないようにすべての情報をグレー値として表した。影の長さを画像によって測定した。影として認識されるしきい値は、原点を通る画像のグレー値分布に由来する点である。影として認識する前に、画像をN×Nフィルターを透過させる(サイズ3、1繰り返し)。画像中に完全に再現されていない突起を含まない様にするために枠(フレーム)を設ける。フィルムの表面の0.36mmの面積の範囲内について評価する様にフレームを設け、この範囲内で突起の数等について評価した。
【0082】
 突起の高さh(μm)は影の長さL(μm)と第1のスパッタリングの角度αを使用して以下の式より算出できる。
【0083】
【数6】



【0084】
 0〜1mmの範囲で0.05mm刻みで突起の高さを分類し、突起の高さ分布(頻度分布)を作成した。但し、1番小さい突起の高さの分類(0〜0.05mm)については計算に使用しなかった。突起の直径(投影方向と垂直)についても同様の方法で0〜10mmの範囲で0.2mm刻みで分類した。1番小さい突起の直径の分類については計算に使用しなかった。
【0085】
(7)表面粗度Ra:
 フィルムの表面粗度RaはDIN 4768に準じて測定した。カットオフ値は0.25mmであった。
【0086】
(8)平均粒径d50
 平均粒径d50はMalvern Master Sizerを使用したレーザーによる一般的な方法で測定した(Horiba LA 500又はSympathecHelos装置でも基本的に同一の測定である)。水を入れたセルにサンプルを入れ、試験装置にセットする。試験は自動的に行われ、粒径d50の数学的な計算も一緒に行われる。粒径d50の値は、累積粒径分布曲線から決定し、50%における横軸の値を粒径d50とした。
【0087】
(9)SPAN98の測定:
 粒径分布を示すSPAN98は、上記のメジアン粒径d50の測定で使用した装置を使用して測定した。SPAN98は以下の式で表される。d98及びd10は、それぞれ、累積粒径分布曲線の98%および10%における横軸の値(粒径)である。
【0088】
【数7】



【0089】
 実施例1:
 ポリエチレンテレフタレートチップ(マンガンをエステル交換反応の触媒として使用し、エステル交換反応にて製造、マンガン濃度:100ppm)を160℃で乾燥し、含有水分量を50ppm未満にした後、ベース層B用の押出機に供給した。
【0090】
 別に、ポリエチレンテレフタレートチップ(マンガンをエステル交換反応の触媒として使用し、エステル交換反応にて製造、マンガン濃度:100ppm)を160℃で乾燥し、含有水分量を50ppm未満にした後、外層A及びC用の押出機に供給した。外層Aには添加粒子を添加しなかった。外層Cには添加粒子を添加した。各層の構成を以下に示す。
【0091】
【表2】



【0092】
 各層を共押出した後、得られたシートを長手方向および横方向に延伸し、熱固定を行ない、厚さ12μmのABC型3層透明積層フィルムを得た。フィルムの製造条件を以下に示す。
【0093】
【表3】



【0094】
 なお、長手方向と横方向の延伸の間にアクリレート含有層Dの形成を行なった。すなわち、長手方向の延伸の後に、60重量%のメチルメタクリレートと35重量%のエチルアクリレートと5重量%のN−メチロールアクリルアミドとから成る共重合体ラテックスの4.5重量%水分散液を外層A上に塗布し、次いで横方向の延伸を行った。塗布はリバースグラビュア−ロール法により行なった。アクリレート含有層Dの乾燥厚みは、約50nmであった。
【0095】
 得られた積層フィルムの外層A側(アクリレート含有層D上)に、工業用プラズマ増強化学蒸着コーターを使用し、減圧下でヘキサメチルジシロキサンのプラズマ重合を行なうことによりSiO被覆を形成した。被覆速度は5m/秒、SiO被覆層の厚さは30nmであった。
【0096】
 得られた被覆フィルムは高い酸素ガスバリヤ性(酸素ガス低透過率)を示した。フィルムの構成および特性について表4及び表5に示す。
【0097】
 実施例2:
 実施例1に於て外層Cの構成を以下の表に示す様に変更した以外は、実施例1と同様の操作により厚さ12μmのABC型3層透明積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの外層A側(アクリレート含有層D上)に、実施例1と同様にSiO被覆を形成した。フィルムの構成および特性について表5及び表6に示す。
【0098】
【表4】



【0099】
 比較例1:
 欧州特許出願公開第0514129号明細書の実施例1を追試した。得られたフィルムの厚さは75μmであり、実施例1と同様の操作によりSiO被覆を形成した。しかしながら、酸素ガスバリヤ性およびフィルムのグロスは不十分であった。フィルムの構成および特性について表5及び表6に示す。
【0100】
 比較例2:
 欧州特許出願公開第0604057号明細書の実施例1を追試した。得られたフィルムの厚さは60μmであり、実施例1と同様の操作によりSiO被覆を形成した。しかしながら、酸素ガスバリヤ性およびフィルムのグロスは不十分であった。フィルムの構成および特性について表5及び表6に示す。
【0101】
【表5】



【0102】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
 80%以上の熱可塑性ポリエステルから成るベース層Bと熱可塑性樹脂から成る外層A及び外層Cと外層A表面上に積層されているアクリレート含有層Dとから成る二軸延伸ポリエステルフィルムであって、外層Aは実質的に添加粒子を含有せず、外層A表面は平坦であって、外層Cは添加粒子を含有し、外層C表面は、1mm当りの突起数をNc、突起の高さをh(μm)とした場合に以下の式(1)及び(2)を満足することを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。
【数1】



【請求項2】
 ベース層Bを構成する熱可塑性ポリエステルが、エチレンテレフタレート単位および/またはエチレン−2,6−ナフタレート単位から成る請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
 ベース層Bがポリエチレンテレフタレートから成る請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
 外層Aが添加粒子を含有しない請求項1〜3の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
 外層Cに含有される添加粒子が耐ブロッキング剤または顔料である請求項1〜4の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項6】
 耐ブロッキング剤がSiO粒子である請求項5に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項7】
 外層Cに含有される添加粒子の一次平均粒子径が60nm未満および/または1〜4μmである請求項1〜6の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項8】
 外層Cに含有される添加粒子の含有量が外層Cの重量を基準として0.1〜0.5重量%である請求項1〜7の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項9】
 アクリレート含有層Dが、1つ以上のアクリル系および/またはメタクリル系モノマーと分子間架橋能を有する共重合モノマーとの共重合体から成る請求項1〜8の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項10】
 アクリレート含有層Dが、外層A表面に共重合体の水分散体を塗布して形成される請求項9に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項11】
 外層A表面のグロス(20°)が190より大きく、外層A表面の表面粗度Raが28nm以下である請求項1〜10の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項12】
 D−A−B−C4層構造を有する請求項1〜11の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項13】
 化学蒸着法またはプラズマ化学蒸着法によってアクリレート含有層D上を被覆した場合、酸素ガス透過度が3cm/(mbar・d)未満である請求項1〜11の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項14】
 プラズマ重合されたヘキサメチルジシロキサン又はメタンがアクリレート含有層D上に被覆されている請求項1〜13の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項15】
 請求項1〜14の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、溶融ポリマーを押出または共押出することにより溶融シートを得、積層シートを形成する工程と、得られた積層シートにアクリレート含有層を塗布により形成する工程と、塗布された積層シートを二軸延伸する工程し、積層フィルムを得る工程と、得られた積層フィルムを熱固定する工程とから成る二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項16】
 請求項1〜14の何れかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルムから成る空気および/または光に対して劣化しやすい食品または物品の包装材。

【公開番号】特開2004−130812(P2004−130812A)
【公開日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−353864(P2003−353864)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願人】(596099734)ミツビシ ポリエステル フィルム ジーエムビーエイチ (29)
【Fターム(参考)】