説明

二軸延伸中空容器

【課題】ガスバリア性に優れ、かつ透明性、色調を改善したポリエステル系樹脂組成物からなる二軸延伸中空容器を提供する。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合して得たポリエステル樹脂(A)と、メタキシリレンジアミンとアジピン酸を主成分として重縮合して得たポリアミド樹脂(B)からなるポリエステル樹脂組成物(C)を射出成形して得られるパリソンであって、該パリソンの胴部におけるポリエステル樹脂組成物中のポリアミド樹脂(B)の分散粒子径が特定範囲に制御されている二軸延伸中空容器用パリソン、ならびに該パリソンを二軸延伸ブロー成形してなる二軸延伸中空容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂からなる樹脂組成物からなる二軸延伸中空容器に関する。詳しくは、ポリエステル樹脂のみでは不十分であったガスバリア性を改善しつつ、従来問題であった色調や透明性を改善することが可能なポリエステル樹脂組成物からなる二軸延伸中空容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジカルボン酸化合物と脂肪族ジオール化合物をモノマーとして使用して得られるポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等に代表されるポリエステル樹脂は、透明性、機械的性能、溶融安定性、耐溶剤性、保香性、リサイクル性等に優れるという特長を有している。そのため、芳香族ポリエステル樹脂は、フィルム、シート、中空容器等の各種包装材料に広く利用されている。しかしながら、ポリエステル樹脂は酸素、炭酸ガス等に対するガスバリア性が必ずしも十分ではないため、ポリエステル樹脂からなる包装容器の利用範囲には制限があった。ポリエステル樹脂のガスバリア性を改善する手段としては、酸化アルミニウムや酸化珪素をポリエステル樹脂からなる成形体や包装容器に蒸着したり、あるいはポリエステル樹脂よりも高いガスバリア性能を有する樹脂をポリエステル樹脂からなる成形体や包装容器に塗布あるいは積層する等の手段が挙げられるが、複雑な製造工程を必要としたり、リサイクル性や機械的性能が損なわれる等の問題点があるため、その利用範囲は限定されたものであった。
【0003】
上記のような問題を解決しつつ、ポリエステル樹脂のガスバリア性を改善する手段として、高いガスバリア性を有する熱可塑性樹脂をポリエステル樹脂に溶融混合する方法が挙げられる。高いガスバリア性を有する樹脂の一つとしてエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂が挙げられるが、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂は、その分子構造の特徴からポリエステル樹脂との相溶性に乏しく、両樹脂を混合してなる樹脂組成物は白濁し、ポリエステル樹脂の特徴である透明性を損なう欠点があった。またエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂はポリエステル樹脂と比較して結晶性が高いため、ポリエステル樹脂の延伸性を損なう傾向にあり、二軸延伸フィルムやブローボトル等の延伸工程を必須とする包装容器への利用は困難であった。さらにポリエステル樹脂における最適な加工温度では、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂は急激に熱劣化する傾向にあるため、ポリエステル樹脂の加工安定性を損なう等の問題点があった。
【0004】
エチレン−ビニルアルコール共重合体以外のガスバリア性樹脂としては、ナイロン6,ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂が挙げられるが、とりわけメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分とアジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分とを重合して得られるポリメタキシリレンアジパミドはガスバリア性に優れるポリアミド樹脂であり好適である。ポリメタキシリレンアジパミドは他のポリアミド樹脂と比較して高いガスバリア性を有する上に、ポリエステル樹脂の中でも特に広く利用されているポリエチレンテレフタレート樹脂とガラス転移温度、融点、結晶性が近似していることから、ポリエステル樹脂の加工安定性を損なうことがない。このことから、ポリエステル樹脂のガスバリア性を改善するための材料として、ポリメタキシリレンアジパミドは非常に適した樹脂であるといえる。
【0005】
これまでに、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステル樹脂にポリアミド樹脂を含有させたガスバリア性の優れた中空成形体が提案されているが、当該発明は単にポリアミド樹脂によりガスバリア性の改善を提案したものであり、色調や透明性の改善に関する記載は一切されていない(特許文献1参照。)。また、予めテトラカルボン酸二無水物と混合したポリエステル樹脂に、溶融状態でポリアミド樹脂を添加、混合することで、ポリアミドを微分散させ、高いガスバリア性を有する容器を得る方法が提案されているが、当該発明はポリエステル樹脂の溶融粘度を高めることによりポリアミド樹脂を微分散させたものであり、実質的に本発明とは異なるものである(特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開昭58−160344号公報
【特許文献2】特開2000−34357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を解消し、ガスバリア性に優れ、かつ透明性、色調を改善したポリエステル系樹脂組成物からなる二軸延伸中空容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題の解決方法について鋭意検討した結果、ポリエステル樹脂とメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂を混合して得られたポリエステル樹脂組成物を用いて二軸延伸中空容器を得るにあたり、特定の射出成形方法で前駆体(以下、パリソンと略すことがある)を成形することにより上記課題を解決し得ることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明はジカルボン酸構成単位の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオール構成単位の70モル%以上が脂肪族ジオールに由来するポリエステル樹脂(A)80〜99重量%と、ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、かつジカルボン酸構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂(B)1〜20重量%(重量%の合計は100重量%である)を混合したポリエステル樹脂組成物(C)を射出成形して得られるパリソンであって、該パリソンの胴部の任意の面積におけるポリエステル樹脂組成物中のポリアミド樹脂(B)の分散粒子の平均径が0.05〜0.20μmであり、かつ、該分散粒子の60%以上が該平均径を中心として±0.05μmの範囲内にあることを特徴とする二軸延伸中空容器用パリソン、ならびに該パリソンを二軸延伸ブロー成形してなる二軸延伸中空容器に関する。
【0009】
また、本発明は、ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオールに由来する構成単位の70モル%以上が脂肪族ジオールに由来するポリエステル樹脂80〜99重量%と、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、かつジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂1〜20重量%(重量%の合計は100重量%である)を混合したポリエステル樹脂組成物を
下記(a)〜(e)の条件:
(a)樹脂温度:260〜290℃
(b)スクリュー背圧:2.5〜5.0MPa
(c)スクリュー回転数:80〜250rpm
(d)射出速度:80〜180cc/sec
(e)金型温度:10〜25℃
で射出成形することを特徴とする二軸延伸中空容器用パリソンの製造方法、ならびに該製造方法で得られたパリソンを二軸延伸ブロー成形することを特徴とする二軸延伸中空容器の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガスバリア性に優れ、かつ透明性、色調を改善したポリエステル系樹脂組成物からなるパリソン、二軸延伸中空容器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明について詳しく説明する。本発明で用いられるパリソンあるいは二軸延伸中空容器を構成するポリエステル樹脂組成物(C)は、ポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)からなる。
【0012】
本発明で使用するポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオール構成単位(ジオールに由来する構成単位)の70モル%以上が脂肪族ジオールに由来するポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂(A)は、テレフタル酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分および脂肪族ジオールを70モル%以上含むジオール成分を重縮合して得られる。ジカルボン酸成分中に占める芳香族ジカルボン酸の割合は70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。ポリエステル樹脂(A)は、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4' −ビフェニルジカルボン酸、3,4’−ビフェニルジカルボン酸等およびこれらのエステル形成性誘導体が例示できる。これらの中でもテレフタル酸を使用することが好ましい。また、テレフタル酸と他の芳香族ジカルボン酸を併用する場合にはイソフタル酸が好ましく用いられる。イソフタル酸を併用する場合、その割合はジカルボン酸成分の1〜10モル%、好ましくは1〜8モル%、更に好ましくは1〜6モル%である。イソフタル酸をジカルボン酸として上記に示した量を添加して得た共重合樹脂は結晶化速度が遅くなり、成形性を向上させることが可能となる。更に、本発明の目的を損なわない範囲でアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸を用いることができる。
【0014】
ジオール成分中に占める脂肪族ジオールの割合は70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。
前記脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等およびこれらのエステル形成性誘導体が例示できる。これらの中でもエチレングリコールを使用することが好ましい。更に、本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール等のモノアルコール類や、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類を用いることもできる。
【0015】
ポリエステル樹脂(A)の製造には、公知の方法である直接エステル化法やエステル交換法を適用することができる。ポリエステル樹脂(A)の製造時に使用する重縮合触媒としては、公知の三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、酢酸チタン等のチタン化合物、塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物等が例示できるが、これらに限定されない。
【0016】
好ましいポリエステル樹脂(A)としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキレート樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート−テレフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−テレフタレート−4,4' −ビフェニルジカルボキシレート樹脂、ポリ−1,3−プロピレン−テレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂等が挙げられる。より好ましいポリエステル樹脂(A)としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂が挙げられる。
【0017】
ポリエステル樹脂(A)の水分率は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。この場合、ポリエステル樹脂を乾燥し上記水分率として用いてもよい。水分率が上記範囲内であると、溶融混合工程においてポリエステルが加水分解して分子量が極端に低下することがない。
【0018】
ポリエステル樹脂(A)の固有粘度(フェノール/1,1,2,2,−テトラクロロエタン=60/40質量比混合溶媒中、25℃で測定した値)には、特に制限はないが、通常0.5〜2.0dl/g、好ましくは0.6〜1.5dl/gであることが望ましい。固有粘度が0.5dl/g以上であるとポリエステル樹脂(A)の分子量が充分に高いために、これを使用して得られるポリエステル樹脂組成物(C)からなる成形体や包装容器が構造物として必要な機械的性質を発現することができる。
【0019】
本発明において用いるポリアミド樹脂(B)は、ジアミン構成単位(ジアミンに由来する構成単位)の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、かつジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の70モル%以上がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂である。ポリアミド樹脂(B)は、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分およびアジピン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分を重縮合することにより得られる。上記のようなモノマー組成及び構成単位を有するポリアミド樹脂はポリエチレンテレフタレート樹脂のようなポリエステル樹脂と成形加工性が近似するため、ポリエステル樹脂組成物(C)の加工性を損なわないので有利である。ポリアミド樹脂(B)は、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ポリアミド樹脂(B)は、メタキシリレンジアミンに由来する構成単位が70モル%以上であることが必要であり、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。メタキシリレンジアミンに由来する構成単位が70モル%未満であると、ポリアミド樹脂の優れたガスバリア性が不十分になる。メタキシリレンジアミン以外に使用できるジアミンとしては、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
ポリアミド樹脂(B)は、アジピン酸に由来する構成単位が70モル%以上であることが必要であり、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。アジピン酸に由来する構成単位が70モル%未満であると、ガスバリア性の低下や結晶性の過度の低下が生じる。アジピン酸以外に使用できるジカルボン酸として、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。また、ポリアミド樹脂(B)製造のための重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。
【0022】
ポリアミド樹脂(B)は、溶融状態での重縮合反応(以下、「溶融重縮合」と記すことがある)により製造することが好ましい。例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とからなるナイロン塩を水の存在下に、加圧法で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造することが好ましい。また、メタキシリレンジアミンを溶融状態のアジピン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によって製造してもよい。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、メタキシリレンジアミンをアジピン酸に連続的に加え、その間、反応温度が、生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合を進行させることが好ましい。なお、ポリアミド樹脂(B)については必要に応じて溶融重縮合により得られたものをさらに固相重合することにより分子量を高めることもできる。
【0023】
ポリアミド樹脂(B)には、溶融成形時の加工安定性を高めるため、あるいはポリアミド樹脂の着色を防止するためにリン化合物が含まれていても良い。リン化合物としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むリン化合物が好適に使用され、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のリン酸塩、次亜リン酸塩、亜リン酸塩が挙げられ、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を使用したものがポリアミドの着色防止効果に特に優れるため好ましく用いられる。ポリアミド樹脂(B)中のリン化合物の濃度は、リン原子として200ppm以下が好ましく、160ppm以下がより好ましく、100ppm以下が更に好ましい。ポリアミド樹脂(B)中のリン原子濃度が200ppm以下であると、アンチモン系触媒を利用して製造されたポリエステル樹脂と溶融混合する際に、ポリエステル樹脂中にわずかに残存するアンチモン系触媒の還元に起因する黒ずみが防止される。なおポリアミド樹脂(B)には上記のリン化合物の他に本発明の効果を損なわない範囲で滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、その他の添加剤を加えることもできる。
【0024】
ポリアミド樹脂(B)の水分率は0.15重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以下である。この場合、ポリアミド樹脂を乾燥し上記水分率として用いてもよい。水分率が0.15重量%以下であると、ポリエステル樹脂(B)との溶融混合時にポリアミド樹脂(B)から発生する水分によって生じるポリエステル樹脂(B)の加水分解を抑制することができる。ポリアミド樹脂(B)を乾燥する場合は、公知の方法により行うことができる。例えば、ポリアミド樹脂(B)を真空ポンプ付きの加熱可能なタンブラー(回転式真空槽)中や減圧乾燥機中に仕込み、減圧下でポリマーの融点以下、好ましくは160℃以下の温度で加熱して乾燥する方法、ベント付きの押出機でポリアミド樹脂を溶融押出する際にベント孔を減圧にすることでポリマー中の水分を除去する方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
本発明で用いるポリエステル樹脂組成物(C)におけるポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の配合割合は、ポリエステル樹脂(A)80〜99重量%、ポリアミド樹脂(B)1〜20重量%(重量%の合計は100重量%)が好ましく、より好ましくはポリエステル樹脂(A)90〜99重量%、ポリアミド樹脂(B)1〜10重量%である。
さらに、本発明で用いるポリエステル樹脂組成物(C)には、前記ポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)に加え、多価カルボン酸化合物(D)をポリアミド樹脂(B)100重量部に対して0.05〜2重量部の割合で使用しても良い。
【0026】
本発明に用いる多価カルボン酸化合物(D)は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族または脂環族化合物あるいはそのカルボキシル基が無水基を形成しているものである。即ち、多価カルボン酸化合物(D)は、芳香族3価カルボン酸、脂環族3価カルボン酸、芳香族2価カルボン酸、脂環族2価カルボン酸および前記カルボン酸の酸無水物からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸化合物からなる。なお、前記酸無水物は分子内酸無水物である。
【0027】
多価カルボン酸化合物(D)としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、アントラセンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ビフェニルジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ベンゾフェノンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、シクロヘキサンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ヘミメリット酸およびその無水物、トリメシン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸およびその無水物、1,2,3−シクロヘキサントリカルボン酸およびその無水物、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、アントラセントリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ビフェニルトリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ベンゾフェノントリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物等が挙げられる。多価カルボン酸化合物(D)は、2種以上を併用してもよい。中でも、フタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸および無水トリメリット酸が好ましく、無水フタル酸、トリメリット酸および無水トリメリット酸がより好ましく、無水フタル酸および無水トリメリット酸が更に好ましく、無水トリメリット酸が特に好ましい。
【0028】
多価カルボン酸化合物(D)の混合比としては、ポリアミド樹脂(B)100重量部に対して0.05〜2重量部とすることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1重量部である。多価カルボン酸化合物(D)の重量比が0.05〜2重量部の場合、成形性を損なわず透明性良好な成形品を得ることができる。
【0029】
本発明で用いるポリエステル樹脂組成物(C)は、ポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)(および多価カルボン酸化合物(D))を混合することで得られる。ポリエステル樹脂組成物(C)を製造する方法としては、特に限定されないが、従来公知の方法により混合される。例えば、ポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)(および多価カルボン酸化合物(D))とをタンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドしたもの、さらにドライブレンドした混合物を一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で1回以上溶融混合したもの、さらには必要に応じて溶融混合物を高真空下または不活性ガス雰囲気下で固相重合したものなどが挙げられるが、これらのなかでも、本発明では特に真空ポンプ−ベント付きの二軸押出機やエクストルーダー等の装置が好ましく使用される。
【0030】
ポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)(および多価カルボン酸化合物(D))混合順序には特に制約はない。例えば、ポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)(および多価カルボン酸化合物(D))を配合して同時に溶融混合する方法でもよいし、ポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)(および多価カルボン酸化合物(D))を配合して同時に溶融混合してポリエステル樹脂組成物(C’)を得た後に、更にポリエステル樹脂組成物(C’)とポリエステル樹脂(A)を混合してポリエステル樹脂組成物(C)を得るマスターバッチ方式でもよい。
【0031】
またポリエステル樹脂(A)は溶融混合する前に樹脂中の水分率(カールフィッシャー電量滴定法により、融点温度で30分の気化条件で水分量を測定した値)を400ppm以下、好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下に乾燥させておくことが望ましい。水分率が400ppmを超えるポリエステル樹脂を使用すると、溶融混合工程においてポリエステルが加水分解して分子量が著しく低下するため好ましくない。
【0032】
また、本発明で用いるポリエステル樹脂組成物(C)には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂、具体的にはポリエチレンナフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン−6IT、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン等が配合されていてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエステル樹脂および/またはポリアミド樹脂、またはそれらの溶融混合物等のリサイクル樹脂が配合されていてもよい。また、顔料、染料、カーボンブラック、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、ポリアミド樹脂のゲル化防止を目的としたアルカリ化合物等の添加剤を加えることもできる。
【0033】
本発明で用いるポリエステル樹脂組成物(C)は、特定の条件で射出成形することにより、得られるパリソン中のポリアミド樹脂の分散粒子径を小さくすることができる。また、該パリソンを二軸延伸ブロー成形して得られる二軸延伸中空容器は良好な透明性を示す。
【0034】
本発明の二軸延伸中空容器は、上記ポリエステル樹脂組成物(C)を射出シリンダーから金型ホットランナーを通して、射出成形機の金型キャビティ内に射出してパリソンを得、該パリソンを更に二軸延伸ブロー成形することにより得られる。
【0035】
本発明の二軸延伸中空容器の前駆体であるパリソンを得るための射出成形条件は、下記(a)〜(e)の条件を満たすことが好ましい。
(a)樹脂温度:260〜290℃
(b)スクリュー背圧:2.5〜5.0MPa
(c)スクリュー回転数:80〜250rpm
(d)射出速度:80〜180cc/sec
(e)金型温度:10〜25℃
【0036】
前記射出条件は、射出成形装置の計器に示す値である。射出成形装置に計器が設置されていない場合は、射出成形機の仕様と射出成形時の各設定値から算出することもできる。
【0037】
上記条件で成形されたパリソンは、ポリエステル樹脂組成物中のポリアミド樹脂(B)の分散粒子径が小さく、かつ、分散粒径のばらつきが少なく、従って二軸延伸中空容器の透明性が良好となる。該パリソンの胴部の任意の面積におけるポリエステル樹脂組成物中のポリアミド樹脂(B)の分散粒子の平均径は0.05〜0.20μmであることが好ましい。また、該分散粒子の60%以上がその平均径を中心として±0.05μmの範囲内にあることが好ましい。
【0038】
ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリアミド樹脂(B)の分散粒子径は主に計量時および射出時の条件がそれぞれ影響する。すなわち、計量時にスクリューの背圧を高く、スクリュー回転数を速くすることで溶融樹脂の混練が進み分散粒子径が小さくなる。また、射出速度を速くすることで溶融樹脂に剪断がかかり分散粒子径が小さくなる。しかし、射出速度を速くするだけでは分散粒子径の平均値が小さくなるだけで、その中には比較的大きい分散粒子径のポリアミド樹脂も含まれる。一方、計量時に、背圧を高くし、スクリュー回転数を上げるだけでは、均一な分散粒子径が得られるが、射出速度を速くした場合と比べて、平均分散粒子径が大きい。従って、スクリュー回転数、背圧、射出速度をうまく組み合わせることによって、ポリアミド樹脂(B)の分散粒子径を均一に小さくすることができる。
【0039】
射出成形条件(a)〜(e)は、成形する樹脂の溶融粘度等に合わせて適宜選択することができる。
【0040】
樹脂温度が260〜290℃であると、パリソンに未溶融物が析出したり透明性が低下したりすることを防ぐことができる。また、パリソンの黄色化を抑制し、二軸延伸中空容器の外観の悪化を防ぐことができる。金型温度が10℃〜25℃であると、パリソンの結晶化に起因する外観の悪化を防ぐことができる。また、二軸延伸中空容器の透明性がよくなる。
【0041】
得られたパリソンを二軸延伸中空容器に成形する方法は、一般的なブロー成形機を用いればよい。
【0042】
例えば、二軸延伸ブロー成形機を用いて、遠赤外ヒーターで15秒〜4分程度加熱してパリソンの表面温度を90〜120℃にし、ストレッチロッドおよび0.5〜3.5MPaの圧力でブロー成形することにより得られる。
【0043】
このようにして得られた二軸延伸中空容器は、ガスバリア性に優れ、かつ色調、透明性に優れたものであり、例えば、炭酸飲料、ジュース、水、牛乳、日本酒、ウイスキー、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし、マヨネーズ、味噌、すり下ろし香辛料等の調味料、ジャム、クリーム、チョコレートペースト等のペースト状食品、液体スープ、煮物、漬物、シチュー等の液体加工食品に代表される液体系食品やそば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺、精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類や調理された炊飯米、五目飯、赤飯、米粥等の加工米製品類、粉末スープ、だしの素等の粉末調味料等に代表される高水分食品、乾燥野菜、コーヒー豆、コーヒー粉、お茶、穀物を原料としたお菓子等に代表される低水分食品、その他農薬や殺虫剤等の固体状や溶液状の化学薬品、液体及びペースト状の医薬品、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー、石鹸、洗剤等、種々の物品を収納することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例、比較例によって本発明を具体的に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例で採用した評価法は以下の通りである。
【0045】
(1)ポリエステル樹脂の固有粘度
ポリエステル樹脂0.5gを精秤し、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(=6/4重量比)混合溶媒100mlに120℃で攪拌溶解し、濃度0.5g/dlの溶液を得た。冷却後、当該原液を同溶媒にて希釈し、1/2希釈溶液(濃度0.25g/dl)および1/5希釈溶液(濃度0.1g/dl)を得た。その後、25℃での各溶液の落下時間:tcおよび溶媒の落下時間toを自動粘度測定装置((株)柴山科学器械製作所製SS−600−L1)にて測定し、比粘度ηspと濃度Cの比:ηsp/Cの濃度をゼロに外捜することで固有粘度を求めた。
比粘度ηsp=(tc/to)−1
固有粘度[η]=limC→0(ηsp/C)
【0046】
(2)相対粘度
ポリアミド1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5ccを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下速度(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下速度(t0 )も同様に測定した。tおよびt0 から次式(イ)により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0 (イ)
【0047】
(3)曇価(Haze)
JIS K−7105に準じた。測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)を使用した。
【0048】
(4)分散粒子径測定(透過型電子顕微鏡観察)
ウルトラミクロトーム(Boeckeler Instruments製CR−X Power Tome XL)を用いて、ボトル(パリソン)胴部からMD(縦)方向に垂直に厚み約0.1μmの観察用超薄片を切り出した。ポリアミドを塩化ルテニウム蒸気にて染色した後、銅メッシュ上で電子顕微鏡観察した。
観察条件
電子顕微鏡:日立製、表面観察型電子顕微鏡S4800
加速電圧:30kV
電流:10mA
測定倍率:25,000倍
測定モード:TEM
染色されたポリアミドの濃淡により、分散状態を観察し平均分散粒子径を求めた。
【0049】
<実施例1>
ポリエステル樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(Invista社製、グレード:1101E、固有粘度0.80dl/g)の乾燥したペレット80重量部に対し、ポリアミド樹脂(B)としてポリメタキシリレンアジパミド(三菱ガス化学(株)社製MXナイロン、グレードS6007、相対粘度2.65)20重量部をタンブラーにより混合したものを、二軸押出機を用いて押出機温度280℃、押出速度15kg/hの条件で、かつシリンダー内を真空ポンプで減圧しながら押出を行い、押し出されたストランドをペレタイズしてペレット化した。次いで、ペレットを150℃、6時間の条件で真空乾燥して、溶融混合したポリエチレンテレフタレート樹脂組成物(予備マスターバッチ)を得た。
この予備マスターバッチペレット25重量部とポリエチレンテレフタレート樹脂(グレード1101E、固有粘度0.80dl/g)の乾燥したペレット75重量部をドライブレンドしこの混合物を射出成形装置((株)名機製作所製 M200PDM−MJ)により射出成形して長さ96mm、肉厚4.0mm、外形直径22.5mm、重量27gのパリソンを得た。射出条件は、背圧4.0MPa、スクリュー回転数150rpm、射出速度155cc/sec、樹脂温度280℃、金型温度15℃である。
このパリソンの胴部の分散粒子径の測定を行い、縦約5.0μm、横約3.8μm(面積約19平方μm)中のポリアミド樹脂(B)の分散粒子径について計測した。その結果、分散粒子径の平均値は0.15μm、また平均粒子径から±0.05μmとなる分散粒子径は計測した分散粒子全体の64.5%を示した。
このパリソンを、ブロー成形装置((株)フロンティア製EFB1000ET)により二軸延伸ブロー成形して、高さ223mm、胴径65mm、容量500mL、平均厚さ約300μmの二軸延伸中空容器を得た。この容器の胴部のHazeは300μm当たり7.4%を示した。結果を表1に示す。
【0050】
<実施例2>
ポリエステル樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(Invista社製、グレード:1101E、固有粘度0.80dl/g)の乾燥したペレット95重量部に対し、ポリアミド樹脂(B)としてポリメタキシリレンアジパミド(三菱ガス化学(株)社製MXナイロン、グレードS6007、相対粘度2.65)5重量部をタンブラーにより混合した混合物を射出成形に供した以外は実施例1と同じ方法でパリソンおよび二軸延伸中空容器を作製した。
このパリソンの分散粒子径の平均値は0.18μm、また、平均粒子径から±0.05μmとなる分散粒子径は計測した分散粒子全体の66.5%を示した。また、ボトル胴部のHazeは300μm当たり9.5%を示した。結果を表1に示す。
【0051】
<比較例1>
背圧を1.0MPa、射出速度を30cc/secとした以外は実施例1と同じ方法でパリソンおよび二軸延伸中空容器を作製した。
このパリソンの分散粒子径の平均値は0.36μm、また、平均粒子径から±0.05μmとなる分散粒子径は計測した分散粒子全体の51.0%を示した。また、ボトル胴部のHazeは300μm当たり13.2%を示した。結果を表1に示す。
【0052】
<比較例2>
背圧を1.0MPa、射出速度を30cc/secとした以外は実施例2と同じ方法でパリソンおよび二軸延伸中空容器を作製した。
このパリソンの分散粒子径の平均値は0.44μm、また、平均粒子径から±0.05μmとなる分散粒子径は計測した分散粒子全体の45.1%を示した。
また、ボトル胴部のHazeは300μm当たり14.5%を示した。
結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
<実施例3>
ポリエステル樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(Invista社製、グレード:1101E、固有粘度0.80dl/g)の乾燥したペレット80重量部に対し、ポリアミド樹脂(B)としてポリメタキシリレンアジパミド(三菱ガス化学(株)社製MXナイロン、グレードS6007、相対粘度2.65)を20重量部、トリメリット酸二無水物(以下TMAnと略することがある)0.2重量部(MXナイロン100重量部に対して1.0重量部)をタンブラーにより混合したものを、二軸押出機を用いて押出機温度280℃、押出速度15kg/hの条件で、かつシリンダー内を真空ポンプで減圧しながら押出を行い、押し出されたストランドをペレタイズしてペレット化した。次いで、ペレットを150℃、6時間の条件で真空乾燥して、溶融混合したポリエチレンテレフタレート樹脂組成物(予備マスターバッチ)を得た。
この予備マスターバッチペレット25重量部とポリエチレンテレフタレート樹脂(グレード1101E、固有粘度0.80dl/g)の乾燥したペレット75重量部をドライブレンドしこの混合物を射出成形装置((株)名機製作所製 M200PDM−MJ)により射出成形して長さ96mm、肉厚4.0mm、外形直径22.5mm、重量27gのパリソンを得た。射出条件は、背圧4.0MPa、スクリュー回転数150rpm、射出速度155cc/sec、樹脂温度280℃、金型温度15℃である。
このパリソンの胴部の分散粒子径の測定を行い、縦約5.0μm、横約3.8μm(面積約19平方μm)中のポリアミド樹脂(B)の分散粒子径について計測した。その結果、分散粒子径の平均値は0.088μm、また平均粒子径から±0.05μmとなる分散粒子径は計測した分散粒子全体の95.7%を示した。
このパリソンを、ブロー成形装置((株)フロンティア製EFB1000ET)により二軸延伸ブロー成形して、高さ223mm、胴径65mm、容量500mL、平均厚さ約300μmの二軸延伸中空容器を得た。この容器の胴部のHazeは300μm当たり5.1%を示した。結果を表2に示す。
【0055】
<実施例4>
射出速度を100m/secとした以外は実施例3と同じ方法でパリソン、および二軸延伸中空容器を作製した。
このパリソンの分散粒子径の平均値は0.11μm、また、平均粒子径から±0.05μmとなる分散粒子径は計測した分散粒子全体の86.3%を示した。また、ボトル胴部のHazeは300μm当たり6.4%を示した。結果を表2に示す。
【0056】
<実施例5>
背圧を2.8MPaとした以外は実施例3と同じ方法でパリソンおよび二軸延伸中空容器を作製した。
このパリソンの分散粒子径の平均値は0.12μm、また、平均粒子径から±0.05μmとなる分散粒子径は計測した分散粒子全体の66.0%を示した。また、ボトル胴部のHazeは300μm当たり5.7%を示した。結果を表2に示す。
【0057】
<実施例6>
背圧を3.5MPa、スクリュー回転数を100rpm、射出速度を125cc/secとした以外は実施例2と同じ方法でパリソンおよび二軸延伸中空容器を作製した。
このパリソンの分散粒子径の平均値は0.13μm、また、平均粒子径から±0.05μmとなる分散粒子径は計測した分散粒子全体の70.9%を示した。また、ボトル胴部のHazeは300μm当たり5.6%を示した。結果を表2に示す。
【0058】
<比較例3>
背圧を1.0MPa、射出速度を30cc/secとした以外は実施例3と同じ方法でパリソンおよび二軸延伸中空容器を作製した。
このパリソンの分散粒子径の平均値は0.22μm、また、平均粒子径から±0.05μmとなる分散粒子径は計測した分散粒子全体の44.3%を示した。また、ボトル胴部のHazeは300μm当たり8.0%を示した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のポリエステル樹脂組成物を使用した中空容器はガスバリア性および透明性等の外観、機械物性にも優れたものであり、食品、飲料、薬品、電子部品等の包装材料として非常に有用なものであり、その工業的価値は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオール構成単位の70モル%以上が脂肪族ジオールに由来するポリエステル樹脂(A)80〜99重量%と、ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、かつジカルボン酸構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂(B)1〜20重量%(重量%の合計は100重量%である)を混合したポリエステル樹脂組成物(C)を射出成形して得られるパリソンであって、該パリソンの胴部の任意の面積におけるポリエステル樹脂組成物中のポリアミド樹脂(B)の分散粒子の平均径が0.05〜0.20μmであり、かつ、該分散粒子の60%以上が該平均径を中心として±0.05μmの範囲内にあることを特徴とする二軸延伸中空容器用パリソン。
【請求項2】
ポリエステル樹脂(A)が、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来し、かつジオール構成単位の70モル%以上がエチレングリコールに由来するポリエステル樹脂である請求項1に記載のパリソン。
【請求項3】
前記芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸90〜99モル%およびイソフタル酸1〜10モル%(モル%の合計は100モル%である)からなる請求項1に記載のパリソン。
【請求項4】
ポリエステル樹脂組成物(C)中に、芳香族3価カルボン酸、脂環族3価カルボン酸、芳香族2価カルボン酸、脂環族2価カルボン酸および前記カルボン酸の酸無水物からなる群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸化合物(D)がポリアミド樹脂(B)100重量部に対して0.05〜2重量部の割合で混合されている請求項1に記載のパリソン。
【請求項5】
多価カルボン酸化合物(D)が、フタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸および無水トリメリット酸から選ばれる1種以上である請求項4に記載のパリソン。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のパリソンを二軸延伸ブロー成形してなる二軸延伸中空容器。
【請求項7】
ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸に由来し、かつジオールに由来する構成単位の70モル%以上が脂肪族ジオールに由来するポリエステル樹脂80〜99重量%と、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、かつジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂1〜20重量%(重量%の合計は100重量%である)を混合したポリエステル樹脂組成物を
下記(a)〜(e)の条件:
(a)樹脂温度:260〜290℃
(b)スクリュー背圧:2.5〜5.0MPa
(c)スクリュー回転数:80〜250rpm
(d)射出速度:80〜180cc/sec
(e)金型温度:10〜25℃
で射出成形することを特徴とする二軸延伸中空容器用パリソンの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法で得られたパリソンを二軸延伸ブロー成形することを特徴とする二軸延伸中空容器の製造方法。

【公開番号】特開2007−269020(P2007−269020A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59691(P2007−59691)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】