説明

二輪車用灯具システム

【課題】比較的簡易な構成により2種類の配光パターンを照射することができるコーナリングランプを備えた二輪車用灯具システムを提供する。
【解決手段】二輪車用灯具システムは、すれ違いビームを照射するすれ違いビーム用ランプと、光軸がすれ違いビーム用ランプの光軸から所定の角度傾斜するように配設されたバンク角連動コーナリングランプ20とを備える。バンク角連動コーナリングランプ20は、光軸Ax3を中心軸とする回転放物面を基準面として反射面32が形成されたリフレクタ24と、リフレクタ24の回転放物面の焦点Fに配置された第1フィラメント27と、焦点Fから離間した位置に配置された第2フィラメント28と、第1フィラメント27と第2フィラメント28の点灯を制御する制御部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車用灯具システムに関し、特にコーナリング時に点灯するコーナリングランプを備えた二輪車用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、二輪車は、ライダーが重心を左右何れかに傾けることにより、曲がる方向に向かって車体を傾けつつコーナーを走行する。したがって、前照灯が形成する配光パターン中のカットオフラインは、二輪車が傾きバンク角が大きくなるにつれ水平から大きく傾く。特に、進行方向側のカットオフラインは、大きく下方向に下がるため、コーナーの出口付近における遠方視認性が低下してしまう。
【0003】
このような問題を解決するために、たとえば特許文献1に開示された二輪車用灯具システムが知られている。この二輪車用灯具システムは、すれ違いビームを照射するすれ違いビーム用ランプと、コーナリング時に点灯するコーナリングランプとを備えた二輪車用灯具システムである。コーナリングランプは、光を出射する光源バルブと、光源バルブから出射した光を反射するリフレクタと、リフレクタにて反射した光を光軸に沿って前方に投影する投影レンズと、リフレクタから投影レンズに向かう光の一部を遮蔽して所定のカットオフラインを形成するとともに、第1の位置と第2の位置に変位可能な可動シェードとを備える。コーナリングランプは、カーブ路への進入を示すコーナー進入信号に応じて可動シェードを第1の位置に配置してすれ違いビームの側方に光を照射するとともに、カーブ路を走行していることを示すコーナリング信号に応じて可動シェードを第2の位置に配置してすれ違いビームの上方に光を照射する。
【0004】
この二輪車用灯具システムによれば、コーナー進入信号とコーナリング信号に応じて可動シェードを第1の位置と第2の位置とで切り替えることにより、コーナリングランプは、2種類の配光パターンを照射することができる。二輪車がカーブ進入前のバンクしていない状態であっても、またカーブ進入後のバンク中の状態であってもカーブ方向に十分な光を照射することができるため、常にライダーの遠方視認性を確保し続けることができる。
【特許文献1】特開2008−1306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された二輪車用灯具システムの場合、コーナリングランプは、2種類の配光パターンを照射するために可動シェードを必要とするので、構成が比較的複雑となりコストが高くなってしまうおそれがある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡易な構成により2種類の配光パターンを照射することができるコーナリングランプを備えた二輪車用灯具システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の二輪車用灯具システムは、すれ違いビームを照射するすれ違いビーム用ランプと、光軸がすれ違いビーム用ランプの光軸から所定の角度傾斜するように配設されたコーナリングランプとを備える二輪車用灯具システムである。コーナリングランプは、該コーナリングランプの光軸を中心軸とする回転放物面を基準面として反射面が形成されたリフレクタと、リフレクタの回転放物面の焦点に配置された第1光源と、リフレクタの回転放物面の焦点から離間した位置に配置された第2光源と、第1光源と第2光源の点灯を制御する制御部とを備える。
【0008】
この態様によると、コーナリングランプは、第1光源を点灯させることにより形成される第1の配光パターンと、第2光源を点灯させることにより形成される第2の配光パターンの2種類の配光パターンを照射することができる。これにより、二輪車用灯具システムは、たとえばバンク角に応じて異なる配光パターンを照射するなどの制御が可能となる。可動シェードなどの可動機構は必要とせず、第1光源と第2光源を選択的に点灯させるだけの比較的簡易な構成により2種類の配光パターンを照射することができるので、コストを低減することができる。
【0009】
第2光源は、第1光源の上方の位置に配置されていてもよい。この場合、第2光源を点灯させた場合に、前方斜め下方に向かう光を照射することができる。これにより、コーナー側に位置する対向車のドライバーが眩しさを感じる事態を防ぐことができる。
【0010】
コーナリングランプは、第1および第2フィラメントを内蔵するダブルフィラメントバルブを有し、第1フィラメントが第1光源を構成し、第2フィラメントが第2光源を構成してもよい。この場合、構成が簡易になるので、好適にコーナリングランプを構成することができる。
【0011】
制御部は、車体のバンク角が所定の第1バンク角以上の場合に第2光源を点灯させ、車体のバンク角が第1バンク角よりも大きい所定の第2バンク角以上の場合に第1光源を点灯させてもよい。たとえば、第1バンク角は10度、第2バンク角は20度に設定してもよい。第1光源は、リフレクタの回転放物面の焦点に配置されているので、明確なカットオフラインを有する配光パターンが照射される。一方、第2光源は、リフレクタの回転放物面の焦点から離間した位置に配置されているので、カットオフラインがぼやけた配光パターンが照射される。コーナリングの際には一般に徐々に車体を傾斜させていくが、一旦カットオフラインがぼやけた配光パターンを照射し、その後カットオフラインが明確な配光パターンを照射することにより、明るさの変化にライダーの目が慣れやすくなるので、視認性を向上することができる。
【0012】
ウインカー信号に応じてすれ違いビームの側方に光を照射するウインカー信号連動コーナリングランプをさらに備えてもよい。この場合、二輪車がコーナーに進入する前のバンクしていない状態であっても、コーナー側に光を照射してコーナー側の視認性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的簡易な構成により2種類の配光パターンを照射することができるコーナリングランプを備えた二輪車用灯具システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る二輪車用灯具システム10の概略正面図である。また、図2は、二輪車用灯具システム10の概略水平断面図である。
【0015】
二輪車用灯具システム10は、二輪車の前方側に設けられ、二輪車の進行方向側を照射するランプユニットである。二輪車用灯具システム10は、図1に示すように、カバー22とランプボディ18により形成される灯室25内に、すれ違いビームを照射するすれ違いビーム用ランプ12と、走行ビームを照射する走行ビーム用ランプ14と、ウインカー信号に応じてすれ違いビームの側方に光を照射する左側ウインカー連動コーナリングランプ16Lおよび右側ウインカー連動コーナリングランプ16Rと、二輪車のバンク角に応じてすれ違いビームの側方に光を照射する左側バンク角連動コーナリングランプ20Lおよび右側バンク角連動コーナリングランプ20Rとを備える。
【0016】
左側ウインカー連動コーナリングランプ16Lと右側ウインカー連動コーナリングランプ16Rは、左右対称の構造および配置であり、総称する場合は単に「ウインカー連動コーナリングランプ16」と呼ぶ。また、左側バンク角連動コーナリングランプ20Lおよび右側バンク角連動コーナリングランプ20Rは、左右対称の構造および配置であり、総称する場合は単に「バンク角連動コーナリングランプ20」と呼ぶ。
【0017】
図1に示すように、すれ違いビーム用ランプ12は、二輪車用灯具システム10の中央の上方に設けられている。本実施の形態において、すれ違いビーム用ランプ12は、バルブから放出された光を回転放物面形状に形成されたリフレクタで車両前方に反射させる所謂パラボラ型のランプである。すれ違いビーム用ランプ12は、光軸Ax1に沿って、光を二輪車の前方に照射し、所定のカットオフラインを備えたロービーム配光パターンを形成する。すれ違いビーム用ランプ12の光軸Ax1は、二輪車の前後方向と略一致している。すれ違いビーム用ランプ12はパラボラ型に限定されず、たとえばプロジェクタ型のランプであってもよい。
【0018】
走行ビーム用ランプ14は、二輪車用灯具システム10の中央の下方に設けられている。本実施の形態において、走行ビーム用ランプ14はパラボラ型のランプである。走行ビーム用ランプ14は、所定のハイビーム配光パターンで車両前方に光を照射する。走行ビーム用ランプ14はパラボラ型に限定されず、たとえばプロジェクタ型のランプであってもよい。
【0019】
ウインカー連動コーナリングランプ16は、ウインカー信号に応じてすれ違いビームの側方に光を照射する。ウインカー連動コーナリングランプ16により、二輪車がコーナーに進入する前のバンクしていない状態であっても、コーナー側に光を照射してコーナー側の視認性を高めることができる。
【0020】
左側ウインカー連動コーナリングランプ16Lは、走行ビーム用ランプ14の左側(前方から見て右側)に配置され、右側ウインカー連動コーナリングランプ16Rは、走行ビーム用ランプ14の右側(前方から見て左側)に配置される。本実施の形態においてウインカー連動コーナリングランプ16はパラボラ型のランプであるが、たとえばプロジェクタ型のランプであってもよい。図2に示すように、ウインカー連動コーナリングランプ16は、その光軸Ax2がすれ違いビーム用ランプ12の光軸Ax1から水平面内で所定の第1傾斜角度θ1傾斜するように配置される。第1傾斜角度θ1は、たとえば17度程度であってよい。
【0021】
バンク角連動コーナリングランプ20は、二輪車のバンク角φに応じてすれ違いビームの側方に光を照射する。左側バンク角連動コーナリングランプ20Lはすれ違いビーム用ランプ12の左側(前方から見て右側)に配置され、右側バンク角連動コーナリングランプ20Rはすれ違いビーム用ランプ12の右側(前方から見て左側)に配置される。本実施の形態において、バンク角連動コーナリングランプ20はパラボラ型のランプである。バンク角連動コーナリングランプ20は、図2に示すように、その光軸Ax3がすれ違いビーム用ランプ12の光軸Ax1から所定の第2傾斜角度θ2傾斜するように配置される。
【0022】
すれ違いビーム用ランプ12、走行ビーム用ランプ14、ウインカー連動コーナリングランプ16およびバンク角連動コーナリングランプ20は、図2に示すように、ECU等の二輪車に搭載された制御部30によって点灯が制御される。制御部30には、二輪車に設けられたウインカーの操作スイッチ(図示せず)から出力されるウインカー信号や、二輪車のバンク角φを検出するバンク角センサ(図示せず)から出力されるバンク角信号が入力されており、制御部30は、これらの信号に応じてウインカー連動コーナリングランプ16やバンク角連動コーナリングランプ20の点灯を制御する。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態に係るバンク角連動コーナリングランプ20の鉛直断面図である。バンク角連動コーナリングランプ20は、パラボラ型のランプであって、バルブ26と、リフレクタ24とを備える。
【0024】
リフレクタ24は、光軸Ax3を中心軸とする回転放物面を基準面として形成された反射面32を備えており、回転放物面の頂点の位置には、バルブ26の本体部34が挿入されている。
【0025】
バルブ26は、所謂H4ハロゲンバルブであって、第1光源としての第1フィラメント27と、第2光源としての第2フィラメント28の2つのフィラメントを内蔵するダブルフィラメントバルブである。
【0026】
バルブ26は、リフレクタ24の回転放物面の焦点Fの位置に第1フィラメント27が配置され、焦点Fから離間した第1フィラメント27の上方に第2フィラメント28が配置されるようにしてリフレクタ24に取り付けられる。より詳細には、バルブ26は、第1フィラメント27の下端面の略中央に焦点Fが位置するようにリフレクタ24に取り付けられる。また、第2フィラメント28は第1フィラメント27の上方に位置していればよく、厳密に第1フィラメント27の真上でなくてもよい。
【0027】
制御部30は、バンク角センサから入力されるバンク角信号に応じて、第1フィラメント27、第2フィラメント28のいずれかを点灯させる。具体的には、制御部30は、二輪車のバンク角φが所定の第1バンク角φ1以上の場合に第2フィラメント28を点灯させ、二輪車のバンク角φが第1バンク角φ1よりも大きい所定の第2バンク角φ2以上の場合に第1フィラメント27を点灯させる。第1バンク角φ1は、コーナリングの初期段階における平均的なバンク角を参照して定められる。また、第2バンク角φ2は、コーナリングの中期段階における平均的なバンク角を参照して定められる。たとえば、第1バンク角φ1は10度程度であってよく、第2バンク角φは20度程度であってよい。
【0028】
図4は、第1フィラメント27を点灯させたときにバンク角連動コーナリングランプ20から照射される光を説明するための図である。上述したように、第1フィラメント27は、二輪車のバンク角φが第2バンク角φ2以上の場合に点灯される。
【0029】
第1フィラメント27は、リフレクタ24の回転放物面の焦点Fの位置に配置されているので、第1フィラメント27から放出された光は、反射面32によりバンク角連動コーナリングランプ20の光軸Ax3と平行な方向に反射される。従って、第1フィラメント27を点灯させた場合には、バンク角連動コーナリングランプ20は、バンク角連動コーナリングランプ20の光軸Ax3と平行に光が照射され、明確なカットオフラインを有する配光パターンを形成する。
【0030】
ここで、バンク角連動コーナリングランプ20は、二輪車が第2バンク角φ2傾斜したときに、すれ違いビームの側方に水平なカットオフラインを有する配光パターンが照射されるように二輪車用灯具システム10に組み付けられる。
【0031】
図5は、第2フィラメント28を点灯させたときにバンク角連動コーナリングランプ20から照射される光を説明するための図である。上述したように、第2フィラメント28は、二輪車のバンク角φが第1バンク角φ1以上の場合に点灯される。
【0032】
第2フィラメント28は、リフレクタ24の回転放物面の焦点Fから離間した第1フィラメント27の上方の位置に配置されているため、第2フィラメント28から放出された光は、反射面32により前方斜め下方に向かって反射される。従って、第2フィラメント28を点灯させた場合には、第1フィラメント27を点灯させた場合よりも車両手前側を照らす光が照射される。これにより、焦点Fの位置に配置されていない第2フィラメント28を点灯させた場合であっても、対向車のドライバーが眩しさを感じる事態を防ぐことができる。
【0033】
以下、本実施の形態に係る二輪車用灯具システム10を用いた配光パターンと、その作用効果について具体的に説明する。ここでは、第1バンク角φ1を10度、第2バンク角φ2を20度とした場合について説明する。
【0034】
図6(a)(b)は、すれ違いビーム用ランプ12と左側ウインカー連動コーナリングランプ16Lを点灯させた場合の配光パターンを説明するための図である。図6(a)は、車両前方の路面上における等照度曲線を示し、図6(b)は、車両前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上における等照度曲線である。
【0035】
たとえばライダーが交差点等のカーブにおける左折前に二輪車に設けられたウインカーの操作スイッチを操作すると、操作スイッチは、制御部30にウインカー進入信号を出力する。制御部30は、このウインカー信号に応じて左側ウインカー連動コーナリングランプ16Lに点灯指示を出力し、左側ウインカー連動コーナリングランプ16Lが点灯して光が前方に照射される。
【0036】
すると、図6(b)に示すように、すれ違いビーム用ランプ12から照射されたすれ違いビームが形成するカットオフラインCL1を有する配光パターンCP1の左側方に、左側ウインカー連動コーナリングランプ16Lから照射された光が形成する配光パターンCP2が投影される。配光パターンCP2のカットオフラインCL2は、水平なカットオフラインとなっている。また、図6(a)を参照すると、左斜め前方約55m付近まで光が照射されている。このように、二輪車が左折直前において、左折側、すなわち進行方向側に光が照射されることにより、ライダーの進行側の遠方視認性が高まる。
【0037】
図7(a)(b)は、すれ違いビーム用ランプ12と左側バンク角連動コーナリングランプ20Lの第2フィラメント28を点灯させた場合の配光パターンを説明するための図である。図7(a)は、車両前方の路面上における等照度曲線を示し、図7(b)は、車両前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上における等照度曲線である。
【0038】
左カーブにおいてライダーが実際に二輪車を傾けて左に曲がろうとすると、二輪車に設けられたバンク角センサが二輪車のバンク角を検出し、バンク角に応じたバンク角信号を制御部30に出力する。制御部30は、このバンク角信号が示すバンク角φが10度以上になると、左側バンク角連動コーナリングランプ20Lの第2フィラメント28を点灯するように指示する。
【0039】
図7(a)(b)では、二輪車のバンク角φが10度の場合を示している。この状態では、二輪車用灯具システム10は全体として左回りに10度回転しているので、図7(b)に示すように、すれ違いビームが形成する配光パターンCP1は、そのカットオフラインCL1の左側が下方に下がる状態となっているが、カットオフラインCL1と水平線Hとの間を埋めるように配光パターンCP1の側方に左側バンク角連動コーナリングランプ20Lから配光パターンCP3が照射される。配光パターンCP3のカットオフラインCL3は、照度が変動した所謂ぼやけたカットオフラインとなっている。また、図7(a)を参照すると、二輪車の左斜め前方約30m付近まで光が照射されている。これにより、二輪車が左折を開始した直後のコーナリング初期段階においても、左折側、すなわち進行方向側に適切に光が照射され、ライダーの進行側の遠方視認性を維持することができる。
【0040】
図8(a)(b)は、すれ違いビーム用ランプ12と左側バンク角連動コーナリングランプ20Lの第1フィラメント27を点灯させた場合の配光パターンを説明するための図である。図8(a)は、車両前方の路面上における等照度曲線を示し、図8(b)は、車両前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上における等照度曲線である。
【0041】
左カーブにおいてライダーが10度よりもさらに二輪車を傾けて左に曲がろうとし、バンク角φが20度以上になると、制御部30は、第1フィラメント27を消灯し、左側バンク角連動コーナリングランプ20Lの第1フィラメント27を点灯するように指示する。
【0042】
図8(a)(b)では、二輪車のバンク角φが20度の場合を示している。この状態では、二輪車用灯具システム10は全体として左回りに20度回転しているので、図8(b)に示すように、すれ違いビームが形成する配光パターンCP1は、そのカットオフラインCL1の左側がさらに下方に下がる状態となっているが、カットオフラインCL1と水平線Hとの間を埋めるように配光パターンCP1の側方に左側バンク角連動コーナリングランプ20Lから配光パターンCP4が照射される。配光パターンCP4のカットオフラインCL4は、明確な水平のカットオフラインとなっている。また、図8(a)を参照すると、二輪車の左斜め前方約40m付近まで光が照射されている。これにより、一般的にバンク角が大きく、またその時間が長いコーナリング中期段階において、左折側、すなわち進行方向側にカットオフラインが明確な配光パターンの光が照射され、ライダーの進行側の遠方視認性を維持することができる。
【0043】
このように、本実施の形態に係る二輪車用灯具システム10によれば、バンク角連動コーナリングランプ20は、二輪車のバンク角φに応じて、すれ違いビームの側方に配光パターンCP3とCP4という2種類の配光パターンを照射することができる。これにより、コーナリングの間にライダーの進行方向側に十分な光を照射して遠方視認性を確保し続けることが可能となる。
【0044】
ここで、バンク角連動コーナリングランプ20は、第1フィラメント27と第2フィラメント28の点灯を切り替えるだけで2種類の配光パターンを照射することができる。第1フィラメント27と第2フィラメント28を選択的に点灯させるだけの比較的簡易な構成により2種類の配光パターンを照射することができるので、コストを低減することができる。
【0045】
また、本実施の形態に係るバンク角連動コーナリングランプ20では、第1フィラメント27がリフレクタ24の回転放物面の焦点Fに配置され、第2フィラメント28が焦点Fから離間した位置に配置されるように構成した。従って、第1フィラメントを点灯させた場合には、明確なカットオフラインを有する配光パターンが照射されるが、第2フィラメント28を点灯させた場合には、図7(b)の配光パターンCP3のように、カットオフラインがぼやけた配光パターンが照射される。コーナリングの際には徐々に車体を傾斜させていくが、いきなり明確なカットオフラインを有する配光パターンを照射するよりも、一旦カットオフラインがぼやけた配光パターンを照射し、その後明確なカットオフラインを有する配光パターンを照射することにより、明るさの変化にライダーの目が慣れやすくなるので、視認性を向上することができる。
【0046】
また、本実施の形態に係る二輪車用灯具システム10では、バンク角連動コーナリングランプ20の他にウインカー連動コーナリングランプ16を設けた。これにより、二輪車がコーナーに進入する前のバンクしていない状態であっても、コーナー側に光を照射してコーナー側の視認性を高めることができる。
【0047】
バンク角連動コーナリングランプ20の第2フィラメント28を点灯させたときに形成される配光パターンは、焦点Fから第2フィラメント28までの距離を変えることにより変化させることができる。たとえば、焦点Fから第2フィラメント28までの距離を長くすればするほど、より車両手前側に光を照射する配光パターンを形成することができる。
【0048】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0049】
上述の実施の形態ではバンク角連動コーナリングランプ20の光源としてダブルフィラメントバルブを用いたが、光源はこれに限定されず、たとえばシングルフィラメントバルブを2つ用いてもよい。この場合、一方のバルブのフィラメントがリフレクタの回転放物面の焦点Fの位置に配置されるようにし、他方のバルブのフィラメントが焦点Fから離間した上方の位置に配置されるようにすればよい。
【0050】
また、上述の実施の形態では、第1光源としての第1フィラメント27の上方に第2光源としての第2フィラメント28が位置するように構成したが、第1フィラメント27から離間した位置に第2フィラメント28が配置されていれば、2種類の配光パターンを照射することが可能である。
【0051】
また、上述の実施の形態では、バンク角連動コーナリングランプ20はパラボラ型のランプとしたが、これに限定されず、たとえばプロジェクタ型のランプとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る二輪車用灯具システムの概略正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る二輪車用灯具システムの概略水平断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るバンク角連動コーナリングランプの鉛直断面図である。
【図4】第1フィラメントを点灯させたときにバンク角連動コーナリングランプから照射される光を説明するための図である。
【図5】第2フィラメントを点灯させたときにバンク角連動コーナリングランプから照射される光を説明するための図である。
【図6】図6(a)(b)は、すれ違いビーム用ランプと左側ウインカー連動コーナリングランプを点灯させた場合の配光パターンを説明するための図である。
【図7】図7(a)(b)は、すれ違いビーム用ランプと左側バンク角連動コーナリングランプの第2フィラメントを点灯させた場合の配光パターンを説明するための図である。
【図8】図8(a)(b)は、すれ違いビーム用ランプと左側バンク角連動コーナリングランプの第1フィラメントを点灯させた場合の配光パターンを説明するための図である。
【符号の説明】
【0053】
10 二輪車用灯具システム、 12 すれ違いビーム用ランプ、 14 走行ビーム用ランプ、 16R 右側ウインカー連動コーナリングランプ、 16L 左側ウインカー連動コーナリングランプ、 18 ランプボディ、 20R 右側バンク角連動コーナリングランプ、 20L 左側バンク角連動コーナリングランプ、 22 カバー、 24 リフレクタ、 26 バルブ、 27 第1フィラメント、 28 第2フィラメント、 30 制御部、 32 反射面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すれ違いビームを照射するすれ違いビーム用ランプと、光軸が前記すれ違いビーム用ランプの光軸から所定の角度傾斜するように配設されたコーナリングランプと、を備える二輪車用灯具システムであって、
前記コーナリングランプは、
該コーナリングランプの光軸を中心軸とする回転放物面を基準面として反射面が形成されたリフレクタと、
前記リフレクタの回転放物面の焦点に配置された第1光源と、
前記リフレクタの回転放物面の焦点から離間した位置に配置された第2光源と、
前記第1光源と前記第2光源の点灯を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする二輪車用灯具システム。
【請求項2】
前記第2光源は、前記第1光源の上方の位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の二輪車用灯具システム。
【請求項3】
前記コーナリングランプは、第1および第2フィラメントを内蔵するダブルフィラメントバルブを有し、前記第1フィラメントが前記第1光源を構成し、前記第2フィラメントが前記第2光源を構成することを特徴とする請求項1または2に記載の二輪車用灯具システム。
【請求項4】
前記制御部は、車体のバンク角が所定の第1バンク角以上の場合に前記第2光源を点灯させ、車体のバンク角が前記第1バンク角よりも大きい所定の第2バンク角以上の場合に前記第1光源を点灯させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の二輪車用灯具システム。
【請求項5】
ウインカー信号に応じて前記すれ違いビームの側方に光を照射するウインカー信号連動コーナリングランプをさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の二輪車用灯具システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−18120(P2010−18120A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179433(P2008−179433)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】