説明

二酸化マンガン正極およびこれを用いたリチウム一次電池

【課題】高いエネルギー密度を維持しつつ、環境に優しく且つ70℃を超えるような過酷な高温下においても長期保存特性に優れた二酸化マンガンリチウム一次電池を提供する。
【解決手段】二酸化マンガンと、カーボンと、水と、界面活性剤とフッ素樹脂と水とを含むフッ素樹脂ディスパージョン水溶液と、を混合して得た湿潤合剤を、ステンレス鋼製芯材に塗着し、乾燥と圧延成形によって得た二酸化マンガン正極であって、界面活性剤は、式:R−O−(A)n−X (Rは炭素数5〜11のアルキル基、Aはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種、nは5〜13、Xは水素を示す。)で表される界面活性剤であり、その添加量はフッ素樹脂に対して2質量%以上10質量%以下であり、さらにフッ素樹脂は二酸化マンガンに対して2質量%以上10質量%以下添加されていることを特徴とする二酸化マンガン正極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化マンガン正極およびこれを用いたリチウム一次電池に関し、特に二酸化マンガン正極に使用する結着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
負極に金属リチウムを用いたリチウム一次電池は、正極活物質に二酸化マンガンやフッ化黒鉛、塩化チオニルなどを用い、3V系高エネルギー密度電池として小型電子機器の主電源や長期バックアップ用電源として広く用いられている。このうち、二酸化マンガンを用いた電池は、塩化チオニル電池のように内容物の活物質が水と反応して有害ガスを発生させてしまうといった危険性も無く、安価で、且つ幅広い温度範囲での出力特性に優れ、また、使用条件によっては10年以上の長期保存・長期使用にも耐えるといった特長を持っており、さらなる用途展開に対してより一層の耐高温化や長寿命化が望まれている。
【0003】
この二酸化マンガン正極には結着剤として主にフッ素樹脂が用いられており、活物質である二酸化マンガンと導電剤であるカーボンとともに混合・練合して使用している。このフッ素樹脂はエネルギー創出に寄与しないため少ない量で結着剤として機能させるために、フッ素樹脂の微粒子を高分散させたディスパージョン水溶液を混合・練合時に用い、後の乾燥工程で水分を除去することによって電池用正極としている。
【0004】
一方、近年の環境意識の高まりからエネルギー使用量削減(電気量削減、二酸化炭素削減)や環境負荷物質の使用削減あるいは撤廃など、環境に優しい生産活動と環境に優しい商品の提供が求められている。中でも特に、人体への影響が懸念される物質については、法規制あるいは自主規制が進み、その使用が制限されている。
【0005】
この様な中、先のディスパージョン水溶液にはフッ素樹脂固形分量に対して界面活性剤として2〜10質量%のオクチル−フェニル−ポリオキシエチレンエーテル(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)C17O(CHCHO)nHが含まれている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このオクチル−フェニル−ポリオキシエチレンエーテルは内分泌攪乱物質(環境ホルモン)とされるオクチルフェニルエーテルが原料であるため(炭素数5〜9のアルキル基を有するアルキルフェニルエーテルは環境ホルモン)、これに代わる人体および環境に優しい界面活性剤を用いた電池の開発が求められている。
【0006】
そこで、先の界面活性剤の代替として芳香族化合物を含まないポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが提案されており(例えば、特許文献2参照)、具体的には、C1327O(CHCHO)nH(登録商標ディスパノールTOC:日本油脂製)やC1225O(CHCHO)nH(登録商標エマルゲン120:花王製)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−149954号公報
【特許文献2】特開平8−269285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、炭素数12〜15のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエ
ーテルは化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)の対象物質であり完全な環境対応材料とは言えず、さらには、これらの物質を用いた電池を作製し70℃を超えるような過酷な高温下で長期保存させると、オクチル−フェニル−ポリオキシエチレンエーテルを用いた時よりも早期に電池内部抵抗が上昇するという課題があった。
【0009】
そこで劣化した電池について様々な解析を実施しその劣化メカニズムを検討してきたところ、集電体として用いているステンレス鋼(SUS)製芯材が腐食し、また、溶出したSUS製芯材の成分が対向する負極リチウム表面上に還元析出し、被膜成長によりセパレータ内の細孔を詰まらせ、内部抵抗を上昇させていることが分かってきた。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、具体的には、高いエネルギー密度を維持しつつ、環境に優しく且つ70℃を超えるような過酷な高温下においても長期保存特性に優れた二酸化マンガンリチウム一次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明は、二酸化マンガンからなる活物質粉末と、カーボンからなる導電剤粉末と、水と、界面活性剤とフッ素樹脂と水とを含むフッ素樹脂ディスパージョン水溶液と、を混合して得た湿潤合剤を、ステンレス鋼製芯材に塗着し、乾燥と圧延成形によって得た二酸化マンガン正極であって、前記界面活性剤は、一般式(1):R−O−(A)n−X(Rは炭素数5〜11のアルキル基、Aはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種、nは5〜13、Xは水素を示す。)で表される界面活性剤であり、その添加量は上記フッ素樹脂に対して2質量%以上10質量%以下であり、さらに上記フッ素樹脂は二酸化マンガンに対して2質量%以上10質量%以下添加されていることを特徴とする二酸化マンガン正極である。
【0012】
リチウム一次電池は水分が混入すると、負極金属リチウムへの被膜形成による電池内部抵抗の上昇や正極活物質である二酸化マンガンの溶出劣化などが知られており、水溶液系ペーストを用いて正極を作製した場合は、電池搭載前に結晶水や付着水を除去するために200℃以上の温度で乾燥している。この時、フッ素樹脂ディスパージョンに含まれていた界面活性剤は、アルキル基の炭素数が多いと熱分解温度が高くなるため完全に熱分解されず有機残渣として残り、この有機残渣物は電池内で70℃を超えるような過酷な高温下では分解して有機酸を形成し、SUS製集電体を腐食させていると推定される。
【0013】
よって、炭素数が11以下のアルキル基を有するアルキルエーテルの界面活性剤であれば、分解温度が200℃以下であることから有機酸の原因となる残渣が残りにくくなり、且つ、化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)の対象外であることから、電池特性劣化抑制と環境対策の両立が図れる。他方、アルキル基の炭素数を5以上としたのは、これよりも少なくなるとフッ素樹脂の表面張力が高くなり濡れ性が低下し、ディスパージョン水溶液を得にくくなるためである。
【0014】
親水基部となるAと分子数nは、ディスパージョン水溶液の安定性から疎水基部Rの炭素数によっていくつかの選択枝が可能で、Aはオキシエチレン基あるいはオキシプロピレン基あるいはオキシブチレン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種、nは5〜13から選択される。親水基部は1種のみの構成に限定されるものでなく、例えば、オキシエチレン基とオキシブチレン基が共存してもよく、また、それぞれ異なる分枝構造を有する界面活性剤の混合であっても良く、同様の効果が得られる。分子数nを5〜13としたのは、5より小さいとフッ素樹脂が沈降しやすくなるためであり、また、13より大きいとフッ素樹脂の濡れ性が低下し好ましくない。
【0015】
界面活性剤の量をフッ素樹脂の質量に対して2質量%以上10質量%以下としたのは、2質量%より少ない場合、ディスパージョン水溶液中のフッ素樹脂微粒子が分離・沈降・凝集し、電極内に均一に混合することが困難となり、活物質脱落など電極作製に弊害をもたらすからである。一方、10質量%よりも多くなると、電極中に界面活性剤の分解残渣が多くなるため好ましくない。
【0016】
さらに、フッ素樹脂の質量を二酸化マンガンに対し2質量%以上10質量%以下としたのは、2質量%よりも少ないと結着剤としての量が不足し、活物質の脱落が多くなるためである。一方、10質量%より多いと電極体積中に占めるフッ素樹脂の体積が多くなるとともに、導電剤カーボンによる導電性ネットワークを妨げるなど、電極エネルギー密度を大幅に低下させてしまうからである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、環境にやさしい界面活性剤を使用した上でエネルギー密度の高い二酸化マンガン正極を得ることができ、さらには、70℃を超えるような過酷な高温下でも長期に渡って電池内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態におけるリチウム一次電池の半断面正面図
【図2】本発明の一実施の形態におけるリチウム一次電池の電極群の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による第1の発明は、二酸化マンガンからなる活物質粉末と、カーボンからなる導電剤粉末と、水と、界面活性剤とフッ素樹脂と水とを含むフッ素樹脂ディスパージョン水溶液と、を混合して得た湿潤合剤を、ステンレス鋼製芯材に塗着し、乾燥と圧延成形によって得た二酸化マンガン正極であって、前記界面活性剤は、一般式(1):R−O−(A)n−X(Rは炭素数5〜11のアルキル基、Aはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種、nは5〜13、Xは水素を示す。)で表される界面活性剤であり、その添加量は上記フッ素樹脂に対して2質量%以上10質量%以下であり、さらに上記フッ素樹脂は二酸化マンガンに対して2質量%以上10質量%以下添加されていることを特徴とする二酸化マンガン正極である。
【0020】
上記の正極であれば、炭素数が11以下のアルキル基を有する環境にやさしいアルキルエーテルの界面活性剤を用いているため、有機酸の原因となる有機残渣が二酸化マンガン正極中に残りにくくなり、電池の長期信頼性の確保と環境対策の両立が図れる。また、高分散なフッ素樹脂ディスパージョン水溶液を得ることができ、エネルギー密度の高い二酸化マンガン正極が得られる。
【0021】
本発明による第2の発明は、第1の発明において、上記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)から選ばれた少なくとも1種である二酸化マンガン正極である。これらのフッ素樹脂は、正極の水分除去などの高温乾燥においても化学的に安定であり、網目ラス形状あるいは薄箔のSUS製集電体に対して結着剤として有効である。
【0022】
本発明による第3の発明は、第1または第2の発明において、上記ポリオキシプロピレン基あるいはポリオキシブチレン基の一部が分枝構造を有することを特徴とする二酸化マンガン正極である。
【0023】
電極中の界面活性剤は粉末の詰まり具合や乾燥条件(温度、湿度、時間)、あるいは界面活性剤自身の分子量等によって微量の残渣が残る場合がある。そこで、ポリオキシプロピレン基あるいはポリオキシブチレン基の一部を分枝構造にすると、分子の比表面積が小さくなり沸点を低下させることができるので残渣量を低減しやすくなる。また、この部分において第二級炭素とした場合は電池内で酸化してもケトン類までの酸化で止まり、第三級炭素とした場合は殆ど酸化しないため、70℃を超えるような過酷な高温下でも有機酸までへの分解酸化を抑制し、SUS製芯材の腐食を抑制できる。あわせて、分枝構造であるためディスパージョン水溶液の粘度調整など保管性能のコントロールが可能になってくる。
【0024】
この二酸化マンガン正極を用いた電池を長期保存した場合に酸生成を抑制することができ、また安定なフッ素樹脂ディスパージョン水溶液を確保できる。例えば、オキシブチレン基において直鎖構造の場合の一般式(1)中のAは、−CHCHCHCHO−であるが、分枝構造の場合、−CHCH(C)O−、−CH(CH)CH(CH)O−、−CH(C)CHO−、−CHCHCH(CH)O−などが挙げられる。さらには、オキシブチレン基と例えばオキシエチレン基とは共存してもよく、一般式(1)中の−(A)n−は、−(CHO)−(CHCHO)−、−CHCH(C)O−(CHCHO)−などが挙げられる。ここではオキシブチレン基を中心に極一部の組み合わせを示したが、一般式(1)を満たす任意の組み合わせにおいて本発明の効果を得ることができる。
【0025】
本発明による第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明の二酸化マンガン正極と、金属リチウムあるいはその合金からなる負極と、セパレータと、電解液とを備えたリチウム一次電池である。この構成により、長期に渡って電池内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【0026】
本発明による第5の発明は、第4の発明において、上記電解液中の水分量が50ppm以下、かつ/または、塩素量が5ppm以下であるリチウム一次電池である。この構成により、SUS製芯材の酸性腐食をさらに抑制することができ、より長期に渡って使用可能な電池となる。これは、電解液中の水分量が50ppm以下であれば微量残渣有機物の加水分解・酸化による電解液の酸性シフトも抑えられ、電池内部抵抗の上昇もさらに抑制できるためである。また、電解液中に塩素量が存在すると、酸性シフトと塩素イオンによる孔食の影響によりSUS製芯材の不動態被膜が破壊されやすくなることから、電解液中の塩素量を5ppm以下に少なくすることで、界面活性剤制御による腐食抑制の効果をより一層発揮できるようになる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0028】
図1は本発明の実施の形態によるリチウム一次電池の半断面正面図である。図2は、このリチウム一次電池の電極群の横断面図である。このリチウム一次電池は正極1と負極2とセパレータ3を捲回して構成された筒状の電極群と、図示しない非水電解液とを有する。非水電解液は電解質にリチウム塩を、溶媒に有機溶媒を使用する。セパレータ3は負極2と正極1の間に介在する。非水電解液は負極2と正極1の間に介在しセパレータ3に含浸している。
【0029】
負極2は、金属リチウムあるいはその合金を負極活物質として含む。負極2にはニッケル等の負極集電リード5が超音波溶着により取り付けられている。
【0030】
正極1は、主に活物質である二酸化マンガンと、導電剤であるカーボンと、結着剤から
なる正極合剤が、正極芯材である網目状のSUS製集電体に充填されている。正極集電リード6は、正極芯材と同様の材質からなり、正極芯材に溶接されている。正極合剤は正極芯材にローラーにより加圧充填される。
【0031】
正極1はたとえば以下のようにして作製される。正極活物質である二酸化マンガン粉末とカーボン粉末からなる導電剤とを乾式混合して活物質混合物を作製する。次いで、活物質混合物と水と界面活性剤を含むフッ素樹脂ディスパージョン水溶液(結着剤)を混練して湿潤合剤を作製し、これをステンレス鋼製芯材に塗着して乾燥後に成形する。
【0032】
導電剤であるカーボンとしては人造黒鉛、天然黒鉛などの黒鉛粉末、あるいは黒鉛粉末とアセチレンブラックなどのカーボンブラックを混合したものが挙げられる。
【0033】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)から選ばれた少なくとも1種であれば、高温乾燥においても化学的に安定であるため好ましい。またフッ素樹脂の質量は二酸化マンガンの質量の2質量%以上10質量%以下である。
【0034】
界面活性剤は一般式(1):R−O−(A)n−X
(Rは炭素数5〜11のアルキル基、Aはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種、nは5〜13を示す。)
で表される界面活性剤であり、その添加量はフッ素樹脂の質量の2質量%以上10質量%以下である。
【0035】
アルキル基は直鎖構造あるいは分枝構造であってもよく、例えばC11−、C17−、C1123−、C17CH(CH)CH−などが挙げられる。また、アルキル基中の水素の一部がフッ素で置き換えられたものでもよく、また、アルキル基中に1〜2個の不飽和炭素を有してもよい。
【0036】
セパレータ3としては、ポリエチレンあるいはポリプロピレンなどの不織布あるいは微多孔膜が用いられている。
【0037】
電極群は負極集電体を兼ねる電池ケース4に挿入され、負極集電リード5は電池ケース4と溶接されている。正極集電リード6は正極集電体を兼ねる封口板7と溶接されている。非水電解液を注入後、封口板7に対し電池ケース4をかしめることにより電池ケース4の内部は密閉されている。なお電極群の上下にはそれぞれ上部絶縁板8、下部絶縁板9が配置されている。
【0038】
非水電解液としては、通常リチウム一次電池の非水電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではないがγ−ブチルラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタンなどを使用することができる。
【0039】
非水電解液を構成する支持電解質には、ホウフッ化リチウム、リチウム六フッ化リン、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、および分子構造内にイミド結合を有するLiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)などを用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の実施例を示す。
【0041】
《実施例正極1および実施例電池1の作製》
まず、正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を乾式混合し、活物質混合物を作製した。次いで、この活物質混合物105質量部に対して純水を33質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)Hの非イオン性界面活性剤をポリテトラフルオロエチレン固形分に対して5質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:3:37(質量比))を10質量部とを加えて湿式混練し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。得られた正極合剤を2本のローラー間に通してシート成形し、さらにこれをSUS444組成のラスメタル芯材と貼り合わせるように2本のローラー間に通して充填した。得られたフープ状シートを100℃で乾燥し、所定の厚みになるまでプレス圧延を行った。このようにして作製した正極フープを幅26mm、長さ230mmに切断し、正極合剤を一部剥離、露出した正極芯材とSUS444組成の正極集電リード6を溶接して実施例正極1を作製した。
【0042】
また、幅24mm、長さ255mmのリチウム箔にニッケルリードからなる負極集電リード5を超音波溶着し負極2を作製した。
【0043】
次に、実施例正極1を250℃で4時間乾燥し、室温まで冷却した後に負極2をセパレータ3であるポリプロピレン製微多孔膜を介し、捲回して電極群を作製した。このようにして、図2に示す電極群を作製した。
【0044】
次に、上記の電極群を使用して図1に示すリチウム一次電池を作製した。負極集電体を兼ねる電池ケース4に電極群を挿入し、負極集電リード5を電池ケース4に溶接した。一方、正極集電体を兼ねる封口板7に正極集電リード6を溶接した。この状態でプロピレンカーボネート(PC):エチレンカーボネート(EC):1,2−ジメトキシエタン(DME)を2:1:2の体積比の割合で混合した溶媒にトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを(LiCFSO)を1mol/l溶解させた非水電解液を電池ケース4に注入した。電解液には水分量100ppm且つ塩素量10ppmのものを用いた。その後、封口板7に対し電池ケース4をかしめることにより電池ケース4を密閉し、円筒形リチウム一次電池を作製した。この電池を実施例電池1とする。
【0045】
《分子数nの検討》
一般式(1)における分子数nが3、7、9、11、13、15となる界面活性剤を用いたこと以外は、上記実施例正極1および実施例電池1と同様にしてそれぞれ正極および電池を作製した。得られた正極は順に、比較例正極1、実施例正極2、実施例正極3、実施例正極4、実施例正極5、比較例正極2であり、これら正極を用いて順に比較例電池1、実施例電池2、実施例電池3、実施例電池4、実施例電池5、比較例電池2を作製した。
【0046】
《Aの組成検討》
一般式(1)における−(A)n−が、−(CHCHO)−(オキシエチレン基)、−(CHCHCHO)−(オキシプロピレン基)、−(CHCHCHCHO)−(オキシブチレン基)である界面活性剤を用い、実施例正極1と同様にして実施例正極6、実施例正極7、実施例正極8を作製し、これらを用いて実施例電池1と同様にして順に実施例電池6、実施例電池7、実施例電池8を作製した。
【0047】
また、一般式(1)における−(A)n−が、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とからなる−{(CHCHO)−(CHCHCHO)}−の構造を有する界面活性剤と、オキシエチレン基とオキシブチレン基とからなる−{(CHCHO)
−(CHCHCHCHO)}−の構造を有する界面活性剤を用いたこと以外は実施例正極1と同様にして実施例正極9と実施例正極10を作製し、これらを用いて実施例電池1と同様にして順に実施例電池9と実施例電池10を作製した。
【0048】
《R炭素数の検討》
一般式(1)におけるRが3、5、8、11、13であり、nが9であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いたこと以外は実施正極1と同様にして、順に比較例正極3、実施例正極11、実施例正極12、実施例正極13、比較例正極4を作製し、これらを用いて実施例電池1と同様にして順に、比較例電池3、実施例電池12、実施例電池13、実施例電池14、比較例電池4を作製した。
【0049】
《Aの構造検討》
一般式がそれぞれC1123−O−(CHCHO)11−(CHCHCHCHO)H、C1123−O−(CHCHO)11−(CHCH(CH)CHO)H、C1123−O−(CHCHO)11−(CHCHCH(CH)O)H、C1123−O−(CHCHO)11−(CHC(CH)(CH)O)Hで示される界面活性剤を用いたこと以外は実施例正極と同様に、実施例正極14、実施例正極15、実施例正極16、実施例正極17を作製し、これらを用いて実施例電池1と同様にして順に、実施例電池14、実施例電池15、実施例電池16、実施例電池17を作製した。
【0050】
《界面活性剤量の検討》
正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を乾式混合し、次いで、純水を33質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)Hの非イオン性界面活性剤をポリテトラフルオロエチレン固形分に対して1質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:0.6:39.4(質量比))を10質量部加えて湿式混合し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。得られた正極合剤を実施例正極1と同様に充填・圧延・裁断等を行い、比較例正極5を作製した。これを用いて実施例電池1と同様にして比較例電池5を作製した。
【0051】
正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を乾式混合し、次いで、純水を33質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)Hの非イオン性界面活性剤をポリテトラフルオロエチレン固形分に対して2質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:1.2:38.8(質量比))を10質量部加えて湿式混合し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。得られた正極合剤を実施例正極1と同様に充填・圧延・裁断等を行い、実施例正極18を作製した。これを用いて実施例電池1と同様にして実施例電池18を作製した。
【0052】
正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を乾式混合し、次いで、純水を33質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)Hの非イオン性界面活性剤をポリテトラフルオロエチレン固形分に対して5質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:3:37(質量比))を10質量部加えて湿式混合し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。得られた正極合剤を実施例正極1と同様に充填・圧延・裁断等を行い、実施例正極19を作製した。これを用いて実施例電池1と同様にして実施例電池19を作製した。
【0053】
正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を
乾式混合し、次いで、純水を34質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)Hの非イオン性界面活性剤をポリテトラフルオロエチレン固形分に対して10質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:6:34(質量比))を10質量部加えて湿式混合し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。得られた正極合剤を実施例正極1と同様に充填・圧延・裁断等を行い、実施例正極20を作製した。これを用いて実施例電池1と同様にして実施例電池20を作製した。
【0054】
正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を乾式混合し、次いで、純水を34質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)Hの非イオン性界面活性剤をポリテトラフルオロエチレン固形分に対して15質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:9:31(質量比))を10質量部加えて湿式混合し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。得られた正極合剤を実施例正極1と同様に充填・圧延・裁断等を行い、比較例正極6を作製した。これを用いて実施例電池1と同様にして比較例電池6を作製した。
【0055】
《フッ素樹脂量の検討》
正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を乾式混合し、次いで、純水を37質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)Hの非イオン性界面活性剤をポリテトラフルオロエチレン固形分に対して5質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:3:37(質量比))を0.8質量部加えて湿式混合し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。この時、二酸化マンガン粉末に対するフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン固形分)は0.5質量%である。得られた正極合剤を実施例正極1と同様に充填・圧延・裁断等を行い、比較例正極7を作製した。これを用いて実施例電池1と同様にして比較例電池7を作製した。
【0056】
正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を乾式混合し、次いで、純水を36質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)Hの非イオン性界面活性剤をポリテトラフルオロエチレン固形分に対して5質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:3:37(質量比))を3.3質量部加えて湿式混合し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。この時、二酸化マンガン粉末に対するフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン固形分)は2質量%である。得られた正極合剤を実施例正極1と同様に充填・圧延・裁断等を行い、実施例正極21を作製した。これを用いて実施例電池1と同様にして実施例電池21を作製した。
【0057】
正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を乾式混合し、次いで、純水を31質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)Hの非イオン性界面活性剤をポリテトラフルオロエチレン固形分に対して5質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:3:37(質量比))を16.7質量部加えて湿式混合し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。この時、二酸化マンガン粉末に対するフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン固形分)は10質量%である。得られた正極合剤を実施例正極1と同様に充填・圧延・裁断等を行い、実施例正極22を作製した。これを用いて実施例電池1と同様にして実施例電池22を作製した。
【0058】
正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を乾式混合し、次いで、純水を28質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)Hの非イオン性界面活性剤をポリテトラフルオロエチレン固形分に対して5質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:3:37(質量比))を25質量部加えて湿式混合し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。この時、二酸化マンガン粉末に対するフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン固形分)は15質量%である。得られた正極合剤を実施例正極1と同様に充填・圧延・裁断等を行い、比較例正極8を作製した。これを用いて実施例電池1と同様にして比較例電池8を作製した。
【0059】
《電解液不純物の検討》
正極活物質である二酸化マンガン粉末100質量部、導電剤である黒鉛粉末5質量部を乾式混合し、次いで、純水を33質量部、さらに、分子式C17−O−(CHCHO)−(CHCHCH(CH)O)Hの非イオン性界面活性剤を5質量%含むポリテトラフルオロエチレンディスパージョン水溶液(ポリテトラフルオロエチレン固形分:界面活性剤:純水=60:3:37(質量比))を10質量部加えて湿式混合し、ファニキュラー状態の正極合剤を作製した。得られた正極合剤を実施例正極1と同様に充填・圧延・裁断等を行い、実施例正極23を複数作製した。
【0060】
得られた実施例正極23を用いて、水分量および塩素量の異なる電解液を用いた電池を作製した。実施例電池23は水分量100ppm塩素量10ppmの電解液を用いている。実施例電池24は水分量50ppm塩素量10ppmの電解液を用いている。実施例25は水分量100ppm塩素量5ppmの電解液を用いている。実施例26は水分量50ppm塩素量5ppmの電解液を用いている。尚、電解液の溶媒組成、塩濃度等は実施例電池1と同様である。
【0061】
《フッ素樹脂種類の検討》
テトラフルオロエチレンの代わりに、それぞれテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を用いたこと以外は実施例正極23と同様にして、順に、実施例正極24、実施例正極25、実施例正極26を作製し、次いで、実施例電池26と同様にして順に実施例電池27、実施例電池28、実施例電池29を作製した。
【0062】
以上、得られた電池について評価を行った。電池容量は、20℃雰囲気下で100mA連続放電(終止電圧2V)での放電電気量から求めた。また高温保存特性の評価は、予め電池容量の30%を放電し、次いで75℃雰囲気下12ヶ月保存した電池について交流1KHzの電池内部抵抗を測定した。
【0063】
以上、二酸化マンガン正極および電池の緒元と電池特性評価結果について、(表1)に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
(表1)より、一般式(1)のnに関してその数値が5〜13のとき、すなわち実施例電池1〜5の電池は高い電池容量が得られ、また高温長期保存後の電池内部抵抗も小さい。これに対し、比較例正極1および比較例正極2は、フッ素樹脂ディスパージョン水溶液中のフッ素樹脂を高分散に保てず、正極合剤作製段階での分散性が悪くなり、結果、結着剤機能低下による粉末脱落が発生している。さらにこれに起因し、比較例電池1および比
較例電池2は容量が低く、内部抵抗が高い電池となり好ましくない。
【0066】
次に、実施電池6〜9が示すとおり、一般式(1)のAをオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレンにすると電池容量が大きく、高温長期保存後の内部抵抗も低いことが分かり、また実施例10および実施例電池11が示すように、Aはこれらを組み合わせても良いことが分かる。
【0067】
一般式(1)のRに関しては、実施例電池を構成する炭素数が5〜11のとき正極作製も良好で、電池容量も大きく、且つ高温長期保存後の電池内部抵抗も小さい。一方、Rが3の時はフッ素樹脂と水の分離が見られフッ素樹脂を高分散状態に保てず、正極合剤作製段階での分散性が悪くなり、結果、結着剤機能低下による粉末脱落が発生している。Rが13の時は高温保存後の電池内部抵抗の上昇が顕著である。Rが13である比較例電池4を高温長期保存後に分解して得たリチウム負極には黒色の網目形状模様が観測され、正極に用いたSUS製網目ラス芯材と同じ形状をしていた。黒色部分の組成分析をしたところ主にFe、C、Oからなる化合物であったことから、用いたSUS444(主成分がFeで、Cr17〜20%、Mo1.75〜2.5%)のFeが溶出しリチウム負極表面上で析出したものと判断され、このFeの溶解は界面活性剤の分解残渣が70℃を超えるような過酷な高温下で分解した有機酸によって起こるものと推定された。
【0068】
一方、ここで、飽和炭化水素(アルカン)の炭素数と沸点の関係は、炭素数11の場合は沸点196℃、炭素数12の場合は216℃、炭素数13の場合は234℃、炭素数14の場合は250℃以上であることが知られている(出典:国際化学物質安全性カードICSC(International Chemical Safety Card)および化学物質安全情報提供システム(kis−net)、およびMSDS情報)。粉末を加圧成形した多孔質体から界面活性剤を分解除去するためには少なくとも沸点以上の温度で長時間乾燥が必要で、工業的に低エネルギー且つ短時間で高効率に残渣量を抑制するためにも、Rの炭素数11以下が好ましいと言える。
【0069】
界面活性剤の量については、比較例電池5、実施例電池19、実施例電池20、実施例電池21、および比較例電池6の評価結果から、フッ素樹脂量に対する界面活性剤の量は2〜10wt%が適当であることが分かる。
【0070】
また、正極中のフッ素樹脂量は二酸化マンガン量に対して2質量%以上10質量%以下が適当である。比較例正極7が示すように、2質量%よりも少ないと粉末脱落が顕著でシート成形が極めて困難であり、電極作製不可となる。他方10質量%を超える比較例正極8を用いた比較例電池8は電池容量が少なく好ましくないことが分かる。
【0071】
本発明の正極を用いて電池内に存在する水分量および塩素量の検討を行った。そこで電池内の水分量および塩素量を電解液中の濃度として代用し検討したのが実施例電池23、実施例電池24、実施例電池25、実施例電池26である。実施例電池23と比較して、電解液中の水分量のみが少ない実施例電池24および電解液中の塩素量のみが少ない実施例電池25は、共に実施例電池23よりも高温保存後の内部抵抗の値が小さいことが分かる。また、さらに、実施例電池23と比較して電解液中の水分量および塩素量が共に少ない実施例電池26では、高温保存後の内部抵抗上昇抑制のより一層の効果が得られている。
【0072】
フッ素樹脂固形分をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の代わりにそれぞれテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)とした実施例電池27、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)とした実施例電池28、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)とした
実施例電池29は、実施例電池26と同様に高温保存後の電池抵抗の上昇が抑制されていることが分かる。
【0073】
なお、以上の実施例では、フッ素樹脂は主にポリテトラフルオロエチレンを用いた場合においてその効果の詳細を示したが、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)あるいはテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などであっても同様の効果が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のリチウム一次電池は、環境にやさしく、且つ長期信頼性に優れている。そのため、小型電子機器の主電源や長期バックアップ用電源として有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電池ケース
5 負極集電リード
6 正極集電リード
7 封口板
8 上部絶縁板
9 下部絶縁板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化マンガンからなる活物質粉末と、カーボンからなる導電剤粉末と、水と、界面活性剤とフッ素樹脂と水とを含むフッ素樹脂ディスパージョン水溶液と、を混合して得た湿潤合剤を、ステンレス鋼製芯材に塗着し、乾燥と圧延成形によって得た二酸化マンガン正極であって、前記界面活性剤は、
一般式(1):R−O−(A)n−X
(Rは炭素数5〜11のアルキル基、Aはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種、nは5〜13、Xは水素を示す。)
で表される界面活性剤であり、その添加量は前記フッ素樹脂に対して2質量%以上10質量%以下であり、さらに前記フッ素樹脂は二酸化マンガンに対して2質量%以上10質量%以下添加されていることを特徴とする二酸化マンガン正極。
【請求項2】
前記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の二酸化マンガン正極。
【請求項3】
前記ポリオキシプロピレン基あるいはポリオキシブチレン基の一部が分枝構造を有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の二酸化マンガン正極。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の二酸化マンガン正極と、金属リチウムあるいはその合金からなる負極と、セパレータと、電解液とを備えたリチウム一次電池。
【請求項5】
前記電解液中の水分量が50ppm以下、かつ/または、塩素量が5ppm以下である請求項4記載のリチウム一次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−33373(P2012−33373A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171650(P2010−171650)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】