二酸化炭素吸収分離システム及び水素製造システム
【課題】加熱冷却サイクルのためのエネルギーの消費や金属疲労を生じることがないとともに、サイクル外へのエネルギーの無駄を回避することを課題とする。
【解決手段】リチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、供給される排ガス中のCO2を吸収するCO2吸収装置1,2と、CO2を吸収したリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、リチウムシリケートからCO2を放出させるCO2放出装置3と、前記CO2吸収装置から、CO2を吸収したリチウムシリケートを、前記CO2放出装置へ搬送する第1の搬送手段71,72と、前記CO2放出装置から、CO2を放出後のリチウムシリケートを、前記CO2吸収装置へ搬送する第2の搬送手段8とを具備することを特徴とする二酸化炭素吸収分離システム。
【解決手段】リチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、供給される排ガス中のCO2を吸収するCO2吸収装置1,2と、CO2を吸収したリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、リチウムシリケートからCO2を放出させるCO2放出装置3と、前記CO2吸収装置から、CO2を吸収したリチウムシリケートを、前記CO2放出装置へ搬送する第1の搬送手段71,72と、前記CO2放出装置から、CO2を放出後のリチウムシリケートを、前記CO2吸収装置へ搬送する第2の搬送手段8とを具備することを特徴とする二酸化炭素吸収分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所、セメント工場などからの排ガスから二酸化炭素を分離回収するための二酸化炭素吸収分離システム、及び二酸化炭素の吸収分離特性を利用して天然ガス、炭化水素ガス、バイオ系燃料等から改質を行う水素製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を防止するため、温室ガスの二酸化炭素(CO2)の発生および大気への放出を削減する様々な対策が検討されている。これまでに、燃焼排ガスからCO2の排出を抑えるために、アミンなどのアルカリ溶液や吸着性能を持つゼオライト粒子を使った吸収または吸着による分離法や、燃料を純酸素燃焼させる酸素燃焼法などが検討されている。
【0003】
また、固体吸収材を用いたCO2吸収分離方法についての検討がされている。例えば、特許文献1には、エネルギープラントや化学プラント、自動車から発生する排気ガス中の炭素ガスを吸収材としてのリチウムシリケートを用いて処理する炭酸ガス分離装置について開示されている。また、特許文献2には、燃焼ガスなどから排出された高温の炭酸ガスの吸収・放出に優れたリチウムシリケートを用いた炭酸ガス分離装置について開示されている。
【0004】
リチウムシリケート(Li4SO4、以下LS4と呼ぶ)は、二酸化珪素と炭酸リチウムの混合粉末を熱処理することで得られるセラミックス材料である。LS4は自重の約36%、自己体積の200倍に相当する量のCO2を吸収することができる。リチウムシリケート結晶中の酸化リチウム(LiO2)がCO2と直接反応し、炭酸リチウム(Li2CO3)を生成することによりCO2吸収が行なわれる。LS4とCO2との反応は下記式のとおりである。
Li4SiO4+CO2→Li2CO3+Li2SiO3
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3396642号公報
【特許文献2】特許第3591724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、固体吸収材を用いた炭酸ガス吸収分離装置では、加熱冷却サイクルのためにエネルギーを消費するうえに、それに伴って金属疲労が生じるという問題があった。また、サイクル外への排熱などのエネルギーを無駄にするという問題があった。
【0007】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、加熱冷却サイクルのためのエネルギーの消費や金属疲労を生じることがないとともに、サイクル外へのエネルギーの無駄を回避しえる二酸化炭素吸収分離システム及び水素製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、LS4が室温から700℃程度までの幅広い温度域でCO2を吸収でき、繰り返し吸収・放出することができるという特徴に注目し、様々な研究を重ねた結果、本発明を究明するに至った。
【0009】
本発明に係る二酸化炭素吸収分離システムは、リチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、供給される排ガス中のCO2を吸収するCO2吸収装置と、CO2を吸収したリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、リチウムシリケートからCO2を放出させるCO2放出装置と、前記CO2吸収装置から、CO2を吸収したリチウムシリケートを、前記CO2放出装置へ搬送する第1の搬送手段と、前記CO2放出装置から、CO2を放出後のリチウムシリケートを、前記CO2吸収装置へ搬送する第2の搬送手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る水素製造システムは、燃料を改質する触媒およびリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、燃料および水蒸気が供給されて改質により水素およびCO2を発生させるとともに発生したCO2を吸収する改質装置と、改質に用いられた触媒およびCO2を吸収したリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、触媒を再生するとともにリチウムシリケートからCO2を放出させる再生装置と、前記改質装置から触媒およびリチウムシリケートを前記再生装置へ搬送する第1の搬送手段と、前記再生装置から触媒およびリチウムシリケートを前記改質装置へ搬送する第2の搬送手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱冷却サイクルのためのエネルギーの消費および金属疲労を生じることがないとともに、サイクル外へのエネルギーの無駄を回避しえる二酸化炭素吸収分離システム及び水素製造システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る二酸化炭素吸収分離システムの説明図。
【図2】本発明の実施例1に係る二酸化炭素吸収分離システムであり、図1と比べ開閉弁の開閉状態が異なる場合の説明図。
【図3】図1のシステムの一構成であるCO2吸収装置の詳細な説明図。
【図4】本発明の実施例2に係る水素製造システムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る二酸化炭素吸収分離システム及び水素製造システムについて詳細に説明する。
本発明の二酸化炭素(CO2)吸収分離システムにおいては、CO2吸収装置によるCO2吸収プロセスとCO2放出装置によるCO2放出プロセスが行われる。ここで、CO2吸収装置は加熱手段により500〜650℃に設定され、CO2放出装置は別な加熱手段によりCO2吸収装置より高い温度(650〜750℃)に設定される。CO2吸収装置からのCO2吸収済みLS4は第1の搬送手段(例えばバケットコンベア)によりCO2放出装置へ搬送され、CO2放出装置ではCO2を放出した後、第2の搬送手段(例えばバケットコンベア)によりCO2吸収装置へ戻される。
【0014】
ここで、搬送手段としてバケットコンベアを用いた場合、このバケットコンベアの耐熱温度は300℃であるので、CO2吸収装置やCO2放出手段のLS4排出口側に熱交換器を設けて、コンベアの耐熱温度以下まで冷やして搬送することが好ましい。なお、熱交換器を設けることにより、回収した高温の排熱を蒸気タービンの発電等に利用することができる。
【0015】
本発明においては、CO2吸収装置は複数例えば2機配置し、各CO2吸収装置は排ガス流入側にガス流入切り替え用の開閉バルブを備えていることが好ましい。このような切り替え方式にすれば、一方のCO2吸収装置からLS4をCO2放熱装置へ搬送するときは、排ガスを他方のCO2吸収装置へ供給し、他方のCO2吸収装置からLS4をCO2放熱装置へ搬送するときは、排ガスを一方のCO2吸収装置へ供給できるので、連続して排ガスからCO2を吸収することができる。従って、CO2吸収装置の稼働率を上げることができる。このとき、CO2吸収装置では、次の吸収反応(発熱反応)が生じる。なお、反応熱は75kJ/mol−Li4SiO4である。
【0016】
吸収反応(放熱):Li4SiO4+CO2→Li2CO3+Li2SiO3
また、CO2放出装置では、次の放出反応が行われる。
放出反応(吸熱):Li2CO3+Li2SiO3→Li4SiO4+CO2
本発明において、前記CO2吸収装置へのガスの流入路,流出路の夫々に、開閉バルブの切り替えを行うためのCO2濃度計を設けることが好ましい。これにより、CO2吸収装置へのガスの流入路及び流出路におけるCO2濃度を正確に計測でき、CO2吸収装置におけるLS4によるCO2の吸収度合いを確認することができる。
【0017】
本発明において、CO2放出装置では、CO2放出装置に窒素を入れ、CO2放出装置のCO2放出口に吸引ブロアを設置し、吸引しながらCO2を放出させ、回収することができる。この場合、CO2の放出過程は常圧の状態で行う。また、窒素を入れずにCO2放出装置のCO2放出口に減圧手段としての吸引ポンプ(真空ポンプ)を設置し、減圧状態でCO2を放出することもできる。この場合、圧力は例えば0.1気圧とする。また、窒素の代りにCO2をCO2放出装置に入れることができる。CO2を回収する目的とすれば、CO2を入れることにより、純度の高いCO2を回収できる。純度の高いCO2を回収できれば、CO2を製品として飲料メーカー等に再利用することができる。
【0018】
本発明の水素製造システムも、二酸化炭素吸収分離システムと同様に構成することができる。例えば、改質装置及び再生装置のLS4排出側に熱交換器を設けることにより、高温の排熱を有効に利用することができる。但し、メタンなどの燃料及び水蒸気がニッケル,ルテニウム,ロジウムなどの触媒を有する改質装置に供給され、改質装置からは改質後の水素が収集される。改質装置では、下記の主な水素製造反応が行なわれる。
2CxHy+2H2O→(y+2)H2+2xCO
CO+H2O→H2+CO2
次に、本発明の二酸化炭素吸収分離システム及び水素製造システムの具体例について説明する。
(実施例1)
本発明に係る二酸化炭素吸収分離システムについて図1、図2及び図3を参照して説明する。ここで、図1、図2は同システムの全体を示す説明図であり、図1は第1のCO2吸収装置でCO2を吸収し、CO2放出装置でCO2を放出するときの開閉バルブの状態を、図2は第2のCO2吸収装置でCO2を吸収し、CO2放出装置でCO2を放出するときの開閉バルブの状態を示す。また、図3はCO2吸収装置の要部の説明図を示す。
【0019】
このシステムは、並列に配置された,リチウムシリケート(LS4)を収容して二酸化炭素(CO2)の吸収を行う第1・第2のCO2吸収装置1,2と、LS4からCO2の放出を行うCO2放出装置3と、CO2吸収装置1,2及びCO2放出装置3のLS4排出口側に夫々配置された冷却機4,5,6と、CO2を吸収したLS4を搬送するための第1の搬送手段としての第1のバケットコンベア71・72と、CO2放出後のLS4を搬送するための第2の搬送手段としての第2のバケットコンベア8と、減圧手段としての真空ポンプ9を備えている。第1・第2のCO2吸収装置1,2内には、図示しないLS4が収納されている。
【0020】
第1のCO2吸収装置1は、図3に示すようなロータリキルン方式の構成になっている。
図中の符番31は、第1のCO2吸収装置1の一構成である筒状の吸収装置本体を示す。この吸収装置本体31の中心軸方向には、シール部32よりシールされた回転軸33が配置されている。この回転軸33には、排ガスを吸収装置本体31内に導入するための連通孔34が設けられ、更にこの連通孔34に連通する噴射口35が回転軸32の周方向に例えば4個ずつ設けられている。前記回転軸33には、被処理物37を図中の右側から左側に搬送するためのスクリュー羽根36が設けられている。
【0021】
吸収装置本体31の外周部には、図1,2に示すように、シリンダ部内を500〜650℃に維持するための加熱手段としてのヒータ23aが設けられている。また、吸収装置本体31には、LS4を吸収装置本体31内に供給するための供給口19aが設けられ、排ガスを流入するための流入口20a、処理後のガスを排出するための排出口21a、CO2を吸収したLS4を排出するための排出口22aが設けられている。
第2のCO2吸収装置2も、第1のCO2吸収装置1と同様な構成になっており、LS4の供給口19b,排出口22bと、排ガスの流入口20b,流出口21bと、ヒータ23b等を備えている。
【0022】
前記CO2放出装置3は、第1のCO2吸収装置1と比較して、ガス通路及び噴射口を有した回転軸の代りに中実の回転軸を用いる点、排ガスの流入・流出のための部材(流入口等)を設けない点、及びCO2の放出口を設ける点を除いて、第1のCO2吸収装置1と実質的に同様なロータリキルン方式の構成を採用している。但し、CO2放出装置3の外周部には加熱手段としてのヒータ24が設けられ、このヒータ24によりCO2放出装置3は650〜750℃に維持される。CO2放出装置3にも、LS4の供給口19c,排出口22cが設けられている。
【0023】
第1のCO2吸収装置1のLS4排出口22a及び第2のCO2吸収装置2のLS4排出口22bと、CO2放出装置3のLS4供給口19c間のラインには、CO2を吸収したLS4を投入するための第1のホッパー251が配置されている。前記排出口22aと冷却機4,排出口22bと冷却機5間は、開閉バルブ26aを介装した配管27a,開閉バルブ26bを介装した配管27bにより夫々接続されている。冷却機4と第1のホッパー251間は前記第1のバケットコンベア71により接続され、冷却機5と第1のホッパー251間は前記第1のバケットコンベア72により接続されている。
【0024】
CO2放出装置3のLS4排出口22cと、第1のCO2吸収装置1のLS4供給口19a及び第2のCO2吸収装置2のLS4供給口19b間のラインには、CO2放出後のLS4を投入するための第2のホッパー252が配置されている。前記排出口22c側の冷却機6と第2のホッパー252間は、前記第2のバケットコンベア8により接続されている。第2のホッパー252と第1のCO2吸収装置1のLS4供給口19a間は、開閉バルブ26cを介装した配管27cにより接続されている。第2のホッパー252と第2のCO2吸収装置2のLS4供給口19b間は、配管27cと該配管27cから分岐した,開閉バルブ26dを介装した配管27dにより夫々接続されている。
【0025】
CO2吸収装置1,2の各排ガスの流入口20a,20bに接続される配管27e,27fには、夫々開閉バルブ26e,26fが設けられている。CO2放出装置3のCO2放出口28と真空ポンプ9は、開閉バルブ26gを介装した配管27gにより接続されている。第1のCO2吸収装置1の排出口21aには、開閉バルブ26hを介装した配管27hが接続されている。第2のCO2吸収装置2の排出口21bには、開閉バルブ26iを介装した配管27iが接続されている。なお、第1のCO2吸収装置1でCO2を処理するときに、放出装置3でCO2を放出するので、第2のCO2吸収装置2の排ガスの流入口20b,流出口21bの夫々の開閉バルブ26f,26iは閉じる状態となる。
【0026】
次に、上記二酸化炭素吸収分離システムの作用について説明する。
(1) 第1のCO2吸収装置1でCO2ガスを吸収し、CO2放出装置3でCO2ガスを放出する場合(図1参照)。
まず、第1のCO2吸収装置1,2をヒータ23a,23bにより夫々500〜650℃に設定するとともに、CO2放出装置3をヒータ24により650〜750℃に設定する。次に、開閉弁26b,26e,26g,26h(但し、開閉弁26hはCO2吸収時に閉める)を開け、開閉弁26a,26c,26f,26iを閉じた状態で、CO2を含む排ガスをCO2吸収装置1の流入口20aからCO2吸収装置1へ供給する。但し、開閉弁26bは、LS4を第2のCO2吸収装置2から放出装置3に移動するときだけに開けられ、移動終了後に直に閉める。また、開閉弁26dは、LS4を放出装置3から第2のCO2吸収装置2に移動するときだけに開けられ、移動終了後に直に閉める。更に、開閉弁26gは、LS4を第2のCO2吸収装置2から放出装置3に全て移動した後に開け、その後真空ポンプ9を起動する。CO2吸収装置1では、既述したように、LS4結晶中のLiO2がCO2と直接反応し、Li2CO3を生成することによりCO2の吸収が行われる。この際、LS4で吸収されたCO2以外のガスは、排出口21aより処理後ガスとして収集される。
【0027】
(2) 第2のCO2吸収装置2でCO2ガスを吸収し、CO2放出装置3でCO2ガスを放出する場合(図2参照)。
開閉弁26d,26e,26hを閉じ、開閉弁26c,26fを開けた状態で、CO2を含む排ガスをCO2吸収装置2の流入口20bからCO2吸収装置2へ供給し、LS4によるCO2吸収を行う。この際、LS4で吸収されたCO2以外のガスは、排出口21bより処理後ガスとして収集される。また、排ガスをCO2吸収装置2へ供給しているとき、第1のCO2吸収装置1でCO2を吸収したLS4は、配管27aを経て冷却機4に送られ、ここで300℃以下まで冷却された後、第1のバケットコンベア71により第1のホッパー251を経てCO2放出装置3に送られる。
【0028】
一方、第2のCO2吸収装置2でCO2を吸収したLS4も、配管27bを経て冷却機5に送られ、ここで300℃以下まで冷却された後、第1のバケットコンベア72により第1のホッパー251を経てCO2放出装置3に送られる。
【0029】
(3) 次に、CO2放出装置3では、真空ポンプ9を用いてCO2放出口28より減圧(0.1気圧)の状態でCO2を放出する。また、CO2放出装置3でCO2が放出された後のLS4は、冷却機6に送られ、ここで300℃以下まで冷却された後、第2のバケットコンベア8により第2のホッパー252を経て第1のCO2吸収装置1又は第2のCO2吸収装置2に送られる。
【0030】
(4) 上記(1)、(2)による各開閉バルブの切り替えは、第1のCO2吸収装置1からCO2を吸収したLS4をCO2放出装置3へ搬送させるときには、排ガスを第2のCO2吸収装置2へ送り、また第2のCO2吸収装置2からCO2を吸収したLS4をCO2放出装置3へ搬送させるときには、排ガスを第1のCO2吸収装置2へ送るようにして、連続して排ガスからCO2を吸収するように構成されている。
【0031】
実施例1に係る二酸化炭素吸収分離システムによれば、CO2吸収装置1,2及びCO2放出装置3を備え、CO2吸収装置1,2からCO2を吸収したLS4をCO2放出装置3に移動させ、またCO2放出後のLS4をCO2放出装置3からCO2吸収装置1,2へ戻してLS4を繰り返し使用できるような構成にしたので、CO2吸収装置1,2及びCO2放出装置3の温度を切り替える必要がなく、より少ないエネルギーでCO2の吸収分離を行うことができる。従って、従来のように加熱冷却サイクルのためのエネルギーの消費もなく、それに伴う金属疲労を回避できる。また、CO2吸収装置1,2やCO2放出装置3のLS4排出口側に冷却機4,5,6を配置することにより、回収した高温の排熱を蒸気タービンの発電等に利用することができる。
【0032】
(実施例2)
本発明の水素製造システムについて図4を参照して説明する。但し、図1、図2と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみ説明する。
水素製造システムは、燃料を改質する触媒を含み、かつリチウムシリケート(LS4)を収容し、燃料および水蒸気が供給されて改質により水素およびCO2を発生させるとともに、発生したCO2を吸収する改質装置を備えている。
具体的には、並列に配置された第1・第2のCO2吸収型改質装置41,42と、触媒を再生させるとともにLS4からCO2の放出を行う再生装置43と、改質装置41,42及び再生装置43のLS4排出口側に夫々配置された冷却機4,5,6と、触媒およびCO2を吸収したLS4を搬送するための第1の搬送手段としての第1のバケットコンベア71・72と、触媒およびCO2を放出後のLS4を搬送するための第2の搬送手段としての第2のバケットコンベア8と、吸引ポンプ44を備えている。改質装置41,42及び再生装置43は、前記CO2吸収装置と同様にロータリキルン方式の構成となっている。改質装置41,42は、夫々燃料を改質する触媒およびLS4を収容する装置本体(図示せず)と、加熱手段23a,23bを備えている。再生装置43は、改質に用いられた触媒およびCO2を吸収したLS4を収容する装置本体(図示せず)と、ヒータ24とを備えている。
【0033】
図3の水素製造システムの作用は、図1のシステムと比べ、LS4を繰り返し使用しようする点で同じであり、次の3点のみ相違する。
(1)まず、改質装置41,42は触媒(ニッケル等)及びLS4を有し、流入口20a,20bよりメタン等の燃料及び水蒸気が夫々供給され、改質装置41,42では既述した水素製造反応が行われる。
(2)改質装置41,42の夫々の排出口21a,21bからは改質反応後の水素が収集される。
(3)再生装置43にはN2が導入され、再生装置43からは吸引ポンプ44によりCO2とN2が放出され、この後再生装置43から改質装置41,42に触媒とLS4の供給が行われる。
【0034】
実施例2に係る水素製造システムによれば、実施例1と同様な理由により、より少ないエネルギーでCO2の吸収、水素の収集を行うことができる。従って、従来のように加熱冷却サイクルのためのエネルギーの消費もなく、それに伴う金属疲労を回避できる。また、改質装置41,42や再生装置43のLS4排出口側に冷却機4,5,6を配置することにより、回収した高温の排熱を蒸気タービンの発電等に利用することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0036】
具体的には、上記実施例では、CO2吸収装置や改質装置としてロータリキルン方式の装置を用いた場合について述べたが、これに限らず、縦型充填層を反応機器として適用できる。また、上記実施例では、2機のCO2吸収装置や改質装置を並列して配置する場合について述べたが、これに限らず、3機以上配置してもよいし、1機で稼動することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1,2…CO2吸収装置、3…CO2放出装置、4,5,6…冷却機(熱交換器)、71,72,8…バケットコンベア(搬送手段)、9…真空ポンプ(減圧手段)、11…回転体(装置本体)、12…羽根、19a,19b,19c…供給口、20a,20b…流入口、21a,21b…排出口、22a,22b,22c…流出口、23a,23b,24…ヒータ(加熱手段)、251,252…ホッパー、26a〜26i…開閉バルブ、27a〜27i…配管、28…CO2排出口、31…吸収装置本体、33…回転軸、34…連通孔、35…噴射口、36…スクリュー羽根、41,42…CO2吸収型改質装置、43…再生装置、44…吸引ポンプ(減圧手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所、セメント工場などからの排ガスから二酸化炭素を分離回収するための二酸化炭素吸収分離システム、及び二酸化炭素の吸収分離特性を利用して天然ガス、炭化水素ガス、バイオ系燃料等から改質を行う水素製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を防止するため、温室ガスの二酸化炭素(CO2)の発生および大気への放出を削減する様々な対策が検討されている。これまでに、燃焼排ガスからCO2の排出を抑えるために、アミンなどのアルカリ溶液や吸着性能を持つゼオライト粒子を使った吸収または吸着による分離法や、燃料を純酸素燃焼させる酸素燃焼法などが検討されている。
【0003】
また、固体吸収材を用いたCO2吸収分離方法についての検討がされている。例えば、特許文献1には、エネルギープラントや化学プラント、自動車から発生する排気ガス中の炭素ガスを吸収材としてのリチウムシリケートを用いて処理する炭酸ガス分離装置について開示されている。また、特許文献2には、燃焼ガスなどから排出された高温の炭酸ガスの吸収・放出に優れたリチウムシリケートを用いた炭酸ガス分離装置について開示されている。
【0004】
リチウムシリケート(Li4SO4、以下LS4と呼ぶ)は、二酸化珪素と炭酸リチウムの混合粉末を熱処理することで得られるセラミックス材料である。LS4は自重の約36%、自己体積の200倍に相当する量のCO2を吸収することができる。リチウムシリケート結晶中の酸化リチウム(LiO2)がCO2と直接反応し、炭酸リチウム(Li2CO3)を生成することによりCO2吸収が行なわれる。LS4とCO2との反応は下記式のとおりである。
Li4SiO4+CO2→Li2CO3+Li2SiO3
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3396642号公報
【特許文献2】特許第3591724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、固体吸収材を用いた炭酸ガス吸収分離装置では、加熱冷却サイクルのためにエネルギーを消費するうえに、それに伴って金属疲労が生じるという問題があった。また、サイクル外への排熱などのエネルギーを無駄にするという問題があった。
【0007】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、加熱冷却サイクルのためのエネルギーの消費や金属疲労を生じることがないとともに、サイクル外へのエネルギーの無駄を回避しえる二酸化炭素吸収分離システム及び水素製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、LS4が室温から700℃程度までの幅広い温度域でCO2を吸収でき、繰り返し吸収・放出することができるという特徴に注目し、様々な研究を重ねた結果、本発明を究明するに至った。
【0009】
本発明に係る二酸化炭素吸収分離システムは、リチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、供給される排ガス中のCO2を吸収するCO2吸収装置と、CO2を吸収したリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、リチウムシリケートからCO2を放出させるCO2放出装置と、前記CO2吸収装置から、CO2を吸収したリチウムシリケートを、前記CO2放出装置へ搬送する第1の搬送手段と、前記CO2放出装置から、CO2を放出後のリチウムシリケートを、前記CO2吸収装置へ搬送する第2の搬送手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る水素製造システムは、燃料を改質する触媒およびリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、燃料および水蒸気が供給されて改質により水素およびCO2を発生させるとともに発生したCO2を吸収する改質装置と、改質に用いられた触媒およびCO2を吸収したリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、触媒を再生するとともにリチウムシリケートからCO2を放出させる再生装置と、前記改質装置から触媒およびリチウムシリケートを前記再生装置へ搬送する第1の搬送手段と、前記再生装置から触媒およびリチウムシリケートを前記改質装置へ搬送する第2の搬送手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱冷却サイクルのためのエネルギーの消費および金属疲労を生じることがないとともに、サイクル外へのエネルギーの無駄を回避しえる二酸化炭素吸収分離システム及び水素製造システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る二酸化炭素吸収分離システムの説明図。
【図2】本発明の実施例1に係る二酸化炭素吸収分離システムであり、図1と比べ開閉弁の開閉状態が異なる場合の説明図。
【図3】図1のシステムの一構成であるCO2吸収装置の詳細な説明図。
【図4】本発明の実施例2に係る水素製造システムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る二酸化炭素吸収分離システム及び水素製造システムについて詳細に説明する。
本発明の二酸化炭素(CO2)吸収分離システムにおいては、CO2吸収装置によるCO2吸収プロセスとCO2放出装置によるCO2放出プロセスが行われる。ここで、CO2吸収装置は加熱手段により500〜650℃に設定され、CO2放出装置は別な加熱手段によりCO2吸収装置より高い温度(650〜750℃)に設定される。CO2吸収装置からのCO2吸収済みLS4は第1の搬送手段(例えばバケットコンベア)によりCO2放出装置へ搬送され、CO2放出装置ではCO2を放出した後、第2の搬送手段(例えばバケットコンベア)によりCO2吸収装置へ戻される。
【0014】
ここで、搬送手段としてバケットコンベアを用いた場合、このバケットコンベアの耐熱温度は300℃であるので、CO2吸収装置やCO2放出手段のLS4排出口側に熱交換器を設けて、コンベアの耐熱温度以下まで冷やして搬送することが好ましい。なお、熱交換器を設けることにより、回収した高温の排熱を蒸気タービンの発電等に利用することができる。
【0015】
本発明においては、CO2吸収装置は複数例えば2機配置し、各CO2吸収装置は排ガス流入側にガス流入切り替え用の開閉バルブを備えていることが好ましい。このような切り替え方式にすれば、一方のCO2吸収装置からLS4をCO2放熱装置へ搬送するときは、排ガスを他方のCO2吸収装置へ供給し、他方のCO2吸収装置からLS4をCO2放熱装置へ搬送するときは、排ガスを一方のCO2吸収装置へ供給できるので、連続して排ガスからCO2を吸収することができる。従って、CO2吸収装置の稼働率を上げることができる。このとき、CO2吸収装置では、次の吸収反応(発熱反応)が生じる。なお、反応熱は75kJ/mol−Li4SiO4である。
【0016】
吸収反応(放熱):Li4SiO4+CO2→Li2CO3+Li2SiO3
また、CO2放出装置では、次の放出反応が行われる。
放出反応(吸熱):Li2CO3+Li2SiO3→Li4SiO4+CO2
本発明において、前記CO2吸収装置へのガスの流入路,流出路の夫々に、開閉バルブの切り替えを行うためのCO2濃度計を設けることが好ましい。これにより、CO2吸収装置へのガスの流入路及び流出路におけるCO2濃度を正確に計測でき、CO2吸収装置におけるLS4によるCO2の吸収度合いを確認することができる。
【0017】
本発明において、CO2放出装置では、CO2放出装置に窒素を入れ、CO2放出装置のCO2放出口に吸引ブロアを設置し、吸引しながらCO2を放出させ、回収することができる。この場合、CO2の放出過程は常圧の状態で行う。また、窒素を入れずにCO2放出装置のCO2放出口に減圧手段としての吸引ポンプ(真空ポンプ)を設置し、減圧状態でCO2を放出することもできる。この場合、圧力は例えば0.1気圧とする。また、窒素の代りにCO2をCO2放出装置に入れることができる。CO2を回収する目的とすれば、CO2を入れることにより、純度の高いCO2を回収できる。純度の高いCO2を回収できれば、CO2を製品として飲料メーカー等に再利用することができる。
【0018】
本発明の水素製造システムも、二酸化炭素吸収分離システムと同様に構成することができる。例えば、改質装置及び再生装置のLS4排出側に熱交換器を設けることにより、高温の排熱を有効に利用することができる。但し、メタンなどの燃料及び水蒸気がニッケル,ルテニウム,ロジウムなどの触媒を有する改質装置に供給され、改質装置からは改質後の水素が収集される。改質装置では、下記の主な水素製造反応が行なわれる。
2CxHy+2H2O→(y+2)H2+2xCO
CO+H2O→H2+CO2
次に、本発明の二酸化炭素吸収分離システム及び水素製造システムの具体例について説明する。
(実施例1)
本発明に係る二酸化炭素吸収分離システムについて図1、図2及び図3を参照して説明する。ここで、図1、図2は同システムの全体を示す説明図であり、図1は第1のCO2吸収装置でCO2を吸収し、CO2放出装置でCO2を放出するときの開閉バルブの状態を、図2は第2のCO2吸収装置でCO2を吸収し、CO2放出装置でCO2を放出するときの開閉バルブの状態を示す。また、図3はCO2吸収装置の要部の説明図を示す。
【0019】
このシステムは、並列に配置された,リチウムシリケート(LS4)を収容して二酸化炭素(CO2)の吸収を行う第1・第2のCO2吸収装置1,2と、LS4からCO2の放出を行うCO2放出装置3と、CO2吸収装置1,2及びCO2放出装置3のLS4排出口側に夫々配置された冷却機4,5,6と、CO2を吸収したLS4を搬送するための第1の搬送手段としての第1のバケットコンベア71・72と、CO2放出後のLS4を搬送するための第2の搬送手段としての第2のバケットコンベア8と、減圧手段としての真空ポンプ9を備えている。第1・第2のCO2吸収装置1,2内には、図示しないLS4が収納されている。
【0020】
第1のCO2吸収装置1は、図3に示すようなロータリキルン方式の構成になっている。
図中の符番31は、第1のCO2吸収装置1の一構成である筒状の吸収装置本体を示す。この吸収装置本体31の中心軸方向には、シール部32よりシールされた回転軸33が配置されている。この回転軸33には、排ガスを吸収装置本体31内に導入するための連通孔34が設けられ、更にこの連通孔34に連通する噴射口35が回転軸32の周方向に例えば4個ずつ設けられている。前記回転軸33には、被処理物37を図中の右側から左側に搬送するためのスクリュー羽根36が設けられている。
【0021】
吸収装置本体31の外周部には、図1,2に示すように、シリンダ部内を500〜650℃に維持するための加熱手段としてのヒータ23aが設けられている。また、吸収装置本体31には、LS4を吸収装置本体31内に供給するための供給口19aが設けられ、排ガスを流入するための流入口20a、処理後のガスを排出するための排出口21a、CO2を吸収したLS4を排出するための排出口22aが設けられている。
第2のCO2吸収装置2も、第1のCO2吸収装置1と同様な構成になっており、LS4の供給口19b,排出口22bと、排ガスの流入口20b,流出口21bと、ヒータ23b等を備えている。
【0022】
前記CO2放出装置3は、第1のCO2吸収装置1と比較して、ガス通路及び噴射口を有した回転軸の代りに中実の回転軸を用いる点、排ガスの流入・流出のための部材(流入口等)を設けない点、及びCO2の放出口を設ける点を除いて、第1のCO2吸収装置1と実質的に同様なロータリキルン方式の構成を採用している。但し、CO2放出装置3の外周部には加熱手段としてのヒータ24が設けられ、このヒータ24によりCO2放出装置3は650〜750℃に維持される。CO2放出装置3にも、LS4の供給口19c,排出口22cが設けられている。
【0023】
第1のCO2吸収装置1のLS4排出口22a及び第2のCO2吸収装置2のLS4排出口22bと、CO2放出装置3のLS4供給口19c間のラインには、CO2を吸収したLS4を投入するための第1のホッパー251が配置されている。前記排出口22aと冷却機4,排出口22bと冷却機5間は、開閉バルブ26aを介装した配管27a,開閉バルブ26bを介装した配管27bにより夫々接続されている。冷却機4と第1のホッパー251間は前記第1のバケットコンベア71により接続され、冷却機5と第1のホッパー251間は前記第1のバケットコンベア72により接続されている。
【0024】
CO2放出装置3のLS4排出口22cと、第1のCO2吸収装置1のLS4供給口19a及び第2のCO2吸収装置2のLS4供給口19b間のラインには、CO2放出後のLS4を投入するための第2のホッパー252が配置されている。前記排出口22c側の冷却機6と第2のホッパー252間は、前記第2のバケットコンベア8により接続されている。第2のホッパー252と第1のCO2吸収装置1のLS4供給口19a間は、開閉バルブ26cを介装した配管27cにより接続されている。第2のホッパー252と第2のCO2吸収装置2のLS4供給口19b間は、配管27cと該配管27cから分岐した,開閉バルブ26dを介装した配管27dにより夫々接続されている。
【0025】
CO2吸収装置1,2の各排ガスの流入口20a,20bに接続される配管27e,27fには、夫々開閉バルブ26e,26fが設けられている。CO2放出装置3のCO2放出口28と真空ポンプ9は、開閉バルブ26gを介装した配管27gにより接続されている。第1のCO2吸収装置1の排出口21aには、開閉バルブ26hを介装した配管27hが接続されている。第2のCO2吸収装置2の排出口21bには、開閉バルブ26iを介装した配管27iが接続されている。なお、第1のCO2吸収装置1でCO2を処理するときに、放出装置3でCO2を放出するので、第2のCO2吸収装置2の排ガスの流入口20b,流出口21bの夫々の開閉バルブ26f,26iは閉じる状態となる。
【0026】
次に、上記二酸化炭素吸収分離システムの作用について説明する。
(1) 第1のCO2吸収装置1でCO2ガスを吸収し、CO2放出装置3でCO2ガスを放出する場合(図1参照)。
まず、第1のCO2吸収装置1,2をヒータ23a,23bにより夫々500〜650℃に設定するとともに、CO2放出装置3をヒータ24により650〜750℃に設定する。次に、開閉弁26b,26e,26g,26h(但し、開閉弁26hはCO2吸収時に閉める)を開け、開閉弁26a,26c,26f,26iを閉じた状態で、CO2を含む排ガスをCO2吸収装置1の流入口20aからCO2吸収装置1へ供給する。但し、開閉弁26bは、LS4を第2のCO2吸収装置2から放出装置3に移動するときだけに開けられ、移動終了後に直に閉める。また、開閉弁26dは、LS4を放出装置3から第2のCO2吸収装置2に移動するときだけに開けられ、移動終了後に直に閉める。更に、開閉弁26gは、LS4を第2のCO2吸収装置2から放出装置3に全て移動した後に開け、その後真空ポンプ9を起動する。CO2吸収装置1では、既述したように、LS4結晶中のLiO2がCO2と直接反応し、Li2CO3を生成することによりCO2の吸収が行われる。この際、LS4で吸収されたCO2以外のガスは、排出口21aより処理後ガスとして収集される。
【0027】
(2) 第2のCO2吸収装置2でCO2ガスを吸収し、CO2放出装置3でCO2ガスを放出する場合(図2参照)。
開閉弁26d,26e,26hを閉じ、開閉弁26c,26fを開けた状態で、CO2を含む排ガスをCO2吸収装置2の流入口20bからCO2吸収装置2へ供給し、LS4によるCO2吸収を行う。この際、LS4で吸収されたCO2以外のガスは、排出口21bより処理後ガスとして収集される。また、排ガスをCO2吸収装置2へ供給しているとき、第1のCO2吸収装置1でCO2を吸収したLS4は、配管27aを経て冷却機4に送られ、ここで300℃以下まで冷却された後、第1のバケットコンベア71により第1のホッパー251を経てCO2放出装置3に送られる。
【0028】
一方、第2のCO2吸収装置2でCO2を吸収したLS4も、配管27bを経て冷却機5に送られ、ここで300℃以下まで冷却された後、第1のバケットコンベア72により第1のホッパー251を経てCO2放出装置3に送られる。
【0029】
(3) 次に、CO2放出装置3では、真空ポンプ9を用いてCO2放出口28より減圧(0.1気圧)の状態でCO2を放出する。また、CO2放出装置3でCO2が放出された後のLS4は、冷却機6に送られ、ここで300℃以下まで冷却された後、第2のバケットコンベア8により第2のホッパー252を経て第1のCO2吸収装置1又は第2のCO2吸収装置2に送られる。
【0030】
(4) 上記(1)、(2)による各開閉バルブの切り替えは、第1のCO2吸収装置1からCO2を吸収したLS4をCO2放出装置3へ搬送させるときには、排ガスを第2のCO2吸収装置2へ送り、また第2のCO2吸収装置2からCO2を吸収したLS4をCO2放出装置3へ搬送させるときには、排ガスを第1のCO2吸収装置2へ送るようにして、連続して排ガスからCO2を吸収するように構成されている。
【0031】
実施例1に係る二酸化炭素吸収分離システムによれば、CO2吸収装置1,2及びCO2放出装置3を備え、CO2吸収装置1,2からCO2を吸収したLS4をCO2放出装置3に移動させ、またCO2放出後のLS4をCO2放出装置3からCO2吸収装置1,2へ戻してLS4を繰り返し使用できるような構成にしたので、CO2吸収装置1,2及びCO2放出装置3の温度を切り替える必要がなく、より少ないエネルギーでCO2の吸収分離を行うことができる。従って、従来のように加熱冷却サイクルのためのエネルギーの消費もなく、それに伴う金属疲労を回避できる。また、CO2吸収装置1,2やCO2放出装置3のLS4排出口側に冷却機4,5,6を配置することにより、回収した高温の排熱を蒸気タービンの発電等に利用することができる。
【0032】
(実施例2)
本発明の水素製造システムについて図4を参照して説明する。但し、図1、図2と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみ説明する。
水素製造システムは、燃料を改質する触媒を含み、かつリチウムシリケート(LS4)を収容し、燃料および水蒸気が供給されて改質により水素およびCO2を発生させるとともに、発生したCO2を吸収する改質装置を備えている。
具体的には、並列に配置された第1・第2のCO2吸収型改質装置41,42と、触媒を再生させるとともにLS4からCO2の放出を行う再生装置43と、改質装置41,42及び再生装置43のLS4排出口側に夫々配置された冷却機4,5,6と、触媒およびCO2を吸収したLS4を搬送するための第1の搬送手段としての第1のバケットコンベア71・72と、触媒およびCO2を放出後のLS4を搬送するための第2の搬送手段としての第2のバケットコンベア8と、吸引ポンプ44を備えている。改質装置41,42及び再生装置43は、前記CO2吸収装置と同様にロータリキルン方式の構成となっている。改質装置41,42は、夫々燃料を改質する触媒およびLS4を収容する装置本体(図示せず)と、加熱手段23a,23bを備えている。再生装置43は、改質に用いられた触媒およびCO2を吸収したLS4を収容する装置本体(図示せず)と、ヒータ24とを備えている。
【0033】
図3の水素製造システムの作用は、図1のシステムと比べ、LS4を繰り返し使用しようする点で同じであり、次の3点のみ相違する。
(1)まず、改質装置41,42は触媒(ニッケル等)及びLS4を有し、流入口20a,20bよりメタン等の燃料及び水蒸気が夫々供給され、改質装置41,42では既述した水素製造反応が行われる。
(2)改質装置41,42の夫々の排出口21a,21bからは改質反応後の水素が収集される。
(3)再生装置43にはN2が導入され、再生装置43からは吸引ポンプ44によりCO2とN2が放出され、この後再生装置43から改質装置41,42に触媒とLS4の供給が行われる。
【0034】
実施例2に係る水素製造システムによれば、実施例1と同様な理由により、より少ないエネルギーでCO2の吸収、水素の収集を行うことができる。従って、従来のように加熱冷却サイクルのためのエネルギーの消費もなく、それに伴う金属疲労を回避できる。また、改質装置41,42や再生装置43のLS4排出口側に冷却機4,5,6を配置することにより、回収した高温の排熱を蒸気タービンの発電等に利用することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0036】
具体的には、上記実施例では、CO2吸収装置や改質装置としてロータリキルン方式の装置を用いた場合について述べたが、これに限らず、縦型充填層を反応機器として適用できる。また、上記実施例では、2機のCO2吸収装置や改質装置を並列して配置する場合について述べたが、これに限らず、3機以上配置してもよいし、1機で稼動することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1,2…CO2吸収装置、3…CO2放出装置、4,5,6…冷却機(熱交換器)、71,72,8…バケットコンベア(搬送手段)、9…真空ポンプ(減圧手段)、11…回転体(装置本体)、12…羽根、19a,19b,19c…供給口、20a,20b…流入口、21a,21b…排出口、22a,22b,22c…流出口、23a,23b,24…ヒータ(加熱手段)、251,252…ホッパー、26a〜26i…開閉バルブ、27a〜27i…配管、28…CO2排出口、31…吸収装置本体、33…回転軸、34…連通孔、35…噴射口、36…スクリュー羽根、41,42…CO2吸収型改質装置、43…再生装置、44…吸引ポンプ(減圧手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、供給される排ガス中のCO2を吸収するCO2吸収装置と、
CO2を吸収したリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、リチウムシリケートからCO2を放出させるCO2放出装置と、
前記CO2吸収装置から、CO2を吸収したリチウムシリケートを、前記CO2放出装置へ搬送する第1の搬送手段と、
前記CO2放出装置から、CO2を放出後のリチウムシリケートを、前記CO2吸収装置へ搬送する第2の搬送手段と
を具備することを特徴とする二酸化炭素吸収分離システム。
【請求項2】
前記CO2放出装置はCO2放出側に減圧手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素吸収分離システム。
【請求項3】
前記CO2吸収装置を複数備え、各CO2吸収装置は排ガス流入側に開閉バルブを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の二酸化炭素吸収分離システム。
【請求項4】
前記CO2吸収装置は排ガスの流入路および流出路に、CO2濃度計を備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の二酸化炭素吸収分離システム。
【請求項5】
前記CO2吸収装置及びCO2放出装置はリチウムシリケート排出側に夫々熱交換器を備えていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の二酸化炭素吸収分離システム。
【請求項6】
燃料を改質する触媒およびリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、燃料および水蒸気が供給されて改質により水素およびCO2を発生させるとともに発生したCO2を吸収する改質装置と、
改質に用いられた触媒およびCO2を吸収したリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、触媒を再生するとともにリチウムシリケートからCO2を放出させる再生装置と、
前記改質装置から触媒およびリチウムシリケートを前記再生装置へ搬送する第1の搬送手段と、
前記再生装置から触媒およびリチウムシリケートを前記改質装置へ搬送する第2の搬送手段と
を具備することを特徴とする水素製造システム。
【請求項7】
前記改質装置及び再生装置はリチウムシリケート排出側に夫々熱交換器を備えていることを特徴とする請求項6記載の水素製造システム。
【請求項1】
リチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、供給される排ガス中のCO2を吸収するCO2吸収装置と、
CO2を吸収したリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、リチウムシリケートからCO2を放出させるCO2放出装置と、
前記CO2吸収装置から、CO2を吸収したリチウムシリケートを、前記CO2放出装置へ搬送する第1の搬送手段と、
前記CO2放出装置から、CO2を放出後のリチウムシリケートを、前記CO2吸収装置へ搬送する第2の搬送手段と
を具備することを特徴とする二酸化炭素吸収分離システム。
【請求項2】
前記CO2放出装置はCO2放出側に減圧手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素吸収分離システム。
【請求項3】
前記CO2吸収装置を複数備え、各CO2吸収装置は排ガス流入側に開閉バルブを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の二酸化炭素吸収分離システム。
【請求項4】
前記CO2吸収装置は排ガスの流入路および流出路に、CO2濃度計を備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の二酸化炭素吸収分離システム。
【請求項5】
前記CO2吸収装置及びCO2放出装置はリチウムシリケート排出側に夫々熱交換器を備えていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の二酸化炭素吸収分離システム。
【請求項6】
燃料を改質する触媒およびリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、燃料および水蒸気が供給されて改質により水素およびCO2を発生させるとともに発生したCO2を吸収する改質装置と、
改質に用いられた触媒およびCO2を吸収したリチウムシリケートを収容する装置本体と、加熱手段とを備え、触媒を再生するとともにリチウムシリケートからCO2を放出させる再生装置と、
前記改質装置から触媒およびリチウムシリケートを前記再生装置へ搬送する第1の搬送手段と、
前記再生装置から触媒およびリチウムシリケートを前記改質装置へ搬送する第2の搬送手段と
を具備することを特徴とする水素製造システム。
【請求項7】
前記改質装置及び再生装置はリチウムシリケート排出側に夫々熱交換器を備えていることを特徴とする請求項6記載の水素製造システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−161332(P2011−161332A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24523(P2010−24523)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]