説明

二酸化炭素回収システム

【課題】燃焼排ガスからの不純物除去性能を向上させた二酸化炭素回収システムを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、二酸化炭素回収システムは、不純物として硫黄酸化物および/または窒素酸化物を含む燃焼排ガスから、不純物を除去する不純物除去装置(21)と、不純物が除去された燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を排出する吸収塔(22)と、吸収塔から排出された吸収液から二酸化炭素を除去し、吸収液を再生して排出する再生塔(24)とを備え、不純物除去装置は、燃焼排ガスと、不純物を吸収可能な液体とを接触させて、燃焼排ガス中の不純物を、液体に吸収させる気液接触塔(31)と、気液接触塔内に設置されており、不純物を吸収した液体と接触することにより、液体から不純物を除去するイオン交換樹脂(32)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の燃焼生成物である二酸化炭素(CO)の温室効果による地球温暖化の問題が大きくなっている。このような中、大量の化石燃料を使用する火力発電所等を対象に、燃焼排ガスとアミン系吸収液を接触させ、燃焼排ガス中の二酸化炭素を分離・回収する方法や、回収された二酸化炭素を大気へ放出することなく貯蔵する方法が、精力的に研究されている。
【0003】
このような吸収液を用いて二酸化炭素を分離・回収する方法の例としては、吸収塔にて燃焼排ガスと吸収液を接触させて、燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる工程と、二酸化炭素を吸収した吸収液を再生塔にて加熱して、二酸化炭素を吸収液から追い出す工程とを有する方法が挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。この吸収液はその後、再生塔にて再生された後、再度吸収塔へと循環し再使用される。
【0004】
アミン系化学吸収法を利用した二酸化炭素回収システムでは、吸収液の性能低下を防ぐために、燃焼排ガス中の酸性ガスを除去する装置が使用される。このような酸性ガスの例としては、硫黄酸化物ガスや、窒素酸化物ガスが挙げられる。従来の方法では、NaOH水溶液、Ca(OH)水溶液、CaCOスラリー、CaSOスラリー等により、硫黄酸化物や窒素酸化物を除去している(例えば、特許文献2、3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−254212号公報
【特許文献2】特許第2678697号公報
【特許文献3】特許第4216152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、燃焼排ガスからの不純物除去性能を向上させた二酸化炭素回収システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様の二酸化炭素回収システムは、不純物として硫黄酸化物および/または窒素酸化物を含む燃焼排ガスから、前記不純物を除去する不純物除去装置と、前記不純物が除去された前記燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液を排出する吸収塔と、前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を除去し、前記吸収液を再生して排出する再生塔とを備え、前記不純物除去装置は、前記燃焼排ガスと、前記不純物を吸収可能な液体とを接触させて、前記燃焼排ガス中の前記不純物を、前記液体に吸収させる気液接触塔と、前記気液接触塔内に設置されており、前記不純物を吸収した前記液体と接触することにより、前記液体から前記不純物を除去するイオン交換樹脂とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二酸化炭素回収システムにおいて、燃焼排ガスからの不純物除去性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す概略構成図である。
【図2】第1実施形態の不純物除去装置の構成を示す概略構成図である。
【図3】燃焼排ガス中の不純物濃度の測定結果を示した表である。
【図4】第1吸収液中の不純物濃度の経時変化の一例を示したグラフである。
【図5】気液接触塔の高さと不純物の除去率との関係を示したグラフである。
【図6】第2実施形態の不純物除去装置の構成を示す概略構成図である。
【図7】第3実施形態の不純物除去装置の構成を示す概略構成図である。
【図8】ハニカム構造体の構造の詳細を示した上面図および斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す概略構成図である。
【0012】
図1の二酸化炭素回収システムでは、化石燃料の燃焼により生成された燃焼排ガスに含まれる不純物である硫黄酸化物および/または窒素酸化物を、これらを吸収可能な液体である第1吸収液を用いて回収する。
【0013】
図1の二酸化炭素回収システムではさらに、上記燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を、二酸化炭素を吸収可能な第2吸収液を用いて回収する。第2吸収液は、例えばアミン系吸収液である。
【0014】
以下、図1の二酸化炭素回収システムの構成について、詳細に説明する。
【0015】
図1の二酸化炭素回収システムは、不純物除去装置21と、吸収塔22と、再生熱交換器23と、再生塔24と、リボイラー25とを備えている。
【0016】
不純物除去装置21は、燃焼排ガス1から、不純物である硫黄酸化物および/または窒素酸化物を除去する装置である。図1では、不純物が除去されて、不純物除去装置21から排出された燃焼排ガスが、符号2で示されている。不純物除去装置21には、後述するイオン交換樹脂の洗浄・再生用に、水洗浄用純水41用、苛性ソーダ溶液42用、ドレン排液43用の配管が設置されている。不純物除去装置21の構成の詳細については、後述する。
【0017】
吸収塔22には、不純物除去装置21から排出された燃焼排ガス2が供給される。吸収塔22は、燃焼排ガス2中の二酸化炭素を吸収液(第2吸収液)に吸収させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を排出する塔である。図1では、二酸化炭素が除去されて、吸収塔22から排出された燃焼排ガスが、符号3で示されている。なお、二酸化炭素を除去する前の燃焼排ガス2は、吸収塔22の下部から吸収塔22内に供給され、二酸化炭素が除去された燃焼排ガス3は、吸収塔22の頂部から吸収塔22外に排出される。
【0018】
また、図1では、吸収塔22内で二酸化炭素を吸収する前の吸収液(リーン液)が、符号16で示され、吸収塔22内で二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)が、符号13で示されている。前者の吸収液16は、吸収塔22の上部から吸収塔22内に供給され、後者の吸収液13は、吸収塔22の底部から吸収塔22外に排出される。
【0019】
そして、吸収塔22から排出された吸収液13は、再生熱交換器23により加熱されて昇温した後、再生塔24の上部から再生塔24内に供給される。図1では、再生熱交換器23により加熱された吸収液(リッチ液)が、符号14で示されている。
【0020】
再生塔24は、この吸収液14から二酸化炭素を放出させることで、吸収液14から二酸化炭素を除去し、吸収液14を再生させる塔である。図1では、吸収液14から除去されて、再生塔24から排出された二酸化炭素ガスが、符号4で示されている。この二酸化炭素ガス4は、再生塔24の頂部から再生塔24外に排出される。
【0021】
また、図1では、再生塔24で再生されて排出された吸収液(リーン液)が、符号15で示されている。この吸収液15は、再生塔24の底部から再生塔24外に排出される。
【0022】
そして、再生塔24から排出された吸収液15は、再生熱交換器23により冷却されて降温した後、吸収塔22の上部から吸収塔22内に供給される。この再生熱交換器23により冷却された吸収液が、前述の吸収液16に相当する。
【0023】
一方、リボイラー25には、再生塔24から排出された吸収液(リーン液)17が供給される。リボイラー25は、吸収液17を加熱することで、吸収液17から蒸気を発生させると共に、吸収液17から二酸化炭素ガスを放出させる。これらの気体は、再び再生塔24内に供給される。そして、これらの気体の熱で吸収液14が加熱されることで、前述のように、吸収液14から二酸化炭素ガス4が放出される。
【0024】
なお、再生塔24から排出されて吸収塔22へと向かう吸収液15は、この余熱により高温となっている。そこで、再生熱交換器23は、吸収塔22から排出されて再生塔24へと向かう吸収液13を、この余熱により加熱する。その結果、吸収液15は、余熱を失い冷却され、吸収液13は余熱を得て加熱される。
【0025】
なお、図1の二酸化炭素回収システムでは、吸収塔22の頂部に、燃焼排ガス2に含まれる蒸気を凝縮させて除去するための凝縮器を設置してもよい。さらには、再生塔24の頂部に、二酸化炭素ガス4に含まれる蒸気を凝縮させて除去するための凝縮器を設置してもよい。
【0026】
[不純物除去装置21の詳細]
次に、不純物除去装置21の構成について、詳細に説明する。
【0027】
図2は、第1実施形態の不純物除去装置21の構成を示す概略構成図である。
【0028】
本実施形態の不純物除去装置21は、図2に示すように、気液接触塔31と、イオン交換樹脂32と、不純物を除去する前の燃焼排ガス1の流入口33と、不純物が除去された燃焼排ガス2の流出口34と、吸収液(第1吸収液)11の供給口35と、吸収液11の排出口36と、吸収液11を移送するポンプ37とを備えている。
【0029】
気液接触塔31は、流入口33から流入した燃焼排ガス1と、供給口35から供給された吸収液11とを接触させて、燃焼排ガス1中の不純物を、吸収液11に吸収させる塔である。これにより、燃焼排ガス1から不純物が除去される。図2では、不純物が除去された燃焼排ガスが、図1と同様に、符号2で示されている。不純物が除去された燃焼排ガス2は、流出口34から気液接触塔31外に排出される。
【0030】
また、図2では、燃焼排ガス1と接触し、不純物を吸収した吸収液が、符号12で示されている。不純物を吸収した吸収液12は、イオン交換樹脂32の上面へと落下する。
【0031】
イオン交換樹脂32は、気液接触塔31内に設置されており、吸収液12と接触することで、吸収液12から不純物を除去する樹脂である。吸収液12は、イオン交換樹脂32の上面から底面へと透過する際に、その不純物が除去される。図2では、不純物が除去されて、イオン交換樹脂32の底面から落下する吸収液が、符号11で示されている。この吸収液11は、排出口36から気液接触塔31外に排出される。
【0032】
そして、ポンプ37は、排出口36から排出された吸収液11を、供給口35へと移送する。これにより、吸収液11が、不純物除去装置21内を循環することになる。吸収液11は、気液接触塔31内での不純物の吸収、イオン交換樹脂32内での不純物の除去、排出口36から供給口35への移送という処理の繰り返しにより、不純物除去装置21内で繰り返し使用される。なお、ポンプ37は、本開示の移送機構の例である。
【0033】
[気液接触塔31、イオン交換樹脂32の詳細]
次に、引き続き図2を参照し、気液接触塔31の構造や、イオン交換樹脂32の配置について、さらに詳細に説明する。
【0034】
気液接触塔31の内部には、図2に示すように、上面S1、底面S2、側面S3で囲まれた空洞が設けられている。流入口33からの燃焼排ガス1と、供給口35からの吸収液11は、この空洞内で接触することとなる。
【0035】
イオン交換樹脂32は、図2に示すように、この空洞内に設置されている。イオン交換樹脂32は、空洞を、上面S1側の領域と、底面S2側の領域とに分割するよう配置されている。本実施形態では、イオン交換樹脂32は、底面S2付近に配置されているが、上面S1付近や、上面S1と底面S2との中間地点付近に配置されていても構わない。
【0036】
流入口33、流出口34、供給口35、排出口36は、いずれも上記空洞内に開口している。
【0037】
流入口33と流出口34は、いずれもイオン交換樹脂32の上面よりも上方に設けられている。ただし、流入口33は、気液接触塔31の側面S3に設けられている。一方、流出口34は、気液接触塔31の上面S1に設けられており、流入口33よりも上方に位置している。よって、流入口33からの燃焼排ガス1は、上面S1方向へと上昇して、流出口34から排気されることとなる。
【0038】
また、供給口35は、流入口33や流出口34と同様に、イオン交換樹脂32の上面よりも上方に設けられている。具体的には、供給口35は、気液接触塔31の上面S1付近に設けられており、流入口33よりも上方に位置している。本実施形態の供給口35は、シャワー状または液滴状の吸収液11を噴射する分散盤となっている。供給口35から噴射された吸収液11は、イオン交換樹脂32の上面へと落下することとなる。
【0039】
よって、本実施形態では、図2に示すように、流入口33から流入して上昇する燃焼排ガス1と、供給口35から供給されて落下する吸収液11が、気液接触することとなる。これにより、燃焼排ガス1中の不純物が、吸収液11に吸収される。
【0040】
図2では、不純物を吸収した吸収液が、符号12で示されている。ここで、上記の気液接触は、イオン交換樹脂32の上面よりも上方で起こっている点に留意されたい。そのため、吸収液12は、イオン交換樹脂32の上面へと落下し、イオン交換樹脂32の上面から底面へと透過することとなる。これにより、吸収液12中の不純物が、イオン交換樹脂32により除去される。図2では、不純物が除去されて、イオン交換樹脂32の底面から落下する吸収液が、符号11で示されている。
【0041】
そして、排出口36は、イオン交換樹脂32の底面よりも下方に設けられている。具体的には、排出口36は、気液接触塔31の底面S2付近において、気液接触塔31の側面S3に設けられている。よって、イオン交換樹脂32の底面から落下する吸収液11は、排出口36から排出されることとなる。この吸収液11は、ポンプ37により供給口35へと移送され再使用される。
【0042】
[吸収液11、燃焼排ガス1、不純物の詳細]
次に、吸収液(第1吸収液)11、燃焼排ガス1、不純物の詳細について説明する。
【0043】
燃焼排ガス1は、不純物として、硫黄酸化物および/または窒素酸化物を含んでいる。硫黄酸化物は、吸収液11に吸収された後、主に硫酸イオンに変化する。一方、窒素酸化物は、吸収液11に吸収された後、亜硝酸イオンまたは硝酸イオンに変化する。これらのイオンは、イオン交換樹脂32により吸収液11から除去される。
【0044】
図3は、燃焼排ガス1中の不純物濃度の測定結果を示した表である。
【0045】
この測定結果は、SO濃度が0.0064mol%の燃焼排ガス1を、高さ2.8mの気液接触塔31で処理した場合の処理結果を示している。そして、燃焼排ガス1を、SOを含まない吸収液(処理液)11に気液接触させたところ、気液接触後の燃焼排ガス1のSO濃度は、0.0010mol%となった。一方、燃焼排ガス1を、SOを0.000053mol%含む吸収液(処理液)11に気液接触させたところ、気液接触後の燃焼排ガス1のSO濃度は、0.0028mol%となった。
【0046】
このことから、吸収液11中の不純物イオン濃度が増大すると、吸収液11の不純物吸収能力が低下し、逆に吸収液11中の不純物イオン濃度が低下すると、吸収液11の不純物吸収能力が向上することが解る。
【0047】
よって、吸収液11中の不純物イオンをイオン交換樹脂32で除去することには、低下した吸収液11の不純物吸収能力を回復する効果があることが解る。よって、吸収液11中の不純物イオン濃度は、できるだけ低減することが望ましい。
【0048】
図4は、吸収液11中の不純物濃度の経時変化の一例を示したグラフである。
【0049】
図4には、吸収液11中の硫黄酸化物イオン濃度と、吸収液11中の窒素酸化物イオン濃度の破過曲線が示されている。図4の縦軸は、イオン交換樹脂32に落下直前のイオン濃度(入口濃度)と、イオン交換樹脂32を通過直後のイオン濃度(出口濃度)の比を表し、図4の横軸は、経過時間を表している。不純物除去装置21の条件は、イオン交換樹脂32の実効交換容量を1.2meq/mL、吸収液11の線流速を1500mm/hとした。
【0050】
本実施形態では、吸収液11を、イオン交換樹脂32で再生しながら使用することにより、吸収液11中の硫黄酸化物イオンと窒素酸化物イオンの出口濃度/入口濃度の値を、一定時間ほぼ0に抑えることができる。
【0051】
なお、燃焼排ガス1中にはCOが10%程度存在するため、吸収液11には、COが溶解し、炭酸イオン、炭酸水素イオンが分圧に応じた飽和濃度に近い状態で存在する。強塩基性のイオン交換樹脂32中において、イオン選択係数が大きい硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオンは、イオン選択係数の小さい炭酸イオン、炭酸水素イオンを、イオン交換樹脂32の表面から追い出す効果がある。そのため、イオン交換樹脂32は、吸収液11中にCO由来のイオンが存在していても、硫黄酸化物や窒素酸化物由来のイオンを吸着することができる。
【0052】
不純物除去装置21を運転すると、イオン交換樹脂32中に、硫黄酸化物イオンや窒素酸化物イオンが蓄積されていく。これにより、イオン交換樹脂32のイオン除去能力が低下してしまう。その結果、図4に示すように、吸収液11中の硫黄酸化物イオンや窒素酸化物イオンが除去されにくくなり、これらのイオンの出口濃度/入口濃度の値が上昇してしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、いずれかのイオンの出口濃度/入口濃度の値が0.01を上回った場合、または一定時間が経過した場合に、イオン交換樹脂32の再生処理を行う。これにより、気液接触塔31内の状態を、硫黄酸化物、窒素酸化物が検出できないレベルに長期間制御することが可能となる。なお、イオン交換樹脂32の再生方法については、後述する。
【0054】
図5は、気液接触塔31の高さと不純物の除去率との関係を示したグラフである。
【0055】
図5には、燃焼排ガス1からの不純物の除去率が、気液接触塔31の高さに応じて変化する様子が示されている。なお、気液接触塔31の直径は、1.0mに設定した。
【0056】
図5から、気液接触塔31の高さが増すと、不純物の除去率が上がることが解る。図5によれば、気液接触塔31の高さを2.5m以上に設定すると、不純物の除去率が90%以上となることが解る。本実施形態では、気液接触塔31の高さは、90%程度の除去率が実現される2.5m程度に設定されている。
【0057】
[イオン交換樹脂32の再生方法]
次に、再び図2を参照し、イオン交換樹脂32の再生方法について説明する。
【0058】
不純物除去装置21では、水洗浄用純水41用の配管と、苛性ソーダ溶液42用の配管が、気液接触塔31の上面S1付近の側面S3に設けられている。さらには、ドレン排液43用の配管が、気液接触塔31の底面S2に設けられている。
【0059】
イオン交換樹脂32の再生処理を行う際には、まず、気液接触塔31内への燃焼排ガス1の供給と、ポンプ37の運転を止める。次に、水洗浄用純水41で十分にイオン交換樹脂32を洗浄し、その排液をドレン排液43として排出する。次に、4〜8%の濃度の苛性ソーダ溶液42でイオン交換樹脂32を再生し、その排液をドレン排液43として排出する。次に、再度イオン交換樹脂32を水洗浄用純水41で十分に洗浄し、その排液をドレン排液43として排出する。最後に、気液接触塔31内への燃焼排ガス1の供給と、ポンプ37の運転を再開する。
【0060】
このことから解るように、イオン交換樹脂32の再生処理中は、燃焼排ガス1からの不純物の除去が実施できなくなる。そこで、本実施形態では、不純物除去装置21を2系統設置してもよい。この場合、一方の系統でイオン交換樹脂32を再生する際には、別の系統で燃焼排ガス1の処理を行うことができる。
【0061】
なお、水洗浄用純水41用の配管と、苛性ソーダ溶液42用の配管は、イオン交換樹脂32の上面よりも上方であれば、図2と異なる位置に設置しても構わない。また、ドレン排液43用の配管は、イオン交換樹脂32の底面よりも下方であれば、図2と異なる位置に設置しても構わない。
【0062】
[第1実施形態の効果]
最後に、第1実施形態の効果について説明する。
【0063】
以上のように、本実施形態では、燃焼排ガス1中の不純物である硫黄酸化物および/または窒素酸化物を、第1吸収液11を使用して除去する。この第1吸収液11としては、第2吸収液13と同様に、アミン系吸収液を使用可能である。よって、本実施形態によれば、NaOH水溶液、Ca(OH)水溶液、CaCOスラリー、CaSOスラリー等を使用せずに、硫黄酸化物および/または窒素酸化物を除去することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、第1吸収液11中の不純物を、イオン交換樹脂32により除去する。これにより、第1吸収液11を再生して再使用することが可能となり、不純物除去装置21を長時間運転することが可能となる。さらには、イオン交換樹脂32の再生処理により、イオン交換樹脂32を長期間使用することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態では、イオン交換樹脂32が、気液接触塔31内に設置されており、具体的には、気液接触塔31内において、上面S1、底面S2、側面S3で囲まれた気液接触用の空洞内に設置されている。このように、本実施形態の不純物除去装置21では、気液接触塔31とイオン交換樹脂32が一体化されている。このような構造の不純物除去装置21には、次のような利点がある。
【0066】
第1に、本実施形態の不純物除去装置21によれば、イオン交換樹脂32の再生処理を簡単に行うことができる。本実施形態では、イオン交換樹脂32が、気液接触用の空洞内に設置されているため、この空洞を、イオン交換樹脂32の再生処理用の空洞としても使用することができる。本実施形態によれば、水洗浄用純水41用の配管と、苛性ソーダ溶液42用の配管から、それぞれ水洗浄用純水41と苛性ソーダ溶液42を供給し、これらの排液をドレン排液43用の配管から排出することで、イオン交換樹脂32の再生処理を短時間で簡単に行うことが可能となる。なお、ドレン排液43用の配管は、吸収液11用の配管と一部共通化し、ポンプ37を、吸収液11の移送用と、ドレン排液43の排出用に共用できるようにしてもよい。
【0067】
第2に、本実施形態では、不純物の除去処理も、イオン交換樹脂32の再生処理も、共に気液接触塔31内で行われるため、気液接触塔31を停止せずに、イオン交換樹脂32の再生処理を行うことができる。
【0068】
第3に、気液接触塔31とイオン交換樹脂32を分離型とする場合には、吸収液11の流量を、気液接触塔31内と、イオン交換樹脂32用の塔内とで、別々に設定しなければならないが、本実施形態によれば、この問題を解消することができる。理由は、本実施形態では、イオン交換樹脂32により吸収液11中の不純物を除去する際、吸収液11がイオン交換樹脂32を浸漬している状態となるため、流量の違いによる不純物除去率の変化を考慮する必要がないからである。
【0069】
第4に、本実施形態では、吸収液11がイオン交換樹脂32を浸漬している状態となるため、イオン交換樹脂32を非浸漬状態で使用する場合に比べ、イオン交換樹脂32全体が不純物除去に使用されることになり、イオン交換樹脂32内の使用されない無駄な部分を減らすことが可能となる。
【0070】
以上のように、本実施形態では、燃焼排ガス1中の不純物を吸収液11に吸収させ、吸収液11中の不純物をイオン交換樹脂32で除去することにより、不純物を回収する。これにより、本実施形態では、NaOH水溶液、Ca(OH)水溶液、CaCOスラリー、CaSOスラリー等を使用せずに、不純物を回収することが可能となる。さらには、吸収液11を再生して再使用することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態では、イオン交換樹脂32が、気液接触塔31内に設置されており、具体的には、気液接触塔31内において、上面S1、底面S2、側面S3で囲まれた気液接触用の空洞内に設置されている。これにより、本実施形態では、イオン交換樹脂32の再生処理が簡単になる、気液接触塔31を停止せずにイオン交換樹脂32の再生処理を行うことができる、吸収液11の流量の設定自由度が高まる、イオン交換樹脂32の無駄な部分が減るなど、不純物除去装置21の動作や構造を効率化することが可能となる。
【0072】
以下、第1実施形態の変形例である第2から第5実施形態について説明する。第2から第5実施形態については、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の不純物除去装置21の構成を示す概略構成図である。
【0074】
第2実施形態では、イオン交換樹脂32は、第1実施形態と同様に、気液接触塔31内の空洞を、上面S1側の領域と、底面S2側の領域とに分割するよう配置されている。ただし、第2実施形態では、イオン交換樹脂32は、底面S2付近ではなく、上面S1付近に配置されている。
【0075】
また、流入口33と流出口34は、いずれもイオン交換樹脂32の底面よりも下方に設けられており、共に気液接触塔31の側面S3に設けられている。ただし、流出口34は、流入口33よりも上方に設けられている。よって、流入口33からの燃焼排ガス1は、イオン交換樹脂32の底面方向へと上昇して、流出口34から排気されることとなる。
【0076】
また、供給口35は、第1実施形態と同様に、イオン交換樹脂32の上面よりも上方に設けられている。図6では、供給口35からイオン交換樹脂32の上面へと落下し、イオン交換樹脂32の上面から底面へと透過し、イオン交換樹脂32の底面から落下する吸収液が、符号11で示されている。
【0077】
本実施形態では、図6に示すように、イオン交換樹脂32の底面から落下するこの吸収液11と、流入口33から流入して上昇する燃焼排ガス1が、気液接触することとなる。これにより、燃焼排ガス1中の不純物が、吸収液11に吸収される。図6では、不純物を吸収した吸収液が、符号12で示されている。この吸収液12は、気液接触塔31の底面S2へと落下する。
【0078】
そして、排出口36は、イオン交換樹脂32の底面よりも下方において、流入口33よりも下方に設けられている。具体的には、排出口36は、気液接触塔31の底面S2付近の側面S3に設けられている。よって、気液接触塔31の底面S2へと落下した吸収液12は、排出口36から排出されることとなる。この吸収液12は、ポンプ37により供給口35へと移送される。
【0079】
ここで、ポンプ37により移送される吸収液12が、第1実施形態とは異なり、不純物を吸収した吸収液12である点に留意されたい。この吸収液12は、供給口35へと移送され、供給口35から噴射されると、イオン交換樹脂32の上面へと落下し、イオン交換樹脂32の上面から底面へと透過することとなる。これにより、吸収液12中の不純物が除去され、その再使用が可能となる。
【0080】
以上のように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、イオン交換樹脂32が、気液接触塔31内に設置されており、具体的には、気液接触塔31内において、上面S1、底面S2、側面S3で囲まれた気液接触用の空洞内に設置されている。これにより、本実施形態では、イオン交換樹脂32の再生処理が簡単になる、気液接触塔31を停止せずにイオン交換樹脂32の再生処理を行うことができる、吸収液11の流量の設定自由度が高まる、イオン交換樹脂32の無駄な部分が減るなど、不純物除去装置21の動作や構造を効率化することが可能となる。
【0081】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態の不純物除去装置21の構成を示す概略構成図である。
【0082】
第3実施形態の不純物除去装置21は、気液接触塔31内に設置されたハニカム構造体38を備えている。ハニカム構造体38は、図7に示すように、気液接触塔31内の空洞を、上面S1側の領域と、底面S2側の領域とに分割するよう配置されている。
【0083】
ハニカム構造体38には、気液接触塔31内の空洞の上面S1側と底面S2側とを結ぶ複数の貫通孔が設けられている。本実施形態では、これらの貫通孔の平面形状は、六角形となっているが、三角形や四角形など、その他の形状としても構わない。
【0084】
そして、本実施形態では、イオン交換樹脂32は、これらの貫通孔の内部に固定されている。具体的には、イオン交換樹脂32は、各貫通孔の側壁の表面に固定されている。このような構造の作製方法としては、各貫通孔の側壁表面に、イオン交換樹脂32の径よりも薄くエポキシ硬化性樹脂を塗布し、エポキシ硬化性樹脂上にイオン交換樹脂32を一様に敷き詰めるという方法を採用可能である。
【0085】
図8は、ハニカム構造体38の構造の詳細を示した上面図および斜視図である。
【0086】
本実施形態の各貫通孔の平面形状は、図8(a)に示すように、1辺の長さが1cmの正六角形となっている。また、本実施形態のハニカム構造体38の直径、高さは、図8(b)に示すように、それぞれ1m、3mとなっている。このようなハニカム構造体38の各貫通孔に、イオン交換繊維を0.4g/cmの面密度で張り合わせると、ハニカム構造体38の全イオン交換容量は、2814eqとなる。なお、ハニカム構造体38の構造は、図8に示す構造と異なるものであっても構わない。
【0087】
以下、再び図7を参照し、本実施形態の不純物除去装置21の動作について説明する。
【0088】
本実施形態では、流入口33は、ハニカム構造体38の底面よりも下方に設けられ、流出口34は、ハニカム構造体38の上面よりも上方に設けられている。よって、流入口33からの燃焼排ガス1は、ハニカム構造体38の貫通孔を通って上昇して、流出口34から排気されることとなる。
【0089】
また、供給口35は、ハニカム構造体38の上面よりも上方に設けられている。供給口35から噴射された吸収液11は、ハニカム構造体38の上面へと落下し、ハニカム構造体38の貫通孔内を流下することとなる。
【0090】
よって、本実施形態では、貫通孔内を上昇する燃焼排ガス1と、貫通孔内を流下する吸収液11が、気液接触することとなる。即ち、燃焼排ガス1と吸収液11の気液接触が、貫通孔内で発生することとなる。よって、燃焼排ガス1中の不純物は、貫通孔内で吸収液11に吸収される。そして、この吸収液11が吸収した不純物は、貫通孔内でイオン交換樹脂32により吸収される。即ち、吸収液11は、貫通孔を流下する間、燃焼排ガス1中の不純物を吸収しながら、吸収した不純物をイオン交換樹脂32に付与することとなる。
【0091】
よって、ハニカム構造体38の底部からは、不純物が除去された吸収液が排出される。図7では、この吸収液が、符号11で示されている。
【0092】
そして、排出口36は、ハニカム構造体38の底面よりも下方に設けられている。具体的には、排出口36は、気液接触塔31の底面S2付近の側面S3に設けられている。よって、ハニカム構造体38の底面から落下する吸収液11は、排出口36から排出されることとなる。この吸収液11は、ポンプ37により供給口35へと移送され再使用される。
【0093】
以上のように、本実施形態では、第1及び第2実施形態と同様に、イオン交換樹脂32が、気液接触塔31内に設置されており、具体的には、気液接触塔31内において、上面S1、底面S2、側面S3で囲まれた気液接触用の空洞内に設置されている。これにより、本実施形態では、イオン交換樹脂32の再生処理が簡単になる、気液接触塔31を停止せずにイオン交換樹脂32の再生処理を行うことができる、吸収液11の流量の設定自由度が高まる、イオン交換樹脂32の無駄な部分が減るなど、不純物除去装置21の動作や構造を効率化することが可能となる。
【0094】
第1から第3実施形態の二酸化炭素回収システムでは、イオン交換樹脂32として、例えば、強塩基ゲル型樹脂を使用する。このような強塩基ゲル型樹脂の例としては、強塩基ゲル型アニオン交換樹脂が挙げられる。第1から第3実施形態では、例えば、イオン交換樹脂32として、強塩基ゲル型アニオン交換樹脂を単独で用いて固定床とする。
【0095】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1から第3実施形態のいずれかの二酸化炭素回収システムにおいて、第1吸収液として、第2吸収液の廃液、即ち、第2吸収液として二酸化炭素の吸収に使用されて劣化した吸収液を使用する。これにより、本来廃棄される吸収液を有効利用することが可能となる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1.燃焼排ガス 2.不純物が除去された燃焼排ガス
3.二酸化炭素が除去された燃焼排ガス 4.二酸化炭素ガス
11.第1吸収液(不純物除去前) 12.第1吸収液(不純物除去後)
13.第2吸収液(熱交換前のリッチ液)14.第2吸収液(熱交換後のリッチ液)
15.第2吸収液(熱交換前のリーン液)16.第2吸収液(熱交換後のリーン液)
17.第2吸収液(リボイラー用のリーン液)
21.不純物除去装置 22.吸収塔
23.再生熱交換器 24.再生塔
25.リボイラー
31.気液接触塔 32.イオン交換樹脂
33.燃焼排ガスの流入口 34.燃焼排ガスの流出口
35.第1吸収液の供給口(分散盤) 36.第1吸収液の排出口
37.ポンプ 38.ハニカム構造体
41.水洗浄用純水 42.苛性ソーダ溶液
43.ドレン排液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物として硫黄酸化物および/または窒素酸化物を含む燃焼排ガスから、前記不純物を除去する不純物除去装置と、
前記不純物が除去された前記燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液を排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を除去し、前記吸収液を再生して排出する再生塔とを備え、
前記不純物除去装置は、
前記燃焼排ガスと、前記不純物を吸収可能な液体とを接触させて、前記燃焼排ガス中の前記不純物を、前記液体に吸収させる気液接触塔と、
前記気液接触塔内に設置されており、前記不純物を吸収した前記液体と接触することにより、前記液体から前記不純物を除去するイオン交換樹脂と、
を備える二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記気液接触塔は、
前記イオン交換樹脂の上面よりも上方に設けられた前記燃焼排ガスの流入口と、
前記イオン交換樹脂の上面よりも上方において、前記燃焼排ガスの流入口よりも上方に設けられた前記燃焼排ガスの流出口と、
前記イオン交換樹脂の上面よりも上方において、前記燃焼排ガスの流入口よりも上方に設けられた前記液体の供給口と、
前記イオン交換樹脂の底面よりも下方に設けられた前記液体の排出口とを有し、
前記気液接触塔は、前記流入口から流入して上昇する前記燃焼排ガスと、前記供給口から供給されて落下する前記液体が気液接触するよう構成されており、
前記不純物除去装置はさらに、前記排出口から排出された前記液体を、前記供給口へと移送する移送機構を備える請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記気液接触塔は、
前記イオン交換樹脂の底面よりも下方に設けられた前記燃焼排ガスの流入口と、
前記イオン交換樹脂の底面よりも下方において、前記燃焼排ガスの流入口よりも上方に設けられた前記燃焼排ガスの流出口と、
前記イオン交換樹脂の上面よりも上方に設けられた前記液体の供給口と、
前記イオン交換樹脂の底面よりも下方において、前記燃焼排ガスの流入口よりも下方に設けられた前記液体の排出口とを有し、
前記気液接触塔は、前記流入口から流入して上昇する前記燃焼排ガスと、前記供給口から供給されて落下する前記液体が気液接触するよう構成されており、
前記不純物除去装置はさらに、前記排出口から排出された前記液体を、前記供給口へと移送する移送機構を備える請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記不純物除去装置はさらに、前記気液接触塔内に設置され、前記気液接触塔内の上面側と底面側とを結ぶ複数の貫通孔が設けられた構造体を備え、
前記イオン交換樹脂は、前記構造体の前記貫通孔内に固定されている、
請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記液体は、二酸化炭素の吸収に使用されて劣化した前記吸収液である請求項1から4のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200709(P2012−200709A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70168(P2011−70168)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】