説明

二酸化珪素で被覆され、表面変性された非金属/金属酸化物

二酸化珪素で被覆され、低い構造を有する表面変性された金属酸化物粒子は水に溶解した塩基を攪拌しながら、金属酸化物、XSi(OR)4−nのタイプの少なくとも1種の化合物および水からなる分散液に添加し、乾燥し、反応生成物を表面変性することにより製造される。二酸化珪素で被覆された表面変性された金属酸化物粒子は日焼け止めにおよびCMP用途に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二酸化珪素で被覆され、表面変性された非金属/金属酸化物、その製造方法および使用に関する。
【0002】
二酸化チタンまたは酸化亜鉛のような金属酸化物は日焼け止めに広く使用されている。その作用は主に損傷するUV線の反射、散乱および吸収にもとづき、主に金属酸化物の一次粒度に依存する。
【0003】
二酸化チタンまたは酸化亜鉛のような金属酸化物は光触媒作用を示す。
【0004】
光触媒作用を減少する1つの知られた手段は日焼け止めに1つの成分として使用するために二酸化珪素で被覆された金属酸化物粒子を製造することである。
【0005】
しかしこれらの被覆された金属酸化物粒子が低い表面機能性および高い程度の粒子の互いの成長を示し、粒子が化粧製剤に組み込まれることを困難にし、沈殿に関するその安定性を制限することが欠点である。もう1つの欠点は、水に添加する際にこれらの粒子の製造にシェルを形成するために有機溶剤が絶対に必要なことである。安全性の予防策の増加とともに、この溶剤は反応後に水から再び分離しおよび/または処理するために付加的な費用が必要である。
【0006】
本発明の課題は、技術水準の欠点を示さず、化粧製剤に容易に組み込むことができ、化粧製剤中で安定であり、低い光触媒活性を示す、被覆された非金属/金属酸化物粒子を提供することである。
【0007】
もう1つの課題は技術水準の欠点を示さない被覆された非金属/金属酸化物粒子の製造方法を提供することである。
【0008】
本発明により、非金属/金属酸化物のコアおよびコアを包囲する二酸化珪素のシェルからなる表面変性された被覆された酸化物粒子が提供され、前記被覆された酸化物粒子はジブチルフタレート吸収で最終点が存在しないことにより定義される低い構造を示す。
【0009】
表面変性は、室温で被覆された非金属/金属酸化物に表面変性剤を噴霧し、引き続き50〜400℃の温度で1〜6時間熱処理することにより実施できる。
【0010】
被覆された非金属/金属酸化物を表面変性する1つの選択的方法は被覆された非金属/金属酸化物を蒸気の形で、表面変性剤で処理し、引き続き混合物を50〜800℃の温度で0.5〜6時間熱処理することにより実施できる。
【0011】
熱処理は例えば窒素のような保護ガス下で行うことができる。
【0012】
表面変性は加熱可能な混合機および噴霧機を有する乾燥機中で連続的にまたは不連続的に行うことができる。適当な装置は例えばすき刃混合機、プレート乾燥機、流動床乾燥機またはフラッシュ乾燥機であってもよい。
【0013】
表面変性は酸化物の表面変性および/またはシラン化に使用される公知の物質を用いて行うことができる。
【0014】
以下の物質または物質混合物を使用できる。
a)(RO)Si(C2n+1)および(RO)Si(C2n−1)のタイプのオルガノシラン
Rはアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルであり、nは1〜20である
b)R′(RO)Si(C2n+1)およびR′(RO)Si(C2n−1)のタイプのオルガノシラン
Rはアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルであり、
R′はアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルまたはシクロアルキルであり、nは1〜20であり、x+yは3であり、xは1または2であり、yは1または2である
c)XSi(C2n+1)およびXSi(C2n−1)のタイプのオルガノハロゲンシラン
XはCi、Brであり、nは1〜20である
d)X(R′)Si(C2n+1)およびX(R′)Si(C2n−1)のタイプのオルガノハロゲンシラン
XはCl、Brであり、R′はアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルまたはシクロアルキルであり、nは1〜20である
e)X(R′)Si(C2n+1)およびX(R′)Si(C2n−1)のタイプのオルガノハロゲンシラン
XはCl、Brであり、R′はアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルまたはシクロアルキルであり、nは1〜20である
f)(RO)Si(CH−R′のタイプのオルガノシラン
Rはアルキル、例えばメチル、エチル、プロピルであり、
mは0、1〜20であり、
R′はメチル、アリール、例えば−C、置換されたフェニル基、
−C、OCF−CHF−CF、−C13、−O−CF−CHF
−NH、−N、−SCN、−CH=CH、−NH−CH−CH−NH
−N−(CH−CH−NH
−OOC(CH)C=CH
−OCH−CH(O)CH
−NH−CO−N−CO−(CH
−NH−COO−CH、−NH−COO−CH−CH
−NH−(CHSi(OR)
−(CHSi(OR)
−SH
−NR′R′′R′′′
R′はアルキル、アリールであり、R′′はH、アルキル、アリールであり、R′′′はH、アルキル、アリール、ベンジル、CNR′′′′R′′′′′であり、R′′′′はH、アルキルであり、R′′′′′はH、アルキルである
g)(R′′)(RO)Si(CH−R′のタイプのオルガノシラン
R′′はアルキルであり、x+yは3であるか、または
R′′はシクロアルキルであり、xは1または2であり、yは1または2であり、mは0、1〜20であり、
R′はメチル、アリール、例えば−C、置換されたフェニル基、
−C、−OCF−CHF−CF、−C13−、−O−CF−CHF
−NH、−N、−SCN、−CH=CH、−NH−CH−CH−NH
−N−(CH−CH−NH
−OOC(CH)C=CH
−OCH−CH(O)CH
−NH−CO−N−CO−(CH
−NH−COO−CH、−NH−COO−CH−CH、−NH−(CHSi(OR)
−S−(CHSi(OR)
−SH−NR′R′′R′′′
R′はアルキル、アリールであり、R′′はH、アルキル、アリールであり、
R′′′はH、アルキル、アリール、ベンジル、
NR′′′′R′′′′′であり、
R′′′′はH,アルキルであり、R′′′′′はH、アルキルである
h)XSi(CH−R′のタイプのオルガノハロゲンシラン
XはCl、Brであり、
mは0、1〜20であり、
R′はメチル、アリール、例えば−C、置換されたフェニル基、
−C、−OCF−CHF−CF、−C13、−O−CF−CHF
−NH、−N、−SCN、−CH=CH
−NH−CH−CH−NH
−N−(CH−CH−NH
−OOC(CH)C=CH
−OCH−CH(O)CH
−NH−CO−N−CO−(CH
−NH−COO−CH、−NH−COO−CH−CH、−NH−(CHSi(OR)
−S−(CHSi(OR)
−SHである
i)(R)XSi(CH−R′のタイプのオルガノハロゲンシラン
XはCl、Brであり、
Rはアルキル、例えばメチル、エチル、プロピルであり、
mは0、1〜20であり、
R′はメチル、アリール、例えば−C、置換されたフェニル基、
−C、−OCF−CHF−CF、−C13、−O−CF−CHF
−NH、−N、−SCN、−CH=CH、−NH−CH−CH−NH
−N−(CH−CH−NH
−OOC(CH)C=CH
−OCH−CH(O)CH
−NH−CO−N−CO−(CH
−NH−COO−CH、−NH−COO−CH−CH
−NH−(CHSi(OR)
式中、Rはメチル、エチル、プロピル、ブチルであってもよい
−S−(CHSi(OR)
式中、Rはメチル、エチル、プロピル、ブチルであってもよい
−SH
j)(R)XSi(CH−R′のタイプのオルガノハロゲンシラン
XはCl、Brであり、
Rはアルキルであり、
mは0、1〜20であり、
R′はメチル、アリール、例えば−C、置換されたフェニル基、
−C、−OCF−CHF−CF、−C13、−O−CF−CHF
−NH、−N、−SCN、−CH=CH、−NH−CH−CH−NH
−N−(CH−CH−NH
−OOC(CH)C=CH
−OCH−CH(O)CH
−NH−CO−N−CO−(CH2)
−NH−COO−CH、−NH−COO−CH−CH
−NH−(CHSi(OR)
−S−(CHSi(OR)
−SHである
k)
【化1】

のタイプのシラザン
Rはアルキルであり、R′はアルキル、ビニルである
l)D3、D4、D5のタイプの環状ポリシロキサン、その際D3、D4およびD5は
−O−Si(CH−のタイプの3個、4個または5個の単位を有する環状ポリシロキサンであると理解され、例えばD4=オクタメチルシクロテトラシロキサン
【化2】

である
m)タイプ
【化3】

のポリシロキサンまたはシリコーン油
式中、mは0、1、2、3・・・∞であり、
nは0、1、2、3・・・∞であり、
uは0、1、2、3・・・∞であり、
YはCH、H、C2n+1であり、nは1〜20であり、
YはSi(CH、Si(CHH、
Si(CHOH、Si(CH(OCH)、
Si(CH(C2n+1)であり、nは1〜20であり、
RはC2n+1のようなアルキルであり、nは1〜20であり、フェニルおよび置換されたフェニル基のようなアリール、(CH−NH、Hであり、
R′はC2n+1のようなアルキルであり、nは1〜20であり、フェニルおよび置換されたフェニル基のようなアリール、(CH−NH、Hであり、
R′′はC2n+1のようなアルキルであり、nは1〜20であり、フェニルおよび置換されたフェニル基のようなアリール、(CH−NH、Hであり、
R′′′はC2n+1のようなアルキルであり、nは1〜20であり、フェニルおよび置換されたフェニル基のようなアリール、(CH−NH、Hである。
【0015】
表面変性剤として以下の物質が有利に使用できる。
オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン。
【0016】
オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランおよびジメチルポリシロキサンが特に有利に使用できる。
【0017】
構造の用語はDBP吸収値(ジブチルフタレート吸収値)により測定できる、粒子の互いの成長の程度であると理解される。
【0018】
低い構造はDBP吸収値で最終点が検出できないことにより示される。これは粒子の互いの成長の低い程度を示す。
【0019】
DBP吸収において、決められた量のジブチルフタレートを添加する間に力の行使、またはDBP測定装置の回転ブレードのトルク(Nm)を測定する。非金属/金属酸化物(例えば二酸化チタンまたは二酸化珪素、図1A)に関して、所定の量のジブチルフタレートの添加は鋭く定義された最大値および引き続く低下を生じる。本発明により使用される粒子の場合は、最大値および引き続く低下が検出されず、これは装置が最終点を確定できないことを意味する(図1B)
本発明により使用される粒子の低い構造はTEM画像から理解できる(図2A)。欧州特許第0988853号により製造した公知の粒子は顕著な大きい凝集を示す(図2B)。
【0020】
本発明により使用される粒子は有利にK=0.20×10−3モルkg−1−1未満の光触媒活性を示す。
【0021】
前記活性はUV光線での照射による2−プロパノールからアセトンへの酸化により決定される。結果は測度定数、ゼロ次数K=dc(Ac)dtの形のアセトン形成測度として表現される。
【0022】
測定はRobert Rudham、The Chemistry of Physical Sunscreen Materials(Review derived from a presentation made at the FDA Workshop on the Photochemistry and Photobiology of Sunscreens、Washington、1996年、9月19−20日)に記載された方法にもとづく。低い光触媒活性は本発明により使用される酸化物粒子が日焼け止めに使用できることを意味する。
【0023】
DIN66131により決定される本発明により使用される粒子のBET表面積は5〜600m/gの広い範囲で変動できる。本発明により使用される粒子のBET表面積は一般に基礎とするコア材料のBET表面積より大きい。しかし異なる製造条件下で場合により使用されるコア材料のBET表面積より小さくてもよい。しかし本発明により使用される粒子のBET表面積は有利に基礎とするコアのBET表面積より大きい。
【0024】
被覆された酸化物粒子の一次粒度は2〜100nm、有利に5〜50nmであってもよく、二次粒度は0.05〜50μm、有利に0.1〜1μmであってもよい。これらの範囲内で、日焼け止めに使用する場合は、本発明により使用される粒子は十分なUV保護および適用後の皮膚での心地よい感覚を示す。
【0025】
これらの粒度はDIN53206により決定する。
【0026】
本発明により使用される金属酸化物粒子の二酸化珪素シェルの膜厚は0.5〜25nmの間で変動できる。
【0027】
非金属/金属酸化物粒子は二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化セリウムおよび/またはこれらの金属酸化物の互いの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と酸化アルミニウムの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と二酸化珪素の化学的混合物(混合酸化物)であってもよい。前記粒子は熱分解法、有利に火炎加水分解、ゾルゲル法、プラズマ法、沈殿法、熱水法、または前記方法の組合せから生じる非金属/金属酸化物であってもよい。
【0028】
特に有利な金属酸化物は熱分解により製造された金属酸化物、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウムおよび/またはこれらの金属酸化物の互いの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と酸化アルミニウムの化学的混合物および/またはこれらの金属酸化物と二酸化珪素の化学的混合物(混合酸化物)である。
【0029】
熱分解により製造された酸化物の化学的混合物は、例えば欧州特許第0850876号に記載されるように、エーロゾルにより成分が熱分解法に導入される化学的混合物であると理解すべきである。両方の成分を同時に蒸発し、熱分解により製造される酸化物の製造に使用されるバーナーを有する混合室に導入できる。これは例えば欧州特許第609533号にチタン−珪素混合酸化物およびチタン−アルミニウム混合酸化物に関して記載され、または欧州特許第1048617号に珪素−アルミニウム混合酸化物に関して記載されている。
【0030】
熱分解により製造された金属酸化物は他の金属酸化物で被覆または部分的に被覆されていてもよく、前記酸化物は熱分解により製造された金属酸化物に熱分解でない方法で適用される。
【0031】
本発明により使用される酸化物粒子の製造方法において、水に溶解した塩基を攪拌しながら金属酸化物、XSi(OR)4−nのタイプの少なくとも1種の化合物、その際XSi(OR)4−nと金属酸化物のモル比は二酸化珪素シェルの膜厚に依存して0.1〜25である、および水1〜80質量%からなる分散液に添加し、反応生成物を分離し、場合により洗浄し、乾燥する。
【0032】
Si(OR)4−nのタイプの化合物として、XがハロゲンまたはHであり、RがHまたは1〜8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基であり、nが0〜4であり、nが4である場合は、RがHでない化合物を有利に使用する。テトラアルコキシシランおよび/またはそのオリゴマーが特に有利である。
【0033】
反応生成物を濾過または遠心分離により分離することができる。水、有機溶剤または水と有機溶剤の混合物を使用して洗浄できるが、本発明の範囲で水が有利である。
【0034】
本発明により使用される粒子を当業者に知られた方法により乾燥できる。種々の乾燥法の概要はUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、Vol.B2、Unit Operations1、4−2〜4−35に見出される。
【0035】
これに続いて他の処理工程、例えば焼成、粉砕工程、造粒工程または適当な液状媒体中の分散を行う。
【0036】
反応を実施する温度は、反応媒体が液体である限りで重要でない。15〜30℃の反応温度が有利である。
【0037】
必要な塩基の量はすべての反応媒体に対して0.1〜30質量%の広い範囲にわたり変動できる。1〜5質量%の塩基濃度が特に有利であり、低い塩基濃度で本発明による酸化物粒子が急速に形成されるからである。
【0038】
使用できる塩基はアンモニア、水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはテトラアルキル水酸化アンモニウム、炭酸塩、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム、有機塩基、例えばアミン、ピリジン、アニリン、グアニジン、カルボン酸のアンモニウム塩、例えば蟻酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、カルボン酸のアルキルアンモニウム塩、例えばモノメチルアミンホルメート、ジメチルアミンホルメート、およびその混合物である。
【0039】
アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、蟻酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、およびこれらの化合物の2個以上の混合物が特に有利である。
【0040】
二酸化珪素源から二酸化珪素を放出するために、塩基のほかに無機酸、例えば塩酸、硫酸、またはリン酸および有機酸、例えば蟻酸または酢酸を使用できる。
【0041】
非金属/金属酸化物粒子は二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化セリウムおよび/またはこれらの金属酸化物の互いの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と酸化アルミニウムの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と二酸化珪素の化学的混合物(混合酸化物)であってもよい。金属酸化物の由来に制限はない。従って熱分解法、特に火炎加水分解法、ゾルゲル法、プラズマ法、沈殿法、熱水法、採鉱法または前記方法の組合せから生じる金属酸化物を使用できる。
【0042】
特に有利な金属酸化物は熱分解により製造された金属酸化物、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウムおよび/またはこれらの金属酸化物の互いの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と酸化アルミニウムの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と二酸化珪素の化学的混合物(混合酸化物)であり、少なくとも1種の金属酸化物は熱分解に由来する。
【0043】
使用される方法の利点は有機溶剤が必要でないことである。シェルを形成するために有機溶剤が絶対に必要である欧州特許第0988853号により知られた方法に比べて、本発明により使用される方法では完全なシェルを有する粒子が速い反応で得られる。
【0044】
こうして得られた粒子は均一であり、言い換えると本発明により使用される粒子のみが検出される。二酸化珪素源の加水分解の間に形成される細かいSiO粒子の互いの成長により形成された二酸化珪素だけからなる粒子は検出できない。本発明により使用される金属酸化物は二酸化珪素源に対する明らかに高い親和性を有する。
【0045】
本発明により使用される粒子は低い構造を示し、従って化粧製剤に容易に配合できる。これらの製剤は沈殿しにくい。
【0046】
本発明は本発明により使用される表面変性された酸化物粒子を0.01〜25質量%の割合で含有する日焼け止めを提供する。本発明による日焼け止めは公知UV吸収無機顔料との混合物および/または化学的UVフィルターに使用できる。
【0047】
公知UV吸収顔料の適当な例は二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、二酸化珪素、珪酸塩、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、またはその混合物である。
【0048】
化学的UVフィルターの適当な例は当業者に知られたすべての水または油に溶解するUVAおよびUVBフィルター、例えばベンゾフェノンおよびベンズイミダゾールのスルホン酸誘導体、ジベンゾイルメタンの誘導体、ベンジリデンカンフルおよびその誘導体、桂皮酸およびそのエステルの誘導体、またはサリチル酸のエステルである。
【0049】
本発明による日焼け止めは公知溶剤、例えば水、一価または多価アルコール、化粧用油、乳化剤、安定剤、粘度調節剤、例えばカルボマー、セルロース誘導体、キサンタンガム、ワックス、ベントン、熱分解シリカ、および化粧品の分野で一般に存在する他の物質、例えばビタミン、酸化防止剤、保存剤、染料および香料を含有することができる。
【0050】
本発明による日焼け止めはエマルジョン(O/W型、W/O型または複合型)、水性ゲルまたは水性−アルコールゲルまたは油状ゲルの形を取ることができ、ローション、クリーム、乳液スプレー、ムースの形で、スティックとしてまたは他の通常の形で製造できる。
【0051】
日焼け止め剤の製造に使用される方法はA.Domsch、Die kosmetischen Praeparate、Verlag fuer chemische Industrie(H.Ziolkowsky)第4版、1992またはN.J.Lowe and N.A.Shaat、Sunscreens Development Evaluation and Regulatory Aspects、Marcel Dekker Inc.1990に記載されている。
【0052】
本発明は更に本発明による酸化物粒子の、UVフィルターとしての、分散液の製造のための使用および化学的−機械的研磨(CMP法)への使用を提供する。
【0053】
実施例
実施例1〜6は出発物質の製造を説明する。比較例1〜3は有機溶剤、エタノールの存在で実施する。すべての実施例は室温で濾過後に生成物の乾燥を含む。塩基として29質量%アンモニア水溶液を使用する。
【0054】
分析データは実施例に続く表に含まれる。
【0055】
コアおよびシェルの組成は定量的X線蛍光分析により得られ、シェルの膜厚はTEM画像から得られる。BET表面積はDIN66131により決定し、粒子の細孔容積はDIN66134により決定する。ヒドロキシル基密度はJ.Mathis and G.Wannemacher、Journal of Colloid and Interface Science125(1998)に記載される方法により決定する。
【0056】
ジブチルフタレート吸収はRHEOCORD90装置、Haake Karlsruheを使用して測定する。このために、前記金属酸化物16gを0.001gの精度で混合室に導入し、混合室をふたで閉鎖し、ジブチルフタレートを予め決定された0.0667ml/秒の供給速度でふた中の穴により供給する。混合機を125rpmのモーター速度で運転する。最大トルクに達した場合に、混合機およびDBP供給を自動的に中止する。DBP吸収を消費されるDBPの量から計算し、以下の式により粒子の計量した量を計算する。
DBP値(ml/100g)=(DBP消費量ml/粒子の計量した量g)×100。
【0057】
図1Aは所定の量のジブチルフタレートを添加した場合の公知の熱分解により製造された酸化物の典型的な特性を示し、鋭く定義された最大値および引き続く低下を示す。図1Bは本発明による粒子の特性を示す。この場合に所定の量のDBPを添加した場合にトルクの増加および引き続く低下が認められない。ジブチルフタレート装置は最終点を検出しない。
【0058】
図2Aは実施例1により製造された本発明による粒子のTEM画像を示し、図2Bは比較例1により製造された同じ大きさの粒子のTEM画像を示す。図2Aは本発明による粒子の明らかに低い程度の互いの成長を示す。
【0059】
光触媒活性を決定するために、測定すべき試料を2−プロパノール中で懸濁させ、UV光線で1時間照射する。形成されたアセトン濃度を引き続き測定する。
【0060】
実施例および比較例から得られた粒子約250mg(精度0.1mg)をウルトラ・ツラックス(Ultra Turrax)撹拌機を使用して2−プロパノール350ml(275.1g)中で懸濁させる。この懸濁液を冷却器により24℃の温度に維持してガラス光反応器に供給し、前記反応器はまず酸素で洗浄され、放射源を有する。
【0061】
例えば出力500Wを有するHg中密度浸漬ランプ、形式TQ718(Heraeus)を放射源として使用する。ホウ珪酸ガラスから製造される保護管は放射した光を300nmより大きい波長に制限する。放射源の外部は水が循環する冷却管により包囲される。
【0062】
酸素を流動計により反応器に供給する。放射源を始動した場合に、反応が開始する。反応の終了時に少量の懸濁液を直ちに除去し、濾過し、ガスクロマトグラフィーにより分析する。
【0063】
dc(Ac)/dt=Kの方程式によるゼロ次数の動力学に従うアセトン形成の速度定数が示される。
【0064】
実施例1
火炎加水分解による熱分解により製造された二酸化チタン(P25、Degussa)100gを水1リットルに分散させる。この溶液にテトラエトキシシラン100mlを添加する。この混合物を15分攪拌し、引き続きアンモニア30mlを添加する。25℃で2〜4時間攪拌後、生成物を濾別し、乾燥する。
【0065】
実施例2
火炎加水分解による熱分解により製造された二酸化チタン(P25、Degussa)100gを水1リットルに分散させる。この溶液にテトラエトキシシラン200mlを添加する。この混合物を15分攪拌し、引き続きアンモニア30mlを添加する。25℃で2〜4時間攪拌後、生成物を濾別し、乾燥する。
【0066】
実施例3
火炎加水分解による熱分解により製造された二酸化チタン(P25、Degussa)100gを水1リットルに分散させる。この溶液にテトラメトキシシラン100mlを添加する。この混合物を15分攪拌し、引き続きアンモニア30mlを添加する。25℃で2〜4時間攪拌後、生成物を濾別し、乾燥する。
【0067】
実施例4
火炎加水分解による熱分解により製造された二酸化チタン(P25、Degussa)100gを水1リットルに分散させる。この溶液にテトラエトキシシラン1000mlを添加する。この混合物を15分攪拌し、引き続きアンモニア30mlを添加する。25℃で2〜4時間攪拌後、生成物を濾別し、乾燥する。
【0068】
実施例5
火炎加水分解による熱分解により製造された、BET表面積100m/gを有する二酸化チタン100gを水1リットルに分散させる。この溶液にテトラエトキシシラン200mlを添加する。この混合物を15分攪拌し、引き続きアンモニア30mlを添加する。25℃で2〜4時間攪拌後、生成物を濾別し、乾燥する。
【0069】
実施例6
火炎加水分解による熱分解により製造され、Al0.2%をドープした二酸化チタン(ドイツ特許第19650500号に記載されるように製造した)100gを水1リットルに分散させる。この溶液にテトラエトキシシラン200mlを添加する。この混合物を15分攪拌し、引き続きアンモニア30mlを添加する。25℃で2〜4時間攪拌後、生成物を濾別し、乾燥する。
【0070】
比較例1
火炎加水分解による熱分解により製造された二酸化チタン(P25、Degussa)100gをエタノール1.5リットルおよび水100mlに分散させる。この溶液にアンモニア50mlを添加する。引き続きこの混合物にエタノール200ml中のテトラエトキシシラン100mlを1時間経過して緩慢に滴加する。12時間後、生成物を濾別し、乾燥する。
【0071】
比較例2
水400ml、エタノール1388mlおよびアンモニア87mlを一緒に混合し、引き続き二酸化チタン105gをこれに分散する。水24mlおよびエタノール156ml中のテトラエトキシシラン193mlをこの溶液に6時間経過して添加する。分散液を25℃で更に12時間老化する。生成物を濾別し、乾燥する。
【0072】
比較例3
水106ml、エタノール480mlおよびアンモニア20mlを一緒に混合し、引き続き二酸化チタン28gをこれに分散する。水39.5mlおよびエタノール65.5ml中のテトラエトキシシラン105mlをこの溶液に2時間経過して添加する。分散液を20℃で更に12時間老化する。生成物を濾過により回収し、乾燥する。
【0073】
実施例1および3による生成物を引き続き表面変性のための出発物質として使用する。
【0074】
【表1】

1 コア:実施例1〜4、すべての比較例:TiO、BET約50m/g
2 シェル:実施例1、2、4〜6、すべての比較例:SiO源:Si(OEt)
実施例3:Si(OMe)
3 P25:熱分解二酸化チタン、Degussa
4 TiO、約100m/g
5 Al0.1質量%ドープされたTiO、BET約50m/g、
6 ns=特定されず。
【0075】
生成物の製造
被覆された酸化チタンを表面変性のための混合機に入れ、まず水(場合により)、引き続き表面変性剤を噴霧し、この間激しく混合する。噴霧終了後、更に15〜30分混合を継続することができ、引き続き混合物を50〜400℃で1〜4時間コンディショニングすることができる。使用される水を酸、例えば塩酸を使用して酸性にし、7〜1のpH値を得る。使用される表面変性剤を溶剤、例えばエタノールに溶解できる。
【0076】
得られた生成物のデータを表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
本発明による表面変性され、被覆された二酸化チタンは以下の特性を示す。
二酸化チタンの光触媒活性は表面変性により大部分除去される。光触媒活性は前記のように決定する(イソプロパノールからアセトンへの光化学的酸化)。
【0080】
K値は0.04(本発明の実施例1)および0.002(本発明の実施例2)であり、比較して表面変性されない、被覆された二酸化チタンは0.08〜0.16×10−3モル/kg・分である。光触媒活性は更になお低下する。
【0081】
日焼け止め
実施例2により本発明による粒子4質量%を含有する日焼け止めを以下の組成を使用して製造する。
【0082】
【表4】

【0083】
相Aを混合機中で70℃に加熱する。磁気ホットプレート上で80℃で溶融後、相Aに相Bを添加する。相Cを真空下、約300rpmで攪拌して油相に入れる。相Dを同様に70℃に加熱し、真空下でA〜Cの混合物に添加する。
【0084】
表面変性され、被覆された二酸化チタンを使用して前記製剤と同じ方法で日焼け止めクリームを製造する。これらの日焼け止めクリームは良好な皮膚の感触および低い漂白を特徴とする。
【0085】
本発明による表面変性され、被覆された非金属/金属酸化物は有利に以下の特性を示す。
きわめて低い光触媒活性(従って例えば光にさらした場合に製剤が分解しない)
きわめて良好な分散性(従って良好な混合能力、高いUV保護、良好な皮膚の感触、皮膚に適用した場合の低い漂白)
高い耐水性(海浜用品にとって重要)。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1A】公知の熱分解により製造された酸化物のDBP吸収を示す図である。
【図1B】本発明による酸化物粒子のDBP吸収を示す図である。
【図2A】本発明の実施例1により製造された粒子のTEM画像である。
【図2B】比較例により製造された粒子のTEM画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物のコアおよびコアを包囲する二酸化珪素のシェルからなる表面変性され、被覆された酸化物粒子において、被覆された酸化物粒子がジブチルフタレート吸収で最終点が存在しないことにより定義される低い構造を示すことを特徴とする表面変性され、被覆された酸化物粒子。
【請求項2】
BET表面積が5〜600m/gである請求項1記載の表面変性された酸化物粒子。
【請求項3】
一次粒度が2〜100nmであり、二次粒度が0.05〜50μmである請求項1または2記載の表面変性された酸化物粒子。
【請求項4】
二酸化珪素シェルの膜厚が0.5〜25nmである請求項1から3までのいずれか1項記載の表面変性された酸化物粒子。
【請求項5】
金属酸化物が二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化セリウムおよび/またはこれらの金属酸化物の互いの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と酸化アルミニウムの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と二酸化珪素の化学的混合物(混合酸化物)を含む請求項1から4までのいずれか1項記載の表面変性された酸化物粒子。
【請求項6】
金属酸化物が熱分解性二酸化チタン、熱分解性酸化亜鉛、熱分解性酸化ジルコニウム、熱分解性酸化鉄、熱分解性酸化セリウムおよび/またはこれらの金属酸化物の互いの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と酸化アルミニウムの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と二酸化珪素の化学的混合物(混合酸化物)を含み、混合物中で少なくとも1種の金属酸化物が熱分解に由来する請求項1から5までのいずれか1項記載の表面変性された酸化物粒子。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の表面変性された酸化物粒子の製造方法において、水に溶解した塩基を、攪拌しながら、金属酸化物1〜80質量%、XSi(OR)4−nのタイプの少なくとも1種の化合物および水からなる分散液に添加し、XSi(OR)4−n/金属酸化物のモル比は二酸化珪素シェルの膜厚に依存して0.1〜25であり、反応生成物を濾別し、場合により洗浄し、乾燥し、引き続き表面変性することを特徴とする表面変性された酸化物粒子の製造方法。
【請求項8】
金属酸化物が二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化セリウムおよび/またはこれらの金属酸化物の互いの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と酸化アルミニウムの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と二酸化珪素の化学的混合物(混合酸化物)を含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
金属酸化物が熱分解性二酸化チタン、熱分解性酸化亜鉛、熱分解性酸化ジルコニウム、熱分解性酸化鉄、熱分解性酸化セリウムおよび/またはこれらの金属酸化物の互いの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と酸化アルミニウムの化学的混合物(混合酸化物)および/またはこれらの金属酸化物と二酸化珪素の化学的混合物(混合酸化物)を含み、混合物中で少なくとも1種の金属酸化物が熱分解に由来する請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
Si(OR)4−nのタイプの化合物が、Xがハロゲンであり、RがHまたは1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝状アルキル基であり、nが0〜4であり、nが4の場合はRはHでない化合物である請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
日焼け止めの量に対して0.01〜25質量%の割合で請求項1から6までのいずれか1項記載の酸化物粒子を含有する日焼け止め。
【請求項12】
UVフィルターとしての、分散液の製造のためのおよび化学的機械的研磨法(CMP用途)への請求項1から6までのいずれか1項記載の酸化物粒子の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2007−519792(P2007−519792A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550047(P2006−550047)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000576
【国際公開番号】WO2005/075579
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】