説明

二重トレッドキャップを有する空気入りタイヤ

【課題】転がり抵抗とトラクションとの間の従来の兼ね合わせを軽減することができるタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ用のトレッドは、トレッドベース層と、トレッドベース層の半径方向外側の第1のトレッドキャップ層と、トレッドベース層の半径方向外側に位置し、かつ第1のトレッドキャップ層の半径方向外側に位置するとともに第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して位置する第2のトレッドキャップ層と、空気入りタイヤの内側トレッド縁部の所にトレッドベース層および第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第1のトレッドスカートと、空気入りタイヤの外側トレッド縁部の所にトレッドベース層および第2のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第2のトレッドスカートと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、特に、二重トレッドキャップを有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは従来、均質の外側トレッドストックを支持カーカス構造上に貼り付け、結果として得られる複合構造を加硫処理することによって構成されている。グルーブの外側マトリックスが、この均質のトレッドストックの外側部分に成形されるかあるいは他の方法によって設けられ、トラクションと他の所望の特性を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5087668号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
あるトレッド構成部材は他のトレッド構成部材よりも高いトラクションを実現する。また、あるトレッド構成部材は他のトレッド構成部材よりも優れた転がり抵抗を有する。転がり抵抗が低くかつ最大量のトラクションを実現するタイヤが望ましいが、タイヤにおいて良好な転がり抵抗を示すトレッド構成部材は一般に最大量のトラクションを実現せず、最大量のトラクションを実現するトレッド構成部材は、必要に応じた低い転がり抵抗をもたらすことができない。
【0005】
シリカに富んだゴム組成物によって構成されたトレッド/走行面を有する空気入りタイヤは、たとえば低い転がり抵抗および適切なトラクションのような様々な物理特性をタイヤトレッドにもたらすうえで望ましい場合もあるが、補強充填材含有物中のカーボンブラックに対するシリカの比が比較的高いため不利な場合もある。このようにシリカ/カーボンブラック比が高いと、材料コスト(シリカ)が高くなるとともにシリカに富んだゴム組成物の加工コストが高くなるため、シリカに富んだトレッドのコストが著しく高くなる。また、カーボンブラック含有量が最小限であるこのようなシリカに富んだトレッドゴムは、比較的導電率が低いことがあり、したがって、タイヤトレッドから地面への静電荷の伝導に電気的に抵抗する場合がある。
【0006】
トレッドの走行面の一部を覆う薄いカバーストリップ、またはトレッドの本体を貫通してその走行面まで延びる薄い非耐荷重ストリップのいずれかとして、カーボンブラックに富んだゴム組成物のストリップを位置させることによって、シリカに富んだトレッド用の、より導電率の高い経路を設けることができる。このような種類の方法は、タイヤ自体およびタイヤの製造手順のコストと複雑さの両方を増大させる。
【0007】
いくつかのタイヤトレッドは、トレッドキャップが、ラグ/グルーブ構成によって接地するように構成され、トレッドベースが、トレッドキャップの下方に位置してトレッドキャップを支持し、かつトレッドキャップとタイヤカーカス/ベルト構造との間に位置するキャップ/ベース構成を有する。トレッドベースは、接地するようになっておらず、したがって、通常、たとえばトレッドキャップの望ましいトラクション特性およびトレッド摩耗特性と同じトレッド特性を有するようにはなっていない。
【0008】
トレッドキャップ/ベース構成におけるトレッドキャップは、接地するように構成されてもよく、したがって、許容されるトレッド摩耗および転がり抵抗を伴ったトラクションを実現するが、下方のトレッドベースは、まったく異なる機能を実現するように構成されてもよく、接地するように構成されなくてもよい。特に、トレッドベースは、多軸トレッドキャップ力をタイヤカーカスに伝達する機能を実現することができ、通常、比較的発熱量が少ない。このような力には、圧縮、屈曲、および/またはせん断のような力を受けてトレッドキャップが動作する結果としての力が含まれることがあり、圧縮、屈曲、および/またはせん断のような力はすべて、熱を発生させ、温度を上昇させ、タイヤカーカス自体に望ましくない衝撃を与える可能性がある。このような力は、たとえばタイヤのコーナリング、制動、および/または様々なハンドリング動作によって生じ、これらの動作はすべて、タイヤトレッド内において熱を発生させる可能性がある。
【0009】
ある従来の空気入りタイヤでは、シリカに富んだトレッドの材料および製造コストを削減するとともに、タイヤからそのトレッドを通って地面に至るより導電率の高い経路を実現するように、トレッド走行面が、ゴム組成物の、シリカに富んだ少なくとも1つの耐荷重ゾーンとカーボンブラックに富んだ少なくとも1つの耐荷重ゾーンとを含んでよい3つの異なる耐荷重ゾーンに分割されてもよい。トレッドキャップゾーンが耐荷重性を有することが必要になることによって、タイヤ上のすべての荷重が、3つのトレッドキャップ層ゾーンの各々によって、直接タイヤカーカス自体に伝達される代わりに、直接トレッドベース層に伝達されるように、3つの異なる走行面トレッドキャップゾーンの各々がトレッドの外面から下方の異なるカーボンブラックに富んだトレッドベースゴム層まで延びることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による空気入りタイヤ用のトレッドは、トレッドベース層と、トレッドベース層の半径方向外側の第1のトレッドキャップ層と、トレッドベース層の半径方向外側に位置し、かつ第1のトレッドキャップ層の半径方向外側に位置するとともに第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して位置する第2のトレッドキャップ層と、空気入りタイヤの内側トレッド縁部の所にトレッドベース層および第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第1のトレッドスカートと、空気入りタイヤの外側トレッド縁部の所にトレッドベース層および第2のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第2のトレッドスカートと、を含む。
【0011】
本発明の他の態様によれば、トレッドベース層は、エラストマ100重量部当たり20重量部から150重量部のカーボンブラックを有するジエン系エラストマを含むゴム組成物を含む。
【0012】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は、エラストマ100重量部当たり20重量部から150重量部のシリカを有するジエン系エラストマを含む。
【0013】
本発明の他の態様によれば、トレッドベース層は、損失正接が0.1から0.2の範囲であり、貯蔵弾性率が4MPaから13MPaの範囲であり、ショアA硬さが45から70の範囲である。
【0014】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は、損失正接が0.05から0.20の範囲であり、貯蔵弾性率が4MPaから13MPaの範囲であり、ショアA硬さが50から75の範囲である。
【0015】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は、30phrから80phrのカーボンブラックと0phrから40phrの沈降シリカとを有する約30phrから約70phrのゴム補強充填材を有する共役ジエン系エラストマを含む。
【0016】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は50phrから80phrのカーボンブラックを含む。
【0017】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は10phrから25phrの沈降シリカを含む。
【0018】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は、貯蔵弾性率が4MPaから13MPaの範囲である。
【0019】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は、共役ジエン系エラストマと、50phrから80phrの沈降シリカおよび10phrから40phrのカーボンブラックを有する補強充填材とを含む。
【0020】
本発明の他の態様によれば、第2のトレッドキャップ層の軸線方向外側端部は、半径方向内側に、トレッドベース層と第1のトレッドキャップ層と第2のトレッドスカートとの接合部まで延びている。
【0021】
本発明による空気入りタイヤは、トレッドと、カーカスと、ベルト層と、互いに間隔を置いて配置され比較的伸長性の低いビードと、サイドウォールとを含む。トレッドは、トレッドベース層と、トレッドベース層の半径方向外側に位置する、接地する第1のトレッドキャプ層と、トレッドベース層の半径方向外側に位置し、かつ第1のトレッドキャップ層の半径方向外側に位置するとともに第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して位置する、接地する第2のトレッドキャップ層と、空気入りタイヤの内側トレッド縁部の所にトレッドベース層および第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第1のトレッドスカートと、空気入りタイヤの外側トレッド縁部の所にトレッドベース層および第2のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第2のトレッドスカートと、を有する。
【0022】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は、1つの押出機において単一のゴム化合物の単一の押出成形物として押出成形され、第2のキャップ層は他の押出機によって押出成形される。
【0023】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は、30phrから80phrのカーボンブラックおよび0phrから40phrの沈降シリカを有する約30phrから約70phrのゴム補強充填材を有する共役ジエン系エラストマを含む。
【0024】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は50phrから80phrのカーボンブラックを含む。
【0025】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は10phrから25phrの沈降シリカを含む。
【0026】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は、貯蔵弾性率が4MPaから13MPaの範囲である。
【0027】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は、共役ジエン系エラストマと、50phrから80phrの沈降シリカおよび10phrから40phrのカーボンブラックを有する補強充填材とを含む。
【0028】
本発明の他の態様によれば、トレッドベース層は、損失正接が0.1から0.2の範囲であり、貯蔵弾性率が4MPaから13MPaの範囲であり、ショアA硬さが45から70の範囲である。
【0029】
本発明の他の態様によれば、第1のトレッドキャップ層は、損失正接が0.05から0.20の範囲であり、貯蔵弾性率が4MPaから12MPaの範囲であり、ショアA硬さが50から75の範囲である。
【0030】
本発明の他の態様によれば、トレッドベース層は、第1のトレッドキャップ層と共押出成形される単一の押出成形物である。
【0031】
定義
本発明では以下の定義が使用される。
【0032】
「エイペックス」は、ビードコアの半径方向上方の、プライと折り返しプライとの間に配置されたエラストマ充填材を意味する。
【0033】
「環状の」は、リング状に形成されることを意味する。
【0034】
「アスペクト比」は、タイヤの断面幅に対する断面高さの比を意味する。
【0035】
「非対称トレッド」は、タイヤの中心面すなわち赤道面EPに対して対称的ではないトレッドパターンを有するトレッドを意味する。
【0036】
「軸線方向の」および「軸線方向に」は、本明細書では、タイヤの回転軸に平行なラインまたは方向を指すのに使用される。
【0037】
「ビード」は、プライコードによって覆われ、設計リムに適合するようにフリッパ、チッパ、エイペックス、トウガード、およびチェーファーのような他の補強部材を有するように形作られることも有さないように形作られることもある環状の引張部材を有するタイヤの部分を意味する。
【0038】
「ベルト構造」は、織物であるかあるいは不織布であり、トレッドの下方に位置し、ビードに固定されず、タイヤの赤道面に対して傾斜したコードを有する、互いに平行な複数のコードの少なくとも2つの環状の層つまりプライを意味する。ベルト構造は、それぞれ低角度に傾斜し、制限層として働く、互いに平行な複数のコードのプライを含んでもよい。
【0039】
「バイアスタイヤ(クロスプライ)」は、カーカスプライ内の補強コードが、タイヤを対角方向にビードからビードへ横切って、タイヤの赤道面に対して約25度から65度の角度に延びるタイヤを意味する。
【0040】
「ブレーカー」は、タイヤの赤道面を基準として、カーカスプライ内の互いに平行な複数の補強コードと同じ角度を有する互いに平行な複数の補強コードの少なくとも2つの環状の層つまりプライを意味する。
【0041】
「ケーブル」は、2本以上の重ね合わされた糸を撚り合わせることによって形成されたコードを意味する。
【0042】
「カーカス」は、プライの上方のベルト構造、トレッド、アンダートレッド、およびサイドウォールゴム以外であるが、ビードを含むタイヤ構造を意味する。
【0043】
「ケーシング」は、カーカス、ベルト構造、ビード、サイドウォール、ならびにトレッドおよびアンダートレッドを除くタイヤの他のすべての構成部材、すなわちタイヤ全体を意味する。
【0044】
「チッパ」は、ビード領域を補強し、かつサイドウォールの、半径方向最内部を安定化する機能を有する、ビード領域内に配置された織物コードまたはスチールコードの狭いバンドを指す。
【0045】
「周方向の」は、赤道面(EP)に平行でありかつ軸線方向に垂直である環状のタイヤの表面の周縁に沿って延びるラインまたは方向を意味し、また、断面図において見たときに、半径がトレッドの軸線方向の曲率を定める互いに隣接する数組の円曲線の方向を指すこともある。
【0046】
「コード」は、タイヤの補強構造を構成する補強ストランドの1つを意味する。
【0047】
「コード角度」は、タイヤの平面図において左右の、コードによって赤道面に対して形成される鋭角を意味する。「コード角度」は、硬化されているが空気の入っていないタイヤにおいて測定される。
【0048】
「クラウン」は、タイヤの、タイヤトレッドの幅制限内の部分を意味する。
【0049】
「デニール(Denier)」は、9000メートル当たりのグラム単位の重量(線密度を表す単位)を意味する。「デシテックス(Dtex)」は、10000メートル当たりのグラム単位の重量を意味する。
【0050】
「密度」は、単位長当たりの重量を意味する。
【0051】
「エラストマ」は、変形後にサイズおよび形状を回復することのできる弾性材料を意味する。
【0052】
「赤道面(EP)」は、タイヤの回転軸に垂直であり、タイヤのトレッドの中心を通過する平面、またはトレッドの周方向の中心線を含む平面を意味する。
【0053】
「織物」は、撚り合わせることができ、かつ高弾性材料の複数のフィラメントで構成される(フィラメント同士を撚り合わせることもできる)、基本的に単一方向に延びるコードの網を意味する。
【0054】
「繊維」は、フィラメントの基本要素を形成する天然または人工の物質単位である。繊維の直径または幅の100倍以上の長さを有することを特徴とする。
【0055】
「フィラメント数」は、糸を構成するフィラメントの数を意味する。例:1000デニールのポリエステルは、約190本のフィラメントを有する。
【0056】
「フリッパ」は、強度を高め、かつビードワイヤをタイヤ本体に結合するビードワイヤの周りの補強織物を指す。
【0057】
「フットプリント」は、速度が零であり、標準荷重および標準空気圧下にあるときに、タイヤトレッドが平坦な表面と接触する接触部分すなわち接触領域を指す。
【0058】
「ゲージ」は、一般に測定値を指し、特に厚さ測定値を指す。
【0059】
「グルーブ」は、トレッド上を周方向または横方向に直線状、曲線状、またはジグザグに延びてよい、トレッド内の細長い空隙領域を意味する。周方向および横方向に延びるグルーブは共通部分を有することもある。「グルーブ幅」は、グルーブまたはグルーブ部分によって占有されるトレッド面をこのようなグルーブまたはグルーブ部分の長さで割った値であってよく、したがって、グルーブ幅は、グルーブの長さにわたるグルーブの平均幅であってよい。グルーブは、タイヤ内で深さが一定でなくてもよい。グルーブの深さは、トレッドの周囲に沿って一定でなくてもよく、あるいは1つのグルーブの深さは一定であるがタイヤ内の他のグルーブの深さとは異なっていてもよい。このような狭いかまたは広いグルーブは、それらのグルーブが相互に連結する広い周方向グルーブと比べて実質的に小さい深さを有する場合、関連するトレッド領域においてリブ状の特性を維持する傾向がある「タイバー」を形成するものとみなしてよい。グルーブは、本明細書において使用されるときは、タイヤの接触部分またはフットプリントにおいて開放されたままになるほど大きい幅を有するものである。
【0060】
「高張力鋼(HT)」は、フィラメント直径が0.20mmのときに引張強さが3400MPa以上のカーボンスチールを意味する。
【0061】
「インナー(内側)」は、タイヤおよび車両の内側の方を意味し、「アウター(外側)」はタイヤおよび車両の外側の方を意味する。
【0062】
「インナーライナ」は、チューブレスタイヤの内面を形成し、タイヤ内に膨張流体を閉じ込めるエラストマまたは他の材料の1つまたは複数の層を意味する。
【0063】
「車内側」は、タイヤがホイール上に取り付けられ、ホイールが車両上に取り付けられたときに車両に最も近いタイヤの側を意味する。
【0064】
「LASE」は、特定の伸びでの荷重を意味する。
【0065】
「横方向の」は、軸方向を意味する。
【0066】
「撚り長さ」は、撚りフィラメントまたは撚りストランドが他のフィラメントまたはストランドの周りを360度回転するときの距離を意味する。
【0067】
「荷重範囲」は、タイヤ・リム協会における表によって規定される特定の種類の用途において使用される所与のタイヤについての荷重および膨張限界を意味する。
【0068】
「メガ張力鋼(MT)」は、フィラメント直径が0.20mmのときに引張強さが4500MPa以上のカーボンスチールを意味する。
【0069】
「正味接触面積」は、トレッドの全周に沿って測定された、定められた境界縁部同士の間の接地部材の総面積を、境界縁部同士の間の総面積で割った値を意味する。
【0070】
「ネット対グロス比」は、トレッドの全周に沿ったトレッドの横方向縁部同士の間の接地トレッド部材の総面積を、横方向縁部同士の間のトレッドの全周の総面積で割った値を意味する。
【0071】
「非方向性トレッド」は、好ましい順走行方向を有さず、かつトレッドパターンを好ましい走行方向に揃えるうえで1つ以上の特定のホイール位置において車両上に位置させる必要のないトレッドを意味する。逆に、方向性トレッドパターンは、特定のホイール位置を必要とする好ましい走行方向を有する。
【0072】
「標準荷重」は、タイヤの使用条件についての然るべき標準化機構によって決められた特定の設計空気圧および設計荷重を意味する。
【0073】
「標準張力鋼(NT)」は、フィラメント直径が0.20mmのときに引張強さが2800MPa以上のカーボンスチールを意味する。
【0074】
「車外側」は、タイヤがホイール上に取り付けられ、ホイールが車両上に取り付けられたときに車両から最も離れたタイヤの側を意味する。
【0075】
「Phr」は、ゴムまたはエラストマ100重量部当たりのそれぞれの材料の重量部を意味する。
【0076】
「プライ」は、ゴムによって被覆され、半径方向に配置されるかあるいは他の方法によって互いに平行にされたコードのコード補強層を意味する。
【0077】
「半径方向の」および「半径方向に」は、半径方向においてタイヤの回転軸に向かうかあるいはタイヤの回転軸から離れる方向を意味するのに使用される。
【0078】
「ラジアルプライ構造」は、少なくとも1つのプライが、タイヤの赤道面に対して65度から90度の間に向けられた補強コードを有する1つ以上のカーカスプライを意味する。
【0079】
「ラジアルプライタイヤ」は、少なくとも1つのプライが、ビードからビードまで延びかつタイヤの赤道面に対して65度から90度の間のコード角度に配置されたコードを有する、ベルトを有するかあるいは周方向に制限された空気入りタイヤを意味する。
【0080】
「リブ」は、少なくとも1つの周方向グルーブおよび第2のそのようなグルーブまたは横方向縁部のいずれかによって形成され、全深さグルーブによって横方向に分割されることのない、トレッド上の周方向に延びるゴムのストリップを意味する。
【0081】
「リベット」は、層内のコード同士の間の開放空間を意味する。
【0082】
「断面高さ」は、タイヤの赤道面における公称リム直径からタイヤの外径までの半径方向距離を意味する。
【0083】
「断面幅」は、ラベル、装飾、または保護バンドによるサイドウォールの隆起を除く、タイヤが24時間にわたって標準空気圧で無荷重で膨張させられたときおよびその後の、タイヤの軸線に平行な、タイヤのサイドウォールの外側同士の間の最大直線距離を意味する。
【0084】
「自立型ランフラット」は、タイヤが、制限された期間かつ制限速度で膨張していない状態において動作させられたときに、タイヤの構造だけで車両の荷重を支持するのに十分な強度を有する構造を有するタイヤの種類を意味する。タイヤのサイドウォールおよび内面が、タイヤ構造のみ(たとえば、内部構造がない)によって潰れたりゆがんだりすることはない。
【0085】
「サイドウォールインサート」は、タイヤのサイドウォール領域内に配置されたエラストマまたはコード補強材を意味する。このインサートは、タイヤの外面を形成する、カーカス補強プライおよび外側サイドウォールゴムへの付加物であってよい。
【0086】
「サイドウォール」は、タイヤの、トレッドとビードとの間の部分を意味する。
【0087】
「サイプ」すなわち「切れ込み」は、タイヤのトレッド部材に成形され、トレッド面を細分し、トラクションを向上させる小さい長穴を意味し、サイプは、グルーブとは異なり、接触部分つまりフットプリント内に位置するときに閉鎖されるように構成されてもよい。
【0088】
「ばね定数」は、所与の圧力における荷重たわみ曲線の勾配として表されるタイヤの剛性を意味する。
【0089】
「剛性比」は、コードの両端部を、固定された端部同士の間に心合わせされた荷重によって支持され曲げられる固定三点曲げ試験によって求められた、コントロールベルト(control belt)構造の剛性の値を他のベルト構造の剛性の値で割った値を意味する。
【0090】
「スーパー張力鋼(ST)」は、フィラメント直径が0.20mmのときに引張強さが3650MPa以上のカーボンスチールを意味する。
【0091】
「引張強さ(Tenacity)」は、歪んでいない試料の単位線密度当たりの力として表される応力である(gm/texまたはgm/denier)。織物において使用される。
【0092】
「張力(Tensile)」は、力/断面積で表される応力である。psi単位の強度であり、デニール当たりグラム単位の引張強さに比重を掛けて12800倍した値である。
【0093】
「トウガード」は、各ビードの軸線方向内側に位置する、タイヤの周方向に配置されたエラストマのリムに接触する、タイヤの部分を指す。
【0094】
「トレッド」は、タイヤケーシングに結合されるときに、タイヤが標準空気圧および標準荷重下にある場合に路面に接触するタイヤの部分を含む、成形されたゴム構成部材を意味する。
【0095】
「トレッド部材」または「トラクション部材」は、リブ部材またはブロック部材を意味する。
【0096】
「トレッド幅」は、タイヤの回転軸を含む平面内のトレッド面のアーク長を意味する。
【0097】
「折り返し端部」は、プライが周りを覆うビードから上向きに(すなわち、半径方向外側に)折り返されるカーカスプライの部分を意味する。
【0098】
「ウルトラ張力鋼(UT)」は、フィラメント直径が0.20mmのときに引張強さが4000MPa以上のカーボンスチールを意味する。
【0099】
「垂直たわみ」は、タイヤが荷重下でたわむ量を意味する。
【0100】
「糸」は、紡織繊維またはフィラメントの連続的なストランドの総称である。糸は、1)撚り合わされた数本の繊維、2)撚らずに並べられた数本のフィラメント、3)ある程度撚られて並べられた数本のフィラメント、4)撚られる場合と撚られない場合がある単一のフィラメント(モノフィラメント)、5)撚られる場合と撚られない場合がある材料の狭いストリップの各形態を有する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に使用される空気入りタイヤの一例の概略断面図である。
【図2】図1の空気入りタイヤの一例の詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
空気入りタイヤにおける高転がり抵抗トレッド材料と高トラクショントレッド材料との間に性能格差が存在する場合がある。本発明によるトレッドは、この格差に対処し、それによって、転がり抵抗とトラクションとの間の従来の兼ね合わせを軽減することができる。
【0103】
このようなトレッド10に使用される空気入りタイヤ1は、カーカス11と、互いに間隔を置いて配置され比較的伸張性の低いビード9およびサイドウォール14の間のゴム封入ベルト層12と、インナーライナ層13とを含んでよい。空気入りタイヤ1のトレッド10は、本発明によれば、転がり抵抗およびウェットトラクションおよびドライトラクションを最適化するために2つのトレッドキャップ化合物を水平方向または垂直方向だけでなく両方向に分割してよい(図1および図2)。図1は、トレッドベース層20と、トレッドベース層の半径方向外側の、接地する第1のトレッドキャップ層21と、トレッドベース層の半径方向外側に位置するとともに、第1のトレッドキャップ層の半径方向外側であり第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して位置する、接地する第2のトレッドキャップ層22と、空気入りタイヤの内側トレッド縁部の所にトレッドベース層および第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第1のトレッドスカート31と、空気入りタイヤの外側トレッド縁部の所にトレッドベース層および第2のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第2のトレッドスカート32と、を有する、接地する複合トレッド10を有する空気入りタイヤ1の断面図を示している。第2のトレッドキャップ層22の軸線方向外側端部33も、トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、および第2のトレッドスカート32の接合部34の半径方向内側に延びている(図2)。
【0104】
トレッド10は、共押出成形された、多成分ゴム押出成形物であってよく、押出成形されたゴム組成物を個々に適切なダイ部材内に流し、個々のゴム組成物を制御可能に流してダイ部材内で合流させ、ダイ部材から形作られた多成分ゴム押出成形物として流出させる、各ゴム組成物用の個々の押出機を使用することによって、少なくとも2つの異なるゴム組成物を共押出成形することによって作製されてよい。したがって、第1のキャップ層21は、1つの押出機における単一のゴム化合物の単一の押出成形物として押出成形されてもよく、第2のキャップ層22は別の押出機によって押出成形されてもよい。
【0105】
トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は、一例として、少なくとも1つの共役ジエン系エラストマと、カーボンブラックおよび沈降シリカから選択される約30phrから約70phrのゴム補強充填材とを含んでよく、充填材は、約30phrから約80phrのカーボンブラックと0phrから40phrの沈降シリカとを含む。トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、約50phrから約80phrのカーボンブラックをさらに含んでよい。トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、約10phrから約25phrの沈降シリカをさらに含んでよい。トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、完全ゴム補強カーボンブラックをさらに含んでよい。トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、硬化剤、加工助剤、劣化防止剤などの添加剤をさらに含んでよい。
【0106】
トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、これらを空気入りタイヤ1に使用するのに適したものにする特定の物理特性を有するように特徴付けられてよい。トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、損失正接が0.1から0.2の範囲であり、貯蔵弾性率が4MPaから13MPaの範囲であり、ショアA硬さが45から70の範囲である。損失正接および貯蔵弾性率Eは、70℃において粘弾性スペクトルメータによって測定されてよい。ショアA硬さは、DIN53505に従って室温で測定されてよい。
【0107】
トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、少なくとも1つの共役ジエン系エラストマと、約50phrから約80phrの沈殿シリカおよび約10phrから約40phrのカーボンブラックを含む補強充填材とをさらに含んでよい。上述のように、トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、硬化剤、加工助剤、劣化防止剤などの添加剤をさらに含んでよい。
【0108】
あるいは、トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、これらを空気入りタイヤ1に使用するのに適したものにする特定の物理特性を有するように特徴付けられてよい。トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、さらに、損失正接が0.05から0.20の範囲であり、貯蔵弾性率が4MPaから12MPaの範囲であり、ショアA硬さが50から75の範囲である。
【0109】
トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、さらに、オレフィン性不飽和化合物を含むゴムまたはエラストマに使用されてもよい。語句「ゴム」または「オレフィン性不飽和化合物を含むエラストマ」または「共役ジエン系エラストマ」は、天然ゴムとその様々な未加工の形態および再生形態の両方と、様々な合成ゴムを含むものである。語句「ゴム」および「エラストマ」は、特に別の指定がなければ、相互に交換して使用されてもよい。語句「ゴム組成物」、「配合ゴム」、および「ゴム化合物」は、ゴムの混合またはゴムの配合に使用できる様々な原料および材料とブレンドまたは混合されたゴムを指すのに相互交換可能に使用されてよい。代表的な合成ポリマーは、ブタジエンならびにその同族体および誘導体、たとえばメチルブタジエン、ジメチルブタジエン、およびペンタジエン、ならびにブタジエンまたはその同族体もしくは誘導体と他の不飽和単量体とから形成されるようなコポリマーの同一重合生成物であってよい。合成ポリマーは、アセチレンたとえばビニルアセチレン、オレフィンたとえばイソプレンと共重合してブチルゴムを形成するイソブチレン、ビニル化合物たとえばアクリル酸、アクリロニトリル(ブタジエンを重合してNBRを形成する)、メタクリル酸、およびスチレンであってよい。この化合物は、ブタジエンと重合してSBRと、ビニルエステルおよび様々な不飽和アルデヒド、ケトン、ならびにエーテル、たとえばアクロレイン、メチルイソプロペニルケトン、およびビニルエチルエーテルを形成する。合成ゴムの特定の例には、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン(cis−1,4−ポリブタジエンを含む)、ポリイソプレン(cis−1,4−ポリイソプレンを含む)、ブチルゴム、クロロブチルゴムまたはブロモブチルゴムのようなハロブチルゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、1,3−ブタジエンまたはイソプレンとスチレン、アクリロニトリル、およびメチルメタクリレートのような単量体とのコポリマーと、エチレン/プロピレン/ジエン単量体(EPDM)とも呼ばれるエチレン/プロピレンターポリマー、およびエチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーを含めてよい。ゴムのさらなる例には、シリコン結合星状枝分かれポリマーおよびスズ結合星状枝分かれポリマーを含めてよい。
【0110】
トレッドベース層20、第1のトレッドキャップ層21、第2のトレッドキャップ層22、第1のトレッドスカート31、および/または第2のトレッドスカート32は一例として、少なくとも2つのジエン系ゴム、たとえば、cis1,4−ポリイソプレンゴム(天然ゴムまたは合成ゴム)、3,4−ポリイソプレンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、乳剤、および溶液重合誘導スチレン/ブタジエンゴム、cis1,4−ポリブタジエンゴム、および乳剤重合調製ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーのような2つ以上のゴムの組み合わせをさらに含んでよい。
【0111】
乳剤重合系は、20%から約28%の結合スチレンを含むスチレン含有量を有する誘導スチレン/ブタジエン(E−SBR)であるか、あるいは中程度から比較的高い結合スチレン含有量、たとえば約30%から約45%の結合スチレン含有量を有するE−SBRであってもよい。E−SBRに対する約30%から約45%のスチレン含有量は、トレッド10のトラクションまたは滑り抵抗を改善するうえで有利であると考えられる。特に溶液重合調製SBR(S−SBR)を利用する場合と比べて、E−SBRの存在自体が、未硬化エラストマ組成物の混合物の加工可能性を向上させるうえで有利であると考えられる。
【0112】
乳剤重合調製E−SBRは、水性乳剤として共重合されたスチレンおよび1,3−ブタジエンであってよい。結合スチレン含有量は、たとえば約5%から約50%の範囲で変化してよい。E−SBRは、たとえば、ターポリマー中の結合アクリロニトリルの量が約2重量%から約30重量%である、E−SBRなどのターポリマーゴムを形成するアクリロニトリルを含んでもよい。空気入りタイヤ1に使用されるジエン系ゴムは、コポリマー中に約2重量%から約40重量%の結合アクリロニトリルを含む乳剤重合調製スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムであってよい。
【0113】
溶液重合調製SBR(S−SBR)は、約5%から約50%または約9%から約36%の結合スチレン含有量を有してよい。S−SBRは、たとえば有機炭化水素溶剤の存在下で有機リチウム触媒作用によって調製されてよい。S−SBRは、トレッド10に使用されたときに下位ヒステリシスの結果としてタイヤ転がり抵抗を改善することができる。
【0114】
トレッド10内の3,4−ポリイソプレンゴム(3,4−PI)はトラクションを向上させることができる。3,4−PIおよびその用途は、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1に詳しく記載されている。Tgは、毎分10℃の加熱速度で示差走査熱量計によって求めることのできるガラス転移温度である。
【0115】
トレッド10内のcis1,4−ポリブタジエンゴム(BR)は、タイヤトレッド摩耗および転がり抵抗を改善することができる。BRは、たとえば、1,3−ブタジエンの有機溶液重合によって調製されてよい。また、BRは少なくとも90%のcis1,4含有量を有してよい。ゴム組成物は、次式のような硫黄含有有機シリコン化合物を含んでもよい。
【0116】
Z−Alk−Sn−Alk−Z
上式において、Zは次の3つの式から成る群から選択される。
【0117】
【化1】

【0118】
【化2】

【0119】
【化3】

【0120】
上式において、Rは、1つから4つの炭素原子、シクロヘキシル、またはフェニルのアルキル群であり、Rは、1つから8つの炭素原子、または5つから8つの炭素原子のシクロアルコキシであり、Alkは、1個から18個の炭素原子の二価炭化水素であり、nは2から8の間の整数である。
【0121】
硫黄含有有機シリコン化合物の例には、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(トリエトキシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’−ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’−ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’−ビス(トリオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’−ビス(トリ−2”−エチルヘキソキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’−ビス(トリイソオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(トリ−t−ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’−ビス(メトキシ ジエトキシ シリル エチル)テトラスルフィド、2,2’−ビス(トリプロポキシシリルエチル)ペンタスルフィド、3,3’−ビス(トリシクロエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(トリシクロペントキシシリルプロピル)トリスルフィド、2,2’−ビス(トリ−2”−メチルシクロヘキソキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(トリメトキシシリルメチル)テトラスルフィド、3−メトキシ エトキシ プロポキシシリル3’−ジエトキシブトキシシリルプロピルテトラスルフィド、2,2’−ビス(ジメチル メトキシシリルエチル)ジスルフィド、2,2’−ビス(ジメチルsec.ブトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’−ビス(メチル ブチルエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(ジt−ブチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’−ビス(フェニル メチル メトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’−ビス(ジフェニル イソプロポキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(ジフェニル シクロヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’−ビス(ジメチル エチルメルカプトシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’−ビス(メチル ジメトキシシリルエチル)トリスルフィド、2,2’−ビス(メチル エトキシプロポキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(ジエチル メトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(エチル ジ−sec.ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’−ビス(プロピル ジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’−ビス(ブチル ジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’−ビス(フェニル ジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−フェニル エトキシブトキシシリル3’−トリメトキシシリルプロピル テトラスルフィド、4,4’−ビス(トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、6,6’−ビス(トリエトキシシリルヘキシル)テトラスルフィド、12,12’−ビス(トリイソプロポキシシリル ドデシル)ジスルフィド、18,18’−ビス(トリメトキシシリルオクタデシル)テトラスルフィド、18,18’−ビス(トリプロポキシシリルオクタデセニル)テトラスルフィド、4,4’−ビス(トリメトキシシリル−ブテン−2−イル)テトラスルフィド、4,4’−ビス(トリメトキシシリルシクロヘキシレン)テトラスルフィド、5,5’−ビス(ジメトキシメチルシリルペンチル)トリスルフィド、3,3’−ビス(トリメトキシシリル−2−メチルプロピル)テトラスルフィド、および3,3’−ビス(ジメトキシフェニルシリル−2−メチルプロピル)ジスルフィドを含めてよい。
【0122】
硫黄含有有機シリコン化合物には、3,3’−ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)スルフィド、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、および3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを含めてよい。したがって、上記の化学式では、Zは次式のようであってよい。
【0123】
【化4】




【0124】
上式において、Rは2つから4つの炭素原子のアルコキシであり、alkは2つから4つの炭素原子の二価炭化水素であり、nは2から5の整数である。
【0125】
ゴム組成物における上記の化学式中の硫黄含有有機シリコン化合物の量は、他の添加物のレベルに応じて異なってよい。上記の化学式中の化合物の量は、0.5phrから20.0phrまたは1.0phrから10.0phrの範囲であってよい。シリカおよびカーボンブラックのような充填材も存在してよい。
【0126】
ゴム化合物中のケイ質顔料は、焼成ケイ質顔料(シリカ)および沈降ケイ質顔料(シリカ)と、たとえば可溶性ケイ酸塩、たとえばケイ酸ナトリウムを酸性化させることによって得られる沈降シリカとを含んでよい。このようなシリカは、たとえば、窒素ガスを使用して測定されるBET表面積がグラム当たり約40mから約600mまたは約50mから約300mの範囲であることを特徴としてもよい。
【0127】
シリカは、ジブチルフタレート(DBP)吸収値が約100から約400または約150から約300の範囲であることを特徴としてもよい。シリカは、電子顕微鏡によって求められる平均到達粒径がたとえば0.01ミクロンから0.05ミクロンであってよい。
【0128】
制限なしに一例としてのみ示されている、Hi−Silの商標の下で型番210、243などによってPPG Industriesから市販されているシリカ、たとえばZ1165MPおよびZ165GRの型番によってRhone−Poulencから市販されているシリカ、ならびにたとえばVN2およびVN3の型番によってDegussa AGから市販されているシリカのような様々な市販のシリカを使用してよい。
【0129】
カーボンブラックの代表的な例には、N110、N121、N220、N231、N234、N242、N293、N299、S315、N326、N330、M332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990、およびN991を含めてよい。これらのカーボンブラックは、ヨウ素吸収率が9g/kgから145g/kgであってよく、DBP数が34cm/100gから150cm/100gの範囲であってよい。
【0130】
ゴム組成物は、様々な硫黄加硫可能な成分のゴムを、たとえば硫黄ドナー、活性剤および遅延剤のような硬化助剤、油などの加工添加剤、粘着付与樹脂および可塑剤を含む樹脂、充填材、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ろう、抗酸化剤およびオゾン化防止剤、ならびに解こう物質のような様々な添加材料と混合することのような様々な方法によって配合されてよい。硫黄ドナーの例には、元素状硫黄(自由硫黄)、アミンジスルフィド、高分子ポリスルフィド、および硫黄オレフィン付加物を含めてよい。硫黄加硫剤は元素状硫黄であってよい。硫黄加硫剤は、0.5phrから8.0phrまたは1.5phrから6.0phrの範囲であってよい。粘着付与樹脂は、約0.5phrから約10.0phrまたは約1.0phrから約5.0phrの範囲であってよい。加工助剤は約1phrから約50phrであってよい。このような加工助剤には、たとえば、芳香油、ナフテン油、パラフィン加工油、および/または多環芳香含有量が3%未満である(IP346法)ことを特徴とする低PCA油を含めてよく、このような低PCA油はMES、TDAE、およびナフテン重油を含めてもよい。
【0131】
抗酸化剤の量は約1phrから約5phrであってよい。抗酸化剤は、たとえばジフェニル−p−フェニレンジアミンであってよい。オゾン化防止剤の量は約1phrから約5phrであってよい。脂肪酸の量には、約0.5phrから約3.0phrのステアリン酸を含んでよい。酸化亜鉛の量は約2phrから約5phrであってよい。ろうの量は約1phrから約5phrであってよい。微結晶ろうを使用してもよい。解こう剤の量は約0.1phrから約1phrであってよい。解こう剤は、たとえばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニル ジスルフィドであってよい。次いで、硫黄加硫可能なゴム組成物を硫黄硬化または硫黄加硫させてよい。
【0132】
促進剤は、加硫に必要な時間および/または温度を調整し、加硫物の特性を向上させることができる。単一の促進剤システム、たとえば一次促進剤を使用してもよい。1つ以上の一次促進剤の量は、約0.5phrから約4phrまたは約0.8phrから約1.5phrであってよい。加硫物の特性を向上させるように、一次促進剤と、約0.05phrから約3.00phrの二次促進剤との組み合わせを使用してもよい。これらの促進剤を組み合わせると、いずれかの促進剤を単独で使用することによって得られる効果よりも高い相乗効果を最終特性にもたらすことができる。また、通常の加工温度の影響を受けず、通常の加硫温度において満足行く硬化を実現する遅延作用促進剤を使用してもよい。加硫遅延剤を使用してもよい。適切な促進剤はアミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバミド酸塩、およびキサンタートであってよい。一次促進剤はスルフェンアミドであってよい。二次促進剤はグアニジン化合物、ジチオカルバミド酸塩化合物、またはチウラム化合物であってよい。
【0133】
ゴム組成物の原料を2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産段階とそれに続く生産的な混合段階において混合してもよい。最終的な硬化剤は、最終段階(たとえば、混合が、先行する非生産的混合段階の1つ以上の混合温度よりも低い温度、すなわち到達温度で行われる「生産的な」混合段階)において混合された硫黄加硫剤を含んでよい。ゴムは、1つまたは2つ以上の非生産的混合段階において混合されてもよい。
【0134】
硫黄含有有機シリコン化合物を含むゴム組成物に対して熱機械混合ステップを実行してもよい。熱機械混合ステップは、混合機または押出機における140℃から190℃の間のゴム温度を実現するのに適した期間の機械加工を含んでよい。熱機械加工の適切な持続時間は、動作条件ならびに構成部材の体積および性質の関数として可変であってよい。たとえば、熱機械加工は1分から20分であってよい。
【0135】
ゴム組成物の加硫は一般に、約100℃から約200℃の範囲の温度において実施されてよい。加硫は、約110℃から約180℃の範囲の温度において実施されてもよい。プレス機または型内で加熱すること、過熱蒸気または熱風によって加熱すること、または塩浴中に過熱蒸気によって加熱することのような他の加硫プロセスを使用してもよい。
【0136】
空気入りタイヤ1は、様々な方法によって組み立てられ、形作られ、成形され、硬化されてよい。空気入りタイヤ1は、乗用車タイヤ、航空機タイヤ、トラックタイヤなどであってよい。空気入りタイヤ1はラジアルタイヤであってもバイアスタイヤであってもよい。
【0137】
ある代表的な例および詳細を、本発明を例示するために示したが、当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに本発明に様々な変更および修正を施せることが明らかであろう。
【符号の説明】
【0138】
1 空気入りタイヤ
10 トレッド
11 カーカス
12 ゴム封入ベルト層
13 インナーライナ層
14 サイドウォール
20 トレッドベース層
21 第1のトレッドキャップ層
22 第2のトレッドキャップ層
31 第1のトレッドスカート
32 第2のトレッドスカート
33 軸線方向外側端部
34 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤ用のトレッドであって、
トレッドベース層と、
前記トレッドベース層の半径方向外側の第1のトレッドキャップ層と、
前記トレッドベース層の半径方向外側に位置し、かつ前記第1のトレッドキャップ層の半径方向外側に位置するとともに前記第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して位置する第2のトレッドキャップ層と、
前記空気入りタイヤの内側トレッド縁部の所に前記トレッドベース層および前記第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第1のトレッドスカートと、
前記空気入りタイヤの外側トレッド縁部の所に前記トレッドベース層および前記第2のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第2のトレッドスカートと、を有することを特徴とする、トレッド。
【請求項2】
前記トレッドベース層は、エラストマ100重量部当たり20重量部から150重量部のカーボンブラックを有するジエン系エラストマを含むゴム組成物を含む、請求項1に記載のトレッド。
【請求項3】
前記第1のトレッドキャップ層は、エラストマ100重量部当たり20重量部から100重量部のシリカを有するジエン系エラストマを含む、請求項1に記載のトレッド。
【請求項4】
前記トレッドベース層は、損失正接が0.1から0.2の範囲であり、貯蔵弾性率が4MPaから13MPaの範囲であり、ショアA硬さが45から70の範囲である、請求項1に記載のトレッド。
【請求項5】
前記第1のトレッドキャップ層は、損失正接が0.05から0.20の範囲であり、貯蔵弾性率が4MPaから12MPaの範囲であり、ショアA硬さが50から75の範囲である、請求項1に記載のトレッド。
【請求項6】
前記第1のトレッドキャップ層は、30phrから80phrのカーボンブラックと0phrから40phrの沈降シリカとを有する約30phrから約70phrのゴム補強充填材を有する共役ジエン系エラストマを含む、請求項1に記載のトレッド。
【請求項7】
前記第1のトレッドキャップ層は50phrから80phrのカーボンブラックを含む、請求項1に記載のトレッド。
【請求項8】
前記第1のトレッドキャップ層は10phrから25phrの沈降シリカを含む、請求項1に記載のトレッド。
【請求項9】
前記第2のトレッドキャップ層の軸線方向外側端部は、半径方向内側に、前記トレッドベース層と前記第1のトレッドキャップ層と前記第2のトレッドスカートとの接合部まで延びている、請求項1に記載のトレッド。
【請求項10】
前記第1のトレッドキャップ層は、共役ジエン系エラストマと、50phrから80phrの沈降シリカおよび10phrから40phrのカーボンブラックを有する補強充填材とを含む、請求項1に記載のトレッド。
【請求項11】
空気入りタイヤであって、
トレッドと、
カーカスと、
ベルト層と、
互いに間隔を置いて配置され比較的伸長性の低いビードと、
サイドウォールと、を有し、
前記トレッドは、トレッドベース層と、前記トレッドベース層の半径方向外側に位置する、接地する第1のトレッドキャップ層と、前記トレッドベース層の半径方向外側に位置し、かつ前記第1のトレッドキャップ層の半径方向外側に位置するとともに前記第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して位置する、接地する第2のトレッドキャップ層と、前記空気入りタイヤの内側トレッド縁部の所に前記トレッドベース層および前記第1のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第1のトレッドスカートと、前記空気入りタイヤの外側トレッド縁部の所に前記トレッドベース層および前記第2のトレッドキャップ層に軸線方向に隣接して配置された第2のトレッドスカートと、を有することを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記第1のトレッドキャップ層は、1つの押出機において単一のゴム化合物の単一の押出成形物として押出成形され、前記第2のキャップ層は他の押出機によって押出成形される、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記第1のトレッドキャップ層は、30phrから80phrのカーボンブラックおよび0phrから40phrの沈降シリカを有する約30phrから約70phrのゴム補強充填材を有する共役ジエン系エラストマを含む、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記第1のトレッドキャップ層は50phrから80phrのカーボンブラックを含む、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
前記第1のトレッドキャップ層は10phrから25phrの沈降シリカを含む、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項16】
前記第1のトレッドキャップ層は、貯蔵弾性率が4MPaから13MPaの範囲である、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項17】
前記第1のトレッドキャップ層は、共役ジエン系エラストマと、50phrから80phrの沈降シリカおよび10phrから40phrのカーボンブラックを有する補強充填材とを含む、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項18】
前記トレッドベース層は、損失正接が0.1から0.2の範囲であり、貯蔵弾性率が4MPaから13MPaの範囲であり、ショアA硬さが45から70の範囲である、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項19】
前記第1のトレッドキャップ層は、損失正接が0.05から0.20の範囲であり、貯蔵弾性率が4MPaから12MPaの範囲であり、ショアA硬さが50から75の範囲である、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項20】
前記トレッドベース層は、前記第1のトレッドキャップ層と共押出成形される単一の押出成形物である、請求項11に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−49409(P2013−49409A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−183801(P2012−183801)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【出願人】(590002976)ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー (256)
【氏名又は名称原語表記】THE GOODYEAR TIRE & RUBBER COMPANY
【住所又は居所原語表記】1144 East Market Street,Akron,Ohio 44316−0001,U.S.A.
【Fターム(参考)】