説明

二重床構造の床板間隙部における断熱構造およびその施工方法

【課題】 フロア材の隙間を確実に遮蔽して優れた断熱効果を発揮することができる二重床構造の床板間隙部における断熱構造および施工方法を提供すること。
【解決手段】 フロア材1を、方形の板本体11の裏面にこの板本体11の外形よりも小さい断熱パネル12を固定して構成して、かつ、この板本体11の裏面の少なくとも長辺には、当該板本体11の外周縁よりも断熱パネル12の外周縁を内側にして段部13を形成し、
フロアポスト2の床受け板21における支持面21aの縁部対辺に、隣接するフロア材1・1の段部13・13をそれぞれ載置することによって、当該フロアポスト2を、これら両フロア材1・1の縁部に亙り設けると共に、付加枠板3の長手板体31の側端部を前記フロアポスト2の床受け板21の側方に配置して、かつ、長手板体31の上面がフロア材1の段部13に固定されることにより当該付加枠板3を床受け板21・21間に配置して、フロア材1・1の間隙をカバーリングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物における床下構造の改良、更に詳しくは、フロア材の隙間を確実に遮蔽して優れた断熱効果を発揮することができる二重床構造の床板間隙部における断熱構造および部品点数が少なくてコスト性も良く、施工も容易な二重床構造の床板間隙部における断熱施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、建造物の床下にあっては、昇降自在なフロアポストによってフロア材を支持して構成される二重床構造が採用されており、かかる床下を断熱するために、フロア材の裏面に断熱パネルを貼設したものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、かかる従来のフロア材による床下構造にあっては、床板フロア材同士の間に不可避的に隙間ができてしまうために、フロア材の裏面に断熱材が設置してあったとしても、結局はこの隙間で熱交換が生じてしまい、十分な断熱効果が得られないという不満があった。
【0004】
また、かかる二重床は、支持脚の設置位置が決まってしまうため、支持脚間隔が特定されてしまい、施工の自由度が制限されてしまうという不満もあった。
【特許文献1】特開2005−207031号公報(第4−7頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の床下断熱構造に上記問題があったことに鑑みて為されたものであり、フロア材の隙間を確実に遮蔽して優れた断熱効果を発揮することができる二重床構造の床板間隙部における断熱構造を提供することを技術的課題とする。
【0006】
また、本発明は、部品点数が少なくてコスト性も良く、かつ、フロアポストの設置位置が不規則であっても、施工自由度が高くて使い勝手が良く、施工も容易な二重床構造の床板間隙部における断熱施工方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0008】
即ち、本発明は、レベル調節自在なフロアポスト2・2…によって支持されるフロア材1が、スラブ上に複数敷き詰められて構成される二重床構造における断熱構造であって、
前記フロア材1を、方形の板本体11の裏面にこの板本体11の外形よりも小さい断熱パネル12を固定して構成して、かつ、この板本体11の裏面の少なくとも長辺には、当該板本体11の外周縁よりも断熱パネル12の外周縁を内側にして段部13を形成し、
前記フロアポスト2の床受け板21における支持面21aの縁部対辺に、隣接するフロア材1・1の段部13・13をそれぞれ載置することによって、当該フロアポスト2を、これら両フロア材1・1の縁部に亙り設けると共に、
長手板体31の片面に断熱材32を止着して付加枠板3を構成する一方、この付加枠板3の長手板体31の側端部を前記フロアポスト2の床受け板21の側方に配置して、かつ、長手板体31の上面がフロア材1の段部13に固定されることにより当該付加枠板3を床受け板21・21間に配置して、フロア材1・1の間隙をカバーリングするという技術的手段を採用することによって、二重床構造の床板間隙部における断熱構造を完成させた。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、付加枠板3の長手板体31の上面に、仮止めのための接着機能を付与するという技術的手段を採用した。
【0010】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、付加枠板3における断熱材32を長手板体31の側縁部から突出させ、床受け板21の裏面をカバーできるようにするという技術的手段を採用した。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、フロア材1の断熱パネル12の側縁と付加枠板3における断熱材32の側縁との間に、隙間を設けるという技術的手段を採用した。
【0012】
また、本発明は、レベル調節自在なフロアポスト2・2…によって支持されるフロア材1が、スラブ上に複数敷き詰められて構成される二重床構造において断熱するにあたり、
前記フロア材1を、方形の板本体11の裏面にこの板本体11の外形よりも小さい断熱パネル12を固定して構成して、かつ、この板本体11の裏面の少なくとも長辺には、当該板本体11の外周縁よりも断熱パネル12の外周縁を内側にして段部13を形成するとともに、
前記フロアポスト2の床受け板21における支持面21aにフロア材1の段部13を載置する一方、
長手板体31の片面に断熱材32を止着して付加枠板3を構成し、この付加枠板3の長手板体31の側端部を前記フロアポスト2の床受け板21の側方に配置して、かつ、長手板体31の上面をフロア材1の段部13に固定し、
然る後、床受け板21における支持面21aの縁部対辺に、隣接するフロア材1・1の段部13・13をそれぞれ載置されることにより、当該フロアポスト2を、これら両フロア材1・1の縁部に亙り設けることによって、当該付加枠板3を床受け板21・21間に配置して、フロア材1・1の間隙をカバーリングするという技術的手段を採用したことによって、二重床構造の床板間隙部における断熱施工方法を完成させた。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、付加枠板3の長手板体31の上面に接着機能を付与して、フロア材1の裏面の段部13に仮止めするという技術的手段を採用した。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、フロア材1の断熱パネル12の側縁と付加枠板3における断熱材32の側縁との間に、隙間を設けるという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0015】
本発明にあっては、フロア材を方形の板本体の裏面にこの板本体の外形よりも小さい断熱パネルを固定して、かつ、この板本体の裏面の少なくとも長辺には、当該板本体の外周縁よりも断熱パネルの外周縁を内側にして段部を形成し、前記フロアポストの床受け板における支持面の縁部対辺に、隣接するフロア材の段部をそれぞれ載置することによって、当該フロアポストを、これら両フロア材の縁部に亙り設けると共に、長手板体の片面に断熱材を止着して付加枠板を構成する一方、この付加枠板の長手板体の側端部を前記フロアポストの床受け板の側方に配置して、かつ、長手板体の上面をフロア材の段部に固定することによって、当該付加枠板を床受け板間に配置して、フロア材の間隙をカバーリングすることができる。
【0016】
したがって、本発明の断熱構造にあっては、フロアポストの設置位置が不規則になったとしても、付加枠板の形状を適宜加工することができ、施工自由度が高くて使い勝手が良く、フロア材の隙間を確実に遮蔽して優れた断熱効果を発揮することができる。また、本発明の施工方法にあっては、部品点数が少なくて済むので、コスト性も良く、施工も容易になることから、実用的利用価値は頗る高いと云える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0018】
本発明の実施形態を図1から図8に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものはフロア材であり、このフロア材1は、方形の板本体11の裏面にこの板本体11の外形よりも小さい断熱パネル12を固定して構成され、かつ、この板本体11の裏面の少なくとも長辺には、当該板本体11の外周縁よりも断熱パネル12の外周縁が内側になって段部13が形成されている。本実施形態では、板本体11と断熱パネル12とが座付ナベ頭ビスによって止着されており、組み立ておよび切断等の後加工が容易である。
【0019】
また、符号2で指示するものはフロアポストであり、このフロアポスト2は、スクリューロッド22を回転させることによって、床受け板21を昇降自在に構成されており、本実施形態では、床受け板21の螺合部をポリプロピレンなどのプラスチックで作製する一方、支持面21aとなる箇所にパーティクルボード片を配設している。
【0020】
また、符号3で指示するものは付加枠板であり、この付加枠板3は、長手板体31の片面に断熱材32を止着して構成されている。本実施形態では、前記フロア材1と同様に、両部材が座付ナベ頭ビスによって止着されており、組み立ておよび切断等の後加工が容易である。
【0021】
しかして、本発明は、レベル調節自在なフロアポスト2・2…によって支持されるフロア材1が、スラブ上に複数敷き詰められて構成される二重床構造における断熱構造であって(図1および2参照)、その具体的な施工手順について以下に説明する。
【0022】
まず、前記フロア材1を、方形の板本体11の裏面にこの板本体11の外形よりも小さい断熱パネル12を固定して構成して、かつ、この板本体11の裏面の少なくとも長辺には、当該板本体11の外周縁よりも断熱パネル12の外周縁を内側にして段部13を形成する。本実施形態では、この段部13を短辺にも成形して、根太に載置できるように構成する。なお、フロア材1の設置位置に応じて、長辺にのみ成形することもできる。
【0023】
具体的には、1820mm×600mm×20mmのパーティクルボードから成る板本体11の裏面に、1820mm×524mm×30mmの押出法ポリスチレンフォームから成る断熱パネル12を、座付ナベ頭ビス40mmを所定間隔で螺入して貼り合わせることによって作製する。この場合、段部13の幅はそれぞれ38mmとなる。
【0024】
そして、フロア材1の敷き初めとして、まず、室内の周部に配設された根太Nに段部13を載置するとともに、前記フロアポスト2の床受け板21における支持面21aにもフロア材1の段部13を載置する(図3参照)。この際、根太Nおよびフロアポスト2には、ビスを螺入することにより固定する。
【0025】
また、長手板体31の片面に断熱材32を止着して付加枠板3を構成する。具体的には、480mm×87mm×20mmのパーティクルボードから成る長手板体31の裏面に、524mm×85mm×30mmの押出法ポリスチレンフォームから成る断熱材32を、座付ナベ頭ビス40mmを所定間隔で螺入して貼り合わせることによって作製されている。この付加枠板3は、予め工場等で作製したものを持ち込んで使用しても良いし、施行現場において適宜作製しても良い。
【0026】
このように構成することにより、付加枠板3における断熱材32を長手板体31の側縁部から突出させることによって、床受け板21の裏面をカバーすることができる。
【0027】
そして、この付加枠板3の長手板体31の側端部を前記フロアポスト2の床受け板21の側方に配置して、かつ、長手板体31の上面をフロア材1の段部13にビス(より好ましくは半ねじタイプ)によりフロア材1の上面側から固定する(図4および5参照)。
【0028】
この際、付加枠板3の長手板体31の上面に、両面粘着テープ33を貼着したり、接着剤や粘着材を塗布するなどの接着機能を付与して、フロア材1の裏面の段部13に仮止めすることにより、ビス打ちを容易にすることができて施工性を向上させることができる。なお、両面粘着テープ33は、図1に示すように、長手板体31の上面(および支持面21a)の片側縁部に沿って貼着することができ、この両面粘着テープ33の縁部を板本体11の外周縁に沿って合わせて段部13に仮止めすることにより、裏側に隠れて見えない断熱材12に対して適当な隙間を設けて確実に位置決めすることもできる。
【0029】
このように、フロア材1の断熱パネル12の側縁と付加枠板3における断熱材32の側縁との間に、僅かに隙間を設けることによって、床板を歩行するなどの際に、これらの部材が擦れて音が出ること(床鳴り)を防止することができる。
【0030】
然る後、床受け板21における支持面21aの縁部対辺に、隣接するフロア材1・1の段部13・13をそれぞれ載置することにより、フロアポスト2を、これら両フロア材1・1の縁部に亙り設ける(図6参照)。
【0031】
そして、当該付加枠板3を床受け板21・21間に配置して、フロア材1・1の間隙をカバーリングすることができる。本実施形態では、図7に示すように、フロアポスト2の設置位置が不規則になって、床受け板21・21間の距離が変わったとしても、付加枠板の形状を適宜加工することによって、現場で対応することができるので、施工自由度が高くて使い勝手が良い。なお、フロアポストの移動により、ポスト間のスパンが広がった場合には、撓みなどの安全面を考慮して、フロアポスト2を適宜増設する。これに伴って付加枠板3を増設する際には、短縮加工を行えば良く、前記したように、長手板体31と断熱材32とをビス止めだけで固定することによって、切断等の後加工がし易い。
【0032】
以上のように敷設したフロア材1の上に、更に、床板Yを載置してビス止め等することによって、床下構造が完成する(図8参照)。
【0033】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、フロア材1の使用材料は、パーティクルボードに限らず、ベニヤ板などの合板を採用することもできる。
【0034】
また、付加枠板3は、フロア材1の長辺部分のみに施工することもできるし、段部13を短辺にも設けた場合にはそこにも施工することができ、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の断熱構造を表わす斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の断熱構造を表わす斜視図である。
【図3】本発明の実施形態の断熱構造の施工状態を表わす上面図である。
【図4】本発明の実施形態の断熱構造の施工状態を表わす断面図である。
【図5】本発明の実施形態の断熱構造の施工状態を表わす上面図である。
【図6】本発明の実施形態の断熱構造の施工状態を表わす上面図である。
【図7】本発明の実施形態の断熱構造の施工状態の変形例を表わす上面図である。
【図8】本発明の実施形態の断熱構造の施工状態を表わす断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 フロア材
11 板本体
12 断熱パネル
13 段部
2 フロアポスト
21 床受け板
21a 支持面
22 スクリューロッド
3 付加枠板
31 長手板体
32 断熱材
33 両面粘着テープ
N 根太
Y 床板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レベル調節自在なフロアポスト2・2…によって支持されるフロア材1が、スラブ上に複数敷き詰められて構成される二重床構造における断熱構造であって、
前記フロア材1は、方形の板本体11の裏面にこの板本体11の外形よりも小さい断熱パネル12を固定して構成され、かつ、この板本体11の裏面の少なくとも長辺には、当該板本体11の外周縁よりも断熱パネル12の外周縁が内側になって段部13が形成されており、
前記フロアポスト2の床受け板21における支持面21aの縁部対辺に、隣接するフロア材1・1の段部13・13がそれぞれ載置されることによって、当該フロアポスト2が、これら両フロア材1・1の縁部に亙り設けられていると共に、
長手板体31の片面に断熱材32を止着して付加枠板3が構成される一方、この付加枠板3の長手板体31の側端部が前記フロアポスト2の床受け板21の側方に配置され、かつ、長手板体31の上面がフロア材1の段部13に固定されることにより当該付加枠板3が床受け板21・21間に配置され、フロア材1・1の間隙をカバーリングしたことを特徴とする二重床構造の床板間隙部における断熱構造。
【請求項2】
付加枠板3の長手板体31の上面に、仮止めのための接着機能を付与したことを特徴とする請求項1記載の二重床構造の床板間隙部における断熱構造。
【請求項3】
付加枠板3における断熱材32が長手板体31の側縁部から突出しており、床受け板21の裏面をカバーできることを特徴とする請求項1または2記載の二重床構造の床板間隙部における断熱構造。
【請求項4】
フロア材1の断熱パネル12の側縁と付加枠板3における断熱材32の側縁との間に、隙間が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の二重床構造の床板間隙部における断熱構造。
【請求項5】
レベル調節自在なフロアポスト2・2…によって支持されるフロア材1が、スラブ上に複数敷き詰められて構成される二重床構造において断熱するにあたり、
前記フロア材1を、方形の板本体11の裏面にこの板本体11の外形よりも小さい断熱パネル12を固定して構成して、かつ、この板本体11の裏面には、当該板本体11の外周縁よりも断熱パネル12の外周縁を内側にして段部13を形成するとともに、
前記フロアポスト2の床受け板21における支持面21aにフロア材1の段部13を載置する一方、
長手板体31の片面に断熱材32を止着して付加枠板3を構成し、この付加枠板3の長手板体31の側端部を前記フロアポスト2の床受け板21の側方に配置して、かつ、長手板体31の上面をフロア材1の段部13に固定し、
然る後、床受け板21における支持面21aの縁部対辺に、隣接するフロア材1・1の段部13・13をそれぞれ載置されることにより、当該フロアポスト2を、これら両フロア材1・1の縁部に亙り設けることによって、当該付加枠板3を床受け板21・21間に配置して、フロア材1・1の間隙をカバーリングすることを特徴とする二重床構造の床板間隙部における断熱施工方法。
【請求項6】
付加枠板3の長手板体31の上面に接着機能を付与して、フロア材1の裏面の段部13に仮止めすることを特徴とする請求項4記載の二重床構造の床板間隙部における断熱施工方法。
【請求項7】
フロア材1の断熱パネル12の側縁と付加枠板3における断熱材32の側縁との間に、隙間を設けることを特徴とする請求項5または6記載の二重床構造の床板間隙部における断熱施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−91755(P2009−91755A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261504(P2007−261504)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】