説明

二重管式熱交換器

【課題】第1冷媒流路内での冷媒の流れを周方向に均一化しうる二重管式熱交換器を提供する。
【解決手段】二重管式熱交換器1は、外管2と、外管2内に間隔をおいて配置された内管3とを備え、外管2と内管3との間の間隙が第1冷媒流路4となるとともに内管3内が第2冷媒流路5となっている。外管2に、冷媒流入パイプ12および冷媒流出パイプ13を、外管2の長さ方向に間隔をおきかつ第1冷媒流路4に通じるように接続する。冷媒流出パイプ13を、冷媒流入パイプ12に対して外管12の周方向にずれた位置に配置する。冷媒流出パイプ13の冷媒流入パイプ12に対する外管2の周方向のずれ角度を、90〜180度とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は二重管式熱交換器に関し、さらに詳しくは、外管と、外管内に間隔をおいて設けられた内管とを備えている二重管式熱交換器に関する。
【0002】
この明細書において、「コンデンサ」という用語には、通常のコンデンサの他に凝縮部および過冷却部を有するサブクールコンデンサを含むものとする。
【背景技術】
【0003】
従来、カーエアコンに用いられる冷凍サイクルとして、コンプレッサ、凝縮部と過冷却部とを有するコンデンサ、エバポレータ、減圧器としての膨張弁、気液分離器、およびコンデンサとエバポレータとの間に配置され、かつコンデンサの過冷却部から出てきた高温の冷媒とエバポレータから出てきた低温の冷媒とを熱交換させる中間熱交換器を備えたものが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1記載の冷凍サイクルにおいては、コンデンサの過冷却部において過冷却された冷媒が、中間熱交換器において、エバポレータから出てきた低温の冷媒によりさらに冷却され、これによりエバポレータの冷却性能が向上させられるようになっている。
【0004】
特許文献1記載の冷凍サイクルに用いられている中間熱交換器は、外管と、外管内に間隔をおいて配置された内管とを備え、外管と内管との間の間隙がコンデンサから出てきた高温冷媒が流れる第1冷媒流路となり、内管内がエバポレータから出てきた低温の冷媒が流れる第2冷媒流路となっており、外管に、冷媒流入パイプおよび冷媒流出パイプが、外管の長さ方向に間隔をおき、かつ第1冷媒流路に通じるように接続されており、冷媒流入パイプおよび冷媒流出パイプが、外管の周方向の同一位置に位置している二重管式熱交換器からなる。
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の二重管式熱交換器の場合、冷媒流入パイプから外管と内管との間の第1冷媒流路内に流入した冷媒が、第1冷媒流路の冷媒流入パイプ側の部分を多く流れることになって冷媒の偏流が生じ、第1冷媒流路内での冷媒の流れが周方向に不均一になる。その結果、第1冷媒流路を流れる高温冷媒と、第2冷媒流路を流れる低温冷媒との熱交換効率が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−204165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、第1冷媒流路内での冷媒の流れを周方向に均一化しうる二重管式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0009】
1)外管と、外管内に間隔をおいて配置された内管とを備え、外管と内管との間の間隙が第1冷媒流路となるとともに内管内が第2冷媒流路となっており、外管に、冷媒流入パイプおよび冷媒流出パイプが、外管の長さ方向に間隔をおきかつ第1冷媒流路に通じるように接続されている二重管式熱交換器において、
冷媒流出パイプが、冷媒流入パイプに対して外管の周方向にずれた位置に配置されている二重管式熱交換器。
【0010】
2)冷媒流出パイプの冷媒流入パイプに対する外管の周方向のずれ角度が、90〜180度である上記1)記載の二重管式熱交換器。
【0011】
3)外管の内周面に、径方向内方に突出しかつ外管の長さ方向にのびる複数の凸条が周方向に間隔をおいて一体に設けられている上記1)または2)記載の二重管式熱交換器。
【0012】
4)外管に、長さ方向に間隔をおいて2つの拡管部が形成されており、一方の拡管部に冷媒流入パイプが接続されるとともに、他方の拡管部に冷媒流出パイプが接続されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の二重管式熱交換器。
【発明の効果】
【0013】
上記1)〜4)の二重管式熱交換器によれば、冷媒流出パイプが、冷媒流入パイプに対して外管の周方向にずれた位置に配置されているので、冷媒が、冷媒流入パイプから外管と内管との間の第1冷媒流路内に流入した際に、第1冷媒流路の冷媒流入パイプ側の部分を多く流れることが防止されて冷媒の偏流が発生しなくなり、第1冷媒流路内での冷媒の流れが外管の周方向に均一化される。その結果、第1冷媒流路を流れる高温冷媒と、第2冷媒流路を流れる低温冷媒との熱交換効率が向上する。
【0014】
上記2)の二重管式熱交換器によれば、第1冷媒流路内での冷媒の流れが外管の周方向に効果的に均一化されるので、第1冷媒流路を流れる高温冷媒と、第2冷媒流路を流れる低温冷媒との熱交換効率が一層向上する。
【0015】
上記3)の二重管式熱交換器のように、外管の内周面に、径方向内方に突出しかつ外管の長さ方向にのびる複数の凸条が周方向に間隔をおいて一体に設けられている場合、第1冷媒流路内での冷媒の流れが周方向に不均一になりやすいが、この場合であっても、上記1)および2)の構成を有していると、第1冷媒流路内での冷媒の流れが外管の周方向に均一化される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明による二重管式熱交換器の全体構成を示す長さ方向の中間部を省略した垂直縦断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線拡大断面図である。
【図4】図1の二重管式熱交換器を中間熱交換器として用いた冷凍サイクルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0019】
また、以下の説明において、図1の上下、左右を上下、左右というものとする。
【0020】
図1はこの発明による二重管式熱交換器の全体構成を示し、図2および図3はその要部の構成を示す。また、図4は図1の二重管式熱交換器を中間熱交換器として用いた冷凍サイクルを示す。
【0021】
図1および図2において、二重管式熱交換器(1)は、横断面円形のアルミニウム押出形材製外管(2)、および外管(2)内に間隔をおいて同心状に挿入された横断面円形のアルミニウム押出形材製内管(3)を備えており、外管(2)と内管(3)との間の間隙が第1冷媒流路(4)となり、内管(3)内が第2冷媒流路(5)となっている。内管(3)の両端部は外管(2)の両端部よりも外側に突出しており、両突出端部にそれぞれ管継手部材(6)が接合されている。
【0022】
外管(2)の両端寄りの部分、すなわち両端よりも長さ方向の若干内側部分に、それぞれ拡管部(7)(8)が形成されている。外管(2)における一方の拡管部(7)、ここでは左側の拡管部(7)の管壁には冷媒入口(9)が形成され、同他方の拡管部(8)の管壁には冷媒出口(11)が形成されている。
【0023】
冷媒入口(9)には第1冷媒流路(4)に通じるアルミニウム製冷媒流入パイプ(12)の一端部が挿入されて拡管部(7)にろう付されている。冷媒出口(11)には第1冷媒流路(4)に通じるアルミニウム製冷媒流出パイプ(13)の一端部が挿入されて拡管部(8)にろう付されている。冷媒流入パイプ(12)および冷媒流出パイプ(13)は、外管(2)の中心線に対して外管(2)の径方向外方にのびており、その先端部には、それぞれ管継手部材(14)が接合されている。
【0024】
冷媒流出パイプ(13)は、冷媒流入パイプ(12)に対して外管(2)の周方向(中心線の回りの方向)にずれた位置に配置されている。冷媒流出パイプ(13)の冷媒流入パイプ(12)に対する外管(2)の周方向のずれ角度は、ここでは180度であるが、当該ずれ角度は90〜180度であることが好ましい。すなわち、冷媒流出パイプ(13)は、冷媒流入パイプ(12)に対して、図2に鎖線Xで示す位置と鎖線Yで示す位置との間の範囲内に設けられていることが好ましい。
図3に示すように、外管(2)の内周面に、径方向内方に突出しかつ長さ方向にのびる複数の凸条(15)が周方向に等間隔をおいて一体に設けられている。第1冷媒流路(4)における隣り合う凸条(15)間の間隙が流路部分(4A)となっている。そして、外管(2)の冷媒流入パイプ(12)が接続された拡管部(7)内が、第1冷媒流路(4)の全流路部分(4A)を通じさせかつ冷媒流入パイプ(12)から外管(2)内に流入してきた冷媒を全流路部分(4A)に分流させる冷媒分流部となり、冷媒流出パイプ(13)が接続された拡管部(8)内が、第1冷媒流路(4)の全流路部分(4A)を通じさせかつ全流路部分(4A)を流れてきた冷媒を合流させる冷媒合流部となっている。
【0025】
図4は、上述した二重管式熱交換器(1)を中間熱交換器として用いた冷凍サイクルを示す。
【0026】
図4において、冷凍サイクルは冷媒として、たとえばフロン系の冷媒を用いるものであり、コンプレッサ(20)と、凝縮部(22)、気液分離器としての受液器(23)および過冷却部(24)を有するコンデンサ(21)と、エバポレータ(25)と、減圧器としての膨張弁(26)と、コンデンサ(20)から出てきた冷媒とエバポレータ(25)から出てきた冷媒とを熱交換させる中間熱交換器としての二重管式熱交換器(1)とを備えている。二重管式熱交換器(1)の外管(2)に接続された冷媒流入パイプ(12)にコンデンサ(20)の過冷却部(24)からのびる配管が接続され、同じく外管(2)に接続された冷媒流出パイプ(13)に膨張弁(26)にのびる配管が接続される。また、二重管式熱交換器(1)の内管(3)における冷媒流出パイプ(13)側の端部に、エバポレータ(25)からのびる配管が接続され、同じく内管(3)における冷媒流入パイプ(12)側の端部に、コンプレッサ(20)にのびる配管が接続される。冷凍サイクルは、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。
【0027】
冷凍サイクルの稼働時には、コンプレッサ(20)で圧縮された高温高圧の気液混相の冷媒は、コンデンサ(21)の凝縮部(22)で冷却されて凝縮させられた後、受液器(23)内に流入して気液2相に分離され、ついで過冷却部(24)に流入して過冷却される。過冷却された液相冷媒は、冷媒流入パイプ(12)を通って二重管式熱交換器(1)の外管(2)の拡管部(7)内に流入し、拡管部(7)を経て第1冷媒流路(4)内に入る。このとき、冷媒流出パイプ(13)が冷媒流入パイプ(12)に対して外管(2)の周方向にずれており、冷媒流出パイプ(13)の冷媒流入パイプ(12)に対する外管(2)の周方向のずれ角度が90〜180度であることから、液相冷媒が、第1冷媒流路(4)の冷媒流入パイプ(12)側の流路部分(4A)を多く流れることが防止されることになり、液相冷媒の偏流の発生が防止される。したがって、第1冷媒流路(4)内での冷媒の流れが周方向に均一化され、その結果第1冷媒流路(4)を流れる高温液相冷媒と、第2冷媒流路(5)を流れる後述する低温気相冷媒との熱交換効率が向上する。
【0028】
一方、エバポレータ(25)から出てきた気相冷媒は、二重管式熱交換器(1)の第2冷媒流路(5)内に流入する。そして、液相冷媒が第1冷媒流路(4)内を流れる間に第2冷媒流路(5)内を流れる比較的低温の気相冷媒によりさらに冷却される。二重管式熱交換器(1)の第1冷媒流路(4)における隣接する凸条(15)間の全流路部分(4A)を通過した液相冷媒は、拡管部(8)において合流し、冷媒流出パイプ(13)を通って膨張弁(26)に送られる。膨張弁(26)に送られた液相冷媒は、膨張弁(26)において断熱膨張させられて減圧された後エバポレータ(25)に流入し、エバポレータ(25)において気化させられる。一方、二重管式熱交換器(1)の第2冷媒流路(5)を通過した気相冷媒はコンプレッサ(20)に送られる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明による二重管式熱交換器は、コンプレッサ、凝縮部と過冷却部とを有するコンデンサ、エバポレータ、減圧器としての膨張弁、気液分離器、およびコンデンサとエバポレータとの間に配置され、かつコンデンサの過冷却部から出てきた高温の冷媒とエバポレータから出てきた低温の冷媒とを熱交換させる中間熱交換器を備えたカーエアコンを構成する冷凍サイクルにおいて、中間熱交換器として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0030】
(1):二重管式熱交換器
(2):外管
(3):内管
(4):第1冷媒流路
(5):第2冷媒流路
(7)(8):拡管部
(12):冷媒流入パイプ
(13):冷媒流出パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管と、外管内に間隔をおいて配置された内管とを備え、外管と内管との間の間隙が第1冷媒流路となるとともに内管内が第2冷媒流路となっており、外管に、冷媒流入パイプおよび冷媒流出パイプが、外管の長さ方向に間隔をおきかつ第1冷媒流路に通じるように接続されている二重管式熱交換器において、
冷媒流出パイプが、冷媒流入パイプに対して外管の周方向にずれた位置に配置されている二重管式熱交換器。
【請求項2】
冷媒流出パイプの冷媒流入パイプに対する外管の周方向のずれ角度が、90〜180度である請求項1記載の二重管式熱交換器。
【請求項3】
外管の内周面に、径方向内方に突出しかつ外管の長さ方向にのびる複数の凸条が周方向に間隔をおいて一体に設けられている請求項1または2記載の二重管式熱交換器。
【請求項4】
外管に、長さ方向に間隔をおいて2つの拡管部が形成されており、一方の拡管部に冷媒流入パイプが接続されるとともに、他方の拡管部に冷媒流出パイプが接続されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の二重管式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−21734(P2012−21734A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161213(P2010−161213)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】