説明

二重管方式の管削進装置

【課題】 土砂の取込み量を土質に関係なく一定にコントロールして道路の陥没等を確実に防止できるようにした二重管方式の管削進装置を提供する。
【解決手段】 二重管方式の削進装置において、ケーシングロッド(120)内壁面の先端側に第1のピンチ弁(200)を、その後方に第2のピンチ弁(210)を設け、制御手段(220,221)によって第1、第2のピンチ弁を改正する。掘削時には第1のピンチ弁を開き、第2のピンチ弁を閉じ、ケーシングロッド内に一定量の掘削土砂類を取込んだ後、第1のピンチ弁を閉じ、第2のピンチ弁を開き、取込んだ掘削土砂類の後方に排土する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重管方式の管削進装置に関し、特に土質に関係なく一定量の掘削土砂類を取り込むことができるようにした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中に上下水道管等の管を敷設する場合、開削工法に代え、地中に管を推進して敷設する管推進工法が採用される傾向にあり、小口径管を敷設する場合には二重管方式の管削進装置が採用されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
上述の二重管方式の管削進装置ではスライドベースに推進機本体をスライド自在に搭載するとともに推進ジャッキを設け、推進ジャッキによって推進機本体を前進させ、推進機本体に推進管(鋼管)を取付け、推進管内にケーシングロッド(内管)を回転自在に組込み、ケーシングロッド先端に掘削カッターを設け、駆動モータでケーシングロッドを回転させ、掘削カッターによって前方を掘削する一方、推進管の推進が完了すると、ケーシングロッドを抜き取り、塩化ビニル管等を推進管内にセットし、推進管と塩化ビニル管等との間に充填剤等を充填し、二重構造の管を敷設するようになっている。
【0004】
この二重管削進方式は普通土から、玉石、転石混り土、岩盤まで、適用できる土質の範囲が広く、しかも既設マンホールや既設シールドトンネル等へ直接到達させることができ、更には2重管構造であるので漏水がない、などの特徴を有する。
【0005】
しかし、砂地など、土質の軟弱な場所で推進作業を行うと、推進管廻りの土砂が大きく崩れてケーシングロッド内に取り込まれてしまい、道路の陥没等が懸念される。
【0006】
これに対し、ケーシングロッド内にバルーン部材を設け、バルーン部材を膨張・収縮させてケーシングロッドの取込み面積を増減し、土砂の取込み量をコントロールするようにした方式(特許文献3)、ケーシングロッド内にスパイラル帯鋼を固定し、ケーシングロッドの回転時にスパイラル帯鋼も回転させて土砂をケーシングロッドから押し出し、土砂の取込み量を抑制するようにした方式(特許文献4)、が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平06−257396号公報
【特許文献2】特開平11−153257号公報
【特許文献3】特開2003−97183号公報
【特許文献4】特開2003−239685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献3記載の方式ではバルーン部材によって土砂の取込み量を制限できるものの、推進管周囲の土質が判明せず、どの適度の量の土砂が取り込まれるのかが分かり難く、誤って大量の土砂を取り込んでしまうおそれがある。
【0009】
他方、特許文献4記載の方式では推進管を1スパン削進した後、ケーシングロッドを逆回転させて土砂を取り込んで排土する必要があり、作業工程が多くなってしまうという問題があった。
【0010】
本発明はかかる点に鑑み、土砂の取込み量を土質に関係なく一定にコントロールして道路の陥没等を確実に防止できるようにした二重管削進方式の管削進装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明に係る二重管方式の管削進装置は、先端に掘削カッターを有するケーシングロッドを推進管内に回転自在に組込み、上記ケーシングロッドを回転させ、上記掘削カッターによって前方土砂類を掘削しながら上記推進管を推進するようにした二重管方式の管削進装置において、上記ケーシングロッド内壁面の先端側に取付けられ、上記ケーシングロッドの内部空間を開閉し、その開放時に上記ケーシングロッド内への掘削土砂類の取込みを許容する一方、その閉鎖時に上記ケーシングロッド内への掘削土砂類の取込みを制限する第1のピンチ弁と、上記ケーシングロッド内壁面の第1のピンチ弁の後方に取付けられ、上記ケーシングロッドの内部空間を開閉し、その開放時に上記取込んだ掘削土砂類の後方への排土を許容する一方、その閉鎖時に上記取込んだ掘削土砂類の後方への排土を制限する第2のピンチ弁と、上記第1、第2のピンチ弁を開閉する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の特徴の1つはケーシングロッド内に第1、第2のピンチ弁を前後に設けてケーシングロッド内を開閉するようにした点にある。
【0013】
これにより、ケーシングロッドを回転させて推進管を推進する際に、第1のピンチ弁を開放して第2のピンチ弁を閉鎖し、掘削土砂類をケーシングロッド内に取り込んだ後、第1のピンチ弁を閉鎖して第2のピンチ弁を開放し、取込んだ掘削土砂類をケーシングロッドから後方に排土すると、掘削土砂類を一定量ずつ取り込んで排土することができる。その結果、推進管廻りの土砂類が大きく崩れてしまうことがなく、道路面の陥没を確実に防止できる。
【0014】
第1、第2のピンチ弁の間隔はケーシングロッドの内面の大きさ及び掘削土砂類の取込み量に応じて適宜設定する。また、第1、第2のピンチ弁はケーシングロッドの内部空間を開閉できればどのような方式や構造でもよい。例えば、光学機器の絞りに類似した構造のシャッターを採用することもできるが、掘削土砂類の取込み及び排土を考慮すると、バルーン部材を採用するのがよい。
【0015】
即ち、第1、第2のピンチ弁が流体の供給によって膨張し流体の排出によって収縮するバルーン部材によって構成されるのがよい。
【0016】
バルーン部材は袋状であればよく、その材質は流体の供給によって膨張し得るものであれば特に限定されず、例えばゴムを用いることができる。しかし、取込まれた掘削土砂類には鋭角な岩石が含まれ、バルーン部材が破裂すると、掘削土砂類の取込み量をコントロールするという作用効果を奏し得なくなるので、高強度の素材を用いるのがよい。
【0017】
バルーン部材は取込まれる掘削土砂類によって損傷を受けない高強度ゴムを用いて製作されているのが好ましい。
【0018】
ここで、掘削土砂類とは二重管削進方式が適用しえる土質、即ち普通土だけでなく、玉石、転石混り土、岩盤をも含むことを意味する。また、バルーン部材に供給される流体はバルーン部材に供給できてバルーン部材を膨張できるものであればどのようなものでもよく、例えばオイル等を用いることができるが、取り扱いが容易な、エアー又は水を用いるのがよい。
【0019】
ピンチ弁の制御手段は第1、第2のピンチ弁を開閉できればどのようなものでもよく、例えば第1、第2のピンチ弁にバルーン部材を用いる場合には流体供給通路を採用することができる。この流体供給通路はバルーン部材に流体を供給できればどのようなものでもよく、例えばパイプ、ホースあるいはチューブをケーシングロッド内面に固定して構成することができる。
【0020】
但し、ケーシングロッドの回転動作を考慮すると、パイプ、ホースあるいはチューブの基部側のジョイント及び流体の供給方法を工夫する必要がある。また、この種の公知の管削進装置では推進管とケーシングロッドとの間に水を加圧供給して先端ピットの後方から噴出させ、切削土砂類によるケーシングロッドの閉塞を防止することが行われているが、推進機本体側の水供給構造を利用してバルーン部材に水を供給することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図4は本発明に係る二重管削進方式の管削進装置の好ましい実施形態を示す。図において、管削進装置10のスライドベース100上には推進機本体110が前後スライド自在に搭載され、該推進機本体110は推進ジャッキ150によってスライドベース100上を前進駆動され後退されるようになっている。
【0022】
また、推進機本体110には駆動モータ111が搭載されるとともに、スピンドルロッド(図示せず)が設けられ、該スピンドルロッドと駆動モータ111との間にはギア伝達機構が設けられ、又スピンドルロッドにはケーシングロッド120の基部が取付けられ、ケーシングロッド120を回転させるようになっている。
【0023】
さらに、推進機本体110には押金112が設けられ、押金112には推進管130の基部が嵌め込まれるようになっている。この推進管130内にはケーシングロッド120が組み込まれ、両者の間には周方向の延びるローラベアリング(図示せず)が介設されてケーシングロッド120の円滑な回転及び真直推進性を保証するようになっている。
【0024】
ケーシングロッド120の先端には掘削カッター140が取付けられ、掘削カッター140には複数のビット141が周方向に所定の等角度間隔をあけて取付けられ、又ケーシングロッド120の内壁面にはスパイラル帯鋼121が螺旋状に取付けられており、ケーシングロッド120内は掘削土砂類の取込み通路となっている。
【0025】
また、ケーシングロッド120内には先端側に第1のピッチ弁200が、その後方に第2のピッチ弁210が配置され、帯状の取付け板200A、210Aと取付けねじとによってケーシングロッド120の内壁面に気密的又は水密的に固定されている。
【0026】
第1、第2のピッチ弁200、210は 強度ゴム製のバルーン部材によって製作され、必要に応じてその外表面が補強シート、例えば布製シートや樹脂製シート、あるいは繊維補強樹脂シートによって被覆されている。
【0027】
この第1、第2のピンチ弁200、210はエアー又は水の供給によって自由に膨張させ収縮させることができ、完全に膨張させると図4の(a)(b)に示されるように、ケーシングロッド120の内部を閉塞し、完全に収縮させるとケーシングロッド120の内壁面にほぼ沿った形態となるようになっている。
【0028】
また、ケーシングロッド120の内壁面にはホース(制御手段)220、221が長手方向に延びて取付けられ、ホース220、221の先端は第1、第2のピンチ弁200、210に接続され、後端側はジョイントが設けられて推進機本体110を経てエアーポンフ又は給水ポンプ(図示せず)に取外し可能に接続できるように構成され、接続を外した時にホース220、221の後端は全閉されるようになっている。
【0029】
例えば、地中に管を敷設する場合、通常の作業通り、発進立坑と到達立坑とを掘削し、発進立坑内に推進機本体110及びスライドベース100を設置し、推進機本体110の押金に推進管130の基部を取付け、推進管130内にケーシングロッド120を組み込み、ケーシングロッド120の基部をスピンドルロッドに取付け、駆動モータ111を駆動してケーシングロッド120を回転させるとともに、推進ジャッキ150で推進機本体110を前進駆動すると、掘削カッター140が前方の土砂類を掘削し、掘削された土砂類はケーシングロッド120内に取込まれる。
【0030】
地盤が軟弱な場合には推進管130の周囲の土砂が大きく崩れてケーシンクロッド120内に取り込まれてしまい、道路の陥没等が懸念される。
【0031】
本例の管削進装置においては、地盤が軟弱で道路の陥没等が懸念される場合には管の推進作業時に第4の(a)に示されるように、第1のピッチ弁200を開き、第2のピッチ弁210を閉じておく。すると、掘削された土砂類はケーシングロッド120内の第2のピッチ弁210の前方空間の容積に対応した一定の量だけケーシングロッド120内に取込まれる。
【0032】
ケーシングロッド120内の第2のピッチ弁210の前方空間が取込んだ掘削土砂類で満杯になると、第4の(b)に示されるように、第2のピッチ弁210を開き、第1のピッチ弁200を閉じる。すると、取込まれた掘削土砂類がスパイラル帯鋼121によって後方に送られて排土される。
【0033】
その結果、掘削カッター140前方の土砂類がむやみにケーシングロッド120内に取込まれることはなく、推進管130廻りの土砂が大きく崩れることもなく、道路の陥没等が発生するおそれもない。
【0034】
さらに、第1、第2のピッチ弁200、210を高強度のゴムで製作しているので、第1、第2のピッチ弁200、210が土砂に含まれる鋭角な岩石によって損傷を受けて破裂することもなく、推進作業を円滑に進行させることができる。
【0035】
発進立坑と到達立坑との間に距離がある場合にはケーシングロッド120及び推進管130を残して推進機本体110を後退させ、次のケーシングロッド120及び推進管130を前方のケーシングロッド120及び推進管130に接続するとともに、推進機本体110にセットし、同様にして推進を継続する。
【0036】
推進管130の推進が済むと、ケーシングロッド120を推進管130から抜き取り、スライドベース100及び推進機本体110を発進縦坑から引き上げ、残った推進管130内に塩化ビニルパイプ等を挿入し、中込め作業を行うと、管を地中に敷設することができる。
【0037】
推進管130廻りの土砂が崩れるおそれがない場合には第1、第2のピッチ弁200、210を開放したまま推進を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る二重管削進方式の管削進装置の好ましい実施形態を示す概略側面構成図である。
【図2】図1の一部切欠き側面図である。
【図3】上記実施形態における要部を示す一部切開斜視図である。
【図4】上記実施形態における第1、第2のピッチ弁の動きを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0039】
100 スライドベース
110 推進機本体
120 ケーシングロッド
130 推進管
140 掘削ビット
200 第1のピンチ弁
210 第2のピンチ弁
220,221 ホース(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削カッターを有するケーシングロッドを推進管内に回転自在に組込み、上記ケーシングロッドを回転させ、上記掘削カッターによって前方土砂類を掘削しながら上記推進管を推進するようにした二重管方式の管削進装置において、
上記ケーシングロッド内壁面の先端側に取付けられ、上記ケーシングロッドの内部空間を開閉し、その開放時に上記ケーシングロッド内への掘削土砂類の取込みを許容する一方、その閉鎖時に上記ケーシングロッド内への掘削土砂類の取込みを制限する第1のピンチ弁と、
上記ケーシングロッド内壁面の第1のピンチ弁の後方に取付けられ、上記ケーシングロッドの内部空間を開閉し、その開放時に上記取込んだ掘削土砂類の後方への排土を許容する一方、その閉鎖時に上記取込んだ掘削土砂類の後方への排土を制限する第2のピンチ弁と、
上記第1、第2のピンチ弁を開閉する制御手段と、
を備えたことを特徴とする二重管削進方式の管削進装置。
【請求項2】
上記第1、第2のピンチ弁が流体の供給によって膨張し流体の排出によって収縮するバルーン部材によって構成されている請求項1記載の二重管削進方式の管削進装置。
【請求項3】
上記バルーン部材が取込まれる掘削土砂類によって損傷を受けない高強度ゴムを用いて製作されている請求項2記載の二重管削進方式の管削進装置。
【請求項4】
上記バルーン部材に供給される流体がエアー又は水である請求項2記載の二重管削進方式の管削進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−9425(P2007−9425A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188139(P2005−188139)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(500246108)株式会社近畿開発 (7)
【Fターム(参考)】