説明

互いに対して移動可能な二つの部分の閉位置をモニターする安全スイッチ

【課題】高い安全レベルを維持しつつ、より簡単な設置および少ない保管労力で済む種類の安全スイッチを提供する。
【解決手段】自動設備上の保護ドアをモニターすることを特に目的としている安全スイッチは、アクチュエータ(16)およびセンサ(18)を有する。アクチュエータ(16)は、アクチュエータアンテナ(56)を備え、かつセンサ(18)は、センサアンテナ(46)を備える。アクチュエータ−(16)およびセンサ(18)は、保護ドアが閉位置にある場合、変成器のように、特にトランスポンダーのように互いに結合される。本発明の一態様によれば、センサアンテナ(46)は、磁気方向特性を有し、それによりセンサアンテナ(46)から見られるように、少なくとも二つの互いに垂直な空間方向(64,66,68)におけるアクチュエータ(16)との変成器結合が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対して移動可能である二つの部分の閉位置をモニターする、特に自動設備上の保護ドアをモニターする安全スイッチに関し、該スイッチは、各々が該部分の一方に固着されるように構成されるアクチュエータおよびセンサを含み、アクチュエータは、アクチュエータアンテナを有し、かつセンサは、センサアンテナを有し、該アンテナを経て、アクチュエータおよびセンサは、部分が閉位置にある場合、特にトランスポンダーのように、変成器結合される。
【背景技術】
【0002】
この種類の安全スイッチは、ドイツのラインフェルデン・エヒターディンゲン(Leinfelden−Echterdingen)70771のオイヒナー社(Euchner GmbH&Co.KG)によって、製品名CESで販売されている。
事故に対する保護に関する安全性への考慮は、自動設備の計画および設計においてますます重要な役割を果たしつつある。さまざまな保護対策、特に緊急オフスイッチ、光バリア、および保護ドアとして公知であるものは、該設備を安全にするために用いられ、保護フェンスと連動して設備の危険な部分へ接近できなくする。保護ドアの開口部は、開いた保護ドアが安全リスクを表すので、設備の動作中、フェールセーフ態様で検出されなければならない。関連する欧州規格EN 954−1および同程度のかつ関連する規則(例えば、新規のIEC EN 61508、または後者から派生したprEN ISO 13849−1)は、予防対策についての要求を規定する。よって、本発明は、上記の目的のために意図されかつ設計され、よってEN 954−1の少なくともカテゴリー3または同程度の安全基準を満たす安全スイッチに関する。
【0003】
先行技術から、さまざまな安全スイッチは、保護ドアの閉位置、より一般的には互いに対して移動可能な二つの部分の閉位置を十分な程度のフェールセーフ性でモニターするために公知である。連動機能を提供することもできる機械スイッチに加えて、さまざまな種類の非接触安全スイッチがある。これらは、汚染環境における利点を提供する。一つの公知の種類の非接触安全スイッチのアクチュエータおよびセンサは、閉位置において互いに機械的に結合される。操作しないようにするために、符号化された磁石配置が用いられる場合もある。
【0004】
異なる種類の非接触安全スイッチでは、個別に符号化された通信は、センサとアクチュエータとの間で用いられ、該通信は、移動部分が閉位置にある場合のみ可能である。この種類の安全スイッチについては、いわゆるトランスポンダー(「タグ」と呼ばれることもある)が特に用いられる。トランスポンダーは、センサに変成器結合される場合、個々のコーディングを、該センサに送信する。上記のオイヒナー社の安全スイッチは、このグループの安全スイッチに属する。
【0005】
他の先行技術の安全スイッチは、ドイツのブッパータル(Wuppertal)42232のシュメアザール社(K.A.Schmersal GmbH)によって、製品名BZ 16で提供されている。この公知の安全スイッチは、専用スイッチの変形が、各接近方向、すなわちアクチュエータからセンサへの接近方向について用いられなければならないという欠点がある。一例として、アクチュエータが、前方からというよりむしろ上方からセンサの方へ移動されるよう意図されている用途について、安全スイッチが必要とされるなら、公知の安全スイッチの異なる変形が必要とされる。個々の場合には、これによって、円滑な製造に役立つように重要な部品については一定数の予備部品を常に有するのが望ましいので、安全スイッチを設置するのがより困難となるだけでなく、製造業者および使用者のどちらにも、保管コストの増大がもたらされる。
【0006】
上述したオイヒナー社のCES安全スイッチの場合、この問題を避けるために、「センサヘッド」(すなわち、センサアンテナを収納するセンサの部分)を、安全スイッチ上に異なる配向で装着することが可能である。したがって、異なる接近方向は、センサヘッドを傾けることによって達成されうる。この解決策により、保管コストが減じられるが、設備は複雑になる。
【0007】
さらに、下記特許文献1は、本明細書で扱っているのと同様の用途のため、トランスポンダーベースの安全スイッチの基本設計を開示している。しかしながら、本明細書で説明する問題は考慮されていない。
【特許文献1】欧州特許第0 968 567号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許出願第103 34 653.8号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この背景に鑑み、本発明の目的は、同時に高い安全レベルを維持しつつ、より簡単な設置および少ない保管労力で済む上述した種類の安全スイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、この目的は、磁気方向特性を有するセンサアンテナによって達成され、それにより、センサアンテナから始まる少なくとも二つの互いに垂直な空間方向におけるアクチュエータとの変成器結合が可能である。
よって、新規の方向特性を有するセンサアンテナにより、アクチュエータについての異なる接近方向が、このように可能となり、特定の状況における方向特性はまた、センサアンテナに関するアクチュエータの配向によって決まる(このことは、以下でさらにより詳細に説明する)。いうまでもなく、センサアンテナの方向特性は、互いに垂直な接近方向が各々、画定された切換距離を保証するように構成される。切換距離は、この場合、センサとアクチュエータとの間の(最大)距離であり、それから安全スイッチが、可動部分の閉位置を検出する。
【0010】
当該分野について、本発明の解決策は、このように初めて二つ以上の所定の優先方向を有するセンサアンテナを利用する。これと対照的に、先行技術における公知の安全スイッチの全ては、使用可能な優先方向を1つだけ持つ方向特性を有するセンサアンテナを使用する。したがって、先行技術の安全スイッチの場合、異なるスイッチの変形を提供することまたはセンサヘッドを所望の方向まで回転させることのいずれかが必要である。対照的に、本解決策は、最も簡単な場合には、全方向性であり、かつ原則的に、任意の所望の空間方向から接近されうるセンサアンテナを使用する。
【0011】
本発明は、とりわけ、必要な安全性を保証するために、一優先方向のみを持つ方向特性を有する必要はないという発見に基づいている。理論上は、異なる接近方向は、操作の可能性を開く。しかしながら、このことは、特に、個別に符号化されるトランスポンダーを用いる際には、異なる方法で確実に対処されうる。また、規定の切換距離を保証するために、一優先方向のみを持つセンサアンテナが必要ではない。出願人による実際の試験が示したように、規定の切換距離はまた、本発明による解決策を用いて、複数の接近方向から達成されうる。
【0012】
新規の安全スイッチにより、センサの設置位置または配向を、この目的のために機械的部分を再設置するかまたは修正する必要なしに容易に変更することができる。よって、新規の安全スイッチを、異なる接近方向でフレキシブルに使用することができる。保管コストを、さらなる設置労力なしに減じることができる。上述した目的は、完全に達成される。
【0013】
さらに、新規の解決策は、特に汚れおよび散水に対する保護を含むハウジングが所望される場合、安全スイッチについてのハウジング設計が簡略化されるという利点がある。
好ましい改良では、センサアンテナは、実質的に全方向特性を有する。
この改良では、センサアンテナは、二つの接近方向について設計されているだけでなく、アクチュエータが多数の空間方向から接近されるようにする。全方向特性は、この場合一平面に制限されることがあり、すなわちセンサアンテナが、前から、右から、左から、場合によっては後から接近されるようにする。しかしながら、好ましい一改良では、全方向特性は、3次元であり、すなわち、新規センサアンテナは、上方からまたは下方からも接近されうる。当業者は、正確な球形(すなわち、切欠または「くぼみ」がない)が実施においてほとんど実現可能でないことを承知しているが、理想的には、新規センサアンテナは、このように等方性の方向特性を有する。本発明の目的のための全方向特性は、このようにアクチュエータが多数の異なる空間方向からセンサにうまく接近することができる場合にも提供される。さらに、この改良は、他の理由のために、たとえば、供給ケーブルによって生じる機械的障害物のために妨げられている個々の空間方向を妨げない。
【0014】
この好ましい改良によって、設置位置および配向に関して、新規安全スイッチについての特に高度の汎用性がもたらされる。さらに、この改良は、センサアンテナを、より広い許容度を持って製造しかつ安全スイッチに取り付けることができ、それによって製造コストを減じるという利点がある。
さらなる改良では、センサアンテナは、異なって整列される方向特性を持つ複数のアンテナ要素を備える。
【0015】
例示的な実施形態では、センサアンテナは、例えば、互いに直角に配置され、かつ各々が、一つまたは二つの接近方向を「担当する」二つのアンテナ要素を備える。高度の均一性を持つ全方向特性を、アンテナ間の切換によって、または同時動作中の方向特性の重畳によって達成することができる。この改良によって、異なる接近方向において同一の切換距離を達成するのがより容易になる。
【0016】
さらなる改良では、センサアンテナは、空気コイル備える。
コイルのセンサアンテナとしての使用は、先行技術における安全スイッチにとっては珍しいことではない。しかしながら、これまで公知の状況の全てにおいて、コイルは、従来の(一方向のみの)方向特性を達成するために、フェライトポットにおいて用いられる。空気コイルは、本発明に関して、対照的に、フェライトポットなしに(だが場合により、インダクタンスを増加させるためにフェライトコアを用いて)動作する導体ループである。生産における材料コストおよび組立労力は、この改良では、部品の範囲が狭められたことによって減じられる。さらに、空気コイルは、それ自体、複数の互いに垂直な接近方向が可能となるフィールド分布を提供する。
【0017】
さらなる改良では、センサアンテナは、センサ用の回路基板上に平らに配置されるコイルを備える。コイルは、回路基板上で導体トラックの形態であれば、特に好ましい。
この改良により、新規の安全スイッチを、物理的に特に小さくかつ平らにすることができる。驚くべきことに、この物理的な大きさの減少は、新規の安全スイッチの範囲(切換距離)に関するいかなる著しい制約がなくても可能であることがわかっている。対照的に、新規の平坦な形状により、新規安全スイッチは、ドアレール等により近く設置することができ、その結果、効果的に使用可能な適用範囲さえより大きくなる。さらに、この改良により、ハウジング部分はより小さくできるので、コスト減少が可能となる。このことで特に経済的な生産が可能となるので、コイルが回路基板上で導体トラックの形態であるのは、特に費用効率がよい。
【0018】
さらなる改良では、方向特性は、変成器結合についてのより強い第1優先方向およびより弱い第2優先方向を有し、センサアンテナは、ハウジング壁を有するアンテナハウジング内に配置され、かつ第1優先方向におけるセンサアンテナとハウジング壁との間の距離が、第2優先方向におけるより長い。
この改良では、センサアンテナは、第2の弱い方の優先方向よりも第1の強い方の優先方向に向かってハウジング壁からさらに離れて配置される。距離の増加および、距離と共に減少する磁界強度は、異なる接近方向における異なる切換距離を容易にかつ精密に補うことを可能にする。したがって、新規安全スイッチの本改良は、異なる接近方向においてより均一な応答を有する。
【0019】
さらなる改良では、第1優先方向に垂直なセンサアンテナは、少なくとも二つのハウジング壁から同じ距離に配置される。
この改良は、その磁界分布がコイル長軸と直角にほぼ回転対称であるので、空気コイルがセンサアンテナとして用いられる場合、とりわけ有利である。新規安全スイッチの応答は、第1優先方向に垂直のハウジング壁からの同じ距離を用いてより均一にされる。
【0020】
さらなる改良では、新規安全スイッチは、装着面を有するセンサハウジングを有し、フィールド絶縁体は、センサアンテナと装着面との間に配置される。電気的および/または磁気的導電性板は、特に、フィールド絶縁体、すなわち例えば銅、アルミニウム、鉄、軟鉄、および/またはフェライト板として用いられてもよい。
この改良は、新規安全スイッチの起こり得る欠点、具体的には方向特性が、設置位置の材料によって影響される可能性を克服する。典型的には、先行技術の安全スイッチの装着面は、一例としてドアフレームなど、互いに対して移動することができる部分の一方にねじ止めされる。このドアフレームが、金属からできていれば、センサアンテナの方向特性が、影響を及ぼされることがある。結果として、切換距離は、変動することがある。好ましい改良では、この影響は、決定論的態様で減じられかつ/または予想される。金属板へのセンサの取り付けは、このように、センサアンテナに対し、影響を及ぼさない、または少なくともかなり影響が少ない。新規安全スイッチの動作パラメータに、より小さい許容度で対応することができる。
【0021】
さらなる改良では、センサアンテナと装着面との間の距離は、約5mmまたはそれ以上である。
この改良はまた、安全スイッチに対する金属装着面の影響を最小にすることに貢献する。アンテナの外面と設置用の外部ハウジング面との間の距離として測定される、センサアンテナと装着面との間の約5mmという上記の距離は、実際の試験における確実な動作にとって十分であるとわかっている。距離が大きくなると、設置位置への影響がさらに減じる。距離が著しく短いなら、設置位置が、安全用途についての切換距離に過度の影響を及ぼすことになる。
【0022】
さらなる改良では、アクチュエータアンテナは、少なくとも二つの垂直空間方向のうち第1方向の変成器結合のための第1配向を有し、かつ少なくとも二つの垂直空間方向の第2方向の変成器結合のための第2配向を有し、第1および第2配向は、互いに関して約90度だけ回転される。
言い換えると、このことは、アクチュエータ(そのアクチュエータアンテナとともに)は、所望の接近方向の機能として回転されることを意味する。原則的に、これの代替として、アクチュエータの配向を、各接近方向について変化しないままにしておくことも可能である。本好ましい改良は、対照的に、機械的な利点を有する。これは、規定の切換距離を保証するために、アクチュエータアンテナについて、例えば28mmの比較的大きなコイル直径を用いるのが望ましい。他方、アクチュエータアンテナは、アンテナ軸上で比較的平坦であってもよく、その結果アクチュエータは、アンテナ軸上では、その側面よりはるかに短い。本好ましい改良は、各場合のアクチュエータが、接近方向にかかわらず、センサから同じ距離まで移動されうるという利点がある。これによると、設置が簡略化され、かつ規定の切換距離を提供するのがより容易になる。
【0023】
上述した特性および以下で説明すべき特性は、それぞれ上述の組合せにおいてだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せでまたは単独で用いられうることは自明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の例示的な実施形態を、次の説明でより詳細に説明し、かつ図面で以下のように図示する。
図1では、新規安全スイッチを含む自動設備は、全体を参照番号10によって示す。この場合、安全スイッチは、次に設備を安全にすることを目的としている保護ドア12の閉位置をモニターするために用いられる。一例として、該設備を、本明細書では、ロボット14として図示する。しかしながら、新規安全スイッチの使用分野は、この特定の例に制限されない。一般に、新規安全スイッチを、互いに対して移動することができる二つの部分のその(閉)位置のうち任意のものの安全モニタリングのために用いることができる。これはまた、たとえば、ピストン位置の、ピストンシリンダーまたは他のピストンに対するモニタリングを含み、その場合、「閉位置」という表現は、ピストンが他の物体の領域に位置決めされることを意味する。
【0025】
安全スイッチは、アクチュエータ16およびセンサ18を備える。アクチュエータ16は、保護ドア12に固着される。センサ18は、壁20に(または本明細書では図示しないが、保護ドア12用フレームに)固着される。保護ドア12が閉状態にある(本明細書では図示せず)場合、アクチュエータ16は、センサ18の物理的近傍にあり、それによって、さらに以下でより詳細に説明するような態様で、アクチュエータ16とセンサ18との間のトランスポンダーのような結合がもたらされる。保護ドア12が開かれると、アクチュエータ16は、センサ18から離れて移動され、その結果トランスポンダーのような結合が「引き裂かれ」る。センサ18は、次に、切換信号を発生させ、ロボット14のスイッチが切られる。
【0026】
この場合、センサ18は、二つの線を経て安全切換装置22に接続される。第1の線24は、安全切換装置22からセンサ18に至る。試験信号を、その動作を検査するために、安全切換装置22によって、この線を経てセンサ18に送信することができる。第2の線26を経て、安全切換装置22は、センサ18によって発生される切換信号および保護ドア12が閉状態にあることを示す信号を受信する。安全切換装置22によるセンサのモニタリングの一つの好ましい種類は、上記特許文献2に記載され、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、これの代替として、センサ18はまた、関連規則(EN954−1の少なくともカテゴリー3または同程度の安全基準)の趣旨内で、異なるフェールセーフ態様で設計されてもよい。一例として、最初に引用した上記特許文献1は、2チャンネル評価構造を持つ実施を記載している。
【0027】
出力側では、安全切換装置22は、本明細書では、その接触が、それ自体公知の態様で、ロボット14の電源32にメーク接点が配置される二つの接触器28,30を制御する。接触器28,30を経て、安全切換装置22は、アクチュエータとセンサとの組合せ16,18が、保護ドア12が開いていることを発見した場合、または規定されていない、それゆえ安全上危険な状態が、前に述べた不具合モニタリングの途中で識別された場合、ロボット14への電力供給を遮断する。
【0028】
安全切換装置22は、好ましくは、欧州規格EN954−1のカテゴリー4または同程度の安全規格に従う装置である。一例として、安全切換装置は、本発明の出願人のPNOZ(登録商標)elog型である。しかしながら、これの代替として、センサ18はまた、商標名PSS(登録商標)で、本出願人によって販売されているような、プログラム可能な安全制御器に接続されうる。
【0029】
図2では、新規安全スイッチの例示的な実施形態は、全体が、参照番号36によって示される。これとは別に、同じ参照符号は、前と同じ要素を示す。
安全スイッチ36用センサ18は、ハウジング壁40,42,44を持つセンサハウジング38を有する(図3参照)。センサハウジングは、この場合二つに分割される。センサアンテナ46は、本明細書では第1の部分にかつ空気コイルの形態で配置される。空気コイル46を、本明細書では、コイル縦軸に平行な断面で概略的に図示する。
【0030】
センサアンテナ46が接続される電子回路48は、センサハウジング38の第2部分に配置される。特に、回路48は、いわゆるタグリーダ、すなわちアクチュエータ16からのトランスポンダー信号を復号しかつ個々のタグまたは識別子をデータ値として生成させる回路を収容する。該回路48はまた、安全切換装置22のための切換信号を、アクチュエータ16からの信号の機能として発生させるフェールセーフ評価ユニットを備える。この目的のため、回路48を、接続部49を経て安全切換装置22に接続することができる。
【0031】
センサハウジング38の2部構成は、本発明の実際の実施にとって本質的ではないが、センサアンテナ46についてのより均一なフィールド分布および回路48についてのよりよい分離が可能となるので利点がある。
参照番号50は、空気コイル46の周りの磁界を特徴づける磁力線を示す。該線50は、空気コイル46の縦軸に関してほぼ回転対称に形成される。明確にするために、例えば、センサの近傍の回路48または金属部分によって生じる乱れは、ここに図示する理想的に典型的なプロファイルには、図示しない。
【0032】
センサ18の一実施形態は、(図2の図示では)センサアンテナ46の下に、すなわちセンサアンテナ46と装着されるべきセンサ18用のハウジング壁との間に配置されているフィールド絶縁体52を含む。フィールド絶縁体はまた、対応するハウジング壁自体であってもよい。例示的な一実施形態では、フィールド絶縁体は、鉄板である。他の例示的な実施形態では、該フィールド絶縁体は、軟鉄、フェライト、銅、アルミニウム等からなる板である。磁力線50が、次にセンサ18の下の領域では異なるプロファイルをとり、その結果、もはや完全に回転対称ではないことは自明である。より簡単な例示的な実施形態では、フィールド絶縁体52は、省略されてもよい。センサアンテナ46は、次に、好ましくは、センサ18が装着されるハウジングの外面から約5mmまたはそれ以上の距離に配置される。この距離は、図3ではd3で示される(ただしこの場合、ハウジング側壁44を参照してではあるが)。
【0033】
アクチュエータ16は、それ自体が公知の態様で、集積回路54を有し、かつ本集積回路は、アクチュエータアンテナ56に接続される。アクチュエータアンテナ56を、本明細書では、空気コイルとして再び図示するが、特定の場合には異なる形態であってもよい。コーディングは、回路54に記憶され、かつ本明細書では記号線58によって表される。該コーディング58は、個別にアクチュエータ16に割り当てられ、その結果センサ18は、コーディング58に基づきアクチュエータ16を識別することができる。
【0034】
典型的に、本明細書に図示するアクチュエータ16は、それ自体の専用電源を有しない。実際のところ、二つのアンテナ46,56が、十分強い変成器結合を有する場合、集積回路54に供給するための電源は、センサ18から得られる。このような結合は、図2のアクチュエータ16について図示するように、センサアンテナ46によって生成される磁界の力線50が、アクチュエータアンテナ56の平らな断面を通過する直交部品を有する。回路54は、次に励起され、かつセンサ18の回路48によって検出されかつ評価されうる内部コーディング58で、既存のフィールドを変調する。
【0035】
センサアンテナ46の磁界50は、距離が長くなるにつれて弱くなるので、変成器結合は、アクチュエータ16とセンサ18との間の距離によって決まる。距離が、規定の切換距離未満である場合、センサ18は、アクチュエータ16を読み取ることができる。対応する距離を越えて、アクチュエータとセンサとの間ではいかなる通信も可能ではない。対応する切換距離は、参照番号60によって図2に象徴的に示される。
【0036】
この例示的な実施形態のセンサアンテナ46は、ほぼ全方向特性62(図3を参照せよ)を有する。結果として、アクチュエータ16とセンサ18との間の変成器結合は、この場合、アクチュエータ16が前方から、すなわち、矢印64の方向に接近する場合だけでなく、可能である。実際のところ、結合はまた、アクチュエータ18が側面で接近方向から(矢印66,68)接近する場合も可能である。これは、図2に示される力線分布50のためである。図示したように、分力の垂直線はまた、アクチュエータ16が16’および16”によって示される位置に位置決めされる場合、アクチュエータアンテナ56の平断面の結果として生じる。したがって、安全スイッチ36により、アクチュエータ16とセンサ18との間で互いに垂直な接近方向が可能になる。
【0037】
実際の実施において側面からセンサに接近するには、参照番号16”によって示されるアクチュエータ配向が現在のところ好ましい。すなわち、アクチュエータは、この場合、接近方向64に関して90度回転される。この場合、アクチュエータは、接近方向にかかわりなく、センサから同じ距離まで移動されうる。それ以外には(16’の配向)、アクチュエータアンテナ56の大コイル直径は、近接を機械的に妨げることがある。しかしながら、原理的には、配向16’もまた可能である。
【0038】
図3は、センサアンテナ46の方向特性62を、簡略化された形態で図示する。これは、それ自体が公知の態様で、本明細書ではアクチュエータ16の接近方向64(図2)に平行である磁界成分について同じ磁界の強さの3次元プロファイルに関する。分力線は、アクチュエータ16が、図2で参照番号16および16’が付いた位置に対応する配向でセンサ18に接近する場合は、支配要因である。
【0039】
対照的に、アクチュエータが、これ(参照番号16”)に関して90度回転された配向でセンサ18に接近するなら、これと直角の分力が、支配要因であり、それによって、異なる外観を有する方向特性が(具体的に言うと、その葉がコイル46の縦軸に関してほぼ直交して位置決めされる四つ葉のクローバーの葉の形態で)もたらされる。したがって、方向特性は、異なるプロファイルを有してもよく、それゆえ異なる切換距離は、アクチュエータ16,16”の配向によって決まる。しかしながら、このことは、「全方向」特性の根本原理に影響を及ぼさない。
【0040】
図3に示されるように、方向特性62は、空気コイル46の縦軸の方向に第1優先方向72を有し、かつそれに関して横方向に第2優先方向74を有する。空気コイルについて、二つの優先方向72、74は、該空気コイル46の想像上の中心点76を通る平面に関して基本的に対称である。この結果、互いに反対方向に、各場合等しい強度の二つの優先方向が生じる。しかしながら、互いに比較して、二つの優先方向72,74は、例示的な目的で用いられる円78から分かるように、異なる著しい強度を有する。具体的には、第1優先方向72(空気コイル46の長軸に平行)は、第2優先方向74より著しい。言い換えると、空気コイル46から同じ距離の磁界強度は、第1優先方向72ではより強く、かつ等しい磁界強度のプロファイルは、第1優先方向72においてより遠い距離まで伸長する。したがって、空気コイル46によって、本質的に、アクチュエータ16とセンサ18との間の異なる切換距離が、接近方向の機能としてもたらされる。
【0041】
このことを補償するために、空気コイル46は、この場合、それぞれのハウジング壁40および42,44から異なる距離d1およびd2に配置される。具体的には、空気コイル46は、二つの横ハウジング壁42,44から同じ短い距離d2にあり、一方前ハウジング壁40から遠い距離d1離れている。結果として、切換距離60a,60bによって図3に示されるように、切換距離は、二つの優先方向72、74に接近した場合、互いに一致される。
【0042】
図4は、センサアンテナについてのさらなる方向特性82の簡略化された例を示す。方向特性82は、互いに垂直な空間方向ではほぼ同じ程度まで著しいが、ただし関連当業者は、それにもかかわらず、いくつかの地点に切欠84を有することがあると承知するだろう。この場合、方向特性のこのほぼ均一構成は、複数のアンテナ要素86,88の使用によって達成される。一例として、図示された例示的な実施形態では、二つの空気コイル86,88は、互いに交差して配置され、かつそれらの個々の方向特性が重畳されて、より均一な全体図82を形成するようにして、互いに接続される。容易に分かるように、方向特性82の結果、切換距離は、異なる接近方向64,66において互いにさらによく一致される。
【0043】
図5および図6は、この場合、全体が参照番号90によって示される新規の安全スイッチのさらなる例示的な実施形態を示す。これとは別に、同じ参照符号は、前と同じ要素を示す。
安全スイッチ90のセンサ18は、平らな水平コイルの形態のセンサアンテナ92を有する。これは、巻き付けられた電線等からなるコイルであってもよい。しかしながら、好ましい例示的な実施形態では、コイル92は、回路基板上の印刷されたまたはエッチングされた導体トラックの形態である。このことにもかかわらず、コイル92は、この場合、中央に配置されるフェライト磁心94を有する。該フェライト磁心は、磁力線50を集束するが、先行技術において用いられるフェライトポットと対照的に、一つの動作方向も優先方向も規定しない。このようなフェライト磁心はまた、前の例示的な実施形態でも用いられうることは自明である。
【0044】
この場合、コイル92は、回路基板98上のセンサの他の部品96と共に配置される。一例としてではあるが、制限された態様ではなく、ICは、この場合、他の部品として図示され、かつ例えば、ASICであってもよい。
この例示的な実施形態では、アクチュエータアンテナ56は、同じように、平らな(空気)コイルの形態である。図5および図6に図示するように、アクチュエータアンテナ56は、力線の投影分布のおかげで、複数の位置からセンサアンテナ92に変成器結合されうる。したがって、再取り付けされなければならないセンサまたはセンサアンテナなしに、異なる方向からセンサに接近することができる。他方、アンテナの水平配置の結果、非常に平らな形状が生じ、それにより、特に図6に図示する接近位置について、物理的に小さい設備が可能である。
【0045】
本発明を、それ自体が公知であるトランスポンダー(タグ)が、アクチュエータ16として用いられる好ましい例示的な実施形態に関連して、本明細書で説明してきた。したがって、アクチュエータアンテナ56とセンサアンテナ46との間でより正確になるべく、アクチュエータ16とセンサ18との間の変成器結合は、トランスポンダーを励起するのに十分強くなければならない。本発明の目的のために、この状態は、トランスポンダー状結合と呼ばれる。しかしながら、この好ましい例示的な実施形態と対照的に、本発明の原理はまた、トランスポンダーの評価に基づかない安全スイッチのために用いられることもある。したがって、一般的な応用分野はまた、トランスポンダーを含まないアクチュエータ16とセンサ18との間の変成器結合を含む。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】新規安全スイッチを持つ自動設備の概略例を示す。
【図2】新規安全スイッチの例示的な一実施形態の簡略化された例を示す。
【図3】図2の安全スイッチの簡略化された例を、その磁気方向特性と共に示す。
【図4】新規安全スイッチのさらなる例示的な実施形態についての主回路図を示す。
【図5】新規安全スイッチのさらなる例示的な実施形態の簡略化された例を示す。
【図6】第2動作位置における図5の安全スイッチを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して移動可能である二つの部分(12,20)の閉位置をモニターする、特に自動設備(10)上の保護ドアをモニターする安全スイッチであって、各々が前記部分(12,20)の一方に固着されるように構成されるアクチュエータ(16)およびセンサ(18)を備え、前記アクチュエータ(16)は、アクチュエータアンテナ(56)を有し、前記センサ(18)は、センサアンテナ(46;92)を有し、該アンテナを経て、前記アクチュエータ(16)および前記センサ(18)は、前記部分(12,20)が前記閉位置にある場合、特にトランスポンダーように変成器結合され、前記センサアンテナ(46;92)は、磁気方向特性(62;82)を有し、それにより前記センサアンテナ(46;92)から始まる少なくとも二つの互いに垂直な空間方向(64,66,68)における前記アクチュエータ(16)との変成器結合が可能であることを特徴とする、安全スイッチ。
【請求項2】
前記センサアンテナ(46;92)が、実質的に全方向特性(62;82)を有することを特徴とする、請求項1に記載の安全スイッチ。
【請求項3】
前記センサアンテナ(46)は、異なって整列される方向特性を有する複数のアンテナ要素(86,88)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の安全スイッチ。
【請求項4】
前記センサアンテナ(46)は、空気コイルを備えることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の安全スイッチ。
【請求項5】
前記センサアンテナ(92)は、前記センサ(18)の回路基板(98)上に、かつ特に前記回路基板(98)上では導体トラックの形態で、平らに配置されるコイルを備えることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の安全スイッチ。
【請求項6】
前記方向特性(62)は、前記変成器結合についてのより強い第1優先方向(72)およびより弱い第2優先方向(74)を備え、前記センサアンテナ(46)は、ハウジング壁(40,42,44)を有するアンテナハウジング(38)内に配置され、前記第1優先方向(72)における前記センサアンテナ(46)と前記ハウジング壁(40,42,44)との間の距離(d1)は、前記第2優先方向(74)におけるより長いことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の安全スイッチ。
【請求項7】
前記第1優先方向(72)に垂直な前記センサアンテナ(46)は、少なくとも二つのハウジング壁(42,44)から同じ距離(d2)に配置されることを特徴とする、請求項6に記載の安全スイッチ。
【請求項8】
装着面を有するセンサハウジング(38)を備え、フィールド絶縁体(52)、特に電気的および/または磁気的導電性板は、前記センサアンテナ(46)と前記装着面との間に配置されることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の安全スイッチ。
【請求項9】
装着面を有するセンサハウジング(38)を備え、前記センサアンテナ(46)と前記装着面との間の距離(d3)は、約5mmまたはそれ以上である、請求項1ないし8のいずれかに記載の安全スイッチ。
【請求項10】
前記アクチュエータアンテナ(56)は、前記少なくとも二つの垂直空間方向のうち第1方向(64)の前記変成器結合のための第1配向(16)を有し、前記アクチュエータアンテナ(56)は、前記少なくとも二つの垂直空間方向の第2方向(68)の前記変成器結合のための第2配向(16”)を有し、前記第1および前記第2配向は、互いに関して約90度回転されることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれかに記載の安全スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−518320(P2007−518320A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548146(P2006−548146)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014200
【国際公開番号】WO2005/067145
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(501493037)ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー (49)
【Fターム(参考)】