説明

亜塩素酸塩および過酸化水素を含む相乗的抗菌製剤

眼および皮膚用の製品に用いられる殺菌的予防剤。当該の予防剤は、約0.005重量%から約0.20重量%の亜塩素酸塩化合物および約0.005重量%から約0.05重量%の過酸化化合物を含む。さらに当該の予防剤は、pH5.0〜8.8の範囲内で二酸化塩素を生成しない。また、生物の眼または皮膚に直接施用する眼用および皮膚用の抗菌配合は、約0.005重量%から約0.20重量%の亜塩素酸塩化合物および約0.005重量%から約0.05重量%の過酸化化合物を含む。また、眼の乾燥および皮膚疾患(例えば、創傷、火傷、感染症、潰瘍、乾癬など)の治療方法、ならびに眼内に入れた状態のコンタクトレンズに対して配合を眼に施用する、もしくはコンタクトレンズに対して施用する、コンタクトレンズの殺菌および洗浄方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には医療用配合および方法、より具体的には、i)物品または表面の殺菌または保護のため、ii)身体の一部に施用する局所消毒剤として、iii)瘢痕形成の予防または防止のため、iv)創傷、火傷、潰瘍、乾癬、座瘡および他の瘢痕形成損傷などの皮膚疾患の治療のため、ならびにv)感染症、炎症、ドライアイ、創傷治癒、およびアレルギー性結膜炎などの眼疾患の治療のためのある種の殺菌剤/抗菌製剤および当該製剤の使用方法に関する。
(関連出願の相互参照)
本発明は、1999年10月4日出願の米国特許出願第09/412,174号の部分継続出願である、2001年7月23日出願の米国特許出願第09/911,638号の部分継続出願である、2003年7月7日に出願の米国特許出願第10/614,646号の部分継続出願であり、それぞれの開示全体が参照により本明細書に明確に組み込まれている。
(連邦政府支援による研究/開発に関する記述)
該当なし
【背景技術】
【0002】
A.殺菌/消毒ならびに創傷、火傷、擦過傷および感染症の局所的治療に用いられる抗菌剤および殺菌剤/消毒剤
従来技術としては、様々な物品の殺菌および治癒、もしくはそのいずれかを助けるために微生物の増殖を予防または防止することが望ましい皮膚疾患(例えば、創傷、火傷、擦過傷、感染症)の消毒および治療、もしくはそのいずれかのための生物への局所的施用に使用可能と言われてきた多数の抗菌剤があった。当該の局所的抗菌剤は、ヨウ素、マーキュロクロム、過酸化水素、および二酸化塩素などの多種多様な活性殺菌成分を含んでいた。
i.従来の二酸化塩素製剤
二酸化塩素の前駆物質である亜塩素酸塩は、飲料水の殺菌剤として、またコンタクトレンズの防腐剤として使用可能であることが知られている。しかし、亜塩素酸塩は皮膚への局所施用において許容可能で安全な範囲の濃度(例えば、50〜1000百万分率)では弱い殺菌活性しか示さない。そのため亜塩素酸塩は、皮膚への局所施用のための製剤の活性殺菌成分として通常使われてこなかった。
【0003】
亜塩素酸塩の消毒剤または局所的殺菌剤としての限られた実用性を考慮して、亜塩素酸塩の殺菌作用を活性化または増大させるための様々な配合および方法が提案されてきた。亜塩素酸塩の殺菌作用を活性化または増大させるための当該の配合および方法の例は、特許文献1(一般的活性化について記載)、特許文献2(酸による活性化について記載)、および特許文献3(遷移金属による活性化について記載)に記載されている。
【0004】
二酸化塩素(ClO)および「安定化二酸化塩素」は、消毒剤として使用可能なことが知られている。化学的には、二酸化塩素は強力な殺菌活性を持つ酸化剤である。一般的に、藻類およびその他の有機物質の除去のためおよび臭気もしくは味をなくすため、もしくはそのいずれかの特定の水処理用途において、二酸化塩素は塩素ガスよりも一層優れているとされる。二酸化塩素は細菌、ウイルス、および微生物胞子の除去のための殺菌剤としても効果的である。
【0005】
殺菌剤としての使用に加えて、二酸化塩素は非常に反応性が高い不安定なラジカルであり、多数の他の化学的および生化学的用途において酸化剤として利用できる。例えば、特
許文献4に記載されているように、二酸化塩素は(a)2つの炭素原子間の二重結合の酸化;(b)不飽和脂肪酸(脂質)の2つの炭素原子間の二重結合における酸化;(c)カルボン酸無水物の加水分解の加速;(d)対応するカルボン酸へのアルデヒド類の酸化;(e)アルコール類の酸化;(f)アミン類の酸化;(g)フェノール類、フェノール誘導体、およびチオフェノール化合物の酸化;(h)ヒドロキノン類の穏やかな酸化;(i)アミノ酸、タンパク質、およびポリアミド類の酸化;(j)硝酸塩および硫化物の酸化;ならびに(k)炭水化物のCHOおよびCHOHラジカルからカルボン酸官能基を生じる変化に利用することができる。
【0006】
液体状態またはガス状態に濃縮された二酸化塩素は、爆発性および毒性が非常に高い。その結果、濃縮された二酸化塩素は非常に慎重に取り扱い、輸送しなければならない。この理由から、局所的抗菌剤または殺菌剤として使用するための純粋な二酸化塩素の配合は、一般的に実用性が低い。代わりに、二酸化塩素を「酸発生」させるいくつかの抗菌製剤または殺菌製剤が作られた。当該の酸発生溶液は、亜塩素酸金属(例えば、粉末または液体の形で入手可能な二酸化塩素の前駆物質)を亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素を遊離または放出する酸と共に含む。一般的に、塩酸および硫酸などの強酸ならびにクエン酸および酒石酸などの比較的弱い酸など、どの酸も二酸化塩素の酸発生に使用することが出来る。従来の二酸化塩素発生システムに関連する欠点または問題点としては、a)2つの別々の容器または化学成分を取り扱う不便さ、b)このような2成分システムを施用が意図された部分に送達する難しさ、およびc)これらの従来システムは中性ではなく酸性pHであるという事実が挙げられる。また、酸によって誘発される二酸化塩素発生を利用する従来の二酸化塩素発生システムは、制御不良の場合、二酸化塩素の発生を極めて急速に引き起こす可能性があり、その結果として、溶液の殺菌または抗菌能力が短期間しか続かない可能性がある。溶液中の亜塩素酸塩および酸の濃度を高めると、殺菌または抗菌有効期限を延長する可能性があるが、当該の高濃度のこれらの化学物質は毒性または(局所的施用で)皮膚刺激をもたらす可能性もある。当該の高濃度は、必要以上に二酸化塩素を発生させる可能性もある。
【0007】
「酸発生」溶液中で生成する二酸化塩素の速度を制限または制御する様々な方法が記載されてきた。例えば、特許文献5の再発行特許である特許文献6(アリガー(Alliger))は、亜塩素酸ナトリウムなどの水溶性亜塩素酸塩を乳酸と共に含む殺菌配合について記載している。その特定の配合には向上した殺菌特性がある。この特性は同じ配合を用いて実現したものではなく、乳酸をリン酸、酢酸、ソルビン酸、フマル酸、スルファミン酸、コハク酸、ホウ酸、タンニン酸、およびクエン酸などの他の酸に置き換えることで実現された。殺菌剤配合は、少なくとも15重量%以上の乳酸を含む酸性の材料が水性媒質中の亜塩素酸ナトリウムと接触することによって生成される。皮膚などの担体に存在する細菌の殺菌および消毒について開示された方法としては、細菌殺菌配合の施用か、またはその配合をin situで生成させる反応物質の施用が挙げられる。また、特許文献7(クロス(Kross))は、亜塩素酸塩の濃度が利用可能な亜塩素酸の量によって制限される、酸により誘発される亜塩素酸金属からの二酸化塩素の発生について記載している。具体的には、クロスの当該特許は、亜塩素酸金属を含む第1のゲルおよびプロトン酸を含む第2のゲルを混合する、皮膚疾患の治療方法について記載している。当該溶液中に亜塩素酸として存在する亜塩素酸イオンは、配合中の総亜塩素酸イオン濃度に対して約15重量%以下とされ、2つのゲルの混合物は最長24時間の長時間にわたって二酸化塩素を生成するとされる。
【0008】
他の先行特許は、二酸化塩素の発生方法として、「安定化された」二酸化塩素を使用することを記載しているとされた。安定化された二酸化塩素の用語は、二酸化塩素が溶液中に反応活性錯体の形で保たれると考えられる、様々な配合を示す。過ホウ酸塩の使用による二酸化塩素の安定化は、特許文献8(デ・グェバラ(de Guevara))に記載
されている。デ・グェバラの特許によると、安定化された二酸化塩素の消毒液は、ホウ素化合物および二酸化塩素が反応活性錯体として溶液中に存在する、二酸化塩素および無機ホウ素化合物の水溶液から作ることができる。この安定状態に固定された二酸化塩素が、消毒液の必須成分である。デ・グェバラの特許は、二酸化塩素をin situで発生させることによって、または二酸化塩素ガスを溶液中に通気させて外部で発生させた二酸化塩素を溶液中に取り入れることによって、二酸化塩素を配合に取り入れることもできることを開示している。外部での二酸化塩素の生成には、硫酸と塩素酸カリウムの反応または塩素酸塩と含水シュウ酸の反応など様々な方法を採用することができる。あるいは、二酸化塩素は、塩素酸カリウムと硫酸の反応によりin situで生成することもできる。二酸化塩素がin situで生成されようと外部で生成されようと、基本的に酸で誘発される塩素酸カリウムからの二酸化塩素の遊離であることに留意されたい。
【0009】
特許文献9(ラソ(Laso))は、人の火傷治療のための安定化された二酸化塩素製剤について記載している。過ホウ酸塩で安定化された二酸化塩素などの酸化塩素の溶液の水性混合溶媒をグリセリンと共に、火傷を負った領域へ局所的に塗布すること、また火傷治療のために口腔に塗布して投与することもできることが記載されている。過ホウ酸塩で安定化された二酸化塩素の水溶液は、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩酸、硫酸、無機過ホウ酸塩、および過ホウ酸ナトリウムなどの過酸化化合物と水との混合により調製されると開示されている。したがって、ラソの特許に従って調製された溶液は、強酸化剤として二酸化塩素、次亜塩素酸塩および過酸化化合物を含み、二酸化塩素の酸活性化を利用していると思われる。ラソの特許は、この特許で開示される方法は、多くの症例で火傷に関連する痛みを直ちに軽減し、短時間で治癒し、感染症または拘縮が無いことを特徴とし、および火傷瘢痕が滑らかで正常組織のようであることから、一部の症例では形成手術の必要がなくなると述べている。しかし、当該の混合物は二酸化塩素を非常に速く生成する傾向があることから上述の混合物の長期間の安定性が低下するため、長期間の保存および安定性が上述のラソの特許に記載された水溶液の問題点である。
【0010】
特許文献10(マクニコラスら(McNicholas et al))は、二酸化塩素ガスを過酸化化合物を含む水溶液と組み合わせ、次いで溶液を遊離過酸化物を全て追い出すには十分に高い温度で、かつ二酸化塩素を破壊しないよう十分低い温度で加熱して作られた安定化された二酸化塩素溶液について記載している。マクニコラスらは、70℃より「はるかに低い」温度は溶液中の遊離過酸化物を追い出すには不十分であり、92℃を超える温度では二酸化塩素が追い出されてしまうためにこの温度を超えるべきではないと述べている。マクニコラスらはさらに、「完全に理解されて」はいないものの、溶液中に残留するあらゆる遊離過酸化水素が二酸化塩素を溶液から放出させてしまうであろうことから、遊離過酸化物を追い出すための溶液の加熱は必要と考えられると述べている。
ii.抗生物質製剤
抗生化合物も、火傷、創傷、ならびに皮膚および眼の感染症の治療上の処置として一般的に用いられてきた。抗生物質は効果的な治療をもたらす一方で、抗生物質の臨床環境における使用にはしばしばいくつかの危険を伴う。これらの危険としては、それだけには限られないが、(1)身体の正常なフローラが変化し、抗生物質耐性生物の増殖による「重感染」を引き起こす;(2)特に、種類によっては腎臓、肝臓、および神経組織への損傷が生じる可能性がある抗生物質の長期使用による、抗生物質の直接的な毒性;(3)抗生物質によるさらなる治療が効かない、抗生物質耐性微生物集団の発生などを挙げることができる。
B.創傷、火傷、擦過傷および感染症以外の治療が困難な皮膚疾患
特定の患者および特定の健康状態下、もしくはそのいずれかでは、軽微な創傷および擦過傷でさえも治療が困難になる場合がある一方で、治療を成功させるのが特に困難である乾癬および皮膚潰瘍などのよく知られた皮膚疾患がある。
i.乾癬
乾癬は、銀白色の鱗屑で覆われた、炎症を起こして腫れた皮膚病変として最も一般的に現れる、非伝染性皮膚疾患である。この最も一般的な種類の乾癬は、「尋常性乾癬」と呼ばれる。乾癬は、多種多様で様々な重症度で出現する。様々な種類の乾癬が、膿様の水膨れ(膿疱性乾癬)、皮膚の重症の腐肉形成(乾癬性紅皮症)、滴状の斑点(滴状乾癬)、および炎症を起こした滑らかな病変部(インバス乾癬)などの特徴を呈する。
【0011】
乾癬の原因は現在知られていない。遺伝的要素があると一般的に考えられているが、近年、自己免疫性皮膚疾患であることが立証された。およそ3人に1人が乾癬の家族歴を報告するが、遺伝パターンは認められない。この疾患の明らかな家族歴がない小児が乾癬を発症する、多数の症例がある。
【0012】
ある個人が乾癬にかかるかどうかは、引き金となる事象または「引き金要因」となる何かに依存している可能性がある。乾癬の発生に影響すると考えられる「引き金要因」の例としては、連鎖球菌性咽頭炎などの全身感染症、皮膚の損傷(ケブネル現象)、予防接種、特定の薬剤、および筋肉注射または経口ステロイド剤などが挙げられる。何かが乾癬を発症する遺伝的傾向のきっかけを一旦与えると、それに続いて免疫系が皮膚細胞の過剰再生を引き起こすと考えられる。
【0013】
皮膚細胞は、正常な増殖または創傷治癒という潜在的に可能性がある2つのプログラムに従うようにプログラムされている。正常な増殖パターンでは、皮膚細胞は基底細胞層で作られ、その後、表皮を経て、皮膚の最も外側の層である角質層に移動する。死んだ細胞は、新しい細胞が作られるのとおよそ同じ速度で皮膚から脱落し、バランスを保っている。この正常な過程では、細胞の誕生から死まで約28日かかる。皮膚が傷ついた場合、再生的成熟としても知られる創傷治癒プログラムが発動される。理論的に言えば、傷に取って代わって修復するように、細胞がはるかに速い速度で作られる。また血液供給も増加し、局所的な炎症が生じる。多くの面で、乾癬の皮膚は創傷からの皮膚の治癒または感染症などの刺激に対する反応と似ている。
【0014】
損傷性乾癬は、別の増殖プログラムによる細胞増殖が特徴である。乾癬病巣に創傷が無いにも関わらず、皮膚細胞(ケラチン生成細胞)は創傷があるかのように振る舞う。このケラチン生成細胞のプログラムは、正常な成長プログラムから再生的成熟プログラムへと切り替えられる。わずか24日で細胞が作られ、表面へと押し出されるが、皮膚はそれに見合うだけ速く細胞を脱落させることができない。過剰な皮膚細胞が蓄積して、隆起した鱗状の病巣を形成する。通常、病巣を覆う白色の鱗屑(「プラーク」と呼ばれる)は、死んだ皮膚細胞で構成され、病巣の赤みは、皮膚細胞が急速に分裂している領域への血液供給の増加によって引き起こされる。
【0015】
乾癬の治療方法は知られていないが、一部の患者に一時的な緩和をもたらす様々な治療が示されてきた。しかし、現在、一般に認められている乾癬治療法の効果は、少なからぬ個人差に左右される。その結果、患者と医師は最も効果的な治療法を見つけるために、実験および併用療法、もしくはそのいずれかを行わなければならないだろう。現在利用可能な乾癬治療法は、しばしば段階的な方法で投与が行われる。ステップ1の治療としては、a)局所用薬剤(例えば、局所用ステロイド剤、局所用レチノイド剤)、b)ステロイド剤の全身投与、c)コールタール、d)アントラリン、e)ビタミンD3および日光などが挙げられる。ステップ2の治療としては、a)光療法(例えば、紫外線照射)、b)光化学療法(例えば、照射により活性化される薬剤の局所塗布後に、薬剤活性化のための照射を併用)、およびc)併用療法などが挙げられる。ステップ3の治療としては、a)メトトレキサート、経口レチノイド、およびシクロスポリンなどの薬剤の全身投与療法、ならびにb)ローテーション療法などが挙げられる。
ii.皮膚潰瘍
皮膚潰瘍は、圧力、摩耗、または原発性/続発性血管疾患の結果として生じることが知られている。皮膚潰瘍は一般的に、以下のような病因によって分類される。
【0016】
a.褥瘡性潰瘍/褥瘡‐褥瘡性潰瘍または床ずれは、身体の下の組織の損傷を引き起こす、変化のない圧力によって引き起こされる病変である。褥瘡性潰瘍は通常、肘や臀部などの骨ばった隆起一帯に生じる。他の数多くの要因と共に、変化のない圧力は皮膚の損傷および持続的な潰瘍形成を引き起こす。
【0017】
b.静脈性潰瘍‐静脈性潰瘍は、外傷が原因で引き起こされるか、または慢性的な静脈機能不全(CVI)後に生じる可能性がある。CVIでは、静脈弁が完全に閉じず、血液が深部静脈系から穿通枝静脈を通じて表在静脈系に逆流してしまう。時間と共に、この血液柱の負担は、周辺組織へ体液とタンパク質を浸出させ、足首のむくみおよび色素沈着過度、組織の損傷、ならびに潰瘍形成を引き起こす。静脈性潰瘍は、浅い場合または筋肉深部に広がる場合がある。
【0018】
c.動脈性潰瘍‐動脈血管の圧迫または閉塞、血管壁の変化、または慢性的な血管収縮により引き起こされた動脈機能不全の患者は、下腿潰瘍も発症する可能性がある。ニコチンが動脈を収縮させ、動脈硬化性プラークの沈着を助長し、かつ炎症性動脈疾患(バージャー病)および血管収縮疾患(レイノー病またはレイノー現象)を悪化させるために、喫煙者は特に高い動脈疾患リスクに直面する。虚血肢への外傷によって生じた動脈性潰瘍は、非常に辛い痛みを伴う場合がある。
【0019】
d.糖尿病性潰瘍‐糖尿病患者では、動脈機能不全は治癒しない潰瘍の原因となる場合がある。しかし、大部分の糖尿病性潰瘍は糖尿病性ニューロパシーに起因する。これは、患者が足の痛みを感じられないために、皮膚の損傷を引き起こす可能性がある怪我、きつすぎる靴の圧力、または圧力の反復に気づかないためである。
【0020】
創傷、火傷、擦過傷、感染症、潰瘍、乾癬、および座瘡などの皮膚疾患の治療のための、新しい殺菌剤および局所に塗布可能な製剤の配合と開発の技術が必要とされている。
C.コンタクトレンズの保存および殺菌
コンタクトレンズを眼から取り外した時には、再度着用するまでコンタクトレンズを保存殺菌溶液中にいつも入れておかなければならない。保存殺菌溶液には以下の機能がある。
【0021】
1.レンズを取り外した後、眼の分泌物をレンズから除去するのを助けること;
2.細菌で汚染されたレンズによる眼の感染症を予防すること;および
3.着用中にレンズが達する水和平衡状態を維持すること。
D.コンタクトレンズの洗浄
刺激、灼熱感、および赤みによりレンズ着用を不快にする粘液物質、脂質およびタンパク質がレンズ着用中にコンタクトレンズに蓄積する。その結果、視野がかすむ。不快な問題を軽減するためには、ソフトまたはハードコンタクトレンズを眼から取り出して、酵素的洗浄剤および殺菌液を用いて定期的に洗浄して殺菌しなければならない。ソフトレンズに関連する重篤な合併症の一つは、巨大乳頭結膜炎(GPC)であろう。巨大乳頭結膜炎の発生は、主にソフトコンタクトレンズの合併症に関連する炎症反応によると考えられている。これはほとんどの場合、コンタクトレンズへのタンパク質の沈着によって引き起こされる。GPCは無症候から痒み、上眼瞼浮腫、眼の充血、粘液様分泌物、進行性のコンタクトレンズ不耐性におよぶ症状を生じる。本発明の眼内洗浄剤は、タンパク質の沈着を効果的に洗浄し、角膜表面を微生物の感染から守ると同時に分子状酸素を供給することによって角膜上皮細胞を健康に保ち、その結果としてソフトおよびハードコンタクトレンズ両方の着用者に利便性と利益をもたらす。
E.眼疾患の治療
i.ドライアイ
ドライアイは涙液の産生が不十分であるか、または角膜および結膜を適切に湿らせるのに涙液の組成が不適切である症候群である。涙液に関連する様々な眼疾患が、眼の乾燥、眼内に生じた異物の存在による不快感を引き起こす。大部分の症例では、涙液層が正常な連続性を失って急速に途切れ、自発的な瞬きの間隔にその構造を維持することができない。これら全ての涙液の異常は、複数の原因があろう。おそらく最も一般的なドライアイのタイプは、涙液中の水溶性成分の減少によるものである。未治療のドライアイは、さらに微生物感染によってより複雑化する可能性もある、より重症の上皮びらん、糸状の上皮細胞、および角膜上の局所的なドライスポットへとさらに悪化させる可能性もある。しかし、より軽いタイプのドライアイでは、眼の乾燥感および刺激感は人工涙液で解決することもできる。したがって、角膜潤滑性を備える広域スペクトル抗菌活性を持った人工涙液は、快適性だけでなく損傷を受けた角膜表面の回復に有益な効果ももたらすことができる。ii.アレルギー性結膜炎
大気中アレルゲンまたは手を介したアレルゲンは、通常、IgEを介した過敏反応によりアレルギー性結膜炎を引き起こす。アレルギー性結膜炎は、眼瞼の腫れ、結膜充血、乳頭反応、キモシン、および粘着性の粘液様分泌物などを含む、掻痒および流涙を伴い乾燥し粘ついた眼を呈する。人工涙液の製剤中に含まれる、涙液中のヒアルロン酸の存在は、アレルゲンとの接触から角膜表面を保護するだろう。本発明の広域スペクトル抗菌剤は、角膜表面の細菌感染を防ぎ、分子状酸素を供給することによって角膜上皮細胞を健康に保つ。したがって、アレルゲンに過敏な眼に対して、有益な効果をもたらす。
iii.細菌侵入
細菌性角膜炎は、世界の失明の主要原因の一つである。先進国でのコンタクトレンズ着用の人気が罹患率上昇の原因となり、合衆国では毎年推定30,000症例が発生している。統計調査によると、合衆国では100,000人のコンタクトレンズ着用者に対して、毎年約30人が潰瘍性角膜炎を発症することが示されており、その結果、潜在的に失明する可能性があるという観点から、この疾患は重大な公衆衛生問題となっている。眼瞼、眼瞼のまばたき、ならびに角膜および結膜上皮細胞は、微生物の侵入に対する障壁となっているが、この防衛機構の1つまたは複数が損なわれる場合がある。このような弱体化としては、眼瞼の異常、角膜表面の露出、涙液の生成不足、上皮の問題、薬剤の毒性、外傷、および切開手術などを挙げることができる。細菌性角膜炎の眼症状の徴候は、重篤な侵入および時間と共に穿孔を引き起こす可能性もある壊死を引き起こす傾向があるブドウ球菌(staphylococcus)および連鎖球菌(streptococcus)の感染で認められる。緑膿菌性(pseudomonal)角膜炎は、急速に進行する傾向がある。この生物は、プロテアーゼ、リパーゼおよびエラスターゼなどの破壊酵素、ならびに壊死性潰瘍および穿孔をもたらす外毒素を生成する。セラチア(serratia)角膜炎は、悪性の潰瘍および穿孔を形成する場合もある外毒素およびプロテアーゼを分泌しながら、傍中心の表在性潰瘍として始まる。細菌性角膜炎が成立するためには、微生物付着が宿主細胞の受容体に結合しなければならない。この接着が一旦生じると、炎症、壊死および血管新生の破壊的プロセスが続いて起こる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第4,997,616号
【特許文献2】米国特許第5,279,673号
【特許文献3】米国特許第5,246,662号
【特許文献4】米国特許第4,855,135号
【特許文献5】米国特許第4,084,747号
【特許文献6】米国再発行特許第31,779号
【特許文献7】米国特許第5,384,134号
【特許文献8】米国特許第2,701,781号
【特許文献9】米国特許第4,317,814号
【特許文献10】米国特許第3,271,242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
細菌角膜炎に対する現在の治療は、主に広域スペクトル抗生物質治療の利用に依存している。当該の抗生物質としては、スルホンアミド類、トリメトプリムおよびキノロン類などが挙げられる。また、βラクタム系、ペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール、およびエリスロマイシンなども挙げられる。上述の抗生物質は広範囲に使用されているものの、抗生物質耐性病原体が出現する場合には誤用となる可能性もある。また、抗生物質は細菌の増殖を停止させるのみで、プロテアーゼ酵素、内毒素、または外毒素の活性は阻害しない。したがって明らかなように、細菌の増殖のみならず、プロテアーゼ酵素、内毒素、および外毒素にも対応する殺菌剤への特記すべき要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、物品もしくは表面(例えば、コンタクトレンズ、調理台など)の殺菌、皮膚もしくはその他の身体の一部の消毒、瘢痕化の予防または最小化および皮膚(すなわち、皮膚もしくは粘膜)疾患(例えば、創傷、火傷、感染症、口唇ヘルペス、潰瘍、乾癬、瘢痕形成病巣、座瘡)の治療もしくは予防、もしくはそのいずれか、および眼科疾患(例えば、感染症、炎症、ドライアイ、アレルギー性結膜炎、および創傷治癒)の治療のための抗菌製剤(例えば、溶液、ゲル、軟膏、クリームなど)を提供する。本発明の抗菌製剤は、一般的に約0.001重量%から約0.20重量%の亜塩素酸金属を0.001%から0.05%の過酸化水素などの過酸化化合物と共に含む。また、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤は、ポリマー潤滑剤および界面活性剤などの追加成分を含む、および高分子薬剤送達システムもしくはリポソーム製剤として製剤する、もしくはそのいずれかが可能である。本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤は、例えば、グラム陰性およびグラム陽性細菌、酵母および糸状菌に対する活性など、幅広い抗菌活性を持つ。さらに、皮膚疾患(例えば、創傷、火傷、感染症、潰瘍、座瘡および乾癬)を治療するために施用または投与される場合には、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤は微生物感染を予防または低減するだけでなく、さらに疾患に冒された組織に酸素を供給し、治癒を助け、また瘢痕形成を防止するだろう。
【0025】
また、本発明によれば、物品(例えば、コンタクトレンズ)を殺菌する方法、および本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤を施用または投与することにより皮膚疾患(例えば、創傷、火傷、感染症、潰瘍および乾癬)を治療する方法が提供される。コンタクトレンズの殺菌溶液だけでなく、コンタクトレンズを洗浄のために眼から取り外さずに眼の中で洗浄する製品の製剤に関しては、亜塩素酸金属の濃度は約0.002%から約0.20%の間である。眼内用途に関しては、本殺菌製品は、ポリマー潤滑剤および界面活性剤を更に含む、滅菌した、等張の、緩衝化された無色透明の溶液である。亜塩素酸塩および過酸化物の安定化過酸化クロラール化合物として室温で容器内(例えば、白い不透明なプラスチックボトル)に保存した場合、この製品の保存期間は2年間である。
【0026】
また、本発明は、ドライアイ、創傷治癒、およびアレルギー性結膜炎の治療に有効性があることが示された製品の製剤を含む。
さらに、本発明によると、本発明の亜塩素酸塩/過酸化水素製剤の施用または投与により、瘢痕形成を防止する方法が提供される。
【0027】
さらに、本発明によると、広域スペクトル抗菌活性において相乗効果があることが示さ
れた製品の製剤が提供される。
また、本発明によると、本発明の亜塩素酸塩/過酸化水素製剤の施用または投与により眼の感染症、眼の穿孔および炎症を防止する方法が提供される。
【0028】
本発明のさらなる態様および目的は、以下の詳細な説明およびそこで説明される実施例を読み、理解することで、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】pHレベル7.3の本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤において、二酸化塩素が室温で生成されないことを示すグラフ。
【図2】pHレベル8.0の本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤において、二酸化塩素が室温で生成されないことを示すグラフ。
【図3】pHレベル8.8の本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤において、二酸化塩素が室温で生成されないことを示すグラフ。
【図4】pHレベル7.0の本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤において、二酸化塩素が室温で生成されないことを示すグラフ。
【図5】pHレベル6.44の本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤において、二酸化塩素が室温で生成されないことを示すグラフ。
【図6】pHレベル6.0の本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤において、二酸化塩素が室温で生成されないことを示すグラフ。
【図7】pHレベル1.5の本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤において、二酸化塩素が室温で生成されることを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の詳細な説明および実施例は、本発明の若干の例示的な実施形態を述べることのみを目的として記載されるものであって、本発明の範囲をいかなる形であれ限定することを目的とするものではない。
【0031】
本発明は、亜塩素酸塩(例えば、亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸金属)を少量の過酸化水素中性水溶液(pH5.0〜8.8、好ましくはpH7.0〜7.8、さらに好ましくはpH7.0〜7.4)と共に含む製剤を提供する。この製剤は相乗的抗菌作用を示し、室温での保存中に二酸化塩素を発生させないことから、この溶液の安定性は製薬用途に許容可能である。例えば、400ppmの亜塩素酸塩および100ppmの過酸化水素を含む水溶液は、18ヶ月以上室温で安定なままであり、鵞口瘡カンジダの活性を低減させるために当該溶液の個別の成分を同じ濃度で別々に適用した場合には効果が無いにもかかわらず、当該溶液は6時間以内の曝露で鵞口瘡カンジダの活性を1.0logまで低減させる効果がある。また、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物溶液中に存在する過酸化水素は、組織および一部の体液中、もしくはそのいずれかに存在するペルオキシダーゼおよびカタラーゼ酵素と接触することにより分子状酸素と水に容易に分解する。このようなin situでの分子状酸素の発生は、細胞の活力に寄与し、創傷治癒を増進する。
【0032】
本発明の亜塩素酸塩/H溶液は、ポリマー潤滑剤(非イオン性およびアニオン性、もしくはそのいずれか;例えば、HPMC、Methocel、CMC、ヒアルロン酸など)およびブロック重合体ベースの界面活性剤(例えば、Pluronics)、もしくはそのいずれかと共に製剤するのに十分に安定である。例えば、水溶性亜塩素酸塩/過酸化水素システムは、Methocelまたはヒアルロン酸を潤滑剤として、およびPluronicsを界面活性剤としてコンタクトレンズ殺菌液(粘性は25℃で最大50cps)として、眼科用に許容可能な張性で(例えば、重量モル浸透圧濃度は約200mOsmol/kg以上)、かつ製剤のpHを許容可能な生理的範囲内に維持する緩衝剤と共に製剤することができる。コンタクトレンズ殺菌液、人工涙液、および眼内洗浄液の製剤
は、好ましくは約0.005から約0.06%(重量/体積)の亜塩素酸塩を含み、また好ましくは約0.0002から約0.05%(重量/体積)の過酸化水素を含む。この場合もやはり、過酸化水素の存在は、涙液中のカタラーゼと接触して、角膜に対して有益な酸素分子をもたらす。
A.製剤
本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤は、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、スプレーなどの様々な方法で製剤することができる。以下、本発明に従って調製されるであろう具体的な製剤タイプの数例を説明する。
i.安定な亜塩素酸塩/過酸化物溶液
以下の処方1は、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物溶液の第1の好適な製剤である。
処方1
亜塩素酸ナトリウム・・・0.005%〜0.10%
過酸化水素・・・0.005%〜0.05%
Methocel A・・・0.05%〜0.2%
ホウ酸・・・0.15%
塩化ナトリウム・・・0.75%
Pluronic F 68/F-127・・・0.1%
HClまたはNaOH・・・pH7.4に調整
精製水・・・所定体積まで十分量
以下の処方2は、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物溶液の第2の好適な製剤である。
処方2
亜塩素酸ナトリウム・・・0.05%
過酸化水素・・・0.02%
カルボキシメチルセルロース・・・0.01%
ホウ酸・・・0.15%
塩化ナトリウム・・・0.75%
Pluronic F 68/F-127・・・0.1%
HClまたはNaOH・・・pH7.3に調整
精製水・・・所定体積まで十分量
上記の好適な製剤の溶液などの本発明の亜塩素酸塩/過酸化物溶液は、必ずしもそれに限られないが、a)コンタクトレンズ、医用/歯科用機器、調理台、診療台、くしやブラシなどの物品もしくは表面の殺菌;皮膚または身体の一部の消毒(例えば、手洗い用殺菌洗剤、消毒スクラブ洗顔料など)およびb)創傷、火傷、感染症、潰瘍、口唇ヘルペス、乾癬、座瘡などの皮膚(すなわち、皮膚もしくは粘膜)疾患の治療または予防、およびc)瘢痕形成の防止または予防、およびd)眼疾患(例えば、感染症または細菌性角膜炎により生じた炎症)の治療など、様々な医学的および非医学的用途に用いることができる。
【0033】
先に指摘したように、本発明の亜塩素酸塩/過酸化水素システムは、ポリマーゲルの形またはペーストの形に製剤するのに十分安定である。また当該のポリマーゲルまたはペースト製剤は、亜塩素酸塩/過酸化水素の放出を遅延させるかまたは制御する(例えば、持続放出薬剤送達システム)ポリマーを含むこともできる。当該の持続放出製剤は、損傷部位で長時間にわたって亜塩素酸塩/Hの効果的な濃度を維持し、損傷部位の外部微生物による汚染を防止し、損傷部位を覆って密閉し、また損傷組織に酸素分子を供給することにより、治療指数を増大させるという優れた利点をもたらす。従来の軟膏と異なり、ポリマーゲルは塗布した損傷部位に乾いて清潔な、かつ快適な被覆をもたらす。当該のゲル製剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(Methocel)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒアルロン酸、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)などのようなポリマー薬剤送達媒体を含んでもよい。
ii.安定な亜塩素酸塩/過酸化物ゲル
以下の処方3は、現在のところ、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物ゲルの好適な製剤であ
る。
処方3
亜塩素酸ナトリウム・・・0.02%〜0.10%
過酸化水素・・・0.005%〜0.05%
Methocel A・・・2.0%
ホウ酸・・・0.15%
塩化ナトリウム・・・0.75%
Pluronic F 68/F-127・・・0.1%
HClまたはNaOH・・・pH7.4に調整
精製水・・・所定体積まで十分量
本発明のいずれの製剤も、周知のリポソーム形成手法に従って調製したリポソームを形成することにより、および薬剤的に許容可能で効果的な量(例えば、一般的には1〜20重量%)のポリマーマトリックスまたは下記の1つもしくは複数の持続放出成分を製剤に加えることにより、もしくはその一方で、活性成分を持続放出するよう製剤することもできる。
セルロースエステル;
ヒドロキシメチルプロピルセルロース;
メチルヒドロキシエチルセルロース;
ヒドロキシプロピルセルロース;
ヒドロキシエチルセルロース;
カルボキシメチルセルロース;
セルロースエステルの塩;
酢酸セルロース;
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;
メタクリル酸‐メチルメタクリレートコポリマー;
メタクリル酸‐酢酸エチルコポリマー;
ポリビニルピロリドン;
ポリビニルアルコール;
ヒアルロン酸;
リン脂質;
コレステロール;
中性電荷を持つリン脂質;
負電荷を持つリン脂質;
ジパルミトイルホスファチジルコリン;
ジパルミトイルホスファチジルセリン;および
それらのナトリウム塩。
iii.安定な眼科用亜塩素酸塩/過酸化物溶液
以下の処方4は、現在のところ、眼の中にある、または眼から取り出したコンタクトレンズの洗浄に使用する亜塩素酸塩/過酸化物コンタクトレンズ殺菌液の好適な製剤である。この製剤は、更にドライアイの対象者において潤滑のための涙液製品として機能する。処方4
亜塩素酸ナトリウム・・・0.002%〜0.20%
過酸化水素・・・0.005%〜0.05%
ヒアルロン酸・・・0.001%〜0.50%
ホウ酸・・・0.15%
塩化ナトリウム・・・0.75%
Pluronic 127・・・0.05%〜2.0%
HClまたはNaOH・・・pH7.4に調整
精製水・・・所定体積まで十分量
先に示したように、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤は、溶液、ゲル、軟膏、クリー
ム、スプレーなどのいずれの形に製剤されていようと、室温で保存中に二酸化塩素を発生せずに、活性成分として亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩および過酸化水素をpH5.0〜8.8の範囲に維持するよう特別に構成される。例として、特定の範囲内でpHレベルが異なる処方2に従った亜塩素酸塩/過酸化水素溶液について、複数の実験を実施した。しかし、当該の実験は、溶液の形のみに限られることはなく、pHレベルが異なる本亜塩素酸塩/過酸化物製剤の様々な形態において二酸化塩素が生成されないことを説明するために行われたものであることを本明細書において明確に述べておく。
【0034】
以下の実験は、中性、塩基性、酸性レベルのpHでの亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩および過酸化水素の抗菌製剤の安定性を示すために設計された。より具体的には、亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素の発生の量的レベルをpHレベル7.3、8.0、8.8、7.0、6.44および6.0で測定した。実験において、pHレベルの調節には、0.1規定濃度の塩酸溶液および0.1規定濃度の水酸化ナトリウム溶液を使用した。滅菌した0.9%塩化ナトリウム滅菌溶液も使用した。種々のpHレベルでの亜塩素酸ナトリウムの濃度および二酸化塩素の発生を検出し測定するために、分光光度計(例えば、Lambda 20 Model UV-Vis.分光光度計)に以下の処方のプラシー
ボ溶液を更に用いた。
プラシーボ溶液
過酸化水素・・・0.02%
カルボキシメチルセルロース・・・0.01%
ホウ酸・・・0.15%
塩化ナトリウム・・・0.75%
Pluronic F 68/F-127・・・0.1%
HClまたはNaOH・・・pH7.3に調整
精製水・・・所定体積まで十分量
実験例1:pHレベル7.3
実験:第1のキュベットをプラシーボ溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の標準ビーム経路に置く。第2のキュベットを亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の試料ビーム経路に置く。200nmから400nmまで溶液をスキャンし、結果を記録する。図1に示すグラフに示すように、結果をプロットしプリントアウトする。
【0035】
結果:溶液は、活性成分として亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素、ならびにpHレベルは7.3で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。プラシーボ溶液は活性成分として過酸化水素、ならびにpHレベルは7.3で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。
【0036】
過酸化水素は200nmから400nmの範囲では吸収がない。したがって、図1で理解されるように、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。
亜塩素酸ナトリウムは、260nmに吸収極大があり、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は、355nm〜358nmに吸収極大がある。
【0037】
pH7.3の溶液を200nmから400nmまでスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素の定量値が同一スキャンで得られよう。
解釈:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmの亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm〜358nmの二酸化塩素のピークは全く示さない。
【0038】
これは、pHレベル7.3では亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを含み、二酸化塩素は多少なりとも含まないことを明らかに示す。これは、亜塩素酸ナトリウムがpHレベル7.3で安定であり、亜塩素酸ナトリウムが分解して二酸化塩素を形成していないという明らかな証拠である。
実験例2:pHレベル8.0
実験:プラシーボ溶液を25mLおよび亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を25mL、2つの清浄な容器に分注する。各容器に0.1規定濃度の水酸化ナトリウム溶液を加え、プラシーボ溶液および亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液双方のpHレベルを8.0に調整する。
【0039】
一方のキュベットをプラシーボ溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の標準ビーム経路に置く。第2のキュベットを亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の試料ビーム経路に置く。200nmから400nmまで溶液をスキャンし、結果を記録する。図2に示すグラフに示すように、結果をプロットしプリントアウトする。
【0040】
結果:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、活性成分として亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素、ならびにpHレベルは8.0で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。プラシーボ溶液は活性成分として過酸化水素、ならびにpHレベルは8.0で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。
【0041】
手短に上述したように、過酸化水素は200nmから400nmの範囲では吸収がない。したがって、図2で理解されるように、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。また上述のように、亜塩素酸ナトリウムは、260nmに吸収極大があり、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は、355nm〜358nmに吸収極大がある。
【0042】
pHレベル8.0の溶液を200nmから400nmまでスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素の定量値が同一スキャンで得られよう。
解釈:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmの亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm〜358nmの二酸化塩素のピークは全く示さない。これは、pHレベル8.0では亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを含み、二酸化塩素は多少なりとも含まないことを明らかに示す。これは、亜塩素酸ナトリウムがpHレベル8.0で安定であり、亜塩素酸ナトリウムが分解して二酸化塩素を形成していないという明らかな証拠である。
実験例3:pHレベル8.8
プラシーボ溶液を25mLおよび亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を25mL、2つの清浄な容器に分注する。各容器に0.1規定濃度の水酸化ナトリウム溶液を加え、プラシーボ溶液および亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液双方のpHレベルを8.8に調整する。
【0043】
一方のキュベットをプラシーボ溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の標準ビーム経路に置く。第2のキュベットを亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の試料ビーム経路に置く。200nmから400nmまで溶液をスキャンし、結果を記録する。図3に示すグラフに示すように、結果をプロットしプリントアウトする。
【0044】
結果:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、活性成分として亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素、ならびにpHレベルは8.8で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。プラシーボ溶液は活性成分として過酸化水素、ならびにpHレベルは8.8で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。
【0045】
すでに論じたように、過酸化水素は200nmから400nmの範囲では吸収がない。したがって、図3から分かるように、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。また
論じたように、亜塩素酸ナトリウムは、260nmに吸収極大があり、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は、355nm〜358nmに吸収極大がある。
【0046】
pHレベル8.8の溶液を200nmから400nmまでスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素の定量値が同一スキャンで得られよう。
解釈:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmの亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm〜358nmの二酸化塩素のピークは全く示さない。これは、pHレベル8.8では亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを含み、二酸化塩素は多少なりとも含まないことを明らかに示す。これは、亜塩素酸ナトリウムがpHレベル8.8で安定であり、亜塩素酸ナトリウムが分解して二酸化塩素を形成していないという明らかな証拠である。
実験例4:pHレベル7.0
実験:プラシーボ溶液を25mLおよび亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を25mL、2つの清浄な容器に分注する。各容器に0.1規定濃度の塩酸溶液を加え、プラシーボ溶液および亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液双方のpHレベルを7.0に調整する。
【0047】
一方のキュベットをプラシーボ溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の標準ビーム経路に置く。第2のキュベットを亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の試料ビーム経路に置く。200nmから400nmまで溶液をスキャンし、結果を記録する。図4に示すグラフに表すように、結果をプロットしプリントアウトする。
【0048】
結果:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、活性成分として亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素、ならびにpHレベルは7.0で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。プラシーボ溶液は活性成分として過酸化水素、ならびにpHレベルは7.0で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。過酸化水素は200nmから400nmの範囲では吸収がない。したがって、図4から分かるように、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。
【0049】
亜塩素酸ナトリウムは、260nmに吸収極大があり、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は、355nm〜358nmに吸収極大がある。pH7.0の溶液を200nmから400nmまでスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素の定量値が同一スキャンで得られよう。
【0050】
解釈:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmの亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm〜358nmの二酸化塩素のピークは全く示さない。これは、pHレベル7.0では溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを含み、二酸化塩素は多少なりとも含まないことを明らかに示す。これは、亜塩素酸ナトリウムがpH7.0で安定であり、亜塩素酸ナトリウムが分解して二酸化塩素を形成していないという明らかな証拠である。実験例5:pHレベル6.44
実験:プラシーボ溶液を25mLおよび亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を25mL、2つの清浄な容器に分注する。各容器に0.1規定濃度の塩酸溶液を加え、プラシーボ溶液および亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液双方のpHレベルを6.44に調整する。
【0051】
一方のキュベットをプラシーボ溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の標準ビーム経路に置く。第2のキュベットを亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の試料ビーム経路に置く。200nmから400nmまで溶液をスキャンし、結果を記録する。図5に示すグラフに表すように、結果をプロットしプリントアウトする。
【0052】
結果:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、活性成分として亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素、ならびにpHレベルは6.44で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。
プラシーボ溶液は活性成分として過酸化水素、ならびにpH=6.44で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。過酸化水素は200nmから400nmの範囲では吸収がなく、したがって、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。亜塩素酸ナトリウムは、260nmに吸収極大があり、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は、355nm〜358nmに吸収極大がある。
【0053】
pH6.44の溶液を200nmから400nmまでスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素の定量値が同一スキャンで得られよう。
解釈:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmの亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm〜358nmの二酸化塩素のピークは全く示さない。これは、pH6.44では溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを含み、二酸化塩素は多少なりとも含まないことを明らかに示す。これは、亜塩素酸ナトリウムがpH6.44で安定であり、亜塩素酸ナトリウムが分解して二酸化塩素を形成していないという明らかな証拠である。
実験例6:pHレベル6.0
実験:プラシーボ溶液を25mLおよび亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を25mL、2つの清浄な容器に分注する。各容器に0.1規定濃度の塩酸溶液を加え、プラシーボ溶液および亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液双方のpHレベルを6.0に調整する。
【0054】
一方のキュベットをプラシーボ溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の標準ビーム経路に置く。第2のキュベットを亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の試料ビーム経路に置く。200nmから400nmまで溶液をスキャンし、結果を記録する。図6に示すグラフに表すように、結果をプロットしプリントアウトする。
【0055】
結果:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、活性成分として亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素、ならびにpHレベルは6.0で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。プラシーボ溶液は活性成分として過酸化水素、ならびにpHレベル6.0で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。過酸化水素は200nmから400nmの範囲では吸収がない。したがって、図6で理解されるように、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。
【0056】
亜塩素酸ナトリウムは、260nmに吸収極大があり、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は、355nm〜358nmに吸収極大がある。pH6.0の溶液を200nmから400nmまでスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素の定量値が同一スキャンで得られよう。
【0057】
解釈:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmの亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm〜358nmの二酸化塩素のピークは全く示さない。これは、pHレベル6.0では溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを含み、二酸化塩素は多少なりとも含まないことを明らかに示す。これは、亜塩素酸ナトリウムがpH6.0で安定であり、亜塩素酸ナトリウムが分解して二酸化塩素を形成していないという明らかな証拠である。実験例7:pHレベル1.5
実験:プラシーボ溶液を25mLおよび亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を25mL、2つの清浄な容器に分注する。各容器に0.1規定濃度の塩酸溶液を加え、プラシーボ溶液および殺菌溶液双方のpHを1.5に調整する。
【0058】
一方のキュベットをプラシーボ溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計
の標準ビーム経路に置く。第2のキュベットを亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液で満たし、キュベットをきれいに拭って分光光度計の試料ビーム経路に置く。200nmから400nmまで溶液をスキャンし、結果を記録する。図7に示すグラフに示すように、結果をプロットしプリントアウトする。
【0059】
結果:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、活性成分として亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素、ならびにpHは1.5で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。プラシーボ溶液は活性成分として過酸化水素、ならびにpH1.5で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。上で説明したように、過酸化水素は200nmから400nmの範囲では吸収がないものであるから、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。
【0060】
また上で説明したように、亜塩素酸ナトリウムは、260nmに吸収極大があり、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は、355nm〜358nmに吸収極大がある。pH1.5の溶液を200nmから400nmまでスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素の定量値が同一スキャンで得られよう。
【0061】
解釈:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmの亜塩素酸ナトリウムのピークを示さないが、355nm〜358nmの二酸化塩素の大きなピークを示す。これは、pHレベル1.5では亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は亜塩素酸ナトリウムを全く含まないことを明らかに示す。むしろ、亜塩素酸ナトリウムが分解されて、二酸化塩素に変化されたことを明らかに示す。これは、亜塩素酸ナトリウムがpH1.5で非常に不安定であり、溶液中に存在する全ての亜塩素酸ナトリウムが二酸化塩素に転換された、明らかな証拠である。
実験例1〜7の結果
亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、活性成分として亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素を、ならびにpHレベル1.5、6.0、6.44、7.0、7.3、8.0、および8.8で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。
【0062】
プラシーボ溶液は活性成分として過酸化水素を、ならびにpHレベル1.5、6.0、6.44、7.0、7.3、8.0、および8.8で緩衝剤および等張化剤を含んでいた。
【0063】
過酸化水素は200nmから400nmの範囲では吸収がない。
亜塩素酸ナトリウムは、260nmに吸収極大があり、一方、二酸化塩素は、355nm〜358nmに吸収極大がある。
【0064】
溶液を200nmから400nmまでスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素の定量値が同一スキャンで得られよう。
実験例1〜7の結果の解釈
pHレベル6.0、6.44、7.0、7.3、8.0、および8.8の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmの亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm〜358nmの二酸化塩素のピークの存在は示さない。
【0065】
対照的に、pH1.5の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmの亜塩素酸ナトリウムのピークの存在を示さないが、355nm〜358nmの二酸化塩素のピークの存在を示す。
実験例1〜7の結果の結論
結果は、pHレベル1.5、6.0、6.44、7.0、7.3、8.0、および8.8の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液に存在する亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素のレベルを定量的に測定できることを明確に示している。
【0066】
355nm〜358nmの吸収が欠如していることが測定されたように、結果は、亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液のおよそ室温での保存(例えば、室温の空気に曝された白い不透明なボトル内)によって、二酸化塩素が全く生成されないことも示している。
【0067】
結論として、実験1〜7の結果は、pH6.0〜8.8の範囲の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は二酸化塩素の生成をせずに亜塩素酸ナトリウムを維持することを明らかに示している。しかし、溶液をpH1.5に酸性化させると、分解して二酸化塩素を生成する。したがって、これらの結果は、亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は製造時に二酸化塩素を含まず、またおよそ室温でpHレベル6.0、6.44、7.0、7.3、8.0、または8.8で保存後にも溶液は分解せず、二酸化塩素を生成しないことも強く示している。
【0068】
さらに、これらの結果は、本発明の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液が研究が行われたpH範囲内では二酸化塩素によってでなく亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素によって殺菌特性をもつという明確な証拠を提示する。これは、亜塩素酸ナトリウムを出発材料として、亜塩素酸ナトリウムの酸化によって生成する二酸化塩素を活性殺菌剤とする他の先行技術発明とは非常に異なっている。
B.治療用途の実施例
以下は、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物製剤の治療用途の具体的な実施例である。
i.実施例1:乾癬の治療‐非クロスオーバー実験
両腕に乾癬プラークがある患者を以下のように治療する。
【0069】
下記の処方の亜塩素酸塩/過酸化物溶液を1日2回、左腕のプラークのみに塗布する。亜塩素酸ナトリウム・・・0.06%
過酸化水素・・・0.01%
HPMC・・・2.0%
ホウ酸・・・0.15%
HClまたはNaOH・・・pH7.4に調整
精製水・・・所定体積まで十分量
市販の0.1%トリアムシノロンアセトニドクリームを1日2回、右腕のプラークのみに塗布する。
【0070】
亜塩素酸塩/過酸化物で治療した右腕の乾癬プラークは治療開始から24時間以内に症状が軽くなり始め、治療開始から3日以内に実質的に消失した。しかし、トリアムシノロンアセトニドで治療した左腕の乾癬プラークは、変化せず、2週間の治療期間中に炎症を起こした。
ii.実施例2:乾癬の治療‐クロスオーバー実験
両腕に乾癬プラークがある患者を以下のように2週間治療する。
【0071】
下記の処方の亜塩素酸塩/過酸化物溶液を1日2回、左腕のプラークのみに塗布する。亜塩素酸ナトリウム・・・0.06%
過酸化水素・・・0.01%
HPMC・・・2.0%
ホウ酸・・・0.15%
HClまたはNaOH・・・pH7.4に調整
精製水・・・所定体積まで十分量/100%
市販の0.1%トリアムシノロンアセトニドクリームを1日2回、右腕のプラークのみに塗布する。
【0072】
亜塩素酸塩/過酸化物で治療した右腕の乾癬プラークは治療開始から24時間以内に症状が軽くなり始め、治療開始から1週間以内に実質的に消失した。しかし、トリアムシノロンアセトニドで治療した左腕の乾癬プラークは、変化せず、2週間の治療期間中に炎症を起こした。
【0073】
最初の2週間の治療期間の終了翌日に開始して、第2の2週間の治療期間を続けて、患者を以下のように治療した。
本実施例で上述した同一の市販の0.1%トリアムシノロンアセトニドクリームを1日2回、左腕のプラークのみに塗布する。
【0074】
本実施例で上述した同一の亜塩素酸塩/過酸化物の持続放出ゲルを1日2回、右腕のプラークのみに塗布する。
第2の治療期間の開始から24時間以内に、右腕の乾癬病巣は正常な状態に戻りはじめた。3日目までに、および第2の2週間の治療期間の終わりまで継続して、右腕の乾癬病巣は実質的に消失した。
iii.実施例3:口唇ヘルペスの治療
唇に痛みを伴った、中に液体を含む口唇ヘルペス(すなわち、下疳)がある患者を、上記処方1に従って調製した亜塩素酸塩/過酸化物製剤を1日2回、口唇に塗布することによって治療した。
【0075】
亜塩素酸塩/過酸化物製剤の初回塗布から6〜12時間以内に、痛みが収まったことを患者が報告した。亜塩素酸塩/過酸化物製剤の初回塗布から24時間以内に、口唇ヘルペス中に含まれた液体が実質的に消失し、口唇ヘルペスが乾燥した。このような重症度の口唇ヘルペスは、完全に消失して治癒するまで一般的には実質6日より長い時間が必要であるにも関わらず、亜塩素酸塩/過酸化物製剤の初回塗布から6日以内に、口唇ヘルペスは実質的に消失し、口唇は正常になった。
iv.実施例4:静脈性潰瘍の治療
右足に9〜12ヶ月前から存在する直径3〜4cmの静脈性潰瘍がある患者に対して、上記処方1に従って調製した亜塩素酸塩/過酸化物溶液をガーゼに浸して1日2回、潰瘍に貼り付けて治療した。
【0076】
治療開始後3日以内に、静脈性潰瘍はきれいになり乾燥した。治療開始後14日以内に、静脈性潰瘍はサイズが縮小し始め、健康な新しい組織が周辺部に観察された。治療開始後35日目、瘢痕化もなく、潰瘍があった領域は痛みもなく、静脈性潰瘍は完全に治癒した。
v.実施例5:糖尿病性褥瘡性潰瘍の治療
12〜18ヶ月間、両脚部および何本かの足指に褥瘡性潰瘍がある歩行不能の糖尿病患者について、清浄な滅菌ガーゼを潰瘍に貼り付けて、毎日1日3回、上記処方1に従って調製した亜塩素酸塩/過酸化物溶液をガーゼに染みこませることにより治療した。亜塩素酸塩/過酸化水素治療開始後4から7日以内に、潰瘍の赤みが縮小し、きれいに乾燥し始めた。亜塩素酸塩/過酸化水素治療開始後約7から10日後、肉芽組織が潰瘍内に形成し始めた。12から14日以内に、特に重症で足指の骨にまで潰瘍が浸潤していた一本の足指を除いて、再上皮形成が潰瘍領域内で始まったのが認められた。治療開始から30から45日以内に、重症の足指の潰瘍を除く全ての潰瘍が完全に閉じ、異常な瘢痕形成もなく、再上皮形成化した。また治療開始後30から45日で、足指の潰瘍も実質的により小さくなり(しかし、完全には閉鎖されなかった)、患者は歩行することができた。処方1および2などの本発明の液体、およびゲル製剤もしくはそのいずれかは、創傷、火傷、座瘡、感染症、外傷、外科的切開、または他の瘢痕を形成しつつある病巣もしくは疾患による瘢痕形成を予防するために局所的に施用することもできる。
vi.実施例6
a.ドライアイ症状の治療
ドライアイ症状の患者には、眼にむずむずおよびちくちくする痒みがある。極端な症例では、健康維持を妨げかねないさらに深刻な問題を抱えている。以下の処方の好適な涙液製品で患者の治療を行った。
処方:
亜塩素酸ナトリウム・・・0.005〜0.02%
過酸化水素・・・0.01%
メチルセルロースA4M・・・0.075%
ヒアルロン酸・・・0.10%〜0.125%
ホウ酸・・・0.15%
塩化ナトリウム、米国薬局方・・・0.75%
Pluronic 127・・・0.10%
HClまたはNaOH・・・pH7.4に調整
精製水・・・所定体積まで十分量
ローズベンガル染色またはフルオレセインを用いて検査することにより、ドライアイ患者の角膜上皮の健康状態に関する良い指標が得られ、さらに、ローズベンガル染色により角膜および結膜上の死んだ上皮細胞の数の良い指標が得られる。
【0077】
ドライアイ症状の2人の患者を、ローズベンガル染色で検査し、角膜および結膜の定量的染色状態を写真で記録した。患者は、上記の好適な涙液製品の使用を1日3回、2滴の用量で開始した。2週間後、2人の患者について、ローズベンガル染色で検査を行い、染色レベルを写真で定量的に記録した。結果は、ローズベンガル染色において50%から70%の減少を示し、好適な涙液製剤が角膜および結膜の細胞死を改善したことを明らかに示した。
【0078】
上皮細胞の健康の客観的測定に加えて、二人の患者に対して好適な涙液製品の安全性および有効性に関して主観的テストを行った。まず第1に、2週間の治療期間中の患者の細隙灯生体顕微鏡検査は、赤み、刺激、炎症、または他の不快感の徴候を全く示さなかった。第2に、患者は涙液製品の施用によって数時間持続する潤滑がもたらされると同時に、ドライアイに起因する赤み、むずむずする痒み、ちくちくする痒み、痛み、および乾燥の症状が完全に除去されたと指摘した。従って、ドライアイの治療において、涙液製品が安全性および有効性の両方を示すことは明らかである。当該の配合の前述の抗菌活性を考慮してさらに理解されるように、涙液製品は、細菌感染症の発生が防止される外科手術後など眼内の創傷治癒の増進にも有効であろう。
b.アレルギー性結膜炎の治療
上記の好適な涙液製品によるドライアイ症状の治療に加え、この製品はアレルギー性結膜炎による症状の治療についてもテストされた。具体的には、眼にむずむずおよびちくちくする痒みがあり、常時流涙がある二人のアレルギー性結膜炎患者に、1日3回、2滴の本製品を施用した。この投薬の結果、症状が消失した。
C.コンタクトレンズ洗浄の実施例
i.実施例1:浸漬、洗浄、および殺菌
以下の処方が、従来の浸漬によるコンタクトレンズの洗浄に適用可能な、好適な殺菌溶液である。
亜塩素酸ナトリウム・・・0.005%
過酸化水素・・・0.02%
メチルセルロースA4M・・・0.075%
ヒアルロン酸・・・0.05%〜0.10%
ホウ酸・・・0.15%
Pluronic 127・・・0.25%〜0.50%
塩化ナトリウム、米国薬局方・・・0.75%
HClまたはNaOH・・・pH7.4に調整
精製水・・・所定体積まで十分量
親水性のソフトコンタクトレンズを使用する6人の被験者が、レンズを上記の殺菌溶液に浸し、次いで、レンズを眼内に直接装着した。浸漬は毎晩行うか、または必要に応じて随時行った。6人の被験者全員が、レンズが非常に快適に感じ、また有害影響(例えば、灼熱感、刺すような感覚、赤み、痛み)は経験しなかったと報告した。また、溶液は、レンズの快適さと清浄状態を、他の市販の殺菌液で得られるよりも数週間延長させた。
【0079】
殺菌液は、様々な含水量(例えば、38%から75%)の親水性のソフトコンタクトレンズだけでなく、シリコーンアクリレートの気体透過性ハードレンズにも使用することができる。30日間毎日レンズを浸漬するソフトレンズの繰り返し研究では、レンズの物理的および化学的特性の損傷または変化は示されなかった。先に言及したように、眼の快適さは、ソフトレンズまたは気体透過性ハードレンズに保存料が結合せず、かつ蓄積もしないことで実現されるが、このような刺激や不快感を引き起こす結合および蓄積は、現在市販されている一部の製剤に見いだされ得る。
ii.実験例2:着用時の洗浄
以下の処方は、眼に溶液を入れることで、コンタクトレンズ着用状態での洗浄に適用可能な、好適な眼内殺菌溶液である。
亜塩素酸ナトリウム・・・0.02%
過酸化水素・・・0.01〜0.02%
メチルセルロースA4M・・・0.075%
ヒアルロン酸・・・0.075%〜0.10%
ホウ酸・・・0.15%
塩化ナトリウム、米国薬局方・・・0.75%
Pluronic 127・・・0.75%
HClまたはNaOH・・・pH7.4に調整
精製水・・・所定体積まで十分量
4人の被験者が、上記の眼内溶液をコンタクトレンズに1日3回2滴ずつ30日間コンタクトレンズ着用時に施用した。被験者全員の検査結果は、刺激、灼熱感、刺すような痛み、または他のあらゆる種類の有害影響を示さなかった。この被験者らは、さらに、溶液が心地よく、滑らかで潤いがあると感じたことを報告した。
【0080】
2人の被験者は、比較研究に関与した。第1に、被験者等はACUVUE使い捨てレンズを時々取り外して市販の洗浄液で洗浄した後に生理食塩水でリンスして、2週間連続装着した。14日後、レンズは非常にざらついて不快になり、廃棄された。第2に、2人の被験者は、新しいACUVUEレンズを使用し始め、レンズを取り外したり、触ったりせずに、本眼内溶液を1日に3回、毎日施用した。被験者はレンズを交換まで3〜4週間装着することができた。また、レンズの紛失、破れ、または汚染のリスクだった、眼から取り出してのレンズ洗浄の煩わしさが完全に解消された。従って、本眼内洗浄液が洗浄の有効性と同時に利便性も提供することは明らかである。
D.In vitroおよびin vivoでの抗菌効果
i.相乗的活性
表IおよびIIは、(a)400ppmの亜塩素酸ナトリウム単独、(b)200ppmの過酸化水素単独、ならびに(c)400ppmの亜塩素酸ナトリウムおよび200ppmの過酸化水素の併用について、共にヒトの感染症を起こした眼から単離されたスタフィロコッカス・ヘモリチカス(staphylococcus haemolyticus)(表I)および緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)(表II)の抗生物質耐性株に対する抗菌効果を比較している。表IおよびIIは、試験液の導入後1時間および2時間時点での抗菌作用についてまとめている。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
表1にまとめられた実験では、亜塩素酸ナトリウム単独ではスタフィロコッカス・ヘモリチカス細菌において、対数スケールで1時間で0.11、2時間で1.01の減少をもたらした。過酸化水素単独ではスタフィロコッカス・ヘモリチカス細菌において、対数スケールで1時間で0.20、2時間で0.23の減少をもたらし、亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素の併用ではスタフィロコッカス・ヘモリチカス細菌において、対数スケールで1時間で0.69、2時間で2.43の減少をもたらした。すなわち、この実験では、亜塩素酸ナトリウム‐過酸化水素併用の抗菌効果は、少なくとも2時間時点では亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素単独での効果の合計よりも顕著に大きかった。従って、亜塩素酸ナトリウム‐過酸化水素併用は、本実験で用いられたスタフィロコッカス・ヘモリチカスの株に対して相乗作用を示したと結論される。
【0084】
表2にまとめられた実験では、亜塩素酸ナトリウム単独では緑膿菌細菌において、対数スケールで1時間で0.35、2時間で1.35の減少をもたらした。過酸化水素単独では緑膿菌において、対数スケールで1時間で0.01、2時間で0.54の減少をもたらし、亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素の併用では緑膿菌細菌において、対数スケールで1時間で0.04、2時間で6.35の減少をもたらした。すなわち、この実験では、亜塩素酸ナトリウム‐過酸化水素併用の抗菌効果は、少なくとも2時間時点では亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素単独での効果の合計よりも顕著に大きかった。従って、亜塩
素酸ナトリウム‐過酸化水素併用は、本実験で用いられた緑膿菌の株に対して相乗作用を示したと結論される。
ii.動物試験
ウサギ12匹のそれぞれ右眼に50,000CFU/mlのスタフィロコッカス・ヘモリチカスを含むブロスを擦り傷をつけた角膜上に滴下して、スタフィロコッカス・ヘモリチカス角膜炎を誘発した。24時間後、全ての角膜が同じように感染した。ウサギをランダムに3つの群に分けた。グループIのウサギ(5匹)は、コンタクトレンズを装着した状態で洗浄する際に、上で定義した亜塩素酸‐過酸化水素処方で処置し(ここで、「殺菌剤」と称する);グループIIのウサギ(5匹)は、市販の0.3%オフロキサシン抗生物質点眼薬で処置し;グループIIIのウサギ(2匹)は、コントロールとするため無処置とした。
【0085】
感染から24時間および48時間後に、ウサギに対して眼の目視検査、写真記録、生体顕微鏡観察を行った。処置24時間後、グループIおよびIIから動物を各3匹ずつ、グループIIIから1匹を屠殺した。眼球を摘出し、角膜の8mmディスクをホモジナイズし、細菌単離および定量用の培地上に播種した。処置48時間後に、同じ処理を残りの動物に対して行った。
【0086】
表3、4および5は、この実験の結果をまとめている。表で明らかなように、本発明の殺菌剤は、競合の市販処方に比べて全体的な結果が優れていることを示した。従って、結果は殺菌剤の臨床的有効性が抗生物質処置よりも良好であることを裏付けている。優れた殺菌特性があることに加えて、殺菌剤の優位性はおそらく細菌のタンパク質分解酵素の不活性化(すなわち、細菌の病原性の低下)ならびに炎症および充血に関与する細菌毒素の不活性化に起因することが示された。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
E.眼における耐容性および分解速度
i.高濃度過酸化水素の眼における耐容性
以前は、ヒトの眼における過酸化水素の耐容性の上限は、約100ppm(0.01重量%)であると考えられた。パウ J.R.(Paugh,J.R.)、ブレナン N.A.(Brennan,N.A.)、エフロン N(Efron,N.)、Ocular
Response to Hydrogen Peroxide、Am.J.Optom.Physiol.Opt.1988年2月;第65(2)版:91〜8ページを参照のこと。しかし、以下の実験は、亜塩素酸ナトリウムと組み合わせた場合、ヒトの眼は500ppm(0.05重量%)までの濃度の過酸化水素に良好な耐容性を示すことを示している。以下の全ての実験において、過酸化水素は、pH7.4の0.2%ホウ酸に400ppm(0.04重量%)の亜塩素酸ナトリウムと配合され、0.2μmのAcrodiscシリンジフィルターで濾過された。次いで、各処方を2滴ずつ正常なヒトの両眼の盲嚢に置いた。液滴を滴下した時に、被験者は眼瞼を閉じるよう指示された。被験者の処理を行った眼の症状を、滴下後1時間以上にわたって、灼熱感および刺すような感覚、痛
み、赤み、流涙、痒み、光視症、羞明、分泌物、および異物感について観察および評価した。観察結果を以下に示す。
【0091】
【表6】

【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【0094】
【表9】

【0095】
【表10】

【0096】
上記のデータから理解できるように、亜塩素酸ナトリウムが存在する場合には、500ppmまでの濃度の過酸化水素はヒトの眼において非常によく耐用性を示した。500ppmまでの過酸化水素を含む処方の滴下に関連した刺激、炎症または他のいかなる有害作用の徴候も認められなかった。この結果は、亜塩素酸ナトリウムと共に使用する場合、ヒトの眼に対して500ppmまでの過酸化水素は非常に安全で、かつ有害作用がないであろうことを示している。また、上述のように、亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素を含む処方に優れた相乗的抗菌活性が見いだされた。過去の文献(パウ参照)はヒトの眼における過酸化水素に対する耐容性を約100ppmと報告していることから、以下にさらに詳細に論じられるように、亜塩素酸ナトリウムは、優れた相乗的抗菌活性を示し、生体システムと接触して水、酸素、および塩のような無害な産物に分解する一時的な複合分子(例えば、過酸化亜塩素酸塩)を形成することによって過酸化水素を安定化させているに違いないと考えられる。
ii.眼内での過酸化水素/亜塩素酸ナトリウムの分解
以下の実験は、ヒトの眼内に入れた場合の過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム製剤の自己分解速度を測定する目的、および「眼内」コンタクトレンズ洗浄剤製品または人工涙液製品に使用された場合に、製剤に関連した眼の総合的症状のレベルを測定する目的で設計された。
実験1:「眼内」コンタクトレンズ洗浄剤
100mLの滅菌水中に0.5gのカルボキシメチルセルロース、0.5gのPluronic、および0.05gの過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム混合物を含む、「眼内」コンタクトレンズ洗浄剤を準備した。洗浄剤は、400ppmの亜塩素酸ナトリウムおよび100ppmの過酸化水素、合計500ppmの過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム混合物を含んだ。洗浄剤2滴を正常なヒトの両眼の盲嚢に置いた。液滴を滴下した時に、被験者は眼瞼を閉じ、人差し指で内眼角を圧迫し、涙点を塞いで涙が涙管に行かないように止めた。
【0097】
30秒、1分、2分、および3分の間隔で、未使用の過酸化物試験紙を被験者の眼の盲嚢に当てて、被験者の涙液試料を得た。使用済みの過酸化物試験紙を眼から取り除き、室温で15分間乾燥させた。乾燥時間の終了時に、呈色した過酸化物試験紙の色を標準カラーチャートの色と比較し、涙液中に残った過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム要素のレベルを推定し、下に示すように記録した。
【0098】
【表11】

【0099】
上に示したデータは、処理を受けた被験者の涙膜中の過酸化水素/亜塩素酸ナトリウムレベルの急速な減少を示している。人差し指で内眼角を圧迫し、涙点を塞いで、被験者の涙が涙管に漏れないようにした。また、眼瞼を閉じることでまばたき作用を止め、ひいては、処理を行った眼から涙液を除去するポンプ作用を止める。従って、涙液からの過酸化水素/亜塩素酸ナトリウムレベルの急速な減少は、涙管へと被験者の涙液が失われことに起因するのではないであろう。むしろその減少は、ヒト被験者の涙液中のカタラーゼおよびスーパーオキシドジスムターゼ酵素の存在に起因すると考えられる。液滴が患者の眼に置かれた時、カタラーゼおよび他の酵素が過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム製剤の迅速な酵素分解を開始する。それによって、およそ3分の間に処理を行った被験者の涙液中のレベルは、ほとんど検出不能なレベルになる。この実験結果は、どちらかといえば、眼内への滴下時に、過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム混合物が、最終産物が水、酸素、塩化ナトリウムである自己分解性保存料のように振る舞うことを示している。
【0100】
さらに、下に示すように、滴下後1時間の期間にわたって処理を行った眼の症状を、灼熱感、刺すような感覚、痛み、赤み、流涙、痒み、光視症、羞明、分泌物、および異物感について観察し、評価した。
【0101】
【表12】

【0102】
上記の結果は、刺激、炎症または他のいかなる有害作用の徴候も認めず、過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム混合物が人の眼において非常に良好な耐用性を示すことを示している。
実験2:人工涙液製品
100mLの滅菌水中に0.15gのヒアルロン酸ナトリウム、0.50gの保護剤、および0.06gの過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム混合物を含む、人工涙液製品を準備した。人工涙液製品は、400ppmの亜塩素酸ナトリウムおよび200ppmの過酸化水素、合計600ppmの過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム混合物を含んだ。洗浄剤2滴を6人の正常なヒトの眼の盲嚢に置いた。液滴を滴下した時に、被験者は眼瞼を閉じ、人差し指で内眼角を圧迫し、涙点を塞いで涙が涙管に行かないように止めた。
【0103】
0秒、5秒、20秒、30秒、60秒、90秒、120秒、および180秒の間隔で、未使用の過酸化物試験紙を被験者の眼の盲嚢に当てて、被験者の涙液試料を得た。使用済みの過酸化物試験紙を眼から取り除き、室温で15分間乾燥させた。乾燥時間の終了時に、呈色した過酸化物試験紙の色を標準カラーチャートの色と比較し、涙液中に残った過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム要素のレベルを推定し、下に示すように記録した。
【0104】
【表13】

【0105】
上に示したデータは、処理を受けた被験者の涙膜中の過酸化水素/亜塩素酸ナトリウムレベルの急速な減少を示している。人差し指で内眼角を圧迫し、涙点を塞いで、被験者の涙が涙管に漏れないようにした。また、眼瞼を閉じることでまばたき作用を止め、ひいては、処理を行った眼から涙液を除去するポンプ作用を止める。従って、涙液からの過酸化水素/亜塩素酸ナトリウムレベルの急速な減少は、涙管へと被験者の涙液が失われことに起因するのではないであろう。むしろその減少は、ヒト被験者の涙液中のカタラーゼおよ
びスーパーオキシドジスムターゼ酵素の存在に起因すると考えられる。液滴が患者の眼に置かれた時、カタラーゼおよび他の酵素が過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム製剤の迅速な酵素分解を開始する。それによって、およそ3分の間に処理を行った被験者の涙液中のレベルは、ほとんど検出不能なレベルになる。この実験結果は、どちらかといえば、眼内への滴下時に、過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム混合物が、最終産物が水、酸素、塩化ナトリウムである自己分解性保存料のように振る舞うことを示している。
【0106】
さらに、下に示すように、滴下後1時間の期間にわたって処理を行った眼の症状を、灼熱感、刺すような感覚、痛み、赤み、流涙、痒み、光視症、羞明、分泌物、および異物感について観察し、評価した。
【0107】
【表14】

【0108】
上記の結果は、刺激、炎症または他のいかなる有害作用の徴候も認めず、過酸化水素/亜塩素酸ナトリウム混合物が人の眼において非常に良好な耐用性を示すことを示している。
【0109】
本発明がいくつかの実施例および具体的な実施形態を参照して以上に述べられたことは、当業者に理解されるであろう。しかし、本発明が実施される実施例および実施形態はこれらだけではない。実際に、上述の実施例および実施形態に様々な変更が、目的とする精神および本発明の範囲から逸脱することなく行われるであろう。従って、本実施形態は、全ての点において、制限するものではなく、例示的なものとして考えられる。当該の全ての変更は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用製品に使用する抗菌保存料であって、前記保存料が約0.005重量%から約0.20重量%の亜塩素酸化合物および約0.005重量%から約0.05重量%の過酸化化合物を含み、前記保存料が二酸化塩素を生成せず、かつ前記保存料がpH約6.0から約8.8の間の範囲である、抗菌保存料。
【請求項2】
前記亜塩素酸化合物が亜塩素酸金属である、請求項1に記載の保存料。
【請求項3】
前記金属がナトリウムである、請求項2に記載の保存料。
【請求項4】
前記金属がカリウム、カルシウム、およびマグネシウムから成る群から選択される、請求項2に記載の保存料。
【請求項5】
前記過酸化化合物が過酸化水素である、請求項1に記載の保存料。
【請求項6】
前記眼科用製品が人工涙液溶液である、請求項1に記載の保存料。
【請求項7】
前記眼科用製品がコンタクトレンズ殺菌液である、請求項1に記載の保存料。
【請求項8】
前記眼科用製品がコンタクトレンズ洗浄剤液である、請求項1に記載の保存料。
【請求項9】
前記洗浄剤液が生物の眼に着用されたコンタクトレンズに直接施用される、請求項8に記載の保存料。
【請求項10】
生物の眼に直接施用される抗菌眼科用配合であって、前記配合が約0.005重量%から約0.20重量%の亜塩素酸化合物および約0.005重量%から約0.05重量%の過酸化化合物を含み、前記配合が二酸化塩素を生成せず、かつ前記配合がpH約6.0から約8.8の間の範囲である、抗菌眼科用配合。
【請求項11】
前記亜塩素酸化合物が亜塩素酸金属である、請求項10に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項12】
前記金属がナトリウムである、請求項11に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項13】
前記金属がカリウム、カルシウム、およびマグネシウムから成る群から選択される、請求項11に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項14】
前記過酸化化合物が過酸化水素である、請求項10に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項15】
非イオン性ポリマー潤滑剤、アニオン性ポリマー潤滑剤、およびそれらの組合せから成る群から選択される潤滑剤をさらに含む、請求項10に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項16】
ブロック重合体ベースの界面活性剤をさらに含む、請求項15に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項17】
前記眼科用配合が、
潤滑剤 0.05重量%〜0.3重量%と;
ホウ酸 0.15重量%〜0.3重量%と;
塩化ナトリウム 0.50重量%〜0.8重量%と;
界面活性剤 0.05重量%〜0.3重量%と;
HClまたはNaOH pH調整用と;
精製水 所定体積まで十分量
とをさらに含む、請求項15に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項18】
約0.001重量%から約0.50重量%のヒアルロン酸ナトリウムをさらに含む、請求項17に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項19】
前記眼科用配合が、
潤滑剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
リン酸2水素ナトリウム 0.10重量%〜0.25重量%と;
リン酸水素2ナトリウム 0.10重量%〜0.40重量%と;
塩化ナトリウム 0.50重量%〜0.80重量%と;
界面活性剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
HClまたはNaOH pH調整用と;
精製水 所定体積まで十分量
とをさらに含む、請求項15に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項20】
約0.001重量%から約0.50重量%のヒアルロン酸ナトリウムをさらに含む、請求項19に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項21】
前記配合が眼の乾燥を治療するために眼に施用される、請求項10に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項22】
前記配合が眼の感染症を治療するために眼に施用される、請求項10に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項23】
前記感染症が細菌角膜炎によって引き起こされる、請求項22に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項24】
前記感染症がウイルスによって引き起こされる、請求項22に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項25】
前記感染症が糸状菌によって引き起こされる、請求項22に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項26】
前記配合が、眼に装着されたコンタクトレンズを洗浄をするために眼に施用される、請求項10に記載の抗菌眼科用配合。
【請求項27】
生物の眼の乾燥の治療方法であって、前記方法が、抗菌眼科用配合を眼に施用するステップを含み、前記配合が約0.005重量%から約0.20重量%の亜塩素酸化合物および約0.005重量%から約0.05重量%の過酸化化合物を含み、前記配合が二酸化塩素を生成せず、かつ前記配合がpH約6.0から8.8の間の範囲である方法。
【請求項28】
前記眼科用配合の前記亜塩素酸化合物が亜塩素酸金属である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記金属がナトリウムである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記金属がカリウム、カルシウム、およびマグネシウムから成る群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記眼科用配合の前記過酸化化合物が過酸化水素である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記眼科用配合が非イオン性ポリマー潤滑剤、アニオン性ポリマー潤滑剤、およびそれらの組合せから成る群から選択される潤滑剤をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記眼科用配合がブロック重合体ベースの界面活性剤をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記眼科用配合が、
潤滑剤 0.05重量%〜0.3重量%と;
ホウ酸 0.15重量%〜0.3重量%と;
塩化ナトリウム 0.50重量%〜0.8重量%と;
界面活性剤 0.05重量%〜0.3重量%と;
HClまたはNaOH pH調整用と;
精製水 所定体積まで十分量
とをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記眼科用配合が約0.001重量%から約0.50重量%のヒアルロン酸ナトリウムをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記眼科用配合が、
潤滑剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
リン酸2水素ナトリウム 0.10重量%〜0.25重量%と;
リン酸水素2ナトリウム 0.10重量%〜0.40重量%と;
塩化ナトリウム 0.50重量%〜0.80重量%と;
界面活性剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
HClまたはNaOH pH調整用と;
精製水 所定体積まで十分量
とをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記眼科用配合が約0.001重量%から約0.50重量%のヒアルロン酸ナトリウムをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
生物の眼に装着されたコンタクトレンズの洗浄方法であって、前記方法が、抗菌眼科用配合をレンズ上に施用するステップを含み、前記配合が約0.005重量%から約0.20重量%の亜塩素酸化合物および約0.005重量%から約0.05重量%の過酸化化合物を含み、前記配合が二酸化塩素を生成せず、かつ前記配合がpH約6.0から8.8の間の範囲である方法。
【請求項39】
前記眼科用配合の前記亜塩素酸化合物が亜塩素酸金属である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記金属がナトリウムである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記金属がカリウム、カルシウム、およびマグネシウムから成る群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記眼科用配合の前記過酸化化合物が過酸化水素である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記眼科用配合が非イオン性ポリマー潤滑剤、アニオン性ポリマー潤滑剤、およびそれらの組合せから成る群から選択される潤滑剤をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記眼科用配合が、亜塩素酸塩および過酸化水素が酸素の生成に利用可能になる速度を制限する持続的送達成分をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記持続的送達成分がポリマーマトリクスである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記持続的送達成分がリポソームである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記持続的送達成分が軟膏である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記持続的送達成分が、セルロースエステル、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエステルの塩、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸‐酢酸エチルコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、リン脂質、中性電荷を持つリン脂質、負電荷を持つリン脂質、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、およびそれらのナトリウム塩から成る群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記持続的送達成分が、製剤の1重量パーセントから20重量パーセントを構成する、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記眼科用配合が、
亜塩素酸ナトリウム 0.005重量%〜0.200重量%と;
過酸化水素 0.005重量%〜0.050重量%と;
HPMC 0.05重量%〜0.20重量%と;
リン酸2水素ナトリウム一水和物 0.01重量%〜0.30重量%と;
HClまたはNaOH pH7.4に調整
精製水 所定体積まで十分量
とをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記眼科用配合がブロック重合体ベースの界面活性剤をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項52】
前記眼科用配合が
潤滑剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
ホウ酸 0.15重量%〜0.30重量%と;
塩化ナトリウム 0.50重量%〜0.80重量%と;
界面活性剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
HClまたはNaOH pH調整用と;
精製水 所定体積まで十分量
とをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記眼科用配合が約0.001重量%から約0.50重量%のヒアルロン酸ナトリウムをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記眼科用配合が、
潤滑剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
リン酸2水素ナトリウム 0.10重量%〜0.25重量%と;
リン酸水素2ナトリウム 0.10重量%〜0.40重量%と;
塩化ナトリウム 0.50重量%〜0.80重量%と;
界面活性剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
HClまたはNaOH pH調整用と;
精製水 所定体積まで十分量
とをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記眼科用配合が約0.001重量%から約0.50重量%のヒアルロン酸ナトリウムをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
皮膚科用製品に使用する抗菌保存料であって、前記保存料が約0.005重量%から約0.20重量%の亜塩素酸化合物および約0.005重量%から約0.05重量%の過酸化化合物を含み、前記保存料が二酸化塩素を生成せず、かつ前記保存料がpH約5.0から約8.8の間の範囲である、抗菌保存料。
【請求項57】
前記亜塩素酸化合物が亜塩素酸金属である、請求項56に記載の保存料。
【請求項58】
前記金属がナトリウムである、請求項57に記載の保存料。
【請求項59】
前記金属がカリウム、カルシウム、およびマグネシウムから成る群から選択される、請求項57に記載の保存料。
【請求項60】
前記過酸化化合物が過酸化水素である、請求項56に記載の保存料。
【請求項61】
前記皮膚科用製品が褥瘡ゲルまたはクリームである、請求項56に記載の保存料。
【請求項62】
皮膚症状の治療方法であって、前記方法が、抗菌皮膚科用配合を皮膚患部に施用するステップを含み、前記配合が約0.005重量%から約0.20重量%の亜塩素酸化合物および約0.005重量%から約0.05重量%の過酸化化合物を含み、前記配合が二酸化塩素を生成せず、かつ前記配合がpH約5.0から約8.8の間の範囲である方法。
【請求項63】
前記皮膚科用配合の前記亜塩素酸化合物が亜塩素酸金属である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記金属がナトリウムである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記金属がカリウム、カルシウム、およびマグネシウムから成る群から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記皮膚科用配合の前記過酸化化合物が過酸化水素である、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記皮膚科用配合が褥瘡ゲルまたはクリームである、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
前記皮膚科用配合が
潤滑剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
ホウ酸 0.15重量%〜0.30重量%と;
塩化ナトリウム 0.50重量%〜0.80重量%と;
界面活性剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
HClまたはNaOH pH調整用と;
精製水 所定体積まで十分量
とをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記皮膚科用配合が、
潤滑剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
リン酸2水素ナトリウム 0.10重量%〜0.25重量%と;
リン酸水素2ナトリウム 0.10重量%〜0.40重量%と;
塩化ナトリウム 0.50重量%〜0.80重量%と;
界面活性剤 0.05重量%〜0.30重量%と;
HClまたはNaOH pH調整用と;
精製水 所定体積まで十分量
とをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記皮膚科用配合が、亜塩素酸塩および過酸化水素が酸素の生成に利用可能になる速度を制限する持続的送達成分をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項71】
前記持続的送達成分がポリマーマトリクスを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記持続的送達成分がリポソームを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記持続的送達成分が軟膏を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
前記持続的送達成分が、セルロースエステル、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエステルの塩、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸‐酢酸エチルコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、リン脂質、中性電荷を持つリン脂質、負電荷を持つリン脂質、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、およびそれらのナトリウム塩から成る群から選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
前記持続的送達成分が、製剤の1重量パーセントから20重量パーセントを構成する、請求項70に記載の方法
【請求項76】
前記眼科用配合が、
亜塩素酸ナトリウム 0.005重量%〜0.200重量%と;
過酸化水素 0.005重量%〜0.050重量%と;
HPMC 0.05重量%〜0.20重量%と;
リン酸2水素ナトリウム一水和物 0.01重量%〜0.30重量%と;
HClまたはNaOH pH7.4に調整
精製水 所定体積まで十分量
とをさらに含む、請求項73に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2010−511707(P2010−511707A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540253(P2009−540253)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/024815
【国際公開番号】WO2008/070063
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(504353291)エス.ケイ.ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】S.K.PHARMACEUTICALS,INC.
【Fターム(参考)】