説明

亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器

【課題】 陰極が充放電サイクルにおける大きな能力を有する、亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器を提供する。
【解決手段】 本発明による電気化学発生器は、再充電の際の活性物質内での亜鉛の形成部位の数を増加させるように、より良い負荷の排水によって実現された亜鉛陰極を有するが、それは、活物質内に伝導性粉末の形で分散された二次的コレクタの実施によって得られ、有利なようには、それに、高多孔性で大きな展開面積の3次元構造タイプの主要媒体−コレクタを組み合わせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学発生器の分野、より厳密には蓄電池のそれに関するものである。
【0002】
それは特に亜鉛陽極の発生器に関するものであり、高レベルの亜鉛電極の環化性を得るためのものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
亜鉛電極は長い間、その高い性能のために当業者の関心をひいてきた。それは、様々な二次的電気化学システム:亜鉛−空気、ニッケル−亜鉛、銀−亜鉛、臭素−亜鉛、塩素−亜鉛発生器において実施された。
【0004】
亜鉛は、実際のところ、非常に負である酸化還元ポテンシャルを有する、とりわけ魅力的な電極活性材料を構成する。亜鉛電極は、820Ah/kgの理論比容積を提供する。それによって、ニッケル−亜鉛の対については334Wh/kgの、亜鉛−酸素の対については1,320Wh/kgの理論比エネルギーを得ることができる。Ni−Zn蓄電池に関しては、実際比エネルギーは、通常、約50から80Wh/kgの間にあり、およそ25から30Wh/kgであるPb−PbO2の対のそれに特に、比較されることができる。
【0005】
亜鉛の利点として、まず環境(製造、使用、廃棄物)に対する非毒性、またアルカリ性蓄電池の他の陽極材料(カドミウムおよび金属水素化物)のそれよりも非常に低い、わずかなコストについて指摘することもまた適当である。
【0006】
しかしながら、そして相変わらず、アルカリ性蓄電池に関して、亜鉛電極を使用する再充電可能なシステムの産業開発は、環化における寿命の不十分さという大きな困難に遭遇した。
【0007】
したがって、アルカリ性電解質の二次的システムでは、多くの場合樹脂状結晶または粉末状である、もとの形態に対して修正された構造の付着物の形成へと、その酸化物と水酸化物そして亜鉛酸塩から亜鉛電極の再充電は導くのである。この現象は、さらに、電流密度の非常に広い領域に介入する。
【0008】
樹脂状結晶タイプの付着物は、素早く、隔離板を通して亜鉛の圧力へと、および、反対の極の電極によって、例えばNi−Znの場合はニッケルの陰極によって、ショートへと導く。
【0009】
粉末タイプの付着物については、多くの場合、活性物質の媒体への粘着が不十分であるために、満足できる作動に適した電極の再構成を可能にする性質ではない。
【0010】
また、再充電の際の、酸化物、水酸化物および亜鉛酸塩の陽極レベルでの亜鉛への還元は、前記電極の形態の変化によってもまた特徴づけられる。実際、蓄電池の作動態様によると、とくに陽極の活物質の不利な高密化となって現れることが可能である、その形成の際の亜鉛の一定ではない再分配現象による、様々なタイプの陽極の形の修正が観察される。
【0011】
実現可能な環の数を数十個のみ−これらのシステムに経済的利益を付与するには不十分なレベル−にとどめる、これらの重いハンディキャップは、充電−放電の環の数を増加させるために、再充電の付着の特徴を改善するという目的をもつ、多数の作業の実現へと導いたのである。
【0012】
可能な限り長く、樹脂状結晶の圧力および亜鉛の一定ではない再分配を同時に遅らせるために、非常に変化に富んだ方法が探求された。これらの中で、次のものを指摘することが特に適している:
・とくに亜鉛酸塩の溶解性を限定するための、電解質または陽極活性物質に加えられている添加剤の使用;
・樹脂状結晶の形成を減少させることおよび粉末状付着(電解質および/または亜鉛電極の分散した形での循環)を避けることを目指す力学的方法の使用;
・充電のパラメータ(強度、電圧、…)の制御、パルス電流の使用;
・さらにまたは、樹脂状結晶の圧力の結果を遅らせるための、樹脂状結晶の形成に耐える、とくに多孔性または交換膜タイプの隔離板の使用
これらの様々な技術は個々にまたは組み合わせて実施することができる。
【0013】
それらのプラスの効果はいずれにせよ限定されており、亜鉛電極の二次的発生器に、とりわけ、理論的には非常に魅力的であるにもかかわらず、Ni−Znの対に、何らかの経済的発展性を付与するには不十分であることが明らかである。
【0014】
これらの技術は、また、いくつかに関しては、不利なマイナスの効果:蓄電池の内部抵抗の上昇、陰極の寿命の低下、とくにいくつかの添加剤の使用によるもの;また、作動の力学的複雑さ、容積および質量、コストの増加、…を有する。
【0015】
搭載されたエネルギーおよび再充電可能なシステムの両方における、しだいに大きくなる要求によって、例えばそれが電気または携帯電子の機器の電源のため、自動車の増加する電子設備のそれのため、あるいは電気またはハイブリッドの自動車の推進のためであれ、次の長所に同時に応える方法を明らかにすることが課される:
・質量および容積の高性能;
・現在のアルカリ性二次的システムの他のタイプに比較してわずかなコスト;
・毒性がないこと。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、幅広い範囲の作動状態における数百の環の実現を可能にする、均質で樹脂状結晶ではない付着を獲得することによって、亜鉛電極の再充電に対して、新しく、独創的で満足のできる答えをもたらすことである。
【0017】
獲得された特徴は、充電のパーコレーションの改善によって活性物質の使用を増加させ、充電−放電の収量を増加させる目的で実施される手段の結果である。
【0018】
本発明によると、亜鉛電極の環化性の顕著な改善は、陽極活性物質内への、電解質環境において安定しており、強い水素過電圧を有する伝導性材料の細かい粒子の注入によって得られる。
【0019】
本発明の枠内で、亜鉛電極の環化性を強化するために、様々な補足的方法、とりわけ、内部で圧縮プラスチック加工電極が実現される、多孔性の高い、3次元の金属または金属被覆された構造タイプの、大きな展開面積のコレクタの使用が提案されている。
【0020】
陽極活物質内への反極性物質の付加によって、本発明の枠内におけるこれらの有効な補足的方法の1つが構成される。
【0021】
一般的に本発明は、単独で、または亜鉛電極の環化性を改善することを目指す周知の技術の全体または一部との組み合わせにおいて、実施されることが可能である。
【0022】
本発明を通して、再充電の亜鉛の付着の質を改善するためには、陽極内で電荷の良好な排水をしやすくすることが重要であることを示した。実際、放電された状態では、電荷の活性物質は本質的に、ほとんど伝導性のない酸化亜鉛(ZnO)によって構成される。
【0023】
活性物質内での電荷の不充分な排水は、活物質全体の限られたパーセンテージのみを有する部位への、再充電の際に亜鉛の付着の形成を助長することになる。したがって、陽極物質の総展開面積に対して限られた総面積の部位から、この亜鉛の増大が行われるのである。この現象は多くの場合、付着の樹脂状結晶の特徴となって現れる。付着の形成部位を倍増することによって、より大きな面積に亜鉛の同じ総量の付着を実現することに達するとき、このメカニズムが大幅に減少されることが可能であることが理解される。したがって、付着の厚みがあらゆる点で減少でき、例えば樹脂状結晶タイプのような、付属物の形で表われないためには、これらの部位の数を大幅に増加させることが適切である。
【0024】
活物質内での二次的コレクタの役割を果たす、電極内の伝導性粒子の分散の使用を通して、この機能に本発明は向けられているのである。
【0025】
本発明は、有利なようには、しかし非限定的に、活性物質の使用収率を同様に増加させるのに有効に貢献する多孔性の高い3次元構造の、媒体および陽極主要コレクタとしての使用に結びつけられる。
【0026】
本発明によると、陽極活物質内に、電気的に伝導性である、分散した、ある量の細かい粉を注入することが提案され、後者はこの特徴によって、二次的、付加的であり、活性物質の中に分散されたコレクタの役割を果たすことができる。この伝導性材料の粒子は、このようにして、主要コレクタ(電極媒体)と、前記主要コレクタと直接接触にない活性物質の粒子との間の負荷の集荷リレーの役目を果たす。本発明による伝導性粒子の分散は、したがって、活物質における、とりわけパーコレーションによる負荷の転送に寄与する。
【0027】
ここで、電極の活物質に混合された黒鉛の微粒子の使用が、亜鉛電極の環化性にもたらされる改良として、英国特許第2054252号に記載されていることを指摘することができる。
【0028】
Duffieldおよび協力者(Power Sources 11- International Power Sources Symposium Committee Leatherhead - Surry - 1990)は、黒鉛粒子のサイズが重要なパラメータを構成し、それが小さければ小さいほど(2から5ミクロン)電極の環化性が高いことを示した。この記事の筆者は、亜鉛の酸化種の金属亜鉛への還元が、これらの種が伝導性黒鉛によって吸着されることができる限りにおいて、より容易であることを示している。黒鉛粉末の使用へと導いた展開が、本発明の筆者によってなされたそれと異なることが見られるが、後者は、亜鉛の酸化種の吸着ではなく、活物質のより良い使用のために活物質の全体における電荷の排水の強化を追及するものである。
【0029】
また、小さい寸法の黒鉛粒子の使用は、いくつかの大きな欠点を有する。微粒子の場合、軽視できないコストの問題がもちあがることが可能である。推奨されているような炭素の添加(英国特許第2054252号によると、活物質の1から50%の割合)はまた、これらの粉末の固められた低い密度のため電極の容積の損失を招く。最後に、そして筆者が示すように、黒鉛粉末の使用によって、作動の最中に、注入された黒鉛の量とともに増大する、陽極の大きな膨張が引き起こされる。
【0030】
これらの欠点を解消し、その目的に完全に応えるために、本発明の筆者は、固められた密度の高い、そして、高い収量の亜鉛電極の充電を可能にし、亜鉛の自動放電を制限するのに十分に大きな水素発散過電圧も提供する、ミクロン、サブミクロンのサイズの粒子の形をしている、アルカリ性環境において化学的に安定しており、非常に伝導性である材料を特定した。
【0031】
本発明において非限定的には、この機能を満たすために、好適に使用される材料は、伝導性セラミックである。それは、単一または二重で、単独またはハフニウム、マグネシウム、ニオブ、チタン、バナジウムなどの様々な金属との組み合わせでの、ホウ化物、炭化物、窒化物、ケイ化物の中から選択されることができる。したがって、有利なようには、窒化および/または炭化ハフニウム、および/または炭化および/または窒化および/またはケイ化マグネシウム、および/または炭化および/または窒化ニオブ、および/または炭化および/または窒化および/またはケイ化チタン、および/または窒化バナジウムであることができる。また、nが4から10の間に含まれるときの、一般式Tin2n-1の亜酸化チタンのようなセラミック材料を使用することも可能である。これらのセラミックはどれでも、以下に示される本質的特徴を満たす限り、本発明の枠内での使用に採用することができる:伝導性であり、蓄電池内で化学的に不活性であり、強い水素過電圧を示す。
【0032】
その役割を有効に満たすため、使用される伝導性粉末が細かく、活物質において可能な限り均質に分散されることが適切である。
【0033】
活物質内に伝導性不活性粉末の分散を含む、本発明による亜鉛電極は、とりわけ鋼板、穿孔され、広げられた鋼板、格子、布地、…などの様々なタイプの媒体を使用することができる。
【0034】
しかしながら、本発明の枠内で提案され、そして、同じ論理から生じる補足的アプローチによると、活物質内に分散された伝導性粉末の使用によって得られる効果を有効に補足する性質の媒体を使用することが特に有利であるように思われる。
【0035】
本発明によると、液相または乾燥相において、多孔性の高い3次元金属媒体を、とりわけ、酸化亜鉛粉末、環境内で化学的に不活性な伝導性粒子の分散、プラスチック加工剤および場合によっては懸濁剤を含むペーストで、ペースト塗り、コーティング、またはあらゆる手段によって充填することによって、亜鉛電極を実現することが提案される。
【0036】
金属の、または金属化された、多孔性の高い3次元構造とは、ここでは、3次元構成の繊維または網目の密な網の局面を提供し、互いにそして構造の外部と通じ合う複数の開かれたスペースを規定する、ムース、フェルトまたは開いた高い多孔性に織られたタイプの、大きな展開面積の構造を示す。
【0037】
ムースは、多孔性(80%を超え、約98%に達することが可能である)が高く、蓋取りによって開かれる多孔性である、網状の歯槽構造であり、そこでは、網の網目は全体において、あるいは少なくとも大きな割合において、互いに通じ合う。
【0038】
フェルトは、不織の(しかしながら概して、その中で、構成される<層>の平面内にほぼ位置付けられた)繊維の無作為なもつれであり、互いに通じ合う、変化に富んだ形および寸法の繊維間のスペースをその中に規定する。その繊維は、結合剤によって接着されること、あるいはされないことも可能である。
【0039】
織られたものは、織られたまたは編まれた、絡み合った糸または繊維の組み合わせによって構成される構造である。それは、特に、例えばRaschelタイプの織機が実現可能であるように、間隔をあけると同時に互いに接続してそれを保持する糸の編みによって結合された、2つの織られた外部面で構成される時、厚く複雑な構造の形であることが可能である。
【0040】
これらの様々な3次元構造は、−電極の厚みおよび媒体の内部開口のサイズに関する寸法状の特徴が適切である限りにおいて−、活性物質内において電気集荷の密な網を構成することができる。活性物質は、本質的に平らな媒体の表面に更に従来のように付着されるかわりに、その建築的組織の開かれた内部スペース、したがって、媒体の内部多孔性の全体を満たし、媒体の展開面積の増加の結果、主要コレクタと活性物質の間の直接接触面積を増加させることが可能である。この形状によってさらに、電極の全体内で、活性物質のあらゆる粒子と、金属コレクタに隣接する網目または繊維の最も近い点との間の最大距離を減少させることが可能である。このようにして、活物質のあらゆる点と媒体または主要コレクタとの間に“緊密な”接触を実現する。この実現態様は、活性物質の使用収率を増加させ、再充電時に、電極の全容積内の亜鉛付着の形成部位を倍増させることを可能にする。
【0041】
電極の媒体および主要コレクタを構成するための、多孔性の高い3次元構造の使用によって、活性物質の保持能力を最適化し、したがって、この特徴によって、亜鉛陽極の寿命の増加およびその初期容量の保存に寄与することが可能になることを付け加える。
【0042】
本発明の枠内に記載された2つのアプローチ、つまり、まず活物質内で二次的コレクタの役割を果たす伝導性粉末の分散の使用、そして、高い多孔性および大きな展開面積の3次元の主要媒体−コレクタの必要な場合の補足的使用は、その組み合わされた使用を通して、その全面的な効果をもたらす。しかしながら、上述されたように、伝導性粉末の分散をあらゆるタイプの電極媒体と組み合わせることが可能である。
【0043】
本発明による亜鉛電極を内蔵する二次的発生器は、充電−放電の環の大きな数を許容するのに適している。したがって、Ni−Zn蓄電池は、例えばCからC/5の状態(1から5時間の充電および放電)、75から100%に達することのできる亜鉛電極の放電深度での、数百の環を許容することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の説明によって、本発明の非限定的な、本発明の実施をより良く理解することができるであろう。
【0045】
角柱の形状で非気密性のニッケル−亜鉛蓄電池の実現のために、好ましくは、しかし本発明において限定的ではなく、陽極の主要媒体およびコレクタとして、網状の歯槽ムースまたはフェルト(不織の)を使用する。
【0046】
これらの構造は、これらの構成要素の電気的、および二次的には機械的品質のために、とりわけ電気化学的に付着可能なあらゆる金属または合金で、そして好ましくは、しかし本発明において限定的ではなく、ニッケルおよび/または銅で実現することができる。それらを、例えば、まずニッケルまたは銅と、そして亜鉛または電解質との間の直接接触を避けることを可能にする、強い水素過電圧の金属または合金の気密性保護層で被覆することが有益であることが可能である。それは、一方では、腐食および、特にニッケルと接触している場合の亜鉛の自己放電の恐れ、他方では、特に電解質と接触している銅の腐食の恐れをを取り除くためである。媒体の保護被覆層は、とりわけ、銀および/またはビスマスおよび/またはカドミウムおよび/または錫および/または鉛で実現されることができる。この被覆は電解質、化学的、真空または特に噴霧による付着によって行われることが可能である。
【0047】
コレクタもまた、全体的にこれらの金属のいずれかによって実現されることができるが、場合によっては、重量、伝導性またはコストの面で、陽極に不利益を与える恐れがある。
【0048】
ムースタイプのコレクタの使用の場合、ムースは、有利なようには、40から110ppl(インチあたりの孔)つまり、延べセンチメートルあたりの面積に約15から45の孔を有する水準に位置する。最も開かれた製品は、活物質での構造の充填の際、より容易な使用となる;反対に、最も小さい孔の製品は、より密なコレクタ網を、したがって、まず、亜鉛粉末とのより大きな直接接触面積、および、この直接接触を受けない亜鉛粒子との最も小さな最大距離、ついには、活性物質の強化された力学的保持能力を提供する。
【0049】
主要コレクタとして金属不織布を使用する場合、有利なようには、多孔性が95%以上であり、本質的に50から300ミクロンの間に含まれる繊維間の開口を有する製品を使用することができる。
【0050】
使用されるコレクタは有利なようには、見かけ面積の1平方メートルあたり150から650グラム、好ましくは200から450g/m2の密度を有する、銅またはニッケルで構成される。その厚みは、有益には0.9から5.0ミリメートル、好ましくは1.3から3.0ミリメートルの間に含まれる。
【0051】
それらは、好ましくは鉛または銀の保護層で被覆されている。後者のために採用される厚みは、有利なようには、有効な保護の全体的な被覆を得るために必要最小の閾に対応する。この閾を超えると、あらゆる余分の厚みは、質量における、および二次的には容積における容量において不利益となる。
【0052】
陽極活物質は、有利なようには、以下の要素を含むペーストの形で調製される:
・酸化亜鉛の粉末
・二次的コレクタを形成する伝導性粒子
・プラスチック加工剤
・懸濁剤
再充電の亜鉛の付着が行われる面積を最大化するために、見かけ面積に対して大きな展開面積を有する酸化亜鉛粉末を選択することが有利に思われる。
【0053】
本発明による伝導性粒子は、伝導性セラミックの中から、全体または部分的に、有利なように選択されることができ、伝導性、水素過電圧レベル、密度、電気化学システムに対する中性およびコストの面で追求される特徴に全面的に応える窒化チタンおよび/または窒化ハフニウムでとくに構成されることができる。炭化チタンおよび/または炭化ハフニウム、並びに亜酸化チタンもまた、使用されることが可能である。
【0054】
有利なようには、これらの粒子に関して、本質的に約10ミクロン未満、とりわけサブミクロンの粒度、および酸化亜鉛に対する、有益には1から20%の間に含まれる、好ましくは3から17%の間の重量濃度を採用する。低い濃度は大多数の場合において、望まれる効果を得るには不十分であることが明らかであり、高い濃度レベルは多くの場合、さらなる格別な利点をもたらさず、その一方で、電極には質量および容積の容量において、したがって、蓄電池に対して質量および容積エネルギーに関して不利益をもたらす。
【0055】
論理的には、陽極の環化における同じ能力について、伝導性粒子の濃度は主要コレクタの展開面積が小さいだけいっそう大きくなければならないことに注意することが適切である。例えば電極の同じ厚みについて、穿孔されたまたは広げられた鋼板タイプのコレクタでは、濃度は、金属ムースでの場合に対して大きく、同様に、延べセンチメートルあたり15個の孔を有するムースの場合でも、延べセンチメートルあたり45個の孔のムースの場合よりも大きい。
【0056】
フィブリル化の効果によって、主要コレクタ内での活物質の粘着に寄与することがその機能であるプラスチック加工剤は、有利なようには、特に60%の水生懸濁の形で注入されるP.T.F.E.であることができ、電極におけるP.T.F.E.濃度は、活性物質の重量に対して約2から6%の間に確立される。また、例えば、ポリビニルアルコールまたはポリ酸化エチレンを使用することもできる。
【0057】
使用される懸濁剤は、ペーストの形で実現される活物質の場合、好ましくは、水、またはアルコール、または両者の混合である。使用される媒体のタイプおよびそれへのペーストの注入態様によって、最適な流動性、あるいは粘度を選択する。網状ムースまたは不織布のタイプの媒体を使用する場合、最適性能を得るためには、活物質で媒体の多孔性を完全に充填することが適切である。
【0058】
本発明による3次元の金属媒体内に一旦、注入されると、活物質は乾燥されなければならず、このように構成された電極は、有利なようには圧縮されなければならない。この圧縮は活物質の周辺および内部で媒体の網または繊維を圧縮することで、電極によりよい力学的整合性を付与することを目的とする。それにより、よりよい質量性能を得ることもまた可能である。
【0059】
この圧縮はしかしながら、欠陥のある作動をもたらす電極の多孔性の閉塞に達することのないように、制御され、限定された圧力下で行われなければならない。鉛つきのまたは銀めっきされたニッケルのムースの媒体電極については、1平方センチメートルあたり約40から120kgに含まれる圧縮圧力を使用することが有利である。本発明によると、電極の厚みを圧縮前の初期の厚みの3分の1と半分の間、つまり、多くの場合約0.5と1.5ミリメートルの間である最終の厚みにすることが慣例であり、有利である。
【0060】
本発明の枠内において、有利なようには、活物質の基本構成要素に、様々な機能を有する添加剤を加えることができる。
【0061】
例えば、酸化ビスマスBi23、および/または酸化カドミウムCdO、および/または酸化鉛PbOを、単独または組み合わせて、酸化亜鉛に対して約3から15重量%の割合で、加えることができる。
【0062】
粉末状亜鉛もまた、酸化亜鉛に混合されることができる。
【0063】
やはり本発明の枠から逸脱することなく、水酸化ニッケルNi(OH)2などの反極性物質が、ZnOに対して2から7重量%の割合で、蓄電池Ni−Zn内に注入されることが可能である。
【0064】
亜鉛酸塩の溶解性を減少させるために、ZnOに対しておよそ5から35重量%の割合で、活物質内に、例えば水酸化カルシウムCa(OH)2などのアルカリ土類水酸化物を加えることもまた有利である。
【0065】
亜鉛電極の環化を促進するための別の添加剤もまた、電解質内に注入されることができる。後者は、有利なようには、濃度10N以下の水酸化カリウムKOHである。それにもたらすことのできる添加剤は、とりわけ、亜鉛電極の発生器での使用が多く文献に記載されている、亜鉛酸塩、フッ化物、炭酸塩である。
【0066】
ニッケル−亜鉛の蓄電池の使用に関しては、考えられる応用の態様に応じて、本発明による亜鉛電極を様々なタイプのニッケル陰極:浸透または、焼結された媒体あるいは多孔性の高い3次元媒体(ムース、織られたものおよび不織のもの)のペースト塗りによって実現された電極、またはさらには、ポケット電極に組み合わせることができる。
【0067】
角柱の蓄電池での、高多孔性3次元媒体においてプラスチック加工されてペースト塗りされたニッケル電極の場合、その媒体−コレクタ内での活性物質の良好な保持と陰極の容量の良好なレベルとを同時に促進するために、フランス特許第9202873号(2688235)にその製造方法が記載されているような、不規則な形の、固められた高い密度の水酸化ニッケルを優先する。
【0068】
本発明の非限定的な、Ni−Zn蓄電池の可能な一つの実現態様によると、反対の極性の電極の間に2枚の隔離板の組み合わせを使用する。1枚は、Hoescht Celanese社によって“Celgard”の商標のもと提案されているそれのような微孔性の膜である。もう一枚は、Carl Freudenberg社の製品“FS2115”のような、ポリアミドまたはポリプロピレンの不織の隔離板である。
【0069】
当然、また前述のことから広く起因するように、本発明は、例として記載された特殊な実現態様に限定されるものではない。本発明は、与えられた例に限定されないが、すべての変型を包括するものである。
【0070】
本発明によると、幅広い範囲の作動状態における数百の環の実現を可能にする、均質で樹脂状結晶ではない付着を獲得することによって、亜鉛電極の再充電に対して、充電のパーコレーションの改善によって活性物質の使用を増加させ、充電−放電の収量を増加させることができる。
【0071】
また、本発明によると、陽極活性物質内への、電解質環境において安定しており、強い水素過電圧を有する伝導性材料の細かい粒子の注入により、亜鉛電極の環化性の顕著な改善を図ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器であって、
亜鉛陰極の活物質が、電気的に伝導性で発生器内において化学的に不活性であり、強い水素発散過電圧の材料の細かい粉末の分散を封じ込め、
該活物質内に分散された伝導性の細かい粉末が、伝導性セラミックであり、少なくとも部分的に、
窒化および/または炭化ハフニウム、および/または炭化および/または窒化および/またはケイ化マグネシウム、および/または炭化および/または窒化ニオブ、および/または炭化および/または窒化および/またはケイ化チタン、および/または窒化バナジウム、あるいは、ハフニウム、マグネシウム、ニオブ、チタンまたはバナジウムの中のいずれか2つの金属の二重の炭化物または窒化物から構成され、又は、
nが4から10の間に含まれるときの、一般式Tin2n-1の亜酸化チタンから構成されることを特徴とする、亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項2】
前記伝導性の細かい粉末が、本質的に10ミクロン未満の粒度を有することを特徴とする、請求項1に記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項3】
前記伝導性の細かい粉末が、酸化亜鉛に対して1から20重量%の間に含まれる比率で活物質内に注入されることを特徴とする、請求項1に記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項4】
前記亜鉛陰極が、電気的に伝導性である材料の細かい粉末の分散を封じこめた陰極活物質を、網状ムース、フェルトまたは織られたもののタイプであり、3次元で多孔性の高い金属または金属化された陰極媒体−コレクタ内へ注入することによって実現されることを特徴とする、請求項1に記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項5】
前記陰極媒体−コレクタが、電気化学的に付着可能な、場合によっては気密性の保護層で被覆された金属または合金で実現されることを特徴とする、請求項4に記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項6】
前記陰極媒体−コレクタが、銅および/またはニッケルで実現され、強い水素過電圧の金属または合金の気密性の保護層で被覆されることを特徴とする、請求項4または5に記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項7】
前記陰極媒体−コレクタが、銅および/またはニッケルで実現され、銀および/またはビスマスおよび/またはカドミウムおよび/または錫および/または鉛の気密性の保護層で被覆されることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一つに記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項8】
前記陰極媒体−コレクタが、網状ムースであることを特徴とする、請求項4に記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項9】
前記陰極媒体−コレクタが、延べセンチメートルあたりの面積に約15から45個の間の孔を含む網状ムースであることを特徴とする、請求項4から8のいずれか一つに記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項10】
前記陰極媒体−コレクタが、保護層以外で、見かけ面積の1平方メートルあたり150と650グラムの間に含まれる密度を有することを特徴とする、請求項4に記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項11】
前記陰極媒体−コレクタが、電極の圧縮前で、0.9と5ミリメートルの間に含まれる厚みであることを特徴とする、請求項4に記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項12】
前記亜鉛陰極の活物質が、酸化亜鉛、発生器内で化学的に不活性である伝導性の分散した細かい粉末、プラスチック加工剤、懸濁剤、および場合によっては発生器の作動を改善するための添加剤を有するペースト状の媒体−コレクタ内に注入されることを特徴とする、請求項4に記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項13】
活物質の配置の後、内部の多孔性を閉塞することなく、亜鉛陰極が圧縮されることを特徴とする、請求項4から12のいずれか一つに記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項14】
活物質の配置の後、40と120kg/平方センチメートルの間に含まれる圧縮圧力のもと、亜鉛陰極が圧縮されることを特徴とする、請求項4、12または13のいずれか一つに記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項15】
前記亜鉛陰極の活物質への添加剤として、水酸化ニッケルを加えることを特徴とする、請求項1または12に記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。
【請求項16】
水酸化ニッケルが、酸化亜鉛に対して2から7重量%の割合で亜鉛陰極の活物質内に注入されることを特徴とする、請求項1、12または15のいずれか一つに記載の亜鉛陰極のアルカリ性二次的電気化学発生器。

【公開番号】特開2013−16506(P2013−16506A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200411(P2012−200411)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【分割の表示】特願2000−18767(P2000−18767)の分割
【原出願日】平成12年1月27日(2000.1.27)
【出願人】(500038606)エス.セー.ペー.エス. ソシエテ ドゥ コンセイユ エ ドゥ プロスペクティヴ シアンティフィック エス.アー. (1)
【氏名又は名称原語表記】S.C.P.S. SOCIETE DE CONSEIL ET DE PROSPECTIVE SCIENTIFIQUE S.A.
【Fターム(参考)】