説明

交換レンズおよびカメラシステム

【課題】交換レンズ側の操作部材による電源状態の変更を、機械的な接続切換機構を使用せず且つ低消費電力で行うことが可能な交換レンズおよびカメラシステムを提供する。
【解決手段】カメラボディが電源オフ状態のときには第1出力電流を、電源オン状態のときには第1出力電流より大きい第2出力電流を、それぞれカメラボディから受給可能な受電手段を備える交換レンズであって、第1消費電流で動作する第1動作状態と、第2消費電流で動作する第2動作状態と、第3消費電流で動作する第3動作状態とを有し、カメラボディが電源オフ状態のとき第1動作状態で動作すると共に、操作部材の操作が検知されたことに応じて第2動作状態になり、交換レンズが第2動作状態になったことに応じて第1信号をカメラボディに出力し、第2動作状態のとき、第2信号が入力されたことに応じて第3動作状態になる交換レンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換レンズおよびカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交換レンズとカメラボディとから成るカメラシステムにおいて、交換レンズに設けられた操作部材により、カメラボディの電源状態を変更可能なものが知られている。例えば特許文献1には、カメラから電力供給を受けている場合には交換レンズ側のスイッチとレンズMPUとを接続し、カメラからの電源供給が途絶えた場合には交換レンズ側のスイッチをカメラMPUに接続する一眼レフカメラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−186545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のように操作部材の接続を機械的に切り換える機構は、部品点数の増加や回路の複雑化および肥大化を招いてしまう。他方、操作部材の操作を検知するために交換レンズへの電源供給を継続すると、消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、カメラボディを着脱可能に取り付け可能な取付手段と、カメラボディが電源オフ状態のときには第1出力電流を、カメラボディが電源オン状態のときには第1出力電流より大きい第2出力電流を、それぞれカメラボディから受給可能な受電手段と、操作部材と、操作部材の操作を検知する検知手段と、カメラボディとの間で信号の授受が可能なレンズ側通信手段と、を備える交換レンズであって、交換レンズは、第1出力電流より小さい第1消費電流で動作する第1動作状態と、第1消費電流より大きいが第1出力電流以下である第2消費電流で動作する第2動作状態と、第1出力電流より大きいが第2出力電流以下である第3消費電流で動作する第3動作状態と、を有し、交換レンズは、カメラボディが電源オフ状態のとき、第1動作状態で動作すると共に、検知手段により操作部材の操作が検知されたことに応じて第2動作状態になり、レンズ側通信手段は、交換レンズが第2動作状態になったことに応じて、電源オン状態への状態変更指示を表す第1信号をカメラボディに出力し、交換レンズは、第2動作状態のとき、カメラボディが第1信号により電源オン状態になったことを表す第2信号がレンズ側通信手段に入力されたことに応じて第3動作状態になることを特徴とする交換レンズである。
請求項6に係る発明は、カメラボディと、カメラボディに着脱可能な交換レンズと、から成るカメラシステムであって、カメラボディは、カメラボディおよび交換レンズへの電力の供給源である電源と、カメラボディの電源オフ状態と電源オン状態とを切り替える状態切替手段と、カメラボディが電源オフ状態のときには第1出力電流を、カメラボディが電源オン状態のときには第1出力電流より大きい第2出力電流を、それぞれ交換レンズに供給可能な電力供給手段と、交換レンズとの間で信号の授受が可能なボディ側通信手段と、を備え、交換レンズは、操作部材と、操作部材の操作を検知する検知手段と、カメラボディとの間で信号の授受が可能なレンズ側通信手段と、を備え、交換レンズは、第1出力電流より小さい第1消費電流で動作する第1動作状態と、第1消費電流より大きいが第1出力電流以下である第2消費電流で動作する第2動作状態と、第1出力電流より大きいが第2出力電流以下であるの第3消費電流で動作する第3動作状態と、を有し、交換レンズは、カメラボディが電源オフ状態のとき、第1動作状態で動作すると共に、検知手段により操作部材の操作が検知されたことに応じて第2動作状態になり、レンズ側通信手段は、交換レンズが第2動作状態になったことに応じてボディ側通信手段に第1信号を出力し、状態切替手段は、第1信号の入力に応じてカメラボディを電源オン状態に切り替え、ボディ側通信手段は、電力供給手段が第2出力電流を供給可能になったことに応じてレンズ側通信手段に第2信号を出力し、交換レンズは、第2動作状態のとき、第2信号の入力に応じて第3動作状態になることを特徴とするカメラシステムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、交換レンズ側の操作部材による電源状態の変更を、機械的な接続切換機構を使用せず且つ低消費電力で行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。
【図2】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。
【図3】保持部102,202の詳細を示す模式図である。
【図4】コマンドデータ通信の例を示すタイミングチャートである。
【図5】ホットライン通信の例を示すタイミングチャートである。
【図6】送電部130および受電部230の詳細を示すブロック図である。
【図7】ボタン107の押下によりカメラボディ100を電源オン状態にする様子を示すタイミングチャートである。
【図8】ボタン207の押下によりカメラボディ100を電源オン状態にする様子を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。なお、図1では本発明に係わる機器および装置のみを示し、それ以外の機器および装置については図示と説明を省略する。カメラ1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能な交換レンズ200とから構成される。
【0009】
カメラボディ100には交換レンズ200が着脱可能に取り付けられるレンズマウント101が設けられている。カメラボディ100のレンズマウント101の近傍(レンズマウント101の内周側)の位置には、レンズマウント101の内周側に部分的に突出する状態で、接点を保持する保持部(電気的な接続部)102が設けられている。この保持部102には複数の接点が設けられている。
【0010】
また交換レンズ200には、ボディ側のレンズマウント101に対応する、カメラボディ100が着脱可能に取り付けられるレンズマウント201が設けられている。交換レンズ200のレンズマウント201の近傍(レンズマウント201の内周側)の位置には、レンズマウント201の内周側に部分的に突出する状態で、接点を保持する保持部(電気的な接続部)202が設けられている。この保持部202には複数の接点が設けられている。
【0011】
カメラボディ100に交換レンズ200が装着されると、複数の接点が設けられた保持部102が、複数の接点が設けられた保持部202に電気的に且つ物理的に接続される。両保持部102,202は、カメラボディ100から交換レンズ200への電力供給、および、カメラボディ100と交換レンズ200との信号の送受信に利用される。
【0012】
カメラボディ100内のレンズマウント101後方には、例えばCMOSやCCDなどの撮像素子104が設けられる。カメラボディ100の上方には、入力装置たるボタン107が設けられている。カメラボディ100が電源オフ状態のとき、ユーザによりボタン107が押下されると、カメラボディ100は電源オン状態になる。また、交換レンズ200の鏡筒側面にも、ボタン107と同様のボタン207が設けられている。カメラボディ100が電源オフ状態のとき、カメラボディ100に取り付けられている交換レンズ200のボタン207がユーザにより押下されると、カメラボディ100は電源オン状態になる。
【0013】
図2は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。交換レンズ200は、被写体像を結像させる結像光学系210を備える。結像光学系210は複数のレンズ210a〜210cおよび絞り211により構成されている。これら複数のレンズ210a〜210cには、被写体像のピント位置を制御するためのフォーカシングレンズ210bと、被写体像の像ぶれを補正するぶれ補正レンズ210cが含まれている。
【0014】
交換レンズ200内部には、交換レンズ200の各部の制御を司るレンズ制御部203が設けられている。レンズ制御部203は不図示のマイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。レンズ制御部203には、レンズ側第1通信部217、レンズ側第2通信部218、フォーカシングレンズ駆動部212、ぶれ補正レンズ駆動部213、絞り駆動部214、ROM215、RAM216、および受電部230が接続されている。レンズ制御部203には更に、図1に示したボタン207が接続されており、レンズ制御部203はボタン207の押下操作を検知することができる。
【0015】
レンズ側第1通信部217およびレンズ側第2通信部218は、保持部102、202の各通信接点を介して、カメラボディ100との間で信号の授受が可能に構成されている。このレンズ側第1通信部217とレンズ側第2通信部218はそれぞれ、交換レンズ200側の通信インターフェースである。レンズ制御部203はこれら通信インターフェースを使って、カメラボディ100(後述するボディ制御部103)との間で後述する各データ通信(ホットライン通信、コマンドデータ通信)を行う。受電部230は、カメラボディ100から保持部102、202の電力供給接点を介して、カメラボディ100からレンズ制御部203を含む各部の動作電流を受電する。
【0016】
フォーカシングレンズ駆動部212は例えばステッピングモータ等のアクチュエータを有し、フォーカシングレンズ駆動部212に入力された信号に応じてフォーカシングレンズ210bを駆動する。ぶれ補正レンズ駆動部213および絞り駆動部214も同様に、例えばボイスコイルモータ等のアクチュエータをそれぞれ有しており、入力信号に応じてぶれ補正レンズ210cおよび絞り211をそれぞれ駆動する。フォーカシングレンズ210bは、フォーカシングレンズ駆動部212により光軸方向に駆動される。ぶれ補正レンズ210cは、ぶれ補正レンズ駆動部213により光軸の垂直方向(X方向、Y方向)に駆動される。絞り211は、絞り駆動部214により、被写体光を通過させるための開口の大きさ(開口径)が変化するように駆動される。
【0017】
ROM215は不揮発性の記憶媒体であり、レンズ制御部203が実行する所定の制御プログラム等が予め記憶される。RAM216は揮発性の記憶媒体であり、レンズ制御部203により各種データの記憶領域として利用される。
【0018】
撮像素子104の前面には、撮像素子104の露光状態を制御するためのシャッター115と、光学的ローパスフィルターや赤外線カットフィルターを組み合わせた光学フィルター116とが設けられている。結像光学系210を透過した被写体光は、シャッター115およびフィルター116を介して撮像素子104に入射する。
【0019】
カメラボディ100内部には、カメラボディ100の各部の制御を司るボディ制御部103が設けられている。ボディ制御部103は不図示のマイクロコンピュータ、RAMおよびその周辺回路等から構成される。ボディ制御部103には図1に示したボタン107が接続されており、ボタン107の押下操作を検知することが可能である。
【0020】
ボディ制御部103には、ボディ側第1通信部117およびボディ側第2通信部118が接続されている。ボディ側第1通信部117およびボディ側第2通信部118は共に保持部102に接続されており、交換レンズ200との間で信号の授受が可能である。ボディ側第1通信部117は、保持部102に設けられた複数の通信接点を介して、レンズ側第1通信部217とデータの授受を行うことができる。同様に、ボディ側第2通信部118はレンズ側第2通信部218とデータの授受を行うことができる。換言すれば、ボディ側第1通信部117とボディ側第2通信部118はそれぞれ、ボディ側の通信インターフェースである。ボディ制御部103はこれら通信インターフェースを使って、交換レンズ200(レンズ制御部203)との間で、後述する各通信(ホットライン通信、コマンドデータ通信)を行う。
【0021】
カメラボディ100の背面には、LCDパネル等により構成される表示装置111が配置される。ボディ制御部103はこの表示装置111に対し、撮像素子104の出力に基づく被写体の画像(いわゆるスルー画)や、撮影条件等を設定するための各種のメニュー画面を表示する。
【0022】
(保持部102,202の説明)
図3は保持部102,202の詳細を示す模式図である。なお図3において保持部102がレンズマウント101の右側に配置されているのは、実際のマウント構造に倣ったものである。すなわち、本実施形態の保持部102は、カメラボディ100のレンズマウント101のマウント面よりも奥まった場所(図3においてレンズマウント101よりも右側の場所)に配置されている。同様に、保持部202がレンズマウント201の右側に配置されているのは、本実施形態の保持部202が交換レンズ200のレンズマウント201のマウント面よりも突出した場所に配置されていることを表している。保持部102と保持部202がこのように配置されているので、レンズマウント101のマウント面とレンズマウント201のマウント面とを接触させて、カメラボディ100と交換レンズ200とをマウント結合させると、保持部102と保持部202とが接続され、両保持部に設けられている電気接点同士も接続することになる。このようなマウント構造については周知であるのでこれ以上の説明、図示を省略する。
【0023】
図3に示すように、保持部102にはBP1〜BP12の12個の接点が存在する。また保持部202には、上記の12個の接点にそれぞれ対応する、LP1〜LP12の12個の接点が存在する。
【0024】
接点BP1および接点BP2は、カメラボディ100内の送電部130に接続されている。送電部130は、接点BP1に、アクチュエータ等の駆動系を有し消費電力が比較的大きい回路(フォーカシングレンズ駆動部212、ぶれ補正レンズ駆動部213、絞り駆動部214など)を除く交換レンズ200内の各部の動作電圧を供給する。すなわち、接点BP1および接点LP1からは、上記の各駆動部を除く交換レンズ200内の各部の動作電圧が供給される。この接点BP1に供給可能な電圧値は、最小電圧値〜最大電圧値の範囲(例えば3V台での電圧幅)をもつが、標準的に供給される電圧値はその最大電圧値と最小電圧値の中間値近傍の電圧値である。そしてこれにより、カメラボディ100側から交換レンズ200側に供給される電流値は、電源ON状態において、約数10mA〜数100mAの範囲内の電流値である。
【0025】
接点BP2は、接点BP1に与えられる上記動作電圧に対応する接地端子である。すなわち、接点BP2および接点LP2は、上記の動作電圧に対応する接地端子電圧である。接点LP1および接点LP2は、交換レンズ200内の受電部230に接続されている。受電部230は、カメラボディ100から供給された電力を、レンズ制御部203を含む交換レンズ200内の各部に供給する。
【0026】
以下の説明では、接点BP1および接点LP1により構成される信号線を、信号線V33と呼ぶ。また、接点BP2および接点LP2により構成される信号線を、信号線GNDと呼ぶ。これらの接点LP1,LP2、BP1,BP2は、カメラボディ100側から交換レンズ200側へ電源供給するための、電源系接点を構成する。
【0027】
接点BP3,BP4,BP5,およびBP6は、ボディ側第1通信部117に接続されている。これらの接点に対応する交換レンズ200側の接点LP3,LP4,LP5,およびLP6は、レンズ側第1通信部217に接続されている。ボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217は、これらの接点(通信系接点)を用いて、互いにデータの送受信を行う。ボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217が行う通信の内容については、後に詳述する。
【0028】
なお以下の説明では、接点BP3および接点LP3により構成される信号線を、信号線CLKと呼ぶ。同様に、接点BP4および接点LP4により構成される信号線を信号線BDATと、接点BP5および接点LP5により構成される信号線を信号線LDATと、接点BP6および接点LP6により構成される信号線を信号線RDYと呼ぶ。
【0029】
接点BP7,BP8,BP9,およびBP10は、ボディ側第2通信部118に接続されている。これらの接点に対応する交換レンズ200側の接点LP7,LP8,LP9,およびLP10は、レンズ側第2通信部218に接続されている。レンズ側第2通信部218は、これらの接点(通信系接点)を用いて、ボディ側第2通信部118にデータの送信を行う。ボディ側第2通信部118とレンズ側第2通信部218が行う通信の内容については、後に詳述する。
【0030】
なお以下の説明では、接点BP7および接点LP7により構成される信号線を、信号線HREQと呼ぶ。同様に、接点BP8および接点LP8により構成される信号線を信号線HANSと、接点BP9および接点LP9により構成される信号線を信号線HCLKと、接点BP10および接点LP10により構成される信号線を信号線HDATと呼ぶ。
【0031】
接点BP11および接点BP12は、カメラボディ100内の電源回路140に接続されている。電源回路140は、接点BP12に、アクチュエータ等の駆動系を有し消費電力が比較的大きい回路(フォーカシングレンズ駆動部212、ぶれ補正レンズ駆動部213、絞り駆動部214など)の駆動電圧を供給する。すなわち、接点BP12および接点LP12からは、フォーカシングレンズ駆動部212、ぶれ補正レンズ駆動部213、および絞り駆動部214の駆動電圧が供給される。この接点BP12に供給可能な電圧値は、最小電圧値〜最大電圧値の範囲をもつが、その範囲はいずれも、前述した接点BP1に供給可能な電圧値範囲よりも大きい電圧値である(例えば、接点BP12に供給可能な最大電圧値は、接点BP1に供給可能な最大電圧値の数倍程度)。即ち接点BP12に供給される電圧値は、上述の接点BP1に供給される電圧値とは、その大きさが異なる電圧値である。なお接点BP12に標準的に供給される電圧値は、接点BP12に供給可能な最大電圧値と最小電圧値の中間値近傍の電圧値である。そしてこれにより、カメラボディ100側から交換レンズ200側に供給される電流は、電源ON状態において、約10mA〜数Aの電流値となる。
【0032】
接点BP11は、接点BP12に与えられる上記駆動電圧に対応する接地端子である。すなわち、接点BP11および接点LP11は、上記駆動電圧に対応する接地端子である。
【0033】
以下の説明では、接点BP11および接点LP11により構成される信号線を、信号線PGNDと呼ぶ。また、接点BP12および接点LP12により構成される信号線を、信号線BATと呼ぶ。これらの接点LP11,LP12、BP11,BP12は、カメラボディ100側から交換レンズ200側へ電源供給するための、電源系接点を構成する。
【0034】
なお、上述の接点BP12、接点LP12に供給される電圧値(電流値)と、接点BP1,LP1に供給される電圧値(電流値)との大小関係から明らかなように、それら各接点に供給される電圧にそれぞれに対する接地端子となる接点BP11および接点LP11を流れる電流の最大値と最小値との差は、接点BP2および接点LP2を流れる電流の最大値と最小値との差よりも大きくなっている。これは、アクチュエータ等の駆動系を有する各駆動部が消費する電力が、交換レンズ200内のレンズ制御部203等の電子回路に比べて大きいこと、ならびに、被駆動部材を駆動する必要がない場合には各駆動部が電力を消費しないことに拠る。
【0035】
(コマンドデータ通信の説明)
レンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217を制御して、接点LP3〜LP6、すなわち信号線CLK,BDAT,LDAT,およびRDYを介して、ボディ側第1通信部117からの制御データの受信と、ボディ側第1通信部117への応答データの送信とを並行して、第1の所定周期(本実施形態では例えば16ミリ秒)で行う。以下、レンズ側第1通信部217とボディ側第1通信部117との間で行われる通信の詳細を説明する。
【0036】
なお、本実施形態において、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217と、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117との間で行われる通信を「コマンドデータ通信」と称する。また、コマンドデータ通信に利用される4つの信号線(信号線CLK,BDAT,LDAT,およびRDY)から成る伝送路を第1伝送路と称する。
【0037】
図4は、コマンドデータ通信の例を示すタイミングチャートである。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は、コマンドデータ通信の開始時(T1)、まず信号線RDYの信号レベルを確認する。信号線RDYの信号レベルはレンズ側第1通信部217の通信可否を表している。つまり、信号線RDYにはレンズ側第1通信部217から、データ通信の可否を表す通信可否信号が出力される。レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、通信できない状態である場合には、接点LP6からH(High)レベルの信号を出力する。すなわち、信号線RDYの信号レベルをHレベルにする。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は、信号線RDYがHレベルである場合、これがLレベルになるまで通信開始しない。また通信中の次の処理を実行しない。
【0038】
信号線RDYがL(Low)レベルであれば、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は接点BP3からクロック信号401を出力する。すなわち、信号線CLKを介してレンズ側第1通信部217にクロック信号401を伝送する。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこのクロック信号401に同期して、接点BP4から制御データの前半部分であるボディ側コマンドパケット信号402を出力する。すなわち、信号線BDATを介してレンズ側第1通信部217にボディ側コマンドパケット信号402を伝送する。
【0039】
また、信号線CLKにクロック信号401が出力されると、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、クロック信号401に同期して接点LP5から応答データの前半部分であるレンズ側コマンドパケット信号403を出力する。すなわち、信号線LDATを介してボディ側第1通信部117にレンズ側コマンドパケット信号403を伝送する。
【0040】
レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、レンズ側コマンドパケット信号403の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルをHレベルにする(T2)。レンズ制御部203は、受信したボディ側コマンドパケット信号402の内容に応じた処理である第1制御処理404(後述)を開始する。
【0041】
レンズ制御部203は第1制御処理404が完了すると、レンズ側第1通信部217に第1制御処理404の完了を通知する。レンズ側第1通信部217はこの通知に応じて、接点LP6からLレベルの信号を出力する。すなわち、信号線RDYの信号レベルをLレベルにする(T3)。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこの信号レベルの変化に応じて、接点BP3からクロック信号405を出力する。すなわち、信号線CLKを介してレンズ側第1通信部217にクロック信号405を伝送する。
【0042】
ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこのクロック信号405に同期して、接点BP4から制御データの後半部分であるボディ側データパケット信号406を出力する。すなわち、信号線BDATを介してレンズ側第1通信部217にボディ側データパケット信号406を伝送する。
【0043】
また、信号線CLKにクロック信号405が出力されると、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217はクロック信号405に同期して接点LP5から応答データの後半部分であるレンズがデータパケット信号407を出力する。すなわち、信号線LDATを介してボディ側第1通信部117にレンズ側データパケット信号407を伝送する。
【0044】
レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、レンズ側データパケット信号407の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルを再びHレベルにする(T4)。レンズ制御部203は、受信したボディ側データパケット信号406の内容に応じた処理である第2制御処理408(後述)を開始する。
【0045】
以上のように、レンズ側第1通信部217は、カメラボディ100からクロック信号が出力される信号線CLKと、カメラボディ100からクロック信号に同期してデータ信号が出力される信号線BDATと、レンズ側第1通信部217からクロック信号に同期してデータ信号が出力される信号線LDATと、レンズ側第1通信部217からレンズ側第1通信部217のデータ通信の可否を表す通信可否信号が出力される信号線RDYと、を用いてカメラボディ100とのデータ通信を行う。
【0046】
ここで、レンズ制御部203が行う第1制御処理404、および第2制御処理408について述べる。
【0047】
例えば、受信したボディ側コマンドパケット信号402が、交換レンズ側の特定のデータを要求する内容であった場合について述べる。レンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402の内容を解析処理すると共に、当該要求されている特定データを生成する処理を実行する。更にレンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402に含まれているチェックサムデータを用いて、コマンドパケット信号402の通信にエラーがないか否かをデータバイト数から簡易的にチェックする通信エラーチェック処理をも実行する。この第1制御処理404で生成された特定データの信号は、レンズ側データパケット信号407としてボディ側に出力される。なお、この場合においてコマンドパケット信号402の後でボディ側から出力されるボディ側データパケット信号406は、レンズ側にとっては特に意味をなさないダミーデータ信号(チェックサムデータは含む)となっている。この場合にはレンズ制御部203は、第2制御処理408として、ボディ側データパケット信号406に含まれるチェックサムデータを用いた、上述の如き通信エラーチェック処理を実行する。
【0048】
また例えば、受信したボディ側コマンドパケット信号402が、レンズ側の被駆動部材を駆動する指示であった場合について述べる。例えば、コマンドパケット信号402がフォーカシングレンズ210bの駆動指示であり、受信したボディ側データパケット信号406がフォーカシングレンズ210bの駆動量であった場合について述べる。レンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402の内容を解析処理すると共に、その内容を理解したことを表す了解信号を生成する。更にレンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402に含まれているチェックサムデータを用いて、上述の如き通信エラーチェック処理をも実行する。この第1制御処理404で生成された了解信号は、レンズ側データパケット信号407としてボディ側に出力される。またレンズ制御部203は、第2制御処理408として、ボディ側データパケット信号406の内容の解析処理を実行すると共に、ボディ側データパケット信号406に含まれるチェックサムデータを用いた上述の如き通信エラーチェック処理を実行する。
【0049】
レンズ制御部203は第2制御処理408が完了すると、レンズ側第1通信部217に第2制御処理408の完了を通知する。これによってレンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217に、接点LP6からLレベルの信号を出力させる。すなわち、信号線RDYの信号レベルをLレベルにする(T5)。
【0050】
なお受信したボディ側コマンドパケット信号402が、上述のようなレンズ側の被駆動部材(たとえばフォーカシングレンズ)を駆動する指示であった場合、レンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217に信号線RDYの信号レベルをLレベルにさせつつ、フォーカシングレンズ駆動部212に対して、フォーカシングレンズ210bを当該駆動量だけ駆動する処理を実行させる。
【0051】
上述した時刻T1〜時刻T5に行われた通信が、1回のコマンドデータ通信である。上述のように、1回のコマンドデータ通信では、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117により、ボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406がそれぞれ1つずつ送信される。すなわち、処理の都合上2つに分割されて送信されるものの、ボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406は2つ合わせて1つの制御データを構成する。
【0052】
同様に、1回のコマンドデータ通信では、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217によりレンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407がそれぞれ1つずつ送信される。すなわち、レンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407は2つ合わせて1つの応答データを構成する。
【0053】
以上のように、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、ボディ側第1通信部117からの制御データの受信と、ボディ側第1通信部117への応答データの送信とを並行して行う。コマンドデータ通信に利用される接点LP6および接点BP6は、他のクロック信号に同期しない非同期信号(信号線RDYの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点である。
【0054】
(ホットライン通信の説明)
レンズ制御部203は、レンズ側第2通信部218を制御して、接点LP7〜LP10、すなわち信号線HREQ,HANS,HCLK,およびHDATを介して、ボディ側第2通信部118へレンズ位置データを送信する。以下、レンズ側第2通信部218とボディ側第2通信部118との間で行われる通信の詳細を説明する。
【0055】
なお、本実施形態において、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218と、ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118との間で行われる通信を「ホットライン通信」と称する。また、ホットライン通信に利用される4つの信号線(信号線HREQ,HANS,HCLK,およびHDAT)から成る伝送路を第2伝送路と称する。
【0056】
図5は、ホットライン通信の例を示すタイミングチャートである。本実施形態のボディ制御部103は、ホットライン通信を第2の所定周期(本実施形態では例えば1ミリ秒)毎に開始するように構成されている。この周期は、コマンドデータ通信を行う周期よりも短い。図5(a)は、ホットライン通信が所定周期Tn毎に繰り返し実行されている様子を示す図である。繰り返し実行されるホットライン通信のうち、ある1回の通信の期間Txを拡大した様子が図5(b)に示されている。以下、図5(b)のタイミングチャートに基づいて、ホットライン通信の手順を説明する。
【0057】
ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118は、ホットライン通信の開始時(T6)、まず接点BP7からLレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HREQの信号レベルをLレベルにする。レンズ側第2通信部218は、この信号が接点LP7に入力されたことをレンズ制御部203に通知する。レンズ制御部203はこの通知に応じて、レンズ位置データを生成する生成処理501の実行を開始する。生成処理501とは、レンズ制御部203が不図示のフォーカシングレンズ位置検出部にフォーカシングレンズ210bの位置を検出させ、検出結果を表すレンズ位置データを生成する処理である。
【0058】
レンズ制御部203が生成処理501を実行完了すると、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は接点LP8からLレベルの信号を出力する(T7)。すなわち、信号線HANSの信号レベルをLレベルにする。ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118は、この信号が接点BP8に入力されたことに応じて、接点BP9からクロック信号502を出力する。すなわち、信号線HCLKを介してレンズ側第2通信部218にクロック信号を伝送する。
【0059】
レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は、このクロック信号502に同期して、接点LP10からレンズ位置データを表すレンズ位置データ信号503を出力する。すなわち、信号線HDATを介してボディ側第2通信部118にレンズ位置データ信号503を伝送する。
【0060】
レンズ位置データ信号503の送信が完了すると、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は接点LP8からHレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HANSの信号レベルをHレベルにする(T8)。ボディ側第2通信部118は、この信号が接点BP8に入力されたことに応じて、接点LP7からHレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HREQの信号レベルをHレベルにする(T9)。
【0061】
上述した時刻T6〜時刻T9に行われた通信が、1回のホットライン通信である。上述のように、1回のホットライン通信では、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218により、レンズ位置データ信号503が1つ送信される。ホットライン通信に利用される接点LP7、LP8、BP7、およびBP8は、他のクロック信号に同期しない非同期信号が伝送される接点である。つまり接点LP7およびBP7は、非同期信号(信号線HREQの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点であり、接点LP8およびBP8は、非同期信号(信号線HANSの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点である。
【0062】
なお、コマンドデータ通信とホットライン通信は、同時にも或いは一部並行的にも実行することが可能である。すなわち、レンズ側第1通信部217とレンズ側第2通信部218との一方は、その他方がカメラボディ100と通信を行っている場合であってもカメラボディ100と通信を行うことが可能である。
【0063】
(カメラボディ100の電源状態の説明)
カメラボディ100は、電源オフ状態と電源オン状態の2つの状態を有する。カメラボディ100が電源オフ状態のとき、ユーザは撮影や再生など、カメラボディ100の機能を利用することができない。カメラボディ100が電源オン状態のとき、ユーザは静止画および動画の撮影や再生などを行うことができる。
【0064】
カメラボディ100の送電部130は、カメラボディ100が電源オフ状態のとき、交換レンズ200(受電部230)に所定の第1出力電流を供給する。第1出力電流は例えば50mA程度の電流である。つまり本実施形態のカメラ1では、カメラボディ100が電源オフ状態であっても、交換レンズ200に一定の電流が供給される。他方、電源オン状態のとき、カメラボディ100の送電部130は交換レンズ200(受電部230)に電源オフ状態のときよりも大きい第2出力電流を供給する。第2出力電流は、例えば100mA程度の電流である。
【0065】
カメラボディ100が電源オフ状態のとき、ユーザがボタン107を押下すると、ボディ制御部103はボタン107に加えられた押下操作を検知してカメラボディ100を電源オン状態にする。他方、カメラボディ100が電源オン状態のとき、ユーザがボタン107を押下すると、ボディ制御部103はカメラボディ100を電源オフ状態にする。つまり、ボディ制御部103は、カメラボディ100の電源オフ状態と電源オン状態とを切り替える。
【0066】
また、カメラボディ100の電源オフ状態と電源オン状態との切り替えは、交換レンズ200に設けられたボタン207によっても行うことが可能である。ボタン207が押下されたときにボディ制御部103およびレンズ制御部203が実行する処理の詳細については、後に詳述する。
【0067】
(送電部130および受電部230の説明)
図6は、送電部130および受電部230の詳細を示すブロック図である。送電部130は、第1出力電流(50mA)を供給可能なシリーズレギュレータ131と、第2出力電流(100mA)を供給可能なDC/DCコンバータ132と、これら2つの電源回路と接点BP1との接続を切り替え可能なスイッチSW3と、を有している。シリーズレギュレータ131およびDC/DCコンバータ132には、それぞれバッテリー133が接続されている。バッテリー133は、例えばリチウムイオンバッテリーなどの周知の二次電池であり、カメラボディ100および交換レンズ200への電力の供給源である。
【0068】
ボディ制御部103は、カメラボディ100が電源オフ状態のときにはシリーズレギュレータ131により第1出力電流(50mA)が、カメラボディ100が電源オン状態のときにはDC/DCコンバータ132により第2出力電流(100mA)がそれぞれ交換レンズ200に供給されるように、送電部130のスイッチSW3を切り替える。つまり、カメラボディ100が電源オン状態のとき、スイッチSW3は接点BP1とシリーズレギュレータ131を接続し、カメラボディ100が電源オフ状態のとき、スイッチSW3は接点BP1とDC/DCコンバータ132を接続する。
【0069】
受電部230は、カメラボディ100が電源オフ状態のときには第1出力電流(50mA)を、カメラボディ100が電源オン状態のときには第2出力電流(100mA)をそれぞれカメラボディ100(送電部130)から受給する。受電部230は、受給したこれらの出力電流を、レンズ制御部203および各種の周辺回路231,232に供給する。図6に示した周辺回路231,232は、それぞれ例えばモータのドライブ回路や像ぶれの検出回路などである。なお、図6では一例として、2つの周辺回路231,232を図示しているが、このような周辺回路はいくつであってもよい。
【0070】
受電部230は、これらの周辺回路231,232への電流供給を切り替え可能な複数のスイッチSW1,SW2を有する。レンズ制御部203はこれらのスイッチSW1,SW2のオンオフを個別に制御可能に構成されている。
【0071】
(交換レンズ200の動作状態の説明)
交換レンズ200は、カメラボディ100が電源オフ状態のとき、第1出力電流(50mA)よりごく小さな所定の第1消費電流(例えば0.1mA)で動作する。このような小さな消費電流量で動作できるのは、後述するように、カメラボディ100が電源オフ状態のときの交換レンズ200の処理内容がごく限られているためである。以下、交換レンズ200が第1消費電流(0.1mA)で動作する状態を、第1動作状態と呼ぶ。
【0072】
交換レンズ200は上述の第1動作状態に加えて、第2動作状態および第2動作状態を有している。第2動作状態とは、交換レンズ200が第2消費電流(例えば50mA)で動作する状態である。第2消費電流(50mA)は、第1消費電流(0.1mA)より大きいが第1出力電流(50mA)以下の消費電流量である。交換レンズ200が第1動作状態および第2動作状態のとき、ユーザはカメラ1を用いた撮影を行うことができない。また、交換レンズ200が第1動作状態および第2動作状態のとき、レンズ側第1通信部217は、カメラボディ100とのコマンドデータ通信を行うことができない。これは、交換レンズ200が第1動作状態または第2動作状態のとき、レンズ制御部203が受電部230のスイッチSW1,SW2を切り替え、撮影やコマンドデータ通信に必要な周辺回路に電流の供給を行わせないためである。
【0073】
交換レンズ200の第3動作状態とは、交換レンズ200が第1出力電流(50mA)より大きく第2出力電流(100mA)以下の第3消費電流(例えば100mA)で動作する状態である。このとき、交換レンズ200の各周辺回路には電流の供給が行われ、カメラボディ100は交換レンズ200の全機能を利用することができる。カメラボディ100が電源オン状態のとき、交換レンズ200は第3動作状態である。
【0074】
(カメラボディ100の操作による電源オンの説明)
図7は、ボタン107の押下によりカメラボディ100を電源オン状態にする様子を示すタイミングチャートである。このタイミングチャートには、カメラボディ100の送電部130から交換レンズ200に供給される電流量と、交換レンズ200の消費電流量と、信号線RDYの信号レベルと、信号線CLKの信号レベルと、が示されている。
【0075】
図7に示すタイミングチャートの先頭から時刻T11までの間、カメラボディ100は電源オフ状態である。このとき、送電部130から受電部230には、第1出力電流(50mA)が供給されている。また、交換レンズ200は第1消費電流(0.1mA)で動作している。つまり、交換レンズ200は第1動作状態である。
【0076】
カメラボディ100が電源オフ状態のとき、信号線RDYの信号レベルはL(Low)レベルであり、信号線CLKはL(Low)レベルである。このときボディ制御部103は、ボタン107の押下操作の検知と、信号線RDYの信号レベルの変化の検知と、のみを行っている。従って、ボディ制御部103の消費電力は、電源オン状態のときと比べてごくわずかである。またレンズ制御部203は、ボタン207の押下操作の検知と、信号線CLKの信号レベルの変化の検知と、のみを行っている。従って、交換レンズ200はごく小さな消費電流である第1消費電流(0.1mA)しか消費しない。
【0077】
図7の時刻T11は、ユーザがカメラボディ100のボタン107を押下した時刻である。ボディ制御部103はボタン107の押下操作を検知すると電源オン状態となり、交換レンズ200への第2出力電流(100mA)の供給を開始する。つまり、図6に示すスイッチSW3をDC/DCコンバータ132の側に切り替え、接点BP1とDC/DCコンバータ132とを接続する。
【0078】
次にボディ制御部103は、ボディ側第1通信部117を制御し、信号線CLKの信号レベルをLレベルからHレベルにする(時刻T12)。信号線CLKに出力されるこの信号は、カメラボディ100が電源オフ状態から電源オン状態になったことを表す信号である。つまり、ボタン107によるカメラ1の起動シーケンスにおいて、信号線CLKは、カメラボディ100が電源オン状態になったことを表す信号の入出力に利用される。
【0079】
レンズ制御部203は、第1動作状態のときに信号線CLKに出力されたこの信号を検知すると、交換レンズ200を第3動作状態とし、第3消費電流(100mA)による動作を開始させる(時刻T13)。レンズ制御部203は、種々の周辺回路への通電を行い、交換レンズ200の起動処理を開始する。起動処理においてレンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217の初期化を行い、前述のコマンドデータ通信が行えるようにする。信号線RDYに出力されるこの信号は、レンズ制御部203がレンズ側第1通信部217の初期化中であることを表す信号である。つまり、ボタン107によるカメラ1の起動シーケンスにおいて、信号線RDYは、レンズ制御部203がレンズ側第1通信部217を初期化していることを表す信号の入出力に利用される。レンズ制御部203は、この初期化処理が完了すると、信号線RDYの信号レベルをLレベルからHレベルにする。ボディ制御部103はこの信号を検知することにより、交換レンズ200とコマンドデータ通信が可能な状態になったことを認識する。
【0080】
この後、ボディ制御部103はコマンドデータ通信により交換レンズ200とのデータ通信を行い、撮影等の通常動作に必要な種々の初期化処理を行う。これにより、カメラ1を用いた撮影や再生等が行えるようになる。
【0081】
(交換レンズ200の操作による電源オンの説明)
図8は、ボタン207の押下によりカメラボディ100を電源オン状態にする様子を示すタイミングチャートである。このタイミングチャートには図7と同様に、カメラボディ100の送電部130から交換レンズ200に供給される電流量と、交換レンズ200の消費電流量と、信号線RDYの信号レベルと、信号線CLKの信号レベルと、が示されている。
【0082】
タイミングチャートの先頭から時刻T21までの間、カメラボディ100は電源オフ状態である。図7で説明したように、交換レンズ200は、カメラボディ100が電源オフ状態のとき、第1動作状態で動作する。
【0083】
図8の時刻T21は、ユーザが交換レンズ200のボタン207を押下した時刻である。レンズ制御部203はボタン207の押下操作を検知すると、これに応じて第2動作状態となり、第2消費電流(50mA)による動作を開始する。第2動作状態のとき、交換レンズ200の各周辺回路には通電されておらず、レンズ制御部203は限られた処理のみを実行することが可能である。これは、送電部130から供給される出力電流が限られているため、電流を大きく消費する処理を実行することができないためである。
【0084】
レンズ制御部203は、交換レンズ200が第2動作状態になったことに応じて、レンズ側第1通信部217を制御し、信号線RDYの信号レベルをLレベルからHレベルにする(時刻T22)。信号線RDYに出力されるこの信号は、電源オン状態への状態変更指示を表す信号である。つまりレンズ側第1通信部217は、交換レンズ200が第2動作状態になったことに応じて、電源オン状態への状態変更指示を表す信号をカメラボディ100(ボディ側第1通信部117)に出力する。
【0085】
ボディ制御部103は、信号線RDYに出力されたこの信号の入力に応じてカメラボディ100を電源オン状態に切り替える(時刻T23)。電源オン状態になったので、ボディ制御部103は図6に示すスイッチSW3を切り替え、接点BP1をDC/DCコンバータ132に接続する。これにより、交換レンズ200に第2出力電流(100mA)が供給される。
【0086】
スイッチSW3の切り替えが完了すると、ボディ制御部103はボディ側第1通信部117を制御し、信号線CLKの信号レベルをLレベルからHレベルにする(時刻T24)。信号線CLKに出力されるこの信号は、カメラボディ100が、信号線RDYに出力された信号により電源オン状態になったことを表す信号である。つまりボディ側第1通信部117は、送電部130が第2出力電流を供給可能になったことに応じて、交換レンズ200(レンズ側第1通信部217)にカメラボディ100が電源オン状態になったことを表す信号を出力する。レンズ制御部203は第2動作状態のとき、信号線CLKに出力されたこの信号を検知して交換レンズ200を第3動作状態にし、第3消費電流(100mA)による動作を開始させる(時刻T25)。つまり交換レンズ200は、第2動作状態のとき、この信号がレンズ側第1通信部217に入力されたことに応じて第3動作状態になる。
【0087】
上述した第1の実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)受電部230は、カメラボディ100が電源オフ状態のときには第1出力電流を、カメラボディ100が電源オン状態のときには第1出力電流より大きい第2出力電流を、それぞれカメラボディ100から受給する。また、交換レンズ200は、第1出力電流より小さい第1消費電流で動作する第1動作状態と、第1消費電流より大きいが第1出力電流以下である第2消費電流で動作する第2動作状態と、第1出力電流より大きいが第2出力電流以下である第3消費電流で動作する第3動作状態と、を有する。カメラボディ100が電源オフ状態のとき、交換レンズ200は第1動作状態で動作し、レンズ制御部203によりボタン207の操作が検知されると第2動作状態になる。レンズ側第1通信部217はこれに応じて、電源オン状態への状態変更指示を表す信号をカメラボディ100に出力する。その後交換レンズ200は、カメラボディ100が上記信号により電源オン状態になったことを表す信号がレンズ側第1通信部217に入力されたことに応じて第3動作状態になる。このようにしたので、交換レンズ側の操作部材による電源状態の変更を、機械的な接続切換機構を使用せず且つ低消費電力で行うことが可能となる。
【0088】
(2)レンズ側第1通信部217は、カメラボディ100からクロック信号が出力される信号線CLKと、カメラボディ100からクロック信号に同期してデータ信号が出力される信号線BDATと、レンズ側第1通信部217からクロック信号に同期してデータ信号が出力される信号線LDATと、レンズ側第1通信部217からレンズ側第1通信部217のデータ通信の可否を表す通信可否信号が出力される信号線RDYと、を用いてカメラボディ100とのデータ通信が可能に構成される。レンズ側第1通信部217は、電源オン状態への状態変更指示を表す信号の出力を信号線RDYにより行い、カメラボディ100が上記信号により電源オン状態になったことを表す信号の入力を信号線CLKにより行う。このようにしたので、電源オン時にのみ用いられる専用の信号線を用意する必要がなくなり、保持部102,202の接点数が削減される。
【0089】
(3)レンズ側第1通信部217は、交換レンズ200が第1動作状態および第2動作状態のとき、カメラボディ100とのデータ通信を行えない。このようにしたので、交換レンズ200が第1動作状態および第2動作状態のときに交換レンズ200が消費する電流量が削減される。
【0090】
(4)交換レンズ200は、第1動作状態のとき、カメラボディ100が電源オン状態になったことを表す信号がレンズ側第1通信部217に入力されたことに応じて第3動作状態になる。このようにしたので、カメラボディ100側の操作部材によりカメラ1を起動させる際に第1動作状態を経由させる必要がなく、カメラ1を高速に起動させることができる。
【0091】
(5)交換レンズ200は、第1動作状態および第2動作状態のとき、撮影を行えない。このようにしたので、撮影を行える第3動作状態に比べて、第1動作状態および第2動作状態における交換レンズ200の消費電力を小さくすることができる。
【0092】
(6)交換レンズ200は、カメラボディ100が前記電源オフ状態のとき、第1動作状態で動作すると共に、レンズ制御部203によりボタン207の操作が検知されたことに応じて第2動作状態になる。レンズ側第1通信部217は、交換レンズ200が第2動作状態になったことに応じてボディ側第1通信部117に所定の第1信号を出力し、ボディ制御部103は、当該第1信号の入力に応じてカメラボディ100を電源オン状態に切り替える。その後、ボディ側第1通信部117は、送電部130が第2出力電流を供給可能になったことに応じてレンズ側第1通信部217に所定の第2信号を出力し、交換レンズ200は、第2動作状態のとき、当該第2信号の入力に応じて第3動作状態になる。このようにしたので、交換レンズ200側のボタン207の押下操作により、カメラボディ100を電源オン状態にすることが可能となる。
【0093】
(7)送電部130は、第1出力電流を供給可能なシリーズレギュレータ131と、第2出力電流を供給可能なDC/DCコンバータ132とを有する。カメラボディ100が電源オフ状態のとき、交換レンズ200にはシリーズレギュレータ131により電力が供給され、カメラボディ100が電源オン状態のとき、交換レンズ200にはDC/DCコンバータ132により電力が供給される。このようにしたので、電源オフ状態のときに消費される電力量を低減することができる。
【0094】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0095】
(変形例1)
上述した実施の形態のレンズ制御部203は、電源オン状態への状態変更指示を表す信号を、信号線RDYに出力させていた。またボディ制御部103は、カメラボディ100が電源オン状態になったことを表す信号を、信号線CLKに出力させていた。これらの各信号は、それぞれ異なる信号線により入出力されてよい。例えば前者の信号を信号線LDATで、後者の信号を信号線BDATで、それぞれ入出力するようにしてもよい。
【0096】
(変形例2)
上述した第1出力電流、第2出力電流の電流値は一例であり、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1出力電流として50mA以外の電流値を用いてもよいし、第2出力電流として100mA以外の電流値を用いてもよい。また、これらの電流値はあくまで代表値であり、実際の動作時には多少のばらつきや揺らぎが生じうる。つまり、第1出力電流が50mAであると言ったとき、それは第1出力電流が厳密に50mAでなければならない、ということを意味しない。以上の点について、第1消費電流、第2消費電流、および第3消費電流についても同様である。
【0097】
(変形例3)
上述した実施の形態では、交換レンズ200側のボタン207を押下した場合の動作について説明した。カメラボディ100を電源オン状態にする操作部材は、このようなボタンに限定されない。例えば、結像光学系210の焦点状態を調節するフォーカス環や絞り211の開口径を調節する絞り環などの操作部材を交換レンズ200に設け、カメラボディ100が電源オフ状態のときにこれらの操作部材が操作されると、カメラボディ100が電源オン状態になるようにしてもよい。つまり、カメラボディ100を電源オン状態にする交換レンズ200側の操作部材は、カメラボディ100の電源状態を変更するためだけに設けられた操作部材でなくてもよい。
【0098】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1…カメラ、100…カメラボディ、101…レンズマウント、102…保持部、103…ボディ制御部、117…ボディ側第1通信部、118…ボディ側第2通信部、130…送電部、131…シリーズレギュレータ、132…DC/DCコンバータ、133…バッテリー、200…交換レンズ、201…レンズマウント、202…保持部、203…レンズ制御部、210…結像光学系、217…レンズ側第1通信部、218…レンズ側第2通信部、230…受電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディを着脱可能に取り付け可能な取付手段と、
前記カメラボディが電源オフ状態のときには第1出力電流を、前記カメラボディが電源オン状態のときには前記第1出力電流より大きい第2出力電流を、それぞれ前記カメラボディから受給可能な受電手段と、
操作部材と、
前記操作部材の操作を検知する検知手段と、
前記カメラボディとの間で信号の授受が可能なレンズ側通信手段と、
を備える交換レンズであって、
前記交換レンズは、前記第1出力電流より小さい第1消費電流で動作する第1動作状態と、前記第1消費電流より大きいが前記第1出力電流以下である第2消費電流で動作する第2動作状態と、前記第1出力電流より大きいが前記第2出力電流以下である第3消費電流で動作する第3動作状態と、を有し、
前記交換レンズは、前記カメラボディが前記電源オフ状態のとき、前記第1動作状態で動作すると共に、前記検知手段により前記操作部材の操作が検知されたことに応じて前記第2動作状態になり、
前記レンズ側通信手段は、前記交換レンズが前記第2動作状態になったことに応じて、前記電源オン状態への状態変更指示を表す第1信号を前記カメラボディに出力し、
前記交換レンズは、前記第2動作状態のとき、前記カメラボディが前記第1信号により前記電源オン状態になったことを表す第2信号が前記レンズ側通信手段に入力されたことに応じて前記第3動作状態になることを特徴とする交換レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の交換レンズにおいて、
前記レンズ側通信手段は、前記カメラボディからクロック信号が出力される第1信号線と、前記カメラボディから前記クロック信号に同期してデータ信号が出力される第2信号線と、前記レンズ側通信手段から前記クロック信号に同期してデータ信号が出力される第3信号線と、前記レンズ側通信手段から前記レンズ側通信手段のデータ通信の可否を表す通信可否信号が出力される第4信号線と、を用いて前記カメラボディとのデータ通信が可能に構成され、
前記レンズ側通信手段は、前記第1信号の出力および前記第2信号の入力をそれぞれ、前記第1信号線、前記第2信号線、前記第3信号線、および前記第4信号線のいずれかにより行うことを特徴とする交換レンズ。
【請求項3】
請求項2に記載の交換レンズにおいて、
前記レンズ側通信手段は、前記交換レンズが前記第1動作状態および前記第2動作状態のとき、前記カメラボディとのデータ通信を行えないことを特徴とする交換レンズ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の交換レンズにおいて、
前記交換レンズは、前記第1動作状態のとき、前記第2信号が前記レンズ側通信手段に入力されたことに応じて前記第3動作状態になることを特徴とする交換レンズ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の交換レンズにおいて、
前記交換レンズは、前記第1動作状態および前記第2動作状態のとき、撮影を行えないことを特徴とする交換レンズ。
【請求項6】
カメラボディと、前記カメラボディに着脱可能な交換レンズと、から成るカメラシステムであって、
前記カメラボディは、
前記カメラボディおよび前記交換レンズへの電力の供給源である電源と、
前記カメラボディの電源オフ状態と電源オン状態とを切り替える状態切替手段と、
前記カメラボディが前記電源オフ状態のときには第1出力電流を、前記カメラボディが前記電源オン状態のときには前記第1出力電流より大きい第2出力電流を、それぞれ前記交換レンズに供給可能な電力供給手段と、
前記交換レンズとの間で信号の授受が可能なボディ側通信手段と、
を備え、
前記交換レンズは、
操作部材と、
前記操作部材の操作を検知する検知手段と、
前記カメラボディとの間で信号の授受が可能なレンズ側通信手段と、
を備え、
前記交換レンズは、前記第1出力電流より小さい第1消費電流で動作する第1動作状態と、前記第1消費電流より大きいが前記第1出力電流以下である第2消費電流で動作する第2動作状態と、前記第1出力電流より大きいが前記第2出力電流以下であるの第3消費電流で動作する第3動作状態と、を有し、
前記交換レンズは、前記カメラボディが前記電源オフ状態のとき、前記第1動作状態で動作すると共に、前記検知手段により前記操作部材の操作が検知されたことに応じて前記第2動作状態になり、
前記レンズ側通信手段は、前記交換レンズが前記第2動作状態になったことに応じて前記ボディ側通信手段に第1信号を出力し、
前記状態切替手段は、前記第1信号の入力に応じて前記カメラボディを前記電源オン状態に切り替え、
前記ボディ側通信手段は、前記電力供給手段が前記第2出力電流を供給可能になったことに応じて前記レンズ側通信手段に第2信号を出力し、
前記交換レンズは、前記第2動作状態のとき、前記第2信号の入力に応じて前記第3動作状態になることを特徴とするカメラシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のカメラシステムにおいて、
前記電力供給手段は、前記第1出力電流を供給可能な第1電源回路と、前記第2出力電流を供給可能な第2電源回路とを有し、前記カメラボディが前記電源オフ状態のときは前記第1電源回路により、前記カメラボディが前記電源オン状態のときは前記第2電源回路により、それぞれ前記交換レンズに電力を供給することを特徴とするカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−203020(P2012−203020A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64534(P2011−64534)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】