説明

交流信号のゼロクロス点検出装置及びこれを用いた信号伝送システム

【課題】ゼロクロス点を高精度に検出することが可能な交流信号のゼロクロス点検出装置及びこれを用いた信号伝送システムを提供する。
【解決手段】交流電圧E1を分圧し、且つ平滑化した電圧を基準電圧V1として設定する。また、交流電圧E1を分圧した電圧を参照電圧Vrefとする。そして、基準電圧V1と参照電圧Vrefを比較し、VrefがV1を上回る地点をゼロクロス点として設定する。このような構成によれば、交流電圧E1の振幅が変動した場合であっても、この変動に伴って基準電圧V1が変動するので、高精度にゼロクロス点を検出することができる。このため、例えば、PLC通信等で交流電圧に送信信号を重畳する場合には、高精度な信号伝送が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流信号のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出装置、及び交流電圧に送信信号を重畳して信号を伝送する信号伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、PLC通信(Power Line Communication;電力線搬送通信)では、交流電圧(例えば、AC100V等の商用電源)を伝送する電力線に送信信号を重畳して、互いに離間した地点での信号伝送を行う。また、交流電圧に重畳する信号を送信側と受信側で同期させるために、送信側及び受信側の双方にて交流電圧のゼロクロス点を検出している。即ち、検出したゼロクロス点を用いて送信信号の送信タイミングと受信タイミングを同期させている。
【0003】
従来におけるゼロクロス点検出回路として、例えば特開平8−123558号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。このゼロクロス点検出回路では、比較器(コンパレータ)の一方の入力端子に全波整流した交流電圧(以下これを「参照電圧」という)を入力し、他方の入力端子に基準電圧を入力し、これらの比較結果に応じてゼロクロス点を検出する。従って、参照電圧が低下して基準電圧を下回る点、或いは参照電圧が上昇して基準電圧を上回る点がゼロクロス点として検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−123558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例は、参照電圧が基準電圧を下回る点或いは上回る点をゼロクロス点として検出するので、参照電圧の振幅が変化した場合には、ゼロクロス点のタイミングがずれてしまうという不具合が生じる。即ち、図6に示すように、交流電圧の波形が、曲線S11に示す正弦波形である場合と、この曲線S11よりも振幅の小さい曲線S12に示す正弦波形である場合では、各曲線が基準電圧V1と交わるタイミングが一致せず、Δtだけゼロクロス点のタイミングがずれてしまう。
【0006】
このため、交流電圧の送電線に送信信号を重畳する場合には、送電線の電圧降下により交流電圧の振幅が減衰することがあり、この場合には、送信側と受信側でゼロクロス点のタイミングにずれが生じてしまい、交流電圧に重畳した送信信号を高精度に検出することができなくなるという問題が発生していた。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ゼロクロス点を高精度に検出することが可能な交流信号のゼロクロス点検出装置及びこれを用いた信号伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載のゼロクロス点検出装置は、交流信号のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出装置において、前記交流信号を分圧し且つ平滑化して基準信号を生成する分圧回路と、前記交流信号に応じた参照信号と、前記基準信号とを比較する比較手段と、を有し、前記参照信号が前記基準電圧を下回る点、或いは上回る点の少なくとも一方をゼロクロス点とすることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記分圧回路は、互いに直列接続された少なくとも2個の抵抗、及びこの直列接続に対して並列に接続されるコンデンサからなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記参照信号は、前記交流信号自体、または前記交流信号を所定の比率で縮小した信号であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の信号伝送システムは、第1地点から、該第1地点とは離間した第2地点に交流電圧を伝送すると共に、該交流電圧に送信信号を重畳して、前記第1地点、第2地点間の信号伝送を行う信号伝送システムにおいて、前記第1地点及び第2地点のうちの一方の地点には、前記交流電圧を分圧し且つ平滑化して第1基準電圧を生成する第1分圧回路と、前記交流電圧に応じた電圧と前記第1基準電圧とを比較する第1比較手段とを含み、前記交流電圧に応じた信号が前記第1基準電圧を下回る点、或いは上回る点のいずれか一方をゼロクロス点とする第1ゼロクロス点検出回路が設けられ、前記第1地点及び第2地点のうちの他方の地点には、前記第1分圧回路と同一の分圧比で前記交流電圧を分圧し且つ平滑化して第2基準電圧を生成する第2分圧回路と、前記交流電圧に応じた電圧と前記第2基準電圧とを比較する第2比較手段とを含み、前記交流電圧に応じた信号が前記第2基準電圧を下回る点、或いは上回る点のいずれか一方をゼロクロス点とする第2ゼロクロス点検出回路が設けられ、前記一方の地点では、前記第1ゼロクロス点検出回路で検出されるゼロクロス点に同期して前記送信信号を重畳し、前記他方の地点では、前記第2ゼロクロス点検出回路で検出されるゼロクロス点に同期して前記送信信号を検出することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記第1分圧回路、及び第2分圧回路は、互いに直列接続された少なくとも2個の抵抗、及びこの直列接続に対して並列に接続されるコンデンサからなることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記交流電圧に応じた電圧は、前記交流電圧の電圧、または前記交流電圧の電圧を所定の分圧比で分圧した電圧であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るゼロクロス点検出装置では、交流信号の振幅が変動した場合でもこれに伴って基準信号が変動するので、ゼロクロス点を高精度に検出することができる。
【0015】
また、本発明に係る信号伝送システムでは、ゼロクロス点を検出する際に、交流電圧の振幅が変動した場合でも第1基準電圧、及び第2基準電圧が交流電圧の振幅変動に伴って変動するので、高精度なゼロクロス点の検出が可能となる。従って、第1地点にて送信信号を重畳するタイミング、及び第2地点で送信信号を検出するタイミングを高精度に同期させることができ、信号伝送の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る信号伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る信号伝送システムに設けられるゼロクロス点検出回路を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る信号伝送システムで伝送される各信号の波形図である。
【図4】本発明に係るゼロクロス点検出装置を用いない場合の、ゼロクロス点の変動を示す特性図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るゼロクロス点検出装置を用いた場合の、ゼロクロス点の変動を示す特性図である。
【図6】従来におけるゼロクロス点の検出方法を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る信号伝送システムの構成を示すブロックである。図1に示すように、この信号伝送システムは、例えば、工場に設置されるキュービクル(高圧受変電設備)等に設けられる受電盤11(第1地点)と、該受電盤11と送電線31を介して接続される制御盤21(第2地点)を備えている。そして、受電盤11から制御盤21に、送電線31を経由して例えばAC100Vの交流電圧(交流信号)を送電することにより、受電盤11で受電した電力を制御盤21に供給する。更に、PLC通信方式を用いて交流電圧に計装信号等の各種送信信号を重畳することにより、受電盤11と制御盤21との間でのデータ伝送を行うことができる。
【0018】
受電盤11は、外部より供給される交流電圧を所望の交流電圧に変圧するトランスTR1と、該トランスTR1で変圧された交流電圧を送電線31に供給すると共に、キュービクル内に搭載される各種の電気機器(図示省略)に駆動用の電力を供給する電源部12と、電源部12より出力される交流電圧に対して、PCL通信方式により送信信号を重畳すると共に、制御盤21側より送信される送信信号を受信するPLC回路13と、を備えている。
【0019】
また、制御盤21は、受電盤11より送電線31を経由して伝送された交流電圧を受電して、各種の電気機器(図示省略)に供給する電源部22と、交流電圧に重畳して伝送された送信信号を受信すると共に、PLC通信方式により該交流電圧に送信信号を重畳するPLC回路23と、を備えている。
【0020】
そして、図1に示した受電盤11及び制御盤21では、送電線31を経由して伝送される交流電圧のゼロクロス点を検出し、このゼロクロス点を基準として送信信号の送信タイミングと受信タイミングを同期させている。
【0021】
以下、制御盤21に設けられるゼロクロス点検出回路を、図2に示す回路図を参照して説明する。なお、受電盤11に設けられるゼロクロス点検出回路も同一構成である。また、図2では、受電盤11より送信される交流電圧を、交流電源E1で示している。
【0022】
図2に示すように、このゼロクロス点検出回路(第1,第2ゼロクロス点検出回路)は、交流電源E1(出力電圧も同一の記号E1で示す)のプラス側出力端子及びマイナス側出力端子にそれぞれ接続されたダイオードD1,D2を備え、各ダイオードD1,D2のカソードは互いに接続されている。そして、この接続点P1は、抵抗R1とR2の直列接続回路を介して点P2に接続されている。
【0023】
更に、接続点P1は、ダイオードD3のアノードに接続され、該ダイオードD3のカソードは2系統に分岐され、1つ目の分岐線は抵抗R3とR4の直列接続回路を介して点P2に接続され、2つ目の分岐線はコンデンサC1を介して点P2に接続されている。即ち、抵抗R3とR4の直列接続(第1,第2分圧回路)に対して、コンデンサC1が並列に接続されている。
【0024】
また、抵抗R1とR2との接続点P3は比較器CMP1(第1,第2比較手段)のプラス側入力端子に接続され、抵抗R3とR4との接続点P4は比較器CMP1のマイナス側入力端子に接続されている。更に、比較器CMP1の出力端子は、後段側の回路(図示省略)に接続されている。更に、交流電源E1のプラス側出力端子、及びマイナス側出力端子はそれぞれ全波整流回路B1に接続される。従って、該全波整流回路B1の出力電圧は、正弦波状に変化する交流電圧を全波整流した周期波形となる。
【0025】
ここで、上述した各抵抗R1〜R4は、R2/(R1+R2)>R4/(R3+R4)が成立するように設定されている。つまり、抵抗R2の両端に生じる電圧の方が、抵抗R4の両端に生じる電圧よりも高くなるように設定されている。また、点P3に生じる電圧(以下、「参照電圧Vref」という)は、交流電圧E1を抵抗R1とR2で分圧して得られる電圧であるから、交流電圧E1と同一周波数の交流電圧となる。つまり、参照電圧Vref(参照信号)は、交流電圧E1を所定の比率で縮小した信号となる。
【0026】
更に、点P4に生じる電圧である基準電圧V1(第1,第2基準電圧)は、交流電圧E1を抵抗R3とR4で分圧して得られる交流電圧をコンデンサC1で平滑化するので、交流電圧E1の振幅に応じて決定されるほぼ一定の電圧となる。
【0027】
そして、比較器CMP1は、参照電圧Vrefが基準電圧V1を上回る場合に、出力信号がHレベルとなり、参照電圧Vrefが基準電圧V1を下回る場合に、出力信号がLレベルとなる。従って、タイミング信号は、比較器CMP1の出力信号がHレベルのときLレベルとなり、比較器CMP1の出力信号がLレベルのときHレベルとなる。
【0028】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る信号伝送システムの作用について説明する。図1に示すように、受電盤11にて受電された交流電圧は、送電線31を介して制御盤21に送信され、該制御盤21に設けられた電源部22より各電気機器に駆動用の電力が供給される。また、受電盤11に設けられるPLC回路13より送信信号が出力されると、この送信信号は交流電圧に重畳され、制御盤21に送信される。
【0029】
この際、受電盤11のPLC回路13では、交流電圧のゼロクロス点に同期して送信信号を重畳し、制御盤21のPLC回路23では、ゼロクロス点に同期して送信信号を検出する。以下、図3に示すタイミングチャートを参照して、受電盤11側で交流電圧に重畳され、その後、制御盤21側で検出される送信信号について説明する。まず、図3(a)に示すように、商用周波数50Hz、或いは60Hzの交流電圧E1(図2参照)が与えられた場合には、この交流電圧E1は全波整流回路B1にて全波整流されるので、図3(b)に示す如くの全波整流信号が生成される。
【0030】
更に、交流電圧E1がプラス側に振幅している場合には、この交流電圧E1はダイオードD1を経由して、抵抗R1,R2の直列接続回路に印加されるので、交流電圧E1を抵抗R1,R2で分圧した電圧が参照電圧Vrefとして比較器CMP1のプラス側入力端子に供給される。
【0031】
また、交流電圧E1は、ダイオードD1,D3を経由して抵抗R3,R4の直列接続回路に印加され、且つ、この直列接続回路に対して並列に平滑用のコンデンサC1が接続されているので、抵抗R3,R4の接続点P4に発生する基準電圧V1は、交流電圧E1を抵抗R3とR4で分圧した電圧を平均した電圧となる。つまり、交流電圧E1の振幅の変動に伴って基準電圧V1が変動することになる。
【0032】
そして、比較器CMP1の出力信号は、参照電圧Vrefが基準電圧V1を下回っているときにLレベル、上回っているときにHレベルとなり、タイミング信号はこれが反転するので、参照電圧Vrefが基準電圧V1を下回っているときにHレベル、上回っているときにLレベルとなる。
【0033】
他方、交流電圧E1がマイナス側に振幅している場合には、この交流電圧E1はダイオードD2を経由して、抵抗R1,R2の直列接続回路に印加されるので、交流電圧E1を抵抗R1,R2で分圧した電圧が参照電圧Vrefとして比較器CMP1のプラス側入力端子に供給される。また、接続点P4には、交流電圧E1の振幅の変動に伴って変動する電圧が発生し、この電圧が基準電圧V1として比較器CMP1のマイナス側入力端子に供給される。
【0034】
そして、上記の場合(プラス側に振幅している場合)と同様に、タイミング信号は、参照電圧Vrefが基準電圧V1を下回っているときにHレベル、上回っているときにLレベルとなる。即ち、交流電圧E1の振幅変動に伴って変動する基準電圧V1が設定され、更に、交流電圧E1を分圧して得られる参照電圧Vrefが、基準電圧V1を下回っているときにHレベル、上回っているときにLレベルとなるタイミング信号(図3(c)参照)が生成されることになる。
【0035】
そして、受電盤11のPLC回路13では、上述の処理で検出されたタイミング信号の後縁をゼロクロス点として設定し、このゼロクロス点で区切られる時間帯にて、FSK(Frequency Shift Keying)変調方式により送信信号を生成し、交流電圧に重畳する。
【0036】
例えば、図3(d)に示すように、周波数3.0KHzの正弦波信号を「0」とし、3.4KHzの正弦波信号を「1」とするディジタルの送信信号を重畳する。そして、FSK変調方式による送信信号が重畳された交流電圧が制御盤21に送信されると、制御盤21のPLC回路23は、この交流電圧に基づき、前述した手順と同様の手順でタイミング信号を生成し、このタイミング信号の後縁をゼロクロス点とし、このゼロクロス点のタイミングに同期して、交流電圧に重畳されている送信信号を検出する。その結果、図3(e)に示すように、周波数が3.0KHzである場合にはこれを「0」として読み取り、周波数が3.4KHzである場合にはこれを「1」として読み取ることができる。
【0037】
ここで、受電盤11から送電線31を経由して制御盤21に送信される交流電圧は、送電線31により電圧降下が発生するので、受電盤11より送信される交流電圧よりも制御盤21で受信される交流電圧の方が、振幅が小さくなる。従って、図3(c)に示すタイミング信号を生成するための基準電圧V1を一定値とすると、前述した図6に示したように、受電盤11側で検出されるゼロクロス点と、制御盤21側で検出されるゼロクロス点との間にずれが生じてしまう。このため、交流電圧に送信信号を重畳するタイミングと、交流電圧に重畳されている送信信号を検出するタイミングが一致しなくなる。
【0038】
本実施形態に係るゼロクロス点検出回路では、図2に示したように、交流電圧E1を抵抗R3,R4で分圧した電圧を平滑化し、平滑化後の電圧を基準電圧V1として設定しているので、電圧降下等に起因して交流電圧E1の振幅が変動した場合であっても、この振幅の変動に伴って基準電圧V1が変動するので、振幅変動に影響されない高精度なゼロクロス点の検出が可能となる。
【0039】
次に、本発明を適用した場合と適用しない場合とで、ゼロクロス点を計測した結果について説明する。図4(a),(b)は、本発明を適用しない場合、即ち、図2に示す比較器CMP1のマイナス側入力端子に、常時一定の基準電圧V1を供給して、ゼロクロス点を求めた場合の、ゼロクロス点の変化を示すタイミングチャートである。そして、図4(a)は交流電圧E1の振幅が100V(実効値)である場合を示し、(b)は交流電圧E1の振幅が90V(実効値)である場合を示している。
【0040】
図4(a)において、曲線S1は参照電圧Vrefの変化を示し、曲線Q1はタイミング信号に同期して変化するパルス信号を示している。図4(a)に示すように、交流電圧E1の振幅が100Vの場合には、参照電圧Vrefが0Vとなった後、2.5[msec]が経過した後に、該参照電圧Vref(S1)の絶対値が基準電圧V1の絶対値を上回っている(つまり、S1がV1と交わっている)。また、図4(b)において、曲線S2は参照電圧Vrefの変化を示し、曲線Q2はタイミング信号に同期して変化するパルス信号を示している。そして、図4(b)に示すように、交流電圧E1の振幅が90Vの場合には、参照電圧Vrefが0Vとなった後、2.9[msec]が経過した後に、該参照電圧Vrefの絶対値が基準電圧V1の絶対値を上回っている(つまり、S2がV1と交わっている)。
【0041】
上記のことから、交流電圧E1の振幅が90〜100Vの間で変化すると、0.4[msec]だけゼロクロス点のタイミングにずれが生じていることが理解される。
【0042】
図5(a),(b)は、本発明を適用した場合、即ち、図2に示すように、交流電圧E1を抵抗R3,R4で分圧し且つ平滑化して生成した基準電圧V1を、比較器CMP1のマイナス側入力端子に供給してゼロクロス点を求めた場合の、ゼロクロス点の変化を示すタイミングチャートである。そして、図5(a)は交流電圧E1の振幅が100V(実効値)である場合を示し、(b)は交流電圧の振幅が90V(実効値)である場合を示している。
【0043】
図5(a)において、曲線S3は参照電圧Vrefの変化を示し、曲線Q3はタイミング信号に同期して変化するパルス信号を示している。図5(a)に示すように、交流電圧E1の振幅が100Vの場合には、参照電圧Vrefが0Vとなった後、2.50[msec]が経過した後に、該参照電圧Vrefの絶対値が基準電圧V1の絶対値を上回っている(つまり、S3がV1と交わっている)。また、図5(b)において、曲線S4は参照電圧Vrefの変化を示し、曲線Q4はタイミング信号に同期して変化するパルス信号を示している。図5(b)に示すように、交流電圧E1の振幅が90Vの場合には、参照電圧Vrefが0Vとなった後、2.46[msec]が経過した後に、該参照電圧Vrefの絶対値が基準電圧V1の絶対値を上回っている(つまり、S4がV1と交わっている)。
【0044】
上記のことから、交流電圧E1の振幅が90〜100Vの間で変化すると、0.04[msec]だけゼロクロス点のタイミングにずれが生じており、ほぼ無視できる程度であることが理解される。
【0045】
上記の測定結果により、本実施形態に係るゼロクロス点検出装置では、交流電圧の振幅変化の影響をほとんど受けることなく、高精度なゼロクロス点の検出が可能であることが判る。
【0046】
このようにして、本実施形態に係る信号送信システム及びゼロクロス点検出装置では、受電盤11側から制御盤21側に伝送する交流電圧に送信信号を重畳して、受電盤11と制御盤21との間の信号伝送を行う場合に、交流電圧を分圧して得られる電圧を基準電圧V1(比較器CMP1のマイナス側入力端子に供給する電圧)とするので、電圧降下等に起因して交流電圧E1の振幅が変動した場合であっても、高精度にゼロクロス点を検出することができ、信号伝送の精度を著しく向上させることができる。
【0047】
以上、本発明のゼロクロス点検出装置、及び信号伝送システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、交流電圧に重畳する送信信号の変調方式として、FSKを用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばASK(Amplitude Shift Keying)やその他の変調方式を用いることも可能である。
【0049】
また、上述した実施形態では、交流電圧を抵抗R1とR2で分圧した電圧を参照電圧Vrefとして比較器CMP1のプラス側入力端子に供給するようにしたが、分圧せずに交流電圧E1自体を参照電圧Vrefとしても良い。
【0050】
また、上述した実施形態では、PLC回路で用いるゼロクロス点検出回路について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他のゼロクロス点の検出に採用することができる。
【0051】
更に、上述した実施形態では、図3(c)に示したようにタイミング信号の後縁をゼロクロス点としたが、タイミング信号の前縁をゼロクロス点としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、交流信号のゼロクロス点を高精度に検出することに利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
11 受電盤
12 電源部
13 PLC回路
21 制御盤
22 電源部
23 PLC回路
31 送電線
TR1 トランス
E1 交流電源
D1〜D3 ダイオード
B1 全波整流回路
CMP1 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流信号のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出装置において、
前記交流信号を分圧し且つ平滑化して基準信号を生成する分圧回路と、
前記交流信号に応じた参照信号と、前記基準信号とを比較する比較手段と、
を有し、
前記参照信号が前記基準電圧を下回る点、或いは上回る点の少なくとも一方をゼロクロス点とすることを特徴とする交流信号のゼロクロス点検出装置。
【請求項2】
前記分圧回路は、互いに直列接続された少なくとも2個の抵抗、及びこの直列接続に対して並列に接続されるコンデンサからなることを特徴とする請求項1に記載の交流信号のゼロクロス点検出装置。
【請求項3】
前記参照信号は、前記交流信号自体、または前記交流信号を所定の比率で縮小した信号であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の交流信号のゼロクロス点検出装置。
【請求項4】
第1地点から、該第1地点とは離間した第2地点に交流電圧を伝送すると共に、該交流電圧に送信信号を重畳して、前記第1地点、第2地点間の信号伝送を行う信号伝送システムにおいて、
前記第1地点及び第2地点のうちの一方の地点には、
前記交流電圧を分圧し且つ平滑化して第1基準電圧を生成する第1分圧回路と、前記交流電圧に応じた電圧と前記第1基準電圧とを比較する第1比較手段とを含み、前記交流電圧に応じた信号が前記第1基準電圧を下回る点、或いは上回る点のいずれか一方をゼロクロス点とする第1ゼロクロス点検出回路が設けられ、
前記第1地点及び第2地点のうちの他方の地点には、
前記第1分圧回路と同一の分圧比で前記交流電圧を分圧し且つ平滑化して第2基準電圧を生成する第2分圧回路と、前記交流電圧に応じた電圧と前記第2基準電圧とを比較する第2比較手段とを含み、前記交流電圧に応じた信号が前記第2基準電圧を下回る点、或いは上回る点のいずれか一方をゼロクロス点とする第2ゼロクロス点検出回路が設けられ、
前記一方の地点では、前記第1ゼロクロス点検出回路で検出されるゼロクロス点に同期して前記送信信号を重畳し、前記他方の地点では、前記第2ゼロクロス点検出回路で検出されるゼロクロス点に同期して前記送信信号を検出することを特徴とする信号伝送システム。
【請求項5】
前記第1分圧回路、及び第2分圧回路は、互いに直列接続された少なくとも2個の抵抗、及びこの直列接続に対して並列に接続されるコンデンサからなることを特徴とする請求項4に記載の信号伝送システム。
【請求項6】
前記交流電圧に応じた電圧は、前記交流電圧の電圧、または前記交流電圧の電圧を所定の分圧比で分圧した電圧であることを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載の信号伝送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−5023(P2012−5023A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140480(P2010−140480)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】