説明

交通シミュレーション装置、方法及びプログラム

【課題】 周辺状況の認知状態や判断を考慮して交通シミュレーションを行う。
【解決手段】 認識部は、視野画像を生成し(ステップS1)、輪郭線抽出処理を行った後(ステップS2)、視野内面積を算出する(ステップS3)。そして、存在認識度、認識距離、認識速度を算出する(ステップS4、S5)。判断部12は、ドライバの認知の程度を反映した存在認識度、認識距離、認識速度を用いて次の行動を判断する(ステップS7〜S15)。操作部13は判断部12の次の判断に応じて操作量を演算し(ステップS16)、挙動演算部14は操作量に基づいて挙動量を演算する(ステップS17)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通シミュレーション装置、方法及びプログラムに係り、特に、ドライバの認知、判断エラーを考慮して移動体の動きをシミュレーションする交通シミュレーション装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路交通システムを計画する場合、どこに何を整備すれば交通渋滞が発生しないか等の効果を事前に評価することが必要である。そこで、車両一台一台の挙動をコンピュータ上で再現し、交通の流れや渋滞の様子をシミュレートする道路交通シミュレーション装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の道路交通シミュレーション装置は、複数の移動体と道路交通環境とをコンピュータ上で表現し前記移動体により発生する交通状況を模擬する。具体的には、移動体の各々は、仮想的なドライバによる運転操作をモデル化したドライバモデルと、各移動体の物理的な挙動をモデル化した車両運動モデルとの組合せである移動体モデルで表現されている。そして、移動体モデルは、各々独立にコンピュータ上で表現された道路交通環境内を通行する。また、種々の道路交通環境に反応してドライバモデルの出力値が車両運動モデルに与えられることによって、各移動体モデルは、詳細な車両挙動を表現する。
【特許文献1】特開2004−199287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このドライバモデルは、特許文献1の図6に示すように、交通環境データベース20から得られる通行可能領域等のデータに基づいて、移動体が設定経路に追従するための経路を計算し、通行困難領域や他の移動体の通行困難度を移動体からの視界に変換した見かけの通行困難度分布を生成する。したがって、ドライバの行動が建物等の物理的制約と道路交通法等の法規的制約によって決まってしまい、ドライバの周辺状況の認知状態、その認知に基づく判断が考慮されていない。
【0005】
また、ドライバモデルはエラーがないのが前提となっている。このため、道路交通シミュレーション装置は、交通事故の発生をシミュレートすることができない。
【0006】
例えば、道路において事故が起きた場合、原因として、ドライバの認識ミス、判断ミス、操作ミスが考えられる。交差点での事故では、原因として、前方の対向車、信号、標識を「気づかなかった」や「見えなかった」などの認識ミス、見えているが速度を誤認し間に合うと思った判断ミス、ハンドル操作を誤ったなどの操作ミスがあげられる。
【0007】
特に、認識ミスは、日照による明るさ、認識対象の色、天候、背景、などの条件により左右される。また、視認できる状況であっても、ドライバの覚睡度によって、「ぼんやりして見落とした」など認識できないこともある。これらは、ドライバによって状況は異なるが、確率的に起きると考えられる。
【0008】
このようなドライバのミスに対して、機器によりドライバを補助し、情報提供および車両制御により事故発生を低減させる様々な安全システムが実用化されている。
【0009】
例えば、赤外光と画像処理を用いた安全システムは、夜間において人間が視認しにくい条件であっても、赤外光に感度を持つカメラで撮像される画像により、周辺の物体を認識、検出することが可能であり、これらの情報をドライバに提供する。
【0010】
また、レーダーを使った安全システムは、車両周辺の物体までの距離を高精度に検出し、このままの進路、速度を維持した場合に物体に衝突する可能性がある場合は、ドライバへの情報提供や車両の制御を行う。
【0011】
無線装置を使った安全システムは、無線装置を搭載した車両から車の位置や速度情報が送信され、それを路上の中継装置を経由して、または直接他の車両に送信する。この情報を受信した車両は、自車の位置に対する周辺車両の位置や速度などを把握し、危険な状態であるかを判断する。危険な場合は、ドライバへの情報提供や車両の制御を行う。
【0012】
このような安全システムの普及を図るためには、機器を導入することによりどの程度、事故を低減する効果があるかを検証する必要がある。そして、これらの検証には、人間がミスをしたときにシステムがカバーできるかを評価できる必要がある。また、このような機器により自車の事故が回避できたとしても、例えば緊急ブレーキのように急な回避行動により後続車の追突など新たな事故を誘発する可能性もあるため、このようなことも検証することも重要である。
【0013】
安全システムは、条件によって周囲の状況が認識できず、ドライバに有用な情報提供や車両制御が行えない場合もある。システムの有効性評価は、考えうる全ての条件で動作させる場合を想定しなければならない。
【0014】
しかしながら、システムが動作する交通状況や気象条件など考えられる様々な条件の組み合わせに対して、実車で効果確認するのは時間的および費用的に困難である。そのため、様々な条件で評価を実施できるシミュレーションでこれら評価することは有用である。
【0015】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、周辺状況の認知状態や判断を考慮して交通シミュレーションを行う交通シミュレーション装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る交通シミュレーション装置は、移動体の挙動量に基づいて道路上の移動体の動きをシミュレーションする交通シミュレーション装置であって、ドライバの視野画像に基づいて道路状況を認識する認識手段と、前記認識手段により認識された道路状況に基づいて、ドライバの次の行動を判断する判断手段と、前記判断手段により判断されたドライバの次の行動に基づいて、前記移動体を操作する操作手段と、前記操作手段の操作に応じて移動体の挙動量を演算する車両挙動量演算手段と、を備え、前記認識手段は、前記視野画像に基づいて、認識対象物の存在認識度、認識速度、認識距離の少なくとも1つを算出し、算出結果に基づいて道路状況を認識する。
【0017】
認識手段は、ドライバの認識の仕方を模したものであり、ドライバの視野画像に基づいて道路状況を認識する。この視野画像は、予め記憶装置に用意しておいたものでもよいし、ネットワークを介して送信されたものでもよい。ここで、認識手段は、前記視野画像に基づいて、ドライバの認識の程度を反映した認識対象物の存在認識度、認識速度、認識距離の少なくとも1つを算出し、算出結果に基づいて道路状況を認識する。
【0018】
判断手段は、ドライバの判断の仕方を模したものであり、認識された道路状況に基づいて、ドライバの次の行動を判断する。よって、ドライバが認知ミスをすると判断エラーが生じることがあり、また認知ミスをしなくても判断エラーが生じることもある。操作手段は、判断されたドライバの次の行動に基づいて、前記移動体を操作する。
【0019】
したがって、交通シミュレーション装置は、視野画像に基づいて、認識対象物の存在認識度、認識速度、認識距離の少なくとも1つを算出し、算出結果に基づいて道路状況を認識し、次の行動を判断し、移動体を操作することによって、周辺状況の認知状態や判断を考慮して交通シミュレーションを行うことができる。
【0020】
また、本発明は、交通シミュレーション方法及びプログラムにも適用可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る交通シミュレーション装置、方法及びプログラムは、視野画像に基づいて、認識対象物の存在認識度、認識速度、認識距離の少なくとも1つを算出し、算出結果に基づいて道路状況を認識し、次の行動を判断し、移動体を操作することによって、周辺状況の認知状態や判断を考慮して交通シミュレーションを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る交通シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。交通シミュレーション装置は、各移動体(例えば車両)の動きをシミュレーションしながらその結果を例えば図示しない表示装置に表示し、交通事故の発生件数を計測するものである。
【0024】
ここで、交通シミュレーション装置は、移動体をモデル化した移動体モデル部10A、10B、10Cを道路上に配置して、移動体モデル部10A、10B、10Cの交通状況をシミュレーションする。なお、3つの移動体モデル部をそれぞれ区別するときはA〜Cの符号を付すが、3つの移動体モデル部を区別する必要がないときはA〜Cの符号を省略する。
【0025】
交通シミュレーション装置は、移動体をモデル化した移動体モデル部10と、移動体モデル部10の交通状況を管理する交通状況管理部30と、道路ネットワークデータ、走行車両データ、視野画像等のその他必要なデータを記憶した交通データベース40と、移動体モデル部10を空間配置する空間配置部50と、各移動体モデル部10が衝突するか否かを判定する衝突判定部60と、道路に設置され移動体モデル部10との間で通信する路側通信部70と、路側通信部70を制御する路車間通信システム部80と、を備えている。
【0026】
移動体モデル部10A、10B、10Cは、いずれも路上の物体を認識する認識部11と、次に移行すべき行動を判断する判断部12と、移動体の操作量を決定する操作部13と、決定された操作量に基づいて移動体の挙動を演算する挙動演算部14と、を備えている。
【0027】
認識部11は、ドライバの道路状況の認識の仕方を模したものであり、空間配置部50によって道路空間上に配置された移動体(例えば車両)や路上物体の位置関係をもとに、ドライバの視点位置において車両、路上物体を認識する。
【0028】
判断部12は、ドライバの判断の仕方を模したものであり、交差点までの距離、周辺車両の有無や位置、速度をもとに次に移行すべき行動を判断する。判断部12は、例えば、進行方向の行動として「停止する」、「速度を維持する」、「徐行する」、横方向の行動として「車線変更する」、「右に寄る」、「右折する」などを決定する。
【0029】
操作部13は、ドライバの操作の仕方を模したものであり、決定された行動に基づいて移動体の操作量を決定する。操作部13は、例えば進行方向の操作量については、現在の車両速度に基づいて、目標状態へ移行するための加減速度を決定し、移動体毎の特性に従ってアクセルおよびブレーキの操作量を決定する。また、操作部13は、横方向の操作量については、現在の車両速度と現在のハンドル操舵量に基づいて次のハンドル操舵量を決定する。
【0030】
挙動演算部14は、操作部13によって決定された操作量に従って移動体の挙動を演算する。各移動体は、重量、排気量などが異なるため、同じ操作量であっても挙動は異なる。
【0031】
ここで、移動体モデル部10A、10Bは交通情報を提供し及び/又は移動体を制御してドライバを補助する安全システムを更に備えているが、移動体モデル部10Cは安全システムを備えていない。
【0032】
例えば、移動体モデル部10Aは、上記の安全システムである車載装置部20Aを更に備えている。車載装置部20Aは、カメラやレーダーなどで物体を計測・認識するセンシング部21と、路側通信部70との間で無線通信する通信部22と、例えば画像処理や電波の強度を計測する処理部23と、ドライバに周辺常用を提供する情報提供部24と、他の移動体との衝突を回避するように移動体の動作を制御する移動体制御部25と、を備えている。
【0033】
センシング部21は、例えばカメラやレーダー装置からなる。センシング部21は、例えばカメラの場合、ステレオ法やオプティカルフロー法による対象物までの距離を認識したり、画像処理によって車両、歩行者、自転車、白線、周辺物などを認識したりする。センシング部21は、レーダー装置の場合、レーザやミリ波によって対象物までの距離を認識する。
【0034】
通信部22は、路側通信部70との路車間通信や、同様な装置を搭載した移動体同士の車車間通信により、周辺車両の位置、速度などの情報を送受信する。
【0035】
処理部23は、センシング部21や通信部22からの情報に基づいて、ドライバに例えば接近車両の情報を伝えるか否かを判断し、情報を伝える場合には情報提供部24に情報を伝達する。
【0036】
情報提供部24は、伝達された情報をディスプレイ装置などによってドライバに提供する。なお、情報提供部24は、処理部23から情報が伝達された場合、ドライバに提供した情報を判断部12に入力する。これにより、判断部12は、ある確率を持って提供された情報に対して次に移行すべき行動を判断する。
【0037】
移動体制御部25は、処理部23で処理された状況に応じて移動体制御、例えばブレーキ制御を行う。このとき、挙動演算部14は、操作部13で決定された操作量に加えて移動体制御部25で決定される操作量(例えばブレーキ操作量)に従って、移動体の挙動を演算する。
【0038】
一方、移動体モデル部10Bの車載装置部20Bは、車載装置部20Aの構成からセンシング部21を除いたものである。また、移動体モデル部10Cは、安全システム、つまり車載装置部を備えていない。
【0039】
交通状況管理部30は、計算ステップ毎の個々の車の位置、速度、加速度を管理する。また、道路上を走行する車両の発生、消滅も管理する。車両の発生消滅は、全てスケジュールされたもので与えてもよいし、特定区間での発生割合で与えてもよい。
【0040】
空間配置部50は、交通状況管理部で管理されている各車の位置情報や速度情報に従って、各車を道路空間上に配置する。衝突判定部60は、空間配置部によって道路空間上に配置された車や路上物体の位置関係を比較することで、車と路上物体および車と車の衝突を判定する。衝突する車両の速度、重量、衝突安全性から衝突による車両および乗員の被害を演算する。
【0041】
以上のように構成された交通シミュレーション装置は次のように動作する。以下では、移動体として車両を用いて説明する。
【0042】
図2は、時刻Tにおいて自車Cが交差点で右折する状況を示す図である。各車両は破線の方向に移動するものとし、自車Cはこの交差点で右折する。以下では、ドライバが対向車の認知およびその際の判断により進行方向の操作量を決める手順についてのべる。なお、本実施形態は、対向車の認知について中心に述べるが、そのほかにも信号、歩行者、周辺建物などの認識、判断、操作量決定も行う。また同様に、水平方向の判断、操作量決定も実施する。
【0043】
図3は、自車Cの右折処理ルーチンを示すフローチャートである。右折処理ルーチンは、所定計算ステップ毎に実行される。自車Cに対応する移動体モデル部10Cは次のように処理を実行する。
【0044】
最初に、認識部11は、自車Cが右折するための判断に用いられる存在認識度、認識距離、認識速度を算出する。ここでは、ドライバAが自車Cを運転している場合を例に挙げて説明する。
【0045】
具体的にステップS1では、認識部11は、空間配置部50によって配置された自車Cの情報に基づいて、自車Cのドライバの視点における視野画像を生成して、ステップS2に移行する。
【0046】
図4は、時刻Tにおける視野画像の一例を示す図である。視野画像は、投影変換等によって表現され、ドライバの視界に相当する画像である。図4の視野画像には、対向車Aのみが現れている。時間の経過と共に自車Cを含む各車両が移動すると、認識部11は、ドライバの視野の変化に応じた視野画像を生成する。
【0047】
図5は、時刻(T+t)における視野画像の一例を示す図である。図5の視野画像には、対向車Aだけでなく対向車Bも現れている。
【0048】
ステップS2では、認識部11は視野画像に輪郭線抽出処理を行い、ステップS3では、認識部11は輪郭線で囲まれる認識対象の面積を視野内面積として算出して、ステップS4に移行する。
【0049】
図6及び図7は、図4及び図5の視野画像に対して輪郭抽出処理を行った結果を示す図である。図8は、認識対象の面積である視野内面積を示す図である。視野内面積とは、ドライバの視野における認識対象物の面積を示す。
【0050】
認識対象物の認識のし易さは、明るさや背景とのコントラストなどによっても異なる。背景などのコントラストが低く認識しにくい状況では、輪郭線が抽出されにくくなり、認識性と同様に視野内面積も減少する。このため、視野内面積は、環境に応じた認識の難易度を表現できる。なお、本実施形態では、輪郭抽出により認識対象の面積を算出したが、2値化処理などの画像処理手法により、直接面積を求めてもよい。
【0051】
ステップS4では、認識部11は、認識対象物の存在認識度を算出する。なお、図5及び7に示すように、認識対象物が複数あるときは、認識部11は各々の認識対象物の存在認識度を算出する。存在認識度は、ドライバの視野中の物体の認識度合いを示し、値が小さいほど存在を認識していないことを示す。なお、存在認識度は、必要に応じて百分率に換算されたものが使用される。具体的には、認識部11は次の式(1)を演算してステップS5に移行する。
【0052】
存在認識度=[視野内面積]÷[視野全面積]×[視野係数]×[覚醒度]
・・・(1)
【0053】
ここで、視野全面積は、視野全体の面積を示す。視野係数は、視野内の位置による認識の程度を示し、中心地点は高く、周辺になるに従い低くなる。これにより注視点近辺は認識しやすく、それ以外の周辺視野は認識しにくいことが表現される。
【0054】
図9は、視野係数の一例を示す図である。同図に示すように、視野係数は、画像の中心地点では1.0、その周囲の範囲では0.8、端の方では0.4になっている。なお、視野係数は、ドライバの視力に応じて変更してもよい。
【0055】
また、覚醒度は、ドライバの覚醒の度合いを示し、ぼんやりしている状態では認識度が下がることを表現する。
【0056】
図10は、ドライバの覚醒度の頻度分布の例を示す。本実施形態では、覚醒度は、全ドライバに対して確率的な分布で与えられる。
【0057】
ステップS5では、認識部11は、認識対象物の存在認識度、実際の距離、実際の速度を用いて、距離認識度及び速度認識度を演算する。具体的には、認識部11は次の式(2)及び(3)を演算して、ステップS6に移行する。
【0058】
認識距離=[距離]×(1+k1×1/[存在認識度]) ・・・(2)
認識速度=[速度]×(1−k2×1/[存在認識度]) ・・・(3)
【0059】
k1、k2はパラメータである。認識距離、認識速度は、実際の距離、速度に対して、視野から認識できる速度、距離を示す。存在認識度が低い、つまり存在を認識しにくい場面ほど、ドライバは距離を遠くに認知し、速度を遅く認知する。
【0060】
ステップS6では、認識部11は、存在認識度、認識距離、認識速度を、次の判断を行うために、一時的に記憶装置に記憶して、ステップS7に移行する。また、認識部11は、ドライバの特性に応じて、条件によって前の計算ステップで演算した存在認識度、認識距離、認識速度を呼び出し、次の判断を行うために保持してもよい。前の計算ステップで演算した存在認識度、認識距離、認識速度を用いるのは、高齢者などによる認識遅れを表現するものである。
【0061】
つぎに、判断部12は、自車Cが右折する場合において、認識部11で算出された存在認識度、認識距離、認識速度に基づいて、周囲の状況を判断して次の行動を決定する。認識部11は、右折時では、次の4つの項目を判断する。
【0062】
1.対向車の有無
2.自車とぶつかる進路か否か
3.進行した場合、衝突するか否か
4.対向車が来ると考えられる可能性
【0063】
そして、判断部12は、行動を決定するために次のデータを用いる。
【0064】
図11は、ドライバの特性を示す図である。個々のドライバに対して、ドライバの特性を示す「慎重度」、「熟練度」、「身体能力度」が0.0〜1.0の間で設定されている。「慎重度」は運転の慎重さを示し、乱暴な運転をするドライバの値は低くなる。「熟練度」は運転経験からくる熟練の度合いを示し、初心者ドライバの値は低くなる。「身体能力度」は視力、反応時間など身体的な能力を示し、高齢者ドライバの値は低くなる。
【0065】
例えば、40歳台で運転暦が20年の慎重な運転をするドライバAの場合、「慎重度」、「熟練度」、「身体能力度」を、0.9、1.0、0.7とする。20歳台で運転暦が3年のやや乱暴な運転をするドライバBの場合、「慎重度」、「熟練度」、「身体能力度」をそれぞれ0.3、0.2、1.0とする。これらの値は、ドライバに対するアンケートなどによって、分布を調査し、その調査結果をもとに確率的に設定される。
【0066】
また、認識部11は、後述するステップにおいて認識存在度評価値、到達時間評価値、対向車予測評価値を使用する。これらの評価値は、次の式(4)で求められる。
【0067】
[評価値]=(α×[慎重度]+β×[熟練度]+γ×[身体能力度])
/(α+β+γ)・・・(4)
【0068】
α、β、γはそれぞれ慎重度係数、熟練度係数、身体能力度係数である。ここで、認識存在度評価値、到達時間評価値、対向車予測評価値のいずれを求めるかによって、各係数は異なった値になる。
【0069】
図12は、評価値毎の慎重度係数、熟練度係数、身体能力度係数を示す図である。例えば、存在認識度評価値を求めるときは、α、β、γはそれぞれ3、0、2になる。到達時間評価値を求めるときは、α、β、γはそれぞれ2、2、1になる。
【0070】
また、判断部12は、後述するステップにおいて、評価値を用いて存在認識度閾値、到達時間閾値、対向車がくる可能性を設定する。
【0071】
図13は、評価値に対応する存在認識度閾値、到達時間閾値、対向車がくる可能性を示す図である。例えば、存在認識度評価値が0.9の場合、存在認識度閾値は3(%)である。到達時間評価値が0.3の場合、到達時間閾値は2.3(秒)である。対向車予測評価値が0.5の場合、対向車がくる可能性は50(%)である。
【0072】
判断部12は、以上のようなデータを用いて、次のステップS7〜S14の処理を実行する。
【0073】
ステップS7では、判断部12は、信号条件、すなわち信号灯火による進行の可否を判断する。具体的には、判断部12は、信号が青であるか否かを判断し、肯定判断のときは進行可能であるのでステップS8に移行し、否定判断のときは進行可能でないのでステップS11に移行する。
【0074】
ステップS8では、判断部12は、対向車が存在するか否かを判断する。複数の対向車が認識された場合、自車Cから最も距離の近い対向車が判断対象となる。具体的には、判断部12は、ステップS4で算出された存在認識度が存在認識度閾値を超えているか否かを判断する。存在認識度閾値は、次のように求められる。
【0075】
判断部12は、最初に、式(4)に従って存在認識度評価値を算出する。図11に示すドライバAの特性、及び図12に示す存在認識度評価値を求めるための係数α、β、γを用いると、ドライバAの存在認識度評価値は式(5)になる。
【0076】
(ドライバAの存在認識度評価値)=(3×0.9+0×1.0+2×0.7)/5
=0.8 ・・・(5)
【0077】
図13によると、評価値0.8に対応する存在認識度閾値は4(%)である。そこで、判断部12は、ステップS4で算出された存在認識度(%)が存在認識度閾値4(%)を超えたか否かを判断する。肯定判断のときは、ドライバAは対向車の存在を認識したとみなしてステップS9に移行する。否定判断のときは、ドライバAは対向車の存在を認識していないとみなして、ステップS12に移行する。
【0078】
ステップS9では、判断部12は、対向車は自車Cと衝突するような進路上にあるか否かを判断する。具体的には、判断部12は、対向車の方向指示器の状態、ステップS5で算出された認識距離及び認識速度により、対向車の進路を予想する。そして、対向車の進路と自車Cの進路が交差する(又は重なる)ときは、対向車は自車Cと衝突するような進路上にあると判断する。例えば、自車が右折で、対向車が直進または左折の場合は、自車Cの進路上に対向車があると判断する。そして、肯定判断のときはステップS10に移行し、否定判断のときはステップS14に移行する。
【0079】
ステップS10では、判断部12は、自車Cと対向車が衝突するか否かを判断する。具体的には、判断部12は、ステップS5で算出された認識距離及び認識速度、自車の速度に基づいて到達時間を算出し、この到達時間が到達時間閾値を超えているか否かを判断する。到達時間閾値は、次のように求められる。
【0080】
判断部12は、最初に、式(4)に従って到達時間評価値を算出する。図11及び図12のデータを用いると、ドライバAの到達時間評価値は式(6)になる。
【0081】
(ドライバAの到達時間評価値)=(2×0.9+2×1.0+1×0.7)/5
=0.9 ・・・(6)
【0082】
図13によると、評価値0.9に対応する到達時間閾値は3.8(秒)である。なお、ドライバBの場合、到達時間評価値は0.4、到達時間閾値は2.6になる。そこで、判断部12は、ドライバAについて、既に算出した到達時間(秒)が到達時間閾値3.8(秒)を超えたか否かを判断する。肯定判断のときは、自車Cは対向車と衝突しないとみなしてステップS14に移行する。否定判断のときは、ドライバAは対向車に衝突するとみなして、ステップS11に移行する。
【0083】
ステップS11では、判断部12は、自車Cの速度をゼロにすることを決定し、ステップS16に移行する。
【0084】
一方、ステップS12では、判断部12は、自車Cの速度を速度vに上げることを決定し、ステップS13に移行する。
【0085】
ステップS13では、判断部12は、ドライバAの視野外に対向車が存在する可能性があるか否かを判断する。ここでは、ドライバが対向車を認知できなくても、経験的に見えていない部分から対向車が来る可能性がある。そこで、判断部12は、確率的に対向車の有無を判断する。
【0086】
判断部12は、最初に、式(4)に従って対向車予測評価値を算出する。図11に示すドライバAの特性、及び図12に示す対向車予測評価値を求めるための係数α、β、γを用いると、ドライバAの対向車予測評価値は式(7)になる。
【0087】
(ドライバAの対向車予測評価値)=(2×0.9+3×1.0+0×0.7)/5
=1.0 ・・・(7)
【0088】
図13によると、評価値1.0に対応する対向車がくる可能性は100(%)である。そこで、判断部12は、対向車がくる可能性が所定の閾値(例えば30%)を超えているか否かを判断する。肯定判断のときは対向車がくるとみなして、ステップS11に移行し、否定判断のときは対向車がこないとみなして、ステップS16に移行する。
【0089】
以上のように、判断部12は、存在認識度、到達時間に基づいて、対向車の有無、衝突するか否か等の交通判断を行う。しかし、存在認識度、到達時間はドライバの認識の程度によって大きく異なってしまう。そこで、判断部12は、個々のドライバに最適な閾値を設定し、その閾値と存在認識度や到達時間と比較することによって、ドライバの特性に応じた交通判断をシミュレーションすることができる。
【0090】
ステップS16では、操作部23は、ステップS11又はステップS12で決定された目標速度になるように、ドライバデータ及び車両データを用いてブレーキ操作量又はアクセル操作量を演算し、ステップS17に移行する。
【0091】
例えば、判断部12で決定された速度がゼロの場合、操作部13は、自車Cの停止状態を維持できるように、または停止状態まで減速するように、ブレーキ操作量を演算する。また、判断部12で決定された速度がvの場合、操作部13は、自車Cが速度vとなるようにアクセル開度を演算する。目標とする速度vは、適切な範囲の中でドライバ毎に異なる値を設定してもよい。
【0092】
ステップS17では、挙動演算部14は、操作部13で求められた操作量に基づいて自車Cの速度及び加速度を算出する。このようにして算出された自車Cの速度及び加速度は、交通状況管理部30に供給される。
【0093】
その結果、空間配置部50は、交通状況管理部30で管理されている各車の位置情報、速度、加速度等の情報に従って自車Cを道路空間上に再配置し、自車Cをシミュレーションすることができる。
【0094】
ここで、1計算ステップ前では、判断部12が「対向車無し」と判断し(ステップS8の否定判断)、目標速度を設定して(ステップS12)、その結果自車Cが加速している状態であっても、次の現計算ステップでは、判断部12が対向車を認識し(ステップS8の肯定判定)、停止すると判断する(ステップS11)場合がある。この場合、自車Cは、ある速度から停止状態への急制動となることがある。このとき、自車Cが対向車と衝突するかどうかは、前の計算ステップでの速度や判断遅れの時間によって異なる。つまり、自車Cと対向車は衝突する場合もあり、制動によって衝突しない場合もある。
【0095】
ここでは、車両Cの移動体モデル部10Cの右折処理ルーチンを説明したが、対向側の車両Bの移動体モデル部10Bも同様に自車の速度及び加速度を決定することができる。例えば、自車が直進であっても、視野内において自車の進路上に車両が進行してくると判断した場合は、減速すると判断し、衝突しないように速度を低下させることができる。
【0096】
空間配置部50は、交通状況管理部30で管理されている各車の位置情報、速度、加速度等の情報に従って、各車を道路空間上に再配置し、各車両の動きをシミュレーションすることができる。
【0097】
衝突判定部60は、空間配置部50によって道路空間上に配置された車両や路上物体の位置関係を比較することで、車両と路上物体、および車両と車両の衝突を判定する。衝突判定部60は、車が衝突すると判断した場合は、衝突の大きさを算出する。
【0098】
例えば、自車Cの衝突直前の速度VC、重量MC、対向車Bの衝突直前前の速度VB、重量MB、自車Cの衝突安全係数KCとした場合、自車Cが衝突によって受けるエネルギーEは、例えば次の式(8)で求められる。
【0099】
E=KC[(1/2)MCC2 +(1/2)MBB2] ・・・(8)
【0100】
衝突判定部60は、式(8)のエネルギーEによって、事故による衝突の大きさを分類する。
【0101】
以上のように、本発明の実施形態に係る交通シミュレーションは、ドライバの認識、判断、操作に基づいて車両の挙動量を演算し、その挙動量に基づいて各々の移動体の動きをシミュレーションする。これにより、上記交通シミュレーション装置は、ドライバの認知ミス、判断エラーを考慮して、移動体の動きをシミュレーションすることができる。
【0102】
上記交通シミュレーション装置は、ドライバの視野画像に基づいて、ドライバの認知の程度を反映した認識対象物の存在認識度、認識速度、認識距離を算出し、これらの算出結果を用いてドライバの次の行動を判断するので、ドライバの認知ミス及びそれによって引き起こされる判断エラーを再現することができる。
【0103】
さらに、上記交通シミュレーション装置は、ドライバの各々の特性に応じて次の行動を判断するための閾値を設定するので、ドライバの統計的な特性を利用することによって、より現実的な交通シミュレーションを行うことができる。
【0104】
[安全装置の評価]
車両事故は、ドライバの判断、例えば対向車の認知ミスなどによって起きる。このような車両事故を防止するために、ドライバの安全運転を補助する安全システムを搭載した車両もある。以下では、様々な安全システムを搭載した車両のシミュレーションについて説明する。
【0105】
(通信システムの場合)
車車間通信システムでは、送信地点と受信地点の間に遮蔽物が存在しても、電波が回折し建物で反射するため、無線通信できる場合がある。ここでは、移動体モデル部10A及び10Bが無線通信するものとする。
【0106】
図14は、電波の回折と反射を示す図である。回折の場合はナイフエッジ法、反射の場合はレイトレーシング法などで、電波強度が求められる。そこで、例えば、移動体モデル部10Aの車載装置部20Aは、対向車である移動体モデル部10Bの車載装置部20Bから送信された電波に対して、回折や反射を経て、自車で受信する電波強度が閾値を上回る場合は、通信が成功するものとし、通信によって対向車の位置、速度などの情報を認識できる。
【0107】
このような車車間通信システムでは、移動体モデル部10Aは、移動体モデル部10Bから送信された他車両Bの位置、速度と自車の位置、速度により、衝突するかを予測することができる。このため、移動体モデル部10は、視野で対向車Bを認識できなくても、無線通信により対向車Bを認知できるので、判断を変えることができる。
【0108】
例えば、情報提供部24がドライバの警報を発して情報提供した場合、認識部11は、式(1)の覚醒度を大きな値に変更して(例えば1以上の定数を乗じて)、存在認識度を算出すればよい。
【0109】
情報提供部24が音声、文字、画像等によって周辺車両の有無に関する情報提供をした場合、認識部11は、式(1)で求められた存在認識度を大きな値に変更するとよい。情報提供部24が位置や速度を情報提供した場合、認識部11は、認識距離、認識速度をより正確な値に変更すればよい。
【0110】
ドライバの情報提供に対する信頼度も評価する場合は、情報提供に対して、情報を信じるドライバが確率的に分布するとしてもよく、情報を信用しないドライバの場合は、存在認識度などが変化しないとしてもよい。
【0111】
(車両制御システムの場合)
また、車両制御システム、例えば移動体制御部25は、自車の進路上に対象車が進行すると予測した場合は、制動の操作量を決定し操作することで、衝突前に自車を停止させる。この場合は、操作部13は、ドライバが決定した操作量よりも、移動体制御部25が決定した操作量を優先する。なお、電波強度など無線通信が成立するか否かは、本装置内で演算してもよく、また外部の装置で演算した結果を使ってもよい。
【0112】
(夜間の場合)
夜間の場合、空間配置部50は、道路空間を夜間に相当する明るさに設定し、自車がヘッドライトに相当する光源を発している状態を設定する。
【0113】
図15は、夜間の視野画像の一例を示す図である。空間配置部50が上記のように道路空間の明るさを設定することにより、認識部11は、パストレーシング法、レイトレーシング法などの処理によってドライバの視野画像を得る。その結果、判断部12は、夜間に置けるドライバの判断をシミュレーションできる。
【0114】
これに対して、車両が赤外光を投影してカメラで撮影する夜間撮影システム(ナイトビジョン)の場合、空間配置部50は、赤外光の明るさや投影などの条件に合わせて道路空間の光量を設定する。
【0115】
図16は、赤外光を投影することによってカメラで撮影された視野画像の一例を示す図である。このように夜間撮影システムでは、認識部11がこの視野画像をカメラからの出力として処理し、判断部12がその処理結果を用いてドライバの判断を行うことによって、夜間撮影システムの効果を評価することができる。同様に、カメラを2台用いるステレオ方式の安全システムでは、それぞれのカメラ位置を視点とした視野画像が得られ、それらの視野画像を用いて評価される。
【0116】
カメラを使った安全システムにおいても、無線通信を使った安全システムと同様に、情報提供により認識部11が存在認識度の値を変更し、また車両制御を行ってもよい。
【0117】
赤外光などで夜間の視野を補助するシステムでは、視野係数が上がるとしてもよい。
【0118】
(レーダーシステム)
レーダーシステムは、方位に対する対象物までの距離を求めることができる。
【0119】
図17は、レーダーシステムによって算出された対象物までの距離及び方位の関係を示す図である。具体的には、空間配置部50が、自車位置における方位とその方向の対象物までの距離を演算することによって求める。レーダーシステムでは、方位と距離の関係をレーダーからの出力として処理することで、レーダーシステムを評価することができる。
【0120】
そして、交通シミュレーション装置は、安全システムを搭載していない移動体の動きをシミュレーションすると共に、上述のような安全システムを搭載した移動体の挙動量を演算し、その挙動量に基づいて各々の移動体の動きをシミュレーションする。これにより、上記交通シミュレーション装置は、安全システムを搭載した車両と搭載していない車両の事故発生件数を比較することによって、安全システムを評価することができる。
【0121】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で設計上の変更をされたものにも適用可能であるのは勿論である。
【0122】
例えば、本実施形態で使用したデータは、予めデータベースに記憶されたものでもよいし、ネットワークを介して伝送されたものでもよい。また、図10乃至図13に示したものは一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施形態に係る交通シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】時刻Tにおいて自車Cが交差点で右折する状況を示す図である。
【図3】自車Cの右折処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】時刻Tにおける視野画像の一例を示す図である。
【図5】時刻(T+t)における視野画像の一例を示す図である。
【図6】図4の視野画像に対して輪郭抽出処理を行った結果を示す図である。
【図7】図5の視野画像に対して輪郭抽出処理を行った結果を示す図である。
【図8】認識対象の面積である視野内面積を示す図である。
【図9】視野係数の一例を示す図である。
【図10】ドライバの覚醒度の頻度分布の例を示す。
【図11】ドライバの特性を示す図である。
【図12】評価値毎の慎重度係数、熟練度係数、身体能力度係数を示す図である。
【図13】評価値に対応する存在認識度閾値、到達時間閾値、対向車がくる可能性を示す図である。
【図14】電波の回折と反射を示す図である。
【図15】夜間の視野画像の一例を示す図である。
【図16】赤外光を投影することによってカメラで撮影された視野画像の一例を示す図である。
【図17】レーダーシステムによって算出された対象物までの距離及び方位の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0124】
10、10A、10B、10C 移動体モデル部
11 認識部
12 判断部
13 操作部
14 挙動演算部
20A、20B 車載装置部
21 センシング部
22 通信部
23 処理部
24 情報提供部
25 移動体制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の挙動量に基づいて道路上の移動体の動きをシミュレーションする交通シミュレーション装置であって、
ドライバの視野画像に基づいて道路状況を認識する認識手段と、
前記認識手段により認識された道路状況に基づいて、ドライバの次の行動を判断する判断手段と、
前記判断手段により判断されたドライバの次の行動に基づいて、前記移動体を操作する操作手段と、
前記操作手段の操作に応じて移動体の挙動量を演算する車両挙動量演算手段と、を備え、
前記認識手段は、前記視野画像に基づいて、認識対象物の存在認識度、認識速度、認識距離の少なくとも1つを算出し、算出結果に基づいて道路状況を認識する
交通シミュレーション装置。
【請求項2】
前記認識手段は、認識対象物の存在認識度を算出し、
前記判断手段は、前記認識手段により算出された存在認識度がドライバの特性に応じて設定された閾値を超えたか否かに基づいて、前記移動体の周辺に前記認識対象物が存在するか否かを判断する
請求項1に記載の交通シミュレーション装置。
【請求項3】
前記認識手段は、認識対象物の認識速度及び認識距離を算出し、
前記判断手段は、前記移動体の速度と、前記認識手段により算出された認識速度及び認識距離と、に基づいて到達時間を算出し、当該到達時間がドライバの特性に応じて設定された閾値を超えたか否かに基づいて、前記認識対象物と衝突するか否かを判断する
請求項1または請求項2に記載の交通シミュレーション装置。
【請求項4】
前記認識手段は、認識対象物の認識速度及び認識距離を算出し、
前記判断手段は、前記認識手段により算出された認識速度及び認識距離と、認識対象物の移動方向とに基づいて、前記認識対象物の進路を予想し、前記移動体の進路が前記認識対象物の進路に交差するか否かを判断する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の交通シミュレーション装置。
【請求項5】
認識手段は、少なくとも前記視野画像の面積及び前記視野画像内の認識対象物の面積に基づいて、前記認識対象物の存在認識度を算出する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の交通シミュレーション装置。
【請求項6】
前記認識手段は、前記視野画像内の位置に応じた認識程度を示す視野係数、ドライバの覚醒の程度を示す覚醒度の少なくとも1つを更に用いて、前記前記認識対象物の存在認識度を算出する
請求項5に記載の交通シミュレーション装置。
【請求項7】
前記移動体の周辺情報をドライバに提供する情報提供手段を更に備え、
前記認識手段は、前記情報提供手段により提供された周辺情報を用いて、認識対象物の存在認識度、認識速度、認識距離の少なくとも1つの値を変更する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の交通シミュレーション装置。
【請求項8】
前記移動体の周辺情報をドライバに提供する情報提供手段を更に備え、
前記認識手段は、前記情報提供手段により提供された周辺情報を用いて、視野係数、覚醒度の少なくとも1つの値を変更する
請求項6に記載の交通シミュレーション装置。
【請求項9】
他の物体との衝突を回避するように移動体を制御する移動体制御手段を更に備え、
前記操作手段は、前記判断手段により判断されたドライバの次の行動よりも、前記移動体制御により制御された行動を優先して、前記移動体を制御する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の交通シミュレーション装置。
【請求項10】
移動体の挙動量に基づいて道路上の移動体の動きをシミュレーションする交通シミュレーション方法であって、
ドライバの視野画像に基づいて、認識対象物の存在認識度、認識速度、認識距離の少なくとも1つを算出し、算出結果に基づいて道路状況を認識し、
前記認識された道路状況に基づいて、ドライバの次の行動を判断し、
前記判断されたドライバの次の行動に基づいて、前記移動体を操作し、
前記操作に応じて移動体の挙動量を演算する
交通シミュレーション方法。
【請求項11】
コンピュータに移動体の挙動量に基づいて道路上の移動体の動きをシミュレーションさせる交通シミュレーションプログラムであって、
前記コンピュータに、
ドライバの視野画像に基づいて、認識対象物の存在認識度、認識速度、認識距離の少なくとも1つを算出し、算出結果に基づいて道路状況を認識させ、
前記認識された道路状況に基づいて、ドライバの次の行動を判断させ、
前記判断されたドライバの次の行動に基づいて、前記移動体を操作させ、
前記操作に応じて移動体の挙動量を演算させる
交通シミュレーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図15】
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【図16】
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