説明

交通信号制御システム、信号制御装置

【課題】交差点に接近する車両の台数ではなく、車両に搭乗する人数に着目して交通信号制御における青時間の割当て等を行う。
【解決手段】交差点に接近する車両の車載機6と、路上に設置された路上通信装置2とが所定の領域で路車間通信を行い、車載機6はその車両に搭乗している人数に関する情報を路上通信装置2宛に送信する。路上通信装置2は交通信号制御機1に内蔵されている。この搭乗者数に関する情報を収集して、交差点における各方向の搭乗者の総信号待ち時間を算出し、当該総信号待ち時間が小さくなるように各方向の青時間の割当てを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点に流入する車両の搭乗者数に着目し、物流におけるコストを小さくするように交通制御することが可能な交通信号制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの交通信号制御システムでは、主に、交差点に流入する全ての車両の信号待ち時間の合計値(総遅れ時間)を指標として用いて、その総遅れ時間を小さくするように交通制御を行う方法が用いられてきた。
交通信号制御で決定すべきパラメータには、信号機の表示が一巡するのにかかる所要時間であるサイクル長(C)、1サイクルにおける各現示の割合(青時間の割合)であるスプリット(S)、および、隣接する信号機間の信号表示開始時刻のずれであるオフセット(O)がある。
【0003】
多くの交通信号制御システムにおいて行われているMODERATO(登録商標、Management by Origin−Destination Related Adaptation for Traffic Optimization)制御では、サイクル長を交差点における負荷率で、スプリットを方路毎の負荷率の比でそれぞれ計算し、オフセットについては、サイクル長に応じて予め設定しておいたパタンを選択するといった方法で各交通信号制御パラメータが決定されてきた(特許文献1参照)。
【0004】
ここで、負荷率とは、飽和交通流率(交通流が飽和状態に達しているときに車両が交差点手前の停止線を通過しうる最大交通量)に対する負荷交通量の割合を指し、負荷交通量は、交差点への流入車両台数に待ち行列台数を加算することで算出される。負荷率を用いてサイクル長等を算出することで、交差点における総遅れ時間を小さくするように交通信号機が制御される。
【0005】
【特許文献1】特開2004−145596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
道路交通のような物流システムでは、車両に搭載される人間のトータルでの移動時間を小さくすることが本来的な目的となるべきであるが、現状では、車両の総移動時間が小さくなればその車両に搭載される人間等の移動時間も小さくなるはずだという前提で、車両のトータルでの移動時間を小さくすることを目的とした交通信号制御が行われている。
【0007】
しかし、車両の中には、大勢の人間を載せて走っている車両もあれば、ドライバが1人だけ搭乗しているだけの車両もある。これまでの交通信号制御では、これらの車両を同一のものとして扱っているため、人間のトータルでの移動時間を小さくするような制御とはならない場合がある。
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、車両そのものだけではなく、車両の搭載者に着目した交通信号制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる交通信号制御システムは、交差点に設置される信号灯器の各信号灯色の表示時間を決定するものであり、前記交差点に接続する道路上を走行する車両の車載機から当該車両の搭乗者数情報を受信する路上通信装置と、受信した搭乗者数情報に基づいて前記交差点において信号待ちする車両の搭乗者全員の総信号待ち時間を算出する総信号待ち時間算出手段と、算出される前記総信号待ち時間に基づいて、前記信号灯器の各信号灯色の表示時間を決定する信号制御手段とを備えている(請求項1)。
【0010】
この発明によれば、交差点を通過しようとする車両が信号待ちすることによって、その信号待ち時間の間に車両に搭乗する搭乗者について発生する信号待ち時間の合計値を算出し、当該総信号待ち時間に応じて信号灯器を制御できるため、道路交通において輸送の対象である人間の移動時間を小さくするように交通制御することが可能になる。
したがって、互いに交差する方向の車両の通行台数(交通量)が同じ程度であったとしても、より多くの人間を輸送しようとする方向に優先的に青時間を割り当てることが可能となり、道路交通の便益が高まる。
なお、前記総信号待ち時間に基づく信号制御は、ある注目道路について算出し、その注目道路における総信号待ち時間が所定以下となるように制御する、といった方法でも良いし、交差点に接続する全ての道路における総信号待ち時間を小さくするように制御する方法でも良い。
【0011】
この場合、前記総信号待ち時間は、交差点で信号待ちする車両毎に信号待ち時間と搭乗者数とを乗算して当該車両の搭乗者信号待ち時間を算出し、信号待ちする全ての車両の搭乗者信号待ち時間を合計して求められることが望ましい(請求項2)。
車両は、人間がある地点から別の地点に移動するための手段であるから、このような計算方法により、信号待ちによって生じる移動時間のロスの総計を適切に算出することが可能になる。
【0012】
なお、前記信号制御手段に前記総信号待ち時間を算出するシミュレーション機能を備えさせることが好ましい。そのシミュレーション機能は、前記交差点の各信号灯器に割り当てる各信号灯色の表示時間を所定の範囲内で変動させ、信号表示時間を変動させる毎に総信号待ち時間を算出するように構成されており、総信号待ち時間が最小となる各信号灯色の表示時間を決定することが好ましい(請求項3)。
【0013】
このようなきめの細かいシミュレーション機能を具備していれば、総信号待ち時間が小さくなるような信号表示時間の最適値を算出することが可能になる。
なお、シミュレーションに際しては、考えうる全ての各信号灯色の表示時間の組み合わせについて総信号待ち時間を算出すれば、確実に総信号待ち時間を最小とする表示時間を決定しうるが、シミュレーションによる演算時間を短縮するために、例えば山登り法などの手法によって局所的な最適値(局所的に総信号待ち時間が最小となるような信号表示時間)を求める方法でも良く、ここにいう総信号待ち時間が最小となる各信号灯色の表示時間にはこのような局所解も含まれる。
また、シミュレーションにおいては、全信号灯色を変動させなくても良く、一部の灯色(例えば青信号)のみを変動させるような方法を用いても良い。
【0014】
なお、本発明の交通信号制御システムを実現するために、交差点の信号灯器を制御する交通信号制御機に対して前記信号灯器の制御に関する指示である信号制御指令情報を送信する信号制御装置を設置し、この信号制御装置に、前記交差点に接続する道路上を走行する車両の車載機が発信する当該車両の搭乗者数情報を受け取る路上通信装置から当該搭乗者数情報を受信する受信手段と、受信した前記搭乗者数情報をテーブルに記憶する記憶手段と、記憶した当該搭乗者数情報に基づいて前記交差点において信号待ちする車両の搭乗者全員の総信号待ち時間を算出する総信号待ち時間算出手段と、算出される前記総信号待ち時間に基づいて前記信号灯器の表示時間を決定しその決定内容を含む信号制御指令情報を作成して前記交通信号制御機宛に送信する送信手段とを備えさせるという構成にすることができる(請求項4)。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の交通信号制御システムによれば、車両に搭乗する人数に着目して交通信号制御を行うため、道路交通システムの利用者の多くにとって便益のあるシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る交通信号制御システムにおけるシステム構成の概要を示す模式図である。
【0017】
〔システムの全体構成〕
図1のように、道路付近に設置される交通信号制御機1はルータや通信回線を通じて、交通管制センターに設置された信号制御装置5と接続されている。
信号制御装置5は、交通信号制御機1に対して、信号灯器1A等の制御についての信号制御指令情報を送信しており、その信号制御指令情報を受信した交通信号制御機1は、当該信号制御指令情報に基づいて青信号の時間配分等を決定し、信号灯器1A等の各信号灯色を点灯等する。
【0018】
通常、信号制御指令情報には1サイクル分の信号表示についての指示が含まれており、具体的には、1サイクルのサイクル長、各方路に割り当てる青信号の時間であるスプリット、1サイクルの開始時刻と基準時刻とのズレであるオフセット、右折感応制御やジレンマ感応制御等の地点感応制御実行可否についての指示等が含まれている。この信号制御指令情報を受信した交通信号制御機1は、1サイクルの開始直前の時点で到着している最新の信号制御指令情報に基づいて、当該1サイクルにおける信号制御プランを決定し、当該信号制御プランに含まれる各信号灯色の表示時間に従って各信号灯器を制御する。
なお、1サイクルとは、信号機の表示が一巡する期間のことを指し、通常は主道路側に対して青信号の表示を開始した時から、再び主道路側に対して青信号の表示を開始する直前までの期間をいう。
【0019】
図2は、交通信号制御機1の設置されている交差点近傍の機器配置の概要を示す模式図である。本発明の交通信号制御システムでは、交差点に向かって進行する車両との間で路車間通信を行う路上通信装置2と方路毎に通信アンテナ2A乃至2Dが設けられている。
なお、図2では、路上通信装置2を交通信号制御機1に内蔵する例を示しているが、路上通信装置2を交通信号制御機1とは独立した装置として設けて、交通信号制御機1との間で相互に通信可能なようにしておいても良い。
【0020】
路上通信装置2は、方路毎に設けた通信アンテナで各方路の車両と路車間通信することができるようになっており、各車両の車載機6は、路上の通信アンテナに対して各車両に搭載されている搭乗者の人数を含むアップリンク情報を送信する。
なお、車載機6が車両に搭乗する人数を把握する方法としては、車両に取り付けられた赤外線センサー等によって取得する方法でも良いし、各座席に重量検知センサーを取り付けて人間が着席しているかどうかを取得する方法でも良いし、各座席のシートベルトがされているかどうかを検知するセンサーを取り付けて人間が着席しているかどうかを取得する方法でも良い。
【0021】
〔交通信号制御機1における信号制御方法〕
図3は、交通信号制御機1の設置されている交差点近傍の各車両の搭乗者数を示した図である。
交差点の北側の道路(南方向に進行する方路)では車両が2台進行してきており、その搭乗者数の合計は9人(4人+5人)である。
交差点の南側の道路(北方向に進行する方路)でも車両が2台進行してきており、その搭乗者数の合計は11人(5人+6人)である。
交差点の東側の道路(西方向に進行する方路)では車両が4台進行してきており、その搭乗者数の合計は6人(1人+2人+2人+1人)である。
交差点の西側の道路(東方向に進行する方路)でも車両が4台進行してきており、その搭乗者数の合計は4人(1人+1人+1人+1人)である。
【0022】
従来の制御であれば、南北方向の車両の台数は2台ずつであり、東西方向の車両の台数が4台ずつであるから、その車両の台数(交通量)に応じて青時間の割当てが決定されていた。
したがって、例えば、南北方向に青時間を20秒割り当てるのであれば、東西方向には青時間を40秒割り当てるといったように、車両の台数が多い方路に大きな青時間が割り当てられていた。
しかし、この方法であれば、南北方向の車両に搭乗する人間の信号待ち時間は東西方向に比べて長くなってしまう。そのため、より多くの人間が長い時間信号待ちを強いられるため、この交差点において信号待ちする人間の総信号待ち時間が大きくなってしまうという問題があった。
【0023】
本発明の方法においては、車両の台数ではなく、各方路の搭乗者数に応じて青時間を決定する。
すなわち、南北方向の信号待ち人数は20(=9+11)人、東西方向は10(=6+4)人と算出されるから、この人数に応じて信号の青時間を割り当てる。例えば、南北方向に青時間を40秒割り当てるのであれば、東西方向には青時間を20秒割り当てる。
このように制御すると、南北方向の車両の信号待ち時間を、東西方向の車両の信号待ち時間よりも短くすることができるため、大勢が信号待ちをする南北方向の人間の総信号待ち時間(移動時間)が短縮され、この交差点における交通の便益を高めることが可能となる。
【0024】
なお、ここに示した青信号の割当方法は単に一例を示しているにすぎず、これ以外の方法でも良い。
例えば、従来のように、一旦、青信号の割当てを車両の台数に応じて決定した上で、各方向の搭乗者の信号待ち時間を計算して、その信号待ち時間に応じて青時間の割当てを補正する、といった方法でも良い。
例えば、従来までの信号制御方法によって、一旦、東西方向の青時間を20秒、南北方向の青時間を10秒と決定した上で、人数の比率が、東西と南北で1:2であることに応じて、東西方向には青時間を10秒加算し、南北方向には20秒加算するといった補正を行い、結果的に、東西・南北双方向に30秒ずつ割り当てる、といった方法を用いても良い。
【0025】
また、人数の合計ではなく、各方路の平均搭乗者数に応じて青時間を決定するといった方法でも良い。あるいは、車両の台数(交通量)や占有時間に基づいて算出される負荷率に着目した従来のMODERATO制御等と同じ方法を、搭乗者の総信号待ち時間を負荷率に置き換えて適用する方法を用いても良く、搭乗者数に着目してその総信号待ち時間を小さくするように制御するのであれば、青時間の割当方法はどのような方法でも構わない。
【0026】
また、各方路における搭乗者の総信号待ち時間を用いて青時間を決定するような方法ではなく、もっときめ細かくシミュレーションを行って青時間を決定しても良い。
例えば、東西方向と南北方向のそれぞれにどれだけの青時間を割り当てたら、どの車両までがその青信号で通過できるから結果的にこの交差点における搭乗者の総信号待ち時間の合計値が何秒になる、といったことをきめ細かく計算した上で、青信号表示期間中にどの車両まで通過させれば搭乗者の総信号待ち時間を最小とできるかを算出し、その車両が通過可能な分だけ各方路に青時間を割り当てる、といった方法を用いても良い。
【0027】
具体的には、例えば、南北方向および東西方向にそれぞれ10台ずつ車両が進行してきているとする(南北方向の各車両の搭乗者数をA1、A2、・・・、A10とし、東西方向の各車両の搭乗者数をB1、B2、・・・、B10とする)。車両を1台通過させるのに要する青時間を3秒とし、南北方向に青信号を表示した後で東西方向に青信号を表示するものとすると、例えば、南北と東西の双方の青時間を30秒にすると、南北、東西ともに青信号の表示によって全ての車両が交差点を通過するから、この交差点において信号待ちにより発生する搭乗者の総信号待ち時間は、東西方向の信号待ちによる「30秒×(B1+B2+・・・+B10)」のみである。
ここで、南北方向の青時間を3秒減らして27秒にすると、東西方向の信号待ちによる搭乗者の総信号待ち時間はその分だけ減少し、「27秒×(B1+B2+・・・+B10)」となるが、南北方向の10台目の車両は、丁度1サイクル分信号待ちを強いられることになるため、南北方向でも「(27秒+30秒)×A10」の搭乗者の総信号待ち時間が発生することになる。
この場合、南北方向で発生する搭乗者の総信号待ち時間よりも東西方向で減少する搭乗者の総信号待ち時間の方が小さいのであれば、南北方向の青時間を3秒減少させた方が、この交差点で発生する搭乗者の総信号待ち時間を小さくすることができ有利である。
【0028】
このように、各方路の青時間を少しずつ変化させながら、搭乗者の総信号待ち時間が最も小さくなる条件を決定するシミュレーションを行うことで、適切な青時間を決定することもできる。
なお、この場合、考えうる全ての各信号灯色の表示時間の組み合わせについて、搭乗者の総信号待ち時間を算出すれば、確実に、搭乗者の総信号待ち時間を最小とすることが可能な信号制御方法を決定することが可能となるが、シミュレーションの演算時間短縮等の目的で、例えば山登り法などの手法によって局所的な最適値(局所的に総信号待ち時間が最小となるような信号表示時間)を求める方法でも良い。
また、各方路で変動させる信号灯色は、青信号だけではなく、黄信号や赤信号についても変動させることができる。
【0029】
なお、搭乗者の総信号待ち時間の算出や青時間の割当ての決定を行うのは、信号制御装置5であっても良いし交通信号制御機1であっても良い。
交通信号制御機1がこの総信号待ち時間の算出および青時間の割当ての決定を行う場合の各機器の動作を以下に説明する。
交通信号制御機1は、内蔵する路上通信装置2との間のインタフェース部から各車載機6から収集した搭乗者人数情報を取得し、全ての車両から受信した搭乗者人数情報を方路毎にメモリ上に用意されたテーブルに格納する。
そして、総信号待ち時間の算出を行うCPU等の演算部において、このテーブルに格納された搭乗者人数を参照して、方路毎の信号待ち時間を算出した後、これらを合算して交差点全体の総信号待ち時間を算出する。
最後に、算出した方路毎の信号待ち時間に応じて、信号制御演算部が各方路に割り当てる青信号の時間等を算出し、最終的に各信号灯色に割り当てる表示時間を確定させる。
確定された信号表示時間はメモリ上に書き込まれ、信号灯器を制御する灯器制御部がこの信号表示時間を読み出してその時間に従って各信号灯色の点灯等の制御を行う。
【0030】
また、信号制御装置5が総信号待ち時間の算出および青時間の割当ての決定を行う場合には、以下のように各機器を動作させれば良い。
信号制御装置5は、路上通信装置2から交通信号制御機1等を経由して各車両の搭乗者人数情報を受信し、受信した搭乗者人数情報を方路毎にメモリ上に用意されたテーブルに格納する。
そして、交通信号制御機1で実行する場合と同様に、総信号待ち時間の算出を行うCPU等の演算部において、このテーブルに格納された搭乗者人数を参照して、方路毎の信号待ち時間を算出した後、これらを合算して交差点全体の総信号待ち時間を算出する。
最後に、算出した方路毎の信号待ち時間に応じて、信号制御演算部が各方路に割り当てる青信号の時間等を算出し、その青信号の時間等を格納した信号制御指令情報を作成して、交通信号制御機1宛に送信する。
当該信号制御指令情報を受信した交通信号制御機1は、その指令の内容に従って各信号灯色に割り当てる表示時間を確定させ、確定された信号表示時間に従って各信号灯色の点灯等の制御を行う。
【0031】
なお、交通信号制御機1側で、各方路の信号待ち時間情報を算出して信号制御装置5に送信し、信号制御装置5がこの情報に基づいて青時間の割当ての決定を行う方法でも良い。また、交通信号制御機1や信号制御装置5の道路設備や中央装置等において同様の演算を行って、各方路の信号待ち時間情報を算出する方法でも良い。
【0032】
また、路車間通信を通じて、車載機6から各車両が積載する荷物に関する情報を取得することが可能な場合には、当該荷物の運搬に要する時間が大きくなることに伴って発生する荷物の単位重量毎の総信号待ち時間をも算出し、人間だけではなく荷物の移動時間も加味して計算し、当該これらの移動時間が最小となるように青時間を決定しても良い。
【0033】
また、指標として用いた搭乗者の信号待ち時間に労働単価を乗算すれば、信号待ちによって発生する人件費を算出することも可能である。従って、信号待ちによって無駄となる人件費を最小とするように信号制御しても良い。この場合、荷物の運搬に要するコストを加算して、総コストを最小化するような制御方法であっても良い。
【0034】
なお、本発明における信号制御装置5や交通信号制御機1等は、1の筐体によって実現されていても良いし、複数の筐体の組み合わせによって実現されても良い。また、これらは、それぞれ1つのコンピュータによって実現されていても良いし、複数のコンピュータを組み合わせて実現されていても良い。
【0035】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る交通信号制御システムのシステム構成の概要を示す模式図である。
【図2】交差点近傍の機器配置の概要の一例を示す図である。
【図3】総信号待ち時間の算出方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0037】
1 交通信号制御機
1A乃至1D 信号灯器
2 路上通信装置
2A乃至2D 通信アンテナ
3 端末ルータ
4 中央ルータ
5 信号制御装置
6 車載機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に設置される信号灯器の各信号灯色の表示時間を決定する交通信号制御システムであって、
前記交差点に接続する道路上を走行する車両の車載機から当該車両の搭乗者数情報を受信する路上通信装置と、
受信した前記搭乗者数情報に基づいて、前記交差点において信号待ちする車両の搭乗者全員の総信号待ち時間を算出する総信号待ち時間算出手段と、
算出された前記総信号待ち時間に基づいて、前記信号灯器の各信号灯色の表示時間を決定する信号制御手段とを備えること
を特徴とする交通信号制御システム。
【請求項2】
前記総信号待ち時間は、
交差点で信号待ちする車両毎に、信号待ち時間と搭乗者数とを乗算して当該車両の搭乗者信号待ち時間を算出し、
信号待ちする全ての車両の搭乗者信号待ち時間を合計して求められるものであること
を特徴とする請求項1に記載の交通信号制御システム。
【請求項3】
前記信号制御手段は、前記総信号待ち時間を算出するシミュレーション機能を備えており、
当該シミュレーション機能は、
前記交差点の各信号灯器に割り当てる各信号灯色の表示時間を所定の範囲内で変動させ、
信号表示時間を変動させる毎に総信号待ち時間を算出するように構成されており、
総信号待ち時間が最小となる各信号灯色の表示時間を決定するものであること
を特徴とする請求項1又は2に記載の交通信号制御システム。
【請求項4】
交差点の信号灯器を制御する交通信号制御機に対して、前記信号灯器の制御に関する指示である信号制御指令情報を送信する信号制御装置であって、
前記交差点に接続する道路上を走行する車両の車載機が発信する当該車両の搭乗者数情報を受け取る路上通信装置から当該搭乗者数情報を受信する受信手段と、
受信した前記搭乗者数情報をテーブルに記憶する記憶手段と、
記憶した当該搭乗者数情報に基づいて、前記交差点において信号待ちする車両の搭乗者全員の総信号待ち時間を算出する総信号待ち時間算出手段と、
算出される前記総信号待ち時間に基づいて前記信号灯器の表示時間を決定し、その決定内容を含む信号制御指令情報を作成して前記交通信号制御機宛に送信する送信手段とを備えること
を特徴とする信号制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−72899(P2010−72899A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239027(P2008−239027)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】