説明

交通信号機間の可視光通信システム

【課題】 交差点に設置された交通信号機からの情報を、離れた位置の交差点に設置された交通信号機に簡易に送ることが可能な交通信号機間の可視光通信システムを提供する。
【解決手段】 交通信号機間の可視光通信システムは、特定地域における道路の複数の交差点に設けられた交通信号機10の間で、外部の交通量検出装置21からの交差点付近での車両の通行量の情報を可視光信号として送受信を行うことにより、この情報を互いに信号機の適正な点灯制御に反映させるものである。また、特定の交差点に設けられた特定交通信号機30に交通管理センター等の外部情報機関から送られた各種情報を、特定交通信号機から可視光信号により地域の他の交通信号機に順次送信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の交差点等に設置される発光ダイオード素子からなる表示灯を備えた交通信号機に適用される可視光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色の発光ダイオードが開発されたことにより、交通信号機の発光源として発光ダイオードのみを用いて構成された交通信号機が採用されるようになってきている。このように、発光ダイオードを発光手段とすることにより、信号に変調を加えることが可能になり、交通信号機が、単なる交通表示のみならず、種々の交通情報等を可視光変調信号として発信することが可能になった。
【0003】
このような交通信号機としては、例えば特許文献1に示すように、外部情報発信源から通信網を通して集められた情報信号を変調して変調パルス信号として出力する変調手段と、変調パルス信号に基づいて点灯信号を変調パルス信号と同一周期のパルス信号に変換して出力する変調点灯信号出力手段と、変調点灯信号出力手段からの出力に基づいて表示灯を駆動して可視光の光変調信号を発信させる駆動手段とを備えたものが知られている。そして、表示灯から放射される光変調信号を受信して電気信号に変換する受光手段と、受光手段からの出力信号を復調する復調手段と、復調手段からの出力の内容を表示する表示手段からなる受光装置を車両に設けることにより、信号機から車両への光変調信号の伝達が可能になっている。
【特許文献1】特開2001−67585号公報
【0004】
ところで、上記交通信号機については、設置された交差点周囲の交通状況や事故発生状況や地震や洪水等の天災が発生した場合に、交通信号機から災害の発生を報知する可視光光変調信号を周辺の車両に発信するものであるが、利用できる車両が限定されるため、情報発信の価値が必ずしも十分に高いとはいえない。例えば、このような道路を走行中の車両にとって重要な情報を他の離れた位置の交差点の信号機に知らせて、その信号機から交差点周囲を通行中の車両に伝達できれば、地域を通行する車両にとって便利である。
【0005】
また、上記交通信号機の交通量に応じた点灯時間の制御については、中央の交通管理センターから各交通信号機毎に通信回線を通して送信された情報に基づいて行われていた。しかし、交通管理センターと各交通信号機とを通信回線で接続するためのコストが非常に高く、また交通管理センターで各交通信号機毎に情報を作成して送信するコストも高くなるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決しようとするもので、交差点に設置された交通信号機からの情報を、離れた位置の交差点に設置された交通信号機に簡易に送ることが可能な交通信号機間の可視光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の構成上の特徴は、多数の発光ダイオード素子によって構成された表示灯を有する交通信号機がそれぞれ設置された隣同士の交差点間において、一方の交通信号機の表示灯を駆動して表示灯に交通整理の点灯表示を行わせると共に各種情報を表す可視光信号を送信させ、他方の交通信号機に設けた受信装置によって可視光信号を受信することにより両交通信号機間で各種情報についての通信を行うことにある。ここで、各種情報とは、道路の交通に関係のある、交通量情報、事故発生情報、災害情報の他に、周辺地図情報、コマーシャル情報(名物、観光地、催し物、等)等の一般的な情報も含まれる。
【0008】
上記のように構成した本発明においては、隣同士の交差点間において一方の交通信号機の表示灯を駆動して可視光信号を送信し、他方の交通信号機に設けた受信装置によって可視光信号を受信することにより両交通信号機間で簡易に通信を行うことができる。それにより、特定地域に設けられた多数の交差点における交通状況や事故発生状況等をそれぞれの交差点における交通信号機が把握することができる。その結果、本発明においては、各交通信号機が交通情報を利用して適正に点灯制御等を行うことにより、車両の円滑な走行を促し交通渋滞を緩和することができる。また、本発明によれば、交通信号機間の通信により得られた情報を、各交通信号機から交差点周辺の車両等に対しても伝達することができ、その結果、地域を走行する車両等にとって容易に多数の交差点における交通状況や事故発生状況等を知ることができるので便利である。
【0009】
また、本発明において、隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合には、交差点間の中間位置に中継装置を設け、中継装置を介して可視光信号又は赤外線信号により隣同士の交差点に設けた交通信号機間の通信を行うことができる。このように、特定地域において複数の交差点の間では、道路の配置状況により隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合もある。これに対して、そのような交差点間には、その中間位置に中継装置を設け、中継装置を介して可視光信号又は赤外線信号の送受信を行うことにより、両交差点に設けた交通信号機間で通信を行うことができる。
【0010】
また、本発明において、隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合には、見通せる交差点間の交通信号機間で可視光信号による通信をリレーして通信ルートを迂回することにより、隣同士の交差点間の通信を行うことができる。このように、隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合でも、見通せる交差点間の交通信号機間で通信をリレーして通信ルートを迂回することによって、途中に中継装置を設けなくても交通信号機間の通信を行うことができる。そのため、中継装置の設置のためのコストを要しなく、特に中継装置の設置が困難な場合に有効である。
【0011】
また、本発明において、可視光信号を受ける交通信号機の受光装置として、表示灯を構成する発光ダイオード素子を用いることができる。これにより、交通信号機に発光ダイオード素子以外の受光装置を設ける必要が無いので、交通信号機の構成を簡略にできると共に安価に提供できる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、複数の交差点に設けた複数の交通信号機に外部情報発信源から情報信号が伝達される交通信号機の通信システムであって、交通信号機が、それぞれが多数の発光ダイオード素子によって構成された表示灯を有し、表示灯を駆動することにより表示灯に交通整理の点灯表示を行うと共に各種情報を表す可視光信号を送信するものであり、外部情報発信源からは、複数の交差点の内の特定の交差点に設けた特定交通信号機に通信回線を通して各種の情報信号が伝達され、特定交通信号機以外の交通信号機に対しては、特定交通信号機の表示灯から順次隣同士の交差点に設けられた交通信号機に対して各種情報を表す可視光信号によって通信を行うことにある。ここで、外部情報発信源とは、特定地域の交通信号機をコントロールする交通管理センター等の公的管理機関の他に、周辺地図情報、コマーシャル情報等の一般的な情報を発信する私的な情報発信源も含まれる。
【0013】
このように、所定の地域の交差点に設置された複数の交通信号機が、表示灯を駆動して可視光信号を送受信することにより、相互に情報を通信できるものである。これら複数の交差点の内の特定の交差点に設けた特定交通信号機に対して交通管理センター等の外部情報発信源から電話回線等の有線又は無線の通信回線により情報信号が伝達されると、特定の交通信号機は、交通信号機の表示灯から順次隣同士の交差点に設けられた交通信号機に対して各種情報を表す可視光信号を送信する。これにより、その他の交通信号機に対しては、外部情報発信源からの各種情報が、交通信号機からの可視光信号の送信によって伝達される。その結果、本発明によれば、従来のように外部情報発信源と複数の交通通信機を一々通信回線で結ぶ必要が無いため、通信回線設置のコストが削減され、特定地域における全ての交通信号機に交通情報等が安価に提供される。また、本発明によれば、特定交通信号機からその他の交通信号機に通信により送られた各種情報が、各交通信号機から交差点周辺の車両等に対しても伝達することができ、その結果、地域を走行する車両等にとって容易に外部情報発信源からの交通情報等の各種情報を知ることができるので便利である。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、隣同士の交差点間において可視光信号により両交通信号機間で簡易に通信を行うことができるため、特定地域に設けられた多数の交差点における交通状況や事故発生状況等の情報を交通信号機に送信することができ、各交通信号機がこれらの交通情報を利用して適正に点灯制御等を行うことにより、車両の円滑な走行を促し交通渋滞を緩和することができる。また、本発明によれば、交通信号機間の通信により得られた情報を交差点周辺の車両等に対しても伝達することができるので、地域を走行する車両等にとって容易に多数の交差点における交通状況等を知ることができるので便利である。
【0015】
また、隣同士の交差点間で直線的に見通せない場合でも、中継装置を設けて可視光信号等によって通信を行ったり、また見通せる交差点間の交通信号期間で通信ルートを迂回することにより、隣同士の交差点間で通信を行うことができる。さらに、可視光信号の受信装置として発光ダイオード素子を利用することにより交通信号機が簡略にされる。さらに、外部情報発信源からの各種情報を特定交通信号機が受けて、他の交通信号機に対して可視光信号を用いて簡易に各種情報を伝達することができるので、従来のように外部情報発信源と複数の交通通信機を一々通信回線で結ぶ必要が無いため、通信回線設置のコストが削減され、特定地域における全ての交通信号機に各種情報が安価に提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。図1は実施例1に係る交通信号機間の可視光通信システムに用いられる交通信号機の概略構成をブロック図により示したものであり、図2は実施例1の交通信号機間の可視光通信システムの適用例を説明図により示したものである。この交通信号機間の可視光通信システムは、特定地域における道路の複数の交差点に設けられた交通信号機10の間で、外部の交通量検出装置21からの交差点付近での車両の通行量の情報を可視光信号として送受信を行うことにより、この情報を互いに信号機の適正な点灯制御に反映させると共に、地域における車両の通行状態を交差点周囲を通行する車両にも可視光信号の送信により提供するものである。交通信号機10は、道路の交差点に設けられた信号機本体11と、信号機本体11の点灯を制御する点灯駆動制御部15とを備えている。
【0017】
信号機本体11は、図3に示すように、表示盤に青色表示灯11aと、黄色表示灯11bと、赤色表示灯11cと、可視光信号受信用の受光素子からなる受信装置13を備えている。青色表示灯11aは、青色発光ダイオードにより構成されており、黄色表示灯11bは、赤色発光ダイオードと青色発光ダイオードにより構成されており、また赤色表示灯11cは、赤色発光ダイオードにより構成されている。各表示灯11a〜11cには、それぞれ発光ダイオードを駆動する駆動部12a〜12cが設けられている。なお、発光体ダイオードの代わりに、レーザダイオードを用いることも可能である。受信装置13は、受けた光信号を電気信号に変換する受光素子13aと、受光素子13aの出力から直流分を除くコンデンサ13bと、受光素子13aの出力を増幅する増幅器13cとを備えている。
【0018】
点灯駆動制御部15は、点灯信号発生装置16と、変調器17と、信号合成器18と、加算器19とを備えており、受信装置13からの可視光信号と外部の交通量検出装置21からの情報により、各表示灯11a〜11cを規定された時間間隔で点灯動作あるいは点滅動作を行なわせるための青色、黄色及び赤色の3種類の点灯信号及び交通量情報等を表す送信用信号を発生するものである。点灯信号発生装置16は、青色信号線x、黄色信号線y及び赤色信号線zによって加算器19を通して各駆動部12a〜12cに接続されており、交通量検出装置21から受信した交通量信号と受信装置13からの受信信号とに基づいて点灯信号を生成して出力するものである。変調器17は、交通量検出装置21から受信した交通量信号についてPCM変調を行なって変調信号を生成するものである。信号合成部18は、受信装置13からの受信信号と変調器17からの変調信号を合成して同一周期の送信用信号を生成するものである。加算器19は、3つのAND回路を備えており、各AND回路の入出力側が青色信号線x、黄色信号線y及び赤色信号線zに介装接続されており、さらに変調器17からの出力線が各AND回路の入力側に接続されており、送信用信号と点灯信号を加算するものである。
【0019】
上記交通信号機10間で送信される可視光信号については、交差点付近を走行する車両が信号受信装置25を搭載することにより受信することができる。信号受信装置25としては、例えば図4に示すように、信号機本体11の表示灯11a〜11cから放射される光パルス信号を受光して、固有の色の光を通過させるフィルタ26aを通過した可視光信号を電気信号に変換する受光素子26と、変換された電気信号の直流分をコンデンサ27aで除いて増幅する増幅器27と、増幅された変調信号を復調させる復調器28と、復調された出力を映像及び音声表示する表示装置29を備えたものであればよい。
【0020】
つぎに、上記のように構成した実施例1の動作について説明する。
図2に示すように、交通信号機間の可視光通信システムの適用される特定地域の互いに隣り合った4つの交差点I〜IVに設置された各4基の交通信号機I−1〜4、II−1〜4、III−1〜4、IV1〜4相互の間において、可視光通号の送受信について説明する。交差点Iと交差点II間においては、交通信号機I−1と交通信号機II−2の間で信号の送受信が行われる。例えば、交通信号機I−1において、交通量検出装置21から交差点I,II方向の車両の通行量を示す交通量信号が出力される。
【0021】
変調器17においては、入力された交通量信号がPCM変調されて変調信号が生成される。また、受信装置13が、他の交通信号機における交通量に関する可視光信号を受信して、受信信号を出力する。この変調信号と受信信号が信号合成部18において合成されて、他の交通信号機II−2へ送信するための送信用信号が生成される。一方、交通量検出装置21からの交通量信号と、受信装置13からの受信信号が、点灯信号発生装置16に入力され、これにより交通信号機I−1の表示灯11a〜11cにおける点灯時間が演算され、それに応じて、3つの点灯信号が出力される。
【0022】
3つの点灯用信号と送信用信号が3つの加算器19において加算され、駆動部12a〜12cで増幅されて、各表示灯11a〜11cを規定された時間間隔で点灯動作あるいは点滅動作を行なわせるための送信用信号と同一周期の青色、黄色及び赤色の3種類の変調点灯信号を生成する。これにより、各表示灯11a〜11cが交通整理のために所定の時間間隔で点灯動作あるいは点滅動作を行なうと共に、可視光信号を送信する。この可視光信号が、交差点IIにおいて交通信号機II−1,II−2により受信される。同様に交通信号機II−2から次の交差点の交通信号機10に対して同様に可視光信号が送信される。同様の信号の送受信については、交差点Iと交差点III間、交差点IIと交差点IV間、交差点IIIと交差点IV間においても同様に行われ、さらにこれに続く交差点との間でも順次に行われる。
【0023】
以上に説明したように、本実施例1においては、特定地域に設けられた多数の交差点における交通状況や事故発生状況等をそれぞれの交差点における交通信号機10が把握することができる。その結果、実施例1においては、各交通信号機10が交通情報を利用して適正に点灯制御等を行うことにより、車両の円滑な走行を促し交通渋滞を緩和することができる。また、実施例1によれば、各交差点周辺を走行する車両は、交通信号機10間で通信される可視光信号を、車両に搭載した信号受信装置25によって受信することができる。その結果、地域を走行する車両等にとって容易に多数の交差点における交通状況や事故発生状況等を知ることができるので便利である。
【0024】
つぎに、実施例1において、図5に示すように、隣同士の交差点V,VI間が中間位置Mで大きく曲っており、両交差点V,VI間が直線的に見通せなく、すなわち直接可視光信号の送受信を行えない場合の対応について説明する。この場合、両交差点V,VI間の中間位置Mに中継装置22を設け、中継装置22によって可視光信号を反射させることにより、両交差点V,VIに設けた交通信号機V−1,VI−2間の通信を行うことができる。なお、直線的に見通せない両交差点V,VI間で中継装置22を用いて通信を行う場合に、可視光信号の代りに、赤外線信号を用いることも可能である。これにより、赤外線信号の送信受信等のための装置が必要になるが、信号のSN比を高めることができ、送信の信頼性が高められる。
【0025】
また、実施例1において、隣同士の交差点V,VI間が直線的に見通せない場合の他の対応について説明する。例えば、図6に示すように、見通せる交差点V,VII間の交通信号機V−3とVII−2,1、交差点VII,VIII間の交通信号機VII−1とVIII−2、交差点VIII,VI間の交通信号機VIII−2とVI−3,2間で通信をリレーして通信ルートを迂回することにより、隣同士の交差点V,VI間の通信を行うことができる。このように、隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合でも、見通せる交差点間の交通信号機間で通信をリレーして通信ルートを迂回することによって、途中に中継装置を設けなくても交通信号機間の通信を行うことができる。そのため、中継装置の設置のためのコストを要しなく、特に中継装置の設置が困難な場合に有効である。
【0026】
つぎに、上記実施例1の変形例について説明する。変形例においては、図7に示すように、可視光信号を受信する受信装置として、上記交通信号機10の受光素子13aとコンデンサ13bと増幅器13cとを備えた受信装置13に代えて、表示灯11a〜11cを構成する発光ダイオードをそのまま用いるようにしたものである。例えば、点灯時間の短い黄色表示灯11bの消灯時を利用することにより、相手側の交通信号機10からの可視光信号を受信することができる。信号機本体11Aの受信装置24として、図7に示すように、表示灯11bとコンデンサ13bの接続線に信号選択器24aを設け、信号選択器24aに点灯信号発生装置16の出力を接続させるようにした。これにより、信号選択器24aは、点灯信号発生装置16から黄色信号が出力されていないときのみに、表示灯11bからの電気信号を通過させるように制御することができる。このように、表示灯11bを利用して相手交通信号機10からの可視光信号を受信することができ、その結果、交通信号機10に表示灯以外の受信装置を設ける必要が無いので、交通信号機10の構成を簡略にできると共に安価に提供できる。
【0027】
なお、上記実施例1、変形例においては、外部の交通量検出装置21からの交通量信号を受けて、これを交通信号機10間で可視光信号により通信を行っているが、交通量信号以外の公共情報あるいは私的な一般情報信号を加えて可視光信号に変換して送信することも可能である。
【0028】
つぎに、本発明の実施例2について説明する。
図8,図9は、実施例2に係る交通信号機間の可視光通信システムに用いられる特定の交差点に設けられた特定交通信号機30及びその他の交差点に設けられた交通信号機10Aの概略構成をブロック図により示したものであり、図10は実施例2の交通信号機間の可視光通信システムの適用例を説明図により示したものである。この交通信号機間の可視光通信システムは、特定地域における道路の複数の交差点に設けられた交通信号機の内、特定の交差点に設けられた特定交通信号機30のみが中央の交通管理センター40と通信回線で接続されており、交通管理センター40から通信回線を通して送られてきた交通情報を、特定交通信号機30から他の交通信号機10Aに順次可視光信号により伝達するものである。
【0029】
特定交通信号機30は、道路の交差点に設けられた信号機本体31と、信号機本体31の点灯を制御する点灯駆動制御部33とを備えている。信号機本体31は、受信装置13を設けていないことを除いて上記信号機本体11と同様の構造である。点灯駆動制御部33は、信号機本体31を点灯させるための点灯信号を発生する点灯信号発生装置34と、外部情報発信源からの情報信号を連続的に取り込んで変調器36に出力するセレクタ35と、セレクタ35からのシーケンシャルな情報信号をパルス変調して出力する変調器36と、セレクタ35と変調器36の信号の同期を取るコントローラ37と、点灯信号発生装置34からの点灯信号を色コード信号にしてセレクタ35に出力するコード38と、点灯信号発生装置34からの点灯信号を変調器36からの変調信号によりパルス化する加算器39とを備えている。
【0030】
点灯信号発生装置34は、実施例1で示した点灯信号発生装置16と同様の構成であり、各表示灯11a〜11cと青色信号線x、黄色信号線y及び赤色信号線zによって接続されており、各表示灯11a〜11cを予め規定された時間間隔で点灯動作あるいは点滅動作を行なわせるための青色、黄色及び赤色の3種類の点灯信号を発生するものである。点灯信号発生装置34は、交通管理センター40と通信回線によって接続されており、交通管理センター40から交通情報信号を受信して点灯信号を発生するようになっている。なお、点灯信号発生装置34自体が、中央の交通管理センター40に設けられていてもよい。
【0031】
セレクタ35は、外部の情報発信源からの各種の情報信号をコントローラ37からの指令に基づいてシーケンシャルな情報信号に配列して出力するものである。情報発信源としては、上記交通管理センター40と、その他民間の広告代理店等の情報発信機関がある。交通管理センター40からは、交通量情報の他に工事情報、事故災害情報等が送信され、広告代理店等からは、コマーシャル情報(名物、観光地、催し物、等)等が送信される。これら情報発信源からは有線又は無線の通信回線を通してセレクタ35の複数の入力端子を通して入力される。セレクタ35では、これら複数の情報信号が、情報毎に配列されヘッダで挟まれた一連のフォーマットに形成される。
【0032】
変調器36は、コード変換した後、パルス変調を行なうPCM変調を行なうものである。さらに、コントローラ37は、セレクタ35と変調器36にコントロール信号を送り、セレクタ35の情報信号のシーケンシャルな配列をコントロールすると共に、この情報信号を変調するための同期をとるものであり、上記交通管理センター40からの指令によりコントロールされる。コード38は、上記青色信号線x、黄色信号線y及び赤色信号線zからの信号を受けて、点灯信号の種類の色コード信号に変換してセレクタ35に出力するものである。
【0033】
交通信号機10Aは、図9に示すように、実施例1に示した交通信号機10において、交通量検出装置21から交通量信号を受けるものではなく、そのため変調器17及び信号合成部18を設けていない点が異なっている。従って、点灯信号発生装置16についても、受信装置13からの受信信号を受けるのみの簡易な構造になっている。交通信号機10Aは、特定交通信号機30からの可視光信号を受けて、点灯信号発生装置16において自身の表示灯11a〜11cを点灯させる点灯信号を生成すると共に、隣合った他の交通信号機10Aに可視光信号を送信するものである。
【0034】
つぎに、上記のように構成した実施例2の動作について説明する。
特定交通信号機30において、コントローラ37からの指令により、セレクタ35では、交通管理センター40からの交通情報信号及び、他の外部からの情報信号i,ii,iii・・・やコード38からの色コード信号をシーケンシャルに取り込んで変調器36に出力し、変調器36の変調操作をセレクタ35の取り込み操作に同期させる。変調器36で変調された送信用信号が加算器39に入力される。一方、点灯信号発生装置34は、交通管理センター40の指令により、各表示灯11a〜11cを予め規定された時間間隔で点灯動作を行なわせるための青色、黄色及び赤色の3種類の点灯信号を発生しており、点灯信号が発生している信号線においては、加算器39から変調信号と同一周期のパルス信号である変調点灯信号が出力される。この変調点灯信号に基づいて駆動部12a〜12cが、表示灯11a〜11cを駆動することにより、信号機本体11本来の機能である道路を通過する車両等を交通整理するための表示が行なわれる。さらに、変調点灯信号に基づいて、表示灯11a〜11cから可視光信号が送信される。
【0035】
これにより、図10に示すように、特定の交差点Sに設けた特定交通通信号機30の各表示灯11a〜11cが、規定された時間間隔で点灯動作あるいは点滅動作を行なうと共に、可視光信号を送信すると、この可視光信号が、隣合った交差点Iにおいて交通信号機I−2により受信される。同様の信号の送受信については、特定の交差点Sと交差点II間、交差点Iと交差点III間、交差点IIと交差点III間においても同様に行われ、さらにこれに続く交差点との間でも順次に行われる。
【0036】
このように、実施例2においては、複数の交差点の内の特定の交差点に設けた特定交通信号機30に対して交通管理センター40等の外部情報発信源から電話回線等の有線又は無線の通信回線により情報信号が伝達されると、特定交通信号機30は、表示灯11a〜11cから順次隣同士の交差点に設けられた交通信号機10Aに対してこの情報に関する可視光信号を送信する。これにより、他の交通信号機10Aに対しては、交通管理センター40等の外部情報発信源からの各種情報が、可視光信号によって伝達される。その結果、実施例2によれば、従来のように交通管理センター40等の外部情報発信源と複数の交通通信機を一々通信回線で結ぶ必要が無いため、通信回線設置のコストが削減され、特定地域における全ての交通信号機に交通情報等が安価に提供される。また、実施例2によれば、特定交通信号機30からその他の交通信号機10Aに可視光信号により送られた各種情報が、各交通信号機30,10Aから交差点周辺の車両等に対しても伝達され、車両においては、搭載した信号受信装置25によって可視光信号を受信することができる。その結果、地域を走行する車両等にとって容易に外部情報発信源からの交通情報等の各種情報を知ることができるので便利である。
【0037】
なお、実施例2においても、隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合の対応については、実施例1に示した方法を適用できる。また、実施例2においても、上記変形例の受信装置を採用することができる。その他、上記実施例1,2に示したものは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、隣同士の交差点間において可視光信号により両交通信号機間で簡易に通信を行うことができるため、特定地域に設けられた多数の交差点における交通状況や事故発生状況等の情報を交通信号機に送信することができ、各交通信号機がこれらの交通情報を利用して適正に点灯制御等を行うことにより、車両の円滑な走行を促し交通渋滞を緩和することができるので、有用である。また、本発明は、外部情報発信源からの各種情報を特定交通信号機が受けて、他の交通信号機に対して可視光信号を用いて簡易に各種情報を伝達することができるので、従来のように外部情報発信源と複数の交通通信機を一々通信回線で結ぶ必要が無いため、通信回線設置のコストが削減され、特定地域における全ての交通信号機に各種情報を安価に提供できるので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1である交通信号機間の可視光通信システムに用いる交通信号機の概略構成を示すブロック図である。
【図2】同交通信号機間の可視光通信システムの適用例を説明するための説明図である。
【図3】同交通信号機の信号機本体の表示盤を概略的に示す正面図である。
【図4】車両に設けられる信号受信装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合の、両交差点間の通信方法を説明する説明図である。
【図6】隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合の、両交差点間の他の通信方法を説明する説明図である。
【図7】実施例1の変形例である交通信号機の概略構成を示すブロック図である。
【図8】実施例2である交通信号機間の可視光通信システムに用いる特定交通信号機の概略構成を示すブロック図である。
【図9】実施例2の他の交通信号機の概略構成を示すブロック図である。
【図10】実施例2に係る交通信号機間の可視光通信システムの適用例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10,10A…交通信号機、11…信号機本体、11a…青色表示灯、11b…黄色表示灯、11c…赤色表示灯、13…受信装置、15…点灯駆動制御部、16…点灯信号発生装置、21…交通量検出装置、22…中継装置、24…受信装置、25…信号受信装置、30…特定交通信号機、31…信号機本体、33…点灯駆動制御部、34…点灯信号発生装置、40…交通管理センター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の発光ダイオード素子によって構成された表示灯を有する交通信号機がそれぞれ設置された隣同士の交差点間において、一方の交通信号機の表示灯を駆動して該表示灯に交通整理の点灯表示を行わせると共に各種情報を表す可視光信号を送信させ、他方の交通信号機に設けた受信装置によって該可視光信号を受信することにより両交通信号機間で各種情報についての通信を行うことを特徴とする交通信号機間の可視光通信システム。
【請求項2】
前記隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合には、該交差点間の中間位置に中継装置を設け、該中継装置を介して可視光信号又は赤外線信号により該隣同士の交差点に設けた交通信号機間の通信を行うことを特徴とする前記請求項1に記載の交通信号機間の可視光通信システム。
【請求項3】
前記隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合には、見通せる交差点間の交通信号機間で可視光信号による通信をリレーして通信ルートを迂回することにより、前記隣同士の交差点間の通信を行うことを特徴とする前記請求項1に記載の交通信号機間の可視光通信システム。
【請求項4】
前記可視光信号を受ける前記交通信号機の受信装置として、前記表示灯を構成する発光ダイオード素子を用いることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の交通信号機間の可視光通信システム。
【請求項5】
複数の交差点に設けた複数の交通信号機に外部情報発信源から情報信号が伝達される交通信号機の通信システムであって、
前記交通信号機が、それぞれが多数の発光ダイオード素子によって構成された表示灯を有し、該表示灯を駆動することにより該表示灯に交通整理の点灯表示を行うと共に各種情報を表す可視光信号を送信するものであり、
前記外部情報発信源からは、前記複数の交差点の内の特定の交差点に設けた特定交通信号機に通信回線を通して各種の情報信号が伝達され、
該特定交通信号機以外の交通信号機に対しては、該特定交通信号機の表示灯から順次隣同士の交差点に設けられた交通信号機に対して各種情報を表す可視光信号によって通信を行うことを特徴とする交通信号機間の可視光通信システム。
【請求項6】
前記隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合には、該交差点間の中間位置に中継装置を設け、該中継装置を介して可視光信号又は赤外線信号により該隣同士の交差点に設けた交通信号機間の通信を行うことを特徴とする前記請求項5に記載の交通信号機間の可視光通信システム。
【請求項7】
前記隣同士の交差点間が直線的に見通せない場合には、見通せる交差点間の交通信号機間で可視光信号による通信をリレーして通信ルートを迂回することにより、前記隣同士の交差点間の通信を行うことを特徴とする前記請求項5に記載の交通信号機間の可視光通信システム。
【請求項8】
前記可視光信号を受ける前記交通信号機の受信装置として、前記表示灯を構成する発光ダイオード素子を用いることを特徴とする前記請求項5〜7のいずれか1項に記載の交通信号機間の可視光通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−215917(P2006−215917A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29730(P2005−29730)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(591068816)信号電材株式会社 (11)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(504350854)有限会社ミヤビシステム (3)
【出願人】(599137828)株式会社 サンウェイブレックス (15)
【Fターム(参考)】