説明

人および動物の腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防用医薬組成物、および医薬組成物の使用

本発明は、化学薬剤と組合わせたときに、抗腫瘍補助剤、細胞保護性の転移抑制剤、および抗変異原性剤として生物学的な適用性を有するなる多官能金属フェノラートからなる医薬の組成物に関するものである。本発明はさらに、人および動物の腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防のための薬剤製造のための前記多官能金属フェノラートの使用に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能金属フェノラート、および細胞保護および/または市販抗腫瘍剤の増強補助剤として、骨髄の保護補助剤および刺激剤として、および腫瘍の予防薬としての生物学的な適用に関するものである。
【0002】
これらの化合物は、市販の化学療法薬と組合わせて用いられたとき、抗変異原性および転移抑制の効果を有し、化学療法薬の毒性を小さくする。特に、この発明は、市販の化学療法薬と組合わせて用いたとき、抗癌補助剤、細胞保護剤、転移抑制剤、抗変異原性剤として生物学の適用ができる多官能金属フェノラートを含む医薬組成物に関する。
【0003】
本発明は、さらに、人および動物の腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防用の医薬製造における多官能金属フェノラートの使用に関するものである。
【背景技術】
【0004】
癌、すなわち悪性腫瘍は、転移として知られているプロセスで種々の組織に侵入、破壊して際限なく成長および分裂する細胞群で特徴付けられる疾患である。癌は、通常、それと最もよく似た正常細胞タイプと共に、癌細胞が発生する組織によって分類される。
【0005】
殆ど全ての癌は、遺伝子の異常によって引き起される。これらの異常は、発癌性物(例えば喫煙、放射線、化学薬品、あるいは感染因子)により引き起こされる、あるいは遺伝することがあり、生れた時から全ての細胞中に存在している。癌に見出された遺伝子異常は、典型的に2つの遺伝子クラスに影響を及ぼしている。
【0006】
癌を促進する遺伝子、発癌遺伝子は、癌細胞中で活性化され、これらの細胞に、超活性な成長と分裂、プログラムされた細胞死に対しての保護、周囲の正常な組織への尊厳の喪失、いくつかの組織において安定になる能力、といった新しい性質を与えている。
【0007】
さらに、腫瘍抑制遺伝子は、しばしば癌細胞中で不活性化されて、正確なDNA複写、細胞周期のコントロール、組織内の配置および接着、および免疫系の保護細胞との相互作用といった細胞の正常な機能を喪失させている。
【0008】
癌と診断されると、通常、外科的、化学療法的および放射線的の組合わせで治療される。
癌の化学療法で使用されるほとんどの薬剤は、細胞周期を阻害し、従って、通常細胞周期に及ぼす影響によって分類される。
a)非特異性化学サイクル−ナイトロジェンマスタードなど、サイクルの増殖の細胞にもあるいはそうでない細胞にも作用する、
b)特異サイクル−シクロフォスファミドなど、増殖中の細胞にのみ作用する、
c)細胞周期に特異的−メトトレキサート(Methotrexate)(S期)、パクリタキセル(paclitaxel)(M期)、エトポサイド(Etoposide)(G2期)、ビンクリスチン(Vincristine)(M期)など、細胞周期のある一つの期に作用する。
【0009】
化学療法は、1種以上の化学療法薬剤を適用することで行う。単一薬剤(単化学療法)の使用は、殆どの腫瘍に対して著しい部分的あるいは完璧な反応を引き出すには不充分であり、現在では非常に稀な使用である。
化学療法は、効果が確認され、薬剤の相乗作用で細胞周期の異なる期で細胞の数を増し、薬剤耐性を減らし、投与量当たりの応答量を上げることを目的としている。
【0010】
癌の化学療法で使用される薬剤は、正常細胞と腫瘍細胞の両方に作用する。この理由により、単一薬剤あるいは多薬剤での従来の化学療法での治療は殆ど、貧血、強い免疫抑制、脱毛、肝臓毒、軽度な胃腸障害、および末梢神経疾患などこれらの薬剤化合物による種々の副作用と関連している。
【0011】
癌治療に使用される殆どの物質は、DNAを損傷して癌細胞の死を引き起こす。目標の細胞に到達することに加えて、正常細胞もこれらの物質を吸収して、二次腫瘍の発生となることがある。従って、化学療法で使用される化学薬品の染色体異常誘発潜在力を評価する際に、薬剤のこの作用を最小限にする処理方法および/または薬剤が求められている。
【0012】
シクロホスファミド(cyclophosphamide)、エトポサイド(Etoposide)、パクリタキセル(paclitaxel)などの抗腫瘍剤は、抗腫瘍の治療に使用されるが、これらの医薬剤を単独あるいは組合わせて施された患者に、骨髄細胞での変異原性、DNA損傷を起こす可能性が大きい〔Mazu et al.Mutat.Res,309(2),p.219−213,1994;Shuko,Y.Human and exp.Toxicol.,23(5),p.245−250,2004;Branham,MT Mutat.Res.,560(1),p.11−17,2004;Huang,R.CA Cancer J.Clin.,59,p.42−55,2009〕。
【0013】
従って、パクリタキセル、シクロフォスファミド、エトポサイドなどの抗腫瘍化合物の変異原性作用を減らすことは、デクスラゾキサン(dexrazoxane)、アミホスチン(amifostine)、メスナ(mesna)などある種の薬剤との組合わせと関連している。
【0014】
しかしながら、これら共補助剤は、大きな不都合点がある。デクスラゾキサンは、エトポサイドの毒性を減らすが、細胞損傷率が45%以上と著しい副作用も持っている。〔Attia et al.Cancer Chem.Pharmacol.,2009(印刷前の電子公開)〕。アミホスチンは、シスプラチン(cisplatin)やパクリタキセルと組合わせて用いて毒性を減らすが、細胞損傷率が50%から60%に及ぶ〔Marcu LG.Eur J Cancer Care(Engl),18(2),p.116−123,2009〕。メスナは、パクリタキセルと組合わせたとき副作用は少ないが、抗変異原性作用が弱い〔Souza et al.,Rev.Bras.Hemat.Hemoter.,22(2),p.123−128,2000;Chen et al.Gen.Cancer There.,14(12),p.935−944,2007;Vilar et al.Braz.J.Biol.,68(1),p.141−147,2008〕
【0015】
上記の観点から、癌の化学療法剤の副作用を減らし、癌細胞に対する毒性を高める補助剤組成物を開発することが望まれている。
【0016】
4−[5−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル−2−ナトリウムメトキシ−フェノラートなどの1,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−ペンタ−1,4−ジエン−3−オンの金属塩は、ジェー・キンコス(J.Quincoces)らにより得られ、腫瘍細胞に顕著な増殖抑制作用を示した〔特許文献;PCT/BR2007/000175号および PI0602640−0号〕。さらに、これらの化合物は、転移を阻害することもできた〔Faiao−Flores et al.,Applied Cancer Res,28(2),p.72−79,2008〕。
【0017】
しかしながら、今日迄、これらの化合物が、他の抗腫瘍剤と組合わせたときに、補助作用、転移抑制、細胞保護、抗変異原性の作用をもつことは記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、骨髄と免疫血液学システムに及ぼす悪影響を防ぐことに加え、それらの抗腫瘍作用を高めるために、抗腫瘍剤と組合わせる補助剤としての多官能金属フェノラートの使用することである。
【0019】
本発明の別の目的は、腫瘍の発生を阻害し、腫瘍細胞が他の組織および器官に転移するのを阻止するために、多官能金属フェノールを抗腫瘍剤と組合わせて使用するである。
【0020】
本発明の別の目的は、多官能金属フェノールを、変異原性を起す従来の抗腫瘍剤の抗変異原性剤のような抗腫瘍剤と組合わせて使用することである。
【0021】
本発明のより特定の目的は、多官能金属フェノールを、1種以上の抗腫瘍剤、1種以上の不活性成分、賦形剤、生理学的に許容される希釈剤あるいは溶剤と組合わせてなる医薬組成物を提供することである。
【0022】
また、本発明の別の目的は、多官能金属フェノールを、人と動物の腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防用の医薬製造に使用することである。
【0023】
定義:本特許出願を読み易くするために、略語“DM−1”を多数回用いている。この略語は、4−[5−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−ペンタ−1,4−ジエニル−2−ナトリウムメトキシ−フェノラートを表している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の図面は、本明細書の一部であり、発明の特定態様を説明するものである。本発明の目的は、ここに示された好ましい実施形態の詳細な記載と共に、これらの図の1つ以上を参考にすることで一層よく理解することができるであろう。
【図1】パクリタキセル、エトポサイド、DM−1と一緒にしたパクリタキセル、DM−1と一緒にしたエトポサイドで処理したマウスの乳腺腺癌の腫瘍面積変化を、コントロール(処理していない)と比較して示している。
【図2】パクリタキセル、エトポサイド、DM−1と一緒にしたパクリタキセル、DM−1と一緒にしたエトポサイドで処理した乳腺腺癌をもつマウスグループの生存率を、コントロール(治療していない)と比較して示している。
【図3】パクリタキセル、エトポサイド、DM−1と一緒にしたパクリタキセル、DM−1と一緒にしたエトポサイドで処理した乳腺腺癌をもつマウスグループの腎臓と脾臓の転移数を、コントロール(治療していない)と比較して示している。
【図4】パクリタキセル、エトポサイド、DM−1と一緒にしたパクリタキセル、DM−1と一緒にしたエトポサイドで処理した乳腺腺癌をもつマウスグループの脾臓容積の変化を、コントロール(治療していない)と比較して示している。
【0025】
【図5】化合物DM−1で処理した(DM−1で前処理と後処理)B16F10黒色腫腫瘍の面積変化を、コントロール(治療していない)と比較して示している。
【図6】パクリタキセル、およびパクリタキセルと化合物DM−1で処理したマウスのB16F10黒色腫腫瘍の面積変化を、コントロール(治療していない)と比較して示している。
【図7】化合物DM−1で処理した(DM−1で前処理、DM−1で前処理と後処理)B16F10黒色腫をもつマウスグループの生存率を、コントロール(治療していない)と比較して示している。
【図8】パクリタキセル、およびパクリタキセルと化合物DM−1で処理した、B16F10黒色腫をもつマウスグループの生存率を、コントロール(治療していない)と比較して示している。
【図9】化合物DM−1で処理した(DM−1で前処理、DM−1で前処理と後処理)、B16F10黒色腫をもつマウスの体内転移の分布と部位を、コントロール(治療していない)と比較して示している。
【図10】パクリタキセル、およびパクリタキセルと化合物DM−1を組合わせて処理したB16F10黒色腫をもつマウスの体内臓器の転移分布部位を、コントロール(治療していない)と比較して示している。
【0026】
【図11】正常マウスと、化合物DM−1で前処理、およびDM−1で前処理と後処理したB16F10黒色腫をもつマウスの赤血球の総数評価を示しており、移植前となるDM−1処理の6日目、14日目(1A、2A)および、処理開始後の2日目、6日目および10日目(1B、2Bおよび3B)について、コントロールグループと比較している。
【図12】正常マウスと、パクリタキセル、およびパクリタキセルとDM−1を組合わせて処理したB16F10黒色腫をもつマウスの赤血球の総数評価を示しており、処理開始後の2日目、6日目、10日目(1B、2Bおよび3B)について、コントロールグループと比較している。
【図13】正常マウスと、化合物DM−1で前処理、およびDM−1で前処理と後処理したB16F10黒色腫をもつマウスの白血球の総数評価を示しており、移植前となるDM−1処理の6日目、14日目(1A、2A)および、処理開始後の2日目、6日目および10日目(1B、2Bおよび3B)について、コントロールグループと比較している。
【図14】正常マウスと、パクリタキセル、およびパクリタキセルとDM−1を組合わせて処理したB16F10黒色腫をもつマウスの白血球の総数評価を示しており、処理開始後の2日目、6日目、10日目(1B、2Bおよび3B)について、コントロールグループと比較している。
【図15】正常マウスと、化合物DM−1で前処理、およびDM−1で前処理と後処理したB16F10黒色腫をもつマウスの血小板の総数評価を示しており、移植前となるDM−1処理の6日目、14日目(1A、2A)および、処理開始後の2日目、6日目および10日目(1B、2Bおよび3B)について、コントロールグループと比較している。
【図16】正常マウスと、パクリタキセルで処理、およびパクリタキセルとDM−1を組合わせて処理したB16F10黒色腫をもつマウスの血小板の総数評価を示しており、処理開始後の2日目、6日目および10日目(1B、2Bおよび3B)について、コントロールグループと比較している。
【0027】
【図17】コントロールグループでの細胞周期による背腫瘍のB16F10腫瘍細胞の分布を示している。
【図18】DM−1処理グループでの細胞周期による背腫瘍のB16F10腫瘍細胞の分布を示している。
【図19】DM−1で前処理と後処理をしたグループでの細胞周期による背腫瘍のB16F10腫瘍細胞の分布を示している。
【図20】パクリタキセルで処理したグループでの細胞周期による背腫瘍のB16F10腫瘍細胞の分布を示している。
【図21】パクリタキセルとDM−1を組合わせて処理したグループでの細胞周期による背腫瘍のB16F10腫瘍細胞の分布を示している。
【0028】
【図22】ネガティブコントロールグループでの赤芽球の一般的な形態である。ギームザ染色、400倍に拡大。
【図23】DM−1を140μM/kgで腹腔内投与した後での骨髄染色における多色赤芽球を示す。ギームザ染色、400倍に拡大。
【図24】DM−1を140μM/kgで投与した後の赤芽球および白芽球(星印)を示す。ギームザ染色、400倍に拡大。
【図25】シクロフォスファミド190μM/kgの投与後の赤芽球(矢印)の分析である。ギームザ染色、400倍に拡大。
【図26】DM−1を140μM/kg投与し、8時間後にシクロフォスファミド190μM/kgを投与した骨髄の染色である。ギームザ染色、400倍に拡大。
【図27】シクロフォスファミド190μM/kg投与の作用による赤血球であり、高濃度に小核(矢印)細胞がある。ギームザ染色、400倍に拡大。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、一般式Iの金属フェノラートに関している。
【化1】

【0030】
式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Yは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Xは、それぞれ独立に、1、2あるいは3であり、Mzは、それぞれ独立に、1価カチオン、2価カチオンあるいは3価カチオンである。
【0031】
本発明に記載した多官能金属フェノラートは、抗腫瘍剤の抗腫瘍作用を高め、骨髄を保護し、刺激する細胞保護補助剤として作用し、および腫瘍抑制剤として作用するという予期しなかった技術的効果を示している。
【0032】
これらの化合物は、抗腫瘍剤と組合わせて用いたとき、転移抑制および抗変異原性の効果を有し、その抗腫瘍剤の毒性を小さくする。
ここに記載した化合物は、人と動物の増殖性疾患での細胞死(アポトーシス、アノイキス)を引き起す能力があり、人と動物の腫瘍の転移を抑制している。
【0033】
したがって、本発明は、この化合物を、腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防する増殖性および/または変性疾患の転移性病巣の抑制に、抗腫瘍剤と組合わせての使用に関するものである。
【0034】
特に、本発明は、これらの化合物を、肺癌、乳癌、多数の薬剤に耐性をもつ乳癌、非黒色腫皮膚癌および黒色腫、リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性赤白血病、脊髄形成異常症、大腸癌、卵巣癌、子宮癌、腎臓癌、膵臓癌、前立腺癌、軟部肉腫、肝細胞癌、骨肉腫、中枢神経系腫瘍、神経芽細胞腫、星細胞腫、咽頭癌、甲状腺癌、胃癌、男性生殖系癌による腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防に使用することに関している。
【0035】
本発明は、さらに、本発明の多官能金属フェノラートを含む医薬組成物と、多官能金属フェノラートを抗腫瘍剤の補助剤、細胞保護性の転移抑制剤および抗変異原性剤として、化学療法薬剤と共に用いた生物学的適用に関するものである。
【0036】
特に、本発明は、本発明で記載した1つ以上の金属フェノラート、少なくとも1つの抗腫瘍剤、1つ以上の不活性成分、賦形剤、生理学的に許容される希釈剤あるいは溶剤からなる医薬組成物に関するものである。
【0037】
本発明で記載した1つ以上の金属フェノラートを含む医薬組成物では、活性成分は、従来の医薬品混合技術によって製造できる[レミングトン医薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、18版、エドマック出版社(Ed, Mack Publishing Co.)、アメリカ合衆国ペンシルバニア州イーストン、1990年、を参照]
【0038】
代表的には、一定量の活性成分を、薬学的に許容される賦形剤と混合する。賦形剤は、静脈内、経口、非経口など所望の投与形態に拠り種々の配合がある。この組成物は、さらに安定剤、防腐剤などを含んでいてもよい。
【0039】
経口投与に対して、化合物は、カプセル、丸剤、錠剤、トローチ剤、糖蜜、粉末、懸濁液あるいは乳剤などの製造に固体あるいは液体で配合される。
【0040】
経口投与の組成物を製造するには、通常の医薬媒体が使用され、例えば、経口の液体(例えば懸濁液、エリキシール、溶液)の場合には、例えば水、グリコール類、油、アルコール類、合成香料、防腐剤、染料、乳化剤、その他が、あるいは、経口の固体(例えば、粉末、カプセル、錠剤)の場合には、澱粉、砂糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、バインダー、崩壊剤、その他不活性成分が使用される。
【0041】
投与を容易にするために、錠剤とカプセルは、経口投与の最も有利な形態であり、固体の医薬用賦形剤が使用される。所望により、錠剤は標準の技術によって砂糖コーティングあるいは腸溶性コーティングされる。
【0042】
本発明に記載した免疫治療薬は、特許文献WO 96/11698号に記載されているように、カプセル化して安定に胃腸管を通過でき、血液脳関門を通り抜けられるようにする。
【0043】
非経口投与に対しては、化合物は、薬学的に許容される不活性成分に溶解し、溶液あるいは懸濁液として投与される。適切な不活性成分の例は、水、食塩水、ブドウ糖溶液、果糖溶液、エタノール、動物油、植物油、合成油がある。
【0044】
その他の不活性成分は、防腐剤、バインダー、安定剤、バッファー液などの他の成分を含んでいることがある。これらの化合物が髄腔内に投与されたときに、脳脊髄液に溶解していくかもしれない。
【0045】
医薬組成物は、本発明に記載した1つ以上の金属フェノラートを、組成物の全重量に対して重量で約0.0001から99%、好ましくは約0.001から50%、より好ましくは約0.01から10%を含んでいなければならない。
【0046】
本発明に記載した1つ以上の金属フェノラートに加えて、医薬組成物および薬剤は、さらに他の薬学的に活性化合物を含むことができる。他の薬学的に活性化合物と共に使用した時、本発明の金属フェノラートは、薬剤のカクテル形状で提供される。薬剤カクテルは、本発明で使用される化合物と、その他医薬品あるいは薬剤との混合物となる。
【0047】
この実施形態では、投与(例えば、丸剤、錠剤、移植、スプレー、注射液など)に共通の不活性成分として、上記した組成物と一緒に追加の活性成分を含むことがある。このカクテル中の個々の薬剤は、所望の効果を出すに治療上有効な量で投与される。
【0048】
本発明に記載した金属フェノラートおよび医薬組成物の投与は、様々な方法が可能である。その方法は、選択された特別の化合物、治療対象の疾患の病状、および治療効能に必要な投与量に依って選択される。
【0049】
本発明の方法は、生物学上使用することができる投与方法、つまり臨床的な副作用を伴わずに活性化合物の有効レベルに達せられる任意の方法で、一般に実行することができる。このような投与方法には、経口、直腸内、舌下、外用、鼻腔、経皮、非経口がある。ここで、“非経口”とは、皮下、静脈内、硬膜外、洗浄、筋肉内、噴霧、あるいは点滴がある。
【0050】
本発明に記載した1つ以上の金属フェノラートの投与は、次のものを含む全ての適切な供給手段を使用して達成することができる。
(a)噴霧、(b)マイクロカプセル化(特許文献:米国特許4,352,883号、米国特許4,353,888号、および米国特許5,084,350号参照)、(c)連続放出するポリマー中への埋込み(特許文献:米国特許883,666号参照) (d)マイクロカプセル化(特許文献、米国特許5,284,761号、米国特許5,158,881号、米国特許4,976,859号、米国特許4,968,733号、および特許出願WO92/19195号およびWO95/05452号参照))、(e)中枢神経系での非カプセルグラフト(特許文献:米国特許5,082,670号および米国特許5,618,531号参照)、(f)皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、その他適切な場所の注射、(g)カプセル、液体、錠剤、丸剤あるいは徐放性処方での経口投与。
【0051】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、膀胱内注入(intravesical infusions)である。本発明明に記載した1つ以上の金属フェノラートが、治療上有効量で投与されるのがよい。
【0052】
ここで使用されている活性化合物の“治療上有効量”あるいは単に“有効量”は、如何なる医薬治療に対しても危険と利益の比率が維持できるように、治療に使用される金属フェノラートの平均的充分量と理解されるべきである。
【0053】
実際の投与量、割合、および投与される時間は、治療される状態の条件、病状に依り変わってくる。治療の処方、すなわち投与量と投与の時間などは、対象疾患の検査、患者個々の状態、投与の場所と方法、およびその他統括医師と専門家の責任範囲内にいる臨床医の知識によって決められる。投与量は、金属フェノラートの所望レベルを、部分的にあるいは体系的に達成できるように適切に調節する。
【0054】
本発明は、さらに本発明に記載した多官能金属フェノラートを、人と動物での腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防に使用することに関する。
【0055】
本発明の別の態様では、本発明の化合物を、腫瘍性疾患、増殖性および/または変性疾患の転移性疾患の治療、抑制あるいは予防する医薬品の製造に使用することである。
【0056】
特に、ここに記載した化合物は、以下に挙げる腫瘍性疾患の治療あるいは抑制に使用され、あるいは治療、抑制あるいは予防に使用される医薬品の製造に使用される。この腫瘍性疾患は、肺癌、乳癌および多数の薬剤に耐性をもつ乳癌、非黒色腫皮膚癌および黒色腫、リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性赤白血病、脊髄形成異常症、大腸癌、卵巣癌、子宮癌、腎臓癌、膵臓癌、前立腺癌、軟部肉腫、肝細胞癌、骨肉腫、中枢神経系腫瘍、神経芽細胞腫、星細胞腫、咽頭癌、甲状腺癌、胃癌、前立腺癌および男性生殖系の癌である。
【実施例】
【0057】
本発明をよりよく理解し、技術的な利点を明瞭に示すために、本発明に関して行った種々の実験結果を実施例として示す。
実施例1−実験の乳腺腺癌(エールリッヒ腫瘍)における化合物DM−1共存下パクリタキセルとエトポサイド化学療法の抗腫瘍作用の向上:
a)インビボでの腫瘍維持と、エールリヒ腹水中の癌細胞の回収;
乳腺腺癌の実験モデルとして、生後約2か月で体重20〜25gのBalb−c種マウスにエールリヒ腫瘍を使用した。インビボでの腫瘍は、7日毎に10個の細胞を腹腔内に投与して維持した。
【0058】
b)動物と実験方法;
食事と水を自由にして生後約6〜8週で体重25gのBalb−c種マウスのメスとオス50匹を用い、これを5つのグループに分けた。
コントロールグループ−腫瘍を移植して7日経た動物10匹に、毎日、生理食塩水0.9%を腹腔内投与した。
パクリタキセル処理グループ−腫瘍を移植して7日経た動物10匹に、パクリタキセル薬剤を1日目、5日目および10日目に腹腔内に投与した。
パクリタキセルとDM−10処理グループ−腫瘍を移植して7日経た動物10匹に、パクリタキセル薬剤を1日目、5日目および10日目に、そしてDM−1を毎日腹腔内に投与した。
エトポサイド処理グループ−腫瘍を移植して7日経た動物10匹に、エトポサイド薬剤を1日目、5日目および10日目に腹腔内に投与した。
エトポサイドとDM−10処理グループ−腫瘍を移植して7日経た動物10匹に、エトポサイド薬剤を1日目、5日目および10日目に、そしてDM−1を毎日腹腔内に投与した。
【0059】
c)パクリタキセル、エトポサイドおよびDM−1の投与;
化合物DM−1は、インビトロでのIC50%抑制作用から計算して1.6nM/kgの濃度で毎日投与した。パクリタキセルとエトポサイドは、それぞれ15μM/kgと3.73mM/kgの濃度で、腫瘍を移植して7日後の1日目、5日目および10日目に、文献に記載された腹腔内スロー注入により投与した。これらの化合物は、別々に投与した。
【0060】
d)腫瘍成長の評価;
マウスでの腫瘍の成長は、デジタルキャリパー(digital caliper)を用いて腹腔空隙の長さおよび幅を測定した。これらの測定は、面積、重量および腫瘍負荷を計算するに使用した。
【0061】
平均面積(A)、重量(M)および腫瘍負荷(C)は、次の式を用いて計算した。
A=πR2; M=LxT/2
(ここで、Lは腰周りの測定長さ、Tは腰周りの測定幅である)。
【0062】
パクリタキセルとエトポサイドを化合物DM−1と組合わせて処理された動物のグループは、コントロールグループおよびパクリタキセルとエトポサイド単独の処理グループと比較して、腫瘍の成長に顕著な減少がみられた。すなわち、パクリタキセルとDM−1処理グループの腫瘍面積が5.3±1.0cm、エトポサイドとDM−1処理グループの腫瘍面積が6.8の±1.1cm、であったのに対し、コントロールグループでは12.0±1.1cm、パクリタキセル処理グループでは11.4の±1cm、エトポサイド処理グループでは8.6の±1.0cmであった。
【0063】
処理効率は、パクリタキセルとエトポサイドでの薬剤処理グループでは、それぞれ115%および27%だけ増加した(図1)。
【0064】
e)生存率の評価;
生存率は、カプラン−マイヤー法(Kaplan−Meier method)によって計算した。パクリタキセルとエトポサイド薬で処理された動物は、化合物DM−1と組合わせることで生存率がそれぞれ20%および10%増加した(図2)。
【0065】
f)転移数の評価;
この結果は、パクリタキセルとエトポサイド薬をDM−1と組合わせて処理された動物では、体内転移の割合が著しく減少したことを示している。パクリタキセルとDM−1で処理したグループは、腎臓で30%、脾臓で50%の体内転移の減少があり、エトポサイドとDM−1で処理したグループは、腎臓で30%、脾臓で40%の減少であった。パクリタキセルあるいはエトポサイドだけで処理したグループは、それぞれ腎臓で10%と脾臓で30%、腎臓で30%と脾臓で50%の転移数減少がみられた(図3)。
【0066】
g)脾臓のマクロ容積の評価;
全実験グループの動物について脾臓の突起と転移を視覚分析した。その結果、パクリタキセルとエトポサイド薬剤を化合物DM−1と組合わせて処理したグループの脾臓容積は、正常動物の脾臓容積と差がなかった。
さらに、化合物DM−1なしでパクリタキセルとエトポサイド薬剤を投与した場合には、脾臓容積が、無処理動物と同じであったことに注意してほしい(図4)。
【0067】
従って、コントロールグループに見られたエールリヒ腹水腫瘍を移植した動物に生じる免疫抑制は、全ての実験で化合物DM−1の投与によって抑えられた。それ故、これらの結果は、化合物DM−1が、免疫調整剤あるいは化学防護剤として作用していることを示している。
【0068】
実施例2−B16F10黒色腫における化合物DM−1の同時使用によるパクリタキセルとエトポサイドの抗腫瘍作用の向上:
a)B16F10黒色腫細胞の実施;
C57Bl/6J種マウスのグループに、無菌状態で5x10のB16F10黒色腫細胞を背部皮下に注入した。動物は72時間毎に観察し、腫瘍の成長を平均直径0.5 cm2まで追跡した。
【0069】
b)動物、および実験方法;
生後6〜8週、体重約25g、オスとメスで、食事と水を自由に与えたC57BL/6J種マウス50匹を、5つのグループに分けた。
【0070】
コントロールグループ−B16F10黒色腫の移植から11日目後の動物10匹を、生理食塩水0.9%を毎日与えた。
パクリタキセル処理グループ−B16F10黒色腫の移植から11日目後の動物10匹を、1日目、5日目および9日目にパクリタキセル薬剤を腹腔内投与した。
パクリタキセルとDM−10処理グループ−B16F10黒色腫の移植から11日目後の動物10匹を、1日目、5日目および9日目にパクリタキセル薬剤の腹腔内投与と共に、化合物DM−1を毎日腹腔内投与した。
B16F10黒色腫細胞移植の前に化合物DM−1で前処理したグループ−動物10匹を、腫瘍細胞の移植の14日間、化合物DM−1で毎日処理した。その14日の後、B16F10黒色腫細胞を移植し、実験の終了まで何の処理をしなかった。
B16F10黒色腫細胞移植の前にDM−1で前処理し、DM−1で後処理したグループ−動物10匹を、腫瘍細胞の移植の14日間、化合物DM−1で毎日処理した。その14日の後、B16F10黒色腫細胞を移植された動物を、さらに14日間の毎日化合物DM−1での処理を続けた。
【0071】
c)化合物DM−1とパクリタキセルの投与;
化合物DM−1を、インビトロでのIC50%阻止作用から計算して、0.83nM/kgの濃度で毎日投与した。
パクリタキセルは、腫瘍を移植して7日経て、文献に記載された処理である15μM/kg濃度で1日目、5日目および10日目に腹腔内投与した。化合物は別々に投与した。
【0072】
d)腫瘍成長の評価;
パクリタキセル薬剤を化合物DM−1と一緒に処理した動物のグループは、背の黒色腫成長に顕著な減少がみられたが、コントロールグループは、その成長が指数関数的に増加した。
【0073】
DM−1で処理したグループは、背の腫瘍面積の減少がみられた。すなわち、DM−1で前処理したグループの腫瘍面積は平均6.5±1.7cmであり、DM−1で前処理と後処理をしたグループでは平均7.3±1.3cmであった(図5)。
パクリタキセルとDM−1で処理したグループは、腫瘍面積が5.1±1.5cmであり、パクリタキセルで処理したグループの9.4±1.1cmに比べて腫瘍面積が減少した。
コントロールグループでは9.5±2.9cmであり、化合物DM−1の組合わせで処理したグループに有効な抗腫瘍作用がある(図6)。
【0074】
e)生存率の評価;
全ての処理方法において化合物DM−1は、背の黒色腫をもつ動物の生存率を著しく増加させた。DM−1で前処理したグループで、この化合物の投与は動物の生存率を50%上昇させた。DM−1で前処理と後処理したグループでは、生存率を30%上昇させ、パクリタキセルとDM−1で処理したグループでは30%上昇させた。パクリタキセルで処理したグループでは、動物の生存率に顕著な差が見られなかった((図7および8)。
【0075】
f)転移数の評価;
この結果は、化合物DM−1を投与された全てで、体内転移が顕著に下がった。DM−1で前処理と後処理したグループ、およびパクリタキセルとDM−1で処理したグループと同じように、DM−1で前処理したグループでは、肺と肝臓への転移抑制がみられた。
パクリタキセル薬剤とDM−1を組合わせた処理は、この化合物が非常に有効なことが示され、DM−1との組合わせは、パクリタキセルの転移抑制作用に非常に有効な影響を及ぼしている(図9および10)。
【0076】
g)血液評価;
B16F10黒色腫をもつ動物の血液を、B16F10細胞の接種前、化合物DM−1で処理した6日目と14日目に採取した。図では、6日目に採取したものを1A、14日目に関するものを2Aとした。一方、全グループの動物について処理後(DM−1で処理した後)の2日目、6日目および10日目に腫瘍のある血液を採取し、それぞれ1B、2Bおよび3Bとした。
【0077】
DM−1で処理された動物の赤血球の分析では、DM−1での処理は貧血を引き起こさないことを示した。さらに、化合物DM−1は、骨髄抑制の副作用を抑制するに有効であった。
DM−1で処理したグループ、DM−1をパクリタキセルと組合わせたグループにおいて、化合物DM−1は、腫瘍により引起される貧血の影響を軽減している(図11および12)。
【0078】
化合物DM−1で処理された動物での白血球数分析では、化合物DM−1は、コントロールグループと比較して、白血球の数で大きな変化を招いていることを示している。
DM−1で前処理された動物のグループ、DM−1で前処理と後処理された動物のグループ、およびパクリタキセルをDM−1と組合わせたグループの白血球数の変化は、DM−1が免疫調節作用を有していることを示している(図13および14)。
【0079】
化合物DM−1で処理した血小板数の分析では、化合物DM−1は、コントロールグループと比較して、著しい血小板数の減少を招くことを示している。一方、パクリタキセル単独の処理では、血小板数の増加となった。これらのデータは、異なる実験グループでの死体解剖によって行われた、化合物DM−1の投与後に腫瘍の進行と転移の抑制能力を強めているという分析を裏付けている(図15および16)。
【0080】
h)細胞周期の期とアポトーシスの分析;
10個のB16F10黒色腫細胞分散液を、上記した全実験水準(DM−1で前処理したグループ、DM−1で前処理と後処理をしたグループ、パクリタキセルで処理したグループ、パクリタキセルとDM−1を組合わせて処理したグループ、およびコントロールグループ) の全動物から採取した。
【0081】
細胞は,液体窒素で凍結させて保存した。沃化プロピジウムで培養した後、FACSカリバーサイトメーター(FACSCalibur cytometer)で分析した。 結果を、細胞周期の異なる期、すなわち壊死片とネクローシス、アポトーシス(サブG1)、休止非増殖細胞G0/G1、遺伝子の合成を行うS期、細胞分裂の開始であるG2/Mでの平均細胞数を割合(パーセンテージ)で示した。
【0082】
この結果は、パクリタキセル薬での処理は、コントロールグループおよびDM−1での処理と比較して、ネクローシスでの壊死細胞の割合が非常に多くなっていることを示している。
【0083】
アポトーシスは、DNA、RNAあるいは蛋白質生成に損傷があるときの、細胞のプログラムされた死である。これは、ネクローシスとは異なり、細胞核容積の減少、その破壊、形質膜の透過性の変化、細胞質のゆっくりとした溶解で特徴付けられ、細胞分解を特徴付ける急激な現象がない。
【0084】
腫瘍細胞は、アポトーシスを阻止し、組織中への増殖を続けることができる。腫瘍細胞中にアポトーシスを引き起こすことは、非常に難しい。G1期あるいはサブ−アポトーシス細胞の割合は、DM−1で前処理したグループ、DM−1で前処理と後処理したグループおよびパクリタキセルをDM−1と組合わせて処理したグループでDM−1の投与後に顕著に増加している。化合物DM−1での処理は、アポトーシスの割合を増加させ、G0/G1期での休止細胞の割合を減らしている(図17、18、19、20および21)。
【0085】
これらのデータは、パクリタキセルおよびエトポサイド薬剤と組合わせた化合物DM−1が、腫瘍細胞中でアポトーシスを引き起こし、正常細胞に対してはこの同じ影響を及ぼさない優れた化学治療薬であることを示している。
【0086】
実施例3−DM−1の抗変異原性作用:
a)動物および実験方法;
この研究は、倫理委員会(Comissao de Etica)、サンパウロバンデランテ大学(Universidade Bandeirante de Sao Paulo;UNIBAN)の協定184−07によって承認された。実験は全て、ブラジル動物実験委員会(Comite Brasileiro de Experimentacao Animal)により承認を得たものである(協定478/08番および479/08番)。
【0087】
生後90日、体重約250〜300gのオスとメスのウィスター(Wistar)種動物を用い、実験動物の使用に関する規則および手続きに従って水と食事を自由に与えた。動物は4つのグループに分けた。
【0088】
ネガティブコントロールグループ−6匹の動物を、生理食塩水0.7%を与えて処理した。
化合物DM−1で処理したグループ−6匹の動物を化合物DM−1を一回投与で処理した。
DM−1で前処理し、シクロフォスファミドで処理したグループ−6匹の動物を化合物DM−1を一回で投与して処理し、8時間後にシクロフォスファミド薬を一回投与して処理した。。
シクロフォスファミドで処理したグループ(ポジティブコントロール)−6匹の動物を、シクロフォスファミド薬剤を一回投与して処理した。
【0089】
b)化合物DM−1およびシクロフォスファミドの投与;
全てのテストで、対象の化合物1mLを腹腔内に投与した。化合物DM−1は、140μM/kgの濃度で毎日投与した。シクロフォスファミドは、190μM/kgの濃度で投与した。
化合物は、別々に投与した。実験の終わり(24および48時間)に、動物を、ナトリウムチオペンタバルビタル(sodium tiopentabarbital) (CRMV、2008年)の致死量による深い全身麻酔によって安楽死させた。
【0090】
c)変異誘導に対する小核テストの評価;
この研究は、研究中の変異性化合物の作用を分析することができた。変異性化合物を、実験動物に投与した時、小核と呼ばれる核の内部に塊が生成して識別することができるクロマチン(chromatin)に変化をもたらす。この塊の発生を定量し、その薬剤の効果の程度、あるいは変異性でないことを分析する。
【0091】
この小核の研究については、その技術がリベロら(Ribeiro et al.)によって報告されている(Environmental Mutagenesis.Ulbra Publisher.Canoas:1st edition,2003.)。
スライドの染色は、ラベロ−ゲイら(Rabello−Gay et al.)(Apud SILVA,J.C.of; SILVA, S. of C. Evaluation of possible genotoxic effects of Gergilim (Sesamum indicum L.,2003).)により記載されている。
【0092】
テストでは、化学薬剤の効果が、無核多染性赤血球(ECP)にみられ、これは比較的短い寿命であるので、染色体損傷が起きてすぐ発生した小核を含んでいる。
スライドの染色は、1:10の比率で希釈したリン酸塩バッファーpH 6.8で、15分置いたギームザ染色(Giemsa stain)を使用した。染色後、スライドを蒸留水で洗浄し、過剰の染料を除いた。
【0093】
スライドを読むに光学顕微鏡を使用し、有小核赤血球の発生割合を考慮して、スライド当たり1000個の多色赤血球を分析した。
分析は、細胞を40倍および100倍にして、ネガティブコントロールグループ染色の一般的な形態 (図22)、および化合物DM−1で処理したグループの多色赤血球(図23、24および25)を視覚観察した。DM−1処理グループ、ネガティブコントロールグループ、シクロフォスファミド処理グループの各動物1000個の細胞、合計で40,000個の細胞を分析した。
【0094】
多色赤血球の写真情報は、ディジタルAVソフト(AVsoft)によって得た。 シクロフォスファミドで処理したグループは、この技術のポジティブコントロールであった(図27)。
1000個の細胞の小核多色赤血球の発生割合は、36/1000と分析された。ネガティブコントロールの小核多色赤血球の発生割合はは2/1000であった。
【0095】
表1には、種々の化合物で処理した各動物に対して1000個の多色赤血球中で小核多色赤血球の発生割合(Fo)を示している。この結果は、統計分析、テューキー・クレイマー(Tukey−Kramer)多重比較(パラメトリックデータ)による分散分析(ANOVA)テスト、および5%有意水準、すなわち確率P<0.05、によっている。
【0096】
【表1】

【0097】
ポジティブコントロールとして使用したシクロフォスファミドの投与後に明瞭な細胞変化を見ることができる。化合物DM−1と一緒にすると、骨髄から抽出された物質である赤血球の生成に顕著な順番がみられる。
ネガティブコントロールにおいて若い細胞の生成が最も顕著である。シクロフォスファミドの投与前に化合物DM−1で前処理した時、小核が僅かに減少し、細胞の再生に改善がみられ(図26)、化合物DM−1に対して非常にポジティブであった。
化合物DM−1は、骨髄を健全に保ち、染色体異常誘発効果を顕著に下げていると結論することができる。
【0098】
化合物DM−1で処理された動物での骨髄中の小核の存在を染色して評価する方法で行ったテストでは、大きな変化が見出されず、結果はネガティブコントロールグループに近いものであった。しかしながら、シクロフォスファミドで処理したグループでは、小核のある細胞が200以上見出され、変異誘発性効果が確認された。
【0099】
化合物DM−1で前処理し、シクロフォスファミドで処理して8時間経たグループは、化合物DM−1が、抗変異原性作用を有し、他の抗腫瘍剤の優れた補助作用となり、医薬品の作用を改善し、副作用を減らし、患者の生活を改善することになることを示す高度に顕著な結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍補助剤として一般式I〔ここでRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Yは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Xは、それぞれ独立に、1、2あるいは3であり、Mzは、それぞれ独立に、1価カチオン、2価カチオンあるいは3価カチオンである〕で表される1種以上の金属フェノラート、少なくとも1種の抗腫瘍剤、1種以上の不活性成分、賦形剤、生理学的に許容される希釈剤あるいは溶剤,を含んでなることを特徴とする医薬組成物。
【化1】

【請求項2】
細胞保護剤として一般式I〔ここでRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Yは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Xは、それぞれ独立に、1、2あるいは3であり、Mzは、それぞれ独立に、1価カチオン、2価カチオンあるいは3価カチオンである〕で表される1種以上の金属フェノラート、少なくとも1種の抗腫瘍剤、1種以上の不活性成分、賦形剤、生理学的に許容される希釈剤あるいは溶剤,を含んでなることを特徴とする医薬組成物。
【化1】

【請求項3】
転移抑制剤として一般式I〔ここでRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Yは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Xは、それぞれ独立に、1、2あるいは3であり、Mzは、それぞれ独立に、1価カチオン、2価カチオンあるいは3価カチオンである〕で表される1種以上の金属フェノラート、少なくとも1種の抗腫瘍剤、1種以上の不活性成分、賦形剤、生理学的に許容される希釈剤あるいは溶剤,を含んでなることを特徴とする医薬組成物。
【化1】

【請求項4】
抗変異原生剤として一般式I〔ここでRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Yは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Xは、それぞれ独立に、1、2あるいは3であり、Mzは、それぞれ独立に、1価カチオン、2価カチオンあるいは3価カチオンである〕で表される1種以上の金属フェノラート、少なくとも1種の抗腫瘍剤、1種以上の不活性成分、賦形剤、生理学的に許容される希釈剤あるいは溶剤,を含んでなることを特徴とする医薬組成物。
【化1】

【請求項5】
前記金属フェノラートが、4−[5−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−ペンタ−1、4−ジエニル]−2−メトキシ−ナトリウムフェノラートであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記化学療法薬剤が、パクリタキセル(paclitaxel)であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記化学療法薬剤が、エトポサイド(Etoposide)であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記化学療法薬剤が、シクロホスファミド(cyclophosphamide)であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
人および動物の腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防の用医薬組成物の補助剤の製造のための、一般式I〔ここでRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Yは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Xは、それぞれ独立に、1、2あるいは3であり、Mzは、それぞれ独立に、1価カチオン、2価カチオンあるいは3価カチオンである〕で表される1種以上の多官能金属フェノラートの使用。
【化1】

【請求項10】
人および動物の腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防の細胞保護剤の製造のための、一般式I〔ここでRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Yは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Xは、それぞれ独立に、1、2あるいは3であり、Mzは、それぞれ独立に、1価カチオン、2価カチオンあるいは3価カチオンである〕で表される1種以上の多官能金属フェノラートの使用。
【化1】

【請求項11】
人および動物の腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防のための転移抑制剤の製造のための、一般式I〔ここでRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Yは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Xは、それぞれ独立に、1、2あるいは3であり、Mzは、それぞれ独立に、1価カチオン、2価カチオンあるいは3価カチオンである〕で表される1種以上の多官能金属フェノラートの使用。
【化1】

【請求項12】
人および動物の腫瘍性疾患の治療、抑制あるいは予防のための抗変異原性剤の製造のための、一般式I〔ここでRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Yは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、プレニル基、アセチル基、ベンゾイル基、あるいは金属カチオンであり、Xは、それぞれ独立に、1、2あるいは3であり、Mzは、それぞれ独立に、1価カチオン、2価カチオンあるいは3価カチオンである〕で表される1種以上の多官能金属フェノラートの使用。
【化1】

【請求項13】
前記多官能金属フェノラートが、4−[5−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−3−オキソ−ペンタ−1、4−ジエニル]−2−メトキシ−ナトリウムフェノラートであることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の多官能金属フェノラートの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2012−529439(P2012−529439A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514299(P2012−514299)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【国際出願番号】PCT/BR2009/000375
【国際公開番号】WO2010/142007
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(509007447)ウニベルシダージ バンデイランテ デ サン パウロ−アカデミア パウリスタ アンシエタ エス/シー リミターダ−ユーエヌアイビーエーエヌ (2)
【出願人】(505429717)
【出願人】(312010076)
【出願人】(312010087)
【出願人】(312010098)
【出願人】(312010102)
【出願人】(312010113)
【出願人】(312010124)
【Fターム(参考)】