人工椎間板挿入治具及び治具セット
【課題】繊維構造体をコア材とした柔軟な人工椎間板を上下の椎体の間に簡単かつ確実に挿入できる、操作性及び取扱い性に優れた人工椎間板挿入治具を提供する。また、この挿入治具と挿入ガイド治具との治具セットを提供する。
【解決手段】一組の上治具1と下治具2が上下方向に分離しないように且つ前後方向にスライドできるように嵌着され、上治具1と下治具2の前部に、繊維構造体をコア材とした人工椎間板3を保持する上保持部分1aと下保持部分2aが形成された構成の人工椎間板挿入治具10とする。上下の保持部分1a,2aで人工椎間板3を保持した挿入治具10を椎間に背後から挿入し、上治具1を抜き取り、更に下治具2を抜き取って人工椎間板3を上下の椎体で挟持させることにより、人工椎間板3を簡単かつ確実に挿入できる。治具セットは、挿入治具10と、これが挿通、誘導されるガイド孔を備えた挿入ガイド治具とのセットとする。
【解決手段】一組の上治具1と下治具2が上下方向に分離しないように且つ前後方向にスライドできるように嵌着され、上治具1と下治具2の前部に、繊維構造体をコア材とした人工椎間板3を保持する上保持部分1aと下保持部分2aが形成された構成の人工椎間板挿入治具10とする。上下の保持部分1a,2aで人工椎間板3を保持した挿入治具10を椎間に背後から挿入し、上治具1を抜き取り、更に下治具2を抜き取って人工椎間板3を上下の椎体で挟持させることにより、人工椎間板3を簡単かつ確実に挿入できる。治具セットは、挿入治具10と、これが挿通、誘導されるガイド孔を備えた挿入ガイド治具とのセットとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元織物からなる繊維構造体をコア材とする構造をもつ自立型(stand−alone)の生体模倣性(biomimetic)の人工椎間板を上下の椎体の間に脊椎の後方から簡便且つ確実な位置に挿入固定することを目的とする人工椎間板挿入治具に関し、さらに、この人工椎間板挿入治具と挿入ガイド治具との治具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の人工椎間板が開発されている。その一つに、チタン合金などの上下の金属製プレートの間に、ボールベアリングの機能を目的とする超高分子量ポリエチレンの球体を設けて椎間板としての可動性をもたせたサンドイッチ構造の人工椎間板がある。この人工椎間板は上下の椎体の動きを許容するものであるが、その動的挙動は本来の椎間板と大きく異なるものであり、しかも、この種のものは全置換型であるために前方から挿入する必要があり、後方からの挿入は無理である。そして、プライヤーに似た特殊な治具で人工椎間板を掴んで、脊椎の前方(腹側)から椎間に挿入するため、手術が大がかりになるために医師が容易に手術を行えず、現在の傾向である低侵襲の手術手技と相反するという大きな問題がある。
【0003】
また、別の椎間板損傷に対する治療として、上下の椎体(骨)を融合固定化するためにケージを用いる融合ケージ(fusion cage)法が種々の材料[同種骨(allograft bone)、ステンレス、チタン、カーボン製など]によって実用化されている。例えば、開口部を形成した略直方体形状の中空の融合ケージであって、その後壁部に棒状の位置決めツール(挿入治具)の先端をねじ込むネジ孔を設けたものが提案されている(特許文献1)。この融合ケージは、その後壁部のネジ孔に棒状のツールの先端をねじ込んで脊椎の後方から上下の椎体の間に挿入するため、前述の腹側から椎体の間に挿入するサンドイッチ構造の人工椎間板に比べると手術は簡単である。けれども、この特許文献1の融合ケージは変形し難いものであり、挿入後に上下の椎体を固定用プレート等で動かないように固定することを目的とした手術法であるため、その意味で本来の椎間板の治療法ではない。
【0004】
そこで、本出願人は、有機繊維を3軸以上の多軸三次元織組織もしくは編組織又はこれらの複合組織とした三次元繊維構造体をコア材とし、その両面にバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなるプレートを積層一体化したstand−alone型の、人工椎間板などとして使用される人工軟骨用生体材料を提案した(特願2003−385022)。この生体材料からなる人工椎間板は、上記の繊維構造体よりなるコア材が正常な生体の椎間板と同程度の機械的柔軟性(可動性)を備え、その変形特性が極めてバイオミメティックである上に、積層されたプレートが上下の椎体と直接結合し、経時的に骨組織と置換して繊維構造体表面と上下の椎体を固定するため、生体の椎間板の機能を十分に代替し得るものである。
【0005】
けれども、三次元繊維構造体をコア材とする上記の人工椎間板は、特許文献1の融合ケージと同様にネジ孔を設けて棒状の挿入治具の先端をねじ込み、椎間に挿入することはできない。一方、上記の人工椎間板を前述したプライヤーに似た治具と同様の治具で掴んで挿入する場合は、外科手術医が低侵襲の手術手技を最も好ましいと評価する脊椎の後方から人工椎間板を椎間に挿入することが困難で、腹側から挿入せざるをえないため、手術が大がかりとなる。それゆえ、三次元繊維構造体をコア材とする人工椎間板を脊椎の後方から簡単かつ確実に椎間に挿入するのに適した治具を早急に開発する必要があった。
【特許文献1】特開2004−195232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、繊維構造体をコア材とした柔軟な理想に近い特性を備えた人工椎間板を脊椎の後方から椎間に簡単かつ確実に挿入できる操作性及び取扱い性に優れた人工椎間板挿入治具を提供することを解決課題としている。そのために、この人工椎間板挿入治具と挿入ガイド治具との治具セットを提供することも解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る人工椎間板挿入治具は、一組の上治具と下治具が上下方向に分離しないように且つ前後方向にスライドできるように嵌着され、上治具と下治具の前部に、人工椎間板を保持する上保持部分と下保持部分が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の人工椎間板挿入治具においては、上治具と下治具のいずれか一方に、先端が拡張した断面形状を有する凸条が形成されると共に、他方に、上記凸条に対応する奥端が拡張した断面形状を有する凹溝が形成され、これらの凸条と凹溝が嵌合されることによって上治具と下治具が上下方向に分離しないように且つ前後方向にスライドできるように嵌着されていることが望ましい。そして、上治具の上保持部分と下治具の下保持部分に、人工椎間板の上下両面から突き出したピンの端部を収容する溝が形成されていることが望ましく、また、上治具の上保持部分の先端と下治具の下保持部分の先端が半円形もしくは半楕円形に形成されていることも望ましい。更に、上治具と下治具が超高分子量ポリエチレンからなることが望ましく、また、上治具と下治具が同一の曲率半径を備えた円弧状に湾曲する治具であって、その前後方向である円弧方向にスライドできるように嵌着されていることが望ましい。そして、上治具と下治具のいずれか一方に、上治具が下治具と重なり合った位置から前方へスライドするのを阻止するストッパーが形成されていることが望ましく、更に、この上治具の後端にシャフトを介して握り部が設けられていることも望ましい。また、椎間に挿入した上治具と下治具のいずれか一方を抜き取ってから他方を抜き取ると、上保持部分と下保持部分で保持された人工椎間板が椎間に静置されるようにすることも望ましい。
【0009】
一方、本発明の治具セットは、上記の人工椎間板挿入治具と、この挿入治具をガイド孔に挿通することにより上保持部分と下保持部分で保持された人工椎間板を椎間の所定位置まで到達するようにガイドする挿入ガイド治具とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の人工椎間板挿入治具は、まず上治具の上保持部分と下治具の下保持部分で人工椎間板を保持して上下の椎体の間に脊椎の後方から挿入され、次いで下治具を固定したまま上治具を後方にスライドさせて抜き取り、人工椎間板の上面と上側の椎体を軽く圧接させた状態で、更に下治具を抜き取って人工椎間板を上下の椎体で挟持させることにより、人工椎間板を上下の椎体の間に簡単かつ確実に挿入することができる。従って、この人工椎間板挿入治具は、操作性や取扱い性に優れている。特に、上治具と下治具が同一の曲率半径を備えた円弧状に湾曲する治具であって、その前後方向である円弧方向にスライドできるように嵌着されている人工椎間板挿入治具は、切除した椎弓及び椎間関節の隙間を通して該治具を脊椎の後方から椎間へ円弧方向に挿入して人工椎間板を適正な位置及び方向に挿入できるため、操作性や取扱い性が極めて良好である。
【0011】
そして、上治具と下治具のいずれか一方に、先端が拡張した断面形状を有する凸条を形成し、他方に、該凸条に対応する奥端が拡張した断面形状を有する凹溝を形成して、これらの凸条と凹溝を嵌合した人工椎間板挿入治具は、凸条と凹溝が上下方向に係合して上治具と下治具の上下方向の分離を阻止しながら凸条が凹溝内を滑らかに摺動するので、下治具を固定したまま上治具をスムーズにスライドさせて容易に抜き取ることができる。特に、上治具と下治具が超高分子量ポリエチレンからなる人工椎間板挿入治具は、摩擦係数が小さくて生体液中での滑性が高いため、該挿入治具を椎間に背後から挿入する操作、上治具をスライドさせて抜き取る操作、人工椎間板を残して下治具を抜き取る操作が一層し易くなり、しかも、超高分子量ポリエチレンは為害性がなく安全であり、硬度や強度が大きいため破損も生じ難い。
【0012】
また、上治具の上保持部分と下治具の下保持部分に、人工椎間板の上下両面から突き出したピンの端部を収容する溝が形成されている人工椎間板挿入治具は、上下両面からピンの端部が突き出した人工椎間板であっても、そのピンの端部を上記の溝に収容した状態で人工椎間板を上保持部分と下保持部分で保持して上下の椎体の間に挿入することができ、挿入の際にピンの端部が上下の椎体に引っ掛からないので人工椎間板の挿入が妨げられる心配もない。そして、上治具を抜き取ると、人工椎間板の上面から突き出したピンの端部が上側の椎体に突き刺さって人工椎間板が固定されるため、下治具を抜き取る際に人工椎間板の位置ずれが生じず、下治具を抜き取った後は、人工椎間板の下面から突き出したピンの端部も下側の椎体に突き刺さるので、人工椎間板が確実に自立固定される。
【0013】
更に、上治具の上保持部分の先端と下治具の下保持部分の先端が半円形もしくは半楕円形に形成されている人工椎間板挿入治具は、上下の椎体の間に挿入するときの抵抗が少なく、上下の保持部分の先端が椎体に当たっても角がないので、椎体を傷付けたり挿入を妨げたりする心配がない。
【0014】
また、上治具と下治具のいずれか一方に、上治具が下治具と重なり合った位置から前方へスライドするのを阻止するストッパーが形成されている人工椎間板挿入治具は、上治具に力を加えて押し込むことにより、上治具と下治具を互いに重なり合った位置関係に保ったまま上下の椎体の間に挿入できるので、挿入の途中で上治具と下治具が前後に位置ずれして上保持部分と下保持部分による人工椎間板の保持が不完全になるのを防止することができる。
【0015】
そして、上記のストッパーが上治具と下治具のいずれか一方に形成された人工椎間板挿入治具の該上治具の後端にシャフトを介して握り部を設けたものは、この握り部を握って人工椎間板の挿入操作、上治具の抜き取り操作ができるので、操作性、取扱い性がより一層向上することになる。
【0016】
また、本発明の治具セットは、挿入ガイド治具を椎間の背後に設置して後方から人工椎間板挿入治具を挿入ガイド治具のガイド孔に挿通することにより、挿入治具の上保持部分と下保持部分で保持された人工椎間板を椎間の所定位置まで正確に案内して挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る人工椎間板挿入治具の斜視図、図2は同挿入治具の平面図、図3は同挿入治具の上治具をスライドさせた状態を示す平面図、図4の(a)は図2のA−A線断面図、図4の(b)は図2のB−B線断面図、図5の(a)は同挿入治具の上治具の底面図、図5の(b)は同挿入治具の下治具の平面図、図6は同挿入治具の後端部の分解部分側面図、図7は人工椎間板の一例を示す斜視図、図8は人工椎間板を保持した同挿入治具の斜視図、図9は図8のC−C線断面図である。
【0019】
図1〜図6に示す人工椎間板挿入治具10は、同一の曲率半径を備えた円弧状に湾曲する一組の上治具1と下治具2からなるものであって、この上治具1と下治具2の前部には、図7に示す円弧状の人工椎間板3を保持する舌片状の上保持部分1aと下保持部分2aが形成されている。
【0020】
上治具1の後部(上保持部分1aより後側の厚肉部分)の下面には、図4の(a)、図5の(a)に示すように、逆T字形の断面形状を有する凸条1bが上治具1の中心線(不図示)に沿って湾曲して形成されており、これに対応して、下治具2の後部(下保持部分2aより後側の厚肉部分)の上面には、図4の(a)、図5の(b)に示すように、逆T字形の断面形状を有する凹溝2bが下治具2の中心線に沿って湾曲して形成されている。そして、図4の(a)に示すように上記の凸条1bと凹溝2bが嵌合され、これによって上治具1と下治具2が上下方向に分離しないように、且つ、図3に示すように円弧方向(前後方向)にスライドできるように嵌着されている。
【0021】
凸条1bと凹溝2bの断面形状は上記の逆T字形に限定されるものではなく、上下方向に係合して分離しない断面形状、つまり、凸条は先端が拡張した断面形状を有し、これに対応して凹溝は奥端が拡張した断面形状を有していればよい。また、この実施形態では、上治具1の下面に凸条1bを形成し、下治具2の上面に凹溝2bを形成しているが、これとは逆に、上治具1の下面に凹溝2bを形成し、下治具2の上面に凸条1bを形成してもよい。更に、この実施形態では、凸条1bを円弧状に連続して形成しているが、不連続に形成してもよい。
【0022】
図1、図4の(b)、図5の(a)(b)に示すように、上保持部分1aの両側端には、下方に突き出す直角三角形の断面形状を備えた凸縁1c,1cが形成されており、同様に、下保持部分2aの両側端には、上方に突き出す直角三角形の断面形状を備えた凸縁2c,2cが形成されている。そして、この上保持部分1aと下保持部分2aには、人工椎間板3の上下両面から突き出したピンの端部3d(図7参照)を収容する切込み溝1d,2dが、上下保持部分1a,2aの先端からそれぞれの中心線に沿って湾曲して形成されている。従って、図9に示すように人工椎間板3を上保持部分1aと下保持部分2aの間に挟み込むと、人工椎間板3は凸縁1c,1c,2c,2cによって左右の位置ずれが防止されると共に、人工椎間板3の上下両面から突き出したピンの端部3dが切込み溝1d,2dに収容されて上下保持部分1a,2aから突き出さない状態で保持されることになる。尚、ピンの端部3dを収容する溝は、この実施形態のような切込み溝1d,2dに限らず、上保持部分1aの下面と下保持部分2aの上面に形成される凹溝であってもよい。
【0023】
また、上保持部分1aと下保持部分2aの先端は、角のない半円形に形成されており、この人工椎間板挿入治具10を椎間に挿入する際の抵抗を減少させると共に、上下の保持部分1a,2aの先端が椎体に当たっても、椎体を傷付けたり挿入が妨げられたりすることがないように配慮されている。この先端の形状は半円形に限定されるものではなく、半楕円形などの角がない丸みをもった形状であればよい。
【0024】
図1、図6に示すように、上治具1と下治具2の後端には天板1eと底板2eが延設されており、これらの天板1eと底板2eには、引掛け棒の先端を挿入する孔1g,2gが形成されている。そして、上治具1の厚肉の後部にも、引掛け棒の先端を挿入する孔1gが一定の間隔をあけて複数形成されており、これに対応して、下治具2の厚肉の後部にも引掛け棒の先端を挿入する孔2gが複数形成されている。従って、これらの孔1g,2gに引掛け棒の先端を挿入して上治具1や下治具2を簡単に抜き取ることができるようになっている。
【0025】
また、上治具1の後端には、図1、図6に示すように板状のストッパー1fが下向きに突設されている。このストッパー1fは、図1、図2に示すように上治具1と下治具2が重なり合った位置にあるとき、下治具2の後端面2f(図6を参照)に当接し、上治具1がこれより前方へスライドするのを阻止するものである。このようなストッパー1fが形成されていると、上治具1を押し込むだけで、上治具1と下治具2を重なり合った位置関係に保ったまま上下の椎体の間に挿入できるため、挿入の途中で上治具1と下治具2が前後に位置ずれして上下の保持部分1a,2aによる人工椎間板3の保持が不完全になるのを防止することができる。そして、下治具2を引けば、上治具1も下治具2と一緒に引き出されるので、人工椎間板3の挿入位置の調節作業もしやすくなる。
【0026】
上記のストッパー1fは、この実施形態では上治具1の後端に形成されているが、これとは逆に、下治具2の中央部(下保持部分2aの付根部分)から上向きに形成し、上下の治具1,2が重なり合った位置にあるときに該ストッパーが上治具1の中央部の端面に当接するようにしてもよい。
【0027】
図1、図8に示すように、上治具1には複数本の切込み線1hが形成されており、同様に、下治具2にも複数本の切込み線2hが形成されている。これらの切込み線1h,2hは、上治具1と下治具2に1〜5mm間隔を開けて形成されており、この人工椎間板挿入治具10を椎間に挿入する際、及び抜き取る際に、何mm椎間に入ったのか、何mm椎間から引き抜いたのか、が分かるように配慮されている。尚、この実施形態では、上保持部分1a及び下保持部分2aの切込み線1h,2hの間隔を、上治具1及び下治具2の本体部分の切込み線1h,2hの間隔の2倍にしているが、同じ間隔にしても勿論よい。
【0028】
挿入治具10の材質は、為害性がなく強度が大きいものであれば金属でも合成樹脂でもよいが、その中でも超高分子量ポリエチレンが特に好ましく使用される。かかる超高分子量ポリエチレン製の挿入治具は、為害性がなく安全であり、硬度や強度が大きいため破損し難いことに加えて、摩擦係数が小さく生体液中での滑性が高いため、挿入治具10を椎間に背後から挿入する操作、上治具1をスライドさせて抜き取る操作、人工椎間板3を残して下治具2を抜き取る操作が一層し易くなる利点がある。
【0029】
上記の挿入治具10によって上下の椎体の間に挿入される人工椎間板3は、生体不活性な有機繊維(例えば超高分子量ポリエチレンの芯繊維を直鎖状低密度ポリエチレンの被膜で被覆した被覆繊維など)を三次元織組織もしくは編み組織又はこれらの複合組織とした組織構造体よりなるコア材3aの上下両面に、生体活性なバイオセラミックス粉体(例えば未焼成ハイドロキシアパタイトなど)を25〜60質量%含んだ生体内分解吸収性ポリマー(例えばポリ乳酸など)よりなるプレート3b,3bを積層し、同様の生体内分解吸収性ポリマーからなる複数本の固定用のピン3cを上下に貫通させて、その尖ったピンの端部3dを上下両面から突出させた、円弧形状の人工椎間板であり、図13に示すように、右曲がり及び左曲がりの一対の人工椎間板3,3が椎間に左右対称に二つ挿入され、生体の椎間板に似たバイオミメティックな変形をするものである。この人工椎間板3の具体的な大きさは、曲率半径(中心線の曲率半径)が15〜40mm程度、長さ(中心線の長さ)が15〜35mm程度、幅が7〜15mm程度、高さが7〜14mm程度である。
【0030】
本発明の人工椎間板挿入治具10は、上記の人工椎間板3を保持して椎間に挿入できる大きさに設定されており、具体的には、上下の治具1,2の曲率半径(中心線の曲率半径)が15〜40mm程度、上下の治具1,2の幅が7〜12mm程度、上下の保持片1a,2aの長さ(中心線の長さ)が15〜35mm程度、上下の治具1,2の全長(中心線の全長)が50〜70mm程度、上下の治具1,2の合計高さが8〜16mm程度である。尚、この諸寸法はあくまでも例示であり、人工椎間板3の寸法や形状に応じて適宜変更されることは言うまでもない。
【0031】
次に、図8〜図13を参照して、上記の人工椎間板挿入治具10の使用方法を説明する。
【0032】
まず、図8,図9に示すように、人工椎間板3を上保持部分1aと下保持部分2aの間に挟み込み、人工椎間板3の上下両面から突き出すピン3cの端部3dを切込み溝1d,2dに収容した状態で人工椎間板3を保持させる。この作業は、図3に示すように上治具1を後方にスライドさせて人工椎間板3を下保持部分2aの上に載置し、ストッパー1fが作動するまで上治具1を前方へスライドさせて上治具1と下治具2を重ね合わせることにより、簡単に行うことができる。
【0033】
人工椎間板3の保持が完了すると、図10に示すように、挿入治具10を上下の椎体20,20の間に脊椎の後方から挿入し、人工椎間板3の挿入位置が適正となるように位置合わせを行う。この挿入作業は、例えば上治具1の後端のストッパー1fをハンマーなどで軽くたたきながら押し込むことによって、上治具1と下治具2を重なり合った位置関係に保ったまま簡単に行うことができる。そして、人工椎間板3の位置合わせは、例えば下治具2後端の底板2eに形成された孔2gに引掛け棒の先端を引っ掛けて、上治具1と下治具2を重なり合った位置関係に保ったまま少し引き出したり、上記のように上治具1を少し押し込んだりする作業を繰り返すことによって行えばよい。なお、可能であれば挿入治具10を手で押し込んだり引き出したりしてもよい。
【0034】
挿入治具10の挿入作業が完了すると、上治具1後端の天板1eに形成された孔1gに引掛け棒の先端を引っ掛け、下治具2を固定したまま、図11に示すように上治具を抜き取る。このように上治具1を抜き取ると、上側の椎体20が人工椎間板3の上面のプレートに軽く圧接し、ピンの上端部3dが椎体20の下面に突き刺さって、人工椎間板3が固定される。
【0035】
上治具1の抜き取りが完了すると、つづいて下治具2の孔2gに引掛け棒の先端を引っ掛けて、図12に示すように下治具を抜き取る。このとき、人工椎間板3はピンの上端部3dによって上側の椎体20に固定されているため、下治具1と一緒に抜き取られることはない。このように下治具1を抜き取ると、人工椎間板3は上下の椎体20,20によって挟持され、ピンの下端部3dも下側の椎体20に突き刺さるので、人工椎間板3は完全に自立固定される。尚、ピンのない人工椎間板の場合でも、下治具1を抜き取る際には、人工椎間板が上側の椎体20と圧接しているため、下治具と一緒に人工椎間板が引き出されることはないが、人工椎間板の位置ずれを確実に防止するために、押さえ棒などで人工椎間板を背後から押さえて下治具1を抜き取ることが望ましい。
【0036】
上記のようにして片方の人工椎間板3の挿入が完了すると、上記挿入治具10と同じ構造で反対側に湾曲した挿入治具を使用し、上記と同じ操作を繰り返すことによって、図13に示すように、もう一方の人工椎間板3を片方の人工椎間板3と左右対称の位置に挿入する。なお、片方の人工椎間板3の挿入に用いた上記の挿入治具10にもう一方の人工椎間板3を保持させ、該挿入治具10を上下反転させて椎間に背後から挿入し、下側になった上治具1を抜き取った後、上側になった下治具2を抜き取ることによって、図13に示すように、もう一方の人工椎間板3を片方の人工椎間板3と左右対称の位置に挿入してもよい。
【0037】
また、場合によっては、図14に示すように、勾玉状の人工椎間板30(人工椎間板3と同じ構造のもの)を左右の人工椎間板3,3の間に挿入してもよい。この勾玉状の人工椎間板30の挿入は、上記挿入治具10の上保持部分1aと下保持部分2aを勾玉状の人工椎間板30の保持に適する形状とした挿入治具を用いて、上記と同じ要領で簡単かつ確実に行えることは言うまでもない。
【0038】
以上のように、本発明の人工椎間板挿入治具10は、操作性及び取扱い性に優れ、繊維構造体をコア材とした柔軟な人工椎間板3を上下の椎体20,20の間に簡単かつ確実に挿入できるものである。
【0039】
図18は本発明に係る人工椎間板挿入治具の他の実施形態を示す斜視図、図19の(a)は同挿入治具の上治具の底面図、図19の(b)は同挿入治具の下治具の平面図である。
【0040】
この人工椎間板挿入治具10は、上治具1及び下治具2が全体に亘って一定の曲率で湾曲してなく、上治具1の後端近傍部分及び下治具2の後端近傍部分が直線状に延びており、円弧状部分と直線状部分が組み合わさった形状となっている。但し、上治具1と下治具2の相互のスライドが可能となるように、図19の(a)(b)に示すごとく、上治具1の下面の凸条1bと、下治具2下面の凹溝2bは、全体に一定の曲率で湾曲して形成されている。その他の構成は、前述した実施形態の挿入治具10と同様であるので、図18、図19において同一部材に同一符号を付し、説明を省略する。このように上治具1と下治具2の後端近傍部分が直線状に延びていると、これらの上治具1及び下治具2を椎間から順次抜き取るときに、上治具1及び下治具2の後端が椎体(骨)や近くの生体組織に当たりにくくなる利点がある。
【0041】
図15は、本発明に係る人工椎間板挿入治具の更に他の実施形態を示す斜視図である。
【0042】
この人工椎間板挿入治具は、前述した人工椎間板挿入治具10の上治具1の後端のストッパー1fにネジ孔を形成し、該ネジ孔にシャフト4の先端の雄ネジ部を螺込んでシャフト4を取付けると共に、このシャフト4を介して握り部5を設けたものである。挿入治具10の構成は前述した通りであるので、図15において同一部材に同一符号を付し、説明を省略する。
【0043】
上記のような人工椎間板挿入治具は、握り部5を握って椎間への挿入操作、上治具1の抜き取り操作ができるので、操作性、取扱い性がより一層向上する利点がある。
【0044】
図16は、本発明の治具セットの一実施形態を示す平面図である。
【0045】
この治具セットは、左側に湾曲する人工椎間板挿入治具10と、右側に湾曲する人工椎間板挿入治具10と、挿入ガイド治具6とからなるものであって、人工椎間板挿入治具10,10は、曲率半径が少し大きくなった点を除いて前述した人工椎間板挿入治具10と同じ構成となっている。一方、挿入ガイド治具6は、挿入治具10,10と同じ超高分子量ポリエチレンの直方体ブロックからなるもので、挿入治具10,10を挿通する一対のガイド孔6a,6aが形成されている。各ガイド孔6aの方向は、図17に示すように、この挿入ガイド治具6を椎間の背後に設置して各挿入治具10を後方からガイド孔6aに挿通したとき、挿入治具10がガイド孔6aに案内されて、挿入治具10前端の上下保持部分に保持された人工椎間板3が椎間の所定の適正な位置まで正確に到達するように、挿入治具10の曲率半径を考慮して、方向が決定されている。
【0046】
このような本発明の治具セットを用いると、図17に示すように、挿入ガイド治具6を椎間の背後に設置して後方から挿入治具10をガイド孔6aに挿通するだけで、挿入治具10前端の上下保持部分に保持された人工椎間板3を椎間の所定位置まで正確に案内することができるので、人工椎間板3の位置決め作業が不要となり、操作性や取扱い性が大幅に向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係る人工椎間板挿入治具の斜視図である。
【図2】同挿入治具の平面図である。
【図3】同挿入治具の上治具をスライドさせた状態を示す平面図である。
【図4】(a)は図2のA−A線断面図であり、(b)は図2のB−B線断面図である。
【図5】(a)は同挿入治具の上治具の底面図であり、(b)は同挿入治具の下治具の平面図である。
【図6】同挿入治具の後端部の分解部分側面図である。
【図7】人工椎間板の一例を示す斜視図である。
【図8】人工椎間板を保持した同挿入治具の斜視図である。
【図9】図8のC−C線断面図である。
【図10】同挿入治具の使用方法の説明図であって、人工椎間板を保持した同挿入治具を上下の椎体の間に挿入したところを示すものである。
【図11】同挿入治具の使用方法の説明図であって、人工椎間板を保持した同挿入治具の上治具を抜き取ったところを示すものである。
【図12】同挿入治具の使用方法の説明図であって、下治具を抜き取って人工椎間板を上下の椎体で挟持させたところを示すものである。
【図13】左右一対の人工椎間板の挿入位置を示す平面図である。
【図14】左右一対の人工椎間板と中間の人工椎間板の挿入位置を示す平面図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係る人工椎間板挿入治具の斜視図である。
【図16】本発明の治具セットを示す平面図である。
【図17】同治具セットの使用方法の説明図である。
【図18】本発明に係る人工椎間板挿入治具の他の実施形態を示す斜視図である。
【図19】(a)は同挿入治具の上治具の底面図、図19の(b)は同挿入治具の下治具の平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 上治具
1a 上保持片
1b 凸条
1d ピンの端部を収容する溝
1f ストッパー
2 下治具
2a 下保持片
2b 凹溝
2d ピンの端部を収容する溝
3,30 人工椎間板
3a 繊維構造体のコア材
3c ピン
3d ピンの端部
4 シャフト
5 握り部
6 挿入ガイド治具
6a ガイド孔
10 人工椎間板挿入治具
20 椎体
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元織物からなる繊維構造体をコア材とする構造をもつ自立型(stand−alone)の生体模倣性(biomimetic)の人工椎間板を上下の椎体の間に脊椎の後方から簡便且つ確実な位置に挿入固定することを目的とする人工椎間板挿入治具に関し、さらに、この人工椎間板挿入治具と挿入ガイド治具との治具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の人工椎間板が開発されている。その一つに、チタン合金などの上下の金属製プレートの間に、ボールベアリングの機能を目的とする超高分子量ポリエチレンの球体を設けて椎間板としての可動性をもたせたサンドイッチ構造の人工椎間板がある。この人工椎間板は上下の椎体の動きを許容するものであるが、その動的挙動は本来の椎間板と大きく異なるものであり、しかも、この種のものは全置換型であるために前方から挿入する必要があり、後方からの挿入は無理である。そして、プライヤーに似た特殊な治具で人工椎間板を掴んで、脊椎の前方(腹側)から椎間に挿入するため、手術が大がかりになるために医師が容易に手術を行えず、現在の傾向である低侵襲の手術手技と相反するという大きな問題がある。
【0003】
また、別の椎間板損傷に対する治療として、上下の椎体(骨)を融合固定化するためにケージを用いる融合ケージ(fusion cage)法が種々の材料[同種骨(allograft bone)、ステンレス、チタン、カーボン製など]によって実用化されている。例えば、開口部を形成した略直方体形状の中空の融合ケージであって、その後壁部に棒状の位置決めツール(挿入治具)の先端をねじ込むネジ孔を設けたものが提案されている(特許文献1)。この融合ケージは、その後壁部のネジ孔に棒状のツールの先端をねじ込んで脊椎の後方から上下の椎体の間に挿入するため、前述の腹側から椎体の間に挿入するサンドイッチ構造の人工椎間板に比べると手術は簡単である。けれども、この特許文献1の融合ケージは変形し難いものであり、挿入後に上下の椎体を固定用プレート等で動かないように固定することを目的とした手術法であるため、その意味で本来の椎間板の治療法ではない。
【0004】
そこで、本出願人は、有機繊維を3軸以上の多軸三次元織組織もしくは編組織又はこれらの複合組織とした三次元繊維構造体をコア材とし、その両面にバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなるプレートを積層一体化したstand−alone型の、人工椎間板などとして使用される人工軟骨用生体材料を提案した(特願2003−385022)。この生体材料からなる人工椎間板は、上記の繊維構造体よりなるコア材が正常な生体の椎間板と同程度の機械的柔軟性(可動性)を備え、その変形特性が極めてバイオミメティックである上に、積層されたプレートが上下の椎体と直接結合し、経時的に骨組織と置換して繊維構造体表面と上下の椎体を固定するため、生体の椎間板の機能を十分に代替し得るものである。
【0005】
けれども、三次元繊維構造体をコア材とする上記の人工椎間板は、特許文献1の融合ケージと同様にネジ孔を設けて棒状の挿入治具の先端をねじ込み、椎間に挿入することはできない。一方、上記の人工椎間板を前述したプライヤーに似た治具と同様の治具で掴んで挿入する場合は、外科手術医が低侵襲の手術手技を最も好ましいと評価する脊椎の後方から人工椎間板を椎間に挿入することが困難で、腹側から挿入せざるをえないため、手術が大がかりとなる。それゆえ、三次元繊維構造体をコア材とする人工椎間板を脊椎の後方から簡単かつ確実に椎間に挿入するのに適した治具を早急に開発する必要があった。
【特許文献1】特開2004−195232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、繊維構造体をコア材とした柔軟な理想に近い特性を備えた人工椎間板を脊椎の後方から椎間に簡単かつ確実に挿入できる操作性及び取扱い性に優れた人工椎間板挿入治具を提供することを解決課題としている。そのために、この人工椎間板挿入治具と挿入ガイド治具との治具セットを提供することも解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る人工椎間板挿入治具は、一組の上治具と下治具が上下方向に分離しないように且つ前後方向にスライドできるように嵌着され、上治具と下治具の前部に、人工椎間板を保持する上保持部分と下保持部分が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の人工椎間板挿入治具においては、上治具と下治具のいずれか一方に、先端が拡張した断面形状を有する凸条が形成されると共に、他方に、上記凸条に対応する奥端が拡張した断面形状を有する凹溝が形成され、これらの凸条と凹溝が嵌合されることによって上治具と下治具が上下方向に分離しないように且つ前後方向にスライドできるように嵌着されていることが望ましい。そして、上治具の上保持部分と下治具の下保持部分に、人工椎間板の上下両面から突き出したピンの端部を収容する溝が形成されていることが望ましく、また、上治具の上保持部分の先端と下治具の下保持部分の先端が半円形もしくは半楕円形に形成されていることも望ましい。更に、上治具と下治具が超高分子量ポリエチレンからなることが望ましく、また、上治具と下治具が同一の曲率半径を備えた円弧状に湾曲する治具であって、その前後方向である円弧方向にスライドできるように嵌着されていることが望ましい。そして、上治具と下治具のいずれか一方に、上治具が下治具と重なり合った位置から前方へスライドするのを阻止するストッパーが形成されていることが望ましく、更に、この上治具の後端にシャフトを介して握り部が設けられていることも望ましい。また、椎間に挿入した上治具と下治具のいずれか一方を抜き取ってから他方を抜き取ると、上保持部分と下保持部分で保持された人工椎間板が椎間に静置されるようにすることも望ましい。
【0009】
一方、本発明の治具セットは、上記の人工椎間板挿入治具と、この挿入治具をガイド孔に挿通することにより上保持部分と下保持部分で保持された人工椎間板を椎間の所定位置まで到達するようにガイドする挿入ガイド治具とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の人工椎間板挿入治具は、まず上治具の上保持部分と下治具の下保持部分で人工椎間板を保持して上下の椎体の間に脊椎の後方から挿入され、次いで下治具を固定したまま上治具を後方にスライドさせて抜き取り、人工椎間板の上面と上側の椎体を軽く圧接させた状態で、更に下治具を抜き取って人工椎間板を上下の椎体で挟持させることにより、人工椎間板を上下の椎体の間に簡単かつ確実に挿入することができる。従って、この人工椎間板挿入治具は、操作性や取扱い性に優れている。特に、上治具と下治具が同一の曲率半径を備えた円弧状に湾曲する治具であって、その前後方向である円弧方向にスライドできるように嵌着されている人工椎間板挿入治具は、切除した椎弓及び椎間関節の隙間を通して該治具を脊椎の後方から椎間へ円弧方向に挿入して人工椎間板を適正な位置及び方向に挿入できるため、操作性や取扱い性が極めて良好である。
【0011】
そして、上治具と下治具のいずれか一方に、先端が拡張した断面形状を有する凸条を形成し、他方に、該凸条に対応する奥端が拡張した断面形状を有する凹溝を形成して、これらの凸条と凹溝を嵌合した人工椎間板挿入治具は、凸条と凹溝が上下方向に係合して上治具と下治具の上下方向の分離を阻止しながら凸条が凹溝内を滑らかに摺動するので、下治具を固定したまま上治具をスムーズにスライドさせて容易に抜き取ることができる。特に、上治具と下治具が超高分子量ポリエチレンからなる人工椎間板挿入治具は、摩擦係数が小さくて生体液中での滑性が高いため、該挿入治具を椎間に背後から挿入する操作、上治具をスライドさせて抜き取る操作、人工椎間板を残して下治具を抜き取る操作が一層し易くなり、しかも、超高分子量ポリエチレンは為害性がなく安全であり、硬度や強度が大きいため破損も生じ難い。
【0012】
また、上治具の上保持部分と下治具の下保持部分に、人工椎間板の上下両面から突き出したピンの端部を収容する溝が形成されている人工椎間板挿入治具は、上下両面からピンの端部が突き出した人工椎間板であっても、そのピンの端部を上記の溝に収容した状態で人工椎間板を上保持部分と下保持部分で保持して上下の椎体の間に挿入することができ、挿入の際にピンの端部が上下の椎体に引っ掛からないので人工椎間板の挿入が妨げられる心配もない。そして、上治具を抜き取ると、人工椎間板の上面から突き出したピンの端部が上側の椎体に突き刺さって人工椎間板が固定されるため、下治具を抜き取る際に人工椎間板の位置ずれが生じず、下治具を抜き取った後は、人工椎間板の下面から突き出したピンの端部も下側の椎体に突き刺さるので、人工椎間板が確実に自立固定される。
【0013】
更に、上治具の上保持部分の先端と下治具の下保持部分の先端が半円形もしくは半楕円形に形成されている人工椎間板挿入治具は、上下の椎体の間に挿入するときの抵抗が少なく、上下の保持部分の先端が椎体に当たっても角がないので、椎体を傷付けたり挿入を妨げたりする心配がない。
【0014】
また、上治具と下治具のいずれか一方に、上治具が下治具と重なり合った位置から前方へスライドするのを阻止するストッパーが形成されている人工椎間板挿入治具は、上治具に力を加えて押し込むことにより、上治具と下治具を互いに重なり合った位置関係に保ったまま上下の椎体の間に挿入できるので、挿入の途中で上治具と下治具が前後に位置ずれして上保持部分と下保持部分による人工椎間板の保持が不完全になるのを防止することができる。
【0015】
そして、上記のストッパーが上治具と下治具のいずれか一方に形成された人工椎間板挿入治具の該上治具の後端にシャフトを介して握り部を設けたものは、この握り部を握って人工椎間板の挿入操作、上治具の抜き取り操作ができるので、操作性、取扱い性がより一層向上することになる。
【0016】
また、本発明の治具セットは、挿入ガイド治具を椎間の背後に設置して後方から人工椎間板挿入治具を挿入ガイド治具のガイド孔に挿通することにより、挿入治具の上保持部分と下保持部分で保持された人工椎間板を椎間の所定位置まで正確に案内して挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る人工椎間板挿入治具の斜視図、図2は同挿入治具の平面図、図3は同挿入治具の上治具をスライドさせた状態を示す平面図、図4の(a)は図2のA−A線断面図、図4の(b)は図2のB−B線断面図、図5の(a)は同挿入治具の上治具の底面図、図5の(b)は同挿入治具の下治具の平面図、図6は同挿入治具の後端部の分解部分側面図、図7は人工椎間板の一例を示す斜視図、図8は人工椎間板を保持した同挿入治具の斜視図、図9は図8のC−C線断面図である。
【0019】
図1〜図6に示す人工椎間板挿入治具10は、同一の曲率半径を備えた円弧状に湾曲する一組の上治具1と下治具2からなるものであって、この上治具1と下治具2の前部には、図7に示す円弧状の人工椎間板3を保持する舌片状の上保持部分1aと下保持部分2aが形成されている。
【0020】
上治具1の後部(上保持部分1aより後側の厚肉部分)の下面には、図4の(a)、図5の(a)に示すように、逆T字形の断面形状を有する凸条1bが上治具1の中心線(不図示)に沿って湾曲して形成されており、これに対応して、下治具2の後部(下保持部分2aより後側の厚肉部分)の上面には、図4の(a)、図5の(b)に示すように、逆T字形の断面形状を有する凹溝2bが下治具2の中心線に沿って湾曲して形成されている。そして、図4の(a)に示すように上記の凸条1bと凹溝2bが嵌合され、これによって上治具1と下治具2が上下方向に分離しないように、且つ、図3に示すように円弧方向(前後方向)にスライドできるように嵌着されている。
【0021】
凸条1bと凹溝2bの断面形状は上記の逆T字形に限定されるものではなく、上下方向に係合して分離しない断面形状、つまり、凸条は先端が拡張した断面形状を有し、これに対応して凹溝は奥端が拡張した断面形状を有していればよい。また、この実施形態では、上治具1の下面に凸条1bを形成し、下治具2の上面に凹溝2bを形成しているが、これとは逆に、上治具1の下面に凹溝2bを形成し、下治具2の上面に凸条1bを形成してもよい。更に、この実施形態では、凸条1bを円弧状に連続して形成しているが、不連続に形成してもよい。
【0022】
図1、図4の(b)、図5の(a)(b)に示すように、上保持部分1aの両側端には、下方に突き出す直角三角形の断面形状を備えた凸縁1c,1cが形成されており、同様に、下保持部分2aの両側端には、上方に突き出す直角三角形の断面形状を備えた凸縁2c,2cが形成されている。そして、この上保持部分1aと下保持部分2aには、人工椎間板3の上下両面から突き出したピンの端部3d(図7参照)を収容する切込み溝1d,2dが、上下保持部分1a,2aの先端からそれぞれの中心線に沿って湾曲して形成されている。従って、図9に示すように人工椎間板3を上保持部分1aと下保持部分2aの間に挟み込むと、人工椎間板3は凸縁1c,1c,2c,2cによって左右の位置ずれが防止されると共に、人工椎間板3の上下両面から突き出したピンの端部3dが切込み溝1d,2dに収容されて上下保持部分1a,2aから突き出さない状態で保持されることになる。尚、ピンの端部3dを収容する溝は、この実施形態のような切込み溝1d,2dに限らず、上保持部分1aの下面と下保持部分2aの上面に形成される凹溝であってもよい。
【0023】
また、上保持部分1aと下保持部分2aの先端は、角のない半円形に形成されており、この人工椎間板挿入治具10を椎間に挿入する際の抵抗を減少させると共に、上下の保持部分1a,2aの先端が椎体に当たっても、椎体を傷付けたり挿入が妨げられたりすることがないように配慮されている。この先端の形状は半円形に限定されるものではなく、半楕円形などの角がない丸みをもった形状であればよい。
【0024】
図1、図6に示すように、上治具1と下治具2の後端には天板1eと底板2eが延設されており、これらの天板1eと底板2eには、引掛け棒の先端を挿入する孔1g,2gが形成されている。そして、上治具1の厚肉の後部にも、引掛け棒の先端を挿入する孔1gが一定の間隔をあけて複数形成されており、これに対応して、下治具2の厚肉の後部にも引掛け棒の先端を挿入する孔2gが複数形成されている。従って、これらの孔1g,2gに引掛け棒の先端を挿入して上治具1や下治具2を簡単に抜き取ることができるようになっている。
【0025】
また、上治具1の後端には、図1、図6に示すように板状のストッパー1fが下向きに突設されている。このストッパー1fは、図1、図2に示すように上治具1と下治具2が重なり合った位置にあるとき、下治具2の後端面2f(図6を参照)に当接し、上治具1がこれより前方へスライドするのを阻止するものである。このようなストッパー1fが形成されていると、上治具1を押し込むだけで、上治具1と下治具2を重なり合った位置関係に保ったまま上下の椎体の間に挿入できるため、挿入の途中で上治具1と下治具2が前後に位置ずれして上下の保持部分1a,2aによる人工椎間板3の保持が不完全になるのを防止することができる。そして、下治具2を引けば、上治具1も下治具2と一緒に引き出されるので、人工椎間板3の挿入位置の調節作業もしやすくなる。
【0026】
上記のストッパー1fは、この実施形態では上治具1の後端に形成されているが、これとは逆に、下治具2の中央部(下保持部分2aの付根部分)から上向きに形成し、上下の治具1,2が重なり合った位置にあるときに該ストッパーが上治具1の中央部の端面に当接するようにしてもよい。
【0027】
図1、図8に示すように、上治具1には複数本の切込み線1hが形成されており、同様に、下治具2にも複数本の切込み線2hが形成されている。これらの切込み線1h,2hは、上治具1と下治具2に1〜5mm間隔を開けて形成されており、この人工椎間板挿入治具10を椎間に挿入する際、及び抜き取る際に、何mm椎間に入ったのか、何mm椎間から引き抜いたのか、が分かるように配慮されている。尚、この実施形態では、上保持部分1a及び下保持部分2aの切込み線1h,2hの間隔を、上治具1及び下治具2の本体部分の切込み線1h,2hの間隔の2倍にしているが、同じ間隔にしても勿論よい。
【0028】
挿入治具10の材質は、為害性がなく強度が大きいものであれば金属でも合成樹脂でもよいが、その中でも超高分子量ポリエチレンが特に好ましく使用される。かかる超高分子量ポリエチレン製の挿入治具は、為害性がなく安全であり、硬度や強度が大きいため破損し難いことに加えて、摩擦係数が小さく生体液中での滑性が高いため、挿入治具10を椎間に背後から挿入する操作、上治具1をスライドさせて抜き取る操作、人工椎間板3を残して下治具2を抜き取る操作が一層し易くなる利点がある。
【0029】
上記の挿入治具10によって上下の椎体の間に挿入される人工椎間板3は、生体不活性な有機繊維(例えば超高分子量ポリエチレンの芯繊維を直鎖状低密度ポリエチレンの被膜で被覆した被覆繊維など)を三次元織組織もしくは編み組織又はこれらの複合組織とした組織構造体よりなるコア材3aの上下両面に、生体活性なバイオセラミックス粉体(例えば未焼成ハイドロキシアパタイトなど)を25〜60質量%含んだ生体内分解吸収性ポリマー(例えばポリ乳酸など)よりなるプレート3b,3bを積層し、同様の生体内分解吸収性ポリマーからなる複数本の固定用のピン3cを上下に貫通させて、その尖ったピンの端部3dを上下両面から突出させた、円弧形状の人工椎間板であり、図13に示すように、右曲がり及び左曲がりの一対の人工椎間板3,3が椎間に左右対称に二つ挿入され、生体の椎間板に似たバイオミメティックな変形をするものである。この人工椎間板3の具体的な大きさは、曲率半径(中心線の曲率半径)が15〜40mm程度、長さ(中心線の長さ)が15〜35mm程度、幅が7〜15mm程度、高さが7〜14mm程度である。
【0030】
本発明の人工椎間板挿入治具10は、上記の人工椎間板3を保持して椎間に挿入できる大きさに設定されており、具体的には、上下の治具1,2の曲率半径(中心線の曲率半径)が15〜40mm程度、上下の治具1,2の幅が7〜12mm程度、上下の保持片1a,2aの長さ(中心線の長さ)が15〜35mm程度、上下の治具1,2の全長(中心線の全長)が50〜70mm程度、上下の治具1,2の合計高さが8〜16mm程度である。尚、この諸寸法はあくまでも例示であり、人工椎間板3の寸法や形状に応じて適宜変更されることは言うまでもない。
【0031】
次に、図8〜図13を参照して、上記の人工椎間板挿入治具10の使用方法を説明する。
【0032】
まず、図8,図9に示すように、人工椎間板3を上保持部分1aと下保持部分2aの間に挟み込み、人工椎間板3の上下両面から突き出すピン3cの端部3dを切込み溝1d,2dに収容した状態で人工椎間板3を保持させる。この作業は、図3に示すように上治具1を後方にスライドさせて人工椎間板3を下保持部分2aの上に載置し、ストッパー1fが作動するまで上治具1を前方へスライドさせて上治具1と下治具2を重ね合わせることにより、簡単に行うことができる。
【0033】
人工椎間板3の保持が完了すると、図10に示すように、挿入治具10を上下の椎体20,20の間に脊椎の後方から挿入し、人工椎間板3の挿入位置が適正となるように位置合わせを行う。この挿入作業は、例えば上治具1の後端のストッパー1fをハンマーなどで軽くたたきながら押し込むことによって、上治具1と下治具2を重なり合った位置関係に保ったまま簡単に行うことができる。そして、人工椎間板3の位置合わせは、例えば下治具2後端の底板2eに形成された孔2gに引掛け棒の先端を引っ掛けて、上治具1と下治具2を重なり合った位置関係に保ったまま少し引き出したり、上記のように上治具1を少し押し込んだりする作業を繰り返すことによって行えばよい。なお、可能であれば挿入治具10を手で押し込んだり引き出したりしてもよい。
【0034】
挿入治具10の挿入作業が完了すると、上治具1後端の天板1eに形成された孔1gに引掛け棒の先端を引っ掛け、下治具2を固定したまま、図11に示すように上治具を抜き取る。このように上治具1を抜き取ると、上側の椎体20が人工椎間板3の上面のプレートに軽く圧接し、ピンの上端部3dが椎体20の下面に突き刺さって、人工椎間板3が固定される。
【0035】
上治具1の抜き取りが完了すると、つづいて下治具2の孔2gに引掛け棒の先端を引っ掛けて、図12に示すように下治具を抜き取る。このとき、人工椎間板3はピンの上端部3dによって上側の椎体20に固定されているため、下治具1と一緒に抜き取られることはない。このように下治具1を抜き取ると、人工椎間板3は上下の椎体20,20によって挟持され、ピンの下端部3dも下側の椎体20に突き刺さるので、人工椎間板3は完全に自立固定される。尚、ピンのない人工椎間板の場合でも、下治具1を抜き取る際には、人工椎間板が上側の椎体20と圧接しているため、下治具と一緒に人工椎間板が引き出されることはないが、人工椎間板の位置ずれを確実に防止するために、押さえ棒などで人工椎間板を背後から押さえて下治具1を抜き取ることが望ましい。
【0036】
上記のようにして片方の人工椎間板3の挿入が完了すると、上記挿入治具10と同じ構造で反対側に湾曲した挿入治具を使用し、上記と同じ操作を繰り返すことによって、図13に示すように、もう一方の人工椎間板3を片方の人工椎間板3と左右対称の位置に挿入する。なお、片方の人工椎間板3の挿入に用いた上記の挿入治具10にもう一方の人工椎間板3を保持させ、該挿入治具10を上下反転させて椎間に背後から挿入し、下側になった上治具1を抜き取った後、上側になった下治具2を抜き取ることによって、図13に示すように、もう一方の人工椎間板3を片方の人工椎間板3と左右対称の位置に挿入してもよい。
【0037】
また、場合によっては、図14に示すように、勾玉状の人工椎間板30(人工椎間板3と同じ構造のもの)を左右の人工椎間板3,3の間に挿入してもよい。この勾玉状の人工椎間板30の挿入は、上記挿入治具10の上保持部分1aと下保持部分2aを勾玉状の人工椎間板30の保持に適する形状とした挿入治具を用いて、上記と同じ要領で簡単かつ確実に行えることは言うまでもない。
【0038】
以上のように、本発明の人工椎間板挿入治具10は、操作性及び取扱い性に優れ、繊維構造体をコア材とした柔軟な人工椎間板3を上下の椎体20,20の間に簡単かつ確実に挿入できるものである。
【0039】
図18は本発明に係る人工椎間板挿入治具の他の実施形態を示す斜視図、図19の(a)は同挿入治具の上治具の底面図、図19の(b)は同挿入治具の下治具の平面図である。
【0040】
この人工椎間板挿入治具10は、上治具1及び下治具2が全体に亘って一定の曲率で湾曲してなく、上治具1の後端近傍部分及び下治具2の後端近傍部分が直線状に延びており、円弧状部分と直線状部分が組み合わさった形状となっている。但し、上治具1と下治具2の相互のスライドが可能となるように、図19の(a)(b)に示すごとく、上治具1の下面の凸条1bと、下治具2下面の凹溝2bは、全体に一定の曲率で湾曲して形成されている。その他の構成は、前述した実施形態の挿入治具10と同様であるので、図18、図19において同一部材に同一符号を付し、説明を省略する。このように上治具1と下治具2の後端近傍部分が直線状に延びていると、これらの上治具1及び下治具2を椎間から順次抜き取るときに、上治具1及び下治具2の後端が椎体(骨)や近くの生体組織に当たりにくくなる利点がある。
【0041】
図15は、本発明に係る人工椎間板挿入治具の更に他の実施形態を示す斜視図である。
【0042】
この人工椎間板挿入治具は、前述した人工椎間板挿入治具10の上治具1の後端のストッパー1fにネジ孔を形成し、該ネジ孔にシャフト4の先端の雄ネジ部を螺込んでシャフト4を取付けると共に、このシャフト4を介して握り部5を設けたものである。挿入治具10の構成は前述した通りであるので、図15において同一部材に同一符号を付し、説明を省略する。
【0043】
上記のような人工椎間板挿入治具は、握り部5を握って椎間への挿入操作、上治具1の抜き取り操作ができるので、操作性、取扱い性がより一層向上する利点がある。
【0044】
図16は、本発明の治具セットの一実施形態を示す平面図である。
【0045】
この治具セットは、左側に湾曲する人工椎間板挿入治具10と、右側に湾曲する人工椎間板挿入治具10と、挿入ガイド治具6とからなるものであって、人工椎間板挿入治具10,10は、曲率半径が少し大きくなった点を除いて前述した人工椎間板挿入治具10と同じ構成となっている。一方、挿入ガイド治具6は、挿入治具10,10と同じ超高分子量ポリエチレンの直方体ブロックからなるもので、挿入治具10,10を挿通する一対のガイド孔6a,6aが形成されている。各ガイド孔6aの方向は、図17に示すように、この挿入ガイド治具6を椎間の背後に設置して各挿入治具10を後方からガイド孔6aに挿通したとき、挿入治具10がガイド孔6aに案内されて、挿入治具10前端の上下保持部分に保持された人工椎間板3が椎間の所定の適正な位置まで正確に到達するように、挿入治具10の曲率半径を考慮して、方向が決定されている。
【0046】
このような本発明の治具セットを用いると、図17に示すように、挿入ガイド治具6を椎間の背後に設置して後方から挿入治具10をガイド孔6aに挿通するだけで、挿入治具10前端の上下保持部分に保持された人工椎間板3を椎間の所定位置まで正確に案内することができるので、人工椎間板3の位置決め作業が不要となり、操作性や取扱い性が大幅に向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係る人工椎間板挿入治具の斜視図である。
【図2】同挿入治具の平面図である。
【図3】同挿入治具の上治具をスライドさせた状態を示す平面図である。
【図4】(a)は図2のA−A線断面図であり、(b)は図2のB−B線断面図である。
【図5】(a)は同挿入治具の上治具の底面図であり、(b)は同挿入治具の下治具の平面図である。
【図6】同挿入治具の後端部の分解部分側面図である。
【図7】人工椎間板の一例を示す斜視図である。
【図8】人工椎間板を保持した同挿入治具の斜視図である。
【図9】図8のC−C線断面図である。
【図10】同挿入治具の使用方法の説明図であって、人工椎間板を保持した同挿入治具を上下の椎体の間に挿入したところを示すものである。
【図11】同挿入治具の使用方法の説明図であって、人工椎間板を保持した同挿入治具の上治具を抜き取ったところを示すものである。
【図12】同挿入治具の使用方法の説明図であって、下治具を抜き取って人工椎間板を上下の椎体で挟持させたところを示すものである。
【図13】左右一対の人工椎間板の挿入位置を示す平面図である。
【図14】左右一対の人工椎間板と中間の人工椎間板の挿入位置を示す平面図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係る人工椎間板挿入治具の斜視図である。
【図16】本発明の治具セットを示す平面図である。
【図17】同治具セットの使用方法の説明図である。
【図18】本発明に係る人工椎間板挿入治具の他の実施形態を示す斜視図である。
【図19】(a)は同挿入治具の上治具の底面図、図19の(b)は同挿入治具の下治具の平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 上治具
1a 上保持片
1b 凸条
1d ピンの端部を収容する溝
1f ストッパー
2 下治具
2a 下保持片
2b 凹溝
2d ピンの端部を収容する溝
3,30 人工椎間板
3a 繊維構造体のコア材
3c ピン
3d ピンの端部
4 シャフト
5 握り部
6 挿入ガイド治具
6a ガイド孔
10 人工椎間板挿入治具
20 椎体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組の上治具と下治具が上下方向に分離しないように且つ前後方向にスライドできるように嵌着され、上治具と下治具の前部に、人工椎間板を保持する上保持部分と下保持部分が形成されていることを特徴とする人工椎間板挿入治具。
【請求項2】
上治具と下治具のいずれか一方に、先端が拡張した断面形状を有する凸条が形成されると共に、他方に、上記凸条に対応する奥端が拡張した断面形状を有する凹溝が形成され、これらの凸条と凹溝が嵌合されることによって上治具と下治具が上下方向に分離しないように且つ前後方向にスライドできるように嵌着されている、請求項1に記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項3】
上治具の上保持部分と下治具の下保持部分に、人工椎間板の上下両面から突き出したピンの端部を収容する溝が形成されている、請求項1又は請求項2に記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項4】
上治具の上保持部分の先端と下治具の下保持部分の先端が半円形もしくは半楕円形に形成されている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項5】
上治具と下治具が超高分子量ポリエチレンからなるものである、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項6】
上治具と下治具が同一の曲率半径を備えた円弧状に湾曲する治具であり、その前後方向である円弧方向にスライドできるように嵌着されている、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項7】
上治具と下治具のいずれか一方に、上治具が下治具と重なり合った位置から前方へスライドするのを阻止するストッパーが形成されている、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項8】
上治具の後端に、シャフトを介して握り部が設けられている、請求項7に記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項9】
椎間に挿入した上治具と下治具のいずれか一方を抜き取ってから他方を抜き取ると、上保持部分と下保持部分で保持された人工椎間板が椎間に静置されるようにした、請求項1に記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載された人工椎間板挿入治具と、この挿入治具をガイド孔に挿通することにより上保持部分と下保持部分で保持された人工椎間板を椎間の所定位置まで到達するようにガイドする挿入ガイド治具とからなる治具セット。
【請求項1】
一組の上治具と下治具が上下方向に分離しないように且つ前後方向にスライドできるように嵌着され、上治具と下治具の前部に、人工椎間板を保持する上保持部分と下保持部分が形成されていることを特徴とする人工椎間板挿入治具。
【請求項2】
上治具と下治具のいずれか一方に、先端が拡張した断面形状を有する凸条が形成されると共に、他方に、上記凸条に対応する奥端が拡張した断面形状を有する凹溝が形成され、これらの凸条と凹溝が嵌合されることによって上治具と下治具が上下方向に分離しないように且つ前後方向にスライドできるように嵌着されている、請求項1に記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項3】
上治具の上保持部分と下治具の下保持部分に、人工椎間板の上下両面から突き出したピンの端部を収容する溝が形成されている、請求項1又は請求項2に記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項4】
上治具の上保持部分の先端と下治具の下保持部分の先端が半円形もしくは半楕円形に形成されている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項5】
上治具と下治具が超高分子量ポリエチレンからなるものである、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項6】
上治具と下治具が同一の曲率半径を備えた円弧状に湾曲する治具であり、その前後方向である円弧方向にスライドできるように嵌着されている、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項7】
上治具と下治具のいずれか一方に、上治具が下治具と重なり合った位置から前方へスライドするのを阻止するストッパーが形成されている、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項8】
上治具の後端に、シャフトを介して握り部が設けられている、請求項7に記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項9】
椎間に挿入した上治具と下治具のいずれか一方を抜き取ってから他方を抜き取ると、上保持部分と下保持部分で保持された人工椎間板が椎間に静置されるようにした、請求項1に記載の人工椎間板挿入治具。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載された人工椎間板挿入治具と、この挿入治具をガイド孔に挿通することにより上保持部分と下保持部分で保持された人工椎間板を椎間の所定位置まで到達するようにガイドする挿入ガイド治具とからなる治具セット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−68086(P2006−68086A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252147(P2004−252147)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
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