説明

人工椎間板

上下の位置関係に基づいて組み合わせる上関節(3)と下関節(7)を含み、さらに上関節(3)と下関節(7)を固定して連結する取り外し可能な固定連結構造を含む人工椎間板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体内へ植え込めるための義体の技術分野に関し、特に脊柱関節義体に関する。
【背景技術】
【0002】
人工椎間板置換手術は、退行性椎間板疾患を治療するための有効な方法であり、現在使われている脊柱融合手術に代わりつつある。人工椎間板手術の利点として、椎骨間の隙間高さの回復、隣接する椎骨の応力集中の減少、椎間関節の活動度の保持、及び小関節突起関節退化の防止などがあげられる。該技術では、可動式人工椎間板を植込物として、元の自然な椎間板の活動機能に代える。
【0003】
普通の人工椎間板は主に、隣接する椎骨(隣接する椎体終板下骨にそれぞれ固定して連結した上、下関節を備えている。上、下関節の間にはボール・ソケット構造が設置されている。これらの人工椎間板は椎体間の隙間に植え込められると、直ちに可動性を持ち、前述の各利点が実現されている。しかし、人工椎間板の上、下関節と、隣接する椎骨の間の最初の固定は機械的固定により実現され、最終の固定は、一定の時間をかけて上、下関節と隣接する椎体終板下骨を安定的に結合させる(いわゆる、生物的固定)ことにより実現される必要がある。即ち、人工椎間板の突起を椎体に嵌め込むことにより機械的固定が実現され、また、人工椎体に対して表面処理を施し、骨質を人工椎間板の接触面に成長させていることにより、前記生物的固定が実現されている。骨質が人工椎間板の接触面に成長する前の期間において、人工椎間板の上関節と下関節の間の相対的運動によって、上、下関節と、隣接する椎体終板下骨との結合面の間が不安定になってしまい、これにより、上、下関節と、隣接する椎体終板下骨の結合を遅延させて、又は、上、下関節が隣接する椎体終板下骨と結合しない可能性がある。従って、従来の人工椎間板に関する臨床報告では、人工椎間板の変位または脱落が発生することが多く、人工椎間板の沈みもこれと関連している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の人工椎間板を人体内へ植え込めた後に発生した、隣接する椎体終板下骨との結合遅延や不結合という問題を解決するために、本発明の目的は、人工椎間板およびその取り付け方法を提供する。
【0005】
従来技術の前記問題点を解決するために、本発明の技術構想は、骨質が人工椎間板の接触面に成長する前の期間において、一時的な固定連結により人工椎間板の上、下関節の一部の運動を少なくとも規制し、上、下関節と隣接する椎体終板下骨の間の安定性を増やすことである。
【0006】
本発明の人工椎間板の取り付け方法は、人工椎間板の互いに合わせる上関節及び下関節を上下の位置関係に基づいてそれぞれ椎体終板下骨に固定して配置するステップと、
上関節及び下関節の間に固定連結関係を形成するステップと、
上関節及び下関節が共に前記椎体終板下骨と生物的固定された後、上関節及び下関節の間の固定連結関係を解除するステップと
を含む。
【0007】
前記固定連結関係は、
上関節が下関節に対して、又は下関節が上関節に対して、該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に垂直する方向に移動する運動と、
上関節及び/又は下関節が、該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に平行又は重合すると共に該関節を貫く回転軸線を回りに回転する運動と
の少なくとも一つを規制する。
【0008】
本発明の人工椎間板は、上下の位置関係に基づいて合わせる上関節及び下関節を含み、さらに上関節と下関節とを固定して連結する取り外し可能な中間構造としての取り外し可能な固定連結構造を含む。
【0009】
上関節と下関節を固定して連結する前記取り外し可能な固定連結構造は、
上関節が下関節に対して、又は下関節が上関節に対して、該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に垂直する方向に移動する運動と、
上関節及び/又は下関節が該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に平行または重合する該関節を貫く回転軸線を回りに回転する運動と
の少なくとも一つを規制する。
【0010】
さらに、本発明の人工椎間板は、前記上関節及び下関節がボール・ソケット構造により組み合わせており、
前記取り外し可能な固定連結構造は、上関節と下関節との間に設置されるリング部材を含み、
前記リング部材は気体入り構造を有し、リング部材内に気体や液体が充填されると、前記ボール・ソケット構造が該リング部材の内部に設置され、リング部材の上端及び下端がそれぞれ上関節及び下関節と当接し、リング部材と上、下関節の間の摩擦力により、前記運動を規制しており、
リング部材内の気体や液体が排出された場合、前記運動への規制を解除する。
【0011】
また、さらに、本発明の人工椎間板は、前記上関節及び下関節がボール・ソケット構造により組み合わせており、
前記取り外し可能な固定連結構造は上関節と下関節との間に設置されるリング部材を含み、
前記ボール・ソケット構造がリング部材の内部に設置され、且つ、前記リング部材は該人工椎間板で置換される椎間板の軸線の方向に沿って移動でき、
リング部材が上関節と当接するとき、リング部材と上関節の間に摩擦力が作用すると共に、下関節上に取り外し可能な支持体が設置されリング部材を支持する場合、前記運動を規制しており、
前記支持体を取り外すと、前記運動への規制を解除する。
【0012】
前記リング部材の上関節と接触する端面を、上関節の対応する端部の端面に合わる。
【0013】
前記取り外し可能な支持体は、ばねが設置されたピンであり、ばねはピン及び下関節によって挟まれ、ばねの伸縮方向がピンの軸線に平行しており、
ばねが伸ばしている状態で、ピンは下関節から離れる方向へ伸ばしてリング部材を支持し、且つリング部材にはピンの接触部位に対応して溝が設けられ、ばねがある程度圧縮されると、ピンは下関節の方向へ収縮され、リング部材への支持を解除する。
【0014】
前記ピンの材質は磁性材料である。
【0015】
また、さらに、本発明の人工椎間板は、前記取り外し可能な支持体がリング部材を固定して支持する支持子であり、前記支持子の材質が分解可能な材料である。
【発明の効果】
【0016】
骨質が人工椎間板の接触面に成長する前の期間において、人工椎間板の運動によって、上、下関節と隣接する椎体終板下骨の結合面が不安定になり、更に上、下関節と隣接する椎体終板下骨の結合を遅延させるという従来技術の問題点を解決するために、本発明の方法によって、前記の期間内において上関節と下関節の位置関係を固定し、上関節と下関節を一体化する。一体化しても運動しており、上、下関節と隣接する椎体終板下骨の結合面で不安定性が生じるが、上関節と下関節が共に一定の自由度を有することによって隣接椎体終板下骨の結合面で不安定性が生じる場合と比較すると、生物的固定の形成するに対して、一体化の運動は安定性が高く、上、下関節と隣接する椎体終板下骨の結合面の不安定性を大きく減少することができる。従って、骨質を人工椎間板の接触面に成長させて強固な生物的固定を実現するように、良好な力学環境を作り上げられる。骨質が人工椎間板の接触面に成長したあと、上関節と下関節の間の固定連結を解除して、人工椎間板の本来の活動機能を回復させることができる。
【0017】
本発明の人工椎間板は、従来の人工椎間板の構造を基にして、更に一時な上、下関節の固定連結構造が設置されており、骨質の成長段階で上、下関節を固定する目的を実現でき、同時に、条件が適当する場合(上関節や下関節と隣接する椎体終板下骨とが生物的固定を形成した後)、固定連結構造を解除し、上、下関節の間の相対的運動を許して、人工椎間板の本来の活動機能を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の人工椎間板における各部材の位置関係を示す図である。
【図2】図2は取り付けが完了した人工椎間板の断面図である。
【図3】図3は本発明の人工椎間板におけるピンの一例の図である。
【図4】図4は本発明の人工椎間板におけるピンの他の例の図である。
【図5】図5は本発明の人工椎間板におけるピンの第三例の図である。
【図6】図6は本発明の人工椎間板におけるピンの第四例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の人工椎間板の取り付け方法について詳しく説明する。
【0020】
人工椎間板の上関節と下関節を既定の位置関係に基づいて(図1に示す上関節と下関節の位置関係を参照)取り付ける。即ち、突起によって上関節と下関節とをそれぞれ、人工椎間板の隣接する椎体終板下骨に固定する。隣接する椎体終板下骨が上と下との両方向から上関節と下関節とへ圧力を印加するので、人工椎間板と基材骨との間の結合に対して非常に有利であり、特に、骨質がまだ結合面に成長していない前(即ち、生物的固定を形成する前)に、より有利である。
【0021】
上述ステップで上関節と下関節とを設置した後、上関節と下関節との間は固定連結関係を形成する。この連結関係により、上関節と下関節とは互いに規制し、一方の関節が他方の関節の運動の傾向を規制する。上述の分析によると、従来の臨床問題の主な原因の一つとして、上関節又は下関節と隣接する椎体終板下骨との間は生物的固定を形成する前に運動したことである。従って、上述の固定連結により上関節と下関節の運動を規制することは、上、下関節と隣接する椎体終板下骨との間に良好な生物的固定を形成することを確保できる。上述固定連結を形成する方法が従来たくさんあるが、ここで説明を省略する。
【0022】
上述ステップが終了すると、上関節及び下関節が隣接する椎体終板下骨との結合状態を検出する。上関節と下関節とが共に椎体終板下骨に対して生物的固定が実現されば、非侵襲手術又は最小侵襲方法で上述固定連結を解除し、人工椎間板の本来の全ての活動機能を回復させることができる。
【0023】
これまで、本発明の人工椎間板の取り付け方法は、人工椎間板を人体内へ植え込めた後に隣接する椎骨との結合遅延や不結合が発生するという従来技術における問題を解決した。
【0024】
研究結果によると、上関節及び下関節と隣接する椎体終板下骨との間に生物的固定を形成する前の期間において、次のような運動が前記生物的固定に対して危害を及ぼす。即ち、上関節が下関節に対して、または下関節が上関節に対して、該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に垂直する方向に移動することと、上関節及び/又は下関節が、該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に平行または重合すると共に該関節を貫く回転軸線を回りに回転することである。
【0025】
前記運動について次のように説明する。上関節または下関節が下関節又は上関節に対して移動することは、上関節と下関節の間の相対的移動を意味しており、特に、置換される椎間板の軸線(置換される椎間板は人工椎間板で置換される椎間板である)に垂直する方向に移動成分を有することを意味している。人体の脊柱は、頸椎の屈曲度、胸椎の屈曲度、腰椎の屈曲度と仙椎の屈曲度という四つの屈曲度があり、前記移動成分の移動方向は、人工椎間板で置換される椎間板の軸線(略直線)を参照とするものである。下関節又は上関節に対する上関節又は下関節の移動の一つは、空間内において交差する二つの平面における移動成分に分解される。前記交差する平面の一つを該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に垂直する平面として、且つ、上関節又は下関節の移動が該平面において移動成分を有すれば、該移動は、上関節や下関節と隣接する椎体終板下骨との間の生物的固定に対して、危害を及ぼすことができる。
【0026】
なお、次のような回転も上関節や下関節と隣接する椎体終板下骨との間の生物的固定に対して危害を及ぼすことができる。即ち、上関節及び/又は下関節は、該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に平行又は重合すると共に該関節を貫く回転軸線を回わりに回転する。ここで、参照とする軸線は前述した定義と同じである。
【0027】
そのため、本発明の人工椎間板の取り付け方法において、上関節と下関節の間の固定連結関係は、生物的固定に対して危害を及ぼす前記運動の少なくとも一つを規制しなければならない。
【0028】
次に、図面を参照しながら、複数の実施例により、前記方法を実現できる本発明の人工椎間板の技術方案を詳しく説明する。
【0029】
図1は本発明の人工椎間板の一つの実施例を示す。本発明の人工椎間板は、上下の位置関係に基づいて組み合わせる上関節3と下関節7を備えている。上関節3と下関節7はボール・ソケット構造によって組み合わせている。また、ボール・ソケット構造は、よくある可動的連結構造である。上関節3と下関節7はボール・ソケット構造により相対的に回転し、自然の椎間板の活動機能を実現することができる。ボール・ソケット構造は、少なくともボール4と、ボール4に対応するソケットという二つの要素を含む。ボール4の表面がソケットの表面に対してスライドでき、ボール4がソケットに対して回転する効果が得られる。ボール4が真球に限らなく、楕円球などであってもよい。本発明のボール・ソケット構造は、上関節又は下関節に設置されたボール4と下関節又は上関節に設置された対応するソケットからなる組み合わせであってもよいし、上関節と下関節にソケットが設置され、且つ、両ソケットの間にボール4としての独立な球体を設置してもよい。
【0030】
上、下関節の間には、取り外し可能な中間構造としての取り外し可能な固定連結構造が設置されている。該固定連結構造により上、下関節の位置関係を保持することができる。即ち、上関節と下関節の間には相対的移動を生じさせないことができる。そして、当固定連結構造を取り外す又は解除することにより、上、下関節の間の固定連結関係を解除することができる。上関節と下関節の間の部分の相対的運動が生物的固定の形成に対して不利な影響を及ぼすため、取り外し可能な固定連結構造により、上関節と下関節の間のこれらの相対的運動を一時的に規制することができ、本発明の目的の実現に寄与する。また、図1に示す実施例は、生物的固定の形成に対して最も不利な影響を及ぼすいくつかの運動を規制する例子であり、更に本発明の目的の実現に有利である。これらの運動は、上関節3又は下関節7が下関節7又は上関節3に対して、該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に垂直する方向に移動することと、上関節3及び/又は下関節7が該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に平行又は重合すると共に該関節を貫く回転軸線を回りに回転することである。人工椎間板は、いわゆる取り外し可能な固定連結構造により本発明の方法を実現することができる。即ち、特定な期間において上関節3と下関節7の間の上述のいくつかの運動を規制しており、その後、該固定連結構造を取り外すことにより、上関節3と下関節7の固定連結関係を解除する。
【0031】
図1に示す実施例における取り外し可能な固定連結構造は、上関節3と下関節7を組み合わせるボール・ソケット構造と合わせる。ボール・ソケット構造は、上関節に設置されたボール4と下関節に設置された対応するソケットとを備えて、更に、上関節3と下関節7の間に設置されたリング部材5を備えている。リング部材5の内環側に前記ボール・ソケット構造が設置されており、また、リング部材5は該人工椎間板で置換される椎間板の軸線の方向に沿って移動でき、即ち、リング部材5は一定範囲内(図1の垂直方向)で移動できるように、ボール・ソケット構造に遊嵌される。下関節7上に、リング部材5に対応して、リング部材5を支持するための複数個のピンが均一的に設置しており、ピンはピン孔8に挿入される。図1に示す二つのピン孔8は実際に、下関節を貫通したピン孔の両端である。また、リング部材5を安定的に支持するように図1の下関節の前、後の二つの位置には二つのピンが設置されている。ピン孔8から露出している部分のピンがリング部材5に接触しながら、リング部材5を支持している。リング部材5を支持すると同時に、リング部材5の回転を規制するように、リング部材5のピンと接触する位置には溝6が設けられている。リング部材5がピンと上関節体に挟まれる(図1において上関節のフランジで挟まれる)ようにピンの位置を設置することが望ましい。このように、リング部材5と上関節3の接触面の粗さを増やすことにより、リング部材5と上関節3の間に比較的大きな摩擦力を生じさせることができる。この摩擦力によって下関節7又は上関節3に対する上関節3又は下関節7の移動を規制する。具体的には、上関節3と下関節7からなる人工椎間板で置換される椎間板の軸線に垂直する方向(即ち、結合面1に平行する平面内の任意方向)に移動成分を有することを規制する。
【0032】
リング部材5が自身の軸線を回りに回転することが規制されたので、上関節3が自身の回転軸線(人工椎間板で置換される椎間板の軸線に平行又は重合するとともに該関節を貫く直線)を回りに回転することもリング部材5によって規制される。そして、下関節7と上関節3の間には固定連結関係が存在するので、下関節7が自身の回転軸線(人工椎間板で置換される椎間板の軸線に平行又は重合すると共に該関節を貫く直線)を回りに回転することも規制される。上述したように、図1に示す実施例は、生物的固定の形成に対して最も不利な影響を及ぼすいくつかの運動を規制することができるので、これらの運動による人工椎間板を植え込める初期での隣接する椎体終板下骨との結合遅延や不結合の問題を避けることができる。臨床検査や放射線検査により、人体椎体骨質と人工椎間板の接触表面の結合が完成した(即ち、生物的固定を実現した)ことを確認した後、ピンを取り外すことができる。リング部材5が重力により落下し、上関節3との接触を解除する。これにより、上関節3の回転への規制を解除して、人工椎間板の本来の活動機能を回復させることができる。
【0033】
なお、他の実施例として、図1の技術方案と比較すると、異なったのはピン孔とピンを設置する必要がないことである。リング部材5が気体入り構造を採用する。気体入り構造は、リング部材が密閉な中空構造となることを指す。リング部材に気体や液体を注入すると、リング部材は図1に示す構造になる。リング部材内の気体や液体が排出されると、リング部材が風船のように収縮し、図1に示す構造にならない。収縮したリング部材の体積が気体や液体を注入したときの体積より大幅に小さくなる。本実施例では、リング部材に気体や液体を注入すると、リング部材の上端及び下端がそれぞれ上関節及び下関節に当接する(それぞれ上関節及び下関節のフランジに当接する)。そして、リング部材と上、下関節との接触面に摩擦力を有させるようにリング部材と上、下関節との接触面を一定の粗さを有する面にする。この摩擦力により、リング部材5が自身の軸線を回りに回転することを規制しており、また、上関節と下関節の間が相対的に回転することも規制する。さらに、リング部材と上、下関節の接触面間の摩擦力により、上関節と下関節の間は人工椎間板で置換される椎間板の軸線に垂直する方向に相対的に移動することを規制する。上述したように、本実施例は、前記生物的固定の形成に対して最も不利な影響を及ぼすいくつかの運動を規制したので、これらの運動による人工椎間板を植え込める初期での隣接する椎体終板下骨との結合遅延や不結合の問題を避けることができる。臨床検査や放射線検査により、人体椎体の骨質と人工椎間板の接触表面の結合が完了した(即ち、生物的固定を実現した)ことを確認した後、リング部材内の気体や液体が排出される。これにより、前記運動に対する規制を解除して、人工椎間板の本来の活動機能を回復させることができる。
【0034】
図2に示す人工椎間板の取り付け構造から、リング部材5の径方向の寸法が均一ではなく、即ち、右側の壁がもっと厚いことが分かる。この断面図が次のような技術特徴を示す。即ち、上、下関節に形成されたボール・ソケット構造が人工椎間板の真ん中に位置しない場合、リング部材5の上関節3と接触する端面(即ち、リング部材5の上方側の端面)の形状及び面積と上関節3の対応する端面(即ち、上関節3のフランジ部分の面)の形状と面積をできるだけ近似させ(即ち、両端面を対応させる)、上関節3への支持面積をできるだけ大きくする。本方案は次のような利点がある。上関節3への支持面積が大きいほど、上関節の結合面1(図1を参照する)がより大きな面積で椎体終板下骨に密着に接触することに対して有利である。したがって、生物的固定の過程を促進する。
【0035】
図3ないし図6を参照しながら、ピンとピン孔の構造を説明する。本発明はいくつかの好ましい実施例について説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは理解すべきである。
【0036】
図1に示すピンは、リング部材5を支持すると共に、ピンの取り外しやピン孔内への収縮ことによりリング部材5への支持を解除することができるという機能を有する必要がある。次の実施例はこの目的に基づいて設計を行う。
【0037】
まず、図3に示すピンの構造を説明する。柱状のピン9は径方向の寸法が異なる大径部と小径部に分けられる。ピン孔は段差孔であり、内径が異なる同軸の大径孔と小径孔から形成される。小径孔の直径が、ピン9の小径部の直径の寸法よりやや大きく、且つピン9の大径部の直径の寸法より小さい。ピン9の小径部にはコイルばねが取り付けられ、ばねの軸線がピンの軸線に平行または重合している。ばねの一端がピン9の大径部と小径部の境界(ランド)に当接し、ばねが自然に伸ばしている状態で、その軸方向の長さがピンの小径部の軸方向の長さより長い。ばねが設置されたピン9は、ピン孔の大径孔の一端から挿入し、ばねの他方の一端が段差孔の大径孔と小径孔の境界に当接する。ばねが自然に伸ばしている状態において、ピン9の一部分がピン孔の大径孔の一端から突き出され、リング部材を支持する。ピン9には図3の左側方向への力が印加されると、ばねが圧縮され、更にピン9がピン孔内に収縮される。これにより、リング部材への支持を解除することができる。また、図3の左側方向への力に関して、外力(たとえば、最小侵襲手術)によりピン9を押すことで実現される。または、磁性材料を利用してピン9を製作し、更に必要に応じて、図3の左側において磁力をピン9に作用させて、ピン9をピン孔内に収縮させ、その後、磁力を解除するとき、リング部材が既に落下したので、ピン9が再びピン孔から突き出しても、上関節と下関節の運動に対して影響を及ぼさない。磁性材料を採用する利点として、ピン9を収縮しようとする場合、人体外の適当な場所で磁石を設置すればよい。したがって、人体に侵入することがなく、患者の苦痛を減少することができる。
【0038】
図4がピンの他の構造を示す。ピン9は、軸方向に径方向の寸法が異なる三つの部分に分けられる。左から右へ径方向の寸法に応じてそれぞれ大径部、小径部、中径部となる。図4のピン孔も段差孔であり、二つの部分である大径孔と小径孔からなる。段差孔における大径孔の直径はピン9の大径部の直径と略一致する。段差孔における小径孔の直径はピン9の中径部の直径と略一致する。図4に示すように、段差孔における小径孔内にはフランジが設けられる。ピン9がピン孔において次のように設置される。即ち、ピン9の大径部は段差孔における大径孔(図4の左側)に設置され、ピン9の中径部は段差孔における小径孔内に設置され、且つフランジの右側にある。フランジが設置された位置の孔径がピン9の小径部の直径より大きく、且つピン9の中径部の直径より小さい。コイルばね12の両端がそれぞれフランジの右側およびピン9の中径部と小径部の境界に当接する。フランジからピン9の大径部までの段差孔の壁には、締付けリング10が嵌め込まれる。ばね11がそれぞれ、フランジの左側および締付けリング10に当接する。締付けリング10はポリエチレンからなる。図4に示すピンが下記のうに動作を行う。即ち、締付けリング10とフランジの間のばね11は圧縮状態となり、ばね12がピン9を押し付けることにより、ピン9をピン孔の小径孔の端部から突き出し、リング部材を支持する。ピン9を左側へ収縮させる必要がある場合、電磁界による加熱などの加熱方法によって締付けリング10を溶かしてばね11を伸ばせる。これにより、ばね11はピン9の大径部を押し付けて、左側へ移動させる。ばね11の伸ばす力が圧縮ばね12の力より大きくなると、ピン9は左側へ移動し、リング部材への支持を解除する。この支持を解除する方法について、人体外で電磁界より加熱すればよい。したがって、人体に侵入することがなく、患者の苦痛を減少することができる。
【0039】
図5に示すピンの技術方案は次のようである。ピン孔がブラインドホールであり、ピン孔の孔径に対応するピンの左端とピン孔の底部の間には、弾性部材が設置され、ピン9の左、右方向への移動を実現する。即ち、ピン9のリング部材への支持またはその支持の解除を実現する。また、リモートコントロール回路によって弾性部材を制御することができる、ピン9を収縮させる必要がある(図5の左側へ移動)場合、人体外でのリモートコントロールで実現することができる。
【0040】
図6に示すピンは、複雑な機械的構造がなく、ピン孔内で移動できないピン9である。ピン9が分解可能な材料からなる。前記分解可能な材料は人体内の環境で徐々に分解することができる材料を指し、たとえば、人工合成した高分子のポリラクタイド(ポリ乳酸)である。この分解過程は一定の時間をかける必要がある。ピン9がある程度分解されると、リング部材を支持できなくなり、つまり、リング部材への支持を解除する。分解の過程において、ピン9がまたリング部材を支持することができるので、骨質が上、下関節の結合面に成長する時間に合わせて分解過程を設計すると、本発明の目的を実現することができる。分解過程の時間制御について、分解材料の選択及び/又はピン9の寸法の選択により実現できる。
【符号の説明】
【0041】
1 結合面
2 突起
3 上関節
4 ボール
5 リング部材
6 溝
7 下関節
8 ピン孔
9 ピン
10 締付けリング
11 ばね
12 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工椎間板の互いに合わせる上関節及び下関節を上下の位置関係に基づいてそれぞれ椎体終板下骨に固定して配置するステップと、
前記上関節及び前記下関節の間に固定連結関係を形成するステップと、
前記上関節及び前記下関節が共に前記椎体終板下骨と生物的固定された後、前記上関節及び前記下関節の間の固定連結関係を解除するステップと
を含むことを特徴とする人工椎間板の取り付け方法。
【請求項2】
前記固定連結関係は、
上関節が下関節に対して、又は下関節が上関節に対して該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に垂直する方向に移動する運動と、
上関節及び/又は下関節が、該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に平行又は重合すると共に該関節を貫く回転軸線を回りに回転する運動との少なくとも一つを規制することを特徴とする請求項1に記載の人工椎間板の取り付け方法。
【請求項3】
上下の位置関係に基づいて合わせる上関節及び下関節を含み、さらに上関節と下関節とを固定して連結する取り外し可能な固定連結構造を含むことを特徴とする人工椎間板。
【請求項4】
上関節と下関節を固定して連結する前記取り外し可能な固定連結構造は、
上関節が下関節に対して、又は下関節が上関節に対して該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に垂直する方向に移動する運動と、
上関節及び/又は下関節が該人工椎間板で置換される椎間板の軸線に平行または重合する該関節を貫く回転軸線を回りに回転する運動との少なくとも一つを規制することを特徴とする請求項3に記載の人工椎間板。
【請求項5】
前記上関節及び下関節はボール・ソケット構造により組み合わせており、
前記取り外し可能な固定連結構造は、上関節と下関節との間に設置されるリング部材を含み、
前記リング部材は気体入り構造を有し、リング部材内に気体や液体が充填されると、前記ボール・ソケット構造が該リング部材の内部に設置され、リング部材の上端及び下端がそれぞれ上関節及び下関節と当接し、リング部材と上、下関節との間の摩擦力により、前記運動を規制しており、
リング部材内の気体や液体が排出された場合、前記運動への規制を解除したことを特徴とする請求項3又は4に記載の人工椎間板。
【請求項6】
前記上関節及び下関節はボール・ソケット構造により組み合わせており、
前記取り外し可能な固定連結構造は上関節と下関節との間に設置されるリング部材を含み、
前記ボール・ソケット構造がリング部材の内環側に設置され、且つ、前記リング部材は該人工椎間板で置換される椎間板の軸線の方向に沿って移動でき、
リング部材が上関節と当接するとき、リング部材と上関節との間に摩擦力が作用すると共に、下関節上に取り外し可能な支持体が設置されリング部材を支持する場合、前記運動を規制し、
前記支持体を取り外すと、前記運動への規制を解除することを特徴とする請求項3または4に記載の人工椎間板。
【請求項7】
リング部材の上関節に対する支持面積をできるだけ大きくなるように、前記リング部材の上関節と接触する端面を、上関節の対応する端部の端面に合わせることを特徴とする請求項6に記載の人工椎間板。
【請求項8】
前記取り外し可能な支持体は、ばねが設置されたピンであり、ばねはピン及び下関節によって挟まれ、ばねの伸縮方向がピンの軸線に平行しており、
ばねが伸ばしている状態で、ピンは下関節から離れる方向へ伸ばしてリング部材を支持し、かつリング部材にはピンの接触部位に対応して溝が設けられ、
ばねがある程度圧縮されると、ピンは下関節の方向へ収縮され、リング部材への支持を取り外すことを特徴とする請求項6または7に記載の人工椎間板。
【請求項9】
前記ピンの材質は磁性材料であることを特徴とする請求項8に記載の人工椎間板。
【請求項10】
前記取り外し可能な支持体はリング部材を固定して支持する支持子であり、前記支持子の材質が分解可能な材料であることを特徴とする請求項6または7に記載の人工椎間板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−528611(P2012−528611A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513456(P2012−513456)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/CN2010/072787
【国際公開番号】WO2010/139231
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511292046)北京納通科技集團有限公司 (1)
【Fターム(参考)】