説明

人工爪コーティングのための除去可能な保護トップコートおよびそのための方法

本開示は一般に、爪コーティング用組成物に関し、特に、重合可能組成物に関するがこれに限られない。本開示はさらに、容易に除去されうる重合可能な、保護用および耐引っかき性トップコート層を作製する方法に関する。本開示の態様は、少なくとも一つのUV硬化可能材料(UV硬化可能モノマー、および/またはUV硬化可能オリゴマー)と、少なくとも一つの光開始剤と、少なくとも一つの非重合可能溶媒溶解性樹脂と、少なくとも一つの非反応性溶媒とを含む、爪または爪コーティングへの美容トップコートの塗布のためのUV硬化可能組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、一般に爪コーティング用組成物に関し、特に、重合可能組成物に関するがこれに限られない。本開示はさらに、重合可能トップコート層を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
以下に提供される情報は、本発明に対する従来技術と認められるものではなく、読者の理解を助けるためだけに提供されるにすぎない。
【0003】
爪コーティングおよび爪エキステンダーの形の人工の指爪用および足爪用組成物は周知であり、外観および美容産業の主要な製品ラインになっている。指爪(および多くの場合には足爪も)の外観は、多くのファッション意識の高い人にとって重要となっている。市販の人工爪組成物が、爪の外観を向上させるために、また、もろい爪表面の強化を含めて爪の物理的性質を向上させるために用いられている。
【0004】
従来の爪コーティングは、二つのカテゴリ、すなわちラッカー、ニスまたはエナメルとしても知られるマニキュアと、ゲルまたはアクリルとしても知られる人工爪とに分類できる。マニキュアは、非反応性溶媒に溶解および/または懸濁される様々な固体成分を典型的に含む。塗布および乾燥されると、固体が爪表面上に透明、半透明、または有色の膜として堆積する。マニキュアは典型的にひっかき傷がつきやすく、溶媒を用いて通常1分以内に容易に除去可能であり、以上のように除去されない場合には1〜5日で天然爪から欠けまたは剥がれる。
【0005】
従来の人工爪は、典型的に100%固体であり非反応性溶媒を必要としない系を作製するために反応性または非反応性ポリマーと組み合わせた、化学反応性モノマー、および/またはオリゴマーから構成される。予備混合ならびにその後の爪板への塗布、または塗布およびUV放射への曝露のときに化学的反応が生じ、除去困難な、長持ちで耐久性の高い架橋熱硬化性爪コーティングが形成される。人工爪はマニキュアと比較すると非常に高い接着性、耐久性、ならびに耐引っかき性および耐溶媒性を有しうる。しかしこれらの固有の特性のために、このような反応性熱硬化性物質は、消費者が除去したい場合に除去がはるかに困難である。除去には、30〜90分間非反応性溶媒に浸漬することが典型的に必要であり(これはアクリルおよび現在利用可能な「浸漬可能ゲル」の場合であり、従来のUV爪ゲルを溶媒で除去しようとすれば90分より長くかかりうる)、除去プロセスを助けるために表面を大量に研磨し、または木製もしくは金属製のヘラ(probe)でこすることも典型的に必要となりうる。
【0006】
爪コーティング系には典型的にベースコート、着色層、およびトップコートの三層が含まれる。ベースコートの主要な機能は、天然爪に対する接着を提供することである。着色層は、ベースコートの上から適用される。第二または「着色」層は、無色または半透明(tranlucent)でありうる。有色で、いくらかの不透明度を有するのが典型的である。着色層の主機能は美容であり、場合によっては爪全体の耐久性を高めることである。最終層は、着色層の上に適用される。この層は、通常「トップコート」と呼ばれ、典型的には完成した爪コーティング複合材に光沢を提供するように機能する。さらにトップコートは、摩耗抵抗だけでなく、「着色」層を化学的(水または家庭用品等)および/または物理的(UV光等および)曝露から保護する手段としても機能する。
【0007】
他の層のように、トップコートは、マニキュアタイプ(気乾)またはUVゲルタイプ(光硬化)でありうる。一般に第一のタイプは、比較的速く光沢を失う(5日以下)。これは耐引っかき性が低く、耐溶媒性が低い。第二のタイプは、耐引っかき性および耐溶媒性が比較的高いため、より長時間光沢を維持する(3週間以上)。他方で、気乾タイプのトップコートは溶媒により非常に容易に除去されるが、光硬化型は溶媒除去性がほとんどない。耐引っかき性および耐溶媒性が比較的高く、溶媒による除去性もある程度あるトップコートが必要とされている。
【0008】
従来の人工爪は、反応性モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーを、典型的には100%固体で非反応性溶媒の非存在下で含む。「アクリル」タイプのエンハンスメントの塗布の際(または「ゲル」タイプのエンハンスメントに対するUV光曝露の後)には、化学的反応が起こり、架橋熱硬化性物質が形成される。人工爪系は、マニキュアと比較して高い接着性および耐引っかき性を有しうる。しかし、これらの高められた特性のために、熱硬化性物質は、消費者が除去したい場合に除去がはるかに困難である。除去には、30〜90+分間溶媒に浸漬することが典型的に必要であり、トップコートおよび/または色の研磨、ならびに天然爪表面の擦り取りまたは研磨も必要となりうる。
【0009】
熱硬化性物質のより高い接着性および耐久性特性をもつとともに、除去がより短時間で簡単である爪コーティング系への必要性が残る。
【0010】
本開示は、ベースコート接着層(出願番号第12/555,571号、2009年9月8日出願、現在係属中)、中間の装飾着色層(出願番号第12/573、633号、2009年10月5日出願、現在係属中)、および本出願の保護トップコート(出願番号第12/573,640号、2009年10月5日出願、現在係属中)を含む爪カバー系の一部を形成する。各出願の内容は、あらゆる目的で参照により他の各々に相互に組み込まれる。
【0011】
他の目的および利点は、以下の開示から明らかになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
関連の開示を参照しながら考慮される本開示の態様は、容易な除去を提供する溶媒により誘発される「解凍(unzip)」、「クイックリリース」の特徴と組み合わせられた、爪表面への強固な接着により特徴づけられるベースコートを提供する。関連の開示を参照しながら考慮される本開示の態様は、容易な除去を提供する溶媒誘発性の「解凍」、「クイックリリース」の特徴と組み合わせられた、ポリマー表面への強固な接着により特徴づけられる着色層を提供する。関連の開示を参照しながら考慮される本開示のさらなる態様は、容易な除去を提供する溶媒誘発性の「解凍」、「クイックリリース」の特徴と組み合わせられた、ポリマー表面への強固な接着により特徴づけられる保護トップコートを提供する。
【0013】
本開示の態様は、少なくとも一つのUV硬化可能材料(UV硬化可能モノマー、および/またはUV硬化可能オリゴマー)と、少なくとも一つの光開始剤と、少なくとも一つの非重合可能溶媒溶解性樹脂と、少なくとも一つの非反応性溶媒とを含む、爪または爪コーティングへの美容トップコートの塗布のためのUV硬化可能組成物に関する。
【0014】
本開示の一態様は、有機溶媒溶解性樹脂を含むネットワークにより相互貫通された三次元(3−dimentional)(3−D)熱硬化性格子を含む爪トップコートを提供する。本開示の一態様によれば、3−D熱硬化性格子は、従来の人工爪に典型的に伴う接着性、強度、および耐引っかき性の向上を提供する。本開示の一態様によれば、空隙と有機溶媒溶解性樹脂の相互貫通ネットワークとの相互接続システムが、溶媒を用いた除去の容易さを提供する。
【0015】
一態様によれば、本開示は、3−D熱硬化性物質に重合する、少なくとも一つのUV硬化可能モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーを含む液体組成物を提供する。一態様によれば、本開示は、少なくとも一つの有機溶媒溶解性樹脂を含む液体組成物を提供する。一態様によれば、有機溶媒溶解性樹脂は、3−D熱硬化性格子の中に内包物のネットワークを形成する。
【0016】
本開示の態様によれば、少なくとも一つのUV硬化可能モノマーは、(メタ)アクリレート(acylate)でありうる。ポリマー技術の当業者に知られていているように、(メタ)アクリレートという用語は、アクリレートおよび/またはメタクリレートをさす。本開示の態様によれば、UV硬化可能モノマーは、単一または混合アクリレート、単一または混合メタクリレート、またはアクリレートとメタクリレートとの混合物でありうる。
【0017】
一態様によれば、本開示は、重合格子の除去容易性の「解凍」特性を与えるモノマーを提供する。一態様によれば、モノマーは、ポリプロピレングリコール−4−モノメタクリレート(PPG4モノメタクリレート)でありうる。一態様によれば、適切なモノマーは、PPGまたはポリエチレングリコール(PEG)ファミリーの任意のアクリレート化またはメタクリレート化モノマーを含みうる。一態様によれば、「解凍」モノマーは、約0〜約70重量%(wt%)存在する。
【0018】
一態様によれば、液体組成物は、重合組成物に接着性の増加を提供する反応性モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーを含む。一態様によれば、このような反応性モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーは、(メタ)アクリレートでありうる。一態様によれば、このような反応性モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、エチルメタクリレート(EMA)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA)、ピロメリト酸二無水物ジ(メタ)アクリレート、ピロメリト酸二無水物グリセリルジメタクリレート、ピロメリト酸ジメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルマレエート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/スクシネート、1,3−グリセロールジメタクリレート/スクシネート付加物、フタル酸モノエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEMA)、およびその混合物からなる群より選択されうる。一態様によれば、このような反応性モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーは、酸性官能基を有する。一態様によれば、重合組成物に接着性の増加を提供するモノマー、オリゴマーまたはポリマーは、約0〜約50wt%存在する。
【0019】
本開示の一態様は、非反応性の溶媒溶解性ポリマーを含む重合可能液体組成物を提供する。一態様によれば、非反応性の溶媒溶解性ポリマーは、セルロースエステルである。特定の態様によれば、非反応性の溶媒溶解性ポリマーは、セルロースアセテートアルキレートである。より特定の態様によれば、非反応性の溶媒溶解性ポリマーは、セルロースアセテートブチレートまたはセルロースアセテートプロピオネートである。さらなる態様によれば、除去容易性を提供する成分は、約0.1〜約75wt%存在しうる。
【0020】
本製剤のある実施形態は、ポリビニルブチラールおよび/またはトシルアミドホルムアルデヒド樹脂等であるがこれに限られない樹脂を任意に含みうる。このような樹脂は、膜形成剤、接着促進剤、および除去補助剤として作用する。これらの樹脂は、溶媒の吸収および移動のためのチャネルを作製するために抽出されうる、溶媒溶解性の相互貫通樹脂としても認められうる。
【0021】
本開示の一態様によれば、トップコート組成物は、従来の顔料および/または染料を最大1wt%含みうる。
【0022】
本開示の別の態様によれば、トップコート組成物は、「光輝顔料」を最大10wt%含みうる。当技術分野で周知のように、金属光輝顔料は、装飾および/または保護の目的で使用されうる微粉化された金属および/または合金の分散物でありうる。当技術分野で周知のように、光輝顔料は、真珠光沢顔料または真珠箔顔料であり得、金属酸化物層で被覆された雲母粒子の分散物を含みうる。真珠箔顔料は、コーティングに虹色の真珠状の光沢を与えうる。
【0023】
本開示の一態様は、除去の方法を提供する。一態様によれば、本開示の組成物から重合された熱硬化性物質は、有機溶媒、特にアセトンに対する感応性を与える。本開示の一態様によれば、ポリマー/天然爪境界面に有機溶媒を分配するための手段が提供される。一態様によれば、ポリマー/天然爪境界面に適切な溶媒を送達することにより、接着性接合境界面の急速な破壊をもたらし、かつ天然爪からの迅速かつ穏やかな除去を大きく促進する解凍効果が生じる。
【0024】
本発明のさらに他の態様および利点は、単に本発明を実施する上で企図される最良の形態の例証として本発明の好ましい実施形態を示し記載した以下の詳細な説明から当業者に直ちに明らかになる。明らかとなるように、本発明は、他の実施形態および異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、本発明から逸脱することなく、様々な明らかな点において変更が可能である。したがって本記載は実際には、限定的ではなく、例示的であると考えられなければならない。
【0025】
(図面の簡単な説明)
該当なし。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好ましい実施形態の詳細な説明
爪コーティングは一般に、ケラチン爪表面に塗布される材料の層からなる。従来技術のコーティングは、少なくとも二つのメカニズムにより爪に損傷を与えうる。第一に、爪に対する材料の適切な接着には、爪表面を粗くするための研磨が必要となりうる。そして第二に、材料の除去には、損傷を与える可能性のある溶媒への長時間の曝露および/または爪表面のさらなる研磨が必要となりうる。
【0027】
本開示の実施形態は、有機溶媒溶解性樹脂を含むネットワークにより相互貫通された三次元(3−D)熱硬化性格子を含む爪コーティングを提供する。本開示の一態様によれば、3−D熱硬化性格子は、従来の人工爪の接着性、強度、および耐引っかき性の向上を提供する。一実施形態によれば、ベースコートと本トップコート層との間に着色層が挿入されうる。
【0028】
液体組成物の一実施形態は、重合組成物に強度および耐引っかき性の増加を提供する反応性モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーを含む。ある実施形態では、このような反応性モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーは、(メタ)アクリレートでありうる。ポリマー技術の当業者に知られているように、(メタ)アクリレートという用語は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを包含する。
【0029】
一態様によれば、このような反応性モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーは、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、EMA、THFMA、ピロメリト酸二無水物ジ(メタ)アクリレート、ピロメリト酸二無水物グリセリルジメタクリレート、ピロメリト酸ジメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルマレエート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/スクシネート、1,3−グリセロールジメタクリレート/スクシネート付加物、フタル酸モノエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEMA)、およびその混合物からなる群より選択されうる。一態様によれば、このような反応性モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーは、酸性官能基を有しうる。一態様によれば、重合組成物に接着性増加を提供するモノマー、オリゴマーまたはポリマーは、約0〜約50wt%存在する。
【0030】
液体組成物のある実施形態は、境界面結合に有機溶媒に対する感応性を与えることにより「解凍」特性を与える少なくとも一つのモノマーを含む。
【0031】
一態様によれば、少なくとも一つのモノマーは、ポリプロピレングリコール−4−モノメタクリレート(PPG4モノメタクリレート)でありうる。一態様によれば、適切なモノマーは、PPGまたはポリエチレングリコール(PEG)ファミリーの任意のアクリレート化またはメタクリレート化モノマーを含みうる。一態様によれば、「解凍」モノマーは、約0〜約70重量%(wt%)存在する。
【0032】
本開示の一実施形態は、接着性、粘性、摩耗および耐久性の向上を提供するメタクリレートモノマーを含む重合可能液体組成物を提供する。ある実施形態では、メタクリレートモノマーは、テトラヒドロフルフラールメタクリレートである。他の実施態様においては、テトラヒドロフルフラールメタクリレートのいくつかのまたは全てが、エチルメタクリレート(EMA)、HPMA、およびピロメリト酸二無水物グリセリルジメタクリレート、ならびに類似の(メタ)アクリレートモノマー等の他のモノマーを含むがこれに限られないモノマーで置換されうる。メタクリレートモノマーは、約0〜約70wt%存在しうる。
【0033】
本開示の重合可能液体組成物のある実施形態は、重合製品に可撓性および強度をもたらしうるウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含みうる。ある実施形態では、ウレタンメタクリレートが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、約0〜約50wt%存在しうる。ある実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートは、約100〜約20,000の分子量(グラム/モル)を有しうる。ある実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートは、約300〜約15,000の分子量を有しうる。ある実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートは、約500〜約13,000の分子量を有しうる。ある実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートは、約500〜約6,000の分子量を有しうる。
【0034】
本開示のある実施形態においては、3−D熱硬化性格子は、空隙のネットワークにより相互貫通される。反応成分の硬化の際には、これらの空隙のいくつかが非反応性の有機溶媒溶解性樹脂で満たされる。爪カバーを除去することが所望されるときには、溶媒溶解性樹脂を溶解する溶媒に、ポリマーが曝露される。樹脂の溶解により、溶媒で満たす空隙のネットワークが残される。空隙により、熱硬化性物質の内部へ、またポリマー/爪境界面へと溶媒が導かれる。
【0035】
本開示の重合可能液体組成物のある実施形態は、非反応性の溶媒溶解性ポリマーを含みうる。一態様によれば、非反応性の溶媒溶解性ポリマーは、セルロースエステルである。特定の態様によれば、非反応性の溶媒溶解性ポリマーは、セルロースアセテートアルキレートである。より特定の態様によれば、非反応性の溶媒溶解性ポリマーは、セルロースアセテートブチレートまたはセルロースアセテートプロピオネートである。非反応性の溶媒溶解性ポリマーは、任意の許容可能なポリマーの混合物でありうる。さらなる態様によれば、非反応性の溶媒溶解性ポリマーは、約0.1〜約75wt%存在しうる。
【0036】
本製剤のある実施形態は、ポリビニルブチラールおよび/またはトシルアミドホルムアルデヒド樹脂等であるがこれに限られない樹脂を任意に含みうる。このような樹脂は、膜形成剤、接着促進剤、および除去補助剤として作用しうる。これらの樹脂は、溶媒の吸収および移動のためのチャネルを作製するために抽出されうる、溶媒溶解性の相互貫通樹脂としても認められうる。
【0037】
理論に拘束されるものではないが、本発明の爪カバーの相対的な除去容易性は、コーティング内部への溶媒の進入を促進することにより増加した。従来の重合爪コーティングは、有機溶媒への長時間(30〜90分)の曝露により弱められる。溶媒は、熱硬化性物質の外側表面および端部にゆっくり浸透し、最終的にはコーティングを膨張させる。膨張は最終的にマトリックス構造体全体を弱めるとともに、爪表面に対する接着を崩壊させる。弱く付着された爪コーティングでも、溶媒の浸透性および速やかな除去を向上させるために研磨が必要となりうる。しかし、溶媒が熱硬化性物質を通って拡散する速度が遅いことにより、膨張の速度が制限される。
【0038】
本発明は、有機溶媒溶解性チャネルおよび内包物のネットワークにより相互貫通された3−D熱硬化性物質を提供する。有機溶媒に曝露されると、セルロースエステルまたは他の非反応性の有機溶媒溶解性ポリマーが溶解され、コーティングから浸出する。この結果は、熱硬化性物質の全体に広がった一連の溶媒到達可能通路である。これらの条件下では、溶媒が遅い拡散速度にもはや制限されずに熱硬化性物質の内部を侵しうる。
【0039】
本発明の組成物は、化学線により重合可能でありうる。化学線は、紫外線(UV)放射でありうる。UV放射は、約320〜420ナノメートルの波長を特徴としうる。
【0040】
液体組成物が表面、特にポリマー表面に塗布された後、液体がUV開始性フリーラジカル重合法により硬化されうる。重合技術の当業者は、本発明の用途に適切な光開始剤を容易に決定できる。以下に記載するのは、本発明の目的に適切な非制限的な代表的な光開始剤である。
【0041】
適切な光開始剤には、ベンゾイルジフェニルホスフィネート、フェニルケトン、およびジメチルケタールが含まれるがこれに限られない。
【0042】
非限定的な適切な光開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル亜リン酸(phosphorous)誘導体である。適切な誘導体は、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネートであり、Lucirin(登録商標)TPO−L(BASF Aktiengesellschaft,Ludwigshafen,DE)の商用名で入手できる。別の非限定的な適切な誘導体は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドであり、Lucerin(登録商標)(BASF)の商用名でまたはGenocure(登録商標)TPO(Rahn)として入手できる。2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート光開始剤は、約0%〜約20wt%存在しうる。
【0043】
非限定的な適切なフェニルケトンは、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンであり、Igracure(登録商標)184(Ciba)の商用名で入手でき、約0〜約20wt%存在しうる。
【0044】
非限定的な適切なジメチルケタールは、ベンジルジメチルケタール(BDK)であり、FIRSTCURE(登録商標)BDK(Albemarle,Baton Rouge,LA,US)の商用名で入手でき、約0〜約20wt%存在しうる。
【0045】
トップコートの開示の実施形態は、従来の顔料および/または染料を最大1wt%含みうる。ある実施形態は、光輝顔料を最大10wt%含みうる。
【0046】
従来の熱硬化性爪コーティングは、100%固体を含み、非反応性溶媒を含まない。本開示の重合可能液体組成物は、少なくとも一つの非反応性溶媒をさらに含む。適切な非反応性溶媒は、室温で直ちに揮発性となり、残りの成分の良溶媒である。塗布の際には、非反応性溶媒は直ちに揮発し、爪コーティング全体にわたり多孔性の増した領域が残る。これらの多孔性領域は後に、アセトンでありうるリムーバ溶媒の進入を促進する。
【0047】
適切な非反応性溶媒は、ケトン、アルキルアセテート、アルコール、アルカン、アルケン、およびその混合物からなる群より選択されうる。適切な非反応性溶媒は、アセトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、イソプロピルアルコール、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、およびその混合物からなる群より選択されうる。特に適切な非反応性溶媒は、アセトンである。典型的には、非反応性溶媒または非反応性溶媒の混合物は最大約70重量%含まれる。本リストは、適切な非反応性溶媒の例示であり、非限定的である。
【0048】
本製剤のある実施形態は、強度および耐引っかき性特性を微調整するために、(メタ)アクリル酸モノマーおよび/またはポリマーを任意に含みうる。このような(メタ)アクリレートの非限定的な例には、モノまたはポリ(メタ)アクリレート、HPMA、HEMA、ピロメリト酸二無水物ジ(メタ)アクリレート、ピロメリト酸二無水物グリセリルジメタクリレート、ピロメリト酸ジメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルマレエート(methacroyloxyethyl maleate)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/スクシネート、1,3−グリセロールジメタクリレート/スクシネート付加物、フタル酸モノエチルメタクリレート、エチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、PEG−4ジメタクリレート、PPGモノメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヒドロキシエチル(hydoxyethyl)メタクリレート、イソプロピリデンジフェニルビスグリシジルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ウレタンメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(dimethacylate)が含まれる。
【0049】
本製剤のある実施形態は、ポリビニルブチラールおよび/またはトシルアミドホルムアルデヒド樹脂等であるがこれに限られない樹脂を任意に含みうる。このような樹脂は、膜形成剤、接着促進剤、および除去補助剤として作用する。
【0050】
本製剤のある実施形態は、アジピン酸ジイソブチル等であるがこれに限られない可塑剤を任意に含みうる。可塑剤は、後に形成されるポリマーの、UV放射、太陽光、および空気への曝露後の脆弱性による影響を最小化するために作用する。可塑剤は、除去時間をわずかに短縮することも認められる。可塑剤は、0〜約25wt%存在しうる。
【0051】
従来の爪コーティングと比較して、本開示は、耐久性着色層がコーティングの破壊を伴わずに2週間を上回る期間天然爪に接着するのを可能にするという大きな利点に関する。従来のコーティングとは対照的に、本開示は、天然爪を損傷しないUVゲル系に関する。塗布プロセスに爪の研磨処理が必要なく、除去のプロセスにこのトップコート層の研磨処理は必要ない。さらに、従来の系と比較して、本開示は、系全体の除去を20分未満で達成する、より急速に除去可能な(メタ)アクリレートポリマー系に関する。
【0052】
産業上の利用性
本発明は、丈夫で、耐久性があり、半耐薬品性であり、半耐引っかき性であり、なおかつ研磨を必要とせずに爪コーティングを除去する手段を提供する、美容保護爪トップコートを作製するための組成物および方法を提供することに、産業上の利用可能性を有する。
【実施例】
【0053】
実施例1:耐薬品性試験
耐薬品性を比較するために、本開示によるトップコート製剤を、市販のマニキュアトップコート製剤および市販のエンハンスメントタイプのトップコート製剤と比較した。メチルエチルケトンの代わりにアセトンを用いたことを除いては、従来のMEK往復摩擦試験を用いた。ガラス顕微鏡スライドに各製剤の薄膜を調製した。各膜を、5ミルの湿潤厚に形成した。市販のエンハンスメントタイプの製剤および本開示の製剤を、Brisa(商標)ランプを用いてUV光曝露により硬化させた。非常に薄い、未重合粘着性表層を、99wt%のイソプロパノールを用いて拭いて乾燥させた。マニキュア製剤は、硬化しなかった。すべての試験片を、周囲照明および温度の条件下で24時間経過させた。時間経過後、各サンプルを99wt%アセトンに浸漬した綿パッドで個別に摩擦した。マニキュア製剤は、二回の摩擦で完全に除去された。本発明の製剤は、二回の摩擦によりくすんだが、少なくとも150回の摩擦の間、完全性を維持した。エンハンスメント製剤は、少なくとも200回の摩擦の間、輝きおよび完全性を維持した。
【0054】
実施例2:鉛筆硬度試験
耐引っかき性を試験するために、実施例1のように調製した試験サンプルをへこませた鉛筆の最も低い「H」番号を記録した。試験膜を破ることができる鉛筆の最も低い「H」番号も記録した。マニキュア製剤は3Hおよび4Hの鉛筆により、それぞれへこみ、および破れた。本開示の製剤は、3Hおよび6Hの鉛筆により、それぞれへこみ、および破れた。エンハンスメント製剤は、試験したいずれの鉛筆によっても破れず、および4Hの鉛筆によりへこんだ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの重合可能化合物と;
少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーと;
少なくとも一つのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと;
少なくとも一つの非反応性溶媒と;
を含む、重合可能組成物であって、重合促進剤への曝露の際に、前記重合可能組成物が、内部に画定された空隙を有するアクリル熱硬化性物質に硬化する、重合可能組成物。
【請求項2】
前記少なくとも一つの重合可能化合物が、(メタ)アクリレートである、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項3】
少なくとも一つのウレタン(メタ)アクリレートをさらに含む、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項4】
前記少なくとも一つのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、およびその混合物からなる群より選択される化合物である、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項5】
前記重合促進剤が、熱放射、可視光、UV放射、電子ビーム放射、アミン、ペルオキシド、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項6】
前記少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーが、セルロースエステルである、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項7】
前記セルロースエステルが、セルロースアセテートアルキレートである、請求項2に記載の重合可能組成物。
【請求項8】
前記セルロースアセテートアルキレートが、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、およびその混合物からなる群より選択される、請求項3に記載の重合可能組成物。
【請求項9】
前記少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーが、約5〜約90wt%存在する、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項10】
前記少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーが、約20〜約80wt%存在する、請求項5に記載の重合可能組成物。
【請求項11】
前記少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーが、約30〜約70wt%存在する、請求項5に記載の重合可能組成物。
【請求項12】
前記(メタ)アクリレートが、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチルメタクリレート、THFMA、ピロメリト酸二無水物ジ(メタ)アクリレート、ピロメリト酸二無水物グリセリルジメタクリレート、ピロメリト酸ジメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルマレエート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/スクシネート、1,3−グリセロールジメタクリレート/スクシネート付加物、フタル酸モノエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、およびその混合物からなる群より選択される、請求項2に記載の重合可能組成物。
【請求項13】
接着促進性(メタ)アクリレートをさらに含む、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項14】
前記接着促進性(メタ)アクリレートが、テトラヒドロフルフラールメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ピロメリト酸二無水物グリセリルジメタクリレート、およびその混合物からなる群より選択される、請求項13に記載の重合可能組成物。
【請求項15】
ピロメリト酸グリセリルジメタクリレートをさらに含む、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項16】
少なくとも一つの着色剤をさらに含む、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項17】
前記少なくとも一つの着色剤が、最大約10wt%存在する、請求項16に記載の重合可能組成物。
【請求項18】
前記少なくとも一つの着色剤が、顔料および染料からなる群より選択される、請求項16に記載の重合可能組成物。
【請求項19】
前記少なくとも一つの少なくとも一つのウレタン(メタ)アクリレートが、約100〜約20,000の分子量(グラム/モル)を有する、請求項3に記載の重合可能組成物。
【請求項20】
前記少なくとも一つの少なくとも一つのウレタン(メタ)アクリレートが、約200〜約10,000の分子量を有する、請求項19に記載の重合可能組成物。
【請求項21】
前記少なくとも一つの少なくとも一つのウレタン(メタ)アクリレートが、約300〜約5,000の分子量を有する、請求項19に記載に記載の重合可能組成物。
【請求項22】
前記少なくとも一つの少なくとも一つのウレタン(メタ)アクリレートが、約300〜約1,000の分子量を有する、請求項19に記載の重合可能組成物。
【請求項23】
前記少なくとも一つの非反応性溶媒が、ケトン、アルキルアセテート、アルコール、アルカン、アルケン、およびその混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項24】
前記少なくとも一つの非反応性溶媒が、アセトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、イソプロピルアルコール、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、およびその混合物からなる群より選択される、請求項23に記載の重合可能組成物。
【請求項25】
前記少なくとも一つの非反応性溶媒が、アセトンである、請求項24に記載の重合可能組成物。
【請求項26】
前記少なくとも一つの非反応性溶媒が、最大約70重量%含まれる、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項27】
少なくとも一つの光開始剤をさらに含む、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項28】
前記少なくとも一つの光開始剤が、ベンゾイルフェニルホスフィネート、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルケタール、およびその混合物からなる群より選択される、請求項27に記載の重合可能組成物。
【請求項29】
前記少なくとも一つの光開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、およびその混合物からなる群より選択される、請求項28に記載の重合可能組成物。
【請求項30】
前記少なくとも一つの光開始剤が、最大約20wt%存在する、請求項27に記載の重合可能組成物。
【請求項31】
前記空隙の少なくとも一部が、前記少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーを含む、請求項1に記載の重合可能組成物。
【請求項32】
内部に画定された複数の空隙を有するアクリル熱硬化性物質であって、前記空隙の少なくとも一部が、少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーを含む、アクリル熱硬化性物質。
【請求項33】
内部に画定された複数の空隙を有するアクリル熱硬化性物質であって、前記空隙の少なくとも一部が、少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーの周りに形成される、アクリル熱硬化性物質。
【請求項34】
内部に画定された複数の熱可塑性内包物を有するアクリル熱硬化性物質。
【請求項35】
請求項39に記載の複数の熱可塑性内包物を有する重合熱硬化性物質であって;前記アクリル熱硬化性物質が、
少なくとも一つの重合可能化合物と;
少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーと;
少なくとも一つのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと;
少なくとも一つの非反応性溶媒と
を含む重合可能組成物の反応生成物である、重合熱硬化性物質。
【請求項36】
前記熱可塑性内包物が、前記少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーを含む、請求項35に記載の重合熱硬化性物質。
【請求項37】
内部に画定された複数の熱可塑性内包物を有する重合熱硬化性物質を作製する方法であって、
重合可能液体組成物を提供するステップと;
前記重合可能液体組成物を重合促進剤に曝露するステップと;
を含み、前記重合可能液体組成物が、
少なくとも一つの重合可能化合物と;
少なくとも一つの非反応性の溶媒溶解性ポリマーと;
少なくとも一つのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと;
少なくとも一つの非反応性溶媒と;
を含む、方法。

【公表番号】特表2013−506667(P2013−506667A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532090(P2012−532090)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/047169
【国際公開番号】WO2011/043879
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(500127553)クリエイティブ ネイル デザイン インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】