説明

人数検知装置

【課題】エレベータの乗車人数を精度良く推定する。
【解決手段】計測手段11は所定のサンプリング周期で閉空間の積載重量を計測し、時間差分データ作成手段12は計測された積載重量の差分間隔毎の変化を演算して時間差分データを作成し、波形観測手段13は、作成された時間差分データの時系列変化と所定の標準モデルの時間差分データの時系列変化を比較して、乗車人数を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエレベータの乗車人数を検知するための人数検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータによる防犯機能の向上を図る上で、エレベータへの乗車人数、エレベータからの降車人数、エレベータ内の在場人数を精度よく検知することは重要である。従来の人数検知装置として、例えば、特許文献1では積載重量を平均体重値で割った値を人数としている。また、特許文献2では、箱の積載重量を停止中に継続的に計測し、計測データを濾波し、箱の積載重量データに基づきエレベータの箱内の乗客の移送人数を判定するもので、停止中に生じる階段状の積載重量の変化を記録し、エレベータの箱に出入りした人数を階段状変化に基づき判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−56963号公報(第2頁右上段第6行〜第9行)
【特許文献2】特許2597448号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の人数検知装置は以上のように構成されているので、積載重量を平均体重値で割った値を人数とする場合には、実際の乗客の重量と平均体重との差により人数検知精度が劣化するという課題があった。また、積載重量の階段状変化を記録し、積載重量の変化の回数と方向から人数を検知する場合には、積載重量の値は時間軸に対して、平行又は垂直方向に直線的で階段状の変化でなければならないが、実際に乗客が乗降したときの積載重量の値は、時間軸に対して曲線的な変化を示すため、積載重量の波形を、階段状に濾波する手段と併用しなければ、現実的な人数を推定することができないという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、エレベータの乗車人数を、総積載重量を平均体重で割る方法よりも精度良く推定することができると共に、積載重量の変化が階段状でなくとも推定することができる人数検知装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る人数検知装置は、所定のサンプリング周期で閉空間の積載重量を計測する計測手段と、該計測手段により計測された積載重量の差分間隔毎の変化を演算して時間差分データを作成する時間差分データ作成手段と、該時間差分データ作成手段により作成された時間差分データの時系列変化と所定の標準モデルの時間差分データの時系列変化を比較して、上記閉空間の乗車人数を推定する波形観測手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明により、エレベータの乗車人数を、総積載重量を平均体重で割る方法よりも精度良く推定することができると共に、積載重量の変化が階段状でなくとも推定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による人数検知装置の構成を示すブロック図である。
【図2】エレベータの積載重量の時系列変化を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1による人数検知装置の処理を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1による人数検知装置の時間差分データ作成手段が受信する積載重量の時系列変化の一例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1による人数検知装置の時間差分データ作成手段により作成された時間差分データの時系列変化の一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1による人数検知装置の波形観測手段が予め保持している標準モデルの時間差分データの時系列変化を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1による人数検知装置の時間差分データ作成手段により連続乗車の積載重量から作成された時間差分データの時系列変化の一例を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1による人数検知装置の波形観測手段により時間差分データの時系列変化が閾値以上になった回数(乗車人数の推定候補)を閾値毎にカウントした結果の一例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2による人数検知装置の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態2による人数検知装置の処理を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態2による人数検知装置の時間差分データ作成手段により作成された時間差分データの時系列変化の一例を示す図である。
【図12】積載重量と時間差分データの時系列変化の一例を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態3による人数検知装置の構成を示すブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態3による人数検知装置の処理を示すフローチャートである。
【図15】この発明の実施の形態3による人数検知装置のドア制御手段によるエレベータのドアの開き方の制御を説明する図である。
【図16】この発明の実施の形態4による人数検知装置の構成を示すブロック図である。
【図17】この発明の実施の形態4による人数検知装置の処理を示すフローチャートである。
【図18】信号ノイズを含む積載重量と時間差分データの時系列変化の一例を示す図である。
【図19】この発明の実施の形態5による人数検知装置の構成を示すブロック図である。
【図20】この発明の実施の形態5による人数検知装置の処理を示すフローチャートである。
【図21】この発明の実施の形態5による人数検知装置の時間差分データ作成手段により作成された時間差分データの時系列変化の一例を示す図である。
【図22】この発明の実施の形態5による人数検知装置の時間差分データ作成手段により作成されノイズ除去手段により信号ノイズが除去された時間差分データの時系列変化の一例を示す図である。
【図23】この発明の実施の形態6による人数検知装置の構成を示すブロック図である。
【図24】この発明の実施の形態6による人数検知装置の処理を示すフローチャートである。
【図25】この発明の実施の形態7による人数検知装置の構成を示すブロック図である。
【図26】この発明の実施の形態7による人数検知装置の処理を示すフローチャートである。
【図27】この発明の実施の形態8による人数検知装置の構成を示すブロック図である。
【図28】この発明の実施の形態8による人数検知装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による人数検知装置1の構成を示すブロック図である。この人数検知装置1は、計測手段11、時間差分データ作成手段12及び波形観測手段13を備えており、各手段はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
【0010】
計測手段11は、例えばエレベータの重量センサであり、予め決められた所定のサンプリング周期でエレベータの積載重量を計測する。時間差分データ作成手段12は、計測手段11により計測された積載重量の差分間隔毎の変化を演算して時間差分データを作成する。波形観測手段13は、時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データの時系列変化と標準モデルの時間差分データの時系列変化又は所定の閾値を比較して、エレベータに乗車する乗車人数、エレベータから降車する降車人数及びエレベータ内の在場人数を推定する。
【0011】
図2はエレベータの積載重量の時系列変化を示す図であり、横軸は時刻t(i)を示し、縦軸は時刻t(i)に計測された積載重量W(i)を示している。図1(a)はエレベータに2人が連続乗車したときの積載重量の時系列変化を示し、2人が連続乗車した場合には、1人目が乗車したことによる重量変化と、2人目が乗車したことによる重量変化の間隔が短い。
【0012】
このとき、上記特許文献2では、積載重量の変化の方向と回数からエレベータの乗車人数及び降車人数を算出しているので、図1(a)に示す積載重量W(i)の波形を図1(b)又は図1(c)に示すように、直線的で階段状の変化を示す波形へと濾波しなければならないが、図1(b)と図1(c)では推定される人数に違いが生じるため、正確に濾波しなければならない。図1(a)の場合は、2人が連続乗車したときの積載重量の時系列変化であるため、図1(c)へ濾波することが正解となるが、1人が乗車した場合であっても図1(a)のような積載重量の波形となる可能性があるため、場合によっては図1(b)へ濾波することが正解となることもある。このように、上記特許文献2の方法では、乗車人数又は降車人数を推定するために正確に積載重量を濾波することは困難となる。
【0013】
そこで、この実施の形態1では、図1に示す構成により、所定のサンプリング周期で計測された積載重量の差分間隔毎の変化を演算して時間差分データを作成し、作成された時間差分データの時系列変化と標準モデルの時系列変化又は所定の閾値とを比較して、乗車人数及び降車人数を推定している。
【0014】
次に動作について説明する。
図3はこの発明の実施の形態1による人数検知装置1の処理を示すフローチャートである。ステップST101において、計測手段11は予め決められた所定の計測開始条件が満たされると計測を開始する。この計測手段11の計測開始条件としては、例えば予め決められた所定の時刻がある。ステップST102において、計測手段11は所定のサンプリング周期でエレベータの積載重量W(i)を計測する。ステップST103において、計測手段11は予め決められた所定の計測終了条件が満たされると計測を終了する。この計測手段11の計測終了条件としては、例えば予め決められた所定の時刻がある。また、計測終了条件として、計測開始時刻からの予め決められた所定の経過時間としても良い。
【0015】
ステップST104において、時間差分データ作成手段12は、計測手段11から計測終了信号を受けて、計測開始から計測終了までの間に計測手段11により計測された積載重量W(i)を計測手段11から受信する。
【0016】
図4は時間差分データ作成手段12が受信する積載重量W(i)の時系列変化の一例を示す図であり、ここでは、エレベータに2人が乗車後、2人が降車したときのグラフの一例を示している。図4において、横軸は時刻t(i)を示し、縦軸は時刻t(i)に計測された積載重量W(i)を示している。ここで、iは計測手段11のサンプリング番号であり、t(i)−t(i−1)は、計測手段11のサンプリング周期となる。
【0017】
そして、図3のステップST104において、時間差分データ作成手段12は、受信した積載重量W(i)から、次の式(1)を利用して、積載重量W(i)の差分間隔毎の変化を演算して時間差分データW_diff(i)を作成する。
W_diff(i)=(W(i+Δi)−W(i))/(Δi) (1)
ここで、Δiは差分間隔を表す。
【0018】
図5は時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)の時系列変化の一例を示す図である。図5において、横軸は時刻t(i)を示し、縦軸は時間差分データW_diff(i)を示している。図5において、上方向に凸の波形は、積載重量が増加したことを意味し、エレベータ内に人が乗車したことを意味する。逆に、下方向に凸の波形は、積載重量が減少したことを意味し、エレベータ内から人が降車したことを意味する。図5に示す閾値A〜Fについては後述する。
【0019】
図6は一人が乗車したときのエレベータの積載重量から作成された標準モデルの時間差分データW_m(i)の時系列変化を示す図である。
図3のステップST105において、波形観測手段13は、時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)を受信し、受信した時間差分データW_diff(i)の時系列変化が上方向に凸の波形となっている場合は、例えば、予め保持している図6に示す標準モデルの時間差分データW_m(i)の値を時間軸方向に走査して、受信した時間差分データW_diff(i)の時系列変化と標準モデルの時間差分データW_m(i)の時系列変化との類似度を表す次の式(2)に示す正規化相互相関関数z(τ)を演算する。
【0020】


ここで、τは基準となる時刻t(i)からのずれ量を示し、バーW_mは標準モデルの時間差分データW_m(i)の平均を示し、バーW_diffは受信した時間差分データW_diff(i)の平均を示す。
【0021】
そして、ステップST105において、波形観測手段13は演算した相互相関関数z(τ)の値が予め保持している所定の閾値S_overlap以上となった回数を乗車人数とする。
【0022】
一方、ステップST105において、波形観測手段13は、受信した時間差分データW_diff(i)の時系列変化が下方向に凸の波形となっている場合は、例えば、予め保持している図6に示す標準モデルの時間差分データW_m(i)の値を負にして時間軸方向に走査して、受信した時間差分データW_diff(i)の時系列変化と標準モデルの時間差分データW_m(i)の時系列変化との類似度を表す上記式(2)に示す正規化相互相関関数z(τ)を演算し、演算した相互相関関数z(τ)の値が予め保持している所定の閾値S_overlap以上となった回数を降車人数とする。
【0023】
波形観測手段13が上記のように標準モデルの時間差分データW_m(i)を使用して乗車人数及び降車人数を推定する方法を人数推定方法(一)とする。
【0024】
そして、ステップST105において、波形観測手段13は、エレベータ内の在場人数を次の式(3)を用いて求める。
現在のエレベータ内の在場人数=戸開前の在場人数+乗車人数−降車人数 (3)
なお、上記式(3)において、戸開前の在場人数の初期値は、予め波形観測手段13に保持されているものとする。
【0025】
また、ステップST105において、波形観測手段13は、上記人数推定方法(一)とは異なる次の人数推定方法(二)で乗車人数と降車人数を推定しても良い。
ステップST105において、波形観測手段13は、受信した時間差分データW_diff(i)の0以上の値において、所定の位置に閾値を設定し、時間差分データW_diff(i)の時系列変化が設定した閾値以上になった回数を乗車人数とする。
例えば、図5のCの位置に閾値を設定した場合には、時間差分データW_diff(i)の時系列変化が閾値C以上になった回数は2回であり、波形観測手段13は乗車人数を2人と推定する。
【0026】
一方、ステップST105において、波形観測手段13は、受信した時間差分データW_diff(i)の0以下の値において、所定の位置に閾値を設定し、時間差分データW_diff(i)の時系列変化が閾値以下になった回数を降車人数とする。
【0027】
この人数推定方法(二)は上記の人数推定方法(一)のようにモデル波形W_m(i)を予め保持しておく必要がなく、モデル波形W_m(i)との類似度を演算する必要がないので、使用する演算リソース量を少なくすることができる。
【0028】
図7は時間差分データ作成手段12により図2(a)に示す連続乗車の積載重量から作成された時間差分データW_diff(i)の時系列変化の一例を示す図である。
ステップST105において、波形観測手段13は、図7に示す時間差分データW_diff(i)の0以上の例えばBの位置に閾値を設定した場合には、時間差分データW_diff(i)の時系列変化が閾値B以上になった回数は2回であり、乗車人数を2人と推定する。
【0029】
一方、乗客が連続降車した場合にも、波形観測手段13は同様にして降車人数を推定できる。
このように、連続乗車又は連続降車でも、この人数推定方法(二)により、乗車人数及び降車人数を推定することができる。
【0030】
さらに、ステップST105において、波形観測手段13は、上記人数推定方法(一)及び上記人数推定方法(二)とは異なる、次の人数推定方法(三)により乗車人数及び降車人数を推定しても良い。
【0031】
ステップST105において、波形観測手段13は、受信した時間差分データW_diff(i)の0以上の値において所定の閾値を複数設定し、時間差分データW_diff(i)の時系列変化が設定した閾値以上になった回数を閾値毎にカウントして、最も多くカウントされた回数を乗車人数と推定し、受信した時間差分データW_diff(i)の0以下の値において所定の閾値を複数設定し、時間差分データW_diff(i)の時系列変化が設定した閾値以下になった回数を閾値毎にカウントして、最も多くカウントされた回数を降車人数と推定する。
【0032】
例えば、波形観測手段13は、図5に示す時間差分データW_diff(i)を受信した場合に、図5に示す時間差分データW_diff(i)の0以上の値において、例えば閾値A,B,C,D,E,Fのように、所定の閾値を複数設定し、時間差分データW_diff(i)の時系列変化が設定した閾値以上になった回数、すなわち乗車人数の推定候補を閾値毎にカウントする。
【0033】
図8は時間差分データW_diff(i)の時系列変化が閾値以上になった回数(乗車人数の推定候補)を閾値毎にカウントした結果の一例を示す図である。図5において、閾値Aを超えるのは1回(1人)、閾値Bを超えるのは2回(2人)、閾値Cを超えるのは2回(2人)、閾値Dを超えるのは2回(2人)、閾値Eを超えるのは3回(3人)、閾値Fを超えるのは2回(2人)であり、図8に示すように、乗車人数の推定候補2人のカウント値が4で最も多いので、波形観測手段13は乗車人数を2人と推定する。
【0034】
一方、乗客が降車した場合にも、波形観測手段13は、図5に示す時間差分データW_diff(i)の0以下の値において、所定の閾値を複数設定することにより、同様にして降車人数を推定できる。
この人数推定方法(三)は、人数推定方法(一)よりも演算リソース量が少なく、人数推定方法(二)よりも精度良く乗車人数と降車人数を推定できる。
【0035】
また、波形観測手段13は、乗客が連続乗車した場合の図7に示す時間差分データW_diff(i)を受信した際には、図7に示す時間差分データW_diff(i)の0以上の値において、例えば閾値A,B,C,D,E,Fのように、所定の閾値を複数設定し、時間差分データW_diff(i)の時系列変化が設定した閾値以上になった回数、すなわち乗車人数の推定候補を閾値毎にカウントする。
【0036】
図7において、閾値Aを超えるのは2回(2人)、閾値Bを超えるのは2回(2人)、閾値Cを超えるのは3回(3人)、閾値Dを超えるのは2回(2人)、閾値Eを超えるのは2回(2人)、閾値Fを超えるのは1回(1人)であり、上記図8に示すカウント結果となる。図8に示すように、乗車人数の推定候補2人のカウント値が4で最も多いので、波形観測手段13は乗車人数を2人と推定する。
【0037】
一方、乗客が連続降車した場合にも、波形観測手段13は同様にして降車人数を推定できる。
このように、連続乗車又は連続降車でも、この人数推定方法(三)により、乗車人数及び降車人数を推定することができる。
【0038】
なお、この実施の形態1では、計測手段11として、主として既設のエレベータの重量センサを例に説明しているが、既設のエレベータの重量センサでなくとも良い。出入口の確保された閉空間において、その閉空間の積載重量を計測できる人数検知装置1の専用の重量センサを計測手段11としても、この実施の形態1の方法により閉空間への入場人数、退場人数及び在場人数を推定することができる。しかし、既設のエレベータの重量センサを計測手段11として活用することにより、この発明の人数検知装置1の導入コストを低減できるという効果がある。
【0039】
以上のように、この実施の形態1によれば、時間差分データ作成手段12が計測手段11により所定のサンプリング周期で計測された積載重量の差分間隔毎の変化を演算して時間差分データを作成し、波形観測手段13が、時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データの時系列変化と標準モデルの時系列変化又は所定の閾値とを比較して、乗車人数、降車人数及び在場人数を推定することにより、エレベータの乗車人数、降車人数及び在場人数を、総積載重量を平均体重で割る方法よりも精度良く推定することができると共に、積載重量の変化が階段状でなくとも推定することができるという効果が得られる。
【0040】
また、この実施の形態1によれば、乗客の連続乗車及び連続降車の場合にも、乗車人数、降車人数及び在場人数を推定することができるという効果が得られる。
【0041】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、積載重量W(i)とその時間差分データW_diff(i)によって乗車人数及び降車人数を推定しているが、図3に示すフローチャートでは、波形観測手段13が乗車人数及び降車人数を推定するのは、計測手段11にて所定の計測終了条件が満たされた後である。このため、乗車人数及び降車人数は所定の計測終了条件が満たされた後にならないとわからず、乗客の乗車及び降車直後に乗車人数及び降車人数を推定できない。そこで、この実施の形態2では、乗客の乗車及び降車直後に乗車人数及び降車人数を推定する方法について示す。
【0042】
図9はこの発明の実施の形態2による人数検知装置1の構成を示すブロック図である。この人数検知装置1は、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13及び処理単位決定手段14を備えており、各手段はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
【0043】
図9において、処理単位決定手段14は、差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)を逐次的に受信し、波形観測手段13により人数を推定する際の1回の処理単位分の時間差分データW_diff(i)が作成されたか否かを判断することにより、波形観測手段13によって乗車人数及び降車人数を推定する際のデータの処理単位を動的に決定する。なお、計測手段11、時間差分データ作成手段12及び波形観測手段13は、上記実施の形態1の図1に示す構成と同じである。
【0044】
次に動作について説明する。
図10はこの発明の実施の形態2による人数検知装置1の処理を示すフローチャートである。ステップST201において、計測手段11は所定の計測開始条件が満たされると計測を開始する。この計測手段11の計測開始条件としては、例えば所定の時刻がある。ステップST202において、計測手段11はエレベータの積載重量を計測する。
【0045】
ステップST203において、計測手段11は、所定の計測終了条件が満たされたか否かを判断する。ステップST203で、所定の計測終了条件が満たされていない場合にはステップST204に進み、所定の計測終了条件が満たされた場合には、ステップST207において、計測手段11は計測を終了する。計測手段11の計測終了条件としては、例えば所定の時刻がある。また、計測終了条件として、計測開始からの所定の経過時間としても良い。
【0046】
ステップST204において、時間差分データ作成手段12は、計測手段11により計測された積載重量を逐次的に受信し、上記式(1)を利用して、図5に示すような時間差分データW_diff(i)を逐次的に作成する。
【0047】
ステップST205において、処理単位決定手段14は、差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)を逐次的に受信し、波形観測手段13により人数を推定する際の1回の処理単位分の時間差分データW_diff(i)が作成されたか否かを判断する。
【0048】
ここで、波形観測手段13により人数を推定する際の1回の処理単位分の時間差分データW_diff(i)が作成されたかを処理単位決定手段14が判断する方法を示す。
図11は時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)の時系列変化の一例を示す図である。乗客がエレベータから乗車する場合は、図11に示すように時刻t(i)に時間差分データW_diff(i)が0より大きな値を示してから、時刻t(i+x)に時間差分データW_diff(i)が再び0の値を示す。一方、乗客がエレベータから降車する場合は、時刻t(i)にて時間差分データW_diff(i)は0より小さな値を示してから、時刻t(i+x)に時間差分データW_diff(i)が再び0の値を示す。このことから、処理単位決定手段14は、例えば、時刻t(i+x)にて、波形観測手段13が人数を推定する1回の処理単位分の時間差分データW_diff(i)が作成されたと判断する。このときの波形観測手段13が人数を推定する1回の処理単位分の時間差分データW_diff(i)とは、時刻t(i−1)〜t(i+x)までの時間差分データとなる。
【0049】
図10のステップST205において、処理単位決定手段14が、波形観測手段13により人数を推定する際の1回の処理単位分の時間差分データW_diff(i)が作成されたと判断できるまで、ステップST202〜ステップST204の手順を繰り返す。
【0050】
ステップST205にて、処理単位決定手段14は、波形観測手段13により人数を推定する際の1回の処理単位分の時間差分データW_diff(i)が作成されたと判断すると、ステップST206において、波形観測手段13は、時間差分データ作成手段12又は処理単位決定手段14から、人数を推定する際の1回の処理単位分の時間差分データW_diff(i)を受信し、上記実施の形態1にて述べた人数推定方法(一)、(二)、(三)のいずれかの方法により乗車人数及び降車人数を推定する。また、波形観測手段13は、上記式(3)によりエレベータ内の在場人数を求める。
【0051】
なお、この実施の形態2では、図9に示すように、処理単位決定手段14を独立の構成要素として示しているが、時間差分データ作成手段12又は波形観測手段13が処理単位決定手段14を含んで構成しても良い。
【0052】
以上のように、この実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、処理単位決定手段14が波形観測手段13によって乗車人数及び降車人数を推定する際のデータの処理単位を動的に決定することにより、乗客の乗車及び降車直後に、エレベータの乗車人数及び降車人数を推定することができるという効果が得られる。
【0053】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、積載重量W(i)とその時間差分データW_diff(i)によって乗車人数及び降車人数を推定しているが、乗客2人が横に並んで同時にエレベータに乗車すると、図12(a)に示すような積載重量W(i)の時系列変化と図12(b)に示すような時間差分データW_diff(i)の時系列変化となる場合がある。この場合、上記実施の形態1にて述べた波形観測手段13による人数推定方法(一)、(二)、(三)により2人と判定することが難しくなる。そこで、この実施の形態3では、乗車人数及び降車人数の推定精度をさらに向上させる方法について示す。
【0054】
図13はこの発明の実施の形態3による人数検知装置1の構成を示すブロック図である。この人数検知装置1は、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13及びドア制御手段15を備えており、各手段はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
【0055】
図13において、ドア制御手段15は、計測手段11がエレベータの積載重量を計測する際に、エレベータのドアの開き方を乗客が1人ずつ通過するように制御する。なお、計測手段11、時間差分データ作成手段12及び波形観測手段13は、上記実施の形態1の図1に示す構成と同じである。
【0056】
次に動作について説明する。
図14はこの発明の実施の形態3による人数検知装置1の処理を示すフローチャートである。ステップST301において、計測手段11は所定の計測開始条件が満たされると計測を開始する。計測手段11の計測開始条件としては、例えば所定の時刻がある。
【0057】
ステップST302において、ドア制御手段15はエレベータのドアを開ける。図15はドア制御手段15によるエレベータのドアの開き方の制御を説明する図である。ステップST302において、ドア制御手段15は、エレベータのドアを開くときに、図15(a)に示すように乗客が1人ずつしか通過できない幅W_nまでしか開かないようにドアの開き方を制御する。あるいは、ドア制御手段15は、ドアを開くときに、図15(b)に示すように、乗客が1人ずつしか通過できないよう遮蔽物を出現させても良い。1人ずつしか通過できない幅W_nは、予めドア制御手段15に保持されているものとする。上記のようなドアの制御方法をドア制御方法(一)とする。
【0058】
図14のステップST303において、計測手段11はエレベータの積載重量を計測する。ステップST304において、計測手段11は所定の計測終了条件が満たされると計測を終了する。計測手段11の計測終了条件としては、例えば所定の時刻がある。また、計測終了条件として、計測開始からの所定の経過時間としても良い。ステップST305において、ドア制御手段15はエレベータのドアを閉める。図14において、ステップST306及びステップST307の処理は、それぞれ上記実施の形態1の図3に示すステップST104及びステップST105の処理と同一のため、ここでの説明は省略する。
【0059】
なお、ステップST301における計測手段11の計測開始条件として、ドアの戸開信号を使用しても良い。この場合、ステップST302の戸開動作と、ステップST301の計測開始動作の順番は入れ替わる。そして、順番が入れ替わったステップST301では、計測手段11はドア制御手段15から戸開信号を受信して計測を開始する。
【0060】
また、ステップST304における計測手段11の計測終了条件として、ドアの戸閉信号を使用しても良い。この場合、ステップST305の戸閉動作と、ステップST304の計測終了動作の順番は入れ替わる。そして、順番が入れ替わったステップST304では、計測手段11はドア制御手段15から戸閉信号を受信して計測を終了する。
【0061】
また、ステップST302において、ドア制御手段15はドア制御方法(一)とは異なる次のドア制御方法(二)でドアの開き方を制御しても良い。ステップST302において、ドア制御手段15は、エレベータのドアを開くときに、図15(a)に示すように乗客が1人ずつしか通過できない幅まで通常の速度(速度A)で開け、その後、通常の速度よりも遅い速度(速度B)でドアを全開まで開くようにドアの開き方を制御する。また、ステップST302において、ドア制御手段15は、エレベータのドアを開くときに、図15(b)に示すように乗客が1人ずつしか通過できない幅となるように遮蔽物を通常の速度(速度A)で出現させ、その後、通常の速度よりも遅い速度(速度B)で遮蔽物を撤収させるようにドアの開き方を制御する。速度Aと速度Bは、予めドア制御手段15にて決まっているものとする。
1人ずつしか通過できない幅までしか開かないと、大きな荷物を抱えているなどの理由で、ドアを通過することができなかった人も、ドア制御方法(二)では、時間経過後にドアを通過することができるようになる。
【0062】
また、ステップST302において、ドア制御手段15は、ドア制御方法(二)にてドアの開き方を制御している場合、ドア近くにあるドア開ボタンを押すと、速度Bよりも速い速度で、ドアが全開まで開くように制御する、あるいは速度Bよりも速い速度で、遮蔽物を撤収するように制御しても良い。
これにより、ドアが全開するまで待つことなく、ドアを通過することができるようになる。
【0063】
また、ステップST302において、ドア制御手段15は、ドア制御方法(二)にてドアの開き方を制御している場合、ドア近くにあるドア閉ボタンを押すと、ドアが反転して閉まるように制御する、あるいは遮蔽物を出現させて通過できなくなるように制御しても良い。
これにより、外気が寒いなどの理由でドアを早く閉めたり、遮蔽物で外気を早く遮断したいときに、早く閉めることができる。また、ドアを早く閉めて、エレベータを早く出発させることができるようになる。
【0064】
また、ステップST302において、ドア制御手段15はドア制御方法(一)および(二)とは異なる、次のドア制御方法(三)でドアの開き方を制御しても良い。ステップST302において、ドア制御手段15は、エレベータのドアを開くときに、図15(a)に示すように乗客が1人ずつしか通過できない幅まで開け、一定時間経過後にドアを全開まで開ける。また、ステップST302において、ドア制御手段15は、エレベータのドアを開くときに、図15(b)に示すように乗客が1人ずつしか通過できない幅となるように遮蔽物を出現させ、一定時間経過後に遮蔽物を撤収させるようにドアの開き方を制御する。
1人ずつしか通過できない幅までしかドアが開かないと、大きな荷物を抱えているなどの理由で、ドアを通過することができなかった人も、ドア制御方法(三)では、時間経過後にドアを通過することができるようになる。
【0065】
また、ステップST302において、ドア制御手段15は、ドア制御方法(三)にてドアの開き方を制御している場合、ドア近くにあるドア開ボタンを押すと、すぐにドアが全開まで開くように制御する、あるいはすぐに遮蔽物を撤収するように制御しても良い。
これにより、ドアが全開するまで待つことなく、ドアを通過することができるようになる。
【0066】
また、ステップST302において、ドア制御手段15は、ドア制御方法(三)にてドアの開き方を制御している場合、ドア近くにあるドア閉ボタンを押すと、ドアが反転して閉まるように制御する、あるいは遮蔽物を出現させて通過できなくなるように制御しても良い。
これにより、外気が寒いなどの理由でドアを早く閉めたり、遮蔽物で外気を早く遮断したいときに、早く閉めることができる。また、ドアを早く閉めて、エレベータを早く出発させることができるようになる。
【0067】
なお、この実施の形態3では、ドア制御手段15として、既設のエレベータのドア制御器を使用しても良いし、人数検知装置1の専用のドア制御器を使用しても良い。しかし、既設のエレベータのドア制御器をドア制御手段15として活用することにより、この発明の人数検知装置1の導入コストを低減できるという効果がある。
【0068】
以上のように、この実施の形態3によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、計測手段11がエレベータの積載重量を計測する際に、ドア制御手段15がエレベータのドアの開き方を乗客が1人づつ通過するように制御することにより、複数の乗客が横にならんで同時にエレベータに乗降車することを防止し、乗車人数及び降車人数の推定精度をさらに向上させることができるという効果が得られる。
【0069】
実施の形態4.
上記実施の形態2では、積載重量W(i)とその時間差分データW_diff(i)によって乗車人数及び降車人数を推定しているが、乗客2人が横に並んで同時にエレベータに乗車すると、図12(a)に示すような積載重量W(i)の時系列変化と図12(b)に示すような時間差分データW_diff(i)の時系列変化となる場合がある。この場合、上記実施の形態2にて述べた波形観測手段13による人数推定方法(一)、(二)、(三)により2人と判定することが難しくなる。そこで、この実施の形態4では、乗車人数及び降車人数の推定精度をさらに向上させる方法について示す。
【0070】
図16はこの発明の実施の形態4による人数検知装置1の構成を示すブロック図である。この人数検知装置1は、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13、処理単位決定手段14及びドア制御手段15を備えており、各手段はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
【0071】
図16において、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13及び処理単位決定手段14は、上記実施の形態2の図9に示す構成と同じであり、ドア制御手段15は上記実施の形態3の図13に示す構成と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0072】
次に動作について説明する。
図17はこの発明の実施の形態4による人数検知装置1の処理を示すフローチャートである。ステップST401において、計測手段11は所定の計測開始条件が満たされると計測を開始する。計測手段11の計測開始条件としては、例えば所定の時刻がある。
【0073】
ステップST402において、ドア制御手段15は、前記実施の形態3のステップST302と同様に、ドアの開き方を制御する。ステップST403において、計測手段11は積載重量を計測する。
【0074】
ステップST404において、計測手段11は、所定の計測終了条件が満たされた否かを判断し、所定の計測終了条件が満たされていない場合にはステップST405に進み、所定の計測終了条件が満たされた場合には、ステップST409において計測を終了する。計測手段11の計測終了条件としては、例えば所定の時刻がある。あるいは、計測終了条件として、計測開始からの所定の経過時間としても良い。
【0075】
ステップST405において、ドア制御手段15がエレベータのドアを閉める。図17において、ステップST406、ステップST407及びステップST408の処理は、それぞれ上記実施の形態2の図10に示すステップST204、ステップST205及びステップST206の処理と同一のため、ここでの説明は省略する。
【0076】
なお、ステップST401における計測手段11の計測開始条件として、ドアの戸開信号を使用しても良い。この場合、ステップST402の戸開動作と、ステップST401の計測開始動作の順番は入れ替わる。そして、順番が入れ替わったステップST401では、計測手段11はドア制御手段15から戸開信号を受信して計測を開始する。
【0077】
また、ステップST404における計測手段11の計測終了条件として、ドアの戸閉信号を使用しても良い。この場合、ステップST405の戸閉動作と、ステップST404の計測終了動作の順番は入れ替わる。そして、順番が入れ替わったステップST404では、計測手段11はドア制御手段15から戸閉信号を受信して計測を終了する。
【0078】
以上のように、この実施の形態4によれば、上記実施の形態2と同様の効果が得られると共に、ドア制御手段15がエレベータのドアの開き方を乗客が1人ずつ通過するように制御することにより、複数の乗客が横にならんで同時にエレベータに乗降車することを防止し、乗車人数及び降車人数の推定精度をさらに向上させることができるという効果が得られる。
【0079】
実施の形態5.
上記実施の形態1では、積載重量W(i)とその時間差分データW_diff(i)によって乗車人数及び降車人数を推定しているが、積載重量W(i)は図18(a)に示すように信号ノイズを含むことがある。これにより、図18(b)に示すように時間差分データW_diff(i)にも信号ノイズが発生し、乗車人数及び降車人数の推定を誤ることがあるが、この実施の形態5では、この信号ノイズの除去方法について示す。
【0080】
図19はこの発明の実施の形態5による人数検知装置1の構成を示すブロック図である。この人数検知装置1は、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13及びノイズ除去手段16を備えており、各手段はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
【0081】
図19において、ノイズ除去手段16は、時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)に含まれる信号ノイズを除去して波形観測手段13に出力する。なお、計測手段11、時間差分データ作成手段12及び波形観測手段13は、上記実施の形態1の図1に示す構成と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0082】
次に動作について説明する。
図20はこの発明の実施の形態5による人数検知装置1の処理を示すフローチャートである。図20において、ステップST501〜ステップST504までの処理は、上記実施の形態1の図3に示すステップST101〜ステップST104までの処理と同一のため、ここでの説明は省略する。
【0083】
ステップST505において、ノイズ除去手段16は、時間差分データ作成手段12からの時間差分データW_diff(i)を受信し、時間差分データW_diff(i)に含まれる信号ノイズを除去する。
【0084】
図21は時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)の時系列変化の一例を示す図である。ステップST505において、ノイズ除去手段16は、例えば、図21に示すように、乗客が乗車する場合に、時刻t(i)に時間差分データW_diff(i)が0より大きな値を示してから、時刻t(i+x)に時間差分データW_diff(i)が再び0の値を示すと、t(i+x)にて1回の乗車動作が終了したと判断し、時刻t(i)〜t(i+x)の間の時間差分データの値の合計が、閾値W_judge以下の値であった場合、時刻t(i)〜t(i+x)の間の時間差分データW_diff(i)の値は信号ノイズであると判断して0へ変換する。
【0085】
一方、乗客が降車する場合には、時間差分データW_diff(i)がマイナスの値を示すので、ノイズ除去手段16は、例えば、時刻t(i)に時間差分データW_diff(i)が0より小さな値を示してから、時刻t(i+x)に時間差分データが再び0の値を示すと、t(i+x)にて1回の降車動作が終了したと判断する。そして、ノイズ除去手段16は、時刻t(i)〜t(i+x)の間の時間差分データの値の合計の絶対値が、所定の閾値W_judge以下の値であった場合、時刻t(i)〜t(i+x)の間の時間差分データW_diff(i)の値は信号ノイズであると判断して0へ変換する。なお、所定の閾値W_judgeは予めノイズ除去手段16に保持されているものとする。
【0086】
図22は時間差分データ作成手段12により作成されノイズ除去手段16により信号ノイズが除去された時間差分データW_diff(i)の時系列変化の一例を示す図であり、図18(b)に示すような信号ノイズが含まれる時間差分データW_diff(i)は、ノイズ除去手段16により図22に示すような信号ノイズが除去された時間差分データW_diff(i)に変換される。
【0087】
図3に示すステップST105では、波形観測手段13は時間差分データ作成手段12より時間差分データW_diff(i)を受信しているが、図20に示すステップST506では、波形観測手段13はノイズ除去手段16からノイズ除去後の時間差分データW_diff(i)を受信する。時間差分データW_diff(i)の受信後の人数検知方法は上記実施の形態1の図3に示すステップST105の処理と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0088】
なお、この実施の形態5では、図19において、ノイズ除去手段16を独立の構成要素としているが、時間差分データ作成手段12又は波形観測手段13がノイズ除去手段16を含んで構成しても良い。
【0089】
以上のように、この実施の形態5によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、ノイズ除去手段16が時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)に含まれる信号ノイズを除去することにより、乗車人数及び降車人数の推定精度をさらに向上させることができるという効果が得られる。
【0090】
実施の形態6.
上記実施の形態2では、積載重量W(i)とその時間差分データW_diff(i)によって乗車人数及び降車人数を推定しているが、積載重量W(i)は図18(a)に示すように信号ノイズを含むことがある。これにより、図18(b)に示すように時間差分データW_diff(i)にも信号ノイズが発生し、乗車人数及び降車人数の推定を誤ることがあるが、この実施の形態6では、この信号ノイズの除去方法について示す。
【0091】
図23はこの発明の実施の形態6による人数検知装置1の構成を示すブロック図である。この人数検知装置1は、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13、処理単位決定手段14及びノイズ除去手段16を備えており、各手段はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
【0092】
図23において、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13及び処理単位決定手段14は、上記実施の形態2の図9に示す構成と同じであり、ノイズ除去手段16は上記実施の形態5の図19に示すノイズ除去手段16と同一の手段であり、ここでは説明を省略する。
【0093】
次に動作について説明する。
図24はこの発明の実施の形態6による人数検知装置1の処理を示すフローチャートである。図24において、ステップST601〜ステップST605までの処理は、上記実施の形態2の図10に示すステップST201〜ステップST205までの処理と同一のため、ここでの説明は省略する。
【0094】
ステップST606において、ノイズ除去手段16は、処理単位決定手段14から時間差分データW_diff(i)を受信して、時間差分データW_diff(i)に含まれる信号ノイズを除去する。時間差分データW_diff(i)の受信後の信号ノイズの除去方法は、上記実施の形態5の図20に示すステップST505の処理と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0095】
図10に示すステップST206では、波形観測手段13は時間差分データ作成手段12又は処理単位決定手段14より時間差分データW_diff(i)を受信しているが、図24に示すステップST607では、波形観測手段13はノイズ除去手段16からノイズ除去後の時間差分データW_diff(i)を受信する。時間差分データW_diff(i)の受信後の人数検知方法は、上記実施の形態1の図3に示すステップST105の処理と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
なお、この実施の形態6では、図23において、ノイズ除去手段16を独立の構成要素として示しているが、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13又は処理単位決定手段14がノイズ除去手段16を含むように構成しても良い。
【0097】
以上のように、この実施の形態6によれば、上記実施の形態2と同様の効果が得られると共に、ノイズ除去手段16が時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)に含まれる信号ノイズを除去することにより、乗車人数及び降車人数の推定精度をさらに向上させることができるという効果が得られる。
【0098】
実施の形態7.
上記実施の形態3では、積載重量W(i)とその時間差分データW_diff(i)によって乗車人数及び降車人数を推定しているが、積載重量W(i)は図18(a)に示すように信号ノイズを含むことがある。これにより、図18(b)に示すように時間差分データW_diff(i)にも信号ノイズが発生し、乗車人数及び降車人数の推定を誤ることがあるが、この実施の形態7では、この信号ノイズの除去方法について示す。
【0099】
図25はこの発明の実施の形態7による人数検知装置1の構成を示すブロック図である。この人数検知装置1は、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13、ドア制御手段15及びノイズ除去手段16を備えており、各手段はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
【0100】
図25において、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13及びドア制御手段15は、上記実施の形態3の図13に示す構成と同じであり、ノイズ除去手段16は上記実施の形態5の図19に示す構成と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0101】
次に動作について説明する。
図26はこの発明の実施の形態7による人数検知装置1の処理を示すフローチャートである。図26において、ステップST701〜ステップST706までの処理は、上記実施の形態3の図14に示すステップST301〜ステップST306までの処理と同一のため、ここでの説明は省略する。
【0102】
ステップST707において、ノイズ除去手段16は、時間差分データ作成手段12から時間差分データW_diff(i)を受信して、時間差分データW_diff(i)に含まれる信号ノイズを除去する。時間差分データW_diff(i)の受信後の信号ノイズの除去方法は、上記実施の形態5の図20のステップST505の処理と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0103】
図14に示すステップST307では、波形観測手段13は時間差分データ作成手段12より時間差分データW_diff(i)を受信しているが、図26に示すステップST708では、波形観測手段13はノイズ除去手段16からノイズ除去後の時間差分データW_diff(i)を受信する。時間差分データW_diff(i)の受信後の人数検知方法は、上記実施の形態1の図3に示すステップST105の処理と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0104】
なお、この実施の形態7では、図25において、ノイズ除去手段16を独立の構成要素としているが、時間差分データ作成手段12又は波形観測手段13がノイズ除去手段16を含むように構成しても良い。
【0105】
以上のように、この実施の形態7によれば、上記実施の形態3と同様の効果が得られると共に、ノイズ除去手段16が時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)に含まれる信号ノイズを除去することにより、乗車人数及び降車人数の推定精度をさらに向上させることができるという効果が得られる。
【0106】
実施の形態8.
上記実施の形態4では、積載重量W(i)とその時間差分データW_diff(i)によって乗車人数及び降車人数を推定しているが、積載重量W(i)は図18(a)に示すように信号ノイズを含むことがある。これにより、図18(b)に示すように時間差分データW_diff(i)にも信号ノイズが発生し、乗車人数及び降車人数の推定を誤ることがあるが、この実施の形態8では、この信号ノイズの除去方法について示す。
【0107】
図27はこの発明の実施の形態8による人数検知装置1の構成を示すブロック図である。この人数検知装置1は、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13、処理単位決定手段14、ドア制御手段15及びノイズ除去手段16を備えており、各手段はマイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成されている。
【0108】
図27において、計測手段11、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13、処理単位決定手段14及びドア制御手段15は、上記実施の形態4の図16に示す構成と同じであり、ノイズ除去手段16は上記実施の形態5の図19に示す構成と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0109】
次に動作について説明する。
図28はこの発明の実施の形態8による人数検知装置1の処理を示すフローチャートである。図28において、ステップST801〜ステップST807までの処理は、上記実施の形態4の図17のステップST401〜ステップST407までの処理と同一のため、ここでの説明は省略する。ステップST808において、ノイズ除去手段16は、時間差分データ作成手段12から時間差分データW_diff(i)を受信して、時間差分データW_diff(i)に含まれる信号ノイズを除去する。時間差分データW_diff(i)の受信後の信号ノイズの除去方法は、上記実施の形態5の図20のステップST505の処理と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0110】
図17に示すステップST408では、波形観測手段13は時間差分データ作成手段12又は処理単位決定手段14から時間差分データW_diff(i)を受信しているが、図28に示すステップST809では、波形観測手段13はノイズ除去手段16からノイズ除去後の時間差分データW_diff(i)を受信する。時間差分データW_diff(i)の受信後の人数検知方法は、上記実施の形態1の図3に示すステップST105の処理と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
なお、この実施の形態8では、図27において、ノイズ除去手段16を独立の構成要素としているが、時間差分データ作成手段12、波形観測手段13又は処理単位決定手段14がノイズ除去手段16を含むように構成しても良い。
【0112】
以上のように、この実施の形態8によれば、上記実施の形態4と同様の効果が得られると共に、ノイズ除去手段16が時間差分データ作成手段12により作成された時間差分データW_diff(i)に含まれる信号ノイズを除去することにより、乗車人数及び降車人数の推定精度をさらに向上させることができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0113】
1 人数検知装置、11 計測手段、12 時間差分データ作成手段、13 波形観測手段、14 処理単位決定手段、15 ドア制御手段、16 ノイズ除去手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のサンプリング周期で閉空間の積載重量を計測する計測手段と、
該計測手段により計測された積載重量の差分間隔毎の変化を演算して時間差分データを作成する時間差分データ作成手段と、
該時間差分データ作成手段により作成された時間差分データの時系列変化と所定の標準モデルの時間差分データの時系列変化を比較して、上記閉空間の乗車人数を推定する波形観測手段とを備えた人数検知装置。
【請求項2】
波形観測手段は、時間差分データ作成手段により作成された時間差分データの時系列変化と予め保持している標準モデルの時系列変化との正規化相互相関関数を演算して、乗車人数を推定することを特徴とする請求項1記載の人数検知装置。
【請求項3】
所定のサンプリング周期で閉空間の積載重量を計測する計測手段と、
該計測手段により計測された積載重量の差分間隔毎の変化を演算して時間差分データを作成する時間差分データ作成手段と、
該時間差分データ作成手段により作成された時間差分データの時系列変化に対して複数の閾値を設定し、上記時間差分データの時系列変化が設定した各閾値以上になった回数をカウントして最も多くカウントされた回数を乗車人数と推定する波形観測手段とを備えた人数検知装置。
【請求項4】
所定の値より大きな値の時間差分データを、乗車人数を推定する際の時間差分データの処理単位と決定する処理単位決定手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の人数検知装置。
【請求項5】
時間差分データの値が、所定の値より大きな値となってから、再び所定の値より小さな値を示すまでの期間の合計値の絶対値が、所定の閾値以下である場合、当該期間の時間差分データを信号ノイズとするノイズ除去手段を備え、波形観測手段は、上記ノイズ除去手段により信号ノイズとされなかった時間差分データを使用して、乗車人数を推定することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の人数検知装置。
【請求項6】
計測手段としてエレベータの重量センサを使用することで、エレベータの乗車人数を推定することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の人数検知装置。
【請求項7】
所定のサンプリング周期で閉空間の積載重量を計測する計測手段と、
該計測手段により計測された積載重量の差分間隔毎の変化を演算して時間差分データを作成する時間差分データ作成手段と、
該時間差分データ作成手段により作成された時間差分データの時系列変化と所定の標準モデルの時間差分データの時系列変化を比較して、上記閉空間の降車人数を推定する波形観測手段とを備えた人数検知装置。
【請求項8】
波形観測手段は、時間差分データ作成手段により作成された時間差分データの時系列変化と予め保持している標準モデルの時系列変化との正規化相互相関関数を演算して、降車人数を推定することを特徴とする請求項7記載の人数検知装置。
【請求項9】
所定のサンプリング周期で閉空間の積載重量を計測する計測手段と、
該計測手段により計測された積載重量の差分間隔毎の変化を演算して時間差分データを作成する時間差分データ作成手段と、
該時間差分データ作成手段により作成された時間差分データの時系列変化に対して複数の閾値を設定し、上記時間差分データの時系列変化が設定した各閾値以下になった回数をカウントして最も多くカウントされた回数を降車人数と推定する波形観測手段とを備えた人数検知装置。
【請求項10】
所定の値より小さな値の時間差分データを、降車人数を推定する際の時間差分データの処理単位と決定する処理単位決定手段を備えたことを特徴とする請求項7から請求項9のうちのいずれか1項記載の人数検知装置。
【請求項11】
時間差分データの値が、所定の値より大きな値となってから、再び所定の値より小さな値を示すまでの期間の合計値の絶対値が、所定の閾値以下である場合、当該期間の時間差分データを信号ノイズとするノイズ除去手段を備え、波形観測手段は、上記ノイズ除去手段により信号ノイズとされなかった時間差分データを使用して、降車人数を推定することを特徴とする請求項7から請求項10のうちのいずれか1項記載の人数検知装置。
【請求項12】
計測手段としてエレベータの重量センサを使用することで、エレベータの降車人数を推定することを特徴とする請求項7から請求項11のうちのいずれか1項記載の人数検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−14438(P2013−14438A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−190027(P2012−190027)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【分割の表示】特願2007−94252(P2007−94252)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】