説明

介助用手摺装置

【課題】把持棒12〜14に対する把持範囲が広がるとともに、起立後に歩行先の変更が可能となり、自助範囲が増す介助用手摺装置1を提供する。
【解決手段】横把持棒ユニット18を把持棒12、13の端部に着脱可能に連結しているので、使用者を横方向にも支えることができる。このため、使用者の把持棒12〜14に対する把持範囲が広がる一方、起立後に歩行先の変更が可能となり、姿勢を変えることで移動範囲が広がり、自らの力で身辺雑事を足す自助範囲が増す。支柱9は回転調節可能で、かつ軸方向に高さ調節可能であるため、支柱9を把持棒12〜13が使用者の望む向き指向するように設定できるとともに、支柱9を使用者の身長に見合った高さで、把持棒が掴み易いように調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数段の把持棒を備え、足腰が弱かったり不自由な人の立ち上や歩行を支援する介助用手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の介助用手摺装置では、正方形の基板上に支柱が垂直に立設され、支柱には上下複数段の握持棒が直交状態に貫通されたものがある(例えば、特許文献1参照)。各握持棒は、左右対称で水平方向に指向し、全体の安定性のため、基板の一辺よりは短く、その半分よりは長く設定されている。
一般の家庭や病院の玄関、洗面所、台所、浴室など使用者の起立や歩行先に応じて、介助用手摺装置を設置するようにしている。基板により支柱を安定状態に自立させ、使用者が手で握持棒を握ることにより、足腰の不自由な人でも起立状態を支援することのできる機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3096533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の介助用手摺装置は、足の不自由な使用者が握持棒に掴まって起立状態した時、横方向などに向きを変えようとしても、握持棒が真っ直ぐで横方向に使用者を支える手段がないため、姿勢を変更できない不都合がある。
すなわち、握持棒に対する把持範囲が限られるとともに、起立後に歩行先の変更ができないため、姿勢を変えることができず、手の届く範囲が限られて、近くの棚などにある常備品などを自ら取り出すことができない不便さがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、第1目的は、横方向に使用者を支える手段を備えるため、把持棒に対する把持範囲が広がるとともに、起立後に歩行先の変更が可能となり、姿勢を変えることで移動範囲が広がり、自らの力で身辺雑事を足す自助範囲が増すといった便利な介助用手摺装置を提供することにある。
【0006】
本発明の第2目的は、支柱を回転調節して把持棒が使用者の望む向きに指向するように設定できるとともに、支柱を使用者の身長に見合った高さで、把持棒を掴み易いように調整することができて使い勝手のよい介助用手摺装置を提供することにある。
【0007】
本発明の第3目的は、一方のスタンド支持部材の把持棒と他方のスタンド支持部材の把持棒との間を手摺管で着脱可能に連結することにより、手摺管が延長形支持棒として働き、使用者がスタンド支持部材を使って立ち上がった後、手摺管を伝って所望の場所に移動することができる多用途形の介助用手摺装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1について)
設置板は使用に応じた箇所に設置されるようになっている。縦形の支持筒は設置板に位置変更可能に取り付けられている。支柱は支持筒内に軸周りに回転調節可能で、かつ軸方向に高さ調節可能に設けられている。把持棒は支柱に直交状態に貫通し、支柱に沿って上下複数段に設けられており、使用者が自身の支えとするように掴まるものである(スタンド支持部材)。横把持棒ユニットは、把持棒の端部に着脱可能に連結されて把持棒の延長として機能する。
【0009】
この介助用手摺装置では、足腰が弱かったり不自由な使用者が把持棒を掴みながら立ち上がったり、歩行することができることは勿論、横把持棒ユニットを把持棒の端部に着脱可能に連結しているので、使用者を横方向にも支えることができるようになる。
このため、使用者の把持棒に対する把持範囲が広がるとともに、起立後に歩行先の変更が可能となり、姿勢を変えることで移動範囲が広がり、自らの力で身辺雑事を足す自助範囲が増すといった利便性が得られる。
【0010】
支柱は回転調節可能で、かつ軸方向に高さ調節可能になっているため、支柱を回転調節して把持棒が使用者の望む向きに指向するように設定できるとともに、支柱を使用者の身長に見合った高さで、把持棒が掴み易いように調整できて使い勝手がよくなる。
また、縦形の支持筒は、設置板に位置変更可能になっているため、把持棒に掴まって使用者の負荷が加わっても、支柱を設置板と一緒に転倒させる虞のない安定した位置を選んで取り付けることができる。
【0011】
(請求項2について)
横把持棒ユニットは、互いに水平となる上段横棒部と下段横棒部とを含む横U字状管部を有している。上段横棒部を曲成して把持棒の上段の端部に着脱可能に嵌合する上段端管部と、下段横棒部を曲成して把持棒の下段の端部に着脱可能に嵌合する下段端管部とが設けられている。
この場合、横把持棒ユニットは、単一本のパイプを曲成することで形成され、良好なデザイン性を発揮しながらも、簡素な構造で迅速に形成できて量産性に優れる。このため、購買力の乏しい使用者にも安価に購入させることができ、普及による量販性が可能となる。
【0012】
(請求項3について)
横把持棒ユニットは、互いに水平となる上段横棒部と中段横棒部と下段横棒部とを含む横W字状管部を有している。上段横棒部を曲成して成り、把持棒の上段の端部に着脱可能に嵌合する上段端管部と、中段横棒部を曲成して成り、把持棒の中段の端部に着脱可能に嵌合する中段端管部と、下段横棒部を曲成して成り、把持棒の下段の端部に着脱可能に嵌合する下段端管部とが設けられている。
この場合、上段横棒部と中段横棒部と下段横棒部といったように三段の横棒部を備えているので、使用者の掴み箇所が増えて支持状態を一層安定させることができる。
【0013】
(請求項4について)
把持棒のうち、横把持棒ユニットに連結されない把持棒には、弾性材製のグリップ管が嵌込みにより取り付けられている。
このため、使用者が把持棒を掴む時、手に与える感触がよくなるとともに、滑りにくくなってグリップ性が向上する。
【0014】
(請求項5について)
上段横棒部と上段端管部との曲成部、および下段横棒部と下段端管部との曲成部は、クロソイド曲線に沿って形成されている。
クロソイド曲線は緩和曲線の一つとして知られており、上段横棒部(下段横棒部)と上段端管部(下段端管部)との曲成部に沿って歩行先を変える際、スムーズかつ楽に姿勢を変更することができる。
【0015】
(請求項6について)
上段横棒部と上段端管部との曲成部、中段横棒部と中段端管部との曲成部、および下段横棒部と下段端管部との曲成部は、クロソイド曲線に沿って形成されている。
このため、請求項5と同様に、上段横棒部(中段横棒部、下段横棒部)と上段端管部(中段端管部、下段端管部)との曲成部に沿って歩行先を変える際、スムーズかつ楽に姿勢を変更することができる。
【0016】
(請求項7について)
設置板は矩形状を成しており、支柱が最も高く移動調節された時、設置板の対角線の長さよりも短く、対角線の半分よりは長く設定されている。
このため、支柱の安定化が図られ、使用者が把持棒を掴んで立ち上がる際、支柱に不用意に外力が加わっても、支柱が設置板と一緒に転倒する虞がなくなる。
【0017】
(請求項8について)
支柱の先端部には、シャワー装置の送水管を着脱可能に引っ掛ける切欠部が軸方向に形成されている。
この場合、使用者は着座状態で、把持棒を掴みながらシャワー装置からのシャワーを過不足なく自由に浴びることができる。
【0018】
(請求項9について)
所定の間隔で複数設置されたスタンド支持部材うち、少なくとも二つのスタンド支持部材どうしは、一方のスタンド支持部材の把持棒と他方のスタンド支持部材の把持棒との間を着脱可能に連結する中空の手摺管を付設している。
このため、手摺管が延長形支持棒として働き、使用者がスタンド支持部材を使って立ち上がった後、手摺管を伝って所望の場所に移動することができるようになって用途性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に関する介助用手摺装置の分解斜視図である(実施例1)。
【図2】(a)は介助用手摺装置の斜視図(実施例1)、(b)は把持棒に対する横把持棒ユニットの取付構造を示す横断面図(実施例1)、(c)横把持棒ユニットの斜視図である(実施例2)。
【図3】複数のスタンド支持部材の間に手摺管を連結した例を示す斜視図である(実施例3)。
【図4】複数のスタンド支持部材の間に連結した手摺管を階段に設けた例を示す斜視図である(実施例4)。
【図5】介助用手摺装置を用いて、起立状態でシャワーを浴びる例を示す斜視図である(実施例5)。
【図6】介助用手摺装置を用いて、尻掛け台に腰を下ろしてシャワーを浴びる例を示す斜視図である(実施例6)。
【図7】把持棒に対する横把持棒ユニットの異なる取付態様を示す介助用手摺装置の斜視図である(実施例7)。
【図8】把持棒に対する横把持棒ユニットの異なる取付態様を示す介助用手摺装置の斜視図である(実施例8)。
【図9】異なる横把持棒ユニットを用いた介助用手摺装置の斜視図である(実施例9)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の介助用手摺装置では、横方向に使用者を支える手段を備えるため、把持棒に対する把持範囲が広がるとともに、起立後に歩行先の変更が可能となり、姿勢を変えることで移動範囲が広がり、自らの力で身辺雑事を足す自助範囲が増す。支柱を回転調節して把持棒が使用者の望む向きに指向するように設定できる一方、支柱を使用者の身長に見合った高さや把持棒が掴み易い高さに設定できるようになり、使い勝手がよくなる。
【実施例1】
【0021】
図1ないし図2(a)、(b)に基づいて本発明の実施例1を説明する。
図1に示す介助用手摺装置1は、一般の家庭や病院の玄関、洗面所、台所、浴室など使用者の起立や歩行先に応じて設置されるようになっている。介助用手摺装置1の設置板2は、例えば金属薄板(軟鋼板)により矩形状に形成され、使用に応じた箇所に設置される。設置板2の四隅角部は、面取りにより丸く形成され、外周縁部は環状のゴム製リボン帯3により縁取り被覆加工されている。
【0022】
設置板2の中心部および外周縁中央部には、三個を一組とする透孔群4、5が設けられている。設置板2の裏面からは、透孔群4、5に対応する螺子群6が挿通するようになっている。
縦形の支持筒7は、底部が塞がれた有底円筒状を成し、底部には透孔群4、5に対応する螺子孔群8が形成されている。支持筒7を、例えば設置板2の外周縁中央部Nに配して、螺子群6を透孔群5に挿通させて螺子孔群8に締め付けることにより、支持筒7が設置板2に垂直状態に組み付けられる{図2(a)参照}。
また、支持筒7を設置板2の中心部Mに配することにより、支持筒7の組み付け位置を設置板2の外周縁中央部Nから中心部Mに変更できる。これにより、支持筒7が後述する支柱9とともに、設置板2に対して位置変更可能に取り付けられる。
【0023】
支柱9は所定長さの円筒状を成し、その下端部が図1に矢印Fで示すように、支持筒7内に軸周り方向に回転調節可能で、かつ同図に矢印Gで示すように、軸方向の移動により高さ調節可能に嵌め込まれる。
支持筒7に形成された複数の螺子孔10に螺子11を専用工具(図示せず)で締め付けることにより、螺子11の先端が支柱9の外表面に強固に圧接する。これにより、支柱9が所定の回転角度で高さ調節されて支持筒7に固定される{図2(a)参照}。
【0024】
円筒状の把持棒12、13、14は、支柱9に直交状態で左右対称に貫通し、支柱9に沿って上下複数段(例えば三段)に取り付けられて、使用者が自身の支えとする掴み手段として働く。把持棒12〜14は、上述の設置板2、支持筒7および支柱9と一緒にスタンド支持部材15を構成する。
支柱9対する把持棒12〜14の貫通部分は、溶接により一体的に固着シールされている。把持棒12〜14の上下配列は、等間隔でも不等間隔でもよく、あるいは等差級数的間隔であってもよい。
【0025】
把持棒12〜14の図示右半分部および把持棒14の図示左半分部には、弾性材製(例えばゴム製)のグリップ管16が嵌込みにより取り付けられている。把持棒12〜14の両端開口部のそれぞれには、プラスチック製のエンドキャップ17が嵌め込まれている。把持棒12〜14のうち、いずれにグリップ管16を取り付けるかは、使用状況などに応じて所望に決められる。
【0026】
把持棒12、13における図示左半分部の端部には、横把持棒ユニット18が着脱可能に連結されて把持棒12、13の延長として機能する。
横把持棒ユニット18は、互いに水平となる上段横棒部18aと下段横棒部18bとを備えた横U字状管部18cを有している。
【0027】
上段横棒部18aは、所定角度θ(例えば90度)だけ曲成されて、把持棒12の上段の端部12aに着脱可能に嵌合する上段端管部18dを設けている。下段横棒部18bは、所定角度θ(例えば90度)だけ曲成されて、把持棒13の下段の端部13aに着脱可能に嵌合する下段端管部18eを設けている。
上段横棒部18aと上段端管部18dとが成す曲成部の角度θ、ならびに下段横棒部18bと下段端管部18eとが成す曲成部の角度θは、90度に限らず、例えば80〜120度の角度範囲に設定してもよい。
【0028】
把持棒12、13に上段端管部18dおよび下段端管部18eを嵌合した時、固定する手段として、図2(b)に示すように、ナット19、締付ボルト20および円筒ブッシュ21から成る着脱機構Eが設けられている。上段端管部18dおよび下段端管部18eに形成した螺子孔22に、ナット19を螺合した締付ボルト20がねじ込まれている。
【0029】
締付ボルト20を締め付けることにより、締付ボルト20の頭部20aがナット19に圧接し、先端部が円筒ブッシュ21を介して把持棒12、13の外表面に強固に圧接する。締付ボルト20を緩めることにより、把持棒12、13に対する締付ボルト20の圧接が解除されるため、上段端管部18dおよび下段端管部18eを把持棒12、13から引き抜くことができる。
【0030】
図2(a)において、支柱9を最も高い長さHに移動調節した時、設置板2の対角線の長さWよりも短いが、対角線の長さWの半分よりは長くなるように設定されている(W/2<H<W)。これにより、支柱9の安定化が図られ、使用者が把持棒12〜14を掴んで立ち上がる際、支柱9に不用意に外力が加わっても、支柱9が設置板2と一緒に転倒する虞をなくしている。
【0031】
上記構成の介助用手摺装置1によれば、足腰が弱かったり不自由な使用者が把持棒12〜14を掴みながら立ち上がったり、歩行することができることは勿論、横把持棒ユニット18を把持棒12、13の端部12a、13aに着脱可能に連結しているので、使用者を横方向にも支えることができるようになる。
このため、使用者の把持棒12〜14に対する把持範囲が広がるとともに、起立後に歩行先の変更が可能となり、姿勢を変えることで移動範囲が広がり、自らの力で身辺雑事を足す自助範囲が増すといった利便性が得られる。
【0032】
支柱9は回転調節可能で、かつ軸方向に高さ調節可能になっているため、支柱9を回転調節して把持棒12〜14が使用者の望む向きに指向するように設定できるとともに、支柱9を使用者の身長に見合った高さで把持棒12〜14が掴み易いように調整できて使い勝手がよくなる。
また、縦形の支持筒7は、設置板2に位置変更可能になっているため、把持棒12〜14に掴まって使用者の負荷が加わっても、支柱9を設置板2と一緒に転倒させる虞のない安定した位置を選んで取り付けることができる。
【0033】
横把持棒ユニット18は、互いに水平となる上段横棒部18aと下段横棒部18bとを備えた横U字状管部18cを有し、上段端管部18dと下段端管部18eとを設けている。
この場合、横把持棒ユニット18は、単一本のパイプを曲成することで形成され、良好なデザイン性を発揮しながらも、簡素な構造で迅速に形成できて量産性に優れる。このため、購買力の乏しい使用者にも安価に購入させることができ、普及による量販性が可能となる。
【実施例2】
【0034】
図2(c)は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、横把持棒ユニット18の上段横棒部18aと上段端管部18dとの曲成部18A、および下段横棒部18bと下段端管部18eとの曲成部18Bをクロソイド曲線に沿って曲成したことである。
【0035】
クロソイド曲線は、車両を走行しながら、一定の角速度で舵を切る時、車両が描く軌跡となる緩和曲線(安全曲線)として知られている。
クロソイド曲線では、Lを出発点からの進行距離(曲線長)とし、Rを舵を切る際に描く軌跡の曲線の曲率半径とすると、R・L=A2 (A:長さの次元で定数)の関係がある。
横把持棒ユニット18にクロソイド曲線を適用したことにより、上段横棒部18a(下段横棒部18b)と上段端管部18d(下段端管部18e)との曲成部18A、18Bに沿って歩行先を変える際、スムーズかつ楽に姿勢を変更することができる。
なお、クロソイド曲線を平面座標で表すと、x(s)=∫cos(φ2 /2)dφおよびy(s)=∫sin(φ2 /2)dφの関数で表される。sは曲線長で、φは操舵角を示す。関数x(s)およびy(s)の積分範囲は0〜sである。
【実施例3】
【0036】
図3は本発明の実施例3を示す。実施例3では、矩形の寝台25側に介助用手摺装置1を設置して、横把持棒ユニット18の横U字状管部18cが寝台25に近接して、その長手方向に沿うように配している。
このため、寝台に横たわっている使用者が上半身を起こした時、横把持棒ユニット18の横U字状管部18cを掴み易いようになる。寝台25側の横把持棒ユニット18に他に、横把持棒ユニット18を取り外した二台のスタンド支持部材15を廊下側に一定の距離間隔で前後に対向配置している。
【0037】
介助用手摺装置1の把持棒12と前方のスタンド支持部材15の把持棒12とは、長尺な手摺管26により連結されている。すなわち、手摺管26の一端26aは、介助用手摺装置1の把持棒12に嵌合され、他端26bは前方のスタンド支持部材15の把持棒12に嵌合されている。
【0038】
前後のスタンド支持部材15の間には、手摺管27が設けられている。手摺管27の一端27aは略直角に曲げられて前方のスタンド支持部材15の把持棒13に嵌合され、他端27bは略直角に曲げられて後方のスタンド支持部材15の把持棒13に嵌合されている。図示はしないが、把持棒12、13に対する手摺管26、27の取り付けは、図2(b)と同様な着脱機構Eが用いられる。手摺管26、27が嵌め込まれる把持棒12、13には、グリップ管16は取り外されているものとする。
【0039】
この場合、手摺管26、27が延長形支持棒として働き、使用者が介助用手摺装置1やスタンド支持部材15を使って立ち上がった後、手摺管26、27を伝って所望の場所に移動することが可能となって用途性が高くなる。
【実施例4】
【0040】
図4は本発明の実施例4を示す。実施例4では、建造物における階下の踊り場28と階上の踊り場29とにスタンド支持部材15を設置している。手摺管30は、階下の踊り場28と階上の踊り場29を結ぶ階段31に沿って配されている。
【0041】
すなわち、手摺管30の一端30aは、踊り場28と水平となるように折り曲げられて階下にあるスタンド支持部材15の把持棒12に嵌合され、他端30bは踊り場29と水平となるように折り曲げられて、階上にあるスタンド支持部材15の把持棒12に嵌合されている。
このため、階下の踊り場28と階上の踊り場29との間を使用者が階段31に沿って移動する際に、使用者が手摺管30を伝って楽に昇り降りできる便宜が得られる。
この場合、把持棒12〜14に対して手摺管30を選択的に連結することにより、手摺管30を把持棒12〜14のいずれかに応じた高さに調節することができる。
【実施例5】
【0042】
図5は本発明の実施例5を示す。実施例5では、実施例1における介助用手摺装置1を用いて使用者UがシャワーSwを浴びるものである。横把持棒ユニット18の上段端管部18dおよび把持棒12のグリップ管16に掴まりながら起立状態を保っている。
このため、使用者Uは上半身をシャワー装置32に向けながらシャワーSwを過不足なく自由に浴びることができる。
【実施例6】
【0043】
図6は本発明の実施例6を示す。実施例6では、使用者Uが尻掛け台33に腰を下ろしながらシャワーSwを浴びるものである。この場合、シャワー装置32における漏斗状のシャワー吐出部32aに通水管32bが連結されているが、シャワー吐出部32aと通水管32bとを結ぶ首管部32cは、介助用手摺装置1の支柱9に引っ掛けられるようになっている。
【0044】
すなわち、支柱9の先端部には、通水管32bの外径t1と同径幅t2でU字状を成す切欠部34が軸方向に形成されている。シャワー吐出部32aの首管部32cは、切欠部34に差し込むようにして引っ掛けられている。首管部32cの後端部には、支柱9の先端部に係止する止めリング35が嵌着されて首管部32cの位置ずれを防いでいる。
【0045】
このため、使用者Uは尻掛け台33に腰を下ろした状態で、介助用手摺装置1の把持棒14のグリップ管16を掴みながらシャワー吐出部32aからのシャワーSwを過不足なく自由に浴びることができる。
この場合、使用者は、体格やシャワーSwを浴びせたい部位などに応じて、横把持棒ユニット18あるいは把持棒12、13のグリップ管16を選択的に掴むようにしてもよい。
【実施例7】
【0046】
図7は本発明の実施例7を示す。実施例7では、実施例1の介助用手摺装置1において、グリップ管16を取り外した把持棒12、13の図示右半分部に横把持棒ユニット18を連結している。横把持棒ユニット18が横U字状管部18cを同一方向に向けて把持棒12、13の左右両側に存するようになる。
このため、使用者は両手で横把持棒ユニット18を掴みながら起立できるので、起立状態が一層安定化する。使用者は不安定な起立状態から解放されるので、シャワー装置32を使用した場合に、安心してシャワーSwを浴びることができる。
【実施例8】
【0047】
図8は本発明の実施例8を示す。実施例8では、実施例7の介助用手摺装置1において、把持棒12、13の図示右半分部と図示左半分部に存する横把持棒ユニット18の横U字状管部18cが互いに反対向きとなるように配している。
これにより、一方の横把持棒ユニット18から他方の横把持棒ユニット18に到る距離が長くなる。このため、使用者の横把持棒ユニット18に対する把持範囲が広がるとともに、起立後に歩行先の変更が可能となり、姿勢を変えることで移動範囲が広がり、自らの力で身辺雑事を足す自助範囲が増すようになる。
【実施例9】
【0048】
図9は本発明の実施例9を示す。実施例9が実施例1と異なるところは、横把持棒ユニット40を全体的に横W字状に形成したことである。
すなわち、横把持棒ユニット40は、互いに水平となる上段横棒部40aと中段横棒部40bと下段横棒部40cとを含む横W字状管部40dを有している。
上段横棒部40aは、曲成により把持棒12における図示左半分部の上段の端部12sに着脱可能に嵌合する上段端管部40eを形成している。
中段横棒部40bは、曲成により把持棒13における図示左半分部の中段の端部13sに着脱可能に嵌合する中段端管部40fを形成している。
下段横棒部40cは、曲成により把持棒14における図示左半分部の下段の端部14sに着脱可能に嵌合する下段端管部40gを形成している。
【0049】
この場合、上段横棒部40aと中段横棒部40bと下段横棒部40cといったように三段の横棒部を有することになり、使用者の掴み箇所が増えて支持状態を一層安定させることができる。
把持棒12〜14における図示右半分部からグリップ管16を取り外して、もう一つの横把持棒ユニット40を把持棒12〜14の図示右半分部に取り付けて、実施例7、8の形態と同様にしてもよい。
【0050】
なお、上段横棒部40aと上段端管部40eとの曲成部40A、中段横棒部40bと中段端管部40fとの曲成部40B、および下段横棒部40cと下段端管部40gとの曲成部40Cは、クロソイド曲線に沿って形成してもよい。
これにより、実施例2と同様に、上段横棒部40a(中段横棒部40b、下段横棒部40c)と上段端管部40e(中段端管部40f、下段端管部40g)との曲成部40A、40B、40Cに沿って歩行先を変える際、スムーズかつ楽に姿勢を変更することができる。
【0051】
(a)実施例1〜9において、設置板2は矩形状に形成したが、方形、菱形、円形、半円形、平行四辺形、楕円、台形、あるいは五角形や六角形などの多角形であってもよい。
(b)設置板2に設けた透孔群4、5は、設置板2の中心部Mや外周縁中央部Nに限らず、必要に応じて他の箇所に複数群にわたって設けてもよい。
(c)グリップ管16の材質としては、SBR(スチレンブタジエンラバー)、IR(イソプレンラバー)あるいはCR(クロロプレンラバー)などを選択してもよい。
【0052】
(d)設置板2は、曲率の極めて小さいドーム形状にして、内部に補強リブを裏打ちしたものでもよい。これにより、シャワーを使用した時、設置板2の滴を外部に流下させ易くなる。
(e)実施例1〜8では、横把持棒ユニット18を把持棒12、13に連結したが、把持棒13、14に連結するようにしてもよい。把持棒を四段、五段といったように上下多段に設けた場合、横把持棒ユニット18を上下に隣接する把持棒のうち、いずれにでも選択的に連結することができる。
(f)建物の屋上などに複数のスタンド支持部材15を間欠設置し、各スタンド支持部材15の把持棒同士を手摺管で連結固定することにより、手摺管を足の不自由な人の歩行訓練に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の介助用手摺装置は、横方向に使用者を支える手段を備えるため、把持棒に対する把持範囲が広がるとともに、起立後に歩行先の変更が可能となり、姿勢を変えることで移動範囲が広がる。支柱を回転調節して把持棒が使用者の望む向きに指向するように設定できる一方、支柱を使用者の身長に見合った高さで把持棒が掴み易くなるように調整することができる。この使い勝手のよさもあって、一般の家庭は勿論、福祉施設などから経済性を求める需要者が増加し、関連部品の流通を介して機械産業界に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 介助用手摺装置
2 設置板
7 支持筒
9 支柱
12〜14 把持棒
12a、12s 把持棒の上段の端部
13a、14s 把持棒の下段の端部
13s 把持棒の中段の端部
15 スタンド支持部材
16 グリップ管
18、40 横把持棒ユニット
18a、40a 上段横棒部
18b、40c 下段横棒部
18c 横U字状管部
18d、40e 上段端管部
18e、40g 下段端管部
18A、18B 曲成部
26、27、30 手摺管
32 シャワー装置
32a シャワー吐出部
32b 通水管
34 切欠部
40b 中段横棒部
40d 横W字状管部
40f 中段端管部
40A〜40C 曲成部
Sw シャワー
E 着脱機構
N 設置板の外周縁中央部
M 設置板の中心部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用に応じた箇所に設置される設置板と、
前記設置板に位置変更可能に取り付けられた縦形の支持筒と、
前記支持筒内に軸周りに回転調節可能で、かつ軸方向に高さ調節可能に設けられた支柱と、
前記支柱に直交状態に貫通し、前記支柱に沿って上下複数段に設けられ、使用者が自身の支えとするように掴まる把持棒とを有するスタンド支持部材を備えており、
前記把持棒の端部に着脱可能に連結されて前記把持棒の延長として機能する横把持棒ユニットを設けた介助用手摺装置。
【請求項2】
前記横把持棒ユニットは、互いに水平となる上段横棒部と下段横棒部とを含む横U字状管部を有し、前記上段横棒部を曲成して前記把持棒の上段の端部に着脱可能に嵌合する上段端管部と、前記下段横棒部を曲成して前記把持棒の下段の端部に着脱可能に嵌合する下段端管部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の介助用手摺装置。
【請求項3】
前記横把持棒ユニットは、互いに水平となる上段横棒部と中段横棒部と下段横棒部とを含む横W字状管部を有し、前記上段横棒部を曲成して成り、前記把持棒の上段の端部に着脱可能に嵌合する上段端管部と、前記中段横棒部を曲成して成り、前記把持棒の中段の端部に着脱可能に嵌合する中段端管部と、前記下段横棒部を曲成して成り、前記把持棒の下段の端部に着脱可能に嵌合する下段端管部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の介助用手摺装置。
【請求項4】
前記把持棒のうち、前記横把持棒ユニットに連結されない前記把持棒には、弾性材製のグリップ管が嵌込みにより取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の介助用手摺装置。
【請求項5】
前記上段横棒部と前記上段端管部との曲成部、および前記下段横棒部と前記下段端管部との曲成部は、クロソイド曲線に沿って形成されていることを特徴とする請求項2に記載の介助用手摺装置。
【請求項6】
前記上段横棒部と前記上段端管部との曲成部、前記中段横棒部と前記中段端管部との曲成部、および前記下段横棒部と前記下段端管部との曲成部は、クロソイド曲線に沿って形成されていることを特徴とする請求項3に記載の介助用手摺装置。
【請求項7】
前記設置板は矩形を成しており、前記支柱が最も高く移動調節された時、前記設置板の対角線の長さよりも短く、前記対角線の半分よりは長く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の介助用手摺装置。
【請求項8】
前記支柱の先端部には、シャワー装置の送水管を着脱可能に引っ掛ける切欠部が軸方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の介助用手摺装置。
【請求項9】
所定の間隔で複数設置された前記スタンド支持部材のうち、少なくとも二つの前記スタンド支持部材どうしは、一方の前記スタンド支持部材の前記把持棒と他方の前記スタンド支持部材の前記把持棒との間を着脱可能に連結する中空の手摺管を付設していることを特徴とする請求項1に記載の介助用手摺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−10853(P2011−10853A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157483(P2009−157483)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(599117602)有限会社大和工業所 (4)
【Fターム(参考)】