説明

介在物判別装置、介在物判別方法、介在物判別プログラム

【課題】 材料の撮像画像に基づいて、材料中に含まれる介在物の種類やその態様を判別することのできる技術を提供する。
【解決手段】 材料の撮像画像に基づいて、該材料に含まれる介在物の判別処理を行う介在物判別装置であって、撮像画像を取得する画像取得部101と、撮像画像を輝度画像に変換する変換部102と、変換部102にて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第1の抽出部103と、第1の抽出部103にて抽出された画素に関する情報に基づいて、材料に含まれる第1の介在物を判別する第1の判別部104と、変換部102にて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも高輝度に設定された第2の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第2の抽出部105と、第2の抽出部105にて抽出された画素に関する情報に基づいて、材料に含まれる第2の介在物を判別する第2の判別部106とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の撮像画像に基づいて、該材料に含まれる介在物の判別処理を行う介在物判別装置、介在物判別方法および介在物判別プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属等の材料のサンプルの鏡面研磨した材料素地を顕微鏡によって拡大観察し、材料素地内で観察される黒、灰色等の島を介在物として判別する技術が知られる。
【0003】
このような材料素地内における介在物の判別処理としては、例えば、顕微鏡によって拡大されCCDカメラ等によって撮像される画像における各画素毎の色/濃度等の情報と閾値を比較して、2値化処理(素地と介在物の2つの領域に区別する処理)を行い、介在物の判別を行う方法が知られる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平3−269243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
材料素地に含まれる介在物の種類としては、その見え方(色や形状)の差異から、酸化物、硫化物、炭化物に分類される。このように分類される介在物は、材料に含まれる介在物の組成等を正確に把握するためにも、異なる種類の介在物それぞれを個別に判別できることが好ましい。
【0005】
しかし、上記従来技術では、1つの閾値を用いて、材料素地と介在物の2つの領域に区別する構成となっているため、材料素地以外の物(すなわち、介在物)とみなされた領域は、全ての種類の介在物を含んだかたちで「介在物」であると判別されてしまう。
【0006】
また、材料中に存在する介在物の態様としては、図8(a)に示すようにある種類の介在物が単体で存在する場合(単一介在物)や、図8(b)に示すようにこれらが重なって(複合して)1つの島として材料中に存在する場合がある。このように、異なる介在物が重複してできている介在物を2重構造介在物(複合介在物)と呼ぶ。
【0007】
上述した従来の介在物の判別方法では、例えば図8(b)に示すような二重構造介在物を判別したい場合であっても、「材料素地」と「介在物」の2区分にしか判別することができず、結果として図8(a)に示す介在物を判別した場合と同じ判別結果しか得られない(単一介在物としてしか認識されない。)。
【0008】
また近年、介在物形態制御についての要請もあり、材料中に含まれる介在物の種類やその態様を判別することのできる技術が望まれている。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、材料の撮像画像に基づいて、材料中に含まれる介在物の種類やその態様を判別することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明に係る介在物判別装置は、材料の撮像画像に基づいて、該材料に含まれる介在物の判別処理を行う介在物判別装置であって、前記撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像を輝度画像に変換する変換部と、前記変換部にて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第1の抽出部と、前記第1の抽出部にて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第1の介在物を判別する第1の判別部と、前記変換部にて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、前記第1の所定輝度よりも高輝度に設定された第2の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第2の抽出部と、前記第2の抽出部にて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第2の介在物を判別する第2の判別部とを有することを特徴とするものである。
【0011】
上述のような構成の介在物判別装置において、前記第1の判別部は、前記第1の抽出部にて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第1の介在物であると判別するものであり、前記第2の判別部は、前記第2の抽出部にて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第2の介在物であると判別するものであり、前記第2の判別部にて第2の介在物であると判別された領域を構成する画素の内、前記第1の判別部にて第1の介在物であると判別された領域を構成する画素については、前記第1の介在物の領域を構成する画素であると判定する判別結果判定部を有する構成となっている。
【0012】
上述のような構成の介在物判別装置において、前記判別結果判定部は、前記第1の判別部にて第1の介在物であると判別された領域と、前記第2の判別部にて第2の介在物であると判別された領域とが、前記撮像画像上において所定の位置関係で重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定する構成とすることが好ましい。
【0013】
上述のような構成の介在物判別装置において、前記判別結果判定部は、前記撮像画像上において、前記第1および第2の判別部の内いずれか一方にて判別された介在物の領域の所定の割合以上の面積が、前記第1および第2の判別部の内いずれか他方にて判別された介在物の領域と重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定する構成とすることができる。
【0014】
上述のような構成の介在物判別装置において、前記第1および第2の判別部は、介在物であると判別された領域に外接する矩形内の面積を該領域の面積で割った値が、所定の閾値よりも大きい場合、該領域は傷であると判別する構成としてもよい。
【0015】
また、本発明に係る介在物判別方法は、材料の撮像画像に基づいて、該材料に含まれる介在物の判別処理を行う介在物判別方法であって、前記撮像画像を取得する画像取得ステップと、前記撮像画像を輝度画像に変換する変換ステップと、前記変換ステップにて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第1の抽出ステップと、前記第1の抽出ステップにて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第1の介在物を判別する第1の判別ステップと、前記変換ステップにて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、前記第1の所定輝度よりも高輝度に設定された第2の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第2の抽出ステップと、前記第2の抽出ステップにて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第2の介在物を判別する第2の判別ステップとを有することを特徴とするものである。
【0016】
また、上述のような構成の介在物判別方法において、前記第1の判別ステップは、前記第1の抽出ステップにて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第1の介在物であると判別するものであり、前記第2の判別ステップは、前記第2の抽出ステップにて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第2の介在物であると判別するものであり、前記第2の判別ステップにて第2の介在物であると判別された領域を構成する画素の内、前記第1の判別ステップにて第1の介在物であると判別された領域を構成する画素については、前記第1の介在物の領域を構成する画素であると判定する判別結果判定ステップを有することが望ましい。
【0017】
また、上述のような構成の介在物判別方法において、前記判別結果判定ステップは、前記第1の判別ステップにて第1の介在物であると判別された領域と、前記第2の判別ステップにて第2の介在物であると判別された領域とが、前記撮像画像上において所定の位置関係で重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定する構成とすることもできる。
【0018】
また、上述のような構成の介在物判別方法において、前記判別結果判定ステップは、前記撮像画像上において、前記第1および第2の判別ステップの内いずれか一方にて判別された介在物の領域の所定の割合以上の面積が、前記第1および第2の判別ステップの内いずれか他方にて判別された介在物の領域と重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定する構成とすることが好ましい。
【0019】
また、上述のような構成の介在物判別方法において、前記第1および第2の判別ステップは、介在物であると判別された領域に外接する矩形内の面積を該領域の面積で割った値が、所定の閾値よりも大きい場合、該領域は傷であると判別するようにしてもよい。
【0020】
また、本発明に係る介在物判別プログラムは、材料の撮像画像に基づいて、該材料に含まれる介在物の判別処理をコンピュータに実行させる介在物判別プログラムであって、前記撮像画像を取得する画像取得ステップと、前記撮像画像を輝度画像に変換する変換ステップと、前記変換ステップにて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第1の抽出ステップと、前記第1の抽出ステップにて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第1の介在物を判別する第1の判別ステップと、前記変換ステップにて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、前記第1の所定輝度よりも高輝度に設定された第2の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第2の抽出ステップと、前記第2の抽出ステップにて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第2の介在物を判別する第2の判別ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0021】
また、上述のような構成の介在物判別プログラムにおいて、前記第1の判別ステップは、前記第1の抽出ステップにて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第1の介在物であると判別するものであり、前記第2の判別ステップは、前記第2の抽出ステップにて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第2の介在物であると判別するものであり、前記第2の判別ステップにて第2の介在物であると判別された領域を構成する画素の内、前記第1の判別ステップにて第1の介在物であると判別された領域を構成する画素については、前記第1の介在物の領域を構成する画素であると判定する判別結果判定ステップを有することが望ましい。
【0022】
また、上述のような構成の介在物判別プログラムにおいて、前記判別結果判定ステップは、前記第1の判別ステップにて第1の介在物であると判別された領域と、前記第2の判別ステップにて第2の介在物であると判別された領域とが、前記撮像画像上において所定の位置関係で重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定する構成とすることができる。
【0023】
また、上述のような構成の介在物判別プログラムにおいて、前記判別結果判定ステップは、前記撮像画像上において、前記第1および第2の判別ステップの内いずれか一方にて判別された介在物の領域の所定の割合以上の面積が、前記第1および第2の判別ステップの内いずれか他方にて判別された介在物の領域と重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定する構成となっている。
【0024】
また、上述のような構成の介在物判別プログラムにおいて、前記第1および第2の判別ステップは、介在物であると判別された領域に外接する矩形内の面積を該領域の面積で割った値が、所定の閾値よりも大きい場合、該領域は傷であると判別する構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0025】
以上に詳述したように本発明によれば、材料の撮像画像に基づいて、材料中に含まれる介在物の種類やその態様を判別することのできる技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態による介在物判別装置について説明するための機能ブロック図である。
【0028】
本実施の形態による介在物判別装置1は、画像取得部101、変換部102、第1の抽出部103、第1の判別部104、第2の抽出部105、第2の判別部106、判別結果判定部107、CPU108およびMEMORY109を備えてなる構成となっている。
【0029】
画像取得部101は、材料表面を顕微鏡等によって撮像した撮像画像を取得する役割を有している。
【0030】
変換部102は、画像取得部101にて取得された撮像画像を輝度画像に変換する役割を有している。
【0031】
第1の抽出部103は、変換部102にて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する役割を有している。
【0032】
第1の判別部104は、第1の抽出部103にて抽出された画素に関する情報に基づいて、材料に含まれる第1の介在物を判別する役割を有している。また、第1の判別部104は、第1の抽出部103にて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第1の介在物であると判別する。
【0033】
第2の抽出部105は、変換部102にて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも高輝度に設定された第2の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する役割を有している。
【0034】
第2の判別部106は、第2の抽出部105にて抽出された画素に関する情報に基づいて、材料に含まれる第2の介在物を判別する役割を有している。また、第2の判別部106は、第2の抽出部105にて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第2の介在物であると判別する。
【0035】
判別結果判定部107は、第2の判別部106にて第2の介在物であると判別された領域を構成する画素の内、第1の判別部104にて第1の介在物であると判別された領域を構成する画素については、第1の介在物の領域を構成する画素であると判定する役割を有している。
【0036】
判別結果判定部107は、第1の判別部104にて第1の介在物であると判別された領域と、第2の判別部106にて第2の介在物であると判別された領域とが、撮像画像上において所定の位置関係で重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定する。なお、ここでの所定の位置関係とは、例えば第1および第2の判別部の内いずれか一方にて判別された介在物の領域の所定の割合以上の面積が、第1および第2の判別部の内いずれか他方にて判別された介在物の領域と重なる位置関係を意味する。
【0037】
CPU108は、介在物判別装置における各種処理を行う役割を有しており、またMEMORY109に格納されているプログラムを実行することにより種々の機能を実現する役割も有している。MEMORY109は、例えばROMやRAM等から構成されており、介在物判別装置において利用される種々の情報やプログラムを格納する役割を有している。
【0038】
本実施の形態による介在物判別装置1は、上述のような構成により、材料の撮像画像に基づいて、該材料に含まれる介在物の判別処理を行う。
【0039】
図2は、本実施の形態による介在物判別装置における処理(介在物判別方法)の流れについて説明するためのフローチャートである。
【0040】
まず、画像取得部101にて撮像画像を取得する(画像取得ステップ)(S101)。ここでは、例えば図3(a)に示すような、高い輝度をもつ介在物K1およびK2と、低い輝度をもつ介在物E1およびE2が、材料素地Bに含まれている画像を取得したものとする。
【0041】
変換部102は、撮像画像を輝度画像に変換する(変換ステップ)(S102)。
【0042】
第1の抽出部103は、変換ステップにて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、上述の低い輝度をもつ介在物に対応して設定されている第1の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する(第1の抽出ステップ)(S103)。図3(b)は、第1の抽出ステップにて抽出された画素を示す図である。
【0043】
第1の判別部104は、第1の抽出ステップにて抽出された画素に関する情報に基づいて、材料に含まれる第1の介在物を判別する(第1の判別ステップ)(S104)。第1の判別ステップは、第1の抽出ステップにて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第1の介在物であると判別する。ここでは、図3(b)に示すように、介在物の島(隣接する画素から構成されるグループ)が2つあるため、それぞれの島の領域e1およびe2を第1の介在物であると判別する。
【0044】
第2の抽出部105は、変換ステップにて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも高輝度に設定された(上述の高い輝度をもつ介在物に対応して設定された)第2の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する(第2の抽出ステップ)(S105)。ここでは、図3(c)に示すように、領域k1〜k3が抽出されていることが分かる。
【0045】
第2の判別部106は、第2の抽出ステップにて抽出された画素に関する情報に基づいて、材料に含まれる第2の介在物を判別する(第2の判別ステップ)(S106)。第2の判別部106は、第2の抽出ステップにて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第2の介在物であると判別する。
【0046】
ここでは、高い輝度を有する介在物を抽出するための第2の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を全て抽出しているため、判別結果判定部107は、第1の判別部104にて第1の介在物であると判別された領域が第2の介在物であると判別する領域に含まれないように、第2の判別ステップにて第2の介在物であると判別された領域を構成する画素の内、第1の判別ステップにて第1の介在物であると判別された領域を構成する画素については、第1の介在物の領域を構成する画素であると判定する(判別結果判定ステップ)(S107)。図3(d)は、判別結果判定ステップを経て判別された第2の介在物の島の領域k1およびk2を示す図である。
【0047】
また、判別結果判定ステップは、第1の判別ステップにて第1の介在物であると判別された領域と、第2の判別ステップにて第2の介在物であると判別された領域とが、撮像画像上において所定の位置関係で重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定する。
【0048】
具体的に、判別結果判定ステップは、撮像画像上において、第1および第2の判別ステップの内いずれか一方にて判別された介在物の領域の所定の割合(例えば90%)以上の面積が、第1および第2の判別ステップの内いずれか他方にて判別された介在物の領域と重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定する。
【0049】
ここでは、図3(b)に示す第1の介在物であると判別された領域e1が、図3(d)に示す第2の介在物であると判別された領域k1に包含されるかたちとなっており(領域e1の面積の100%が領域k1と重なっている)、当該領域e1および領域k1によって二重構造介在物が構成されていることが分かる。
【0050】
なお、本実施の形態では、第1の抽出ステップおよび第1の判別ステップが、第2の抽出ステップおよび第2の判別ステップに先立って行われている例を挙げているが、これに限られるものではなく、第2の抽出ステップおよび第2の判別ステップを、第1の抽出ステップおよび第1の判別ステップに先立って行うようにしてもよい。
【0051】
図4は本実施の形態による介在物判別方法の処理の詳細な流れについて説明するためのフローチャート、図5は図4における二重構造介在物の判定処理の詳細を示すフローチャート、図6は図4における介在物の材質判定の処理の詳細について説明するためのフローチャートである。図4〜図6に示すフローチャートでは、撮像画像上から抽出された領域の詳細な判別方法を示している。なお、図5および図6に示すフローの行き先である丸数字は、図4に示す丸数字と対応しており、これら丸数字以降の処理へと続くことを意味している。
【0052】
まず、撮像画像上における材料素地の中から抽出されたある領域(判定対象となる島の領域)がサビであるか否かについて判定する(S201)。当該領域の幅が所定の閾値以下であり、且つ長さが所定の閾値以下である場合(S201,Yes)、当該島の領域はサビであると判定する(S202)。
【0053】
判定対象である領域がサビではないと判定され(S201,No)、当該領域の縦横比が所定の閾値以上である場合(S203,Yes)、ごみ判定処理へと進む。
【0054】
続いて、当該島の領域の面積が、所定の面積以下である場合(S204,Yes)、ゴミであると判定する(S205)。
【0055】
当該島の領域がゴミでないと判定された場合(S204,No)、当該島の領域の平均濃度と所定の閾値との比(濃度比)を算出し、濃度比が所定値以上である場合(S206,Yes)、Ti判定へと進む(S207)。
【0056】
Ti判定では、図6に示すように、判定対象である島の領域の面積が所定の閾値(Tiであると推定される基準面積値)以上である場合(S401,Yes)、「A系」の介在物であると判定する(S212)。一方、判定対象である島の領域の面積が所定の閾値未満である場合(S401,No)、次の処理へ進む。
【0057】
続いて、当該島の領域を構成する画素の平均濃度が、所定の閾値(Tiであると推定される基準濃度値)以上である場合(S402,Yes)、「A系」の介在物であると判定する(S212)。一方、判定対象である島の領域を構成する画素の平均濃度が所定の閾値未満である場合(S402,No)、当該島の領域のH濃度(色相画像における濃度)が、チタンに対応して設定されている所定の閾値(Ti色相下限値)以上であり、且つ所定の閾値(Ti色相上限値)以下である場合(S403,Yes)には、当該島の領域は「チタン」であると判定する(S404)。
【0058】
一方、チタンであるとは判定されない場合(S403,No)、当該島の領域のH濃度が、ビスマスに対応して設定されている所定の閾値(Bi色相下限値)以上であり、且つ所定の閾値(Bi色相上限値)以下である場合(S405,Yes)には、当該島の領域は「ビスマス」であると判定する(S406)。
【0059】
一方、ビスマスであるとは判定されない場合(S405,No)、当該島の領域のH濃度が、ニオブに対応して設定されている所定の閾値(Nb色相下限値)以上であり、且つ所定の閾値(Nb色相上限値)以下である場合(S407,Yes)には、当該島の領域は「ニオブ」であると判定する(S408)。
【0060】
上述の処理により、チタン、ビスマス、ニオブのいずれにも当てはまらないと判定された場合(S407,No)、「C系」の介在物であると判定する(S223)。
【0061】
一方、チタン、ビスマス、ニオブのいずれかであると判定された場合、当該領域の連続性を判定し、連続性がある場合(S209,Yes)、「TiB系」の介在物であると判定し(S210)、連続性がない場合(S209,No)、「TiD系」の介在物であると判定する(S211)。
【0062】
また、当該島の領域の平均濃度と所定の閾値との濃度比が所定値未満である場合(S206,No)、またはTi判定の後に、二重構造介在物の判定処理(S208、S225)へと進む。
【0063】
二重構造介在物の判定処理では、図5に示すように、A系介在物の島の領域の面積が所定の閾値(二重化面積値)よりも大きい場合(S301,No)、次の処理へと進む。
【0064】
続いて、A系介在物の島の領域の縦横比(アスペクト比)が所定の閾値以上であるか、1/2重化アスペクト比以下である場合(S302,No)、次の処理へと進む。
【0065】
次に、B系またはD系の介在物の島の領域の面積と所定の面積値との比が所定の閾値(2重化面積比率)以上である場合(S303,No)、当該「A系」の介在物の領域と「B系」または「D系」の介在物の領域とのオーバーラップ量が、所定の閾値よりも大きい場合(S304,No)、介在物の系判定に進み(S305)、「C系」であると判定された場合には「A系」に変換(S307)するとともに、「B系」または「D系」の介在物を判定結果に追加する(S306)。また、「C系」であると判定されない場合にも、同様に「B系」または「D系」の介在物を判定結果に追加する(S306)。
【0066】
また、上述の処理(S301,Yes、S302,Yes、S303,Yes、S304,Yes)の後、当該判定対象である領域の介在物の系判定に進み、「A系」(S212)または「C系」(S223)と判定する。
【0067】
また、第1の判別部104および第2の判別部106は、当該領域の縦横比が所定の閾値未満である場合(S203,No)、傷判定処理(S213)へと進む。当該領域の縦横比が所定のアスペクト比よりも大きく、且つ介在物であると判別された領域に外接する矩形内の面積を該領域の面積で割った値が、所定の閾値(面積比)よりも大きい場合、該領域は傷であると判別する(第1および第2の判別ステップ)(S214)。図7は、判定対象である領域sと当該領域sに外接する長方形(矩形)Sを示す図である。同図から、判定対象である領域sと長方形Sの面積の差が大きい場合には、傷である可能性が高いことが分かる。
【0068】
一方、傷ではないと判定された場合(S213,No)、Ti判定(S215)へと進み、Ti判定処理(図6参照)にて「チタン」、「ビスマス」、「ニオブ」の内のいずれかであると判定された場合(図6における丸数字(2))であって、当該介在物に連続性がある場合(S216,Yes)、「TiB系」の介在物であると判定する(S217)。
【0069】
一方、連続性はない場合(S216,No)、「TiD系」の介在物であると判定する(S218)。
【0070】
また、Ti判定処理にて「チタン」、「ビスマス」、「ニオブ」の内のいずれでもないと判定された場合(図6における丸数字(3))、当該介在物に連続性がある場合(S219,Yes)、「B系」の介在物であると判定する(S220)。
【0071】
一方、当該介在物に連続性がない場合(S219,No)であって、当該介在物の領域の濃度と所定の濃度との比が所定の濃度比値の間であるか、当該領域の幅が所定幅(ゴミ厚み)以上であるか、当該領域の濃度が所定濃度(D中心濃度)以上である場合(S221,Yes)、当該領域はゴミであると判定する(S222)。ゴミでないと判定された場合(S221,No)、当該介在物の領域は、「D系」の介在物であると判定する(S224)。
【0072】
上述のようにして介在物の判別を行った後、当該介在物の島の領域の幅が、Thin閾値よりも小さい場合には判別結果から削除し、Heavy閾値以下の場合には「Thin」であると判定し、サイズオーバー閾値以下の場合には「Heavy」であると判定し、これら以外は「サイズオーバー」であると判定する。
【0073】
上述の介在物判別装置での処理(介在物判別方法)における各ステップは、MEMORY109に格納されている介在物判別プログラムをCPU108に実行させることにより実現されるものである。
【0074】
本実施の形態では装置内部に発明を実施する機能が予め記録されている場合で説明をしたが、これに限らず同様の機能をネットワークから装置にダウンロードしても良いし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものを装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等プログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と共働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0075】
なお、上述の実施の形態では、介在物の判定を行う対象となる材料は鋼材である例を挙げたが、これに限られるものではなく、例えば木材や石材等の他の材料であってもよい。
【0076】
また、上述の実施の形態では、輝度画像から介在物を抽出するための閾値が2つである例を挙げているが、これに限られるものではなく、検査対象となる材料に含まれている可能性のある介在物の種類分の閾値(例えば、閾値を3つ設ける等)を用いてもよい。
【0077】
本発明を特定の態様により詳細に説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱しないかぎり、様々な変更および改質がなされ得ることは、当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施の形態による介在物判別装置について説明するための機能ブロック図である。
【図2】本実施の形態による介在物判別装置における処理(介在物判別方法)の流れについて説明するためのフローチャートである。
【図3】撮像画像から抽出される画素について説明するための図である。
【図4】本実施の形態による介在物判別方法の処理の詳細な流れについて説明するためのフローチャートである。
【図5】図4における二重構造介在物の判定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4における介在物の材質判定の処理の詳細について説明するためのフローチャートである。
【図7】判定対象である領域sと当該領域sに外接する長方形(矩形)Sを示す図である。
【図8】材料中に存在する介在物の態様と従来の問題点について説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
101 画像取得部、102 変換部、103 第1の抽出部、104 第1の判別部、105 第2の抽出部、106 第2の判別部、107 判別結果判定部、108 CPU、109 MEMORY。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の撮像画像に基づいて、該材料に含まれる介在物の判別処理を行う介在物判別装置であって、
前記撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像を輝度画像に変換する変換部と、
前記変換部にて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第1の抽出部と、
前記第1の抽出部にて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第1の介在物を判別する第1の判別部と、
前記変換部にて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、前記第1の所定輝度よりも高輝度に設定された第2の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第2の抽出部と、
前記第2の抽出部にて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第2の介在物を判別する第2の判別部と
を有することを特徴とする介在物判別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の介在物判別装置において、
前記第1の判別部は、前記第1の抽出部にて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第1の介在物であると判別するものであり、
前記第2の判別部は、前記第2の抽出部にて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第2の介在物であると判別するものであり、
前記第2の判別部にて第2の介在物であると判別された領域を構成する画素の内、前記第1の判別部にて第1の介在物であると判別された領域を構成する画素については、前記第1の介在物の領域を構成する画素であると判定する判別結果判定部を有することを特徴とする介在物判別装置。
【請求項3】
請求項2に記載の介在物判別装置において、
前記判別結果判定部は、前記第1の判別部にて第1の介在物であると判別された領域と、前記第2の判別部にて第2の介在物であると判別された領域とが、前記撮像画像上において所定の位置関係で重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定することを特徴とする介在物判別装置。
【請求項4】
請求項2に記載の介在物判別装置において、
前記判別結果判定部は、前記撮像画像上において、前記第1および第2の判別部の内いずれか一方にて判別された介在物の領域の所定の割合以上の面積が、前記第1および第2の判別部の内いずれか他方にて判別された介在物の領域と重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定することを特徴とする介在物判別装置。
【請求項5】
請求項2に記載の介在物判別装置において、
前記第1および第2の判別部は、介在物であると判別された領域に外接する矩形内の面積を該領域の面積で割った値が、所定の閾値よりも大きい場合、該領域は傷であると判別することを特徴とする介在物判別装置。
【請求項6】
材料の撮像画像に基づいて、該材料に含まれる介在物の判別処理を行う介在物判別方法であって、
前記撮像画像を取得する画像取得ステップと、
前記撮像画像を輝度画像に変換する変換ステップと、
前記変換ステップにて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第1の抽出ステップと、
前記第1の抽出ステップにて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第1の介在物を判別する第1の判別ステップと、
前記変換ステップにて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、前記第1の所定輝度よりも高輝度に設定された第2の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第2の抽出ステップと、
前記第2の抽出ステップにて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第2の介在物を判別する第2の判別ステップと
を有することを特徴とする介在物判別方法。
【請求項7】
請求項6に記載の介在物判別方法において、
前記第1の判別ステップは、前記第1の抽出ステップにて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第1の介在物であると判別するものであり、
前記第2の判別ステップは、前記第2の抽出ステップにて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第2の介在物であると判別するものであり、
前記第2の判別ステップにて第2の介在物であると判別された領域を構成する画素の内、前記第1の判別ステップにて第1の介在物であると判別された領域を構成する画素については、前記第1の介在物の領域を構成する画素であると判定する判別結果判定ステップを有することを特徴とする介在物判別方法。
【請求項8】
請求項7に記載の介在物判別方法において、
前記判別結果判定ステップは、前記第1の判別ステップにて第1の介在物であると判別された領域と、前記第2の判別ステップにて第2の介在物であると判別された領域とが、前記撮像画像上において所定の位置関係で重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定することを特徴とする介在物判別方法。
【請求項9】
請求項7に記載の介在物判別方法において、
前記判別結果判定ステップは、前記撮像画像上において、前記第1および第2の判別ステップの内いずれか一方にて判別された介在物の領域の所定の割合以上の面積が、前記第1および第2の判別ステップの内いずれか他方にて判別された介在物の領域と重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定することを特徴とする介在物判別方法。
【請求項10】
請求項7に記載の介在物判別方法において、
前記第1および第2の判別ステップは、介在物であると判別された領域に外接する矩形内の面積を該領域の面積で割った値が、所定の閾値よりも大きい場合、該領域は傷であると判別することを特徴とする介在物判別方法。
【請求項11】
材料の撮像画像に基づいて、該材料に含まれる介在物の判別処理をコンピュータに実行させる介在物判別プログラムであって、
前記撮像画像を取得する画像取得ステップと、
前記撮像画像を輝度画像に変換する変換ステップと、
前記変換ステップにて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、第1の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第1の抽出ステップと、
前記第1の抽出ステップにて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第1の介在物を判別する第1の判別ステップと、
前記変換ステップにて変換された輝度画像に含まれる画素のうち、前記第1の所定輝度よりも高輝度に設定された第2の所定輝度よりも低い輝度を有する画素を抽出する第2の抽出ステップと、
前記第2の抽出ステップにて抽出された画素に関する情報に基づいて、前記材料に含まれる第2の介在物を判別する第2の判別ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする介在物判別プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の介在物判別プログラムにおいて、
前記第1の判別ステップは、前記第1の抽出ステップにて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第1の介在物であると判別するものであり、
前記第2の判別ステップは、前記第2の抽出ステップにて抽出された画素の座標に基づいて、隣接する複数画素からなる領域を第2の介在物であると判別するものであり、
前記第2の判別ステップにて第2の介在物であると判別された領域を構成する画素の内、前記第1の判別ステップにて第1の介在物であると判別された領域を構成する画素については、前記第1の介在物の領域を構成する画素であると判定する判別結果判定ステップを有することを特徴とする介在物判別プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載の介在物判別プログラムにおいて、
前記判別結果判定ステップは、前記第1の判別ステップにて第1の介在物であると判別された領域と、前記第2の判別ステップにて第2の介在物であると判別された領域とが、前記撮像画像上において所定の位置関係で重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定することを特徴とする介在物判別プログラム。
【請求項14】
請求項12に記載の介在物判別プログラムにおいて、
前記判別結果判定ステップは、前記撮像画像上において、前記第1および第2の判別ステップの内いずれか一方にて判別された介在物の領域の所定の割合以上の面積が、前記第1および第2の判別ステップの内いずれか他方にて判別された介在物の領域と重なる場合、該二つの領域は二重構造介在物を構成すると判定することを特徴とする介在物判別プログラム。
【請求項15】
請求項12に記載の介在物判別プログラムにおいて、
前記第1および第2の判別ステップは、介在物であると判別された領域に外接する矩形内の面積を該領域の面積で割った値が、所定の閾値よりも大きい場合、該領域は傷であると判別することを特徴とする介在物判別プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−232959(P2008−232959A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75744(P2007−75744)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】