説明

介護用リフト装置

【課題】 介護者が一人でも十分に被介護者を移動することができ、かつ、被介護者においても、移動の際に無理に体を起こされたり、スリングシートを取り付けられたりせず、横になっている状態から楽に持ち上げられ、移動ができ、車椅子などにもそのまま座ることができ、さらに、浴室でも安心して使用できる介護用リフト装置を提供するものである。
【解決手段】 介護者を寝た状態で載せて持ち上げるための支持台と、該支持台に接続される垂直アームと、該垂直アームに接続され、水平に旋回する水平アームと、該水平アームに接続されるバランス装置とからなり、該バランス装置は、水平アームが上下動するためのスライド手段が設けられ、水平アームを吊り上げ、滑車を介してバランスさせるためのウェイト部材が設けられ、水平アームに架かる荷重をバランスさせることができることを特徴とする介護用リフト装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護者が被介護者をベッドから容易に持ち上げることができ、また、容易に車椅子などに載せたり、持ち上げたまま浴槽に入れることができる介護用リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、介護用リフトは種々開発されている。
【0003】
たとえば、特開2002−126015号公報では、アーム先端にハンガーを取り付け、ハンガーのフックに掛けたスリングシートに被介護者を乗せて、被介護者を持ち上げ、吊り下げるようにし、スライド式支持構造体で、吊り上げた状態で水平方向にスライドさせて、車椅子に移動できるようにした介護用リフト装置が開示されている。
【0004】
また、特許第3879875号公報では、被介護人を安定よく移動させながら車椅子や介護者の移動障害になりにくいように工夫された介護用リフトが開示されている。
【0005】
これらの介護用リフトは、電動モーターを使用して、吊り上げ、移動できるものであり、介護者は、女性一人でも操作できる。
【0006】
また、特開2001−333956号公報では、手動式の椅子付きの吊り装置と、旋回アーム装置により、被介護者を椅子に腰かけた状態で浴槽に入水させて体を洗うことができる介護用入浴装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−126015号公報
【特許文献2】特許第3879875号公報
【特許文献3】特開2001−333956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の介護用リフト装置は、被介護者をスリングシートや椅子などに載せて移動するものであり、介護者は、被介護者を起こして椅子に載せたり、またはスリングシートを取り付けたりする必要があり、介護者が一人の場合には、大変であった。
【0009】
また、被介護者も体を起こされたり、普段つけ慣れていないスリングシートを取り付けるなど、きつい動作を強いられることとなる。
【0010】
また、入浴の場合には、浴室での移動となるため、電気機器は、防水対策をしても浴室内の湿気などにより、漏電などの危険があるため、電動式の移動リフトは使用できない。
【0011】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、介護者が一人でも楽に被介護者を移動することができ、かつ、介護者においても、移動の際に無理に体を起こしたり、スリングシートを取り付けられたりせず、横になっている状態から楽に持ち上げられ、移動ができ、車椅子などにもそのまま載せることができ、さらに、浴室でも安全に使用できる介護用リフト装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の諸課題を解決するために、請求項1では、介護者を寝た状態で載せて持ち上げるための支持台と、該支持台の側部に接続される垂直アームと、該垂直アームに接続され、水平に旋回する水平アームと、該水平アームに接続されるバランス装置とからなり、
【0013】
該バランス装置は、水平アームが上下動するためのスライド手段が設けられ、水平アームを吊り上げ、滑車を介してバランスさせるためのウェイト部材が設けられ、水平アームに架かる荷重をバランスさせ、該支持台を任意の位置で保持でき、わずかな力で自由に移動できることを特徴とする介護用リフト装置とするものである。
【0014】
該支持台は、被介護者がその上に横になれる大きさであり、被介護者の体重により歪まない程度の強度を有する板状の台であればいずれでも良い。
上面には、寝心地が良いように、布やクッション材を敷いたものでも良い。
【0015】
該垂直アームは、支持台の側部に接続される支持アームであり、支持台をしっかりと支持できる強度を有するものであり、水平アームに接続されるものである。たとえば、パイプ状のアームなどでも良く、長さを調整できる伸縮手段が設けられているものでも良い。
【0016】
該水平アームは、水平に旋回できる構造のアーム部材であればいずれでも良く、支持台と垂直アームを支持できる強度を有するものであり、アームの途中で水平方向に屈曲できるようになったものでも良い。
【0017】
該バランス装置は、水平アームの端部が接続され、水平アームを水平に支持した状態で、上下に移動できるスライド手段と、水平アームに架かる荷重と同程度の重量のウェイト部材(重り)でバランスさせるための滑車が設けられ、支持台を任意の位置で保持でき、わずかな力で自由に移動させることができるものである。
【0018】
該スライド手段は、水平アームの端部を接続し、該アームを水平状態で上下にスライドできるものであればいずれでも良い。たとえば、2重パイプの外側のパイプに水平アームの端部を固定し、上下動できるようにしても良い。
【0019】
該滑車は、水平アームが接続されたスライド手段と、ウェイト部材(重り)とをバランスするようにワイヤーなどで支えるための滑車である。バランスできる構成であれば、複数の滑車を用いても良い。
【0020】
該ウェイト部材は、前記の水平アームに架かる荷重と同程度の重量の重りであり、重量が適切であれば、材質はいずれでも良い。また、重量を調整できるように、複数のウェイト部材を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0021】
被介護者の体重の変化(服装の変化や医療器具を装着するなど)に合わせて、ウェイト部材の重量を調整できるようにすると良い。
【0022】
バランス装置により、支持台がバランス状態となると、介護者は一人で自由に被介護者を移動することが可能となる。
【0023】
該バランス装置は、ベッドのそばの壁面に固定したものでも良く、天井や床に支持部材を介して固定したものでも良い。浴室の場合には、取り付け取り外しができる構造としても良い。さらに、移動用の車輪を設けたものでも良い。
【0024】
本介護用リフトは、電気を使用しないので、浴室でも安心して使用することができ、バランスさせて使用するため、介護者は移動のために力を必要とせず、一人でも、また女性でも十分に操作できる。
【0025】
請求項2では、前記の支持台を任意の位置で動かないように固定するためのブレーキ手段が設けられていることを特徴とする介護用リフト装置とするものである。
【0026】
該ブレーキ手段は、支持台を任意の位置で固定できるものであればいずれでも良い。たとえば、ブレーキ操作により、前記のバランス装置の上下動させるスライド手段がロックがされ、同時に水平アームの旋回がロックされ、さらに垂直アームの可動部がロックされるものである。
【0027】
該ブレーキ手段の操作部は、支持台に設けられていることが好ましい。支持台の側部に支持台を操作するための取っ手を設け、その取っ手にブレーキレバーが設けられたものでも良い。
【0028】
このブレーキレバーの操作により、水平アームの旋回軸、垂直アームの可動軸、上下スライド手段とが同時にロックされ、支持台が任意の位置で固定されるものでも良く、逆に、ブレーキレバーを握って、移動し、外すとロックされるようにしても良い。
【0029】
請求項3では、前記の支持台は、2か所で屈曲させて、椅子形状とすることができることを特徴とする介護用リフト装置とするものである。
【0030】
該支持台は、介護者が寝ている状態から座っている状態に、自然に変化させることができるように、足部のひざ下部分と、座部と、背もたれ部とに分かれて屈曲できるように、2か所が屈曲できるようになっているものである。
【0031】
垂直アームは、座部の側部に接続されていると良く、足の部分が下がり、背もたれの部分が立ち上がるように屈曲するものである。所定の角度で固定できるようにすると良い。
【0032】
請求項4では、前記の椅子形状となった支持台を載置固定するための車椅子としたものである。
【0033】
前記の介護用リフト装置で、介護者をベッドから移動し、車椅子に載せ換えずに、支持台を屈曲させて椅子形状とし、そのまま、車椅子に移動して載せ、垂直アームを取り外すものである。
【0034】
従来の車椅子の椅子部分を取り除き、上記の椅子形状となった支持台を載せて、固定できるようにしたものでも良い。
【発明の効果】
【0035】
本発明は以下の効果を奏する。
1)バランス装置により、支持台がバランス状態であるため、わずかな力で自由に移動させることができる。
【0036】
2)ブレーキ手段により、任意の状態で固定することができ、安全に被介護者を移動することができる。
【0037】
3)一人でも、楽に操作できるので、家庭などでの介護が可能となる。
【0038】
4)電気を使用しないので、浴室でも感電などの心配がなく、安全に操作できる。
【0039】
5)ウェイト部材を調整することで、介護者の重量の変化に合わせて、簡単にバランスを調整できる。
【0040】
6)支持台が水平状態で使用できるため、介護者を載せることが容易であり、体を起こして載せるなどの介護者へ負担をかけることがない。
【0041】
7)支持台は、水平状態から椅子形状に変化させることができるので、車椅子への移動の際にも、乗り換える必要がなく、支持台に乗ったまま車椅子に移動できる。
【0042】
8)車椅子から浴槽に移動する場合にも、支持台に乗ったままで浴槽内に移動でき、介護者及び被介護者の負担が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による介護用リフト装置の実施例を示す概略図である。
【図2】本発明による介護用リフト装置の支持台のブレーキ部の実施例を示す概略図である。
【図3】本発明による介護用リフト装置のバランス装置の実施例を示す概略図である。
【図4】本発明による介護用リフト装置の支持台の車椅子への移動例を示す概略図である。
【図5】本発明による介護用リフト装置による浴室での移動例を示す図である。
【図6】本発明による介護用リフト装置による浴槽への移動例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0045】
図1は、本発明によるる介護用リフト装置の実施例を示す概略図である。本実施例は、ベッドの傍の壁面に取り付けた場合の実施例を示す。(1)は、介護用リフト装置の斜視図であり、(2)は支持台をベッドに載せた状態を示す図である。
【0046】
本介護用リフト装置は、(1)に示すように、被介護者を載せて移動するための支持台1と、該支持台1を支持する垂直アーム2、水平アーム3と、水平アーム3に架かる荷重をバランスさせて支えるバランス装置4とで構成されている。
【0047】
被介護者を乗せる場合には、(2)に示すように、ベッド5の上面に支持台1を水平状態にして置き、被介護者を支持台1に移動して乗せる。
【0048】
支持台1は水平状態であるので、被介護者をベッド5から支持台1にずらすことで、簡単に乗せることができる。
【0049】
該支持台1は、2か所14、15で屈曲できる構造となっており、屈曲させることで椅子形状に変化させることができる。
【0050】
屈曲により、図4に示すように、背もたれ部16と、座部17と、足部18となる。
【0051】
また、支持台1の側部には、支持台1を自由に操作するための取っ手部21が設けられており、該取っ手部21には、支持台1を任意の位置で固定できるブレーキレバー22が設けられている。
【0052】
図2は、本発明による介護装置の支持台のブレーキ部を示す概略図である。
【0053】
この取っ手部21は着脱できる構造となっており、支持台1の側部に取付、取り外しができる構造となっている。
【0054】
該取っ手部21には、ブレーキレバー22が設けられており、このブレーキレバー22には、ワイヤーチューブ22aが接続されており、垂直アーム2、水平アーム3を経由して、バランス装置4まで接続され、各々、可動部のブレーキに連結され、ブレーキレバー22の操作により、同時に各可動部がロックされる構造となっている。
【0055】
このブレーキでは、ブレーキレバー22を解放した状態でブレーキがかかり、ブレーキレバー22を握った状態でブレーキが解除されるようになっている。
【0056】
このため、介護者は、ブレーキレバー22を握った状態で支持台を移動させ、任意の位置でブレーキレバー22を解放することで支持台が固定される。ブレーキレバー22の解放状態でブレーキがロックされるので安心して介護作業を行うことができる。
【0057】
図3は、介護用リフト装置のバランス装置の構成を示す図である。
【0058】
(1)は、バランス装置4の前面パネル6を外した状態を示す図であり、(2)は、上下スライド手段7を示す概略図である。
【0059】
水平アーム3の取付部8は、滑車9を介してウェイト部材10にワイヤー11で接続されている。該ウェイト部材10は、複数の金属板23を重ねて設けられており、水平アーム3に架かる荷重にバランスするように、金属板23を設定できるようになっている。
【0060】
また、水平アーム3の取付部8は、図2の(2)に示すように、2重パイプ状のスライド手段7が設けられており、内側の軸パイプ12に対して、外側の可動パイプ13が上下動するものであり、外側の可動パイプ13に水平アーム3の取付部材8が設けられ、水平アーム3を水平状態に保持して上下動できるようになっている。
【0061】
図4は、本発明の介護用リフト装置の支持台を車椅子に移動する場合の移動例を示す図である。
【0062】
(1)に示すように、支持台1を水平状態から、静かに背もたれ部16を起こしていき、逆に足部18を下げていき、図のように、椅子形状とする。
【0063】
この状態で、水平アーム3を旋回し、ベッド5の傍らに置いた、図3(2)に示す座席部を取り除いた車椅子19に、この椅子形状となった支持台1をそのまま載せて、垂直アーム3及び取っ手部22を取り外し、図3(3)のように車椅子の座席とする。支持台は、動かないように車椅子に固定することが好ましい。
【0064】
図5は、本発明による介護用リフト装置を浴室において使用する場合の使用例を示す。
【0065】
椅子形状として車椅子19に設置した支持台1に垂直アーム3を接続し、車椅子19から支持台1を取り外して、介護者を支持台1に乗せたままで、乗せ換えせずに、浴槽20まで移動できる。
【0066】
図6は、浴槽内への支持台の移動例を示す図であり、(1)は、支持台1を椅子形状のままで浴槽20に移動する場合を示している。(2)は、支持台1を水平状態として浴槽20に移動する場合の使用例を示す。
【0067】
本発明では、バランス装置4により、被介護者を支持台1に乗せてもバランスされているため、片手で簡単に移動操作することができる。
【0068】
また、ブレーキ手段が設けられており、取っ手部21のブレーキレバー22を放している状態でブレーキがかかり、レバー22を引いた状態でブレーキが解除されるようになっているため、被介護者の体を洗っているときは、ブレーキレバー22を放しているのでブレーキがかかっており、安全に身体を洗うことができる。
【0069】
このように、本発明の介護用リフト装置を浴室で使用する場合には、一人でも簡単に、かつ被介護者を自由に、かつ安全に移動して体を洗うことができるため、家族で介護する必要がある家庭介護などにも安心して活用できる。
【0070】
また、支持台を水平状態でも椅子状態でもいずれの状態でも同様にわずかな力で自由に移動操作が可能であり、被介護者の介護の程度に応じて、自由に姿勢を変えて入浴させることが可能であり、被介護者への負担も大きく軽減されるものである。
【0071】
従来、被介護者を移動することが大変であることから、被介護者が利用できる施設、たとえば、各種の介護施設や公共施設に出かけて入浴をする場合や、講演や話し合いの場に出かけるなど、本来、被介護者にとって必要である、コミュニケーションの機会が多くあるにも関わらず、介護の問題から、十分な施設の利用ができていないのが現状である。
【0072】
このような場合においても、本発明の介護装置を各施設に設置することにより、介護が容易となり、介護者も一人で対応できるため、車椅子を必要とするお年寄りなどの被介護者が各施設を利用する機会を増やすことができ、家庭介護の労力を大幅に軽減できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の介護用リフト装置は、バランス装置により旋回アームに架かった荷重をバランスさせて、負荷のない状態で移動操作ができるので、車両などに荷物を積み下ろしする場合なども使用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 支持台
2 垂直アーム
3 水平アーム
4 バランス装置
5 ベッド
6 前面パネル
7 スライド手段
8 水平アーム取付部
9 滑車
10 ウェイト部材
11 ワイヤー
12 軸パイプ
13 可動パイプ
14、15 屈曲部
16 背もたれ部
17 座部
18 足部
19 車椅子(座席除去)
20 浴槽
21 取っ手部
22 ブレーキレバー
22a ワイヤーチューブ
23 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
介護者を寝た状態で載せて持ち上げるための支持台と、該支持台の側部に接続される垂直アームと、該垂直アームに接続され、水平に旋回する水平アームと、該水平アームに接続されるバランス装置とからなり、
該バランス装置は、水平アームが上下動するためのスライド手段が設けられ、水平アームを吊り上げ、滑車を介してバランスさせるためのウェイト部材が設けられ、水平アームに架かる荷重をバランスさせ、該支持台を任意の位置で保持でき、わずかな力で自由に移動できることを特徴とする介護用リフト装置。
【請求項2】
前記の支持台を任意の位置で動かないように固定するためのブレーキ手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の介護用リフト装置。
【請求項3】
前記の支持台は、2か所で屈曲させて、椅子形状とすることができることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の介護用リフト装置。
【請求項4】
前記の請求項3に記載の椅子形状となった支持台を載置固定するための車椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−41728(P2011−41728A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192754(P2009−192754)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(309024077)
【Fターム(参考)】