説明

仮設配管用継手付樹脂管、仮設配管用継手付樹脂管の連結構造、仮設配管管路及び金属製継手

【課題】配管同士の接続作業が容易であり、漏水が起こり難く、配管等の再利用が容易に行える継手付樹脂管、継手付樹脂管の連結構造及びこれらを用いた管路を提供する。
【解決手段】仮設配管用継手付樹脂管は、合成樹脂製の管本体1,2と、該管本体の端部に固定される金属製継手として受け口部材10又は挿し口部材20とからなる。受け口部材10が管本体1の一方端部に固定され、挿し口部材20が他方端部に固定される。受け口部材10は管本体1が挿入される被挿入部12aと、被挿入部と連通し挿し口部材を受け入れるべく軸方向に延在する内周面を有する受け口部11とを備える。挿し口部材20は管本体2が挿入される被挿入部22aと、被挿入部と連通し受け口部11に挿入された状態で受け口部材の内周面と対向する外周面を有する挿し口部21とを備え、管本体1,2の端面は被挿入部に内包される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管等を連結して管路を構成する仮設配管用継手付樹脂管に係り、特に、水道管の更新や補修工事の際、断水させないための仮設の管路に最適な継手付樹脂管と、この継手付樹脂管を連結する連結構造、仮設配管管路及び金属製継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水道管等の管継手構造としては、ポリエチレン製パイプの両端に、締付用フランジを備えたポリエチレン製フランジ接続部を突き合せ融着して形成されたポリエチレン製パイプを、前記各フランジ同士が対向するように複数本を直列状に配設し、対向せしめた両フランジの外周面にリング状のパッキン材を介設してその外方に挿着した二つ割り状の接続金具を縮径方向に締め込むことにより、前記両フランジを引き寄せ方向に締込み固定し、全ての前記仮設水道管路の各構成部材を前記接続金具の締込みによりリング状のパッキン材を介して順次気密状に且つ解離自在に連結する構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の仮設用水道管路は、ポリエチレン製の管本体と、同じくポリエチレン製の接続ヘッドとからなる管を使用し、接続ヘッドは、管本体の両端にバッドフュージョン方式で直接結合される。そして、接続ヘッドの先端部外周にはリング状の係止用細溝があり、管の接続は、突合せ配置した両接続ヘッドを、係止用細溝を利用して適当な接続具で行う(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、現状の水道管工事で、既設の古い水道管を交換する場合、近隣住民に断水等の不便をかけないために仮設の水道管を敷設している。この場合、仮設水道管として鋼管、ポリエチレン管(PE管)を継手等で接続して仮設管路を構成している。PE管は軽量で作業性がよいと共に、柔軟で地盤形状に追従し耐震性に優れており、鋼管は重量が大きく作業性が悪いが強度が大きいという長所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4137562号公報
【特許文献2】特開2002−327859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1及び2に記載の技術では、パッキン材の取付け、接続金具のボルトの締め付け等で作業性が悪く、ポリエチレン製のフランジは突き合わせで連結されるため強度が小さく、管に曲げや引張りが加わった際にフランジが変形しやすく、漏水しやすいという問題点があった。また、管端に管端接続部をバットフュージョン方式で融着する必要があるため、切り管などには対応できないという問題点もあった。さらに、鋼管を用いて仮設管路を構成する場合、口径が大きくなると重量が大きく作業性が悪く、取り外す際にも固く抜き難いという問題点もあった。また、仮設管路を構成した管本体、継手、その他の部材等を再使用する場合、各部材に傷が付く等の不具合が発生し、リユースに最適な管本体や継手等を用いた仮設管路はなかった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、配管同士の連結部分の強度が大きく、耐震性に優れており、連結作業が容易で、漏水が起こり難く、配管等の再利用が容易に行える仮設配管用継手付樹脂管、仮設配管用継手付樹脂管の連結構造、仮設配管管路及び金属製継手を提供することにある。また、仮設配管管路を構成した管本体や継手等の部材を撤去したとき、各部材は再使用しやすい状態であり、各部材に傷等が付き難く、再使用をしたときに安定した品質を保つことができる仮設配管用継手付樹脂管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明に係る仮設配管用継手付樹脂管は、合成樹脂製の管本体と、受け口部材及び挿し口部材とからなり、該両部材の接合により管路を接続可能とする金属製継手のうち、前記受け口部材が該管本体の一方端部に固定され、前記挿し口部材が他方端部に固定された仮設配管用継手付樹脂管であって、前記受け口部材及び挿し口部材が前記管本体に装着された状態のまま運搬・配管・解体・保管され繰り返し利用されることを特徴としている。このように構成された仮設配管用継手付樹脂管では、受け口部材及び挿し口部材が管本体に装着された状態のまま運搬・配管・解体・保管されるため、仮設配管管路を撤去する労力を少なくできると共に、再使用の労力を削減でき、効率良く仮設配管管路の設置や撤去を行うことができる。
【0009】
本発明に係る継手付樹脂管の好ましい具体的な態様としては、前記受け口部材は、前記管本体が挿入される被挿入部と、該被挿入部と連通し前記挿し口部材を受け入れるべく軸方向に延在する内周面を有する受け口部とを備え、前記挿し口部材は、前記管本体が挿入される被挿入部と、該被挿入部と連通し接続される仮設配管用継手付樹脂管の前記受け口部に挿入された状態で前記内周面と対向する外周面を有する挿し口部とを備え、前記管本体の端面は前記被挿入部に内包されることを特徴としている。前記のごとく構成された本発明の仮設配管用継手付樹脂管では、軽量な合成樹脂製の管本体を金属製の継手である受け口部材や挿し口部材を使用し、受け口部材の受け口部に挿し口部材の挿し口部を挿入し、受け口部の外周面と挿し口部の内周面とを対向させ、管本体の端面を被挿入部に内包しており、複数の管本体を強固に連結して仮設配管管路を形成することができ、地震等で仮設配管管路に外力が加わっても変形を抑えることができる。
【0010】
また、本発明に係る継手付樹脂管の好ましい他の具体的な態様としては、前記受け口部材又は挿し口部材の一方が係合爪部を有し、前記受け口部材又は挿し口部材の他方が前記係合爪部に正転で係合し逆転で解除する止め金具を有し、前記係合爪部と前記止め金具との協働によりバイオネット連結部を構成する構造を有することを特徴としている。この構成によれば、止め金具を正転することで、受け口部材又は挿し口部材の一方の係合爪部を他方に係合させ、逆転することで解除することができ、バイオネット連結部により簡単な操作で継手付樹脂管を連結することができる。
【0011】
前記受け口部材は、前記被挿入部と前記受け口部との間に突出する内部突起を有し、前記挿し口部材は、前記被挿入部と前記挿し口部との間に突出する内部突起を有することが好ましく、前記受け口部材及び挿し口部材の内部突起は、前記被挿入部の内壁に沿って円周状に形成され、前記管本体の外周より小さい内径で形成されることが好ましい。そして、前記仮設配管用継手付樹脂管は、前記管本体の端部内周に位置する筒状部材を備えており、該筒状部材の端部は、前記内部突起に当接することが好ましい。このように構成された仮設配管用継手付樹脂管では、管本体の端部に筒状部材を挿し込み、この端部を受け口部材や挿し口部材の円周状の内部突起に当接させて軸芯を合わせることができ、管本体の連結を容易に行なうことができる。なお、筒状部材の材質は金属等、適宜の材質を使用することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る継手付樹脂管の好ましい具体的な他の態様としては、前記受け口部材は、前記被挿入部の内周面に止水部材を有し、該止水部材が前記管本体の外周面に接触し、前記挿し口部材は、前記被挿入部の内周面に止水部材を有し、該止水部材が前記管本体の外周面に接触し、前記受け口部材は、前記受け口部と反対側の外周面に連結された固定リングとその内部に爪リングを有し、前記固定リングにより該爪リングを前記管本体の外周面に押圧することで該管本体の端部に固定され、前記挿し口部材は、前記挿し口部と反対側の外周面に連結された固定リングとその内部に爪リングを有し、前記固定リングにより該爪リングを前記管本体の外周面に押圧することで該管本体の端部に固定されることを特徴としている。この構成によれば、固定リングにより爪リングを管本体の外周面に押圧して、強固に連結することができる。
【0013】
さらに、前記管本体は、耐候性を有する被覆を外周面に備えることが好ましい。このように構成された仮設配管用継手付樹脂管では、合成樹脂製の管本体を金属製の継手で連結して水道管等の仮設配管管路を形成し、この管路が土中に埋設されず露出している場合でも、外光や天候による樹脂製管本体の強度低下を防止することができる。また、前記管本体は、異形管であってもよい。チーズやエルボ等の直管でない樹脂管や、特殊形状の樹脂管等の異形管の場合でも、金属製の継手として受け口部材や挿し口部材を端部に固定して、容易に仮設配管管路を構成することができる。
【0014】
本発明に係る仮設配管用継手付樹脂管の連結構造では、前記受け口部材及び挿し口部材は、前記受け口部に前記挿し口部が嵌合したとき前記挿し口部の外周面と前記受け口部の内周面との間に止水部材が介在され、前記止め金具により前記受け口部材及び挿し口部材の一方に備えられた係合爪部をその他方に係合させて前記受け口部材と前記挿し口部材とを連結することを特徴としている。このように構成された継手付樹脂管の連結構造では、挿し口部の外周面と受け口部の内周面との間に装着されたOリング等の止水部材により漏水が防止され、止め金具で係合爪部を係合させて受け口部材と挿し口部材とを連結するため、連結作業が容易となり確実に連結することができる。
【0015】
前記止め金具は、その外周に複数の操作用の突起が形成されていると好ましい。この構成によれば、外周の操作用の複数の突起に指をかけ、止め金具を容易に回転させて管本体同士を容易に連結することができる。また、前記止め金具は、前記受け口部材又は挿し口部材の少なくとも一方に係合する回転防止手段により、その回転が阻止されることが好ましい。この構成によれば、止め金具が不用意に回転することがなく、連結状態を安定させることができる。
【0016】
本発明に係る仮設配管管路は、前記のいずれかに記載の仮設配管用継手付樹脂管を用いて構成している。この構成によれば、軽量で変形が許容される樹脂管を、金属製の強固な継手で連結し、地震等による外力が加わっても、変形による漏水が防止され、安定した仮設配管管路を構成することができる。また、本発明に係る金属製継手は、前記のいずれかに記載の仮設配管用継手付樹脂管に用いられているものである。この構成によれば、金属製継手を合成樹脂製の樹脂管の端部に装着して、容易に仮設配管管路を構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の仮設配管用継手付樹脂管及びその継手付樹脂管の連結構造は、軽量の合成樹脂管を金属製の継手で連結するため、施工が容易で、地震等で仮設配管管路に外力が作用しても管路が変形して漏水が発生することを防止できる。また、被挿入部の内周面にOリング等の止水部材を有しており、この止水部材が管本体の外周面に接触しており、挿し口部の外周面と受け口部の内周面との間にOリング等の止水部材が介在されているため、漏水を防止することができる。また、受け口部材及び挿し口部材が管本体に装着された状態のまま運搬・配管・解体・保管されるため、再使用が効率良く行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る継手付樹脂管の連結構造を示す一実施形態を示し、(a)は一部を破断した正面図、(b)はそのD1−D1線断面図、(c)はそのD2−D2線断面図。
【図2】図1の連結構造で使用する受け口部材を示し、(a)は左側面図、(b)はそのD3−D3線に沿う一部破断の正面図、(c)は右側面図、(d)はそのD4−D4線に沿う要部矢視図。
【図3】図1の連結構造で使用する挿し口部材を有し、(a)は左側面図、(b)はそのD5−D5線に沿う一部破断の正面図、(c)は右側面図。
【図4】図1の連結構造で使用する止め金具を示し、(a)は左側面図、(b)はそのD6−D6線に沿う一部破断の正面図、(c)は右側面図、(d)はそのD7−D7線に沿う矢視図。
【図5】図1の連結構造で使用する固定リングを示し、(a)は左側面図、(b)はそのD8−D8線に沿う一部破断の正面図、(c)は右側面図。
【図6】図1の連結構造で使用する爪リングを示し、(a)は左側面図、(b)はそのD9−D9線に沿う断面図、(c)は受け口部材と爪リングと固定リングの固定部、及びインナーコアと内部突起の当接部の詳細を示す要部断面図。
【図7】図1の連結構造で使用するインナーコアを示し、(a)はその一部を破断した正面図、(b)は右側面図。
【図8】図1の連結構造で使用する回転防止手段を示し、(a)は、ストッパの斜視図、(b)はその平面図、(c)は一部を破断した左側面図、(d)は(a)のD10−D10線に沿う要部断面図、(e)は結束バンドを示す斜視図。
【図9】本発明に係る継手付樹脂管と、その連結構造を用いて構成した仮設配管管路のシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る継手付樹脂管と、その連結構造の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る継手付樹脂管を連結した状態を示す一部を破断した正面図と断面図であり、図2は図1で使用する継手としての受け口部材の左側面図、一部破断正面図、右側面図要部矢視図であり、図3は図1で使用する継手として挿し口部材の左側面図、一部破断正面図、右側面図であり、図4は受け口部材と挿し口部材とを連結する止め金具の左側面図、一部破断正面図、右側面図要部矢視図であり、図5は受け口部材及び挿し口部材を管本体に固定する固定リングの左側面図、一部破断正面図、右側面図であり、図6は固定リングで管本体に押圧される爪リングの左側面図、断面図であり、図7は管本体の端部内周にはめ込むインナーコアの一部破断正面図、右側面図であり、図8は回転防止手段を示すストッパの斜視図、平面図、一部破断左側面図、要部断面図、結束バンドの斜視図である。
【0020】
図1〜8において、管本体1,2は合成樹脂製のパイプで構成され、例えばポリエチレン製の押出成形されたパイプで、呼び径が100mm、75mm、50mm等のものが用いられる。管本体1,2は金属製の鋼管と比較して軽量であり、強度は鋼管と比較して低い構成となっている。本実施形態では、古くなった上水道の水道管を断水させずに交換するべく、仮設の水道管路を形成するために、合成樹脂製の管本体を金属製の継手で連結して仮設配管管路を形成するためのものである。
【0021】
管本体1の一方の端部には継手の一方として受け口部材10が固定され、他方の管本体2の端部には継手の他方として挿し口部材20が固定される。1つの管本体の一端に受け口部材10を固定し、他端に挿し口部材20を固定して継手付樹脂管を構成してもよい。管本体1の一方の端部(右端)に継手として受け口部材10が固定され、管本体2の他方の端部(左端)に他方の継手として挿し口部材20が固定され、受け口部材10に形成された受け口部11に、挿し口部材20に形成された挿し口部21を挿入させて連結することで継手付樹脂管の連結構造が構成される。受け口部材10及び挿し口部材20は金属で構成され、具体的にはアルミニウム鋳物や鋳鉄等で構成され、合成樹脂製の管本体1,2と比較して重量が大きく強度の大きいものである。受け口部材10や挿し口部材20が管本体1,2に装着された仮設配管用継手付樹脂管は、装着された状態のまま運搬・配管・解体・保管され繰り返し利用されるものである。
【0022】
受け口部材10は図1,2に示されるように、管本体1の外周側に位置する筒状の円筒部12の内部に管本体1の端部が挿入した状態で固定される被挿入部12aが形成され、被挿入部12aに連通する内部通路11aが形成され、内部通路11aと連通し挿し口部材20を受け入れるべく軸方向に延在する内周面を有する受け口部11とが形成されている。被挿入部12aの奥に内周方向へ突出する内部突起として管本体1の外径より小さい内径の円周状の内周突部13が形成され、内周突部13の円筒部12と反対方向に軸方向に、挿し口部材20を受け入れる受け口部11が形成されている。受け口部材10の被挿入部12aに管本体1の端部が挿入されたとき、管本体1の端面は被挿入部12aに内包される。
【0023】
すなわち、円筒部12の内壁の中間部に内周突部13がリング状に突出し、内周突部13の一方側の被挿入部12aに管本体1の端部が挿入して固定され、内周突部13の他方側の受け口部11に他の管本体2に固定された挿し口部材20の挿し口部21が挿入される構成となっている。内周突部13は被挿入部12a内に管本体1を挿入したときに先端が突き当たる構成で、管本体1が確実に挿入されたことを確認できる機能を有する。また、内周突部13には円周段差部13aが形成されている。そして、円筒部12の内周面に、円周状に沿って凹溝12bが形成され、この凹溝内には管本体1の外周面に接触する止水部材としてOリング14が挿入されている。
【0024】
管本体1の端部に継手として固定される受け口部材10の開放端部側には前記受け口部11が形成され、受け口部11の端面に沿って外周方向にフランジ部15が形成されている。このフランジ部15は、止め金具30との協働により、管本体1,2に固定された受け口部材10と挿し口部材20とを連結するバイオネット連結部として機能する。フランジ部15は図2(c)に示されるように、4つの円周状の係合爪部15aで構成されており、4つの係合爪部15aの間には後述する止め金具30の4つの係止爪33が進入できる切欠き部15bが形成され、1つの係止爪部15aには後述する回転防止手段であるストッパ35が係合する係合凹部15cが形成されている。係合爪部15aの開放側の端面は平坦面であり、係合爪部15aの反対側の内面にはテーパ面15dが形成されている。
【0025】
受け口部材10の反対側の端部、すなわち管本体1側の端部には、受け口部材10を管本体1に固定するための後述する固定リング18が係合される4つの係止爪16が外周方向に延出して形成されている。係止爪16は上下左右の方向に外周方向に所定の幅、厚さで形成され、4つの爪の間は切欠き部16aとなっており、固定リング18の係止爪18bを受け入れる形状となっている。また、上部の1つの係止爪16には固定リング18を位置決めする位置決め凹部16bが形成されている。
【0026】
受け口部材10は、円筒部12の受け口部11と反対側の端面に接する爪リング17と、爪リング17及び円筒部12の外周側に連結された固定リング18により、該爪リング17を管本体1の外周面に押圧することで管本体1の端部に固定される。固定リング18は図5に示されるようにリング状をしており、受け口部材10の4つの係止爪16を受け入れる開口部18aを有すると共に、係止爪16が係合する係止爪18bが内周方向に突出形成されている。固定リング18は、内周部に形成された4つの係止爪18bと受け口部材10の係止爪16が重なって合わさり、さらに1つの大径のねじ孔18dに位置決めボルト18e(図1参照)がねじ込まれることで受け口部材10の円筒部12の先端に固定されるように構成されている。大径のねじ孔18dにねじ込まれる位置決めボルト18eは受け口部材10の係止爪16の1つに形成された位置決め凹部16bに係合する構成となっている。
【0027】
爪リング17はジュラコン等の合成樹脂製で円周状に形成され、図6に示されるように、円周の一部が切断されたすり割部17aが形成され、縮径方向の弾性変形が可能となっている。爪リング17の内周面には複数の円周状の爪17bが突設され、外周面は管本体1の端部に向けて外径が徐々に大きくなるテーパ面に形成されている。爪リング17の外周側に位置し受け口部材10に連結された固定リング18は爪リング17の外周のテーパ面に対接するテーパ面18fを有し、爪リング17をテーパ面に沿って押し込むことで爪リング17を管本体1に押圧する構成となっている。爪リング17の大径側の端面には受け口部材10の円筒部12の受け口部11と反対側の端面が対接するように構成され、両端面の外径はほぼ等しくなっている。
【0028】
挿し口部材20は図1,3に示されるように、管本体2の外周側に位置する筒状の円筒部22の内部に管本体2の端部が挿入した状態で固定される被挿入部22aが形成され、被挿入部22aに連通する内部通路21aが形成され、前記受け口部11に挿入された状態で前記内周面と対向する外周面を有する挿し口部21が形成されている。挿し口部21は受け口部材10の受け口部11に挿入できる内径に設定されている。内部通路21aは挿し口部21の端面に開口している。被挿入部22aの奥に内周方向へ突出する内部突起として管本体2の外径より小さい内径の円周状の内周突部23が形成されている。挿し口部材20の被挿入部22aに管本体2の端部が挿入されたとき、管本体2の端面は被挿入部22aに内包される。
【0029】
すなわち、円筒部22の内壁の中間部に内周突部23がリング状に突出し、内周突部23の一方側の被挿入部22aに管本体2の端部が挿入した状態で固定され、内周突部23の他方側の挿し口部21が他の管本体1に固定された受け口部材10に形成された受け口部11に挿入される構成となっている。内周突部23は被挿入部22a内に管本体2を挿入したときに先端が突き当たる構成で、管本体2が確実に挿入されたことを確認できる機能を有する。また、内周突部23には内部突起として円周段差部23aが形成されている。そして、円筒部22の内周面に、円周状に沿って凹溝22bが形成され、この凹溝内には管本体2の外周面に接触する止水部材としてOリング24が挿入されている。
【0030】
管本体2の端部に継手として固定される挿し口部材20の開放端部側には前記挿し口部21が形成され、挿し口部21の根元、すなわち、円筒部22と挿し口部21との間には外周方向に突出してフランジ部25が形成されている。このフランジ部25は、管本体1,2を連結するバイオネット連結部として機能する前記止め金具30が支持される。フランジ部25は図3(b)、(c)に示されるように、円筒部22と挿し口部21との間から外周方向に全周にわたって形成されている。
【0031】
挿し口部材20の反対側の端部、すなわち管本体2側の端部には、挿し口部材20を管本体2に固定するための後述する固定リング28が係合される4つの係止爪26が外周方向に延出して形成されている。係止爪26は上下左右の方向に外周方向に所定の幅、厚さで形成され、4つの爪の間は切欠き部26aとなっており、固定リング28の係止爪28bを受け入れる形状となっている。また、上部の1つの係止爪26には固定リング28を位置決めする位置決め凹部26bが形成されている。
【0032】
挿し口部材20は、円筒部22の挿し口部21と反対側の端面に接する爪リング27と、爪リング27及び円筒部22の外周側に連結された固定リング28により、該爪リング27を管本体2の外周面に押圧することで管本体2の端部に固定される。爪リング27及び固定リング28は受け口部材10を管本体1に固定する爪リング17及び固定リング18と基本的に同じ構成であり、図5に示されるようにリング状をしており、挿し口部材20の4つの係止爪26を受け入れる開口部28aを有すると共に、係止爪26が係合する係止爪28bが内周方向に突出形成されている。固定リング28も外周部に形成された4つの小径のねじ孔28cに固定ボルト(図示せず)がねじ込まれ、1つの大径のねじ孔28dに位置決めねじ28e(図1参照)がねじ込まれることにより、挿し口部材20の円筒部22の先端に位置決めされて固定されるように構成されている。大径のねじ孔28dにねじ込まれる位置決めボルト28eは挿し口部材20の係止爪26の1つに形成された位置決め凹部26bに係合する構成となっている。挿し口部21には外周面に凹溝21aが形成され、この凹溝内に止水部材としてOリング29が装着される。Oリング29は受け口部材10の受け口部11の内周面に弾接する構成となっている。
【0033】
受け口部材10の開放端部に形成されているフランジ部15と挿し口部材20の挿し口部21の基部に形成されているフランジ部25は、バイオネット連結部を構成する止め金具30により連結固定される。前記のように、受け口部材10と挿し口部材20とを連結するとき、受け口部11に挿し口部21を挿入させると受け口部材10のフランジ部15と挿し口部材20のフランジ部25とは対接する。止め金具30は図4に示されるように、両フランジ部15,25の外周を覆うリング状に形成され、軸方向の中間部に両フランジ部が挟み込まれる中央溝部31が形成され、この中央溝部の一方には挿し口部材20のフランジ部25と係合する4つの係合爪部32が形成されている。すなわち、4つの係合爪部32の内径はフランジ部25の外径より小さく設定され、フランジ部25が通過できない内径となっている。この構成により、止め金具30は挿し口部材20の軸方向あるいは管本体1,2の軸方向を中心として回転可能に支持される。
【0034】
また、中央溝部31の他方には受け口部材10のフランジ部15と係合する4つの係止爪33が形成され、この係止爪と連続して止め金具30を軸方向を中心として回転させるための4つの外周突起30aが形成されている。係止爪33の内径は受け口部材10のフランジ部15に形成された4つの係合爪部15aの外径より小さく設定され、フランジ部15が通過できない内径となっている。また、係止爪33は90度の等間隔で4つ形成され、それらの中間は内径の大きい通過部33aとなっており、フランジ部15の係合爪部15aが通過できる内径となっている。
【0035】
このように、フランジ部15の係合爪部15aを通過部33aに合わせて中央溝部31内に挿入し、止め金具30を所定角度だけ正転させると、バイオネット結合によりフランジ部15に形成された係合爪部15aと止め金具30の係止爪33とを係合させ連結すると共に、逆転させると解除させることができる構成となっている。また、係合爪部15aの外面はテーパ面となっており、止め金具30を回転させると係止爪33がテーパ面に接して2つのフランジ部同士を密着させることができる構成となっている。止め金具30は挿し口部材20の小径の円筒部22側から通過させ、フランジ部25に係合させることができる。
【0036】
管本体1,2の端部には補強用の筒状部材としてインナーコア40が圧入状態に装着されている。インナーコア40は図7に示されるように、厚さが1mm程度のステンレスパイプで構成され、挿入先端側が先細となるようにつぼめられた先細部41であり、後端側が徐々に広げられた拡径部42となっている。インナーコア40の中心部43の外径は管本体1,2の内径より小さく、管本体内に緩く嵌合するように形成され、後端の拡径部44側の外径は管本体の内径とほぼ等しいように形成され、後端の外周の3個所には外方に張り出した接触部44が形成されている。この接触部44の外径は管本体1,2の内径より僅かに大きく、インナーコア40を管本体1,2内に挿入すると接触部44が樹脂管の内壁に弾接して固定されるように構成されている。
【0037】
インナーコア40は管本体1,2の開放端部に挿入され、接触部44が管本体の内面に接触したとき、インナーコア40は管本体から10〜20mm程度突出するように保持される。そして、管本体1から突出したインナーコア40の後端部は、受け口部材10の内周突部13に形成された円周段差部13aに当接するように構成され、管本体2から突出したインナーコア40の後端部は、挿し口部材20の内周突部23に形成された円周段差部23aに当接するように構成されている。
【0038】
本実施形態の継手付樹脂管の連結構造では、止め金具30で管本体1と管本体2とを連結した状態を保持するために、止め金具30の回転防止手段を備えている。この回転防止手段は、図1(c)に示すように、受け口部材10のフランジ部15に形成された係合凹部15cにストッパ35を係合させ、このストッパに結束バンド36を通して止め金具30の外周リング部を結束バンドで縛ることで止め金具30の回転を防止し、連結状態を保持するものである。なお、回転防止手段は、結束バンド36を通したストッパ35を係合凹部15cに係合させ、止め金具30の外周リング部を結束バンドで縛ることで回転を防止させる方法でもよい。
【0039】
ストッパ35は図8に示されるように、受け口部材10のフランジ部15に形成された係合凹部15cに嵌合するロック片35aと、結束バンド36のバンド部が挿入できる貫通孔35bとを有している。結束バンド36は例えば電気コード等を束ねるためのもので、ナイロン等で形成されている。ヘッド部36aの挿通孔36b内にロック爪36cを有しており、長尺で鋸歯状の抜け止めの刻みが形成されたバンド部36dを挿通孔36bに通し、バンド部の刻みにロック爪36cをロックさせて固定するものである。図1(c)に示すように、ストッパ35を受け口部材10の係合凹部15cに嵌合させ、結束バンド36のバンド部を貫通孔35bに通し、バンド部をロック片35aの下方に回して、さらに止め金具の外周リング部上方に回し、バンド部36dを貫通孔35bに通して抜け止めすることで、止め金具30の回転を防止するものである。
【0040】
前記の如く構成された本実施形態の継手付樹脂管の連結動作について以下に説明する。管本体1の一端部(図1で右端)に継手として受け口部材10を固定するとき、先ず、管本体1の右端の開口からインナーコア40を差し込む。インナーコア40は先端部(図1で左端)が先細部41であり、容易に差し込むことができる。インナーコア40を管本体1に挿入すると、拡径の接触部44が管本体1の内壁に突き当たり3つの接触部44で管本体1の内壁に保持される。このとき、インナーコア40の後端部(図1で右端)は管本体1より10〜20mm程度突出した状態となる。管本体1の開放端部にインナーコア40を挿入することで、樹脂製の管本体1の端部を補強することができる。
【0041】
このあと、管本体1の外周に固定リング18を開放端から外嵌し、さらに爪リング17を開放端から外嵌し、固定リング18の内部に爪リング17を位置させる。この状態では爪リング17の外周のテーパ面は固定リング18の内周のテーパ面18fに接触している。ついで、管本体1の右端部に受け口部材10を固定するべく円筒部12の内周面の凹溝12b内にOリング14を装着し、被挿入部12aの内部にインナーコア40付の管本体1を挿入し、内周突部13の円周段差部13aにインナーコア40の右端の突出部を係合させる。このように内周にインナーコア40を取り付けた管本体1を受け口部材10の被挿入部12aに挿入し、インナーコアの先端部を内周突部13の円周段差部13aに係合させることで管本体1と受け口部材10とを軸心を合わせて位置決めすることができると共に、管本体1が受け口部材10内の奥まで挿入されたことを確認できる。また、管本体1,2の端部にインナーコア40を挿入固定させることで、受け口部材10や挿し口部材20を爪リング17,27、固定リング18,28を用いて固定する際に、爪リング17,27が柔らかい樹脂製の管本体1,2に食い込んで、管本体端部が変形するのを防止することができる。
【0042】
管本体1に受け口部材10を位置決めしたあと、係止爪16と固定リング18の開口部18aの位置のはめ合いを合わせ、受け口部材10に対して固定リング18を引き寄せると、受け口部材の左端の端面に爪リング17の対向する端面が押圧され、爪リング17は固定リング18のテーパ面により内周方向に管本体1の外周面を押圧する。このあと、その外周面を押圧した状態で固定リング18の4つのねじ孔18cに固定ボルトをねじ込み、係止爪16の円筒部12側に固定ボルトの先端を出すことにより、その押圧による反力を受け止める。このとき、受け口部材10と固定リング18は接触していない。そして、固定リング18に対して受け口部材10を回転させて係止爪16と係止爪18bを重ね合わせる。その押圧による反力を受け止めることができ、受け口部材10と係合して一緒に回転可能な治具がある場合は、ねじ孔18cにねじ込む固定ボルトはなくてもよい。受け口部材10の位置決め凹部16bと固定リング18のねじ孔18dを合わせて位置決めボルト18eをねじ込むと、固定リング18が回転方向に対して固定される(図6c参照)。このように、固定リング18と爪リング17は管本体1に固定される。これにより、管本体1の一方の端部に継手として受け口部材10が固定される。樹脂製の管本体1と金属製の受け口部材10との固定は、金属製のインナーコア40が直接金属製の受け口部材10の内周突部13の円周段差部13aに当接するため、固定状態が安定している。また、管本体1の端面は被挿入部12aに内包されるため、管本体1の端部を保護することができる。
【0043】
つぎに、もう一方の管本体2の一端部(図1で左端)に継手として挿し口部材20を固定する。先ず、管本体2の左端の開口からインナーコア40を差し込む。この場合も、受け口部材10の場合と同様に、インナーコア40は先端部(図1で右端)が先細部41であり、容易に差し込むことができる。インナーコア40を管本体2に挿入すると、拡径の接触部44が管本体2の内壁に突き当たり3つの接触部44で管本体2の内壁に保持される。このとき、インナーコア40の後端部(図1で左端)は管本体2より10〜20mm程度突出した状態となる。そして、管本体1の場合と同様に管本体2の場合も、樹脂製の管端部への流体の圧力による変形を防止することができる。
【0044】
このあと、管本体1の場合と同様に、管本体2の外周に固定リング28を開放端から外嵌し、さらに爪リング27を開放端から外嵌し、固定リング28の内部に爪リング27を位置させる。この状態では爪リング27の外周のテーパ面は固定リング28の内周のテーパ面28fに接触している。ついで、管本体2の左端部に挿し口部材20を固定するべく円筒部22の内周面の凹溝22b内にOリング24を装着し、円筒部22の挿し口部21と反対側から止め金具30を外嵌させて左方に移動し、フランジ部25に止め金具30を押し付ける。止め金具30は4つの係合爪部32によりフランジ部25の通過を阻止される。
【0045】
そして、挿し口部材20のフランジ部25に止め金具30を係合させた状態で、円筒部22の内部の被挿入部22aにインナーコア40付の管本体2を挿入し、内周突部23の円周段差部23aにインナーコア40の左端の突出部を係合させる。このように内周にインナーコア40を取り付けた管本体2を挿し口部材20の被挿入部22aに挿入し、インナーコアの先端部を内周突部23の円周段差部23aに係合させることで管本体2と挿し口部材20とを軸心を合わせて位置決めすることができると共に、管本体2が挿し口部材20内の奥まで挿入されたことを確認できる。
【0046】
管本体2に挿し口部材20を位置決めしたあと、係止爪26と固定リング28の開口部28aの位置のはめ合いを合わせ、挿し口部材20に対して固定リング28を引き寄せると、挿し口部材の右端の端面に爪リング27の対向する端面が押圧され、爪リング27は固定リング28のテーパ面により内周方向に管本体2の外周面を押圧する。このあと、その外周面を押圧した状態で固定リング28の4つのねじ孔28cに固定ボルトをねじ込み、係止爪26の円筒部22側に固定ボルトの先端を出すことにより、その押圧による反力を受け止める。このとき、挿し口部材20と固定リング28は接触していない。そして、固定リング28に対して挿し口部材20を回転させて係止爪26と係止爪28bを重ね合わせる。その押圧による反力を受け止めることができ、挿し口部材20と係合して一緒に回転可能な治具がある場合は、ねじ孔28cにねじ込む固定ボルトはなくてもよい。挿し口部材20の位置決め凹部26bと固定リング28のねじ孔28dを合わせて位置決めボルト28eをねじ込むと、固定リング28が回転方向に対して固定される。このように、固定リング28と爪リング27は管本体2に固定される。これにより、管本体2の一方の端部に継手として挿し口部材20が固定される。樹脂製の管本体2と金属製の挿し口部材20との固定は、金属製のインナーコア40が直接金属製の挿し口部材20の内周突部23の円周段差部23aに当接するため、固定状態が安定している。また、管本体2の端面は被挿入部22aに内包されるため、管本体2の端部を保護することができる。本実施の形態では、管本体1,2はポリエチレン等の合成樹脂製であるため軽量に構成され、継手である受け口部材10の管本体1への固定作業及び挿し口部材20の管本体2への固定作業が容易に行える。
【0047】
このようにして受け口部材10を取り付けた継手付の管本体1と、挿し口部材20を取り付けた継手付の管本体2とを連結する動作について、以下に説明する。挿し口部材20の挿し口部21に形成された凹溝21a内にOリング29を外嵌し、凸状に形成された挿し口部21を受け口部材10の凹状に形成された受け口部11内に挿入する。受け口部材10の受け口部11に挿し口部材20の挿し口部21を奥まで押し込むと、受け口部材10のフランジ部15と挿し口部材20のフランジ部25とが接触し、挿し口部材20の凹溝21a内に装着されたOリング29は受け口部11の内周面に弾接して、Oリング部分での漏水を防止する。受け口部材10の受け口部11に挿し口部材20の挿し口部21が嵌合して連結され、受け口部11の内周面と挿し口部21の外周面とが対向するため、フランジなどの面合わせによる止水方法より止水性能が良くなる。
【0048】
管本体1の一端部に固定した受け口部材10の受け口部11に、管本体2の一端部に固定した挿し口部材20の受け口部21を挿入したあと、止め金具30を挿し口部材20の円筒部22で回転させ、止め金具30の係止爪33とフランジ部15の切欠き部15bとを一致させ、止め金具30を受け口部材方向(左方)に移動させ、止め金具30の中央溝部31内に両方のフランジ部15,25を位置させる。そして、止め金具30を軸心を中心として図1(b)で反時計回転方向に回転させると、係止爪33が係合爪部15aのテーパ面15dに沿って移動し、係止爪33が係合爪部15aに係合し、フランジ部25に対してフランジ部15を引き寄せて密着させる。これにより、受け口部材10の内部通路11aと挿し口部材20の内部通路21aとが連通する。止め金具30を逆転させると、係止爪33と係合爪部15aとの係合を解除して連結を外すことができる。
【0049】
止め金具30を左回りに回転させてフランジ部25にフランジ部15を密着させたあと、止め金具30の回転防止を行う。止め金具30を左回転させた状態のとき、フランジ部15の係合凹部15cに、図8で示されるストッパ35を挿入し、例えばナイロン製の結束バンド36で止め金具30を縛って固定する。これにより、止め金具30は逆転することが阻止され、ロック状態とされる。樹脂製の管本体1と管本体2とは、金属製の受け口部材10と挿し口部材20、及び止め金具30により受け口部11内に挿し口部21を挿入して連結されるため、連結部分は動かないように固定され強度が大きくなっており、漏水等の発生を抑えることができる。また、地震等で連結部に外力が加わっても変形することが防止され、管本体の柔軟性を十分に生かして、仮設配管管路の耐震性を向上することができる。また、重量物は管路の連結部分のみなので、施工作業が容易となる。
【0050】
このようにして受け口部材10を取り付けた継手付の管本体1と、挿し口部材20を取り付けた継手付の管本体2とを連結すると、管本体1の内周に固定したインナーコア40は受け口部材10の円周段差部13aに当接し、挿し口部材20の内周に固定したインナーコア40は挿し口部材20の円周段差部23aに当接し、管本体1,2の端面は被挿入部12a,22aに内包されるため、固定状態が安定している。そのため、配管接合作業時において生ずる管の曲げなどの外力に対しても、管端部の変形を防止することができ、かつ止水を保つことができる。
【0051】
本実施の形態で示される継手付樹脂管、及びその連結構造によれば、配管である管本体1,2の連結作業が容易であり、また配管された仮設配管管路はバイオネット連結構造である受け口部材10と挿し口部材20の取外しが容易である。また、継手付の管本体1,2から継手である受け口部材10や挿し口部材20を取り外す場合も、固定リング18,28と受け口部材10及び挿し口部材20との係合を緩めて爪リング17,27を管本体1,2から緩めるだけで、管本体1,2を容易に引抜くことができるため、メンテナンスが容易である。また、管本体1,2は、受け口部材10及び挿し口部材20を固定(装着)した状態で運搬、配管、解体、保管できるので、繰り返し利用がしやすい構造となっている。
【0052】
具体的には、図1(b)において、止め金具30を時計方向に回転させることで、係合爪部15aと係止爪33との係合を解き、受け口部材10と挿し口部材20との連結を解除することができ、受け口部材10の受け口部11から挿し口部材20の挿し口部21を引き抜くことで両者を分離することができる。そして、分離された受け口部材10が付いた管本体1において、固定リング18の係止爪18bと受け口部材10の係止爪16との係合を外すことで固定リング18を受け口部材10から離し、爪リング17の管本体1への食込みを解除することで、管本体1から受け口部材10を容易に取り外すことができる。そして、取り外した管本体1からインナーコア40を引き抜くことで継手付樹脂管からすべての連結構造の部材を取り外すことができる。
【0053】
挿し口部材20の管本体2からの取外しも同様に、固定リング28の係止爪28bと挿し口部材20の係止爪26との係合を外すことで固定リング28を挿し口部材20から離し、爪リング27の管本体2への食込みを解除することで、管本体2から挿し口部材20を容易に取り外すことができる。このあと、挿し口部材20の管本体2側の端部から止め金具30を引き抜くことができる。そして、取り外した管本体2からインナーコア40を引き抜くことで継手付樹脂管からすべての連結構造の部材を取り外すことができる。
【0054】
本実施形態の仮設配管用継手付樹脂管、仮設配管用樹脂管の連結構造、及びこれらを用いた仮設配管管路は、地中に埋設される場合と、埋設されずに地面から露出した状態で設置される場合がある。樹脂管が露出される場合は、紫外線等で影響を受け強度が低下する場合があるため、管本体1,2は耐候処理が必要となる場合がある。この場合は、例えば紫外線対策用の樹脂で管本体を被覆することが好ましい。すなわち、管本体1,2の外周に、例えば低密度ポリエチレン樹脂からなる樹脂チューブ(図示せず)を巻くことで紫外線の影響を低減させ、管本体1,2を保護することができる。
【0055】
本発明の他の実施形態である仮設配管管路の実施形態を図9に基づき詳細に説明する。図9は本発明に係る仮設配管管路の実施形態のシステム構成図である。なお、この実施形態は前記した仮設配管用継手付樹脂管と、この樹脂管の連結構造を用いて、さらにエルボ、チーズ等の接続具を用いて構成したことを特徴とする。そして、他の実質的に同等の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
図9において、この実施形態の仮設配管管路は、ポリエチレン等の合成樹脂製の管本体1,2…を金属製の継手として受け口部材10、挿し口部材20…を用いて、さらに必要に応じて他の連結具としてエルボやチーズ、分岐チーズ等を用いて仮設的に構成されている。具体的には、更新する古い管路である既設水道主管から不断水分岐割T字管で分岐し、本実施形態の継手付樹脂管として、フランジ付き短管1号を連結し、45°ベンドを連結し、同様にフランジ付き短管、90°ベンド、フランジ付き短管、分水栓付きチーズ、チーズ、フランジ付き短管2号を連結し、別の既設水道主管に連結している。
【0057】
この例で使用している各種の連結用の部材では、すべて本体部分は合成樹脂製のパイプで形成され、継手の部分が金属製となっている。例えば、45度ベンドでは中間部分は45度に曲げられた樹脂管であり、両端には前記の金属製の受け口部材10及び挿し口部材20が固定されている。チーズや分水栓付きチーズも同様に本体部分は樹脂製で軽量であり、両端に金属製の受け口部材10と挿し口部材20が固定された構成となっている。
【0058】
本実施形態の仮設配管管路によれば、合成樹脂製の管本体1,2を金属製の継手として、受け口部材10及び挿し口部材20を用いて連結し、既設の古い水道管等の管路を更新するべく予め連結構成するため、断水を防止して近隣住民の不便を解消することができる。また、仮設配管管路の連結設置作業は、軽量の樹脂管を金属製の継手で連結するため、作業が容易に行えると共に、地震等が発生して管路に大きな外力が作用しても管接続部の強度が高いため、漏水を防止することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、合成樹脂製の管本体に金属製の継手を固定する構成として、止め金具で爪リングを押圧して固定する構成を示したが、これに限られるものでなく受け口部材や挿し口部材をボルト等の固定手段を用いて固定する構成でもよい。また、止水部材としてOリングの例を示したが、円形の断面形状でなくてもよく、いかなる断面形状の止水部材を用いてもよいことは勿論である。
【0060】
継手付樹脂管の連結状態を保持するための回転防止手段として、受け口部材10のフランジ部15にストッパ35を嵌合させ、ストッパ35と止め金具30の外周リング部とを結束バンド36で縛って回転を防止する例を示したが、例えば、挿し口部材のフランジ部と止め金具との相対移動を阻止して連結状態を保持するように構成してもよく、また他の構成で止め金具をロックするように構成してもよい。
【0061】
前記の実施形態では、継手付樹脂管として直管の管本体の例を示したが、これに限られるものでなく、チーズやエルボ等の異形管の端部に前記の受け口部材と挿し口部材を固定して他の管本体等に連結することで仮設の管路を形成することもできる。また、管本体同士を連結するソケット等の継手や、フレキシブル管の両端に、前記の受け口部材や挿し口部材を固定して連結することで、仮設配管管路を形成することもできる。
【0062】
さらに、金属製の継手のバイオネット連結部として、係合爪部は円周上に形成された4つの爪からなる例を示したが、これに限られるものでなく、管本体の直径に合わせて2つの円周上に形成された爪や、3つあるいは他の複数の爪からなる構成でもよいことは勿論である。また、受け口部材や挿し口部材の内部突起として、円周状の円周突部の例を示したが、内面から突出する複数の突部、例えは円周状に形成された3つの突部で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の活用例として、この継手付樹脂管と、連結構造を用いて、上水道に限らず下水道の仮設配管管路にも使用することができ、他に工場等で各種の液体を輸送する管路等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1,2:管本体(ポリエチレン製の管)、10:受け口部材(金属製の継手)、11:受け口部、11a:内部通路、12:円筒部、12a:被挿入部、12b:凹溝、13:内周突部、13a:円周段差部(内部突起)、14:Oリング(止水部材)、15:フランジ部、15a:係合爪部(バイオネット連結部)、15c:係合凹部、16:係止爪、17:爪リング、18:固定リング、18b:係止爪、20:挿し口部材(金属製の継手)、21:挿し口部、22:円筒部、22a:被挿入部、22b:凹溝、23:内周突部、23a:円周段差部(内部突起)、24:Oリング(止水部材)、25:フランジ部、26:係止爪、27:爪リング、28:固定リング、28b:係止爪、29:Oリング(止水部材)、30:止め金具(バイオネット連結部)、30a:突起、33:係止爪、35:ストッパ(回転防止手段)、36:結束バンド、40:インナーコア(筒状部材)、41:先細部、42:拡径部、43:中心部、44:接触部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の管本体と、受け口部材及び挿し口部材とからなり、該両部材の接合により管路を接続可能とする金属製継手のうち、前記受け口部材が該管本体の一方端部に固定され、前記挿し口部材が他方端部に固定された仮設配管用継手付樹脂管であって、前記受け口部材及び挿し口部材が前記管本体に装着された状態のまま運搬・配管・解体・保管され繰り返し利用されることを特徴とする仮設配管用継手付樹脂管。
【請求項2】
前記受け口部材は、前記管本体が挿入される被挿入部と、該被挿入部と連通し前記挿し口部材を受け入れるべく軸方向に延在する内周面を有する受け口部とを備え、
前記挿し口部材は、前記管本体が挿入される被挿入部と、該被挿入部と連通し接続される仮設配管用継手付樹脂管の前記受け口部に挿入された状態で前記内周面と対向する外周面を有する挿し口部とを備え、前記管本体の端面は前記被挿入部に内包されることを特徴とする請求項1に記載の仮設配管用継手付樹脂管。
【請求項3】
前記受け口部材又は挿し口部材の一方が係合爪部を有し、前記受け口部材又は挿し口部材の他方が前記係合爪部に正転で係合し逆転で解除する止め金具を有し、前記係合爪部と前記止め金具との協働によりバイオネット連結部を構成する構造を有することを特徴とする請求項2に記載の仮設配管用継手付樹脂管。
【請求項4】
前記受け口部材は、前記被挿入部と前記受け口部との間に突出する内部突起を有し、前記挿し口部材は、前記被挿入部と前記挿し口部との間に突出する内部突起を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の仮設配管用継手付樹脂管。
【請求項5】
前記受け口部材及び挿し口部材の内部突起は、前記被挿入部の内壁に沿って円周状に形成され、前記管本体の外周より小さい内径で形成されることを特徴とする請求項4に記載の仮設配管用継手付樹脂管。
【請求項6】
前記仮設配管用継手付樹脂管は、前記管本体の端部内周に位置する筒状部材を備えており、該筒状部材の端部は、前記内部突起に当接することを特徴とする請求項4又は5に記載の仮設配管用継手付樹脂管。
【請求項7】
前記受け口部材は、前記被挿入部の内周面に止水部材を有し、該止水部材が前記管本体の外周面に接触し、
前記挿し口部材は、前記被挿入部の内周面に止水部材を有し、該止水部材が前記管本体の外周面に接触し、
前記受け口部材は、前記受け口部と反対側の外周面に連結された固定リングとその内部に爪リングを有し、前記固定リングにより該爪リングを前記管本体の外周面に押圧することで該管本体の端部に固定され、
前記挿し口部材は、前記挿し口部と反対側の外周面に連結された固定リングとその内部に爪リングを有し、前記固定リングにより該爪リングを前記管本体の外周面に押圧することで該管本体の端部に固定されることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の仮設配管用継手付樹脂管。
【請求項8】
前記管本体は、耐候性を有する被覆を外周面に備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の仮設配管用継手付樹脂管。
【請求項9】
前記管本体は、異形管であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の仮設配管用継手付樹脂管。
【請求項10】
前記受け口部材及び挿し口部材は、前記受け口部に前記挿し口部が嵌合したとき前記挿し口部の外周面と前記受け口部の内周面との間に止水部材が介在され、前記止め金具により前記受け口部材及び挿し口部材の一方に備えられた係合爪部をその他方に係合させて前記受け口部材と前記挿し口部材とを連結することを特徴とする請求項3から9のいずれかに記載の仮設配管用継手付樹脂管の連結構造。
【請求項11】
前記止め金具は、その外周に複数の操作用の突起が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の仮設配管用継手付樹脂管の連結構造。
【請求項12】
前記止め金具は、前記受け口部材又は挿し口部材の少なくとも一方に係合する回転防止手段により、その回転が阻止されることを特徴とする請求項10又は11に記載の仮設配管用継手付樹脂管の連結構造。
【請求項13】
請求項1から9のいずれかに記載の仮設配管用継手付樹脂管を用いて構成したことを特徴とする仮設配管管路。
【請求項14】
請求項1から9のいずれかに記載の仮設配管用継手付樹脂管に用いられている金属製継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−189118(P2012−189118A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51899(P2011−51899)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(000105556)コスモ工機株式会社 (270)
【出願人】(391029347)西尾レントオール株式会社 (16)
【Fターム(参考)】