説明

伝動装置

【課題】回転軸上にタービン羽根車、ポンプ羽根車およびステータ羽根車が支持されるトルクコンバータに作動油を供給する供給油路と、前記トルクコンバータから排出される作動油を導く排出油路とが、回転軸の軸線方向に延びるとともに相互に間隔をあけて該回転軸に設けられる伝動装置において、トルクコンバータの前後の作動油の流れを円滑化して流通抵抗を抑え、トルクコンバータの伝達効率向上に寄与し、配置の自由度を高める。
【解決手段】トルクコンバータ46は、供給油路53側にタービン羽根車57が配置されるとともに排出油路54側にポンプ羽根車58が配置されるようにして回転軸15上に配設され、供給油路53からの作動油をポンプ羽根車57に導く供給側傾斜油路101と、タービン羽根車から排出される作動油を排出油路54に導く排出側傾斜油路102とが、回転軸15の軸線に対して傾斜した軸線を有するようにして回転軸15に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸上にタービン羽根車、ポンプ羽根車およびステータ羽根車が支持されるトルクコンバータに作動油を供給する供給油路と、前記トルクコンバータから排出される作動油を導く排出油路とが、前記回転軸の軸線方向に延びるとともに相互に間隔をあけて該回転軸に設けられる伝動装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのクランクシャフトおよび変速機間に、タービン羽根車、ポンプ羽根車およびステータ羽根車が前記クランクシャフト上に配置されるようにしてトルクコンバータが介設され、クランクシャフトには、トルクコンバータに作動油を供給する供給油路と、トルクコンバータから排出される作動油を導く排出油路とが、相互に間隔をあけて同軸に設けられるようにした小型車両用伝動装置が、たとえば特許文献1等で既に知られている。
【特許文献1】特開2000−213627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが上記従来のものでは、トルクコンバータのポンプ羽根車はクランクシャフトの供給油路側に配置され、タービン羽根車は排出油路側に配置されており、供給油路からトルクコンバータ側に作動油路を導く油路が供給油路に直角に連なるようにしてクランクシャフトに設けられ、またトルクコンバータから排出油路側に作動油を導く油路が排出油路に直角に連なるようにしてクランクシャフトに設けられている。したがって作動油は、供給油路からトルクコンバータ側に流通方向を90度変化させ、またトルクコンバータから排出油路に流通方向を90度変化させて流れることになり、作動油の流通抵抗が比較的大きくなる。しかもトルクコンバータに対する補機の配置を変えると、作動油の通路が複雑となり、伝動装置の大型化を招くことになる。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、トルクコンバータの前後の作動油の流れを円滑化して流通抵抗を抑え、トルクコンバータの伝達効率向上に寄与することを可能とし、しかも配置の自由度を高め得るようにした伝動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、回転軸上に回転軸上にタービン羽根車、ポンプ羽根車およびステータ羽根車が支持されるトルクコンバータに作動油を供給する供給油路と、前記トルクコンバータから排出される作動油を導く排出油路とが、前記回転軸の軸線方向に延びるとともに相互に間隔をあけて該回転軸に設けられる伝動装置において、前記トルクコンバータは、前記供給油路側に前記タービン羽根車が配置されるとともに前記排出油路側に前記ポンプ羽根車が配置されるようにして前記回転軸上に配設され、前記供給油路からの作動油を前記ポンプ羽根車に導く供給側傾斜油路と、前記タービン羽根車から排出される作動油を前記排出油路に導く排出側傾斜油路とが、前記回転軸の軸線に対して傾斜した軸線を有するようにして前記回転軸に設けられることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記トルクコンバータからの出力が伝達されるようにして該トルクコンバータの一側に配置されるギヤが、エンジンのクランクシャフトである前記回転軸に回転自在に支承され、前記トルクコンバータおよび前記回転軸間に介装される入力クラッチが前記トルクコンバータの他側に配置されることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成に加えて、ステータ羽根車および固定位置間に設けられるステータワンウエイクラッチが、前記ギヤおよび前記ポンプ羽根車間に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、供給油路から供給側傾斜油路を介してトルクコンバータに作動油が供給され、トルクコンバータから排出側傾斜油路を介して排出油路に作動油が排出されることになり、トルクコンバータの前後の作動油の流れが円滑化されるので、作動油の流通抵抗を抑え、トルクコンバータの伝達効率向上に寄与することができる。しかもトルクコンバータに対する補機の配置を変えても作動油の通路が複雑となることはなく、伝動装置の小型化を可能とすることができる。
【0009】
また請求項2記載の発明によれば、トルクコンバータの両側に分かれて補機が配置されるので、クランクシャフトである回転軸への局部的な負荷集中を避けることができ、クランクシャフト自体や支持構造の必要強度を増大することを回避して伝動装置の小型化を図ることができる。
【0010】
さらに請求項3記載の発明によれば、ステータ羽根車の近傍にステータワンウエイクラッチを配置し得るようにして伝動装置の小型化を図るとともに、ステータ羽根車の慣性マスを比較的小さく抑えることでステータ羽根車の空転時の作動油流通抵抗を小さく抑え、トルクコンバータの性能向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図3は本発明の一実施例を示すものであり、図1は自動二輪車の側面図、図2はパワーユニットの縦断面図、図3は図2の要部拡大図である。
【0013】
先ず図1において、自動二輪車の車体フレームFがその前端に備えるヘッドパイプ5には前輪WFを軸支するフロントフォーク6が操向可能に支承され、前記車体フレームFがその中間部に備えるピボットプレート7に後輪WRを後端で軸支するスイングアーム8の前部が上下揺動可能に支承され、前記車体フレームFが後部に備えるシートレール9に、燃料タンク10と、該燃料タンク10を覆う乗車用シート11とが支持される。
【0014】
エンジンEおよび減速機Gから成るパワーユニットPが、前記ピボットプレート7および前輪WF間に配置されるようにして車体フレームFに搭載されており、前記減速機Gの出力軸12から出力される動力が、チェーン式の最終減速装置13を介して後輪WRに伝達される。
【0015】
図2において、エンジンEは、クランクシャフト15を回転自在に支承するクランクケース16と、コネクティングロッド17を介して前記クランクシャフト15に連接されるピストン18を摺動自在に嵌合せしめるシリンダボア19を有してクランクケース16に結合されるシリンダブロック20と、前記ピストン18との間に燃焼室21を形成してシリンダブロック20に結合されるシリンダヘッド22とを備え、クランクシャフト15の軸線を自動二輪車の左右方向に向けた姿勢で前記車体フレームFに搭載される。
【0016】
前記クランクシャフト15は左右一対のメインベアリング23,24を介してクランクケース16に回転自在に支承されており、前記コネクティングロッド17の大端部17aは前記両メインベアリング23,24間でクランクピン25を介してクランクシャフト15に連接される。またシリンダヘッド22には、前記燃焼室21に連なる吸、排気ポートを開閉する吸、排気弁(図示せず)が開閉作動可能に配設されるとともに、吸、排気弁を開閉駆動するカムシャフト26がクランクシャフト15と平行な軸線まわりに回転自在に支承される。
【0017】
クランクシャフト15の左端には発電機27のロータ28が固着され、発電機27のステータ29はクランクケース16の左端面に結合される左サイドカバー30に取付けられる。またクランクケース16、シリンダブロック20およびシリンダヘッド22には、シリンダボア19の左側に配置されるようにして調時伝動室31が形成されており、クランクシャフト15の回転を1/2に減速してカムシャフト26に伝達する調時伝動装置32が調時伝動室31に収容される。
【0018】
クランクケース16には減速機ケース33が連設されており、この減速機ケース33の左右両壁に、前記クランクシャフト15と平行な軸線を有する中間軸34および出力軸12がそれぞれ一対のボールベアリング35,35;36,36を介して回転自在に支承される。
【0019】
前記クランクケース16の右壁から突出したクランクシャフト15の右端部は、一次および二次減速装置37,38から成る減速機Gに、入力クラッチである遠心クラッチ45およびトルクコンバータ46を介して連結され、減速機Gおよびクランクシャフト15間にはエンジンブレーキ用ワンウエイクラッチ47がトルクコンバータ46と並列に設けられる。而して前記遠心クラッチ45、トルクコンバータ46、エンジンブレーキ用ワンウエイクラッチ47および一次減速装置37を覆う右サイドカバー48がクランクケース16および減速機ケース33の右端面に結合される。
【0020】
前記一次減速装置37は、トルクコンバータ46からの出力が伝達されるようにしてクランクシャフト15に回転自在に支承される一次減速用駆動ギヤ39と、前記中間軸34の右端部に固定されて前記一次減速用駆動ギヤ39に噛合する一次減速用被動ギヤ40とから成る。また二次減速装置38は、減速機ケース33内に収容されるものであり、前記中間軸34に固定される二次減速用駆動ギヤ41と、出力軸12に固定されて前記二次減速用駆動ギヤ41に噛合する二次減速用被動ギヤ42とから成り、減速機ケース33の左端壁から突出した出力軸12の左端部に最終減速装置13が連結される。
【0021】
図3において、右サイドカバー48の内面には前記クランクシャフト15と同軸である円筒状の軸受ハウジング48aが一体に突設されており、軸受ハウジング48a内に突入されるクランクシャフト15の右端および軸受ハウジング48a間には、シール付きボールベアリング49が介装される。しかもクランクシャフト15の右端を臨ませる油室50が前記軸受ハウジング48a内に形成されており、この油室50には、油溜め51から作動油をくみ上げるオイルポンプ52から作動油が供給される。
【0022】
クランクシャフト15には、トルクコンバータ46に作動油を供給する供給油路53が、その一端を前記油室50に通じさせるとともに他端を閉じるようにして同軸に設けられるとともに、トルクコンバータ46から排出される作動油を導く排出油路54が、その一端を前記供給油路53の他端から軸方向内方に間隔をあけた位置に配置するようにして同軸に設けられ、該排出油路54の他端はボール状の閉塞部材55(図2参照)で閉じられ、排出油路54にその他端寄りで連通する油路56が、コネクティングロッド17の大端部17aおよびクランクピン25間を潤滑するための作動油を導くようにしてクランクシャフト15に設けられる。
【0023】
トルクコンバータ46は、回転軸であるクランクシャフト15上に支持されるタービン羽根車57、ポンプ羽根車58およびステータ羽根車59を備えるものであり、前記供給油路53側に前記タービン羽根車57が配置されるとともに前記排出油路54側に前記ポンプ羽根車58が配置されるようにしてクランクシャフト15上に配設される。
【0024】
ところでトルクコンバータ46からの出力が伝達される一次減速用駆動ギヤ39が該トルクコンバータ46の左側に配置されてクランクシャフト15に回転自在に支承されるのに対し、クランクシャフト15およびトルクコンバータ46間に介装される遠心クラッチ45は、トルクコンバータ46の右側に配置される。
【0025】
遠心クラッチ45は、クランクシャフト15の右端部にスプライン結合される駆動板ハブ61に溶接される駆動板62と、この駆動板62に枢軸63…を介して揺動可能に支承される複数のクラッチシュー64…と、各クラッチシュー64…を縮径方向に付勢するばね力を発揮するようにして各クラッチシュー64…間に設けられる戻しばね65…と、各クラッチシュー64…を囲むように配置される有底円筒状の出力ドラム66とから構成される。
【0026】
クランクシャフト15には、その第1環状肩部15aに内輪の内端を当接させるボールベアリング68が装着されており、前記内輪の外端との間に第1規制板69を介在させるようにして前記駆動板ハブ61がクランクシャフト15にスプライン結合され、駆動板ハブ61の外端との間に第2規制板70を介在させるようにしてクランクシャフト15に螺合されるナット71を締めつけることにより、駆動板ハブ61すなわち駆動板62がクランクシャフト15に固定される。
【0027】
各クラッチシュー64…の外周面には出力ドラム66の内周に摺接可能な摩擦ライニング67…が接着されており、クラッチシュー64…の重量および戻しばね65…のばね荷重は、クランクシャフト15がアイドル回転数を超えた所定回転数以上で回転したときに、遠心力の作用で各クラッチシュー64…が拡径し、摩擦ライニング67…を出力ドラム66の内周面に圧接するように設定されている。
【0028】
トルクコンバータ46のポンプ羽根車58はクランクケース16側に配置され、タービン羽根車57はポンプ羽根車58および前記出力ドラム66間に配置され、ステータ羽根車59は、クランクシャフト15の軸線方向に沿って供給油路53および排出油路54間に対応する位置でポンプ羽根車58およびタービン羽根車57の内周部間に配置される。而してポンプ羽根車58、タービン羽根車57およびステータ羽根車59間には、作動油による動力伝達のための循環油路72が形成される。
【0029】
ポンプ羽根車58には、その外周部からタービン羽根車57を越えて軸方向に延びる円筒状の連結部材73が溶接されており、この連結部材73が遠心クラッチ45の出力ドラム66に液密に溶接される。すなわち遠心クラッチ45の出力ドラム66は、トルクコンバータ46のポンプ羽根車58に結合されることになる。
【0030】
クランクシャフト15およびクランクケース16間に介装される左右一対のメインベアリング23,24のうち右側のメインベアリング24が備える内輪の内端はクランクシャフト15に設けられる第2環状肩部15bに当接される。一方、クランクシャフト15の外周には、一端を前記ボールベアリング68の外輪に当接させ得る中空のタービン軸74が相対回転可能に嵌装されており、このタービン軸74の他端および前記メインベアリング24の内輪との間には、スラストニードルベアリング75と、相対回転を不能としてクランクシャフト15に装着されるオイルポンプ駆動ギヤ76とが介装される。すなわちタービン軸74は、スラストニードルベアリング75およびボールベアリング24間に挟まれることで軸方向の動きを規制された状態でクランクシャフト15に相対回転可能に支承されることになる。
【0031】
タービン羽根車57の内周部が固着されるタービンハブ77が前記タービン軸74の一端側外周にスプライン結合されており、タービン軸74はタービン羽根車57とともに回転することになる。しかもタービンハブ77および出力ドラム66間には軸受ブッシュ78が介装される。一次減速用駆動ギヤ39は、前記スラストニードルベアリング75に隣接した位置でタービン軸74の他端部外周にスプライン結合されており、該一次減速用駆動ギヤ39に対応する位置でタービン軸74およびクランクシャフト15間にはラジアルニードルベアリング79が介装される。
【0032】
ステータ羽根車59が備えるステータボス59aは、タービン軸74の外周に相対回転自在に嵌装される中空のステータ軸82にスプライン結合され、該ステータ軸82の軸方向移動は、前記タービンハブ77と、前記一次減速用駆動ギヤ39をスラストニードルベアリング75との間に挟む第3規制板83とで規制される。しかもポンプ羽根車58の内周部およびステータ軸82間には軸受ブッシュ84が介装される。
【0033】
エンジンブレーキ用ワンウエイクラッチ47は、タービンハブ77に一体に連設される円筒状の第1クラッチアウタ85と、第1クラッチアウタ85で同軸に囲繞されるようにして前記駆動板ハブ61にスプライン結合される第1クラッチインナ86との間に、第1クラッチアウタ85から第1クラッチインナ86への逆負荷の伝動を可能とすべく多数のスプラグ、ローラ等の第1クラッチ素子87…が環状配列で介装されて成る。
【0034】
一次減速用駆動ギヤ39と、トルクコンバータ46のポンプ羽根車58との間には、ステータ羽根車59および固定位置間に設けられるステータワンウエイクラッチ88が配置される。このステータワンウエイクラッチ88は、ステータ軸82の左端部に結合される有底円筒状の第2クラッチアウタ89と、ステータ軸82を同軸に囲繞するとともに第2クラッチアウタ89で同軸に囲繞される第2クラッチインナ90との間に、多数のスプラグ、ローラ等の第2クラッチ素子91…が環状配列で介装されて成るものである。
【0035】
第2クラッチインナ90に一体に設けられる係合腕部90aが、クランクシャフト15と平行な軸線を有してクランクケース16に植設されるピン92に係合され、第2クラッチインナ90は、クランクシャフト15およびステータ軸82の軸線まわりに回転不能である。また第2クラッチインナ90の内周部は、第2クラッチアウタ89との間に介在されるスラスト軸受板93と、ステータ軸82に装着される止め輪94で支持される第4規制板95との間に挟まれており、それにより第2クラッチインナ90の軸方向移動が規制される。さらにステータ軸82および第2クラッチインナ90間には軸受ブッシュ96が介装される。
【0036】
このステータワンウエイクラッチ88は、トルクコンバータ46においてポンプ羽根車58およびタービン羽根車57間でトルクの増幅作用が生じているときの反力をステータ羽根車59で負担しているときには、ステータ軸82すなわちステータ羽根車59の回転を阻止するが、前記トルクの増幅作用が生じていなければステータ羽根車59をポンプ羽根車58およびタービン羽根車57と同一回転方向に空転させる働きをする。
【0037】
タービン軸74の内周およびクランクシャフト15の外周間には、クランクシャフト15の軸線方向に沿って排出油路54の一端にほぼ対応した左側の供給側環状油室97と、前記クランクシャフト15の軸線方向に沿って供給油路53の他端にほぼ対応した右側の排出側環状油室98とが形成されており、タービン軸74、ステータ軸82およびステータボス59aには、供給側環状油室97をトルクコンバータ46内の循環油路72の流入側に通じさせる複数の流入通路99…が設けられるとともに、排出側環状油室98をトルクコンバータ46内の循環油路72の流出側に通じさせる複数の流出通路100…が設けられる。
【0038】
しかもクランクシャフト15には、その供給油路53からの作動油をポンプ羽根車58に導くべく供給油路53の他端部および供給側環状油室97間を結ぶ複数の供給側傾斜油路101…が、クランクシャフト15の軸線に対して傾斜した軸線を有するように設けられるとともに、タービン羽根車57から排出される作動油を排出油路54に導くべく排出側環状油室98および排出油路54の一端部間を結ぶ複数の排出側傾斜油路102…が、クランクシャフト15の軸線に対して傾斜した軸線を有するように設けられる。
【0039】
次にこの実施例の作用について説明すると、トルクコンバータ46は、クランクシャフト15に設けられる供給油路53側にタービン羽根車57が配置されるとともにクランクシャフト15に設けられる排出油路54側にポンプ羽根車58が配置されるようにしてクランクシャフト15上に配設され、供給油路53からの作動油をポンプ羽根車58に導く複数の供給側傾斜油路101…と、タービン羽根車57から排出される作動油を排出油路54に導く複数の排出側傾斜油路102…とが、クランクシャフト15の軸線に対して傾斜した軸線を有するようにしてクランクシャフト15に設けられている。
【0040】
したがって供給油路53から供給側傾斜油路101…を介してトルクコンバータ46に作動油が供給され、トルクコンバータ46から排出側傾斜油路102…を介して排出油路54に作動油が排出されることになり、トルクコンバータ46の前後の作動油の流れが円滑化されるので、作動油の流通抵抗を抑え、トルクコンバータ46の伝達効率向上に寄与することができる。しかもトルクコンバータ46に対する補機の配置を変えても作動油の通路が複雑となることはなく、伝動装置の小型化を可能とすることができる。
【0041】
またトルクコンバータ46からの出力が伝達されるようにして該トルクコンバータ46の左側に配置される一次減速用駆動ギヤ39が、クランクシャフト15に回転自在に支承され、トルクコンバータ46およびクランクシャフト15間に介装される遠心クラッチ45がトルクコンバータ46の右側に配置されるので、補機である前記一次減速用駆動ギヤ39および前記遠心クラッチ45がトルクコンバータ46の両側に分かれて配置されることになり、クランクシャフト15への局部的な負荷集中を避けることができ、クランクシャフト15自体や支持構造の必要強度を増大することを回避して伝動装置の小型化を図ることができる。
【0042】
さらにステータ羽根車59および固定位置間に設けられるステータワンウエイクラッチ88が、一次減速用駆動ギヤ39およびポンプ羽根車58間に配置されるので、ステータ羽根車59の近傍にステータワンウエイクラッチ88を配置し得るようにして伝動装置の小型化を図るとともに、ステータ羽根車59の慣性マスを比較的小さく抑えることでステータ羽根車59の空転時の作動油流通抵抗を小さく抑え、トルクコンバータ46の性能向上を図ることができる。
【0043】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】自動二輪車の側面図でる。
【図2】パワーユニットの縦断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
15・・・回転軸であるクランクシャフト
39・・・ギヤ
45・・・入力クラッチである遠心クラッチ
46・・・トルクコンバータ
53・・・供給油路
54・・・排出油路
57・・・タービン羽根車
58・・・ポンプ羽根車
59・・・ステータ羽根車
88・・・ステータワンウエイクラッチ
101・・・供給側傾斜油路
102・・・排出側傾斜油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(15)上にタービン羽根車(57)、ポンプ羽根車(58)およびステータ羽根車(59)が支持されるトルクコンバータ(46)に作動油を供給する供給油路(53)と、前記トルクコンバータ(46)から排出される作動油を導く排出油路(54)とが、前記回転軸(15)の軸線方向に延びるとともに相互に間隔をあけて該回転軸(15)に設けられる伝動装置において、前記トルクコンバータ(46)は、前記供給油路(53)側に前記タービン羽根車(57)が配置されるとともに前記排出油路(54)側に前記ポンプ羽根車(58)が配置されるようにして前記回転軸(15)上に配設され、前記供給油路(53)からの作動油を前記ポンプ羽根車(58)に導く供給側傾斜油路(101)と、前記タービン羽根車(57)から排出される作動油を前記排出油路(54)に導く排出側傾斜油路(102)とが、前記回転軸(15)の軸線に対して傾斜した軸線を有するようにして前記回転軸(15)に設けられることを特徴とする伝動装置。
【請求項2】
前記トルクコンバータ(46)からの出力が伝達されるようにして該トルクコンバータ(46)の一側に配置されるギヤ(39)が、エンジン(E)のクランクシャフトである前記回転軸(15)に回転自在に支承され、前記トルクコンバータ(46)および前記回転軸(15)間に介装される入力クラッチ(45)が前記トルクコンバータ(46)の他側に配置されることを特徴とする請求項1記載の伝動装置。
【請求項3】
ステータ羽根車(59)および固定位置間に設けられるステータワンウエイクラッチ(88)が、前記ギヤ(39)および前記ポンプ羽根車(58)間に配置されることを特徴とする請求項2記載の伝動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−46483(P2006−46483A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227834(P2004−227834)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】