説明

伝導性高分子組成物およびその製造方法

【課題】PCS(polycellulose-sulfonate)でドープされた伝導性高分子を含む伝導性高分子組成物およびその製造方法の提供。
【解決手段】PCSでドープされた、好ましくはポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリフェニレン系、ポリアニリン系またはポリアセチレン系の伝導性高分子0.1重量%〜50重量%および溶媒50重量%〜99.9重量%を含んでなる伝導性高分子組成物、さらに好ましくは追加ドーパントとしてジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN−ジメチルアセトアミドの極性溶媒の中から選ばれた少なくとも1種を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導性高分子組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術を用いるコンピュータの発達に伴い、コンピュータの補助装置も一緒に開発されており、パーソナルコンピュータや携帯用転送装置、その他の個人専用情報処理装置などは、キーボードやマウスなどの様々な入力装置(Input Device)を用いてテキスト処理およびグラフィック処理を行う。
【0003】
ところが、情報化社会の急速な進行に伴ってコンピュータの用途が益々拡大する趨勢にあるので、現在、入力装置の役割を担当するキーボードおよびマウスのみでは効率的な製品の駆動が難しいという問題点がある。よって、簡単で誤操作が少ないうえ、誰でも容易に情報の入力が可能な機器の必要性が高まっている。
【0004】
また、入力装置に関する技術は、一般な機能を充足させるという水準を超え、高信頼性、耐久性、革新性、設計および加工関連技術などに関心が移っている。このような目的を達成するために、テキストやグラフィックなどの情報の入力が可能な入力装置としてタッチパネル(Touch Panel)が開発された。
【0005】
このようなタッチパネルは、電子手帳、液晶表示装置(LCD、Liquid Crystal Display Device)、PDP(Plasma Display Panel)、El(Electroluminescence)などの平板ディスプレイ装置、およびCRT(Cathode Ray Tube)といった画像表示装置の表示面に設置され、ユーザーが画像表示装置を見ながら所望の情報を選択するようにするのに用いられる道具である。
【0006】
タッチパネルの種類は、抵抗膜方式(Resistive Type)、静電容量方式(Capacitive Type)、電磁気方式(Electro-Magnetic Type) 、SAW方式(Surface Acoustic Wave Type)、およびインフラレッド方式(Infrared Type)に区分される。このような各種方式のタッチパネルは、信号増幅の問題、解像度の差異、設計および加工技術の難易度、光学的特性、電気的特性、機械的特性、耐環境特性、入力特性、耐久性および経済性を考慮して電子製品に採用されるが、現在最も広範囲な分野で使用する方式は抵抗膜方式のタッチパネルと静電容量方式のタッチパネルである。
【0007】
抵抗膜方式のタッチパネルの場合は、上/下部透明電極膜がスペーサによって離隔し、押圧によって互いに接触できるように配置された形態である。上部透明膜の形成されている上部伝導性フィルムが手指やペンなどの入力手段によって押圧されるときに上/下部透明電極膜が通電し、その位置の抵抗値変化による電圧変化を制御部で認知して接触座標を認識する方式として、デジタル抵抗膜方式とアナログ抵抗膜方式がある。
【0008】
静電容量方式のタッチパネルの場合は、第1透明電極の形成された上部伝導性フィルムと第2透明電極の形成された下部伝導性フィルムとが互いに離隔し、第1透明電極と第2透明電極とが接触しないように絶縁材が挿入される。また、上部伝導性フィルムと下部伝導性フィルムには、透明電極に連結された電極配線が形成される。電極配線は、入力手段がタッチスクリーンに接触することにより、第1透明電極と第2透明電極における静電容量の変化を制御部へ伝達する。
【0009】
従来では、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用いて透明電極を形成したが、現在、これを代替するための物質として伝導性高分子に関する研究が盛んに行われている。伝導性高分子は、ITOに比べて柔軟性に優れるうえ、コーティング工程が単純であるという利点がある。このような利点により、伝導性高分子は、タッチパネルだけでなく、次世代技術であるフレキシブルディスプレイ(Flexible display)の核心的要素として注目を浴びている。
【0010】
但し、このような伝導性高分子は、0.1S/cm〜100S/cmの電気伝導度を有するので、ITOを代替するにおいて、相対的に低い電気伝導度を有するという問題点がある。また、既存の伝導性高分子は、熱が加えられる場合、伝導性高分子の配列が不規則的になることにより、電気伝導度の変化幅が大きくなって安定性が低下するという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述したような従来の問題点を解決するためのもので、その目的は、PCS(poly cellulose-sulfonate)でドープされた伝導性高分子を含む伝導性高分子組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の好適な実施例に係る伝導性高分子組成物は、下記化学式1で表されるPCS(poly cellulose-sulfonate)でドープされた伝導性高分子、および溶媒を含んでなることを特徴とする。
【0013】
[化学式1]

(式中、nは2以上の整数である。)
【0014】
ここで、前記組成物は、前記PCSでドープされた伝導性高分子0.1重量%〜50重量%および前記溶媒50重量%〜99.9重量%を含むことを特徴とする。
【0015】
また、前記PCSでドープされた伝導性高分子は、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリフェニレン系、ポリアニリン系またはポリアセチレン系の伝導性高分子であることを特徴とする。
また、前記ポリチオフェン系伝導性高分子は、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリセルローススルホネート(PEDOT/PCS)であることを特徴とする。
【0016】
また、前記溶媒は、水、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリルおよび脂肪族スルホキシドの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
また、前記組成物は追加ドーパントをさらに含むことを特徴とする。
【0017】
また、前記追加ドーパントは、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびN−ジメチルアセトイミド(DMA)の極性溶媒の中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
また、前記組成物はバインダーをさらに含むことを特徴とする。
また、前記バインダーは、アクリル系バインダー、エポキシ系バインダー、エステル系バインダー、ウレタン系バインダー、エーテル系バインダー、カルボキシ系バインダー、およびアミド系バインダーの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
本発明の好適な実施例に係る伝導性高分子組成物の製造方法は、(A)伝導性高分子モノマー、PCS(poly cellulose-sulfonate)および溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を製造する段階と、(B)前記伝導性高分子モノマー溶液を重合する段階とを含んでなることを特徴とする。
【0019】
ここで、前記重合は酸化剤を添加して酸化重合することを特徴とする。
また、前記伝導性高分子モノマー溶液は、前記伝導性高分子モノマー0.1重量%〜50重量%、前記PCS(poly cellulose-sulfonate)0.01重量%〜10重量%、および前記溶媒40重量%〜99重量%を含むことを特徴とする。
また、前記伝導性高分子モノマーは、チオフェン、アニリン、ピロール、アセチレン、フェニレンおよびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる伝導性高分子モノマーであることを特徴とする。
【0020】
また、前記伝導性高分子モノマーは3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)であることを特徴とする。
また、前記溶媒は、水、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリルおよび脂肪族スルホキシドの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ドーパントとしてPCS(poly cellulose-sulfonate)を用いて伝導性高分子をドープすることにより、伝導性高分子間の架橋密度が高くなって電気伝導度が向上する。
また、本発明によれば、PCSでドープされた伝導性高分子組成物は分子構造の安定性が高いため、熱による電気伝導度の変化幅が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】PCS(poly cellulose-sulfonate)の化学構造を示す図である。
【図2】PCSが水に溶解された場合の化学構造の変化を示す図である。
【図3】PCSでドープして伝導性高分子モノマーEDOTを重合する化学反応を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的、特定の利点および新規の特徴は添付図面に連関する以下の詳細な説明と好適な実施例からさらに明白になるであろう。
【0024】
これに先立ち、本明細書および請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的かつ辞典的な意味で解釈されてはならず、発明者が自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。なお、本発明を説明するにおいて、関連した公知の技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を無駄に乱すおそれがあると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0025】
以下、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
本発明に係る伝導性高分子組成物は、PCS(poly cellulose-sulfonate)でドープされた伝導性高分子および溶媒を含んでなることを特徴とする。本発明は、ドーパントとしてPCSを使用することにより、伝導性高分子の架橋密度が高くなり、伝導性高分子組成物の電気伝導度および熱的安定性が向上する。次に、伝導性高分子組成物の構成要素別に詳細に説明する。
【0026】
まず、伝導性高分子は、炭素原子一つ当たり一つのπ電子を有する電気伝導性を帯びる高分子であって、一般に約10,000以上の分子量を有する。伝導性高分子は、既存の透明電極として一般に使用されているITO(indium Tin Oxide)に比べて軽量で、かつ柔軟性が高い薄膜を得ることができるという利点がある。
【0027】
ドーパントは、伝導性高分子のπ軌道関数の一部に対して電荷を添加または除去して電荷運送体の役割を果たす物質をいう。ドーパントは、伝導性高分子に伝導性を与えるために一般に添加される。このように伝導性高分子にドーパントを添加して電荷運送体を作ることをドーピング(doping)という。詳しくは、伝導性高分子に電荷を提供する場合には還元ドーピング(n-type doping)といい、伝導性高分子から電荷を除去する場合には酸化ドーピング(p-type doping)という。
【0028】
本発明は、PCSを用いて伝導性高分子をドープすることにより、伝導性高分子組成物の電気伝導度が高くなり、熱的安定性が増大する。この際、ドーパントとして使用されるPCSは、図1の化学構造を有する白色または淡黄色を帯びる物質である。PCSは、水に溶解される場合、図2に示すようにNa+イオンが解離しながら、H+イオンがスルホネート基に共有結合してスルホン酸基が形成される。次に、伝導性高分子のPCSドーピングによる電気伝導度および熱的安定性の向上原理を例を挙げて具体的に考察する。
【0029】
図3に示すように、伝導性高分子モノマーEDOTを酸化重合する場合、PEDOTの陽イオンとPCSのスルホネート基の陰イオンが電気的引力によって互いに引かれて長い
鎖状をなす。この際、PCSはヒドロキシ基(OH)を含むことにより、PCS分子間に水素結合によって伝導性高分子鎖の架橋密度が高い。よって、PEDOT伝導性高分子間の距離が短くなり、伝導性高分子組成物の電気伝導度が向上する。また、伝導性高分子鎖間の架橋密度が高くて分子構造の安定性が増大するので、熱を加えても高分子鎖の変形が少なくて電気的特性を維持することができる。例示した前記PEDOTだけでなく、他の伝導性高分子にもPCSのドーピングによる電気伝導度および熱的安定性の向上効果は同様に適用される。
【0030】
ここで、PCSでドープされた伝導性高分子は、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリフェニレン系、ポリアニリン系およびポリアセチレン系のいずれか一つであってもよい。
この際、好ましくは、ポリチオフェン系伝導性高分子は、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリセルローススルホネート(PEDOT/PCS)である。PEDOT/PCSは電気伝導度および耐熱抵抗安全性が高く、優れた透明度を有するという利点がある。
【0031】
本発明の組成物には、PCSでドープされた伝導性高分子が0.1重量%〜50重量%、好ましくは1重量%〜3重量%で含まれる。PCSでドープされた伝導性高分子量が0.1重量%未満であれば、1kΩ/□以下の高伝導性を実現することが難しく、PCSでドープされた伝導性高分子量が50重量%超過であれば、着色性を有する伝導性高分子量の増加に応じて透明電極の透過率が低下する。
【0032】
次に、溶媒は、伝導性高分子を溶液上に分散させるために添加される。溶媒は水、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリル、脂肪族スルホキシド、水またはこれらの混合物であってもよい。但し、これは一つの例示に過ぎず、溶媒はこれらの例に限定されない。
【0033】
この際、溶媒は伝導性高分子組成物に対して50重量%〜99.9重量%、好ましくは60重量%〜99重量%で含まれる。溶媒は、伝導性高分子を溶液上に分散させるために添加される。溶媒が50重量%未満の場合には伝導性高分子の分散性が低下し、溶媒が99.9重量%超過の場合には伝導性高分子組成物の電気伝導度が減少する。
【0034】
本発明に係る伝導性高分子組成物は追加ドーパントをさらに含むことができる。追加ドーパントは、伝導性高分子とPCSとの間にスクリーン効果を示すため、低い電気伝導度を有するPCSを伝導性高分子から離隔させることにより、全体的に伝導性高分子組成物の電気伝導度が向上する。追加ドーパントは、伝導性高分子の構造的変化を起こしてドーパントとして残っていないが、ドーピングと同様の効果を示すので、2次ドーパントという。
【0035】
このような追加ドーパントとしては、酸素および窒素を含有する有機化合物が好ましく、エーテル基化合物、カルボニル基化合物、極性溶媒またはこれらの混合物であってもよい。
エーテル基を含有する化合物としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどが使用され、カルボニル基を含有する化合物としては、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノンまたはブチロラクトンなどが使用される。
【0036】
この際、好ましくは極性溶媒を追加ドーパントとして使用する。極性溶媒は、伝導性高分子組成物の電気伝導度を向上させる性能に優れるという利点がある。極性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−ジメチルアセトアミド(DMA)またなこれらの混合物であってもよい。
【0037】
また、追加ドーパントは、伝導性高分子組成物に対して0.5重量%〜15重量%、好ましくは1.5重量%〜5重量%で含まれる。追加ドーパントが0.5重量%未満であれば、電気伝導度の向上効果が微弱であり、追加ドーパントが15重量超過であれば、ドーパント添加による電気伝導度の向上効果がないので、追加ドーパントが浪費されるおそれがある。
【0038】
本発明に係る伝導性高分子組成物はバインダーをさらに含むことができる。バインダーは、伝導性高分子組成物のベース部材との接着力を高める。バインダーは、アクリル系バインダー、エポキシ系バインダー、エステル系バインダー、ウレタン系バインダー、エーテル系バインダー、カルボキシル系バインダーおよびアミド系バインダーの中から選ばれた少なくとも1種であってもよい。
【0039】
この際、バインダーは伝導性高分子組成物に対して0.5重量%〜10重量%、好ましくは2重量%〜8重量%で含まれる。バインダーが0.5重量%未満の場合には接着力の向上効果が微弱であり、バインダーが10重量%超過の場合には伝導性高分子に比べて相対的に比率が高くなって伝導性高分子組成物の電気伝導度が減少する。
【0040】
本発明に係る伝導性高分子組成物は、前記添加剤の他にも、分散安定剤や界面活性剤などのその他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0041】
本発明の好適な実施例に係る伝導性高分子組成物の製造方法は、(A)伝導性高分子モノマー、PCS(Poly cellulose-sulfonate)および溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を製造する段階と、(B)前記伝導性高分子モノマー溶液を重合する段階とを含んでなる。本発明は、伝導性高分子を重合するにおいて、ドーパントとしてPCSを用いて伝導性高分子をドープすることにより、伝導性高分子組成物の電気伝導度および熱的安定性が向上する。次に、伝導性高分子組成物の製造工程別に分けて考察する。前述した部分と重複する部分は省略し或いは簡略に言及する。
【0042】
まず、伝導性高分子モノマー、PCSおよび溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を製造する。ここで、伝導性高分子モノマーはチオフェン、アニリン、ピロール、アセチレン、フェニレンまたはこれらの誘導体であってもよい。この際、好ましくは、伝導性高分子モノマーは3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を使用することができる。伝導性高分子モノマーEDOTを重合したポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)は、高い電気伝導度および優れた透過率を有するという利点がある。
【0043】
この際、伝導性高分子モノマーは、伝導性高分子モノマー溶液に対して0.1重量%〜50重量%、好ましくは1重量%〜3重量%で含まれる。伝導性高分子モノマーが0.1重量%未満の場合、伝導性高分子組成物の電気伝導度が低い。伝導性高分子モノマーが50重量%超過であれば、伝導性高分子組成物の透過率が低下し、加工が容易ではない。
【0044】
また、ドーパントとしてPCSを添加する。本発明は、伝導性高分子モノマーを重合するとき、ドーパントとしてPCSを用いることにより、PCSでドープされた伝導性高分子を製造することができる。PCSでドープされた伝導性高分子組成物は、面抵抗が500Ω/□以下の優れた電気伝導度を有し、熱による分子構造の変化が少なくて安定性が高い。
【0045】
この際、PCSは、伝導性高分子モノマー溶液に対して0.01重量%〜10重量、好ましくは0.1重量%〜3重量で含まれる。PCSが0.01重量%未満の場合には伝導性高分子のドーピング効果が低く、PCSが10重量%超過の場合にはPCSの追加添加による電気伝導度の向上効果が微弱である。
【0046】
また、溶媒は、伝導性高分子モノマーとPCSを溶解させて分散させる役割を果たす。溶媒は伝導性高分子モノマー溶液に対して40重量%〜99重量%で含まれる。
【0047】
次に、伝導性高分子モノマー溶液を重合する。伝導性高分子モノマー溶液を重合することにより、PCSでドープされた伝導性高分子を得ることができる。伝導性高分子モノマー溶液を重合させる方法としては化学的重合、電気化学的重合、熱重合、光重合などが採用できる。
【0048】
ここで、化学的重合のうち酸化重合を用いて伝導性高分子を重合することが好ましい。酸化重合は、低い費用で高分子重合が可能であり、重合方法が簡単であるという利点がある。酸化重合はAPS(Ammonium peroxy disulfate)、塩酸(HCl)またはルイス酸(Lewis acid)などの酸化剤を伝導性高分子モノマー溶液に添加して容易な重合のためにモノマーを酸化させた後、伝導性高分子で重合する。この際、酸化剤は伝導性高分子モノマー1モルに対して0.0001モル〜4モルで添加される。
【0049】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(実施例1)
100mLの丸底反応容器に溶媒としての水、伝導性高分子モノマーとしての3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)およびPCSを仕込み、30分間攪拌および超音波処理して伝導性高分子モノマー溶液を製造した。この際、伝導性高分子モノマー溶液の組成比は水69.7%、EDOT30%およびPCS(poly cellulose-sulfonate)0.3%である。その後、伝導性高分子モノマー溶液に酸化剤Fe(SO5HOを14.08mmoL添加した後、25℃で3時間酸化重合させてPEDOT/PCS伝導性高分子組成物を製造した。伝導性高分子組成物をベース部材上にコートし、100℃で2分間オーブンで乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0050】
(実施例2)
伝導性高分子モノマー溶液の組成比を水69.3%、EDOT30%およびPCS0.7%とする以外は、実施例1と同様にして伝導性高分子組成物を製造した。この伝導性高分子組成物をベース部材上にコートし、100℃で2分間オーブンで乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0051】
(実施例3)
伝導性高分子モノマー溶液の組成比を水69.1%、EDOT30%およびPCS0.9%とする以外は、実施例1と同様にして伝導性高分子組成物を製造した。この伝導性高分子組成物をベース部材上にコートし、100℃で2分間オーブンで乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0052】
(実施例4)
伝導性高分子モノマー溶液の組成比を水68.8%、EDOT30%およびPCS1.2%とする以外は、実施例1と同様にして伝導性高分子組成物を製造した。この伝導性高分子組成物をベース部材上にコートし、100℃で2分間オーブンで乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0053】
(比較例1)
実施例1と同様に行なうが、ドーパントとしてPCS(Poly cellulose-sulfonate)の代わりにポリスチレンスルホネート(PSS)を添加し、伝導性高分子モノマー溶液の組成比は水69.7%、EDOT30%およびPSS0.3%とした。伝導性高分子組成物をベース部材上にコートし、100℃で2分間オーブンで乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0054】
(比較例2)
実施例1と同様に行なうが、ドーパントとしてPCSの代わりにポリスチレンスルホネート(PSS)を添加し、伝導性高分子モノマー溶液の組成比は水69.3%、EDOT30%およびPSS0.7%とした。伝導性高分子組成物をベース部材上にコートし、100℃で2分間オーブンで乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0055】
(試験例)
実施例および比較例の伝導性高分子組成物で製造された伝導性フィルムの熱処理前後の面抵抗を評価した。面抵抗の場合には三菱化学社のLoresta EP MCP−T360を使用した。熱処理は150℃のオーブンで30分間行った。
【0056】
【表1】

【0057】
前記表1の実験データの結果値から分かるように、PCSでドープした伝導性高分子PEDOT/PCSは、PEDOT/PSSより面抵抗値が低くてさらに優れた電気伝導度を示す。また、PEDOT/PCSは、熱処理前後の面抵抗値の散布(%)が低くて熱に対する安定性に優れることを確認することができる。
【0058】
以上、本発明を具体的な実施例によって詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのもので、本発明に係る伝導性高分子組成物およびその製造方法は、これに限定されないのは言うまでもない。本発明の技術的思想内で、当該分野における通常の知識を有する者によって多様な変形及び改良が可能であることは明白であろう。本発明の単純な変形ないし変更はいずれも本発明の範疇内に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は特許請求範囲によって明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるPCS(poly cellulose-sulfonate)でドープされた伝導性高分子、および溶媒を含んでなることを特徴とする、伝導性高分子組成物。
[化学式1]

(式中、nは2以上の整数である。)
【請求項2】
前記組成物は、前記PCSでドープされた伝導性高分子0.1重量%〜50重量%、および前記溶媒50重量%〜99.9重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項3】
前記PCSでドープされた伝導性高分子は、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリフェニレン系、ポリアニリン系またはポリアセチレン系の伝導性高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項4】
前記ポリチオフェン系伝導性高分子はポリエチレンジオキシチオフェン/ポリセルローススルホネート(PEDOT/PCS)であることを特徴とする、請求項3に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項5】
前記溶媒は、水、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリルおよび脂肪族スルホキシドの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項6】
前記組成物は追加ドーパントをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項7】
前記追加ドーパントは、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびN−ジメチルアセトアミド(DMA)の極性溶媒の中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項6に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項8】
前記組成物はバインダーをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項9】
前記バインダーは、アクリル系バインダー、エポキシ系バインダー、エステル系バインダー、ウレタン系バインダー、エーテル系バインダー、カルボキシ系バインダーおよびアミド系バインダーの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項8に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項10】
(A)伝導性高分子モノマー、PCS(poly cellulose-sulfonate)および溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を製造する段階と、
(B)前記伝導性高分子モノマー溶液を重合する段階と、を含んでなることを特徴とする、伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項11】
前記重合は、酸化剤を添加して酸化重合することを特徴とする、請求項10に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項12】
前記伝導性高分子モノマー溶液は、前記伝導性高分子モノマー0.1重量%〜50重量%、前記PCS(poly cellulose-sulfonate)0.01重量%〜10重量%、および前記溶媒40重量%〜99重量%を含むことを特徴とする、請求項10に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項13】
前記伝導性高分子モノマーは、チオフェン、アニリン、ピロール、アセチレン、フェニレン、およびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる伝導性高分子モノマーであることを特徴とする、請求項10に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項14】
前記伝導性高分子モノマーは3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)であることを特徴とする、請求項10に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項15】
前記溶媒は、水、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリル、および脂肪族スルホキシドの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項10に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−158736(P2012−158736A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50175(P2011−50175)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】