伝熱板の製造方法
【課題】摩擦攪拌接合により製造される伝熱板において、熱交換効率の高い伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】伝熱板の製造方法であって、ベース部材2の表面側に開口する蓋溝6の底面に形成された凹溝8に、熱媒体用管16を挿入する挿入工程と、蓋溝6に蓋板10を配置する蓋溝閉塞工程と、蓋溝6の側壁と蓋板10の側面との突合部に沿って溶接を行ってベース部材2と蓋板10とを接合する溶接接合工程と、蓋板10の表面(上面11)で、凹溝8に沿って流入攪拌用回転ツール25を移動させて熱媒体用管16の周囲に形成された空隙部Pに、摩擦熱によって流動化させた塑性流動材Qを流入させる流入攪拌工程と、を有することを特徴とする。
【解決手段】伝熱板の製造方法であって、ベース部材2の表面側に開口する蓋溝6の底面に形成された凹溝8に、熱媒体用管16を挿入する挿入工程と、蓋溝6に蓋板10を配置する蓋溝閉塞工程と、蓋溝6の側壁と蓋板10の側面との突合部に沿って溶接を行ってベース部材2と蓋板10とを接合する溶接接合工程と、蓋板10の表面(上面11)で、凹溝8に沿って流入攪拌用回転ツール25を移動させて熱媒体用管16の周囲に形成された空隙部Pに、摩擦熱によって流動化させた塑性流動材Qを流入させる流入攪拌工程と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱交換器や加熱機器あるいは冷却機器などに用いられる伝熱板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換、加熱あるいは冷却すべき対象物に接触し又は近接して配置される伝熱板は、その本体であるベース部材に例えば高温液や冷却水などの熱媒体を循環させる熱媒体用管を挿通させて形成されている。
【0003】
図11は、従来の伝熱板を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。従来の伝熱板100は、表面に開口する断面視矩形の蓋溝106と蓋溝106の底面に開口する凹溝108とを有するベース部材102と、凹溝108に挿入される熱媒体用管116と、蓋溝106に挿入される蓋板110と、を備え、蓋溝106における両側壁105,105と蓋板110の両側面113,114とのそれぞれの突合せ面に沿って摩擦攪拌接合を施すことにより、塑性化領域W0,W0が形成されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−314115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11の(b)に示すように、伝熱板100には、凹溝108と熱媒体用管116の外周面と蓋板110の下面とによって空隙部120が形成されているが、伝熱板100の内部に空隙部120が存在していると、熱媒体用管116から放熱された熱が蓋板110及びベース部材102に伝わりにくくなるため、伝熱板100の熱交換効率が低下するという問題があった。
【0006】
このような観点から、本発明は、熱交換効率が高い伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する挿入工程と、前記蓋溝に蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って溶接を行って前記ベース部材と前記蓋板とを接合する溶接接合工程と、前記蓋板の表面で、前記凹溝に沿って流入攪拌用回転ツールを移動させて前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に、摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
かかる製造方法によれば、蓋板とベース部材とを溶接により一体化するとともに、流入攪拌工程を行うことにより、熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に塑性流動材を流入させて、熱媒体用管の周囲の空隙を小さくすることができる。これにより、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0009】
また、前記流入攪拌工程の前に、前記溶接接合工程を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、予め蓋板をベース部材に接合しておくことで蓋板が移動しないため、流入攪拌工程を容易に行うことができる。
【0010】
また、前記溶接接合工程において、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って間欠的に溶接を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、溶接接合工程に要する手間と時間を低減することができる。
【0011】
また、前記突合部は、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面とが離間して形成された離間溝を備えており、前記溶接接合工程では、前記離間溝に肉盛溶接を行うことが好ましい。
【0012】
かかる製造方法によれば、離間溝に溶接金属を充填させることができるため、溶接接合工程を容易に行うことができる。
【0013】
また、前記流入攪拌工程において、前記流入攪拌用回転ツールの先端を、前記蓋溝の底面よりも深く挿入することが好ましい。かかる製造方法によれば、流入攪拌用回転ツールで蓋板の底面よりも深い部分まで確実に塑性流動化することができる。
【0014】
また、前記流入攪拌工程において、前記溶接接合工程にて生成した溶接金属を、前記流入攪拌用回転ツールによって摩擦攪拌することが好ましい。かかる製造方法によれば、溶接金属が伝熱板の表面に露出することを防ぐことができる。
【0015】
また、前記ベース部材の前記蓋溝よりも表面側に、前記蓋溝よりも幅広に形成された上蓋溝が形成されている場合には、前記流入攪拌工程後に、前記上蓋溝に上蓋板を挿入する上蓋溝閉塞工程と、前記上蓋溝の側壁と前記上蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う上蓋接合工程と、を含むことが好ましい。
【0016】
かかる製造方法によれば、蓋板の表面側において、蓋板よりも幅広の上蓋板を用いてさらに摩擦攪拌接合を施すため、より深い位置に熱媒体用管を配置させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る伝熱板の製造方法によれば、熱交換効率が高い伝熱板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第一実施形態]
本発明の最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、第一実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。図2は、第一実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は分解断面図、(b)は模式配置図を示す。図3は、第一実施形態に係る伝熱板を示した模式断面図である。
【0019】
第一実施形態に係る伝熱板1は、図1乃至図3に示すように、表面3及び裏面4を有する厚板形状のベース部材2と、ベース部材2の表面3に開口した蓋溝6に配置される蓋板10と、蓋溝6の底面5cに開口する凹溝8に挿入される熱媒体用管16とを主に備え、摩擦攪拌接合により形成された塑性化領域W1,W2によって一体形成されている。ここで、「塑性化領域」とは、回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
【0020】
ベース部材2は、例えば、アルミニウム合金(JIS:A6061)で形成されている。ベース部材2は、熱媒体用管16に流れる熱媒体の熱を外部に伝達させる役割、あるいは、外部の熱を熱媒体用管16に流れる熱媒体に伝達させる役割を果たすものであって、図2に示すように、熱媒体用管16を内部に収容する。ベース部材2の表面3には、蓋溝6が凹設されており、蓋溝6の底面5cの中央には、蓋溝6よりも幅狭の凹溝8が凹設されている。蓋溝6は、熱媒体用管16を覆う蓋板10が配置される部分であって、ベース部材2の長手方向に亘って連続して形成されている。蓋溝6は、断面視矩形を呈しており、蓋溝6の底面5cから垂直に立ち上がる側壁5a,5bを備えている。
【0021】
凹溝8は、熱媒体用管16が挿入される部分であって、ベース部材2の長手方向に亘って連続して形成されている。凹溝8は、上方が開口した断面視U字状の溝であって、下端には熱媒体用管16の外周と同等の曲率半径を有する半円形の底部7が形成されている。これにより、熱媒体用管16と凹溝8の底部7とを密接させることができる。凹溝8の開口部分は、熱媒体用管16の外径と略同等の幅で形成されている。また、凹溝8の深さは、熱媒体用管16の外径と略同等に形成されている。
【0022】
蓋板10は、図2及び図3に示すように、ベース部材2と同様のアルミニウム合金からなり、略平板状を呈する。蓋板10は、断面視矩形を呈し、上面(表面)11、下面(底面)12、側面13a及び側面13bを有する。蓋板10の幅は、本実施形態では、蓋溝6の幅よりも小さくなるように形成されている。蓋板10の厚みは、蓋溝6の深さと略同等に形成されている。
【0023】
熱媒体用管16は、例えば、銅管にて構成されており、図2に示すように、断面視円形の中空部18を有する円筒管である。熱媒体用管16の外径は、凹溝8の幅及び深さと略同等に形成されており、図3に示すように、熱媒体用管16の下半部と凹溝8の底部7とが面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。また、熱媒体用管16の上端と蓋板10の下面12とが面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。
【0024】
熱媒体用管16は、中空部18に、例えば高温液や高温ガスなどの熱媒体を循環させて、ベース部材2及び蓋板10に熱を伝達させる部材、あるいは中空部18に、例えば冷却水や冷却ガスなどの熱媒体を循環させて、ベース部材2及び蓋板10から熱を伝達される部材である。また、熱媒体用管16の中空部18に、例えばヒーターを通して、ヒーターから発生する熱をベース部材2及び蓋板10に伝達させる部材として利用してもよい。
【0025】
図2の(b)に示すように、ベース部材2に熱媒体用管16を挿入するとともに、蓋溝6の幅方向の中心と蓋板10の幅方向の中心とが重なるように配置すると、蓋溝6の側壁5aと蓋板10の側面13aとが突き合わされて突合部V1が形成される。また、蓋溝6の側壁5bと蓋板10の側面13bとが突き合わされて突合部V2が形成される。また、本実施形態では、蓋溝6の幅に対して蓋板10の幅が小さく形成されているため、突合部V1には、蓋溝6の側壁5aと蓋溝6の底面5cと蓋板10の側面13aとからなる離間溝U1が形成される。また同様に、突合部V2には、蓋溝6の側壁5bと蓋溝6の底面5cと蓋板10の側面13bとからなる離間溝U2が形成される。
【0026】
離間溝U1,U2は、後記する溶接接合工程において溶接金属が充填される部分である。離間溝U1,U2の幅は、特に限定されるものではないが、本実施形態では後記する流入攪拌用回転ツール25(図5の(b)参照)のピン28の先端の幅よりも小さく形成されている。これにより、ベース部材2及び蓋板10に対して確実に摩擦攪拌を行うことができる。また、離間溝U1,U2は、本実施形態では、断面視矩形に形成されているが、これに限定されるものではない。離間溝U1,U2は、例えば上方に向けて溝幅が大きくなるように形成してもよい。これにより、溶接作業を容易に行うことができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、凹溝8と熱媒体用管16の下半部を面接触させるとともに、蓋板10と熱媒体用管16とを接触させるように形成したが、これに限定さるものではない。例えば、凹溝8の深さを、熱媒体用管16の外径と同等か、あるいはその1.2倍までの範囲となるようにしてもよい。また、凹溝8の幅を、熱媒体用管16の外径と同等か、あるいはその1.1倍までの範囲となるようにしてもよい。
【0028】
塑性化領域W1,W2は、図1及び図3に示すように、突合部V1,V2に対して後記する流入攪拌工程を行った際に、ベース部材2、蓋板10及び溶接金属Tの一部が塑性流動して一体化された領域である。突合部V1,V2(溶接金属T1,T2)に沿って、後記する流入攪拌工程を行うと、突合部V1,V2の周辺にかかるベース部材2、蓋板10及び溶接金属Tの金属材料が摩擦熱により塑性流動化されて、空隙部P1,P2に塑性流動材が流入する。そして、当該塑性流動材が、再び固まって一体化される。
【0029】
次に、伝熱板1の製造方法について、図4を用いて説明する。図4は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程を示した図であり、(b)は、熱媒体用管を挿入した挿入工程を示した図であり、(c)は、蓋溝閉塞工程を示した図である。図5は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、溶接接合工程を示した図であり、(b)は、流入攪拌工程を示した図であり、(c)は、完成図である。図6は、第一実施形態に係る溶接接合工程を示した斜視図である。
【0030】
第一実施形態に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材2を形成する切削工程と、ベース部材2に形成された凹溝8に熱媒体用管16を挿入する挿入工程と、蓋溝6に蓋板10を挿入する蓋溝閉塞工程と、突合部V1,V2に沿って溶接を行ってベース部材2と蓋板10とを接合する溶接接合工程と、蓋板10の上面11で凹溝8に沿って流入攪拌用回転ツール25を移動させて空隙部Pに塑性流動材Qを流入させる流入攪拌工程とを含むものである。
【0031】
(切削工程)
まず、図4の(a)に示すように、公知のエンドミル加工により、厚板部材に蓋溝6を形成する。そして、蓋溝6の底面に、エンドミル加工等により半円形断面を備えた凹溝8を形成する。これにより、蓋溝6と、蓋溝6の底面に開口された凹溝8とを備えたベース部材2が形成される。凹溝8は、断面半円形の底部7を備えており、底部7の上端から一定の幅で上方に向けて開口されている。
なお、ベース部材2を第一実施形態においては切削加工により形成したが、アルミニウム合金の押出形材を用いてもよい。
【0032】
(挿入工程)
次に、図4の(b)に示すように、凹溝8に熱媒体用管16を挿入する。熱媒体用管16の下半部は、凹溝8の下半分を形成する底部7と面接触する。
【0033】
(蓋溝閉塞工程)
次に、図4の(c)に示すように、ベース部材2の蓋溝6の中央に、アルミニウム合金からなる蓋板10を挿入する。この際、蓋板10の上面11が、ベース部材2の表面3と面一なるとともに、蓋板10の下面12と熱媒体用管16が接触する。蓋板10の幅は、蓋溝6の幅よりも小さく形成されているため、突合部V1には、蓋溝6の側壁5a、底面5c及び蓋板10の側面13aからなる離間溝U1が形成される。また、突合部V2には、蓋溝6の側壁5b、底面5c及び蓋板10の側面13bからなる離間溝U2が形成される。
【0034】
(溶接接合工程)
次に、図5の(a)及び図6に示すように、突合部V1,V2に沿って溶接を行って、ベース部材2と蓋板10とを接合する。本実施形態では、突合部V1,V2に離間溝U1,U2が形成されているため、例えばTIG溶接又はMIG溶接などの肉盛溶接を行って離間溝U1,U2にそれぞれ溶接金属T1,T2を充填する。また、本実施形態の溶接接合工程では、ベース部材2の長手方向全長に亘って肉盛溶接を行っている。溶接接合工程では、溶接金属T1,T2がベース部材2の表面3よりも突出するように形成すると、摩擦攪拌の際の金属不足を補うことができるため好ましい。
【0035】
なお、離間溝U1,U2のいずれか一方に対して溶接を行う場合は、溶接作業中に蓋板10が移動しないように、いずれか他方の離間溝にスペーサを介設することが好ましい。溶接接合工程は、肉盛溶接に限定されるものではなく、公知の溶接であればよい。また、溶接作業は、複数回に分けて溶接金属T1,T2を充填してもよい。
【0036】
(流入攪拌工程)
次に、図5の(b)に示すように、蓋板10の上面11上で、凹溝8の長手方向に沿って流入攪拌用回転ツール25を用いて摩擦攪拌接合を行い、空隙部P1,P2に摩擦熱によって塑性化された塑性流動材Qを流入させる。
流入攪拌用回転ツール25は、例えば、工具鋼からなり、円柱形のツール本体26と、その底面27の中心部から同心軸で垂下するピン28とを有する。ピン28は、先端に向けて幅狭となるテーパ状に形成されている。なお、ピン28の周面には、その軸方向に沿って図示しない複数の小溝や径方向に沿ったネジ溝が形成されていてもよい。また、本実施形態では、流入攪拌用回転ツール25は、蓋板10の上面11に押し込んで摩擦攪拌接合を施す際に、ピン28の下端部(流入攪拌用回転ツール25の先端)が、蓋溝6の底面5cよりも低くなる大きさのものを採用している。
【0037】
流入攪拌工程における摩擦攪拌接合は、蓋板10の上面(表面)11で、高速回転する流入攪拌用回転ツール25を押し込み、下方の凹溝8の長手方向に沿って流入攪拌用回転ツール25を移動させる。即ち、流入攪拌用回転ツール25は、ツール本体26の底面27(ショルダ)の投影部分の一部が熱媒体用管16の空隙部P1,P2と重なるように配置され、熱媒体用管16の斜め上方で移動される。このとき、高速回転する流入攪拌用回転ツール25のピン28により、その周囲の蓋板10、ベース部材2及び溶接金属T1,T2の各金属材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。
【0038】
流入攪拌用回転ツール25は、ツール本体26の底面27が、蓋板10の上面11よりも低くなるように押し込まれる。その押込み量(長さ)は、ツール本体26が押し退ける蓋板10の金属の体積が、熱媒体用管16の周囲の一方の空隙部P1(P2)に充填される塑性流動化されたアルミニウム合金材料の体積、および塑性化領域W1(W2)の幅方向両側に発生するバリの体積との和と同等になるような長さとなっている。そして、流動化された塑性流動材Qは、流入攪拌用回転ツール25のツール本体26の底面27の押込み力によって、空隙部P1(P2)へと押し出されて流入される。前記の摩擦攪拌接合は、凹溝8の幅方向両側でそれぞれ施されて、熱媒体用管16の上側に位置する一対の空隙部P1,P2に塑性流動材Qが流入される。流入攪拌工程における摩擦攪拌接合の後に、塑性化領域W1,W2の幅方向両側に発生したバリを取り除くことが好ましい。
【0039】
なお、流入攪拌用回転ツール25と熱媒体用管16とを近接させて摩擦攪拌を行うと、熱媒体用管16が変形する可能性がある。そのため、流入攪拌用回転ツール25の挿入位置及び押込み量は、流入攪拌用回転ツール25の大きさや蓋板10及び凹溝8の幅の寸法に応じて適宜設定すればよい。本実施形態のように、突合部V1,V2(離間溝U1,U2)と流入攪拌用回転ツール25の幅方向の中心とが重なるように配置させて流入撹拌工程を行えば、ベース部材2、蓋板10及び溶接金属T1,T2がバランスよく攪拌されるため好ましい。
【0040】
以上説明した伝熱板によれば、図5の(c)等に示すように、突合部V1,V2に沿って塑性化領域W1,W2が形成されて、ベース部材2と蓋板10とが接合されるとともに、空隙部P1,P2に塑性流動材Qが流入して充填されるため、熱媒体用管16とベース部材2および蓋板10とが隙間なく密着することになるので、熱交換効率の高い伝熱板1を形成することができる。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、流入攪拌工程に先だって溶接接合工程を行って、ベース部材2と蓋板10とを予め接合することができるため、流入攪拌工程では蓋板10が移動することなく好適に作業を行うことができる。また、本実施形態では、蓋溝6の幅よりも蓋板10の幅を小さく形成して離間溝U1,U2を設け、当該離間溝U1,U2に溶接金属T1,T2を充填するようにしたため、溶接接合工程を容易に行うことができる。また、溶接金属T1,T2を蓋板10の上面11よりも突出させることで、流入攪拌工程の際の金属不足を補うことができる。
【0042】
また、本実施形態では、塑性化領域W1,W2の内部に、溶接金属T1,T2が含まれるように流入攪拌用回転ツール25の挿入位置を設定したため、溶接金属T1,T2が外部に露出するのを防ぐことができる。
【0043】
図7は、第一実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した平面図である。
伝熱板1は、例えば、図7に示すように、複数の伝熱板1を連結して伝熱ユニット90を形成して使用される。伝熱ユニット90は、複数の伝熱板1をベース部材2の短手方向に並設し、各ベース部材2の長手方向の両端から突出した熱媒体用管16を平面視U字状の連結パイプ91で連結して形成される。このような、伝熱ユニット90によれば、一の連通した熱媒体用管96が形成されているため、熱媒体用管96に熱媒体を流通させることにより、ベース部材2及び蓋板10に接触又は近接する図示しない対象物を迅速に冷却又は加熱することができる。
【0044】
なお、伝熱板1の連結方法は、あくまで例示であって他の連結方法によって伝熱ユニットを形成してもよい。また、伝熱ユニット90においては、連結パイプ91が伝熱板1の外部に露出しているが、熱媒体用管16をS字状に形成して熱媒体用管16が伝熱板1の内部に納まるように形成してもよい。
【0045】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る伝熱板について説明する。図8は、第二実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、分解断面図、(b)は、断面図である。
図8に示す第二実施形態に係る伝熱板61は、前記した伝熱板1と略同等の構造を内包し、蓋板10の表面側にさらに上蓋板70を配置して、摩擦攪拌接合を施して接合した点で第一実施形態と相違する。
なお、前記した伝熱板1と同等の構造を下蓋部Mともいう。また、第一実施形態に係る伝熱板1と重複する部材については、同等の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0046】
伝熱板61は、ベース部材62と、凹溝8に挿入された熱媒体用管16と、蓋板10と、蓋板10の表面側に配置された上蓋板70とを有し、塑性化領域W1〜W4で摩擦攪拌接合により一体化されている。
ベース部材62は、図8の(a)に示すように、例えばアルミニウム合金からなり、ベース部材62の表面63に、長手方向に亘って形成された上蓋溝65と、上蓋溝65の底面65cに長手方向に亘って連続して形成された蓋溝6と、蓋溝6の底面に長手方向に亘って形成された凹溝8とを有する。上蓋溝65は、断面視矩形を呈し、底面65cから垂直に立ち上がる側壁65a,65bを備えている。上蓋溝65の幅は、蓋溝6の幅よりも大きく形成されている。
【0047】
図8に示すように、ベース部材62の下部に形成された凹溝8には、熱媒体用管16が挿入されており、蓋板10によって閉塞され、摩擦攪拌接合により塑性化領域W1,W2で接合されている。即ち、ベース部材62の内部に形成された下蓋部Mは、第一実施形態に係る伝熱板1と略同等に形成されている。
【0048】
なお、上蓋溝65の底面65cには、摩擦攪拌接合を行ったことにより、段差(溝)やバリが発生している可能性がある。したがって、例えば塑性化領域W1,W2の表面を基準に、上蓋溝65の底面65cに面削加工を施して平滑に形成することが好ましい。これにより、上蓋板70の下面72と、面削後の上蓋溝65の底面とを隙間なく配置することができる。
【0049】
上蓋板70は、図8に示すように、例えば、アルミニウム合金からなり、上蓋溝65の断面と略同じ矩形断面を形成し、下面72から垂直に形成された側面73a及び側面73bを有する。上蓋板70は、上蓋溝65に嵌合される。即ち、上蓋板70の側面73a,73bは、上蓋溝65の側壁65a,65bと面接触されるか又は微細な隙間をあけて配置されている。ここで、側面73aと側壁65aとの突合せ面を、上側突合部V3とする。また、側面73bと側壁65bとの突合せ面を、上側突合部V4とする。上側突合部V3,V4は、摩擦攪拌接合により、塑性化領域W3,W4で一体化されている。
【0050】
伝熱板61の製造方法は、伝熱板1と同等の製造方法により、ベース部材62の下部に下蓋部Mを形成した後、上蓋溝66の底面65cを面削する面削工程と、上蓋板70を配置する上蓋溝閉塞工程と、上側突合部V3,V4に沿って摩擦攪拌接合を施す上蓋本接合工程を含むものである。
【0051】
(面削工程)
面削工程では、上蓋溝65の底面65cに形成された段差(溝)やバリを切削除去して、底面65cを平滑にする。
【0052】
(上溝閉塞工程)
上蓋溝閉塞工程では、面削工程をした後、上蓋溝65の底面に上蓋板70を配置する。面削工程を行ったことにより、上蓋板70の下面72と、上蓋溝65の底面とを隙間なく配置することができる。
【0053】
(上蓋本接合工程)
上蓋本接合工程では、上側突合部V3,V4に沿って接合用回転ツール(図示省略)を移動させて摩擦攪拌接合を施す。接合用回転ツールは、本実施形態では、流入攪拌用回転ツール25(図5参照)よりも小型の回転ツールである。上蓋本接合工程における接合用回転ツールの押込み深さは、当該接合用回転ツールのピンの長さ及び上蓋板70の厚み等を考慮して適宜設定すればよい。なお、上蓋本接合工程では、流入攪拌用回転ツール25を用いて摩擦攪拌接合を行ってもよい。
【0054】
実施形態に係る伝熱板61によれば、下蓋部Mの上方にさらに上蓋板70を配置して、摩擦攪拌接合を施すことにより、より深い位置に熱媒体用管16を配置させることができる。
【0055】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態に係る伝熱板について説明する。図9は、第三実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。図9に示す第三実施形態に係る伝熱板81は、第一実施形態に係る伝熱板1よりも蓋板10の幅が大きく形成されており、溶接金属T1,T2が塑性化領域W1,W2の外部に露出する点で第一実施形態と相違する。
【0056】
即ち、蓋溝6の幅及び蓋板10の幅寸法が大きい場合には、熱媒体用管16から離れた位置に突合部V1,V2が形成されるため、塑性化領域W1,W2の外部に溶接金属T1,T2が形成される。
【0057】
第三実施形態に係る伝熱板81の製造方法は、溶接金属T1,T2が塑性化領域W1,W2と重複しないことを除いては、第一実施形態に係る伝熱板1の製造方法と略同等であるため説明を省略する。
なお、第三実施形態では、流入攪拌工程を行った後に、溶接接合工程を行ってもよい。また、溶接接合工程では、第一実施形態と同様に、ベース部材2の表面3よりも突出する程度に肉盛溶接を行った後、溶接金属T1,T2の突出した部分を切削して、伝熱板81の表面を面一に形成するのが好ましい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、図10は、溶接接合工程の変形例を示した斜視図である。図10に示すように、溶接接合工程の肉盛溶接を突合部V1,V2の長手方向に間欠的に行ってもよい。このように間欠的に行うことで、溶接作業を省略化することができる。
【0059】
また、本実施形態では、蓋溝6の幅よりも蓋板10の幅を小さく形成することで、離間溝U1,U2を形成したが、これに限定されるものではなく、蓋溝6と蓋板10の幅を略同等に形成して蓋溝6と蓋板10とを隙間なく突き合わせてもよい。そして、蓋溝6と蓋板10とが突き合わされた突合部に対して溶接を行えばよい。また、溶接接合工程は、本実施形態では肉盛溶接によって行ったが、他の公知の溶接でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第一実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は分解断面図、(b)は模式配置図を示す。
【図3】第一実施形態に係る伝熱板を示した模式断面図である。
【図4】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程を示した図であり、(b)は、熱媒体用管を挿入した挿入工程を示した図であり、(c)は、蓋溝閉塞工程を示した図である。
【図5】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、溶接接合工程を示した図であり、(b)は、流入攪拌工程を示した図であり、(c)は、完成図である。
【図6】第一実施形態に係る溶接接合工程を示した斜視図である。
【図7】第一実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した平面図である。
【図8】第二実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、分解断面図、(b)は、断面図である。
【図9】第三実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。
【図10】溶接接合工程の変形例を示した斜視図である。
【図11】従来の伝熱板を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 伝熱板
2 ベース部材
5a (蓋溝の)側壁
5b (蓋溝の)側壁
6 蓋溝
8 凹溝
10 蓋板
13a (蓋板の)側面
13b (蓋板の)側面
16 熱媒体用管
25 流入攪拌用回転ツール
61 伝熱板
65 上蓋溝
65a 側壁
65b 側壁
70 上蓋板
73a 側面
73b 側面
P 空隙部
Q 塑性流動材
U 離間溝
V 突合部
W 塑性化領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱交換器や加熱機器あるいは冷却機器などに用いられる伝熱板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換、加熱あるいは冷却すべき対象物に接触し又は近接して配置される伝熱板は、その本体であるベース部材に例えば高温液や冷却水などの熱媒体を循環させる熱媒体用管を挿通させて形成されている。
【0003】
図11は、従来の伝熱板を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。従来の伝熱板100は、表面に開口する断面視矩形の蓋溝106と蓋溝106の底面に開口する凹溝108とを有するベース部材102と、凹溝108に挿入される熱媒体用管116と、蓋溝106に挿入される蓋板110と、を備え、蓋溝106における両側壁105,105と蓋板110の両側面113,114とのそれぞれの突合せ面に沿って摩擦攪拌接合を施すことにより、塑性化領域W0,W0が形成されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−314115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11の(b)に示すように、伝熱板100には、凹溝108と熱媒体用管116の外周面と蓋板110の下面とによって空隙部120が形成されているが、伝熱板100の内部に空隙部120が存在していると、熱媒体用管116から放熱された熱が蓋板110及びベース部材102に伝わりにくくなるため、伝熱板100の熱交換効率が低下するという問題があった。
【0006】
このような観点から、本発明は、熱交換効率が高い伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する挿入工程と、前記蓋溝に蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って溶接を行って前記ベース部材と前記蓋板とを接合する溶接接合工程と、前記蓋板の表面で、前記凹溝に沿って流入攪拌用回転ツールを移動させて前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に、摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
かかる製造方法によれば、蓋板とベース部材とを溶接により一体化するとともに、流入攪拌工程を行うことにより、熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に塑性流動材を流入させて、熱媒体用管の周囲の空隙を小さくすることができる。これにより、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0009】
また、前記流入攪拌工程の前に、前記溶接接合工程を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、予め蓋板をベース部材に接合しておくことで蓋板が移動しないため、流入攪拌工程を容易に行うことができる。
【0010】
また、前記溶接接合工程において、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って間欠的に溶接を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、溶接接合工程に要する手間と時間を低減することができる。
【0011】
また、前記突合部は、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面とが離間して形成された離間溝を備えており、前記溶接接合工程では、前記離間溝に肉盛溶接を行うことが好ましい。
【0012】
かかる製造方法によれば、離間溝に溶接金属を充填させることができるため、溶接接合工程を容易に行うことができる。
【0013】
また、前記流入攪拌工程において、前記流入攪拌用回転ツールの先端を、前記蓋溝の底面よりも深く挿入することが好ましい。かかる製造方法によれば、流入攪拌用回転ツールで蓋板の底面よりも深い部分まで確実に塑性流動化することができる。
【0014】
また、前記流入攪拌工程において、前記溶接接合工程にて生成した溶接金属を、前記流入攪拌用回転ツールによって摩擦攪拌することが好ましい。かかる製造方法によれば、溶接金属が伝熱板の表面に露出することを防ぐことができる。
【0015】
また、前記ベース部材の前記蓋溝よりも表面側に、前記蓋溝よりも幅広に形成された上蓋溝が形成されている場合には、前記流入攪拌工程後に、前記上蓋溝に上蓋板を挿入する上蓋溝閉塞工程と、前記上蓋溝の側壁と前記上蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う上蓋接合工程と、を含むことが好ましい。
【0016】
かかる製造方法によれば、蓋板の表面側において、蓋板よりも幅広の上蓋板を用いてさらに摩擦攪拌接合を施すため、より深い位置に熱媒体用管を配置させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る伝熱板の製造方法によれば、熱交換効率が高い伝熱板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第一実施形態]
本発明の最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、第一実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。図2は、第一実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は分解断面図、(b)は模式配置図を示す。図3は、第一実施形態に係る伝熱板を示した模式断面図である。
【0019】
第一実施形態に係る伝熱板1は、図1乃至図3に示すように、表面3及び裏面4を有する厚板形状のベース部材2と、ベース部材2の表面3に開口した蓋溝6に配置される蓋板10と、蓋溝6の底面5cに開口する凹溝8に挿入される熱媒体用管16とを主に備え、摩擦攪拌接合により形成された塑性化領域W1,W2によって一体形成されている。ここで、「塑性化領域」とは、回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
【0020】
ベース部材2は、例えば、アルミニウム合金(JIS:A6061)で形成されている。ベース部材2は、熱媒体用管16に流れる熱媒体の熱を外部に伝達させる役割、あるいは、外部の熱を熱媒体用管16に流れる熱媒体に伝達させる役割を果たすものであって、図2に示すように、熱媒体用管16を内部に収容する。ベース部材2の表面3には、蓋溝6が凹設されており、蓋溝6の底面5cの中央には、蓋溝6よりも幅狭の凹溝8が凹設されている。蓋溝6は、熱媒体用管16を覆う蓋板10が配置される部分であって、ベース部材2の長手方向に亘って連続して形成されている。蓋溝6は、断面視矩形を呈しており、蓋溝6の底面5cから垂直に立ち上がる側壁5a,5bを備えている。
【0021】
凹溝8は、熱媒体用管16が挿入される部分であって、ベース部材2の長手方向に亘って連続して形成されている。凹溝8は、上方が開口した断面視U字状の溝であって、下端には熱媒体用管16の外周と同等の曲率半径を有する半円形の底部7が形成されている。これにより、熱媒体用管16と凹溝8の底部7とを密接させることができる。凹溝8の開口部分は、熱媒体用管16の外径と略同等の幅で形成されている。また、凹溝8の深さは、熱媒体用管16の外径と略同等に形成されている。
【0022】
蓋板10は、図2及び図3に示すように、ベース部材2と同様のアルミニウム合金からなり、略平板状を呈する。蓋板10は、断面視矩形を呈し、上面(表面)11、下面(底面)12、側面13a及び側面13bを有する。蓋板10の幅は、本実施形態では、蓋溝6の幅よりも小さくなるように形成されている。蓋板10の厚みは、蓋溝6の深さと略同等に形成されている。
【0023】
熱媒体用管16は、例えば、銅管にて構成されており、図2に示すように、断面視円形の中空部18を有する円筒管である。熱媒体用管16の外径は、凹溝8の幅及び深さと略同等に形成されており、図3に示すように、熱媒体用管16の下半部と凹溝8の底部7とが面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。また、熱媒体用管16の上端と蓋板10の下面12とが面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。
【0024】
熱媒体用管16は、中空部18に、例えば高温液や高温ガスなどの熱媒体を循環させて、ベース部材2及び蓋板10に熱を伝達させる部材、あるいは中空部18に、例えば冷却水や冷却ガスなどの熱媒体を循環させて、ベース部材2及び蓋板10から熱を伝達される部材である。また、熱媒体用管16の中空部18に、例えばヒーターを通して、ヒーターから発生する熱をベース部材2及び蓋板10に伝達させる部材として利用してもよい。
【0025】
図2の(b)に示すように、ベース部材2に熱媒体用管16を挿入するとともに、蓋溝6の幅方向の中心と蓋板10の幅方向の中心とが重なるように配置すると、蓋溝6の側壁5aと蓋板10の側面13aとが突き合わされて突合部V1が形成される。また、蓋溝6の側壁5bと蓋板10の側面13bとが突き合わされて突合部V2が形成される。また、本実施形態では、蓋溝6の幅に対して蓋板10の幅が小さく形成されているため、突合部V1には、蓋溝6の側壁5aと蓋溝6の底面5cと蓋板10の側面13aとからなる離間溝U1が形成される。また同様に、突合部V2には、蓋溝6の側壁5bと蓋溝6の底面5cと蓋板10の側面13bとからなる離間溝U2が形成される。
【0026】
離間溝U1,U2は、後記する溶接接合工程において溶接金属が充填される部分である。離間溝U1,U2の幅は、特に限定されるものではないが、本実施形態では後記する流入攪拌用回転ツール25(図5の(b)参照)のピン28の先端の幅よりも小さく形成されている。これにより、ベース部材2及び蓋板10に対して確実に摩擦攪拌を行うことができる。また、離間溝U1,U2は、本実施形態では、断面視矩形に形成されているが、これに限定されるものではない。離間溝U1,U2は、例えば上方に向けて溝幅が大きくなるように形成してもよい。これにより、溶接作業を容易に行うことができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、凹溝8と熱媒体用管16の下半部を面接触させるとともに、蓋板10と熱媒体用管16とを接触させるように形成したが、これに限定さるものではない。例えば、凹溝8の深さを、熱媒体用管16の外径と同等か、あるいはその1.2倍までの範囲となるようにしてもよい。また、凹溝8の幅を、熱媒体用管16の外径と同等か、あるいはその1.1倍までの範囲となるようにしてもよい。
【0028】
塑性化領域W1,W2は、図1及び図3に示すように、突合部V1,V2に対して後記する流入攪拌工程を行った際に、ベース部材2、蓋板10及び溶接金属Tの一部が塑性流動して一体化された領域である。突合部V1,V2(溶接金属T1,T2)に沿って、後記する流入攪拌工程を行うと、突合部V1,V2の周辺にかかるベース部材2、蓋板10及び溶接金属Tの金属材料が摩擦熱により塑性流動化されて、空隙部P1,P2に塑性流動材が流入する。そして、当該塑性流動材が、再び固まって一体化される。
【0029】
次に、伝熱板1の製造方法について、図4を用いて説明する。図4は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程を示した図であり、(b)は、熱媒体用管を挿入した挿入工程を示した図であり、(c)は、蓋溝閉塞工程を示した図である。図5は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、溶接接合工程を示した図であり、(b)は、流入攪拌工程を示した図であり、(c)は、完成図である。図6は、第一実施形態に係る溶接接合工程を示した斜視図である。
【0030】
第一実施形態に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材2を形成する切削工程と、ベース部材2に形成された凹溝8に熱媒体用管16を挿入する挿入工程と、蓋溝6に蓋板10を挿入する蓋溝閉塞工程と、突合部V1,V2に沿って溶接を行ってベース部材2と蓋板10とを接合する溶接接合工程と、蓋板10の上面11で凹溝8に沿って流入攪拌用回転ツール25を移動させて空隙部Pに塑性流動材Qを流入させる流入攪拌工程とを含むものである。
【0031】
(切削工程)
まず、図4の(a)に示すように、公知のエンドミル加工により、厚板部材に蓋溝6を形成する。そして、蓋溝6の底面に、エンドミル加工等により半円形断面を備えた凹溝8を形成する。これにより、蓋溝6と、蓋溝6の底面に開口された凹溝8とを備えたベース部材2が形成される。凹溝8は、断面半円形の底部7を備えており、底部7の上端から一定の幅で上方に向けて開口されている。
なお、ベース部材2を第一実施形態においては切削加工により形成したが、アルミニウム合金の押出形材を用いてもよい。
【0032】
(挿入工程)
次に、図4の(b)に示すように、凹溝8に熱媒体用管16を挿入する。熱媒体用管16の下半部は、凹溝8の下半分を形成する底部7と面接触する。
【0033】
(蓋溝閉塞工程)
次に、図4の(c)に示すように、ベース部材2の蓋溝6の中央に、アルミニウム合金からなる蓋板10を挿入する。この際、蓋板10の上面11が、ベース部材2の表面3と面一なるとともに、蓋板10の下面12と熱媒体用管16が接触する。蓋板10の幅は、蓋溝6の幅よりも小さく形成されているため、突合部V1には、蓋溝6の側壁5a、底面5c及び蓋板10の側面13aからなる離間溝U1が形成される。また、突合部V2には、蓋溝6の側壁5b、底面5c及び蓋板10の側面13bからなる離間溝U2が形成される。
【0034】
(溶接接合工程)
次に、図5の(a)及び図6に示すように、突合部V1,V2に沿って溶接を行って、ベース部材2と蓋板10とを接合する。本実施形態では、突合部V1,V2に離間溝U1,U2が形成されているため、例えばTIG溶接又はMIG溶接などの肉盛溶接を行って離間溝U1,U2にそれぞれ溶接金属T1,T2を充填する。また、本実施形態の溶接接合工程では、ベース部材2の長手方向全長に亘って肉盛溶接を行っている。溶接接合工程では、溶接金属T1,T2がベース部材2の表面3よりも突出するように形成すると、摩擦攪拌の際の金属不足を補うことができるため好ましい。
【0035】
なお、離間溝U1,U2のいずれか一方に対して溶接を行う場合は、溶接作業中に蓋板10が移動しないように、いずれか他方の離間溝にスペーサを介設することが好ましい。溶接接合工程は、肉盛溶接に限定されるものではなく、公知の溶接であればよい。また、溶接作業は、複数回に分けて溶接金属T1,T2を充填してもよい。
【0036】
(流入攪拌工程)
次に、図5の(b)に示すように、蓋板10の上面11上で、凹溝8の長手方向に沿って流入攪拌用回転ツール25を用いて摩擦攪拌接合を行い、空隙部P1,P2に摩擦熱によって塑性化された塑性流動材Qを流入させる。
流入攪拌用回転ツール25は、例えば、工具鋼からなり、円柱形のツール本体26と、その底面27の中心部から同心軸で垂下するピン28とを有する。ピン28は、先端に向けて幅狭となるテーパ状に形成されている。なお、ピン28の周面には、その軸方向に沿って図示しない複数の小溝や径方向に沿ったネジ溝が形成されていてもよい。また、本実施形態では、流入攪拌用回転ツール25は、蓋板10の上面11に押し込んで摩擦攪拌接合を施す際に、ピン28の下端部(流入攪拌用回転ツール25の先端)が、蓋溝6の底面5cよりも低くなる大きさのものを採用している。
【0037】
流入攪拌工程における摩擦攪拌接合は、蓋板10の上面(表面)11で、高速回転する流入攪拌用回転ツール25を押し込み、下方の凹溝8の長手方向に沿って流入攪拌用回転ツール25を移動させる。即ち、流入攪拌用回転ツール25は、ツール本体26の底面27(ショルダ)の投影部分の一部が熱媒体用管16の空隙部P1,P2と重なるように配置され、熱媒体用管16の斜め上方で移動される。このとき、高速回転する流入攪拌用回転ツール25のピン28により、その周囲の蓋板10、ベース部材2及び溶接金属T1,T2の各金属材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。
【0038】
流入攪拌用回転ツール25は、ツール本体26の底面27が、蓋板10の上面11よりも低くなるように押し込まれる。その押込み量(長さ)は、ツール本体26が押し退ける蓋板10の金属の体積が、熱媒体用管16の周囲の一方の空隙部P1(P2)に充填される塑性流動化されたアルミニウム合金材料の体積、および塑性化領域W1(W2)の幅方向両側に発生するバリの体積との和と同等になるような長さとなっている。そして、流動化された塑性流動材Qは、流入攪拌用回転ツール25のツール本体26の底面27の押込み力によって、空隙部P1(P2)へと押し出されて流入される。前記の摩擦攪拌接合は、凹溝8の幅方向両側でそれぞれ施されて、熱媒体用管16の上側に位置する一対の空隙部P1,P2に塑性流動材Qが流入される。流入攪拌工程における摩擦攪拌接合の後に、塑性化領域W1,W2の幅方向両側に発生したバリを取り除くことが好ましい。
【0039】
なお、流入攪拌用回転ツール25と熱媒体用管16とを近接させて摩擦攪拌を行うと、熱媒体用管16が変形する可能性がある。そのため、流入攪拌用回転ツール25の挿入位置及び押込み量は、流入攪拌用回転ツール25の大きさや蓋板10及び凹溝8の幅の寸法に応じて適宜設定すればよい。本実施形態のように、突合部V1,V2(離間溝U1,U2)と流入攪拌用回転ツール25の幅方向の中心とが重なるように配置させて流入撹拌工程を行えば、ベース部材2、蓋板10及び溶接金属T1,T2がバランスよく攪拌されるため好ましい。
【0040】
以上説明した伝熱板によれば、図5の(c)等に示すように、突合部V1,V2に沿って塑性化領域W1,W2が形成されて、ベース部材2と蓋板10とが接合されるとともに、空隙部P1,P2に塑性流動材Qが流入して充填されるため、熱媒体用管16とベース部材2および蓋板10とが隙間なく密着することになるので、熱交換効率の高い伝熱板1を形成することができる。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、流入攪拌工程に先だって溶接接合工程を行って、ベース部材2と蓋板10とを予め接合することができるため、流入攪拌工程では蓋板10が移動することなく好適に作業を行うことができる。また、本実施形態では、蓋溝6の幅よりも蓋板10の幅を小さく形成して離間溝U1,U2を設け、当該離間溝U1,U2に溶接金属T1,T2を充填するようにしたため、溶接接合工程を容易に行うことができる。また、溶接金属T1,T2を蓋板10の上面11よりも突出させることで、流入攪拌工程の際の金属不足を補うことができる。
【0042】
また、本実施形態では、塑性化領域W1,W2の内部に、溶接金属T1,T2が含まれるように流入攪拌用回転ツール25の挿入位置を設定したため、溶接金属T1,T2が外部に露出するのを防ぐことができる。
【0043】
図7は、第一実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した平面図である。
伝熱板1は、例えば、図7に示すように、複数の伝熱板1を連結して伝熱ユニット90を形成して使用される。伝熱ユニット90は、複数の伝熱板1をベース部材2の短手方向に並設し、各ベース部材2の長手方向の両端から突出した熱媒体用管16を平面視U字状の連結パイプ91で連結して形成される。このような、伝熱ユニット90によれば、一の連通した熱媒体用管96が形成されているため、熱媒体用管96に熱媒体を流通させることにより、ベース部材2及び蓋板10に接触又は近接する図示しない対象物を迅速に冷却又は加熱することができる。
【0044】
なお、伝熱板1の連結方法は、あくまで例示であって他の連結方法によって伝熱ユニットを形成してもよい。また、伝熱ユニット90においては、連結パイプ91が伝熱板1の外部に露出しているが、熱媒体用管16をS字状に形成して熱媒体用管16が伝熱板1の内部に納まるように形成してもよい。
【0045】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る伝熱板について説明する。図8は、第二実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、分解断面図、(b)は、断面図である。
図8に示す第二実施形態に係る伝熱板61は、前記した伝熱板1と略同等の構造を内包し、蓋板10の表面側にさらに上蓋板70を配置して、摩擦攪拌接合を施して接合した点で第一実施形態と相違する。
なお、前記した伝熱板1と同等の構造を下蓋部Mともいう。また、第一実施形態に係る伝熱板1と重複する部材については、同等の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0046】
伝熱板61は、ベース部材62と、凹溝8に挿入された熱媒体用管16と、蓋板10と、蓋板10の表面側に配置された上蓋板70とを有し、塑性化領域W1〜W4で摩擦攪拌接合により一体化されている。
ベース部材62は、図8の(a)に示すように、例えばアルミニウム合金からなり、ベース部材62の表面63に、長手方向に亘って形成された上蓋溝65と、上蓋溝65の底面65cに長手方向に亘って連続して形成された蓋溝6と、蓋溝6の底面に長手方向に亘って形成された凹溝8とを有する。上蓋溝65は、断面視矩形を呈し、底面65cから垂直に立ち上がる側壁65a,65bを備えている。上蓋溝65の幅は、蓋溝6の幅よりも大きく形成されている。
【0047】
図8に示すように、ベース部材62の下部に形成された凹溝8には、熱媒体用管16が挿入されており、蓋板10によって閉塞され、摩擦攪拌接合により塑性化領域W1,W2で接合されている。即ち、ベース部材62の内部に形成された下蓋部Mは、第一実施形態に係る伝熱板1と略同等に形成されている。
【0048】
なお、上蓋溝65の底面65cには、摩擦攪拌接合を行ったことにより、段差(溝)やバリが発生している可能性がある。したがって、例えば塑性化領域W1,W2の表面を基準に、上蓋溝65の底面65cに面削加工を施して平滑に形成することが好ましい。これにより、上蓋板70の下面72と、面削後の上蓋溝65の底面とを隙間なく配置することができる。
【0049】
上蓋板70は、図8に示すように、例えば、アルミニウム合金からなり、上蓋溝65の断面と略同じ矩形断面を形成し、下面72から垂直に形成された側面73a及び側面73bを有する。上蓋板70は、上蓋溝65に嵌合される。即ち、上蓋板70の側面73a,73bは、上蓋溝65の側壁65a,65bと面接触されるか又は微細な隙間をあけて配置されている。ここで、側面73aと側壁65aとの突合せ面を、上側突合部V3とする。また、側面73bと側壁65bとの突合せ面を、上側突合部V4とする。上側突合部V3,V4は、摩擦攪拌接合により、塑性化領域W3,W4で一体化されている。
【0050】
伝熱板61の製造方法は、伝熱板1と同等の製造方法により、ベース部材62の下部に下蓋部Mを形成した後、上蓋溝66の底面65cを面削する面削工程と、上蓋板70を配置する上蓋溝閉塞工程と、上側突合部V3,V4に沿って摩擦攪拌接合を施す上蓋本接合工程を含むものである。
【0051】
(面削工程)
面削工程では、上蓋溝65の底面65cに形成された段差(溝)やバリを切削除去して、底面65cを平滑にする。
【0052】
(上溝閉塞工程)
上蓋溝閉塞工程では、面削工程をした後、上蓋溝65の底面に上蓋板70を配置する。面削工程を行ったことにより、上蓋板70の下面72と、上蓋溝65の底面とを隙間なく配置することができる。
【0053】
(上蓋本接合工程)
上蓋本接合工程では、上側突合部V3,V4に沿って接合用回転ツール(図示省略)を移動させて摩擦攪拌接合を施す。接合用回転ツールは、本実施形態では、流入攪拌用回転ツール25(図5参照)よりも小型の回転ツールである。上蓋本接合工程における接合用回転ツールの押込み深さは、当該接合用回転ツールのピンの長さ及び上蓋板70の厚み等を考慮して適宜設定すればよい。なお、上蓋本接合工程では、流入攪拌用回転ツール25を用いて摩擦攪拌接合を行ってもよい。
【0054】
実施形態に係る伝熱板61によれば、下蓋部Mの上方にさらに上蓋板70を配置して、摩擦攪拌接合を施すことにより、より深い位置に熱媒体用管16を配置させることができる。
【0055】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態に係る伝熱板について説明する。図9は、第三実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。図9に示す第三実施形態に係る伝熱板81は、第一実施形態に係る伝熱板1よりも蓋板10の幅が大きく形成されており、溶接金属T1,T2が塑性化領域W1,W2の外部に露出する点で第一実施形態と相違する。
【0056】
即ち、蓋溝6の幅及び蓋板10の幅寸法が大きい場合には、熱媒体用管16から離れた位置に突合部V1,V2が形成されるため、塑性化領域W1,W2の外部に溶接金属T1,T2が形成される。
【0057】
第三実施形態に係る伝熱板81の製造方法は、溶接金属T1,T2が塑性化領域W1,W2と重複しないことを除いては、第一実施形態に係る伝熱板1の製造方法と略同等であるため説明を省略する。
なお、第三実施形態では、流入攪拌工程を行った後に、溶接接合工程を行ってもよい。また、溶接接合工程では、第一実施形態と同様に、ベース部材2の表面3よりも突出する程度に肉盛溶接を行った後、溶接金属T1,T2の突出した部分を切削して、伝熱板81の表面を面一に形成するのが好ましい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、図10は、溶接接合工程の変形例を示した斜視図である。図10に示すように、溶接接合工程の肉盛溶接を突合部V1,V2の長手方向に間欠的に行ってもよい。このように間欠的に行うことで、溶接作業を省略化することができる。
【0059】
また、本実施形態では、蓋溝6の幅よりも蓋板10の幅を小さく形成することで、離間溝U1,U2を形成したが、これに限定されるものではなく、蓋溝6と蓋板10の幅を略同等に形成して蓋溝6と蓋板10とを隙間なく突き合わせてもよい。そして、蓋溝6と蓋板10とが突き合わされた突合部に対して溶接を行えばよい。また、溶接接合工程は、本実施形態では肉盛溶接によって行ったが、他の公知の溶接でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第一実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は分解断面図、(b)は模式配置図を示す。
【図3】第一実施形態に係る伝熱板を示した模式断面図である。
【図4】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程を示した図であり、(b)は、熱媒体用管を挿入した挿入工程を示した図であり、(c)は、蓋溝閉塞工程を示した図である。
【図5】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、溶接接合工程を示した図であり、(b)は、流入攪拌工程を示した図であり、(c)は、完成図である。
【図6】第一実施形態に係る溶接接合工程を示した斜視図である。
【図7】第一実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した平面図である。
【図8】第二実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、分解断面図、(b)は、断面図である。
【図9】第三実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。
【図10】溶接接合工程の変形例を示した斜視図である。
【図11】従来の伝熱板を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 伝熱板
2 ベース部材
5a (蓋溝の)側壁
5b (蓋溝の)側壁
6 蓋溝
8 凹溝
10 蓋板
13a (蓋板の)側面
13b (蓋板の)側面
16 熱媒体用管
25 流入攪拌用回転ツール
61 伝熱板
65 上蓋溝
65a 側壁
65b 側壁
70 上蓋板
73a 側面
73b 側面
P 空隙部
Q 塑性流動材
U 離間溝
V 突合部
W 塑性化領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する挿入工程と、
前記蓋溝に蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って溶接を行って前記ベース部材と前記蓋板とを接合する溶接接合工程と、
前記蓋板の表面で、前記凹溝に沿って流入攪拌用回転ツールを移動させて前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に、摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を有することを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項2】
前記流入攪拌工程の前に、前記溶接接合工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項3】
前記溶接接合工程において、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って間欠的に溶接を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項4】
前記突合部は、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面とが離間して形成された離間溝を備えており、
前記溶接接合工程では、前記離間溝に肉盛溶接を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項5】
前記流入攪拌工程において、前記流入攪拌用回転ツールの先端を、前記蓋溝の底面よりも深く挿入することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項6】
前記流入攪拌工程において、前記溶接接合工程にて生成した溶接金属を、前記流入攪拌用回転ツールによって摩擦攪拌することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項7】
前記流入攪拌工程後に、
前記ベース部材の前記蓋溝よりも表面側に、前記蓋溝よりも幅広に形成された上蓋溝に前記蓋板を覆う上蓋板を挿入する上蓋溝閉塞工程と、
前記上蓋溝の側壁と前記上蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて前記ベース部材と前記上蓋板との摩擦攪拌接合を施す上蓋接合工程と、をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項1】
ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する挿入工程と、
前記蓋溝に蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って溶接を行って前記ベース部材と前記蓋板とを接合する溶接接合工程と、
前記蓋板の表面で、前記凹溝に沿って流入攪拌用回転ツールを移動させて前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に、摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を有することを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項2】
前記流入攪拌工程の前に、前記溶接接合工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項3】
前記溶接接合工程において、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って間欠的に溶接を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項4】
前記突合部は、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面とが離間して形成された離間溝を備えており、
前記溶接接合工程では、前記離間溝に肉盛溶接を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項5】
前記流入攪拌工程において、前記流入攪拌用回転ツールの先端を、前記蓋溝の底面よりも深く挿入することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項6】
前記流入攪拌工程において、前記溶接接合工程にて生成した溶接金属を、前記流入攪拌用回転ツールによって摩擦攪拌することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項7】
前記流入攪拌工程後に、
前記ベース部材の前記蓋溝よりも表面側に、前記蓋溝よりも幅広に形成された上蓋溝に前記蓋板を覆う上蓋板を挿入する上蓋溝閉塞工程と、
前記上蓋溝の側壁と前記上蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて前記ベース部材と前記上蓋板との摩擦攪拌接合を施す上蓋接合工程と、をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の伝熱板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−17739(P2010−17739A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180176(P2008−180176)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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