説明

伝送品質判定方法、伝送経路選択方法及びその装置

【課題】伝送品質判定方法において、光信号のまま所定の伝送品質を維持できるか判定することを目的とする。
【解決手段】異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを接続した光通信ネットワークシステムに設定されるパスの伝送品質を判定する伝送品質判定方法であって、前記複数のネットワークそれぞれ毎にネットワーク条件に応じて数値化した伝送性能を予め伝送性能格納手段に格納しておき、前記光通信ネットワークシステムに設定されるパスのスパン毎に前記伝送性能格納手段から各スパンのネットワーク条件に応じた伝送性能を得て、得られた前記各スパンの伝送性能に基づいて前記設定されるパスの伝送品質を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信ネットワークにおける伝送品質判定方法、伝送経路選択方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワークにおいて、あるノードからあるノードへ信号を伝送する場合に所望の伝送品質を維持することが可能か否かの伝送品質判定を行うためには、当該ネットワークに関する種々の情報が必要となる。ここで、伝送品質とは、ビットエラーレートやQ値、遅延時間等が含まれる。
【0003】
伝送品質判定を行う際に必要となる情報のうち主なものを以下に示す。
(1)ノード間を接続する光ファイバの種類、ファイバ長、損失、光ファイバの波長分散係数や分散スロープ係数及び偏波モード分散係数。
(2)各ノードに配置される光増幅器の雑音特性。
(3)第3に伝送路に入力する光パワー。
(4)各ノードに配置される分散補償器の特性。
(5)送受信機の特性。
(5−1)伝送する信号のビットレートや変調方式。
(5−2)光信号対雑音比(光SN比)や波長分散及び偏波モード分散に対するエラーレート特性。
(5−3)光ファイバ中で発生する各種非線形光学効果による波形劣化に対するエラーレート特性。
(5−4)光アッド・ドロップ(OADM)ノードを構成する波長合波・分波フィルタを通過することによる光波形劣化に対するエラーレート特性。
【0004】
精度よく伝送品質を推定するには、これらの情報を用いた伝送シミュレーションを行う必要がある。しかしながら、このような数値計算による伝送シミュレーションでは計算結果を得るまでに例えば数日程度の多大の時間が必要であり、また、そのための計算設備が必要となる。
【0005】
このため、伝送シミュレーションの代替として、ネットワーク・デザイン・ルールによる手法がとられることが多い。ネットワーク・デザイン・ルールでは、ネットワーク設計に必要となる種々のパラメータの組み合わせと伝送品質の関係を予めデータベース化している。そして、これらデータベースと比較的簡単な計算式を用いて簡易的に伝送品質を見積もる。
【0006】
このように伝送シミュレーションを用いることなく伝送品質を見積もるために規定された設計手順をネットワーク・デザイン・ルールと呼ぶ。すなわち、ネットワーク・デザイン・ルールは、あるノードからあるノードへ信号を伝送する場合に、光信号のまま一定以上の伝送品質を維持することが可能か否かの伝送品質判定を、伝送シミュレーションを用いることなく行うことができる。
【0007】
ところで、通信ネットワークは、少なくとも1つのサービスドメインを含むネットワーク資源を有し、サービスドメインは、ユーザ端末と、ユーザ端末・ネットワークノード間のデータストリームの所定のサービス品質での伝送を制御するように動作するコントローラとを有し、サービス品質は、ユーザとサービスドメインの間のSLAの条件に依存し、コントローラによって処理されて、適用されるべきポリシーのセットに変換され、ポリシーは、選択されたサービス品質でデータストリームを伝送するようなネットワーク資源の選択及び割当てを含む技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0008】
また、設計対象区間に複数地点が設定され、送信端局と隣接地点間、二つの隣接地点間及び受信端局と隣接地点間のセグメントの損失量に基づいて、各地点に再生中継器及び線形中継器のいずれかを配置し、3R区間について、当該3R区間の両端のうち送信側に配置された送信端局又は再生中継器が送信した光信号を線形中継器により増幅することなく伝送可能な損失量を1R目標値として算出し、3R区間において、送信側の端より送信端局から遠ざかる方向に順次セグメントの損失量を累積加算し、累積損失量と1R目標値とを比較して、線形中継器を配置せず二つのセグメントを一つのセグメントに結合するか否かを判定して、線形中継器及び再生中継器の最適な配置を行う技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0009】
また、通信ネットワークをノードで分割し、線状の設計区間を導出し、各設計区間両端のノードの再生中継器削除優先順位を記憶し、各設計区間において信号伝送が可能かつ再生中継器削除優先順位の高いノードにおいてより受信信号品質のマージンを持つよう線形中継器または再生中継器を各ノードにそれぞれ配置し、隣接する2つの前記設計区間において、境界ノードに再生中継器を配置しなくても信号伝送が可能なとき、該再生中継器を削除するネットワーク設計装置が知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−319970号公報
【特許文献2】特開2004−297502号公報
【特許文献3】特開2005−86521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
光伝送装置を用いた光通信ネットワークは、従来のポイント・ツー・ポイント(Point−to−Point)型のネットワーク構成から、リングやメッシュ型のネットワーク構成が主流となっている。図1にポイント・ツー・ポイント型ネットワークの一例の構成図を示し、図2にリング型ネットワークの一例の構成図を示す。図1では、ノードN1〜N4は直線状に接続されてネットワークを構成している。
【0012】
図2に示すリング型ネットワークでは、ノードN1〜N6,N7〜N12それぞれは比較的小さなネットワークNW1,NW2を構成しており、上記2つのネットワークは光ハブノードであるノードN4,N7を介して互いに接続されている。このような、リング型又はメッシュ型の比較的大規模なネットワークでは、ネットワーク毎に異なる光伝送システムが配置される場合がある。ここで、異なる光伝送システムとは、例えば異なる光伝送装置の機器製造者による光伝送装置の場合や、同じ製造者の光伝送装置であったとしても異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された場合をいう。
【0013】
ここで、図2において、ノードN1〜N6により構成されるネットワークNW1はネットワーク・デザイン・ルール#1により設計されており、ノードN7〜N12により構成されるネットワークNW2はネットワーク・デザイン・ルール#2により設計されているものとする。なお、ノードN4とノードN7は同一装置であり、ネットワークNW1ではノードN4と呼ばれ、ネットワークNW2ではノードN7と呼ばれている。
【0014】
このような場合、図3に示すように、ネットワークの境界となるノードN4(N7)に再生中継器(Regenerator:REG)を配置して、光信号から電気信号に変換し、更に上記電気信号を光信号に変換していた。再生中継器を配置することによって、光信号としては異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計されたネットワークが混在することを回避することができる。しかしながら、このためには、ネットワークの境界となるノードに再生中継器が必要となり、コスト上昇の原因となるという問題があった。
【0015】
また、リング型又はメッシュ型ネットワークでは、あるアッドノードから、あるドロップノードに信号を伝送する際に、複数の経路があり得る。このような場合は、よりコストが低くなる経路を選択することが望ましい。具体的には再生中継器がより少なくなる経路を選択することが望ましい。
【0016】
しかしながら、アッドノードとドロップノードがそれぞれ異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計されたネットワークに属する場合がある。このような場合、従来においては同じネットワーク・デザイン・ルールにより設計されたネットワークの範囲においてノード数が少なく低コストとなるルートを選択するしかなかった。このため、パス全体としては必ずしも再生中継器が少なく低コストとなるルートが選択されるとは限らない。
【0017】
図4では、ノードN1〜N6により構成されるネットワークNW1はネットワーク・デザイン・ルール#1により設計されており、ノードN3,N4,N8〜N12により構成されるネットワークNW2はネットワーク・デザイン・ルール#2により設計されている。
【0018】
図4において、アッドノードN1から見ると、ネットワークNW1においては、ノードN1,N2,N3の経路の方が、ノードN1,N6,N5,N4の経路よりノード数が少なく、雑音特性の観点からは特性がよくなる場合が多い。しかしながら、ネットワークNW2では、ノードN4,N12,N11の経路の方が、ノードN3,N8,N9,N10,N11の経路よりノード数が少なく雑音特性がよくなる場合が多い。このような場合、アッドノードからドロップノードまでのパス全体としては、ルートB(N1,N6,N5,N4,N12,N11)の方が、ルートA(N1,N2,N3,N8,N9,N10,N11)よりも雑音特性がよい場合が多い。このように、従来は光パス全体の性能を見積もるための手法がなかったため、よりよい経路があるにもかかわらず、選択されない場合があるという問題があった。
【0019】
開示の伝送品質判定方法は、光信号のまま所定の伝送品質を維持できるか判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
開示の一実施形態による伝送品質判定方法は、異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを接続した光通信ネットワークシステムに設定されるパスの伝送品質を判定する伝送品質判定方法であって、
前記複数のネットワークそれぞれ毎にネットワーク条件に応じて数値化した伝送性能を予め伝送性能格納手段に格納しておき、
前記光通信ネットワークシステムに設定されるパスのスパン毎に前記伝送性能格納手段から各スパンのネットワーク条件に応じた伝送性能を得て、
得られた前記各スパンの伝送性能に基づいて前記設定されるパスの伝送品質を判定する。
【発明の効果】
【0021】
本実施形態によれば、光信号のまま所定の伝送品質を維持できるか判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ポイント・ツー・ポイント型ネットワークの一例の構成図である。
【図2】リング型ネットワークの一例の構成図である。
【図3】ネットワークの境界における問題点を説明するための図である。
【図4】経路選択の問題点を説明するための図である。
【図5】光通信ネットワークシステムの一実施形態の構成図である。
【図6】ネットワーク管理システムの一実施形態のハードウェア構成図である。
【図7】伝送性能テーブルの一実施形態を示す図である。
【図8】ネットワーク管理システムの伝送品質判定処理の一実施形態のフローチャートである。
【図9】ネットワークを跨ぐパスの伝送品質を判定を説明するための図である。
【図10】光通信ネットワークシステムの一実施形態の変形例の構成図である。
【図11】伝送品質及び伝送経路管理装置の伝送品質判定処理の一実施形態のフローチャートである。
【図12】伝送経路選択処理の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。
【0024】
<光通信ネットワークシステムの構成>
図5は光通信ネットワークシステムの一実施形態の構成図を示す。図5に示すリング型ネットワークでは、ノードN1〜N6,N7〜N12それぞれは比較的小さなネットワークNW1,NW2を構成しており、上記2つのネットワークは光ハブノードであるノードN4,N7を介して互いに接続されている。なお、ノードN4とノードN7は同一のノードであり、ネットワークNW1ではノードN4として機能し、ネットワークNW2ではノードN7として機能する。
【0025】
ネットワークNW1はネットワーク・デザイン・ルール#1により設計されており、ネットワークNW2はネットワーク・デザイン・ルール#1とは異なるネットワーク・デザイン・ルール#2により設計されている。なお、隣接するノード間を結ぶ線は光ファイバを示しており、スパンと呼ぶ。
【0026】
ネットワーク管理システム(NMS)11はノードN1〜N6それぞれと個々に、もしくは他のノードを介して接続されている。ネットワーク管理システム11はネットワークNW1の各ノードN1〜N6を管理及び制御するものであり、伝送性能テーブル11a,伝送品質判定部11b,伝送経路選択部11cを有している。
【0027】
また、ネットワーク管理システム12はN7〜N12それぞれと個々に、もしくは他のノードを介して接続されている。ネットワーク管理システム12はネットワークNW2の各ノードN7〜N12を管理及び制御するものであり、伝送性能テーブル12a,伝送品質判定部12b,伝送経路選択部12cを有している。
【0028】
<ネットワーク管理システム>
図6にネットワーク管理システム11,12の一実施形態のハードウェア構成図を示す。図6において、ネットワーク管理システムは、CPU21、RAM22,ROM23,ハードディスク装置24,DMAコントローラ25,通信インタフェース26を有しており、これらの間は内部バス27により接続されている。
【0029】
CPU21はRAM22,ROM23,ハードディスク装置24等に記憶されているソフトウェアを実行することで、伝送品質判定処理、伝送経路選択処理、その他の管理処理及び制御処理等の各種処理を実行する。また、RAM22は各種処理の実行時に作業領域として使用され、ハードディスク装置24は各スパンの光ファイバ情報等が格納されると共に、伝送性能テーブル11a,12aの格納部として使用される。DMAコントローラ25は例えばハードディスク装置24,通信インタフェース26間の高速データ転送を実行する。通信インタフェース26はネットワークを構成するノードの一部又は全部と接続されて各ノードとの間で通信を行うと共に、自ネットワーク管理システムに隣接するネットワーク管理システムの通信インタフェース26と接続されてネットワーク管理システム間で通信を行う。
【0030】
<伝送性能テーブル>
本実施形態において、伝送性能テーブル11a,12aにはネットワーク・デザイン・ルール#1,#2それぞれによる伝送性能すなわち伝送可能な最大スパン数又は最大伝送距離を種々のネットワーク条件に対応して予め数値化しておく。この伝送可能な最大スパン数を用いて異なるネットワーク・デザイン・ルール#1,#2により設計された2つ以上のネットワークを通過する光パスの伝送可否を判定する。なお、伝送性能としては、伝送可能な最大スパン数又は最大伝送距離の代りに、伝送可能な最大スパン数又は最大伝送距離の逆数を用いても良い。ノードとノードを接続するスパンに関するパラメータが全てのスパンで等しい仮想的なネットワークにおける伝送可能な最大スパン数を数値データとして準備し、伝送性能テーブル11a,12aに格納しておく。
【0031】
図7に伝送性能テーブル11a,12aの一実施形態を示す。図7(A)は伝送性能テーブル11aを示し、図7(B)は伝送性能テーブル12aを示している。ここで、スパンに関するパラメータには下記パラメータが含まれる。
(1)伝送する信号の種類つまりビットレート及び/又は変調方式。
(2)光ファイバの種類、例えばITU−T G.652で規定されたSSMF(Standard Single Mode Fiber)やITU−T G.655で規定されたNZ−DSF(Non Zero Dispersion Fiber)。
(3)光ファイバの損失係数(dB/km)。
(4)光ファイバの波長分散係数(ps/nm/km)。
(5)光ファイバの波長分散スロープ係数(ps/nm/km)。
(6)光ファイバの偏波分散(PMD)係数(ps/√km)。
(7)スパン当たりのファイバ損失(dB)。
(8)スパン当たりの距離(km)。
(9)パスに含まれるOADM(Optical Add/Drop Multiplexing:光分岐挿入装置)の数。
【0032】
伝送性能テーブル11a,12aには、ネットワーク・デザイン・ルール、あるいは、光伝送シミュレーションを含む代替手段により、上記パラメータ(1)〜(9)が設定されているときに、再生中継器を配置することなく、所望の伝送品質を維持することができる最大スパン数が予め設定されている。
【0033】
なお、上記パラメータ(1)〜(9)のうち、必須であるのはパラメータ(1),(2),(6)、(7)であり、次に重要であるのはパラメータ(4)、(5)であり、その他のパラメータを更に追加することによって、設計精度を上げることができる。
【0034】
<伝送品質判定部の処理>
図8はネットワーク管理システム11,12の伝送品質判定部11b又は12bが実行する伝送品質判定処理の一実施形態のフローチャートを示す。この処理は信号を挿入(アッド)する始点ノードから信号を分岐(ドロップ)する終点ノードまでの経路であるパス(もしくはパス候補)が決定された後、例えば始点ノードが属するネットワーク(例えばネットワークNW1)のネットワーク管理システムにおいて実行される。
【0035】
図8において、ステップS1でパスを伝送する信号のビットレート及び/又は変調方式を取得する。ステップS2で当該パスに含まれるOADM数を取得する。以下のステップS3〜S8の間は当該パスに含まれるスパン数だけ(i=1toスパン数)繰り返されるループ処理である。
【0036】
ステップS4において、パラメータ初期化を行い、i=1,X=0とする。ステップS5で当該パスのi番目のスパンの光ファイバ情報を取得する。なお、各スパンの光ファイバ情報はネットワーク管理システム内の例えばハードディスク装置24に予め格納されている。ステップS6で伝送性能テーブル11a又は12aから上記i番目のスパンの光ファイバ情報及び当該パスに含まれるOADM数に対応する最大スパン数を検索する。そして、ステップS7で検索した最大スパン数の逆数(1/最大スパン数)をXパラメータに加算する。
【0037】
なお、図8に示す処理をネットワーク管理システム11の伝送品質判定部11bが実行する場合に、当該パスのi番目のスパンがネットワークNW2に含まれる場合、伝送品質判定部11bは通信インタフェース26を介してネットワーク管理システム12の伝送性能テーブル12aをアクセスして、上記i番目のスパンの光ファイバ情報及び当該パスに含まれるOADM数に対応する最大スパン数を検索する。
【0038】
上記のステップS3〜S8は当該パスに含まれるスパン数だけ繰り返される。ここで、当該パスのスパン数=nとするとXパラメータは(1)式で表される。
【0039】
X=(1/1番目のスパンの条件における最大スパン数)
+(1/2番目のスパンの条件における最大スパン数)
+…+(1/n番目のスパンの条件における最大スパン数) …(1)
ステップS9ではXパラメータが1以下であるか否かを判別する。ステップS9でX≦1.0であれば、当該パスは再生中継器を配置することなく所望の伝送品質を維持することができるとして、ステップS10で伝送可との伝送品質判定を行って、この処理を終了する。
【0040】
一方、X>1.0であれば、当該パスは所望の伝送品質を維持することができないとして、ステップS11で伝送不可との伝送品質判定を行って、この処理を終了する。なお、上記の伝送不可との伝送品質判定を行った場合には、当該パスの途中に少なくとも1つの再生中継器を挿入する必要がある。
【0041】
このようにして、異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを通過するパスについても精度よく伝送可否を判定することが可能となる。
【0042】
ここで、図9に示すように、ネットワークNW1のノードN2で挿入(アッド)された信号を異なるネットワークNW2のノードN9で分岐(ドロップ)する、すなわちパスがネットワークを跨ぎノードN2,N3,N4,N8,N9の経路を通るパスの伝送品質を判定する場合について説明する。ここでは、ノードN4とノードN7は同一装置であり、ノードN3,N4,N8はOADMであるものとする。
【0043】
この場合、スパンN2,N3の光ファイバ情報は、ファイバタイプがSSMF、ファイバ損失が10dB、PMD計数が0.1ps/√kmであり、参照する伝送性能テーブルは11aであり、パスに含まれるOADM数は3であるため、スパンN2,N3の最大スパン数は8であり、最大スパン数の逆数は0.125となる。同様にして、スパンN3,N4の最大スパン数の逆数は0.2となり、スパンN4,N8の最大スパン数の逆数は0.1672となり、スパンN8,N9の最大スパン数の逆数は0.125となる。したがって、上記各最大スパン数の逆数の和Xは0.617となり、0.617≦1.0であるので、当該パス(N2,N3,N4,N8,N9)は再生中継器を配置することなく所望の伝送品質を維持することができる伝送可と判定される。
【0044】
<光通信ネットワークシステムの変形例>
図10は光通信ネットワークシステムの一実施形態の変形例の構成図を示す。図9において図5と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
ネットワーク管理システム11AはノードN1〜N6それぞれと個々に、もしくは他のノードを介して接続されている。ネットワーク管理システム11AはネットワークNW1の各ノードN1〜N6を管理及び制御するものであり、伝送性能テーブル11aを有している。ネットワーク管理システム11と異なるのは伝送品質判定部11b,伝送経路選択部11cを有していない点である。
【0046】
また、ネットワーク管理システム12AはN7〜N12それぞれと個々に、もしくは他のノードを介して接続されている。ネットワーク管理システム12はネットワークNW2の各ノードN7〜N12を管理及び制御するものであり、伝送性能テーブル12aを有している。ネットワーク管理システム11と異なるのは伝送品質判定部12b,伝送経路選択部12cを有していない点である。
【0047】
伝送品質及び伝送経路管理装置13は図6に示すネットワーク管理システムと同様のハードウェア構成を有しており、伝送品質及び伝送経路管理装置13は通信インタフェースによってネットワーク管理システム11A,12Aそれぞれと接続されている。そして、伝送品質及び伝送経路管理装置13は伝送品質判定部13b,伝送経路選択部13cを有している。
【0048】
<伝送品質判定部の処理>
図11は伝送品質及び伝送経路管理装置13の伝送品質判定部13bが実行する伝送品質判定処理の一実施形態のフローチャートを示す。この処理は信号を挿入(アッド)する始点ノードから信号を分岐(ドロップ)する終点ノードまでの経路であるパス(もしくはパス候補)が決定された後、伝送品質及び伝送経路管理装置13の伝送品質判定部13bにおいて実行される。
【0049】
図11において、ステップS21で伝送品質判定部13bは当該パスのうちネットワークNW1に含まれる部分のスパンについてネットワーク管理システム11Aから光ファイバ情報を取得する。ステップS22で伝送品質判定部13bは伝送性能テーブル11aから上記ネットワークNW1に含まれる部分のスパンの光ファイバ情報及び当該パスに含まれるOADM数に対応する最大スパン数を検索する。そして、検索した各スパンの最大スパン数の逆数(1/最大スパン数)を加算して、上記ネットワークNW1に含まれる部分のスパンのX1パラメータを求める。
【0050】
次に、ステップS23で伝送品質判定部13bは当該パスのうちネットワークNW2に含まれる部分のスパンについてネットワーク管理システム12Aから光ファイバ情報を取得する。ステップS24で伝送品質判定部13bは伝送性能テーブル12aから上記ネットワークNW2に含まれる部分のスパンの光ファイバ情報及び当該パスに含まれるOADM数に対応する最大スパン数を検索する。そして、検索した各スパンの最大スパン数の逆数(1/最大スパン数)を加算して、上記ネットワークNW2に含まれる部分のスパンのX2パラメータを求める。
【0051】
ステップS25で伝送品質判定部13bはX1パラメータとX2パラメータを加算してXパラメータを求める(X=X1+X2)。次に、ステップS26ではXパラメータが1以下であるか否かを判別する。ステップS26でX≦1.0であれば、当該パスは再生中継器を配置することなく所望の伝送品質を維持することができるとして、ステップS27で伝送可との伝送品質判定を行って、この処理を終了する。
【0052】
一方、X>1.0であれば、当該パスは所望の伝送品質を維持することができないとして、ステップS28で伝送不可との伝送品質判定を行って、この処理を終了する。
【0053】
なお、図10ではネットワーク11A,12Aに伝送性能テーブル11a、12aを設けているが、伝送性能テーブル11a、12aを伝送品質及び伝送経路管理装置13に転送もしくは設定する構成としても良い。
【0054】
<伝送経路選択処理の処理>
図12は送経路選択部11c又は12c又は13cが実行する伝送経路選択処理の一実施形態のフローチャートを示す。この処理は信号を挿入(アッド)する始点ノードと信号を分岐(ドロップ)する終点ノードを指定されたネットワーク管理システム11,12又は伝送経路管理装置13において実行される。
【0055】
図12において、ステップS31で始点ノード(アッドノード)から終点ノード(ドロップノード)に至る経路を全てパス候補として抽出する。以下のステップS32〜S39の間はパス候補の数だけ繰り返されるループ処理である。また、上記ループ処理(S32〜S39)内のステップS33〜S38の間は1つのパス候補に含まれるスパン数だけ(i=1toスパン数)繰り返されるループ処理である。なお、ステップS33〜S38のループ処理ではパス候補を伝送する信号のビットレート及び/又は変調方式と当該パス候補に含まれるOADM数を取得しているものとする。
【0056】
ステップS34において、パラメータ初期化を行い、i=1,Xi=0とする。ステップS35で当該パス候補のi番目のスパンの光ファイバ情報を取得し、ステップS36で伝送性能テーブル11a又は12aから上記i番目のスパンの光ファイバ情報及び当該パス候補に含まれるOADM数に対応する最大スパン数を検索する。そして、ステップS37で検索した最大スパン数の逆数(1/最大スパン数)をXiパラメータに加算する。
【0057】
上記のステップS33〜S38は当該パス候補に含まれるスパン数だけ繰り返される。ここで、当該パス候補のスパン数=nとするとXパラメータは(1)式で表される。
【0058】
Xi=(1/1番目のスパンの条件における最大スパン数)
+(1/2番目のスパンの条件における最大スパン数)
+…+(1/n番目のスパンの条件における最大スパン数) …(2)
ステップS32〜S39のループ処理は全てのパス候補について実行され、パス候補数がmとすれば、Xパラメータ(X1〜Xm)が求められる。ステップS40ではXパラメータが最小であるパス候補を設定するパスとして選択し、この処理を終了する。
【0059】
このようにして、異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計されたネットワークが複数混在するネットワークで、再生中継器が不要で低コストとなり、雑音特性がよい経路を精度よく選択することができる。
(付記1)
異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを接続した光通信ネットワークシステムに設定されるパスの伝送品質を判定する伝送品質判定方法であって、
前記複数のネットワークそれぞれ毎にネットワーク条件に応じて数値化した伝送性能を予め伝送性能格納手段に格納しておき、
前記光通信ネットワークシステムに設定されるパスのスパン毎に前記伝送性能格納手段から各スパンのネットワーク条件に応じた伝送性能を得て、
得られた前記各スパンの伝送性能に基づいて前記設定されるパスの伝送品質を判定する、
ことを特徴とする伝送品質判定方法。
(付記2)
付記1記載の伝送品質判定方法において、
前記伝送性能格納手段は、前記ネットワーク条件として少なくとも伝送する信号の種類、光ファイバの種類、光ファイバの偏波分散係数、スパン当たりのファイバ損失を用い、前記伝送性能として伝送可能な最大スパン数又は最大伝送距離、あるいは前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数を用いた
ことを特徴とする伝送品質判定方法。
(付記3)
付記2記載の伝送品質判定方法において、
前記設定されるパスの伝送品質の判定は、前記各スパンの前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数の総和を1と比較することで行う
ことを特徴とする伝送品質判定方法。
(付記4)
異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを接続した光通信ネットワークシステムで指定された始点ノードと終点ノードを結ぶ1つのパスを選択する伝送経路選択方法であって、
前記複数のネットワークそれぞれ毎にネットワーク条件に応じて数値化した伝送性能を予め伝送性能格納手段に格納しておき、
前記始点ノードと終点ノードを結ぶ全てのパスをパス候補として抽出し、
抽出した各パス候補についてスパン毎に前記伝送性能格納手段から各スパンのネットワーク条件に応じた伝送性能を得て、
前記各パス候補毎に得られた前記各スパンの伝送性能に基づいて前記各パス候補の伝送品質を数値化し、
前記各パス候補の数値化された伝送品質を比較して前記1つのパスを選択する
ことを特徴とする伝送経路選択方法。
(付記5)
付記4記載の伝送経路選択方法において、
前記伝送性能格納手段は、前記ネットワーク条件として少なくとも伝送する信号の種類、光ファイバの種類、光ファイバの偏波分散係数、スパン当たりのファイバ損失を用い、前記伝送性能として伝送可能な最大スパン数又は最大伝送距離、あるいは前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数を用いた
ことを特徴とする伝送経路選択方法。
(付記6)
付記5記載の伝送経路選択方法において、
前記各パス候補の数値化された伝送品質は、前記各スパンの前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数の総和である
ことを特徴とする伝送経路選択方法。
(付記7)
異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを接続した光通信ネットワークシステムに設定されるパスの伝送品質を判定する伝送品質判定装置であって、
前記複数のネットワークそれぞれ毎にネットワーク条件に応じて数値化した伝送性能を予め格納した伝送性能格納手段と、
前記光通信ネットワークシステムに設定されるパスのスパン毎に前記伝送性能格納手段から各スパンのネットワーク条件に応じた伝送性能を取得する伝送性能取得手段と、
前記伝送性能取得手段で得られた前記各スパンの伝送性能に基づいて前記設定されるパスの伝送品質を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする伝送品質判定装置。
(付記8)
異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを接続した光通信ネットワークシステムで指定された始点ノードと終点ノードを結ぶ1つのパスを選択する伝送経路選択装置であって、
前記複数のネットワークそれぞれ毎にネットワーク条件に応じて数値化した伝送性能を予め格納した伝送性能格納手段と、
前記始点ノードと終点ノードを結ぶ全てのパスをパス候補として抽出する抽出手段と、
抽出した各パス候補についてスパン毎に前記伝送性能格納手段から各スパンのネットワーク条件に応じた伝送性能を取得する伝送性能取得手段と、
前記伝送性能取得手段で前記各パス候補毎に得られた前記各スパンの伝送性能に基づいて前記各パス候補の伝送品質を数値化する数値化手段と、
前記各パス候補の数値化された伝送品質を比較して前記1つのパスを選択する選択手段(S40)と、
を有することを特徴とする伝送経路選択装置。
(付記9)
付記7記載の伝送品質判定装置において、
前記伝送性能格納手段は、前記ネットワーク条件として少なくとも伝送する信号の種類、光ファイバの種類、光ファイバの偏波分散係数、スパン当たりのファイバ損失を用い、前記伝送性能として伝送可能な最大スパン数又は最大伝送距離、あるいは前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数を用いた
ことを特徴とする伝送品質判定装置。
(付記10)
付記9記載の伝送品質判定装置において、
前記判定手段は、前記各スパンの前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数の総和を1と比較することで行う
ことを特徴とする伝送品質判定装置。
(付記11)
付記8記載の伝送経路選択装置において、
前記伝送性能格納手段は、前記ネットワーク条件として少なくとも伝送する信号の種類、光ファイバの種類、光ファイバの偏波分散係数、スパン当たりのファイバ損失を用い、前記伝送性能として伝送可能な最大スパン数又は最大伝送距離、あるいは前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数を用いた
ことを特徴とする伝送経路選択装置。
(付記12)
付記11記載の伝送経路選択装置において、
前記各パス候補の数値化された伝送品質は、前記各スパンの前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数の総和である
ことを特徴とする伝送経路選択装置。
【符号の説明】
【0060】
11,12,11A,12A ネットワーク管理システム
11a,12a 伝送性能テーブル
11b,12b,13b 伝送品質判定部
11c,12c,13c 伝送経路選択部
13 伝送品質及び伝送経路管理装置
21 CPU
22 RAM
23 ROM
24 ハードディスク装置
25 DMAコントローラ
26 通信インタフェース
27 内部バス
N1〜N12 ノード
NW1,NW2 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを接続した光通信ネットワークシステムに設定されるパスの伝送品質を判定する伝送品質判定方法であって、
前記複数のネットワークそれぞれ毎にネットワーク条件に応じて数値化した伝送性能を予め伝送性能格納手段に格納しておき、
前記光通信ネットワークシステムに設定されるパスのスパン毎に前記伝送性能格納手段から各スパンのネットワーク条件に応じた伝送性能を得て、
得られた前記各スパンの伝送性能に基づいて前記設定されるパスの伝送品質を判定する、
ことを特徴とする伝送品質判定方法。
【請求項2】
請求項1記載の伝送品質判定方法において、
前記伝送性能格納手段は、前記ネットワーク条件として少なくとも伝送する信号の種類、光ファイバの種類、光ファイバの偏波分散係数、スパン当たりのファイバ損失を用い、前記伝送性能として伝送可能な最大スパン数又は最大伝送距離、あるいは前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数を用いた
ことを特徴とする伝送品質判定方法。
【請求項3】
請求項2記載の伝送品質判定方法において、
前記設定されるパスの伝送品質の判定は、前記各スパンの前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数の総和を1と比較することで行う
ことを特徴とする伝送品質判定方法。
【請求項4】
異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを接続した光通信ネットワークシステムで指定された始点ノードと終点ノードを結ぶ1つのパスを選択する伝送経路選択方法であって、
前記複数のネットワークそれぞれ毎にネットワーク条件に応じて数値化した伝送性能を予め伝送性能格納手段に格納しておき、
前記始点ノードと終点ノードを結ぶ全てのパスをパス候補として抽出し、
抽出した各パス候補についてスパン毎に前記伝送性能格納手段から各スパンのネットワーク条件に応じた伝送性能を得て、
前記各パス候補毎に得られた前記各スパンの伝送性能に基づいて前記各パス候補の伝送品質を数値化し、
前記各パス候補の数値化された伝送品質を比較して前記1つのパスを選択する
ことを特徴とする伝送経路選択方法。
【請求項5】
請求項4記載の伝送経路選択方法において、
前記伝送性能格納手段は、前記ネットワーク条件として少なくとも伝送する信号の種類、光ファイバの種類、光ファイバの偏波分散係数、スパン当たりのファイバ損失を用い、前記伝送性能として伝送可能な最大スパン数又は最大伝送距離、あるいは前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数を用いた
ことを特徴とする伝送経路選択方法。
【請求項6】
請求項5記載の伝送経路選択方法において、
前記各パス候補の数値化された伝送品質は、前記各スパンの前記最大スパン数又は最大伝送距離の逆数の総和である
ことを特徴とする伝送経路選択方法。
【請求項7】
異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを接続した光通信ネットワークシステムに設定されるパスの伝送品質を判定する伝送品質判定装置であって、
前記複数のネットワークそれぞれ毎にネットワーク条件に応じて数値化した伝送性能を予め格納した伝送性能格納手段と、
前記光通信ネットワークシステムに設定されるパスのスパン毎に前記伝送性能格納手段から各スパンのネットワーク条件に応じた伝送性能を取得する伝送性能取得手段と、
前記伝送性能取得手段で得られた前記各スパンの伝送性能に基づいて前記設定されるパスの伝送品質を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする伝送品質判定装置。
【請求項8】
異なるネットワーク・デザイン・ルールにより設計された複数のネットワークを接続した光通信ネットワークシステムで指定された始点ノードと終点ノードを結ぶ1つのパスを選択する伝送経路選択装置であって、
前記複数のネットワークそれぞれ毎にネットワーク条件に応じて数値化した伝送性能を予め格納した伝送性能格納手段と、
前記始点ノードと終点ノードを結ぶ全てのパスをパス候補として抽出する抽出手段と、
抽出した各パス候補についてスパン毎に前記伝送性能格納手段から各スパンのネットワーク条件に応じた伝送性能を取得する伝送性能取得手段と、
前記伝送性能取得手段で前記各パス候補毎に得られた前記各スパンの伝送性能に基づいて前記各パス候補の伝送品質を数値化する数値化手段と、
前記各パス候補の数値化された伝送品質を比較して前記1つのパスを選択する選択手段と、
を有することを特徴とする伝送経路選択装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−191271(P2012−191271A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50825(P2011−50825)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】