説明

伸縮性生地と、その染色方法

【課題】表裏編地から筒状に形成され且つパターンの連続を有する経編地において、連続的に、表裏編地の所定の位置に正確かつ容易に捺染を施し、それにより、時間と人手を省略し、生産性向上に寄与しうる経編地の捺染方法と、その方法に用いる経編地を提供する。
【解決手段】パターン間の境界部において、表裏編地を連結編みした。 そして、この連結編みの部分またはそこに設けた目印を認識し、これにより、パターンの位置を認識して、適確に捺染できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、伸縮性生地と、その染色方法とに関し、詳しくは、複数のパターンを有する伸縮性生地におけるパターンの所定位置に連続的に染色するための伸縮性生地と、前記伸縮性生地の染色方法とに関する。
【0002】
ここで、「パターン」とは、シャツ、パンツなどの最終製品の形態をいう。
【背景技術】
【0003】
従来、布帛に捺染を施し、そのあと布帛をパターンに裁断して縫製し、製品にすることが一般的に行われてきた。
【0004】
近年、丸編、横編などにより筒編地として一体に編成した最終製品に直接捺染することも行われており、この場合は、製品をそれぞれ別々に捺染機に設置して、捺染している。また、表裏ともに捺染する場合には、表編地の捺染後に手作業で裏返して裏編地を捺染しており、いずれにしても、多大の時間と労力を要していた。
【0005】
このような問題点は複数のパターンを有する伸縮性生地、たとえば経方向に多数のパターンを連続編成してなる筒状編地(特許文献1)の場合にはさらに顕著である。すなわち、経方向に長尺状の伸縮性生地において複数のパターンが連続的に配されているので、捺染機、インクジェット装置などに伸縮性生地を供給する際に、経方向にかかる張力により、各パターンが所定の染色位置からはずれることとなり、各パターンの所定個所に所定の柄等を染色することが困難であるという問題があった。
【特許文献1】特公昭52−12306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、パターンの連続を有する伸縮性生地について、連続的に、表裏編地の少なくとも一方の所定位置に正確かつ容易に染色を施し、それにより、時間と人手を省略し、生産性向上に寄与しうる伸縮性生地と、その染色方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
この発明は、それ自体伸縮性を有する経編地、丸編地、横編地などの編地と、少なくとも経方向に伸縮性糸を配した織地とに適用が可能である。ただ、連続的にパターンを編成することが容易ではない丸編地、横編地、織地に比して、経編地が本発明にはもっとも適切である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の伸縮性生地は、長尺状の表裏編地よりなる伸縮性生地において、少なくとも経方向に複数の、シャツ、パンツなどのパターンをその間に境界部を介して並設してなり、前記境界部は、表裏編地が連結されたものである(請求項1)。
【0009】
この発明の伸縮性生地によれば、伸縮性生地の位置を境界部を介して検知することができるので、かりに、伸縮性生地が経方向において伸長し、所定位置からはずれているとしても、各パターンの位置を正しく認識して、これを適切に補正することができる。
【0010】
前記の伸縮性生地の左右両側にも、表裏編地が連結されてなる境界部を設けることができる(請求項2)。このようにすれば、伸縮性生地が緯方向において伸長し、所定位置からはずれているとしても、パターンの位置を正しく認識して、これを適切に補正することができる。
【0011】
パターンは、伸縮性生地の緯方向すなわち幅方向にも複数が並設されており、緯方向に隣接するパターンの間及び/又は伸縮性生地の左右両側にも、表裏編地が連結されてなる境界部が設けられていてよい(請求項3)。このようにすれば、幅方向に複数のパターンが設けられている場合であっても、幅方向におけるパターン間の境界部ないし幅方向の縁部を認識することによりパターンの位置を正しく把握し、パターンにおけるしかるべき位置に所望の染色をすることが可能である。
【0012】
伸縮性生地は経編地であるのが好ましく(請求項4)、特に、筒状に編成されていることが好ましい(請求項5)。この場合、パターンは少なくとも編成方向(経方向)に連続して配される。
【0013】
このように、伸縮性生地が経編地である場合、各パターンにおいては、表裏編地が2枚に分離して編成されており、隣接するパターンの境界部においては、表裏編地が一体に連結編成されている。すなわち、別の組織で編成されている。
【0014】
なお、本願において、「境界部」は、伸縮性生地(たとえば、筒状経編地)の左右両側縁部も含む。
【0015】
伸縮性生地が経編地である場合、これを編成する経編機は、ジャカード機構を有するダブルラッシェル機であることが好ましい。
【0016】
そして、この筒編地は、表裏編地を有する筒状に編成されたものであり、表裏編地に、シャツ、パンツなどのパターンを連続的に編成している。この筒編地は、少なくとも経方向にパターンを連続的に反復しており、隣接するパターン同士の間に、別の編地、すなわち表裏編地が連結した二重編地部分を有する。後述のように、染色機がこの別の編地を検知し、パターンの位置を認識して、パターンに沿って、またはパターンの所定箇所において、編地に染色することができる。
【0017】
前記パターンの境界部、すなわち前記表裏編地の連結部には、目印としての開口部、凹凸、文字、記号等よりなる目印が表示されているのが好ましい(請求項6)。
【0018】
また、前記の目印は編成または織成により形成されるのが好ましく(請求項7)、特に、伸縮性生地が経編地である場合には、この目印を、表裏連結された編地部分においてジャカードにより編成するのが好ましい。
【0019】
四周を経緯の前記境界部の4つにより囲繞された領域において、前記パターンと捨て部となるその余の個所とが含まれており、前記伸縮性生地の形成後、パターンの外形線に沿って切断することにより、前記捨て部を切除するようになすことが好ましい(請求項8)。
【0020】
上記の伸縮性生地の染色方法としては、前記境界部またはこれに設けた目印を染色機において検知することにより、前記伸縮性生地におけるパターンないしパターンの特定の個所の位置を認識して、そこに染色する(請求項9)。
【0021】
前記染色は、捺染またはインクジェットによるのが好ましい(請求項10)。
【0022】
捺染による場合は、たとえば、経編地を捺染機に対して長手方向に間歇的に走行させながら、捺染機が経編地における前記の境界部ないしそこにおける特定の位置を認識した時に、経編地の走行を停止させ、捺染機が、この境界部に関して所定位置にあるパターンを認識して、このパターンにおける経編地の表裏に所定デザインでの捺染を施す。
【0023】
また、インクジェットによる場合は、たとえば、経編地をインクジェット機に対して長手方向に連続的に走行させながら、インクジェット機が経編地における前記の境界部ないしそこにおける特定の位置を認識した時に、インクジェット機が、この境界部に関して所定位置にあるパターンの特定個所を認識して、そこにおける経編地の表裏に染色を施す。このようなインクジェットを連続的に行うことにより所定デザインを染色する。
【発明の効果】
【0024】
この発明の伸縮性生地を染色する場合には、パターン間における表裏編地が連結されてなる境界部の位置を認識し、これにより、パターンないしその特定個所に染色するものである。この連結部分は表裏編地が経方向及び緯方向にずれることがなく、さらに、パターンにおける伸縮性生地とは異なるため、パターンないしその特定個所の位置を正確かつ容易に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、この発明を経編地で実現した場合の一実施例を示す。
【0026】
経編地10は、表裏の編地12,14により筒状に形成されている(表側の編地12のみが図示されている)。この筒状の経編地10は、経方向に多数のパターン16が、また緯方向にも複数のパターン16が連続形成されている。図1では、緯方向に二つのパターン16,16が並び、このような一組のパターン16,16が経方向に多数並んでいる。
【0027】
隣接するパターン16,16の間の境界部18,19においては、表裏編地を一体に連結編成している。これにより、境界部18,19はパターン16,16とは異なる組織に現れる。
【0028】
なお、図1における筒状の経編地の両側縁部19は、厳密にはパターン16間の境界部とはいえないが、この発明においては、この部分も含めて境界部と称することとする。
【0029】
また、図1において、各パターン16はシャツの形態をなしている。この場合、パターン16間の境界部すなわち連結編部分18,19により囲繞される領域17は、パターン16とその余の個所である捨て部23とから構成されている。
【0030】
編成後、表裏編地12,14をパターン16の外形線25に沿って切断する。図2に示すように、パターン16の外形線25の両側には表裏の編地12,14を一体に連結編みしてなる連結部13,13が存在している。外形線25自体は、連結部13,13間において部分的に編糸が掛け渡された孔地として形成されている(不図示)ので、この箇所において切断が容易である。そして、切断箇所である外形線25の両側に連結部13,13が存在するので、パターン16を切離した際に、パターン16における表裏編地12,14が分離することがなく、縫製までの取扱が容易である。外形線25の両側に連結部13,13が設けられていない場合には、切断後、外形線25の内側を縫製する。
【0031】
前記のパターンが伸縮性生地の緯方向にも複数並設されている場合には、緯方向に隣接するパターン間と伸縮性生地の左右両側縁とに、表裏編地が連結された境界部を設けることができるが、これに代えて、パターン間と伸縮性生地の左右両側縁とのいずれか一方のみに境界部を設けてもよい。また、経方向に隣接するパターン間における境界部、緯方向に隣接するパターン間における境界部のいずれについても、必ずしも、隣接する各2つのパターン間において必ず設ける必要はなく、必要に応じて選択的に設けてもよい。
【0032】
経編地10は、少なくとも2枚の地筬と少なくとも2枚のジャカード筬を有するラッシェル経編機を使用して編成する。図3は、このようなラッシェル経編機を模式的に示しており、これは、2つの針列30,32と、針列30,32に対応して設けた2列の地筬Lー1、Lー4と、2列のジャカード筬Lー2、Lー3を備えている。地筬Lー1には表側の編地12の鎖編列を構成する経糸34が挿通され、地筬Lー4には裏側の編地14の鎖編列を構成する経糸36が挿通される。また、ジャカード筬Lー2,Lー3にはそれぞれ経糸38,40が挿通されている。そして、パターン16においては、針列30および筬Lー1、Lー2によって経糸34,38により表側の編地12が編成されると同時に、針列32および筬Lー4、Lー3によって経糸36,40により裏側の編地14が編成され、これら表裏の編地12,14は、相互に分離している。そして、ジャカード筬L−2、Lー3は、隣接するパターン16,16間の境界部18,19に沿って表裏の編地12,14を経糸38,40により綴じ、これにより、境界部18,19において、表裏の経編地12,14がパターン16の外周に沿って表裏連結されることになる。
【0033】
上記の編成は、図4に示す組織による。同図の「筒編部」に示すように、パターン16においては、フロント側では、筬L−1により経糸34によって多数の鎖編列が形成され、これら鎖編列がジャカード筬L−2により経糸38によって編成されて、表側の編地12が形成される。同様にして、バック側においては、筬L−4、L−3により裏側の編地14が形成される。また、図4の「表裏連結部」において示すとおり、パターン16間の境界部(連結編部)18,19を編成するには、フロント側のジャカード筬L−2により案内される経糸38は、B1、B2において、バック側に掛け渡され、バック側のジャカード筬L−3により案内される経糸40および筬L−4により案内される経糸36にからみ、また、バック側の筬L−3により案内される経糸40は、F1、F2、F3において、フロント側に掛け渡され、フロント側のジャカード筬L−2により案内される経糸38および筬L−1により案内される経糸34にからみ、このようにして、表裏連結編地が形成される。
【0034】
したがって、パターン16,16間の境界部18,19においては、パターン16とは編み組織が異なっていて、一例として編み密度が大となり、このような編み密度の相違により、捺染機によりその位置が認識される。
【0035】
境界部18,19において、目印21として、たとえば、開口部(透孔)を設けておくのが好ましい。図1では、まず、目印21は、長手方向に隣接するパターン16,16の境界部18に配されている。開口部の3つの例を図5の(a)、(b)、(c)に示す。同図に示すように、開口部50,52,54はそれぞれ矩形、楕円形、菱形とすることができ、また、その他の任意の形状でもよい。図5の各図においては、ジャカードを用いて、全体を薄地に、目印21の周縁を厚地に、その内部を孔地に形成している。もちろん、開口部以外にも、目印部分の組織を他と異なるものにしたり、目印21として、文字、図形などを表示したり、目印部分の色彩を他と異なるものにするなど任意の手段を採用することができる。前記の目印21により、経編地10の長手方向における位置を検出することができる。
【0036】
このような目印は各境界部において設ける必要は必ずしもなく、必要に応じて選択的に設けてもよい。
【0037】
図1においては、また、緯方向に隣接する2つのパターン16,16の間の境界部18と両側にある境界部19,19においても目印21が設けられている。これらの目印21は、経編地10の緯方向における位置を検出し、必要に応じてその位置を補正するためのものである。特に、これらの目印21としては、図示の部分的なものに代えて、経編地10の全長にわたって伸びる色糸などであってもよい。
【0038】
このような経編地10におけるパターン16に対して表裏両面同時に捺染する場合には、図6に示すような両面スクリーン捺染機60を用いることができる(たとえば、特開昭59−26585号公報参照)。62,64は移送ベルトであって、原反である経編地10を上下両面から挟んで、これを水平方向Hに移送する。移送ベルト62,64は粗い網状であり、前後2対のローラ66,70,68,72を介して、不図示の駆動手段により間歇的に移動する。
【0039】
経編地10を鋏んだ移送ベルト62,64の両側においては、図示の実施例の場合、上下2台一組のスクリーン枠74、76が、経編地10の走行方向において間隔をおいて3組配されている。この3組は、捺染する色の数に応じて配されている。各スクリーン枠74,76には、捺染する図柄を表示したスクリーンが貼設されている(不図示)。
【0040】
各スクリーン枠74,76には、これに沿って、紙面に垂直な方向に往復動可能なスケージ78,80が配されており、経編地10のパターン16に捺染糊を摺り付ける。なお、82,84は、移送ベルト62,64に付着した捺染糊を除去する洗浄装置である。
【0041】
移送ベルト62,64がその間歇的な動きの中で停止した際に、スクリーン枠74,76は上下両側から移送ベルト62,64に接近して、移送ベルト62,64の網目を通して、経編地10に接する。このとき、スケージ78,80が捺染糊を経編地10に摺りつけながら水平方向に移動する。このあと、スクリーン枠74,76が移送ベルト62,64から離れ、移送ベルト62,64がH方向に移動する。これにより、経編地10は一定距離移送される。以降、この一連の動作の繰り返しにより、経編地10の表裏に順次異なる色の染色がなされて、経編地10に多色の模様が完成する。
【0042】
以上のような捺染機において、図7に示すように、ビデオセンサ100を、移送ベルト62,64への経編地10の供給位置110と、それに最も近接した(図7における最も左の)スクリーン枠74,76との間に設けることができる。この場合、光源118によって照明された検出位置117を通過する経編地10の目印21(図7において不図示)をCCDカメラ119によって読み取って電気信号に変換する。
【0043】
目印21としては種々のものがあり得るが、たとえば、編糸の色が異なっている場合には、その色の色相を明暗信号としてCCDカメラ119に読み取らせることができる。また、凹凸など、編組織を異ならせることによって目印21が現れている場合は、編組織の相違による光の反射率ないし反射角の相違を利用して、その目印を明暗信号としてCCDカメラに読み取らせることができる。
【0044】
このような目印21が読み取られたときに、移送ベルト62,64の走行が停止し、これとともに、経編地10の走行が停止する。そして、前記の検出位置117に関して位置が固定したスクリーン枠74,76により、前記の経編地10の目印21に関して位置固定のパターン16における所定箇所に捺染が施される。
【0045】
また、これに代えて、図8に示すように、移送ベルト62,64への経編地10の供給位置110と、それに最も近接したスクリーン枠74,76との間における検出位置117において、移送ベルト62,64および経編地10を鋏んで、その上下に発光素子130と受光素子132とを配してもよい。この場合、図1の経編地10を用いる。この経編地10の開口部50,52,54が通過するときに、それを検知して、その位置で移送ベルト62,64を停止させることができる。
【0046】
しかし、上記のように、格別の目印を設けずとも、パターン16間の境界部18,19がパターン16と編組織が異なっていること自体を目印として、図7に示すビデオセンサ100などにより当該境界部18,19を認識するようにしてもよい。
【0047】
このように、パターン16間の境界部18,19の編地として表裏編地が連結されたものを採用することにより、この個所が経方向及び緯方向にずれることがない。また、境界部18,19の編地はパターン16における編地とは組織が異なるため、その認識が容易である。
【0048】
境界部18,19に設ける開口部、凹凸、文字、記号などの目印の大きさは、経方向及び緯方向に5〜30mmであることが好ましい。5mm未満では、認識するべき個所(目印)が小さすぎて、認識が困難である。また、30mmを超えると、パターン16間の境界部18,19の編地が延びやすく、パターンが変形し、捺染の位置がずれる問題が生じる。
【0049】
また、パターン16間の境界部18,19の経方向及び緯方向における幅は、10〜100mmであることが好ましく、特に、20〜70mmが好ましい。
【0050】
以上のスクリーン捺染に代えてインクジェット方式により染色することができる。図9は、インクジェット装置の概略側面図である。経編地10はガイドロール200からほぼ垂直に下方に導かれ、張力調整ロール210によって経編地10上に一定の張力をかけるとともに、経編地10の方向を変え、引き出しガイドロール220に誘導される。ロール200,210の間に、経編地10の表裏双方に位置し且つ経編地10の幅より長く設定された水平シャフト230,230上を往復走査するインクジェットノズルヘッド240,240が平行かつ所定距離を保ち設置され、経編地10の間歇的移動と処理液粒付与をコンピュータ制御し、プログラム作動されることによって、経編地10がノズルヘッド間を通過する間に編地10の表裏に吹き付け、液粒層が形成される。このようにして、染色が行われる。
【0051】
インクジェット方式の場合にも、識別目印21の検知はスクリーン捺染の場合と同様に行う。すなわち、布帛(たとえば経編地)の編組織の態様(編地表面の凹凸、孔地の有無、編地の密度)や色糸などを目印として、目印とその余の個所における光反射率の差を用いて目印を検知する。検知器としては、光センサ全般や分光光度計などを用いる。走行する布帛における色糸、表面の凹凸、明暗(光の透過量)などの光特性の変化を検知する。目印におけるこのような変化を捉え、これにより目印の位置を認識するとともに、走行する長さ方向の印写位置を決定する。このためには、前記のとおり、隣接するパターンの間に検知できる目印を少なくとも1個所設ける必要がある。上記の検知器に代えて、あるいはこれと共に、CCDカメラを用いることもできる。布帛の幅方向の位置検出も送り方向のそれと同様であって、布帛両端(図1の境界部19)に目印となる色糸や、凹凸などを設け、前記の光センサなどにより検知する。このようにして、布帛がX−Y方向の所定位置にもたらされた時点で印写始点が決定される。
【0052】
この発明の伸縮性生地としては、第1図の実施例において用いた経編地だけではなく、丸編地及び横編地を用いることができる。また、経糸として全体的にまたは部分的に弾性糸を用いた織地を用いてもよい。経編地、丸編地、横編地については、編組織によりそれ自体伸縮性を有するものだけではなく、弾性糸を併用したものも含む。
【0053】
この発明において、伸縮性生地における「伸縮性」は、つぎの2つの条件を共に満たすものであることが好ましい。
【0054】
伸長率および回復率の双方につき、下記の下限値未満を示すものは伸縮性生地とは言い難く、特に本発明を実施する必要がない。また、下記の上限値を超えるものは本発明の生地の構成のみによっては対応が困難であり、さらに、図柄を拡大、縮小するなど、本発明の生地の構成以外での対応が必要である。
【0055】
伸度(伸長率):経方向 20〜200%、緯方向 50〜400%
回復(回復率):経方向 70〜100%、緯方向 50〜100%
以上の伸度と回復の測定方法と条件はつぎのとおりである。
【0056】
JIS L 1018の8.15.2 B法(定荷重法)に基づいて測定した。この場合、JIS L 1018の8.14.1に規定するカットストリップ法の試験片であって試験幅5cmのものを用い、荷重1.5kgで測定した。ただし、計算式は、JISの前記B法のものを用いることなく、下記の式によった。
【0057】
伸度%=[(L0−L)/L]×100
回復%=[(L0−L2)/(L0−L)]×100
L、L0はともにJISのとおり
L2は荷重を取り除いた後の印間の長さ(cm)
なお、図1の実施例においては、前記のとおり、隣接するパターン間の境界部における二重編み部分自体を目印とすることができる。しかし、パターンの柄中に二重編地部分と同様の組織が存在する場合には、その部分をあたかも境界部であるかのように認識し、インクジェット装置などの染色機が誤動作する可能性がある。同様に、境界部における目印をたとえば孔とした場合において、パターンの柄中に孔がある場合には同様に誤動作するので、そのようなパターンの柄の場合には、目印として境界部の孔を用いることはできない。このようにして、パターンの柄によって何を目印として検知させるかは、そのつど染色機において設定する必要がある。
【0058】
上記のような両面インクジェット機としては、たとえば、特許第2632042号公報に示すものがある。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明は、一般衣料やスポーツ衣料、インナー衣料等の分野において幅広く使用することができ、また、必要に応じて、インテリアなど、それ以外の分野においても利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明を経編地に適用した場合の一実施例を示す概略正面図。
【図2】前図に示す経編地の一部拡大断面図。
【図3】図1の経編地を編成するのに用いる編機の模式図。
【図4】図1の経編地の編成組織図。
【図5】開口部の例を示す概略図。
【図6】図1の経編地を捺染する捺染機の一例を示す概略側面図。
【図7】図1の経編地の境界部ないし境界部に設けた目印を認識する一手段を示す概略側面図。
【図8】図1の経編地の境界部ないし境界部に設けた目印を認識する他の手段を示す図7と同様の概略側面図。
【図9】図1の経編地を染色するインクジェット装置の一例を示す概略側面図。
【符号の説明】
【0061】
10 経編地
12 表側の編地
14 裏側の編地
16 パターン
18 境界部
19 境界部
21 目印
50 開口部
52 開口部
54 開口部
60 捺染機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の表裏編地よりなる伸縮性生地において、少なくとも経方向に複数のパターンをその間に境界部を介して並設してなり、前記境界部は、表裏編地が連結されていることを特徴とする伸縮性生地。
【請求項2】
前記の伸縮性生地の左右両側にも、表裏編地が連結されてなる境界部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性生地。
【請求項3】
前記のパターンが伸縮性生地の緯方向にも複数並設されており、緯方向に隣接するパターンの間及び/又は伸縮性生地の左右両側にも、表裏編地が連結されてなる境界部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮性生地。
【請求項4】
前記の伸縮性生地が経編地であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸縮性生地。
【請求項5】
前記の経編地が筒状に編成されていることを特徴とする請求項4に記載の伸縮性生地。
【請求項6】
前記境界部である前記表裏編地の連結部において、開口部、凹凸、文字、記号等よりなる目印が表示されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の伸縮性生地。
【請求項7】
前記目印が編成または織成により形成されていることを特徴とする請求項6に記載の伸縮性生地。
【請求項8】
四周を経緯の前記境界部の4つにより囲繞された領域において、前記パターンと捨て部となるその余の個所とが含まれており、前記伸縮性生地の形成後、パターンの外形線に沿って切断することにより、前記捨て部を切除するようになしことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の伸縮性生地。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の伸縮性生地を染色するに際し、前記境界部またはこれに設けた目印を染色機において検知することにより、前記伸縮性生地におけるパターンないしパターンの特定の個所の位置を認識して、そこに染色するようになしたことを特徴とする伸縮性生地の染色方法。
【請求項10】
前記染色が捺染またはインクジェットによることを特徴とする請求項9に記載の伸縮性生地の染色方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−182638(P2007−182638A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380677(P2005−380677)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】