説明

伸縮継手の水平切断撤去方法

【課題】振動・騒音の源となるブレーカを使用することなく静音で伸縮継手を撤去できるようにする。
【解決手段】伸縮継手1を囲む切断溝2を回転ブレードで形成する。切断溝2の角部の内側に刃厚が5mm以下のコアドリルで複数の円形切断溝22を連接して形成する。角部に近い円形切断溝で区画された円筒形コア3の1つを円形切断溝にバールを差し込んで破壊して撤去し、コーナー空間4を形成してこの空間4と切断溝2が繋がった状態としてワイヤソーが切断溝2内を一周できるようにする。切断溝2内にワイヤソーを配設し、ワイヤソー切断機を駆動して床版及び伸縮継手1を水平切断して撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化等により交換が必要となった高架道路や橋梁等の伸縮継手を振動・騒音を発生するブレーカ等の器具を使用することなく低騒音・低振動で撤去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化したり、損傷した橋梁の伸縮継手を補修・交換するため伸縮継手を解体撤去する必要がある。
伸縮継手を撤去するには、伸縮継手と一体化されているコンクリート床版を切断して撤去しなければならない。従来、コンクリート床版の切断には、円形ブレードやダイヤモンドワイヤソーを使用する工法が採用されており、特にダイヤモンドワイヤソーを使用して床版を水平切断する工法が低騒音・低振動の工法として注目を浴びている。
【0003】
この工法は、特許文献1(特許第3968380号公報)にあるように、伸縮継手を囲む切断溝を回転ブレードで形成し、切断溝の内側に、伸縮継手に平行にトラブル時に使用する補助切断溝を形成し、切断溝の角部をコアドリルで切断し、円筒形コアを残置し角部の切断溝を曲線にしてワイヤソーの走行を円滑にして床版を水平切断撤去する方法である。
【特許文献1】特許第3968380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の工法は、伸縮継手1を包囲するように形成した切断溝2の角部をコアドリルで切断して形成した円形切断溝22にワイヤソー5を通して床版を水平切断するものであるため、円形切断溝22はワイヤソーを収容する幅が必要であり、コアドリルの刃の厚みが11mm以上必要とされるので、市販のコアドリルでは対応できず、特殊なコアドリルを必要とするため、コストがかかるという問題があった。
【0005】
また、コアドリルの刃厚が厚いため、床版に埋設された補強鉄筋をコアドリルで切断する際に長時間を要し、また、厚い刃が鉄筋を切断することから刃と鉄筋の接触面が大きくて抵抗が大きく、騒音が大きいという問題があり、ビルや住居に近接した場所での使用に問題があった。
本発明は、特殊なコアドリルを必要とせず、また、刃厚の大きなコアドリルによる鉄筋切断の際の騒音を低減し、低コストで低騒音の伸縮継手の水平切断撤去を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
伸縮継手を囲む切断溝をコンクリート床版に形成し、この切断溝の角部の内側に切断溝の幅より狭い幅の複数の円形溝を近接させて形成し、少なくとも1つの円筒形のコアを撤去して角部に切断溝に繋がるコーナー空間を形成して切断溝内にワイヤソーを設置し、コンクリート床版及び伸縮継手を水平切断撤去する方法である。
【発明の効果】
【0007】
ダイヤモンドワイヤソーのワイヤが走行する切断溝を伸縮継手の周囲に形成し、切断溝の底部において水平切断によって伸縮継手を撤去するものであり、切断溝の形成及びワイヤソーによる水平切断は共に低騒音・低振動であり、撤去作業を静音状態でおこなうことができるので、住居やビルが近接している都市高速道路の伸縮継手に適用することができる。
伸縮継手を囲む切断溝の角部にコアドリルで切断して複数の円形溝を近接させて形成し、少なくとも1つの円筒形コアを撤去して角部に切断溝に繋がるコーナー空間を形成するので、単一のコアドリルで形成した円形溝に比較してコーナーの曲率が大きくなり、ワイヤソーのワイヤの初期走行が円滑となって水平切断初期の切断がスムーズになる事により、施工時間を短縮することができる。
また、切断溝の角部に円形溝を形成する際、市販の刃厚の薄いコアドリルを使用できることから、低コストで、かつ、短時間の施工で伸縮継手の撤去が可能になると共に、薄刃のコアドリルは床版中に埋設された補強鉄筋を切断する際の騒音が、太い刃厚のものより小さく、騒音低減となり、住宅に近接した工事現場においても夜間工事が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1(1)に示すように、まず、撤去する伸縮継手1の周囲に幅15mm程度の切断溝2を形成する。市販の回転ブレード単独ではこの幅の切断溝を形成することができないので、回転ブレードを複数枚(本実施例では3枚)重ねることにより必要な幅の切断溝2を形成するか、ワイヤソー5を収容可能な幅を単独で切断することができる特殊サイズのブレードを使用する。撤去する伸縮継手1の大きさ(深さ)に応じて適宜の直径の回転ブレードを選択して、切断深さを調整する。また、円形の回転ブレードの特性上、切断端部に向かって切断深さが浅くなるので、切断溝2の交差部を越える余切り21を設ける。
切断溝2は橋軸に直角な方向(伸縮継手1に平行)に2本と橋軸方向に切断溝2本を形成するので四角形となる。幅員の大きな場合などは、ワイヤソー5の長さがあまり長くならないように適宜の位置に伸縮継手1を切断する切断溝を形成して四角形の大きさを調節するのが好ましい。
【0009】
ワイヤソー5を収容して床版等を水平切断する切断溝2の内側に、必要に応じて伸縮継手1に平行(橋軸に直角方向)に、また、橋軸方向にも補助切断溝(図示しない)を形成する。これらの補助切断溝は、ワイヤソー5による切断中に床版内に設置されている鉄筋やアンカーなどに引っかかってワイヤソー5が走行不能に陥るなどのトラブルが生じた際、切断溝2と補助切断溝を利用して床版コンクリートを破砕したり、ジャッキを使用して隙間を拡げるなどしてワイヤソー5の噛みこみトラブルを解消するものであり、補助切断溝の幅は切断溝2より狭いものでよい。
【0010】
伸縮継手1を包囲する切断溝2の角部を刃厚が5mm以下のコアドリルによって複数回にわたって円形切断溝22を近接させて形成して切断溝2の深さまでコア抜きをおこない、複数の円形切断溝22を連接状態に各角部に形成する。コアドリルは単一のコアドリルを使用してもよく、また、径の異なるコアドリルを組合わせて使用してもよい。
【0011】
図1(2)に示すように、角部に近い円形切断溝22で区画された円筒形コア3を、円形切断溝22にバールや楔を差し込んで破壊して撤去し、切断溝2に繋がる斜線で示すコーナー空間4を形成し、その他の円筒形コア3の円筒面がコーナー空間4側に露出するようにする。円筒面が露出し、ワイヤソー5がこの面に沿って走行開始当初に走行するので、ワイヤソー5の走行が円滑となる。
ワイヤソー5を切断溝内に配設した状態を図2に示す。図3の従来の水平切断撤去工法に比較して、角部のワイヤソー5の曲線が緩やかであり、ワイヤソー5の走行開始が円滑におこなわれる。
【0012】
切断溝2の中間部や角部に、必要に応じてワイヤソー5の走行方向を変換するガイドプーリを収容するピット(図示しない)を形成する。また、ワイヤソー5をガイドする水平プーリを設置するためのピットを必要に応じて設ける。
ピットの形成は、切断溝2に沿って2〜4cm間隔に切断溝2と同じ深さの複数の切断溝を平行に形成し、更に、この切断溝に直角にピットの端部位置に切断溝を形成し、この切断溝に楔やバールを差し込んで力を加えることによって細片に細分化されたコンクリートを撤去してピットを形成する。また、小径のコアドリルによって円形溝を連設して設けて楔やバールを円形溝に差し込み、円筒形のコアを撤去することによってもピットを形成することができる。
【0013】
ピットに近接する位置の床版上にワイヤソー切断機(図示しない)を固定し、駆動プーリに巻きまわされたワイヤソー5を適宜の位置に配設したガイドプーリ(図示しない)を介して切断溝2の内部に配設して一周させ、切断溝2の内部でワイヤソーを循環走行させ、床版コンクリートに食い込ませて水平切断する。
水平切断が完了したら、伸縮継手1を周囲の床版コンクリートと共に引き上げて撤去する。
【0014】
以上に説明したように、従来のブレーカによるハツリ作業と異なって、発生する騒音は、油圧モータの回転音とワイヤソーの走行音であり、従来の工法に比較して格段に静音状態で工事がおこなわれるので、ビルや住居が接近している都市高速道の橋梁の伸縮継手の撤去工事に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の伸縮継手水平切断撤去工程概念図。
【図2】本発明のワイヤソーの配設状態図。
【図3】従来の伸縮継手水平切断撤去工法の概念図。
【符号の説明】
【0016】
1 伸縮継手
2 切断溝
21 余切り
22 円形切断溝
3 円筒形コア
4 コーナー空間
5 ワイヤソー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮継手を囲む切断溝をコンクリート床版に形成し、この切断溝の角部の内側に切断溝の幅より狭い幅の複数の円形溝を近接させて形成し、少なくとも1つの円筒形のコアを撤去して角部に切断溝に繋がるコーナー空間を形成して切断溝内にワイヤソーを設置し、コンクリート床版及び伸縮継手を切断する伸縮継手の水平切断撤去方法。
【請求項2】
請求項1において、円形溝を形成するコアドリルの刃厚が5mm以下である伸縮継手の水平切断撤去方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−77437(P2012−77437A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220376(P2010−220376)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【特許番号】特許第4705197号(P4705197)
【特許公報発行日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(508117525)株式会社 アクティブ (5)
【Fターム(参考)】