位相シフトマスク、非対称パターンの形成方法、回折格子の製造方法および半導体装置の製造方法
【課題】製品の精度向上と製作時間の短縮が可能な、位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術、さらには回折格子、半導体装置の製造技術を提供する。
【解決手段】位相シフトマスク30(遮光部と透過部(位相シフトがない第1の透過部、位相シフトがある第2の透過部)が周期的に配置)を用いた回折格子の製造方法において、照明光源10から放出された光を、位相シフトマスク30を透過させ、この位相シフトマスク30を透過させることにより生じる0次光と+1次光とをSiウエハ50の表面で干渉させて、このSiウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光し、Siウエハ50上にブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成する。
【解決手段】位相シフトマスク30(遮光部と透過部(位相シフトがない第1の透過部、位相シフトがある第2の透過部)が周期的に配置)を用いた回折格子の製造方法において、照明光源10から放出された光を、位相シフトマスク30を透過させ、この位相シフトマスク30を透過させることにより生じる0次光と+1次光とをSiウエハ50の表面で干渉させて、このSiウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光し、Siウエハ50上にブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術に関し、特に、ブレーズド状(鋸歯波状)の断面形状を有するブレーズド回折格子の製造方法に適用して有効な技術に関する。また、非対称形状を含む半導体装置の製造方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術としては、例えば特許文献1や非特許文献1に記載される技術などが挙げられる。この特許文献1や非特許文献1には、露光装置の光学補正技術として、検査パターンの非対称回折格子が、マスク基板の表面に配置された遮光帯と、この遮光帯の一方の側に隣接して配置された非対称回折部とを備え、この遮光帯と非対称回折部との繰り返しパターンをマスク基板上に設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−37598号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hiroshi Nomura,“New phase shift gratings for measuring aberrations”,Optical Microlithography XIV,Christopher J.Progler,Editor,Proceedings of SPIE Vol.4346(2001),pp25−35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したような位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術は、例えば、ブレーズド状(鋸歯波状)の断面形状を有するブレーズド回折格子の製造方法に適用することが考えられる。
【0006】
回折格子の製造技術としては、例えば、(1)ルーリングエンジンによる回折格子の形成技術、(2)ホログラフィック露光による回折格子の形成技術が挙げられる。
【0007】
(1)ルーリングエンジンによる回折格子の形成技術は、ダイヤモンドツールを使用したルーリングエンジンによる機械式加工によりブレーズド回折格子を形成する技術である。
【0008】
(2)ホログラフィック露光による回折格子の形成技術は、ホログラフィック露光後のレジストパターンに斜方エッチングを行い、ブレーズド回折格子を形成する技術である。
【0009】
しかしながら、前述したような回折格子の製造技術に関しては、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0010】
(1)ルーリングエンジンによる回折格子の形成技術は、機械式加工であるため、精度向上に限界がある。また、回折格子専用技術であり、発展性に欠ける。また、製作に時間がかかる。
【0011】
(2)ホログラフィック露光による回折格子の形成技術は、追加工が必要なため、製造ばらつき要因が増える。すなわち、回折格子はサインカーブにしかならず、良好な回折格子を得るためには、さらなる露光や加工が必要となる。また、追加工用の製造装置が必要である。
【0012】
また、前述した特許文献1や非特許文献1の技術は、露光装置の光学補正技術として、検査パターンの非対称回折格子を有する検査用レチクル(マスク)に関するものであり、本発明が適用とする回折格子などを製造するためのマスクとは異なるものである。さらに、特許文献1や非特許文献1の技術は、遮光帯(遮光部)が広いため、形成されるパターンの頂部が平らになり、本発明のような頂部の尖ったパターンの回折格子を形成することができない。また、特許文献1や非特許文献1の技術は、非対称回折部(透過部)の位相シフト量が90°であり、本発明とは異なるものである。
【0013】
そこで、本発明は前述した(1)ルーリングエンジンによる回折格子の形成技術、(2)ホログラフィック露光による回折格子の形成技術の課題に鑑みてなされたものであり、その代表的な目的は、製品の精度向上と製作時間の短縮が可能な、位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術、さらには回折格子、半導体装置の製造技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
すなわち、代表的なものの概要は、位相シフトマスク、および位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成方法、さらには位相シフトマスクを用いた回折格子の製造方法、半導体装置の製造方法に適用され、以下のような特徴を有するものである。
【0017】
(1)前記位相シフトマスクは、光を遮光する遮光部と、光を透過する透過部とを有し、前記透過部は、位相シフトがない第1の透過部と、位相シフトがある第2の透過部とからなり、前記遮光部と前記第1の透過部と前記第2の透過部との組が周期的に配置され、前記組の周期的な配置のピッチをP、前記第1の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第2の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第1の透過部と前記第2の透過部との位相差をθとした場合に、x/P×360°+θ=180°、の関係式が成り立つことを特徴とする。
【0018】
(2)前記位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成方法は、光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料を露光し、前記基板上に前記非対称パターンを形成することを特徴とする。
【0019】
(3)前記位相シフトマスクを用いた回折格子の製造方法は、光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料を露光し、前記基板上に前記ブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成することを特徴とする。
【0020】
(4)前記位相シフトマスクを用いた半導体装置の製造方法は、光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを半導体基板の表面で干渉させて、前記半導体基板の表面の感光材料を露光し、前記半導体基板上に前記非対称の断面形状を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0022】
すなわち、代表的な効果は、製品の精度向上と製作時間の短縮が可能な、位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術、さらには回折格子、半導体装置の製造技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)〜(d)は本発明の一実施の形態の回折格子の製造方法を実現する露光装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示した露光装置に用いる位相シフトマスクの位相差とサイズとの関係の一例を示す概略図である。
【図3】(a)〜(d)は図1に示した露光装置に用いる位相シフトマスクの一例を示す概略図である。
【図4】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価において、シミュレーションにおけるシミュレーション条件の一例を示す図である。
【図5】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価において、シミュレーションによる位相シフトとパターン比率との関係の一例を示す図である。
【図6】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価において、回折格子の深さの露光量依存性の一例を示す図である。
【図7】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価において、光強度分布の一例を示す図である。
【図8】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価において、コントラストの一例を示す図である。
【図9】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法における、回折格子の要求スペックへの適用評価において、回折格子の要求スペックの一例を示す図である。
【図10】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法における、回折格子の要求スペックへの適用評価において、ピッチ依存性の一例を示す図である。
【図11】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法における、回折格子の要求スペックへの適用評価において、図9に示した回折格子の要求スペックに対して、必要な位相シフトの一例を示す図である。
【図12】(a),(b)は図1に示した露光装置に用いる位相シフトマスクの変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数の実施の形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0025】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
<本発明の実施の形態の概要>
本発明の実施の形態は、位相シフトマスク、および位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成方法、さらには位相シフトマスクを用いた回折格子の製造方法、半導体装置の製造方法に適用され、以下のような特徴を有するものである(一例として、()内に対応する構成要素、符号などを付記)。
【0028】
(1)前記位相シフトマスク(30)は、光を遮光する遮光部(31)と、光を透過する透過部(32)とを有し、前記透過部は、位相シフトがない第1の透過部(32a)と、位相シフトがある第2の透過部(32b)とからなり、前記遮光部と前記第1の透過部と前記第2の透過部との組が周期的に配置され、前記組の周期的な配置のピッチをP、前記第1の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第2の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第1の透過部と前記第2の透過部との位相差をθとした場合に、x/P×360°+θ=180°、の関係式が成り立つことを特徴とする。
【0029】
(2)前記位相シフトマスク(30)を用いた非対称パターンの形成方法は、光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料を露光し、前記基板上に前記非対称パターンを形成することを特徴とする。
【0030】
(3)前記位相シフトマスク(30)を用いた回折格子の製造方法は、光源(照明光源10)から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板(Siウエハ50)の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料(フォトレジスト60)を露光し、前記基板上に前記ブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成することを特徴とする。
【0031】
(4)前記位相シフトマスク(30)を用いた半導体装置の製造方法は、光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを半導体基板の表面で干渉させて、前記半導体基板の表面の感光材料を露光し、前記半導体基板上に前記非対称の断面形状を形成することを特徴とする。
【0032】
以上説明した本発明の実施の形態の概要に基づいた各実施の形態を、以下において具体的に説明する。以下に説明する実施の形態は本発明を用いた一例であり、本発明は以下の実施の形態により限定されるものではない。以下の実施の形態においては、主に前述した(1)前記位相シフトマスク(30)、(3)前記位相シフトマスク(30)を用いた回折格子の製造方法について説明する。
【0033】
[本発明の一実施の形態]
本発明の一実施の形態を、図1〜図12を用いて説明する。
【0034】
<露光装置>
図1を用いて、本実施の形態の回折格子の製造方法を実現する露光装置について説明する。図1は、この露光装置の一例を示す概略図である。図1において、(a)は露光装置の概略、(b)はマスクの形状、(c)は投影レンズの瞳面上の光強度分布、(d)はSiウエハ上のフォトレジストの形状をそれぞれ示す。
【0035】
本実施の形態における露光装置は、図1(a)に示すように、照明光源10、集光レンズ20、位相シフトマスク30、投影レンズ40などから構成される。この露光装置は、位相シフトマスク30を用いた3次元レジストパターン形成技術を適用し、Siウエハ50の表面に塗布されたフォトレジスト60を露光する装置である。
【0036】
照明光源10は、露光を行うための光源となるものである。この照明光源10には、例えば、g線やi線、KrF、ArFなどのエキシマレーザなどが用いられる。
【0037】
集光レンズ20は、照明光源10から照射された光を位相シフトマスク30上に集光するためのレンズである。
【0038】
位相シフトマスク30は、図1(b)(詳細は図2および図3に図示)に示すように、所定の周期的パターンを備え、回折格子のブレーズド状のピッチに対応してパターンを配置したものである。この位相シフトマスク30の周期的パターンは、光を遮光する遮光部31と、光を透過する透過部32とを有する。透過部32は、位相シフトがない(0°)第1の透過部32aと、位相シフトがある(θ)第2の透過部32bとからなる。この位相シフトマスク30は、遮光部31と第1の透過部32aと第2の透過部32bとの組が周期的に配置されている。
【0039】
投影レンズ40は、位相シフトマスク30の遮光部31と透過部32の周期的なパターンをSiウエハ50のフォトレジスト60上に投影するためのレンズである。この投影レンズ40の瞳面41上では、図1(c)(詳細は図3に図示)に示すような光強度分布となっている。すなわち、位相シフトマスク30を透過させることにより、−1次光が消滅し、0次光と+1次光が生じていることが分かる。なお、後述する回折格子の製造方法では、位相シフトマスク30のパターンを縮小して投影する縮小投影型の露光装置を例に説明する。
【0040】
以上のように構成される露光装置においては、遮光部31と透過部32(位相シフトがない第1の透過部32a、位相シフトがある第2の透過部32b)が周期的に配置された位相シフトマスク30を用いることで、−1次光が消滅し、図1(d)(詳細は図3に図示)に示すように、フォトレジスト60のレジストパターンをSiウエハ50まで抜かないブレーズド状の断面形状を形成することができる。また、透過部32の位相差と、遮光部31と第1の透過部32aと第2の透過部32bとの幅の比率を変更することで、ブレーズド状の断面形状の深さ(角度)も調整することができる。
【0041】
本実施の形態では、以上のような露光装置により、Siウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光する際は、照明光源10から放出された光を、位相シフトマスク30を透過させ、この位相シフトマスク30を透過させることにより生じる0次光と+1次光とをSiウエハ50の表面で干渉させて、このSiウエハ50上のフォトレジスト60を露光し、Siウエハ50上にブレーズド状の断面形状を有するフォトレジスト60が形成された回折格子を形成することを特徴とするものである。
【0042】
<位相シフトマスク>
図2および図3を用いて、前述した図1に示した露光装置に用いる位相シフトマスクについて説明する。図2は、この位相シフトマスクの位相差とサイズとの関係の一例を示す概略図である。図3は、この位相シフトマスクの一例(後述する図5の仕様4の例)を示す概略図であり、(a)は位相シフトマスクの平面形状、(b)は位相シフトマスクの断面形状、(c)はこの位相シフトマスクを用いた投影レンズの瞳面上の光強度分布、(d)はこの位相シフトマスクを用いたSiウエハ上のフォトレジストの形状をそれぞれ示す。
【0043】
図2に示すように、位相シフトマスク30の位相差とサイズとの関係は、遮光部31と第1の透過部32aと第2の透過部32bとの組の周期的な配置のピッチをP、第1の透過部32aのピッチ方向の幅をx、第2の透過部32bのピッチ方向の幅をx、第1の透過部32aと第2の透過部32bとの位相差をθとした場合に、x/P×360°+θ=180°、の関係式が成り立つものである。
【0044】
例えば、後述する図5の仕様4の例で考えると、P=600nm、x=250nm、θ=30°であるので、250/600×360+30=180となり、上記の関係式が成り立つ。同様に、仕様1の例(P=600nm、x=150nm、θ=90°)、仕様2の例(P=600nm、x=200nm、θ=60°)、仕様3の例(P=600nm、x=225nm、θ=30°)、仕様5の例(P=600nm、x=275nm、θ=15°)でも、上記の関係式が成り立つ。
【0045】
図3(a)に示すように、位相シフトマスク30の周期的パターンは、平面形状において、遮光部31と、この遮光部31に隣接し、位相シフトがない(0°)第1の透過部32aと、この第1の透過部32aに隣接し、位相シフトがある(θ)第2の透過部32bとの組が周期的に配置されている。この図3(a)に示す位相シフトマスク30の例では、5組の部分を図示しており、5本の遮光部31(黒表示)、5本の第1の透過部32a(白表示)、5本の第2の透過部32b(ドット表示)が設けられている。
【0046】
また、図3(b)に示すように、この位相シフトマスク30の周期的パターンは、断面形状において、第1の透過部32aと第2の透過部32bとが一体に凹部を有して形成され、この凹部に相当する第2の透過部32bの厚さが第1の透過部32aの厚さより薄く形成されている。さらに、第1の透過部32aの表面には、遮光部31として金属膜が成膜されている。例えば、第1の透過部32aと第2の透過部32bとからなる透過部32の部分は石英ガラスなどからなり、遮光部31はCrなどの金属膜からなる。
【0047】
このような形状の位相シフトマスク30を用い、照明光源10から放出された光を、この位相シフトマスク30を透過させることにより、Siウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光することができる。この場合に、この位相シフトマスク30を用いた投影レンズ40の瞳面41上の光強度分布は、図3(c)に示すように、−1次光を消滅させ、かつ、0次光と+1次光とを生じさせることができる。そして、この0次光と+1次光とをSiウエハ50の表面で干渉させることで、Siウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光することができ、Siウエハ50上のフォトレジスト60の形状は、図3(d)に示すように、Siウエハ50まで抜かないブレーズド状(角度、深さ)の断面形状とすることができる。
【0048】
<回折格子の製造方法>
前述した図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法について、前述した図2および図3を参照して説明する。
【0049】
(1)遮光部31と透過部32(位相シフトがない第1の透過部32a、位相シフトがある第2の透過部32b)が周期的に配置された位相シフトマスク30を準備する。この位相シフトマスク30は、例えば前述した図2および図3(a),(b)に示したものである。
【0050】
(2)テスト露光用のSiウエハにフォトレジストをスピンコーターで塗布した後、プリベークを施す。
【0051】
(3)上記(2)のSiウエハに対し、位相シフトマスク30を用いて縮小投影型の露光装置でパターンを転写する。このとき、Siウエハ上で領域を変えながら、露光装置のフォーカス値、露光量、露光レンズの開口数を各々複数段階に変えて、転写を複数ショット繰り返す。
【0052】
(4)上記(3)のSiウエハを現像した後、必要であればポストベークを施す。
【0053】
(5)上記(4)のSiウエハ上に形成された3次元フォトレジストパターンの断面形状を計測し、この断面形状が、製作したい回折格子の断面形状(本実施の形態では例えば図3(d))に最も良く合致するショットを選び、最適露光条件として、そのフォーカス値と露光量を記録する。
【0054】
(6)もし、どのショットにおいても、製作したい回折格子の断面形状と良い合致が見られない場合は、上記(1)の位相シフトマスク30の遮光部31と第1の透過部32aと第2の透過部32bとの幅の比率と、第2の透過部32bの位相を変更して、新たな位相シフトマスク30を使用し、再び上記(2)〜(5)の手順を繰り返す。製作したい回折格子の断面形状と良く合致したショットが存在した場合は、製品となる回折格子を製作するために下記(7)の手順へ進む。
【0055】
(7)回折格子製作用のSiウエハ50にフォトレジスト60をスピンコーターで塗布した後、プリベークを施す。
【0056】
(8)上記(7)のSiウエハ50に対し、位相シフトマスク30を用いて、縮小投影型の露光装置で転写する。このとき、この露光装置には、上記(6)で記録した最適露光条件のフォーカス値と露光量を設定する。
【0057】
(9)上記(8)のSiウエハ50を現像した後、必要であればポストベークを施す。この時点では、例えば図3(d)に示すような、ブレーズド状の断面形状を有するフォトレジスト60がSiウエハ50上に形成された構造となる。
【0058】
(10)上記(9)のSiウエハ50のフォトレジスト60上にAl膜を成膜、もしくはSiエッチングを施す。
【0059】
(11)上記(10)で形成された回折格子を適当なサイズに切り出す。これにより、Siウエハ50上にブレーズド状のフォトレジスト60が形成され、さらにフォトレジスト60上にAl膜が成膜された回折格子の製品が完成する。
【0060】
<シミュレーション評価>
図4〜図8を用いて、前述した図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価について説明する。
【0061】
図4は、シミュレーションにおけるシミュレーション条件の一例を示す図である。図4に示すように、シミュレーションの条件パラメータとして、
(1)照明条件・・・・波長=365nm、光源=円形、σ=0.3、NA=0.63
(2)マスク条件・・・マスクパターン=0.6μmピッチ、マスクサイズ=第1の透過部(0°):第2の透過部(θ(位相)):遮光部(Cr)=仕様1=150nm:150nm(90°):300nm、仕様2=200nm:200nm(60°):200nm、仕様3=225nm:225nm(45°):150nm、仕様4=250nm:250nm(30°):100nm、仕様5=275nm:275nm(15°):50nm
(3)露光条件・・・・露光量=100mJ/cm2〜300mJ/cm2、フォーカス値=0.0μm
(4)レジスト条件・・レジスト厚=2000nm
がある。
【0062】
図5は、シミュレーションによる位相シフトとパターン比率との関係の一例を示す図である。図5は、前述した図4に示すマスク条件のマスクサイズに対応して、仕様1(θ=90°、比=0.5:0.5:1)、仕様2(θ=60°、比=1:1:1)、仕様3(θ=45°、比=1.5:1.5:1)、仕様4(θ=30°、比=2.5:2.5:1)、仕様5(θ=15°、比=5.5:5.5:1)とする。また、露光条件の露光量を、50mJ/cm2、100mJ/cm2、200mJ/cm2、300mJ/cm2とする。
【0063】
この結果、図5に示すように、瞳面41上の光強度分布(図5上ではドット密度で区別し、密になるほど光強度が強い)では、仕様1に近くなるほど1次光が強まり、仕様5に近くなるほど1次光が弱まることが分かる。この瞳面41上の光強度分布に対応して、フォトレジスト60のレジスト形状では、位相シフトとパターン比率を変えることで、深さ(ブレーズ角)を調整可能であることが分かる。具体的には、位相シフトを90°→60°→45°→30°→15°に変えると、深さの浅い回折格子ができることが分かる。
【0064】
このうち、仕様1では300mJ/cm2、仕様2では200mJ/cm2と300mJ/cm2、仕様3では100mJ/cm2と200mJ/cm2、仕様4では100mJ/cm2と200mJ/cm2、仕様5では100mJ/cm2と200mJ/cm2が、ブレーズド状の断面形状を有する回折格子として利用可能である。図5からも分かるように、仕様1の300mJ/cm2では深さを深く、仕様5の100mJ/cm2では深さを浅くすることができ、回折格子の要求スペックに応じて、位相シフトとパターン比率を変えて深さを調整することができる。
【0065】
図6は、回折格子の深さの露光量依存性の一例を示す図である。図6において、横軸は露光量[mJ/cm2]、縦軸は深さ[μm]であり、仕様1(90°)、仕様2(60°)、仕様3(45°)、仕様4(30°)、仕様5(15°)を示している。図6により、位相シフトとパターン比率を変えることで深さを調整可能であることが分かる。位相シフトを90°から15°に変えると、深さの浅い回折格子ができることが分かる。
【0066】
図7は、光強度分布の一例を示す図である。図7において、横軸はx位置[μm]、縦軸は光強度であり、仕様1(90°)、仕様2(60°)、仕様3(45°)、仕様4(30°)、仕様5(15°)を示している。図7により、位相シフトとパターン比率を変えることで光強度を調整可能であることが分かる。
【0067】
図8は、コントラストの一例を示す図である。図8において、横軸は位相、縦軸はコントラストを示している。図8により、位相シフトとパターン比率を変えることでコントラストが変わることが分かる。
【0068】
以上の図5〜図8により、位相シフトとパターン比率を変えることでコントラストが変わり、結果として、深さ(ブレーズ角)の異なる回折格子を得ることができる。
【0069】
<回折格子の要求スペックへの適用評価>
図9〜図11を用いて、前述した図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法における、回折格子の要求スペックへの適用評価について説明する。ここで示す回折格子の要求スペックは一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
図9は、回折格子の要求スペックの一例を示す図である。図9に示すように、回折格子の要求スペックとして、溝本数[本/mm]、ピッチ[μm]、角度[度]、深さ[μm]について検討する。
【0071】
(1)溝本数=33本/mm、ピッチ=30.3μm、角度=26.8度、深さ=12.20μmのスペックに対しては、最大深さが12μm必要となる。
【0072】
(2)溝本数=66.6本/mm、ピッチ=15.02μm、角度=5.7度、深さ=1.48μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となる。
【0073】
(3)溝本数=120本/mm、ピッチ=8.333μm、角度=10.4度、深さ=1.48μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となる。
【0074】
(4)溝本数=300本/mm、ピッチ=3.333μm、角度=4.3、6.5、8.6、26.8度、深さ=0.25、0.37、0.49、1.34μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となる。
【0075】
(5)溝本数=360本/mm、ピッチ=2.778μm、角度=10.4度、深さ=0.49μmのスペックに対しては、最大深さが0.8μm必要となる。
【0076】
(6)溝本数=600本/mm、ピッチ=1.666μm、角度=34.8、3.4、4.3、5.2、8.6、13.0、16.6、17.5度、深さ=0.78、0.10、0.12、0.15、0.25、0.37、0.46、0.48μmのスペックに対しては、最大深さが0.8μm必要となる。
【0077】
(7)溝本数=1200本/mm、ピッチ=0.833μm、角度=6.9、8.6、8.6、10.4、17.5度、深さ=0.10、0.12、0.12、0.15、0.24μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となる。
【0078】
(8)溝本数=1440本/mm、ピッチ=0.694μm、角度=9.5度、深さ=0.11μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となる。
【0079】
(9)溝本数=1800本/mm、ピッチ=0.556μm、角度=10.4度、深さ=0.10μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となる。
【0080】
(10)溝本数=2400本/mm、ピッチ=0.417μm、角度=13.9度、深さ=0.10μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となる。
【0081】
図10は、ピッチ依存性の一例を示す図である。
【0082】
(1)ピッチ=0.600μm、位相=15度の場合、露光量=100mJ/cm2、フォーカス値=0.0μmの条件で、深さは0.47μmとなる。
【0083】
(2)ピッチ=0.900μm、位相=15度の場合、露光量=100mJ/cm2、フォーカス値=0.0μmの条件で、深さは0.58μmとなる。
【0084】
(3)ピッチ=1.600μm、位相=15度の場合、露光量=150mJ/cm2、フォーカス値=0.0μmの条件で、深さは0.8μmとなる。
【0085】
(4)ピッチ=3.600μm、位相=60度の場合、露光量=200mJ/cm2、フォーカス値=3.2μmの条件で、深さは1.9μmとなる。
【0086】
(5)ピッチ=15μm、位相=60度の場合、露光量=500mJ/cm2、フォーカス値=20μmの条件で、深さは1.9μmとなる。
【0087】
(6)ピッチ=30μm、位相=60度の場合は、作製不可能となる。
【0088】
以上により、ピッチ依存性において、位相は60度以下が必要となる。また、30μmピッチは作製不可能である。
【0089】
図11は、図9に示した回折格子の要求スペックに対して、必要な位相シフトの一例を示す図である。
【0090】
(1)溝本数=33本/mm、ピッチ=30.3μm、角度=26.8度、深さ=12.20μmのスペックに対しては、最大深さが12μm必要となるが、判定はいずれの仕様も作製不可能である。
【0091】
(2)溝本数=66.6本/mm、ピッチ=15.02μm、角度=5.7度、深さ=1.48μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となるが、判定はθ≦60度で解像し、深さが1.5μmまで可能である。
【0092】
(3)溝本数=120本/mm、ピッチ=8.333μm、角度=10.4度、深さ=1.48μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となるが、判定はθ≦60度で解像し、深さが1.5μmまで可能である。
【0093】
(4)溝本数=300本/mm、ピッチ=3.333μm、角度=4.3、6.5、8.6、26.8度、深さ=0.25、0.37、0.49、1.34μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となるが、判定はθ≦60度で解像し、深さが1.5μmまで可能である。
【0094】
(5)溝本数=360本/mm、ピッチ=2.778μm、角度=10.4度、深さ=0.49μmのスペックに対しては、最大深さが0.8μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0095】
(6)溝本数=600本/mm、ピッチ=1.666μm、角度=34.8、3.4、4.3、5.2、8.6、13.0、16.6、17.5度、深さ=0.78、0.10、0.12、0.15、0.25、0.37、0.46、0.48μmのスペックに対しては、最大深さが0.8μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0096】
(7)溝本数=1200本/mm、ピッチ=0.833μm、角度=6.9、8.6、8.6、10.4、17.5度、深さ=0.10、0.12、0.12、0.15、0.24μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0097】
(8)溝本数=1440本/mm、ピッチ=0.694μm、角度=9.5度、深さ=0.11μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0098】
(9)溝本数=1800本/mm、ピッチ=0.556μm、角度=10.4度、深さ=0.10μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0099】
(10)溝本数=2400本/mm、ピッチ=0.417μm、角度=13.9度、深さ=0.10μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0100】
以上により、必要な位相シフトにおいて、位相は60度以下が必要となる。また、30μmピッチは作製不可能である。
【0101】
<位相シフトマスクの変形例>
図12を用いて、図3に示した位相シフトマスクの変形例について説明する。図12は、この位相シフトマスクの変形例を示す概略図であり、(a)は位相シフトマスクの平面形状、(b)は位相シフトマスクの断面形状をそれぞれ示す。
【0102】
図12(a)に示す位相シフトマスク30の周期的パターンは、平面形状において、図3(a)に対して、位相シフトがない(0°)第1の透過部32aと、位相シフトがある(θ)第2の透過部32bとが逆に配置されている。すなわち、遮光部31と、この遮光部31に隣接し、位相シフトがある(θ)第2の透過部32bと、この第2の透過部32bに隣接し、位相シフトがない(0°)第1の透過部32aとの組が周期的に配置されている。
【0103】
また、図12(b)に示す断面形状においても、遮光部31、第2の透過部32b、第1の透過部32aの組が周期的に配置され、この凹部に相当する第2の透過部32bの厚さが第1の透過部32aの厚さより薄く形成されている。
【0104】
このような形状の位相シフトマスク30を用いた場合でも、照明光源10から放出された光を、この位相シフトマスク30を透過させることにより、+1次光を消滅させ、かつ、0次光と−1次光とを生じさせ、この0次光と−1次光とをSiウエハ50の表面で干渉させて、Siウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光することで、Siウエハ50上のフォトレジスト60の形状は、Siウエハ50まで抜かないブレーズド状の断面形状とすることができる。
【0105】
<実施の形態の効果>
以上説明した本実施の形態によれば、遮光部31と透過部32(位相シフトがない第1の透過部32a、位相シフトがある第2の透過部32b)が周期的に配置された位相シフトマスク30を用いた回折格子の製造方法において、照明光源10から放出された光を、位相シフトマスク30を透過させ、この位相シフトマスク30を透過させることにより生じる0次光と+1次光とをSiウエハ50の表面で干渉させて、このSiウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光し、Siウエハ50上にブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成することで、以下のような効果を得ることができる。
【0106】
(1)ルーリングエンジンと比較して、製作時間の短縮(例えばマスタ作成:1ヶ月/枚→1日/枚)や精度向上が可能となる。
【0107】
(2)ホログラフィック露光と比較して、斜方エッチング等の追加工を必要としないため、製作時間の短縮や製品の精度向上が可能となる。
【0108】
(3)回折格子の製品全体からみた効果としては、製造ばらつき低減により回折効率向上、迷光低減といった、回折格子の性能向上に寄与することができる。
【0109】
(4)回折格子の製品全体からみた効果としては、製品の精度向上と製作時間の短縮が可能な回折格子の製造技術を提供することができる。
【0110】
以上(1)〜(4)のような効果が得られる理由は、以下の通りである。
【0111】
(11)光リソグラフィ技術は、半導体製品の大量生産に対応すべく、高スループットな製造方法であるため、製作時間の短縮が可能となる。
【0112】
(12)半導体製品の微細化・高精度化に対応すべく、短波長光源でパターンを形成する技術であり、製造する回折格子と同サイズのダイヤモンドツールで機械刻線を行うルーリングエンジンに対して高精度化が可能である。
【0113】
(13)本実施の形態は、1度の露光で光学像に傾斜を持たせることが可能であるため、追加工を必要としない。そのため、追加工を要するホログラフィック露光に対して、製造ばらつき低減・加工精度向上が可能である。
【0114】
(14)リソグラフィ技術は、任意のマスクレイアウトパターンをSiウエハ50に塗布されたフォトレジスト60に転写する技術であるため、深さ(ブレーズ角)を変えた回折格子を形成可能とすることができる。
【0115】
また、前述した特許文献1や非特許文献1の技術と比較して、以下のような効果を得ることができる。
【0116】
(21)前述した特許文献1や非特許文献1の技術と比較して、x/P×360°+θ=180°の関係式を成立させ、位相シフトの位相を60度以下とすることで、頂部の尖ったパターンのブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成することができる。
【0117】
(22)x/P×360°+θ=180°の関係式のPとxとθとを変更して調整することで、回折格子のブレーズド状の断面形状の深さをSiウエハ50の表面まで抜かない深さとすることができる。この結果、回折格子のパターン間のSiウエハ50の露出を防ぐことができる。
【0118】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0119】
例えば、前記実施の形態においては、本発明に係る回折格子の製造方法を説明したが、本発明は回折格子の製造方法に限定されるものではなく、前述した本発明の実施の形態の概要に示した(4)前記位相シフトマスク(30)を用いた半導体装置の製造方法に適用することができる。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の一部に、断面として非対称形状が要求される場合において、前述した実施の形態を適用し、半導体基板上に、非対称の断面形状を形成することができる。また、この非対称の断面形状は、感光材料に限らず、公知の半導体のエッチング手法を適用することで、感光材料の断面形状を半導体基板に転写し、半導体基板に非対称の断面形状を形成することができる。
【0120】
さらに、本発明は、前述した本発明の実施の形態の概要に示した(2)前記位相ソフトマスク(30)用いた非対称パターンの形成方法に適用可能であり、基板上に非対称パターンを形成する技術として、広く応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術は、特に、ブレーズド状の断面形状を有するブレーズド回折格子の製造方法に利用可能である。また、非対称形状を含む半導体装置の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0122】
10 照明光源
20 集光レンズ
30 位相シフトマスク
31 遮光部
32 透過部
32a 第1の透過部
32b 第2の透過部
40 投影レンズ
41 瞳面
50 Siウエハ
60 フォトレジスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術に関し、特に、ブレーズド状(鋸歯波状)の断面形状を有するブレーズド回折格子の製造方法に適用して有効な技術に関する。また、非対称形状を含む半導体装置の製造方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術としては、例えば特許文献1や非特許文献1に記載される技術などが挙げられる。この特許文献1や非特許文献1には、露光装置の光学補正技術として、検査パターンの非対称回折格子が、マスク基板の表面に配置された遮光帯と、この遮光帯の一方の側に隣接して配置された非対称回折部とを備え、この遮光帯と非対称回折部との繰り返しパターンをマスク基板上に設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−37598号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hiroshi Nomura,“New phase shift gratings for measuring aberrations”,Optical Microlithography XIV,Christopher J.Progler,Editor,Proceedings of SPIE Vol.4346(2001),pp25−35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したような位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術は、例えば、ブレーズド状(鋸歯波状)の断面形状を有するブレーズド回折格子の製造方法に適用することが考えられる。
【0006】
回折格子の製造技術としては、例えば、(1)ルーリングエンジンによる回折格子の形成技術、(2)ホログラフィック露光による回折格子の形成技術が挙げられる。
【0007】
(1)ルーリングエンジンによる回折格子の形成技術は、ダイヤモンドツールを使用したルーリングエンジンによる機械式加工によりブレーズド回折格子を形成する技術である。
【0008】
(2)ホログラフィック露光による回折格子の形成技術は、ホログラフィック露光後のレジストパターンに斜方エッチングを行い、ブレーズド回折格子を形成する技術である。
【0009】
しかしながら、前述したような回折格子の製造技術に関しては、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0010】
(1)ルーリングエンジンによる回折格子の形成技術は、機械式加工であるため、精度向上に限界がある。また、回折格子専用技術であり、発展性に欠ける。また、製作に時間がかかる。
【0011】
(2)ホログラフィック露光による回折格子の形成技術は、追加工が必要なため、製造ばらつき要因が増える。すなわち、回折格子はサインカーブにしかならず、良好な回折格子を得るためには、さらなる露光や加工が必要となる。また、追加工用の製造装置が必要である。
【0012】
また、前述した特許文献1や非特許文献1の技術は、露光装置の光学補正技術として、検査パターンの非対称回折格子を有する検査用レチクル(マスク)に関するものであり、本発明が適用とする回折格子などを製造するためのマスクとは異なるものである。さらに、特許文献1や非特許文献1の技術は、遮光帯(遮光部)が広いため、形成されるパターンの頂部が平らになり、本発明のような頂部の尖ったパターンの回折格子を形成することができない。また、特許文献1や非特許文献1の技術は、非対称回折部(透過部)の位相シフト量が90°であり、本発明とは異なるものである。
【0013】
そこで、本発明は前述した(1)ルーリングエンジンによる回折格子の形成技術、(2)ホログラフィック露光による回折格子の形成技術の課題に鑑みてなされたものであり、その代表的な目的は、製品の精度向上と製作時間の短縮が可能な、位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術、さらには回折格子、半導体装置の製造技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
すなわち、代表的なものの概要は、位相シフトマスク、および位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成方法、さらには位相シフトマスクを用いた回折格子の製造方法、半導体装置の製造方法に適用され、以下のような特徴を有するものである。
【0017】
(1)前記位相シフトマスクは、光を遮光する遮光部と、光を透過する透過部とを有し、前記透過部は、位相シフトがない第1の透過部と、位相シフトがある第2の透過部とからなり、前記遮光部と前記第1の透過部と前記第2の透過部との組が周期的に配置され、前記組の周期的な配置のピッチをP、前記第1の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第2の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第1の透過部と前記第2の透過部との位相差をθとした場合に、x/P×360°+θ=180°、の関係式が成り立つことを特徴とする。
【0018】
(2)前記位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成方法は、光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料を露光し、前記基板上に前記非対称パターンを形成することを特徴とする。
【0019】
(3)前記位相シフトマスクを用いた回折格子の製造方法は、光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料を露光し、前記基板上に前記ブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成することを特徴とする。
【0020】
(4)前記位相シフトマスクを用いた半導体装置の製造方法は、光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを半導体基板の表面で干渉させて、前記半導体基板の表面の感光材料を露光し、前記半導体基板上に前記非対称の断面形状を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0022】
すなわち、代表的な効果は、製品の精度向上と製作時間の短縮が可能な、位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術、さらには回折格子、半導体装置の製造技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)〜(d)は本発明の一実施の形態の回折格子の製造方法を実現する露光装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示した露光装置に用いる位相シフトマスクの位相差とサイズとの関係の一例を示す概略図である。
【図3】(a)〜(d)は図1に示した露光装置に用いる位相シフトマスクの一例を示す概略図である。
【図4】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価において、シミュレーションにおけるシミュレーション条件の一例を示す図である。
【図5】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価において、シミュレーションによる位相シフトとパターン比率との関係の一例を示す図である。
【図6】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価において、回折格子の深さの露光量依存性の一例を示す図である。
【図7】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価において、光強度分布の一例を示す図である。
【図8】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価において、コントラストの一例を示す図である。
【図9】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法における、回折格子の要求スペックへの適用評価において、回折格子の要求スペックの一例を示す図である。
【図10】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法における、回折格子の要求スペックへの適用評価において、ピッチ依存性の一例を示す図である。
【図11】図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法における、回折格子の要求スペックへの適用評価において、図9に示した回折格子の要求スペックに対して、必要な位相シフトの一例を示す図である。
【図12】(a),(b)は図1に示した露光装置に用いる位相シフトマスクの変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数の実施の形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0025】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
<本発明の実施の形態の概要>
本発明の実施の形態は、位相シフトマスク、および位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成方法、さらには位相シフトマスクを用いた回折格子の製造方法、半導体装置の製造方法に適用され、以下のような特徴を有するものである(一例として、()内に対応する構成要素、符号などを付記)。
【0028】
(1)前記位相シフトマスク(30)は、光を遮光する遮光部(31)と、光を透過する透過部(32)とを有し、前記透過部は、位相シフトがない第1の透過部(32a)と、位相シフトがある第2の透過部(32b)とからなり、前記遮光部と前記第1の透過部と前記第2の透過部との組が周期的に配置され、前記組の周期的な配置のピッチをP、前記第1の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第2の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第1の透過部と前記第2の透過部との位相差をθとした場合に、x/P×360°+θ=180°、の関係式が成り立つことを特徴とする。
【0029】
(2)前記位相シフトマスク(30)を用いた非対称パターンの形成方法は、光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料を露光し、前記基板上に前記非対称パターンを形成することを特徴とする。
【0030】
(3)前記位相シフトマスク(30)を用いた回折格子の製造方法は、光源(照明光源10)から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板(Siウエハ50)の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料(フォトレジスト60)を露光し、前記基板上に前記ブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成することを特徴とする。
【0031】
(4)前記位相シフトマスク(30)を用いた半導体装置の製造方法は、光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを半導体基板の表面で干渉させて、前記半導体基板の表面の感光材料を露光し、前記半導体基板上に前記非対称の断面形状を形成することを特徴とする。
【0032】
以上説明した本発明の実施の形態の概要に基づいた各実施の形態を、以下において具体的に説明する。以下に説明する実施の形態は本発明を用いた一例であり、本発明は以下の実施の形態により限定されるものではない。以下の実施の形態においては、主に前述した(1)前記位相シフトマスク(30)、(3)前記位相シフトマスク(30)を用いた回折格子の製造方法について説明する。
【0033】
[本発明の一実施の形態]
本発明の一実施の形態を、図1〜図12を用いて説明する。
【0034】
<露光装置>
図1を用いて、本実施の形態の回折格子の製造方法を実現する露光装置について説明する。図1は、この露光装置の一例を示す概略図である。図1において、(a)は露光装置の概略、(b)はマスクの形状、(c)は投影レンズの瞳面上の光強度分布、(d)はSiウエハ上のフォトレジストの形状をそれぞれ示す。
【0035】
本実施の形態における露光装置は、図1(a)に示すように、照明光源10、集光レンズ20、位相シフトマスク30、投影レンズ40などから構成される。この露光装置は、位相シフトマスク30を用いた3次元レジストパターン形成技術を適用し、Siウエハ50の表面に塗布されたフォトレジスト60を露光する装置である。
【0036】
照明光源10は、露光を行うための光源となるものである。この照明光源10には、例えば、g線やi線、KrF、ArFなどのエキシマレーザなどが用いられる。
【0037】
集光レンズ20は、照明光源10から照射された光を位相シフトマスク30上に集光するためのレンズである。
【0038】
位相シフトマスク30は、図1(b)(詳細は図2および図3に図示)に示すように、所定の周期的パターンを備え、回折格子のブレーズド状のピッチに対応してパターンを配置したものである。この位相シフトマスク30の周期的パターンは、光を遮光する遮光部31と、光を透過する透過部32とを有する。透過部32は、位相シフトがない(0°)第1の透過部32aと、位相シフトがある(θ)第2の透過部32bとからなる。この位相シフトマスク30は、遮光部31と第1の透過部32aと第2の透過部32bとの組が周期的に配置されている。
【0039】
投影レンズ40は、位相シフトマスク30の遮光部31と透過部32の周期的なパターンをSiウエハ50のフォトレジスト60上に投影するためのレンズである。この投影レンズ40の瞳面41上では、図1(c)(詳細は図3に図示)に示すような光強度分布となっている。すなわち、位相シフトマスク30を透過させることにより、−1次光が消滅し、0次光と+1次光が生じていることが分かる。なお、後述する回折格子の製造方法では、位相シフトマスク30のパターンを縮小して投影する縮小投影型の露光装置を例に説明する。
【0040】
以上のように構成される露光装置においては、遮光部31と透過部32(位相シフトがない第1の透過部32a、位相シフトがある第2の透過部32b)が周期的に配置された位相シフトマスク30を用いることで、−1次光が消滅し、図1(d)(詳細は図3に図示)に示すように、フォトレジスト60のレジストパターンをSiウエハ50まで抜かないブレーズド状の断面形状を形成することができる。また、透過部32の位相差と、遮光部31と第1の透過部32aと第2の透過部32bとの幅の比率を変更することで、ブレーズド状の断面形状の深さ(角度)も調整することができる。
【0041】
本実施の形態では、以上のような露光装置により、Siウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光する際は、照明光源10から放出された光を、位相シフトマスク30を透過させ、この位相シフトマスク30を透過させることにより生じる0次光と+1次光とをSiウエハ50の表面で干渉させて、このSiウエハ50上のフォトレジスト60を露光し、Siウエハ50上にブレーズド状の断面形状を有するフォトレジスト60が形成された回折格子を形成することを特徴とするものである。
【0042】
<位相シフトマスク>
図2および図3を用いて、前述した図1に示した露光装置に用いる位相シフトマスクについて説明する。図2は、この位相シフトマスクの位相差とサイズとの関係の一例を示す概略図である。図3は、この位相シフトマスクの一例(後述する図5の仕様4の例)を示す概略図であり、(a)は位相シフトマスクの平面形状、(b)は位相シフトマスクの断面形状、(c)はこの位相シフトマスクを用いた投影レンズの瞳面上の光強度分布、(d)はこの位相シフトマスクを用いたSiウエハ上のフォトレジストの形状をそれぞれ示す。
【0043】
図2に示すように、位相シフトマスク30の位相差とサイズとの関係は、遮光部31と第1の透過部32aと第2の透過部32bとの組の周期的な配置のピッチをP、第1の透過部32aのピッチ方向の幅をx、第2の透過部32bのピッチ方向の幅をx、第1の透過部32aと第2の透過部32bとの位相差をθとした場合に、x/P×360°+θ=180°、の関係式が成り立つものである。
【0044】
例えば、後述する図5の仕様4の例で考えると、P=600nm、x=250nm、θ=30°であるので、250/600×360+30=180となり、上記の関係式が成り立つ。同様に、仕様1の例(P=600nm、x=150nm、θ=90°)、仕様2の例(P=600nm、x=200nm、θ=60°)、仕様3の例(P=600nm、x=225nm、θ=30°)、仕様5の例(P=600nm、x=275nm、θ=15°)でも、上記の関係式が成り立つ。
【0045】
図3(a)に示すように、位相シフトマスク30の周期的パターンは、平面形状において、遮光部31と、この遮光部31に隣接し、位相シフトがない(0°)第1の透過部32aと、この第1の透過部32aに隣接し、位相シフトがある(θ)第2の透過部32bとの組が周期的に配置されている。この図3(a)に示す位相シフトマスク30の例では、5組の部分を図示しており、5本の遮光部31(黒表示)、5本の第1の透過部32a(白表示)、5本の第2の透過部32b(ドット表示)が設けられている。
【0046】
また、図3(b)に示すように、この位相シフトマスク30の周期的パターンは、断面形状において、第1の透過部32aと第2の透過部32bとが一体に凹部を有して形成され、この凹部に相当する第2の透過部32bの厚さが第1の透過部32aの厚さより薄く形成されている。さらに、第1の透過部32aの表面には、遮光部31として金属膜が成膜されている。例えば、第1の透過部32aと第2の透過部32bとからなる透過部32の部分は石英ガラスなどからなり、遮光部31はCrなどの金属膜からなる。
【0047】
このような形状の位相シフトマスク30を用い、照明光源10から放出された光を、この位相シフトマスク30を透過させることにより、Siウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光することができる。この場合に、この位相シフトマスク30を用いた投影レンズ40の瞳面41上の光強度分布は、図3(c)に示すように、−1次光を消滅させ、かつ、0次光と+1次光とを生じさせることができる。そして、この0次光と+1次光とをSiウエハ50の表面で干渉させることで、Siウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光することができ、Siウエハ50上のフォトレジスト60の形状は、図3(d)に示すように、Siウエハ50まで抜かないブレーズド状(角度、深さ)の断面形状とすることができる。
【0048】
<回折格子の製造方法>
前述した図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法について、前述した図2および図3を参照して説明する。
【0049】
(1)遮光部31と透過部32(位相シフトがない第1の透過部32a、位相シフトがある第2の透過部32b)が周期的に配置された位相シフトマスク30を準備する。この位相シフトマスク30は、例えば前述した図2および図3(a),(b)に示したものである。
【0050】
(2)テスト露光用のSiウエハにフォトレジストをスピンコーターで塗布した後、プリベークを施す。
【0051】
(3)上記(2)のSiウエハに対し、位相シフトマスク30を用いて縮小投影型の露光装置でパターンを転写する。このとき、Siウエハ上で領域を変えながら、露光装置のフォーカス値、露光量、露光レンズの開口数を各々複数段階に変えて、転写を複数ショット繰り返す。
【0052】
(4)上記(3)のSiウエハを現像した後、必要であればポストベークを施す。
【0053】
(5)上記(4)のSiウエハ上に形成された3次元フォトレジストパターンの断面形状を計測し、この断面形状が、製作したい回折格子の断面形状(本実施の形態では例えば図3(d))に最も良く合致するショットを選び、最適露光条件として、そのフォーカス値と露光量を記録する。
【0054】
(6)もし、どのショットにおいても、製作したい回折格子の断面形状と良い合致が見られない場合は、上記(1)の位相シフトマスク30の遮光部31と第1の透過部32aと第2の透過部32bとの幅の比率と、第2の透過部32bの位相を変更して、新たな位相シフトマスク30を使用し、再び上記(2)〜(5)の手順を繰り返す。製作したい回折格子の断面形状と良く合致したショットが存在した場合は、製品となる回折格子を製作するために下記(7)の手順へ進む。
【0055】
(7)回折格子製作用のSiウエハ50にフォトレジスト60をスピンコーターで塗布した後、プリベークを施す。
【0056】
(8)上記(7)のSiウエハ50に対し、位相シフトマスク30を用いて、縮小投影型の露光装置で転写する。このとき、この露光装置には、上記(6)で記録した最適露光条件のフォーカス値と露光量を設定する。
【0057】
(9)上記(8)のSiウエハ50を現像した後、必要であればポストベークを施す。この時点では、例えば図3(d)に示すような、ブレーズド状の断面形状を有するフォトレジスト60がSiウエハ50上に形成された構造となる。
【0058】
(10)上記(9)のSiウエハ50のフォトレジスト60上にAl膜を成膜、もしくはSiエッチングを施す。
【0059】
(11)上記(10)で形成された回折格子を適当なサイズに切り出す。これにより、Siウエハ50上にブレーズド状のフォトレジスト60が形成され、さらにフォトレジスト60上にAl膜が成膜された回折格子の製品が完成する。
【0060】
<シミュレーション評価>
図4〜図8を用いて、前述した図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法におけるシミュレーション評価について説明する。
【0061】
図4は、シミュレーションにおけるシミュレーション条件の一例を示す図である。図4に示すように、シミュレーションの条件パラメータとして、
(1)照明条件・・・・波長=365nm、光源=円形、σ=0.3、NA=0.63
(2)マスク条件・・・マスクパターン=0.6μmピッチ、マスクサイズ=第1の透過部(0°):第2の透過部(θ(位相)):遮光部(Cr)=仕様1=150nm:150nm(90°):300nm、仕様2=200nm:200nm(60°):200nm、仕様3=225nm:225nm(45°):150nm、仕様4=250nm:250nm(30°):100nm、仕様5=275nm:275nm(15°):50nm
(3)露光条件・・・・露光量=100mJ/cm2〜300mJ/cm2、フォーカス値=0.0μm
(4)レジスト条件・・レジスト厚=2000nm
がある。
【0062】
図5は、シミュレーションによる位相シフトとパターン比率との関係の一例を示す図である。図5は、前述した図4に示すマスク条件のマスクサイズに対応して、仕様1(θ=90°、比=0.5:0.5:1)、仕様2(θ=60°、比=1:1:1)、仕様3(θ=45°、比=1.5:1.5:1)、仕様4(θ=30°、比=2.5:2.5:1)、仕様5(θ=15°、比=5.5:5.5:1)とする。また、露光条件の露光量を、50mJ/cm2、100mJ/cm2、200mJ/cm2、300mJ/cm2とする。
【0063】
この結果、図5に示すように、瞳面41上の光強度分布(図5上ではドット密度で区別し、密になるほど光強度が強い)では、仕様1に近くなるほど1次光が強まり、仕様5に近くなるほど1次光が弱まることが分かる。この瞳面41上の光強度分布に対応して、フォトレジスト60のレジスト形状では、位相シフトとパターン比率を変えることで、深さ(ブレーズ角)を調整可能であることが分かる。具体的には、位相シフトを90°→60°→45°→30°→15°に変えると、深さの浅い回折格子ができることが分かる。
【0064】
このうち、仕様1では300mJ/cm2、仕様2では200mJ/cm2と300mJ/cm2、仕様3では100mJ/cm2と200mJ/cm2、仕様4では100mJ/cm2と200mJ/cm2、仕様5では100mJ/cm2と200mJ/cm2が、ブレーズド状の断面形状を有する回折格子として利用可能である。図5からも分かるように、仕様1の300mJ/cm2では深さを深く、仕様5の100mJ/cm2では深さを浅くすることができ、回折格子の要求スペックに応じて、位相シフトとパターン比率を変えて深さを調整することができる。
【0065】
図6は、回折格子の深さの露光量依存性の一例を示す図である。図6において、横軸は露光量[mJ/cm2]、縦軸は深さ[μm]であり、仕様1(90°)、仕様2(60°)、仕様3(45°)、仕様4(30°)、仕様5(15°)を示している。図6により、位相シフトとパターン比率を変えることで深さを調整可能であることが分かる。位相シフトを90°から15°に変えると、深さの浅い回折格子ができることが分かる。
【0066】
図7は、光強度分布の一例を示す図である。図7において、横軸はx位置[μm]、縦軸は光強度であり、仕様1(90°)、仕様2(60°)、仕様3(45°)、仕様4(30°)、仕様5(15°)を示している。図7により、位相シフトとパターン比率を変えることで光強度を調整可能であることが分かる。
【0067】
図8は、コントラストの一例を示す図である。図8において、横軸は位相、縦軸はコントラストを示している。図8により、位相シフトとパターン比率を変えることでコントラストが変わることが分かる。
【0068】
以上の図5〜図8により、位相シフトとパターン比率を変えることでコントラストが変わり、結果として、深さ(ブレーズ角)の異なる回折格子を得ることができる。
【0069】
<回折格子の要求スペックへの適用評価>
図9〜図11を用いて、前述した図1に示した露光装置を用いた回折格子の製造方法における、回折格子の要求スペックへの適用評価について説明する。ここで示す回折格子の要求スペックは一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
図9は、回折格子の要求スペックの一例を示す図である。図9に示すように、回折格子の要求スペックとして、溝本数[本/mm]、ピッチ[μm]、角度[度]、深さ[μm]について検討する。
【0071】
(1)溝本数=33本/mm、ピッチ=30.3μm、角度=26.8度、深さ=12.20μmのスペックに対しては、最大深さが12μm必要となる。
【0072】
(2)溝本数=66.6本/mm、ピッチ=15.02μm、角度=5.7度、深さ=1.48μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となる。
【0073】
(3)溝本数=120本/mm、ピッチ=8.333μm、角度=10.4度、深さ=1.48μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となる。
【0074】
(4)溝本数=300本/mm、ピッチ=3.333μm、角度=4.3、6.5、8.6、26.8度、深さ=0.25、0.37、0.49、1.34μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となる。
【0075】
(5)溝本数=360本/mm、ピッチ=2.778μm、角度=10.4度、深さ=0.49μmのスペックに対しては、最大深さが0.8μm必要となる。
【0076】
(6)溝本数=600本/mm、ピッチ=1.666μm、角度=34.8、3.4、4.3、5.2、8.6、13.0、16.6、17.5度、深さ=0.78、0.10、0.12、0.15、0.25、0.37、0.46、0.48μmのスペックに対しては、最大深さが0.8μm必要となる。
【0077】
(7)溝本数=1200本/mm、ピッチ=0.833μm、角度=6.9、8.6、8.6、10.4、17.5度、深さ=0.10、0.12、0.12、0.15、0.24μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となる。
【0078】
(8)溝本数=1440本/mm、ピッチ=0.694μm、角度=9.5度、深さ=0.11μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となる。
【0079】
(9)溝本数=1800本/mm、ピッチ=0.556μm、角度=10.4度、深さ=0.10μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となる。
【0080】
(10)溝本数=2400本/mm、ピッチ=0.417μm、角度=13.9度、深さ=0.10μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となる。
【0081】
図10は、ピッチ依存性の一例を示す図である。
【0082】
(1)ピッチ=0.600μm、位相=15度の場合、露光量=100mJ/cm2、フォーカス値=0.0μmの条件で、深さは0.47μmとなる。
【0083】
(2)ピッチ=0.900μm、位相=15度の場合、露光量=100mJ/cm2、フォーカス値=0.0μmの条件で、深さは0.58μmとなる。
【0084】
(3)ピッチ=1.600μm、位相=15度の場合、露光量=150mJ/cm2、フォーカス値=0.0μmの条件で、深さは0.8μmとなる。
【0085】
(4)ピッチ=3.600μm、位相=60度の場合、露光量=200mJ/cm2、フォーカス値=3.2μmの条件で、深さは1.9μmとなる。
【0086】
(5)ピッチ=15μm、位相=60度の場合、露光量=500mJ/cm2、フォーカス値=20μmの条件で、深さは1.9μmとなる。
【0087】
(6)ピッチ=30μm、位相=60度の場合は、作製不可能となる。
【0088】
以上により、ピッチ依存性において、位相は60度以下が必要となる。また、30μmピッチは作製不可能である。
【0089】
図11は、図9に示した回折格子の要求スペックに対して、必要な位相シフトの一例を示す図である。
【0090】
(1)溝本数=33本/mm、ピッチ=30.3μm、角度=26.8度、深さ=12.20μmのスペックに対しては、最大深さが12μm必要となるが、判定はいずれの仕様も作製不可能である。
【0091】
(2)溝本数=66.6本/mm、ピッチ=15.02μm、角度=5.7度、深さ=1.48μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となるが、判定はθ≦60度で解像し、深さが1.5μmまで可能である。
【0092】
(3)溝本数=120本/mm、ピッチ=8.333μm、角度=10.4度、深さ=1.48μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となるが、判定はθ≦60度で解像し、深さが1.5μmまで可能である。
【0093】
(4)溝本数=300本/mm、ピッチ=3.333μm、角度=4.3、6.5、8.6、26.8度、深さ=0.25、0.37、0.49、1.34μmのスペックに対しては、最大深さが1.5μm必要となるが、判定はθ≦60度で解像し、深さが1.5μmまで可能である。
【0094】
(5)溝本数=360本/mm、ピッチ=2.778μm、角度=10.4度、深さ=0.49μmのスペックに対しては、最大深さが0.8μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0095】
(6)溝本数=600本/mm、ピッチ=1.666μm、角度=34.8、3.4、4.3、5.2、8.6、13.0、16.6、17.5度、深さ=0.78、0.10、0.12、0.15、0.25、0.37、0.46、0.48μmのスペックに対しては、最大深さが0.8μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0096】
(7)溝本数=1200本/mm、ピッチ=0.833μm、角度=6.9、8.6、8.6、10.4、17.5度、深さ=0.10、0.12、0.12、0.15、0.24μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0097】
(8)溝本数=1440本/mm、ピッチ=0.694μm、角度=9.5度、深さ=0.11μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0098】
(9)溝本数=1800本/mm、ピッチ=0.556μm、角度=10.4度、深さ=0.10μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0099】
(10)溝本数=2400本/mm、ピッチ=0.417μm、角度=13.9度、深さ=0.10μmのスペックに対しては、最大深さが0.24μm必要となるが、判定はθ≦15度で解像し、深さが0.8μmまで可能である。
【0100】
以上により、必要な位相シフトにおいて、位相は60度以下が必要となる。また、30μmピッチは作製不可能である。
【0101】
<位相シフトマスクの変形例>
図12を用いて、図3に示した位相シフトマスクの変形例について説明する。図12は、この位相シフトマスクの変形例を示す概略図であり、(a)は位相シフトマスクの平面形状、(b)は位相シフトマスクの断面形状をそれぞれ示す。
【0102】
図12(a)に示す位相シフトマスク30の周期的パターンは、平面形状において、図3(a)に対して、位相シフトがない(0°)第1の透過部32aと、位相シフトがある(θ)第2の透過部32bとが逆に配置されている。すなわち、遮光部31と、この遮光部31に隣接し、位相シフトがある(θ)第2の透過部32bと、この第2の透過部32bに隣接し、位相シフトがない(0°)第1の透過部32aとの組が周期的に配置されている。
【0103】
また、図12(b)に示す断面形状においても、遮光部31、第2の透過部32b、第1の透過部32aの組が周期的に配置され、この凹部に相当する第2の透過部32bの厚さが第1の透過部32aの厚さより薄く形成されている。
【0104】
このような形状の位相シフトマスク30を用いた場合でも、照明光源10から放出された光を、この位相シフトマスク30を透過させることにより、+1次光を消滅させ、かつ、0次光と−1次光とを生じさせ、この0次光と−1次光とをSiウエハ50の表面で干渉させて、Siウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光することで、Siウエハ50上のフォトレジスト60の形状は、Siウエハ50まで抜かないブレーズド状の断面形状とすることができる。
【0105】
<実施の形態の効果>
以上説明した本実施の形態によれば、遮光部31と透過部32(位相シフトがない第1の透過部32a、位相シフトがある第2の透過部32b)が周期的に配置された位相シフトマスク30を用いた回折格子の製造方法において、照明光源10から放出された光を、位相シフトマスク30を透過させ、この位相シフトマスク30を透過させることにより生じる0次光と+1次光とをSiウエハ50の表面で干渉させて、このSiウエハ50の表面のフォトレジスト60を露光し、Siウエハ50上にブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成することで、以下のような効果を得ることができる。
【0106】
(1)ルーリングエンジンと比較して、製作時間の短縮(例えばマスタ作成:1ヶ月/枚→1日/枚)や精度向上が可能となる。
【0107】
(2)ホログラフィック露光と比較して、斜方エッチング等の追加工を必要としないため、製作時間の短縮や製品の精度向上が可能となる。
【0108】
(3)回折格子の製品全体からみた効果としては、製造ばらつき低減により回折効率向上、迷光低減といった、回折格子の性能向上に寄与することができる。
【0109】
(4)回折格子の製品全体からみた効果としては、製品の精度向上と製作時間の短縮が可能な回折格子の製造技術を提供することができる。
【0110】
以上(1)〜(4)のような効果が得られる理由は、以下の通りである。
【0111】
(11)光リソグラフィ技術は、半導体製品の大量生産に対応すべく、高スループットな製造方法であるため、製作時間の短縮が可能となる。
【0112】
(12)半導体製品の微細化・高精度化に対応すべく、短波長光源でパターンを形成する技術であり、製造する回折格子と同サイズのダイヤモンドツールで機械刻線を行うルーリングエンジンに対して高精度化が可能である。
【0113】
(13)本実施の形態は、1度の露光で光学像に傾斜を持たせることが可能であるため、追加工を必要としない。そのため、追加工を要するホログラフィック露光に対して、製造ばらつき低減・加工精度向上が可能である。
【0114】
(14)リソグラフィ技術は、任意のマスクレイアウトパターンをSiウエハ50に塗布されたフォトレジスト60に転写する技術であるため、深さ(ブレーズ角)を変えた回折格子を形成可能とすることができる。
【0115】
また、前述した特許文献1や非特許文献1の技術と比較して、以下のような効果を得ることができる。
【0116】
(21)前述した特許文献1や非特許文献1の技術と比較して、x/P×360°+θ=180°の関係式を成立させ、位相シフトの位相を60度以下とすることで、頂部の尖ったパターンのブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成することができる。
【0117】
(22)x/P×360°+θ=180°の関係式のPとxとθとを変更して調整することで、回折格子のブレーズド状の断面形状の深さをSiウエハ50の表面まで抜かない深さとすることができる。この結果、回折格子のパターン間のSiウエハ50の露出を防ぐことができる。
【0118】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0119】
例えば、前記実施の形態においては、本発明に係る回折格子の製造方法を説明したが、本発明は回折格子の製造方法に限定されるものではなく、前述した本発明の実施の形態の概要に示した(4)前記位相シフトマスク(30)を用いた半導体装置の製造方法に適用することができる。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の一部に、断面として非対称形状が要求される場合において、前述した実施の形態を適用し、半導体基板上に、非対称の断面形状を形成することができる。また、この非対称の断面形状は、感光材料に限らず、公知の半導体のエッチング手法を適用することで、感光材料の断面形状を半導体基板に転写し、半導体基板に非対称の断面形状を形成することができる。
【0120】
さらに、本発明は、前述した本発明の実施の形態の概要に示した(2)前記位相ソフトマスク(30)用いた非対称パターンの形成方法に適用可能であり、基板上に非対称パターンを形成する技術として、広く応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成技術は、特に、ブレーズド状の断面形状を有するブレーズド回折格子の製造方法に利用可能である。また、非対称形状を含む半導体装置の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0122】
10 照明光源
20 集光レンズ
30 位相シフトマスク
31 遮光部
32 透過部
32a 第1の透過部
32b 第2の透過部
40 投影レンズ
41 瞳面
50 Siウエハ
60 フォトレジスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を遮光する遮光部と、光を透過する透過部とを有し、
前記透過部は、位相シフトがない第1の透過部と、位相シフトがある第2の透過部とからなり、
前記遮光部と前記第1の透過部と前記第2の透過部との組が周期的に配置され、
前記組の周期的な配置のピッチをP、前記第1の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第2の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第1の透過部と前記第2の透過部との位相差をθとした場合に、x/P×360°+θ=180°、の関係式が成り立つことを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項2】
請求項1記載の位相シフトマスクにおいて、
前記位相差は、60°以下であることを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項3】
請求項1記載の位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成方法であって、
光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、
前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料を露光し、
前記基板上に前記非対称パターンを形成することを特徴とする非対称パターンの形成方法。
【請求項4】
請求項1記載の位相シフトマスクを用い、ブレーズド状の断面形状を有する回折格子を製造する回折格子の製造方法であって、
光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、
前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料を露光し、
前記基板上に前記ブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成することを特徴とする回折格子の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の回折格子の製造方法において、
前記回折格子のブレーズド状の断面形状の深さを、前記位相シフトマスクの前記関係式のPとxとθとを変更して調整することを特徴とする回折格子の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の回折格子の製造方法において、
前記回折格子のブレーズド状の断面形状の深さを、前記基板の表面まで抜かない深さとすることを特徴とする回折格子の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の位相シフトマスクを用い、非対称の断面形状を有する半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、
前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを半導体基板の表面で干渉させて、前記半導体基板の表面の感光材料を露光し、
前記半導体基板上に前記非対称の断面形状を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記感光材料の断面形状を前記半導体基板に転写し、前記半導体基板に非対称の断面形状を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
光を遮光する遮光部と、光を透過する透過部とを有し、
前記透過部は、位相シフトがない第1の透過部と、位相シフトがある第2の透過部とからなり、
前記遮光部と前記第1の透過部と前記第2の透過部との組が周期的に配置され、
前記組の周期的な配置のピッチをP、前記第1の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第2の透過部のピッチ方向の幅をx、前記第1の透過部と前記第2の透過部との位相差をθとした場合に、x/P×360°+θ=180°、の関係式が成り立つことを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項2】
請求項1記載の位相シフトマスクにおいて、
前記位相差は、60°以下であることを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項3】
請求項1記載の位相シフトマスクを用いた非対称パターンの形成方法であって、
光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、
前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料を露光し、
前記基板上に前記非対称パターンを形成することを特徴とする非対称パターンの形成方法。
【請求項4】
請求項1記載の位相シフトマスクを用い、ブレーズド状の断面形状を有する回折格子を製造する回折格子の製造方法であって、
光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、
前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを基板の表面で干渉させて、前記基板の表面の感光材料を露光し、
前記基板上に前記ブレーズド状の断面形状を有する回折格子を形成することを特徴とする回折格子の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の回折格子の製造方法において、
前記回折格子のブレーズド状の断面形状の深さを、前記位相シフトマスクの前記関係式のPとxとθとを変更して調整することを特徴とする回折格子の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の回折格子の製造方法において、
前記回折格子のブレーズド状の断面形状の深さを、前記基板の表面まで抜かない深さとすることを特徴とする回折格子の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の位相シフトマスクを用い、非対称の断面形状を有する半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
光源から放出された光を、前記位相シフトマスクを透過させ、
前記位相シフトマスクを透過させることにより生じる0次光と+1次光とを半導体基板の表面で干渉させて、前記半導体基板の表面の感光材料を露光し、
前記半導体基板上に前記非対称の断面形状を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記感光材料の断面形状を前記半導体基板に転写し、前記半導体基板に非対称の断面形状を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−83759(P2013−83759A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222907(P2011−222907)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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