説明

位相シフト干渉法に基づく光ファイバー検定装置

【課題】DNAチップおよび蛋白質チップに応用するための、マルチ検体アレイ形式はもとより、より有用な使い捨てヘッド形式とすることも可能な光ファイバーアセンブリを提供する。
【解決手段】
試料溶液内検体の結合の存在、または量、または速度を検出するための装置および方法を開示する。装置には、50nmを超える距離「d」だけ離間した第1および第2反射面を有する光アセンブリ、ならびに前記第1および第2反射面上に光ビームを導くための光源が含まれ、第1面は、検体結合分子層により形成される。装置の検出器は、アセンブリを検体溶液内に置く場合、第1および第2反射面から反射される光波の位相シフトを検出することにより、検体の検体結合分子への結合から生じる第1反射層の厚さ変化を検出するように動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、Hong Tan他による、2004年11月4日出願の米国特許非仮出願第 号、発明の名称「位相シフト干渉法に基づく光ファイバー検定装置」、代理人整理番号24377−09611US;2003年11月6日出願の米国特許仮出願第60/518,068号;2004年3月31日出願の米国特許仮出願第60/558,381号;の特典を請求し、これら出願の開示全体をすべての目的のためにそのまま参照して組み込む。
連邦政府が委託する研究または開発に関する表明
【0003】
非適用
【0004】
本発明は、試料中の一つ以上の検体の結合の存在、量、または速度を検出する装置および方法に関し、詳細には、光ファイバー干渉法に基づく装置および方法に関する。
【背景技術】
【0005】
検体−抗検体結合対のメンバー間の結合イベントに基づく診断テストは、医療、獣医学、農業、および研究用途に広く用いられている。典型的には、このような方法を利用して、試料中の検体の存在、または量、および/または検体の抗検体への結合速度を検出する。典型的な検体―抗検体対には、核酸の相補鎖、抗原―抗体対、および受容体―受容体結合剤があり、検体を、対のどちらか一方のメンバーとし、抗検体分子をその反対のメンバーとすることができる。
【0006】
この種の診断方法は、抗検体分子を固定化した固体表面を利用することが多く、試料検体分子は、画成した検出領域で、特異的に、かつ高い親和性をもって、その表面に結合することになる。固相検定法として知られるこの種の検定では、固定した抗検体分子への検体結合を促進する条件のもとで、固体表面を試料に曝す。結合イベントが起きたことを示す、例えば、質量、反射率、厚さ、色、または他の特徴の変化により、結合イベントを直接的に検出できる。例えば、色素体、または蛍光もしくは放射性ラベルを用いて、検体に予めラベル付けしておくと、検出領域における検出ラベルの存在および/または量により、結合イベントを検出できる。代替として、例えば、蛍光ラベルを付した補助的な抗検体抗体を用いて、検出領域で結合した後に検体へラベル付けできる。
【0007】
引用して本明細書に組み込む共有の米国特許第5,804,453号(’453特許)は、光ファイバー端面に結合する検体を検出するよう設計された光ファイバー干渉計検定装置を開示している。検体検出は、光ファイバー端面における、その表面への検体分子結合から生じる厚さ変化に基づくが、検体が多くなるほど、厚さに関連する大きな変化が干渉信号に生まれる。干渉信号の変化は特には、’453特許の図7aおよび図7bで示されるように、ファイバー端から反射される光と、ファイバー端に設けた結合層から反射される光との間の位相シフトに起因する。この装置は操作が容易で、検体検出のための高速検定方法を提供する。
【0008】
理想的には、干渉計検定装置は、従来の可視光スペクトロメータの範囲の、すなわち約450〜700nmの範囲の可視光の、スペクトルのピークおよびディップ(極値)の位置の観察し得る変化を直ちに生じ、それにより、ファイバー端でのかなり小さな光学的厚さ変化を、干渉波長のピークおよびディップのスペクトル位置の顕著な変化として検出できる。'453特許に記載の装置により観察された一つの限界は、このスペクトル範囲を超える波長のスペクトル極値が直ちに識別されないことである。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、早くに開示された装置の高速性および単純性の利点を保ちつつ、しかも感度および精度を強化しながら、この限界を克服するよう設計されている。本発明は、例えば、DNAチップおよび蛋白質チップに応用するための、マルチ検体アレイ形式はもとより、より有用な使い捨てヘッド形式も提供する。
【0010】
本発明の一態様には、検体の存在、検体の量、または検体の検体結合分子への会合および/または解離の検出を含め、試料中の検体を検出するための装置が含まれる。この装置には、少なくとも50nm離間する近位反射面と遠位反射面とを有する光素子が含まれる。光ファイバーからの光ビームは、2つの反射面に導かれ、それらの面から反射される。反射ビームは光ファイバーに戻って結合し、干渉する。光素子には検体結合分子層も含まれ、検体が検体結合分子層と結合する時に、反射したビーム間の干渉が変化するよう配置される。
【0011】
干渉変化は、様々な物理的現象により引き起こされる。例えば、検体結合は、光路長の変化、または2つの反射面の間での物理距離の変化を起こすこともある。また、検体結合が、反射面間にある物質の屈折率の変化または光吸収の変化を起こすこともある。検体結合により検体結合分子層が膨潤して、干渉変化を招くこともある。
【0012】
ある特定の設計では、遠位反射面には検体結合分子層が含まれる。検体が検体結合分子層に結合すると、例えば、2つの反射面間の光路長、つまり物理距離が増大する。本発明の別の態様では、反射面間に透明固体材料を配置し、オプションとして、その透明固体材料より屈折率が高い材料を近位反射面に含める。代替として、エアギャップを反射面間に配置してもよい。更に、別の設計では、遠位反射面を、近位反射面と検体結合分子層との間に配置する。例えば、検体結合により、検体結合分子層が膨潤することもあり、遠位反射面が近位反射面近くに移動する。更に別の設計では、検体結合分子層を2つの反射面の間に配置する。検体結合は層を膨潤させる、すなわち屈折率を変化させるので、2本の反射ビームの間の干渉を変化させる。
【0013】
別の態様では、装置には、50nmを超える距離「d」だけ離間した第1および第2反射面を有する光アセンブリが含まれる。光アセンブリは、少なくとも50nm、好ましくは400〜1000nmの素子の近位面と遠位面との間を画成する厚さを有する透明な光素子により構成される。第1反射面は、光素子の遠位面に担持され、検体結合分子層により形成される。第2反射面は、光素子より屈折率が高い透明材料のコーティングにより形成される。このコーティングは、5および50nm間の好ましい厚さを有するTa25により形成できる。光素子はSiO2とすることができ、約100〜5000nm、好ましくは400〜1000nmである。
【0014】
第1および第2反射面上に光ビームを導くための光源、および検体溶液内にアセンブリが置かれているとき、検体が検体結合分子に結合することから起きる第1反射層の光学的厚さ変化を検出するよう動作する検出ユニット、も含まれる。第1反射層の光学的厚さ変化は、前記第1および第2面から反射した2つの光波が形成する干渉波の位相特性のシフトに関連する。この位相特性は、干渉波の一つ以上のピークおよびディップのスペクトル位置のシフト、または波の全サイクルの周期の変化によるシフトとすることもできる。
【0015】
光源には、アセンブリの第2反射面に隣接して配置されるようになされた遠位端を有する光ファイバーを含めることができ、装置は、アセンブリから検出器まで反射した反射光波を導くための光結合を更に含む。
【0016】
第1の実施の形態では、光アセンブリは、第2反射面と接触する光ファイバー遠位端を有する光ファイバーに固定して取り付けられる。第2の実施の形態では、光アセンブリには、第2コーティングより屈折率が小さく、厚さが約100nmを超える第2透明光素子が更に含まれ、高屈折率材料のコーティングが2つの透明光素子の間に挟持される。後者の実施の形態では、アセンブリは、ファイバーの遠位端領域に着脱自在に取り付けられ、ファイバーの遠位端と、アセンブリの第2透明光素子の突き合わせ面との間に、100nm未満または2μmを超える隙間を有する。
【0017】
多数の核酸種等の、多数検体を検出するために、検体結合分子層は、核酸の単一鎖等の、ディスクリート検体結合領域のアレイにより構成できる。この領域は、多様な検体を結合するのに効果的である。光ファイバーには、それぞれが領域の内の一つと位置合わせされる複数の個別ファイバーが含まれ、検出器には、複数の検出領域が含まれ、そして光結合は、複数のファイバーそれぞれを、領域の内の一つと結合させるように機能する。
【0018】
アセンブリ内の検体結合分子は、例えば、以下であってもよい。すなわち、(i)抗種抗体分子:分泌抗体の存在に対するハイブリドーマ・ライブラリ・スクリーニング用;(ii)抗源分子:その抗原に対する特異的抗体の存在検出用;(iii)蛋白質分子:その蛋白質に対する結合パートナの存在検出用;(iv)蛋白質分子:その蛋白質とマルチ蛋白質化合物を形成できる多重結合種の存在検出用:または(v)単一鎖の核酸分子:核酸結合分子の存在検出用。
【0019】
検出器は、選択した波長範囲を超える反射光強度を測定するためのスペクトロメータとすることができる。代替または追加として、光源には、それぞれ特有のスペクトル周波数を有する複数の発光ダイオードを含めることができ、検出器は、多様なLED周波数毎に反射光の光強度を記録するよう機能する。更に別の実施の形態では、光源に白色光源を含めることができ、検出器は複数の多様な波長毎に反射光の光強度を記録するよう設計される。
【0020】
別の態様では、本発明は、試料溶液中の検体の存在または量を検出するための方法を含む。本方法は、試料溶液を、厚さが少なくとも50nmの透明光素子の遠位面上に担持された検体結合分子層により形成した第1反射面と反応させ、それにより、検体を層中の検体結合分子に結合させて第1反射層の厚さを増大させるステップを含む。第1反射層の厚さ変化は、第1層と、光素子の対向する近位面上に形成され、光素子より屈折率が大きい第2反射層とから反射される2つの光波により形成される干渉波の位相特性のシフトを検出することにより測定する。
【0021】
検出ステップは、光ファイバーから2つの反射面上に光を導くステップ、および2つの面からの反射光を光結合を通じて検出器上に導くステップを含むことができる。検出器はスペクトロメータとすることができ、検出ステップは、2つの反射光波により生成される一つ以上の干渉の極値のスペクトル位置シフトを測定するステップを含む。
【0022】
検体の第2層への会合の速度を測定するために本方法を用いる場合、第1反射層の厚さのほぼ最大の増加が観測されるまで、反応ステップを実行できる。検体の第2層への解離の速度を測定するために本方法を用いる場合、反応ステップは、第1反射層の厚さの減少が観測されるまでの時間が経過する間、解離バッファ内に第2層を浸漬するステップを含めることができる。試料中に存在する検体の量を測定するために本方法を用いる場合は、検出ステップは、複数の異なる時間ポイントで第1反射層の厚さを測定するのに十分な時間をかけて実行する。
【0023】
試料中の複数検体の内の一つ以上を測定するために本方法を用いる場合、第1反射層は、ディスクリート検体結合領域のアレイから構成され、様々な領域は、各種検体を結合するのに効果的であり、検出ステップは、検体の検体結合分子への結合から生じる領域毎の厚さ変化を検出するのに効果的である。
【0024】
本発明の上記およびその他の目的および特徴は、添付図面と併せて、本発明の以下の詳細な説明を読むことにより明らかになる。
【0025】
これらの、並びに他の本発明の特徴、態様、および利点は、以下の説明および付帯図面と関連させれば更に良く理解されよう:
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】生体プローブおよびその装置のための基本システム設定を示す図。
【0027】
【図2】本発明の一実施の形態に従って形成された光アセンブリを示す図。
【0028】
【図3A】7次のピークおよびディップを越える干渉波の一部を示す図。
【図3B】スペクトルの可視部分(3B)を示す図。
【0029】
【図4】本発明の別の実施の形態により構築された光アセンブリを示す図。
【0030】
【図5】検体結合アレイを有し、本発明の別の実施の形態により構築された使い捨てのマルチ検体光アセンブリを示す図。
【0031】
【図6】3つの分子のシーケンス結合を示す図。
【0032】
【図7】抗体の会合および解離から生成されるON、OFF曲線を示す図。
【0033】
【図8】異なる濃度で抗原に結合する2つの抗体の曲線を示す図。
【0034】
【図9】具体的には、アミド結合形成を介したビスアミノPEG(MW3300)の固定化を示す図であって、PEG(MW8000)を負の制御として用いて、PEG高分子の非特異的結合を監視した図。
【0035】
【図10】大分子に結合する小分子、負の制御、および基線部の測定を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
請求項および明細書に用いる用語は、以下に説明、定義するものを除き、従来技術に習熟する者が理解できるような通常の意味で解釈すべきである。請求項および明細書に引用する数字の範囲は、引用した範囲を画成する限界値を含むように解釈すべきである。
【0037】
用語「生体の」は、生体組織で発生するプロセスを指す。
【0038】
「検体結合」分子は、検体分子との特異的結合反応に加わる能力のある任意の分子を指す。例えば、抗体抗原結合反応、および核酸ハイブリッド形成反応等が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
「特異的結合反応」は、通常は、可逆的で可飽和な結合反応と、反応物質の内の過剰な一つに競合する結合反応とを指す。特異的結合反応の特徴は、形状や電荷の相補性と特異的結合反応に関与する物質間にあるような他の結合決定因子とである。
【0040】
「抗体」は、当該技術またはその後の開発で周知の任意の方法で製造される、2つの重鎖および2つの軽鎖を有する免疫グロブリン分子を指し、免疫原、および周知のケーラー・ミルシュタインのハイブリドーマフュージョン技法を用いて製造するモノクローナル抗体を、例えば、ヤギ、マウス、ラビット等のほ乳動物に接種して製造するポリクローナル抗体が含まれる。用語には、当該技術により周知の再サーフェシング(resurfacing)技法を用いてヒト化した抗体はもとより、例えば、人の免疫グロブリン遺伝子により再構築したSCIDマウスを利用するもの等の、遺伝子工学の方法を用いて製造する抗体が含まれる。
【0041】
「抗体断片」は、化学開裂または遺伝子工学技法により製造される抗体分子の断片、並びに、組合せによる遺伝子ライブラリおよびファージ提示技術を用いて製造されるもの等、単一鎖可変断片(SCFvs)を指す。本発明により用いられる抗体断片は、同起源の抗原を結合する能力を保持するのが通例なので、可変系列および抗原組合せサイトが含まれる。
【0042】
「小分子」は、約500ダルトン未満の分子量を有する有機化合物を指す。小分子は、新薬を創出する従来の医化学、構造活性関連研究により最適化できる薬品誘導化合物を同定するようスクリーニングするための有用な出発物質である。小分子薬品化合物は、通常、経口で生体利用可能な利点を有する。小分子の例には、以下のデータベースにリストアップされる化合物が含まれる:MDL/ACD(http://www.mdli.com/)、MDL/MDDR(http://www.mdli.com/)、SPECS(http://www.specs.net/)、China Natural Product Database(CNPD)(http://www.neotrident.com/)、およびNational Center for Drug Screeningの化合物試料データベース(http://www.screen.org.cn/)。
【0043】
本明細書で用いる頭字語には以下が含まれる。「ss」は単一鎖を指し、「SNP」は単一ヌクレオチド多形性を指し、「PBS」はリン酸緩衝生理食塩水(0.01Mリン酸緩衝液、0.0027M塩化カリウム、および0.137M塩化ナトリウム、pH7.4)を指し;「NHS」はN−ヒドロキシスクシニミドを指し;「MW」は分子量を指し;「スルホSMCC」はスルホスクシニミジル(sulfosuccinimidyl)4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボン酸塩を指す。
【0044】
注意すべきは、明細書および付帯の請求項で用いているような単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈で明らかに指示しない限り、複数の対象を含む。
【0045】
利点および有用性
本発明の利点および有用性を、図と、以下に更に詳細に説明する実施例とを参照して説明する。これらの実施例は、ラベルを使用せず、費用をかけず、見込まれる毒性を低減しつつ、リアルタイムで検体結合反応を監視する各能力が含まれる。更なる利点には、可視光波長の光源を用いて本方法を実施する能力が含まれる。更に他の利点は、検出器先端部の光ファイバーの性質により提供されるものであって、「生体の(in vitro)」空間内を含む、非常に小さな試料容積中で、結合反応を監視できるとともに、ファイバーを束にして結合反応の高多重化分析を実行できる。
【0046】
図1は、本発明により構築した干渉計装置20を略図で示す。最も基本的な素子では、装置には、光源22、以下の図2、図4、および図5に関して更に詳細に説明するが、感知素子または検出先端部として機能する光アセンブリ26、および光アセンブリ26から反射した光波を干渉させることにより生成される干渉信号を検出するための検出器ユニット28、が含まれる。
【0047】
光源22からの光は光アセンブリ26に導かれ、符号30の破線で示す光結合アセンブリを通じて検出器に反射して戻る。好ましい実施の形態では、結合アセンブリには、光源から光アセンブリまで延在する第1の光導波路またはファイバー32、光アセンブリから検出器まで反射光を搬送する第2光導波路またはファイバー34、およびファイバー32、34を光学的に結合する光結合器36が含まれる。適切な光ファイバーおよび結合構成要素は、上記引用の‘453特許で詳細に説明されている。一例示の結合器は、Ocean Optics社(Dunedin、Florida)を含む多くのベンダーから入手可能である。
【0048】
代替として、結合アセンブリには、光アセンブリの上面に光ビームの焦点を当て、反射した干渉光を光アセンブリから検出器まで導くよう構築されるレンズシステムを含めることができる。後者のシステムは、光ファイバーを必要としないが、光結合のために用いるレンズ素子の位置決めに関するかなり厳しい要件を課されることになる。
【0049】
装置の光源は、例えば、400nm未満から700nm超の、典型的には、少なくとも100nmのスペクトル範囲を超える広帯域スペクトル全体に亘る光を発生する発光ダイオード(LED)等の、白色光源とすることができる。代替として、光源は、可視光の範囲で、異なる選択波長で発光するよう設計したLED等の、それぞれが異なる特徴の波長を有する複数の光源とすることができる。同一機能は、異なる選択波長をもつ光を光アセンブリ上に導くための適切なフィルタを用いて、単一光源、例えば白色光源により達成できる。
【0050】
検出器は、光アセンブリからの反射干渉光のスペクトルを記録することができる電荷結合素子(CCD)等の、スペクトロメータとするのが好ましい。代替として、光源が様々な選択波長を光アセンブリ上へ導くよう動作する場合、検出器は、様々な放射波長毎に光強度を記録するための単純な光検出器とすることができる。更に、別の実施の形態では、検出器には、例えば、白色光からの、光強度の検出を可能にする複数のフィルタを、干渉反射波の複数の選択波長毎に含めることができる。例示の光源および検出器の構成は、上記引用の'453特許で、特に図8および図10に記載され、言うまでもなく、これらの構成は本発明での使用に好適である。
【0051】
図2は、本発明の一実施の形態により構築される光アセンブリ26、および光アセンブリが固定取り付けされる光ファイバー32の遠位端領域の隣接部を示す。図で判るように、アセンブリ26には、下部(遠位)および上部(近位)端面上にそれぞれ形成される第1および第2反射面42、40を有する透明光素子38が含まれる。本発明の重要な特徴によれば、遠位面と近位面との間の、すなわち、2つの反射面間の光素子の厚さ「d」は少なくとも50nmであり、好ましくは少なくとも100nmである。例示の厚さは、約100〜5000nmの間にあり、400〜1000nmが好ましい。第1反射面42は、検体分子46を、特異的かつ高親和的に結合するのに効果的な、分子44等の、検体結合分子層から形成される。すなわち、検体および抗検体分子は、上記種類の結合対の相手側メンバーであり、限定はしないが、それには、抗原−抗体対、相補核酸、および受容体−結合剤対を含めることができる。
【0052】
光素子の屈折率は、第1反射面の屈折率と同様であるのが好ましく、それにより、光アセンブリの下部遠位端からの反射が、光素子と検体結合分子との間の界面からではなく、検体結合分子により形成される層から優勢に発生する。同様に、検体分子が光アセンブリの下部層に結合すると、アセンブリの下端からの反射光は、界面領域からではなく、検体結合分子および結合した検体が形成する層から優勢に発生する。光素子を形成する一例示の材料は、SiO2であり、例えば、約1.4〜1.5の屈折率を有する高品位の高級ガラスである。光素子は、好ましくは1.3〜1.8の範囲の屈折率を有するポリスチレンまたはポリエチレン等の、透明高分子で形成することもできる。
【0053】
光アセンブリ内の第2反射面は、光素子の屈折率より屈折率が著しく高い透明材料層として形成されるので、この層は光アセンブリ上へ導かれた光の一部を反射するよう機能する。第2層の屈折率は1.8超が好ましい。第2層用の一例示の材料は屈折率が2.1のTa25である。この層は、従来の気相成長コーティングまたは層化プロセスにより、光素子上に50nm未満、典型的には5および30nm間の層厚に形成されるのが典型的である。
【0054】
第1(検体結合)層の厚さは、特定のハードウエアおよび光構成要素に基づいて、全体の感度を最適化するよう設計する。従来の固定化化学反応を化学的に、例えば、検体結合分子層を光素子の下部表面に共有結合させて、用いる。例えば、様々な二官能性試薬は、SiO2に化学結合させるためのシロキサン基を含み、蛋白質(例えば、抗原、抗体)または核酸等の、生物学的分子の取り付けのための、ヒドロキシル基、アミン基、カルボキシル基、または他の反応基を含む。ガラス表面をエッチングするか、さもなければガラス処理して、検体結合分子と結合できるヒドロキシル基の密度を増大させることも周知である。光素子をポリスチレン等の高分子で形成する場合、アミン基、ヒドロキシル基、およびカルボキシル基等の利用できる化学活性をもつ表面基を曝す各種方法を利用できるようになる。
【0055】
検体結合層は、光素子の遠位面を密にコーティングするという条件のもとで形成するのが好ましく、それにより、層への検体分子の結合が、層を満たすのではなく、層厚の変化を強いることができる。検体結合層は、単層または多層マトリックスのどれでもよい。
【0056】
光アセンブリへの検体の存在、濃度、および/または結合速度の測定は、光アセンブリ内の2つの反射面からの反射光ビームの干渉により可能である。特に、検体分子が表面に付着したり引き離されたりするので、それに応じて第1反射層の平均厚さが変化する。他の全ての層の厚さは同一のままなので、2つの面から反射される光波が形成する干渉波は、厚さ変化に従って位相シフトされる。
【0057】
ここに2本の反射ビームがあると仮定する。第1ビームは、検体結合分子および結合した検体と、周囲の媒質との間の遠位界面である第1面から反射し;第2ビームは、光素子(第1層)と、高屈折率層(第2層)との間の近位界面である第2面から反射する。干渉波の全体の波長依存強度は、下記数1のようである。
【数1】

【0058】
ここで、Iは強度、I1およびI2は、2本の干渉波ビームの強度、Δは光路差、λは波長である。
【0059】
Nを整数0、1、2、...7とすると、(2πΔ/λ)=Nπとなるとき、曲線はピークまたはディップすなわち谷となる。第1層の厚さはd=Δ/2nである。従って、ピークおよびディップ(つまり極値)では、λ=4nd/Nとなる。
【0060】
最初の幾つかのNの値、すなわち0、1、2、...7に対して、dを770nmと仮定すると、上の式から以下が得られる。
【0061】
N=0: λ=∞ (ピーク)
【0062】
N=1: λ=4nd=4,496.80 nm(ディップ)
【0063】
N=2: λ=2nd=2,248.40 nm(ピーク)
【0064】
N=3: λ=4nd/3=1,498.9 nm(ディップ)
【0065】
N=4: λ=nd=1,124.20 nm(ピーク)
【0066】
N=5: λ=4nd/5=899.36 nm(ディップ)
【0067】
N=6: λ=2nd/3=749.47 nm(ピーク)
【0068】
N=7: λ=4nd/7=642 nm(ディップ)
【0069】
N=8: λ=nd/2=562 nm(ピーク)
【0070】
N=9: λ=4nd/9=499.64 nm(ディップ)
【0071】
N=10: λ=4nd/10=449.6 nm(ピーク)
【0072】
容易に判るように、そして、図3Aおよび図3Bで更に説明するように、少なくとも3つのピーク/ディップ(N=7〜9)が、可視光スペクトル範囲に発生する。
【0073】
7次ディップを用いて分子層の厚さ変化を計算する場合、第1層に付着した分子層が0nmから10nmに増加すると、7次ディップは650.74nmにシフトする。従って、7次ディップの実際の位相シフトと厚さ変化の比は、(650.74―642.40)/10=0.834となる。
【0074】
対照的に、2つの反射層の間の当初の隙間を、ファイバー端上の検体結合分子により全体に作り上げる場合、この層の厚さを25nmと仮定すると、1次のピークは146nmに発生し、可視スペクトル範囲から明らかに外れる。従って、装置は、0次ディップと1次ピークとの間の領域の一部しか見ることができず、どのピークも見ることができないので、干渉波のスペクトル特性のシフトを正確に測定するのが困難になる。
【0075】
反射層の合計厚さが約100nmに達する直前に、1次ピークが可視光スペクトルに現れる。最大50nmの合計厚さ変化を仮定すると、光素子の厚さは50nmまで小さくなるが、数百nmのオーダーにすることが好ましく、そうすれば、干渉波の位相シフト、または周期の変化を、例えば、N=3〜10の、高次のピークおよびディップのスペクトル位置のシフトにより直ちに測定できるようになる。
【0076】
実際の厚さと測定した位相シフトの比は、測定感度の主要ファクタと考えられる。光素子の厚さおよび屈折率を如何に調整して、電子回路および光設計に対応するよう感度を改良、最適化できるかは言うまでもない。
【0077】
図4は、検定装置内の光ファイバー52の遠位端へ着脱自在に担持された光アセンブリ50を示す。光素子には、アーム54等の、複数のフレキシブルな把持アームが含まれ、ファイバー端部を越えてスライドし、環状リムつまり抜け止め56を、図示のようなアームに形成した相補形成の窪みに係合させることにより、ファイバーを把持するよう設計されている。このアタッチメントは、光アセンブリをファイバーに位置決めして、ファイバーの遠位端と、アセンブリの対向する(上部)面との間に、100nm未満、または2μmを超えるエアキャップ58を提供するのに役立つ。約100nmを越え、かつ2μm未満のエアキャップでは、光アセンブリの上面の内部反射が、検出精度に悪影響を与える好ましくない著しいフリンジを招くことがある。
【0078】
引き続き図4を参照すると、光アセンブリには、上記の光素子38に類似した第1光素子60が含まれ、この第1光素子は、上記反射層40、42とそれぞれ対応する第1および第2反射層62、64をそれぞれ有する。アセンブリには第2光素子66が更に含まれ、その厚さは100nmを超え、典型的には少なくとも200nmとするのが好ましく、その屈折率は第1光素子60の屈折率と同様である。好ましくは、2つの光素子は約1.4および1.6間の屈折率を持つ同一のガラス、または高分子材料で構築される。高屈折率材料で形成され、約30nm未満の厚さが好ましい層64は、図示のように、2つの光素子の間に挟持される。
【0079】
操作に際しては、光アセンブリをファイバー遠位端に被せて配置し、ファイバーに取り付けるよう嵌め込む。次いで、反射層62を形成する検体結合分子に試料検体を結合するのに有利に働く条件のもとで、アセンブリの下面を検体の試料に曝す。検体分子がこの層に結合すると、層の厚さが増大し、反射面62および64間の距離「d」が増大する。これにより、図3Aおよび図3Bを参照した上記説明のように、2つの層からの反射により生成される干渉波の極値にシフトが起きる。次いで、極値または波長のこのシフトを用いて、下部(最遠位)反射層における厚さ変化を決定する。使用後、光アセンブリを取り外し、廃棄することができ、そして、同一または別の検体を検定するために、新規検定のための未使用素子で置き換えることができる。
【0080】
図5は、複数の検体、例えば、試料中の異なるシーケンスの核酸検体、の内の一つ以上を検出するために設計された、本発明の実施の形態における光アセンブリおよびファイバー束を示す。ファイバー束72は、ファイバー74等の、個々の光ファイバーに対するアレイ、例えば、円形アレイ、により構成する。全体的に符号70で示す光アセンブリは、アレイ様式を除いては、図4を参照した上記説明の基本的な光素子で構成される。具体的に、素子内の第1光素子80は、下部遠位面で、領域84等の、検体反応領域のアレイを提供し、それぞれの検体反応領域は、試料中の異なる検体の内の一つと結合する効果をもつ検体結合分子層を含む。それぞれの領域は、光アセンブリ内に第1反射層を形成する。一つの好適な感知法では、異なるシーケンスの核酸、例えばcDNAまたはオリゴヌクレオチド、のアレイが提供され、そのアレイは、試料中の異なるシーケンスの核酸検体種と特異的にハイブリッド形成するよう設計されている。すなわち、アレイ表面は、複数の異なるDNAシーケンスのそれぞれを検出するための「DNAチップ」を形成する。
【0081】
第2光素子78および光アセンブリ内に第2反射面を提供する2つの光素子間にサンドイッチされた高屈折率材料の層79も、光アセンブリに含まれる。アセンブリは、アーム76および束上の環状リム、つまり抜け止め86等の、フレキシブルな支持アーム対の間の係合により、ファイバー束72に取り付けられる。ファイバー束に付けたアセンブリでは、ファイバーの下部遠位端は、光素子78の対向面からエアキャップ85だけ離間し、100nm未満または2μmを超える隙間が好ましい。更に、それぞれのファイバーは、光アセンブリの対応する検定領域と整列しているので、各ファイバーは、整列した検出領域に光を導き、その領域から反射光を受け取る。同様に、装置内の、多数のファイバーを検出器に結合するのに役立つ光結合器は、アレイ領域と、光検出器、例えば2次元CCD上の対応位置との間のアライメントを維持する。光アセンブリの各種構成要素の材料および厚さ寸法は、図4に関して上記説明したことに類似している。
【0082】
本発明で説明した装置は、特に以下の用途に対して用いることができる。
【0083】
(i)先端部に担持された抗種抗体により、高い抗体発現をもつ細胞株に対するハイブリドーマ発現株をスクリーニングするため。
【0084】
(ii)先端部に担持された抗原により、その抗原に対して高親和性抗体を特性付けるため。
【0085】
(iii)先端部に担持された蛋白質により、その蛋白質に対する結合相手(DNA、RNA、蛋白質、炭水化物、有機分子)を同定し、特性付けるため。
【0086】
(iv)先端部に担持された炭水化物またはグリコシル骨格により、その炭水化物に対する結合相手(例えば、DNA、RNA、蛋白質、炭水化物、有機分子等)を同定し、特性付けるため。
【0087】
(v)先端部に担持されたマルチ白質化合物に加わると考えられる蛋白質により、結合構成体および/または化合物形成の動力学、を特性付けるため。
【0088】
(vi)先端部に担持された小さな蛋白質結合分子により、その分子に対する蛋白質バインダを同定し、特性付けるため。
【0089】
(vii)先端部に担持された抗体により、検体標準セットを用いて、検体に対する校正曲線を構築するため。この校正曲線を用いて、未知の溶液(細胞培養上清、生物試料、プロセス混合物等)内の検体濃度を決定できる。
【0090】
(viii)先端部に担持された一本鎖核酸、例えばssDNAまたはRNAにより、核酸に特異的に結合する分子を同定するため。
【0091】
温度制御ブロックを利用しながら本装置および方法を用いて、結合を監視するとともに、溶液内のオリゴヌクレオチドへの、固定化したssDNAの結合を特性化して、SNP分析を実行することもできる。
【0092】
以下の実施例は、各種の方法、および本発明の用途を説明するが、その範囲を制限するものではない。
【0093】
実施例
以下は、本発明を実行するための特定の実施の形態の例である。本実施例は、説明のみを目的として提供するものであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。使用する数字(例えば、数量、温度等)に関しては正確さを確保するよう努力はしたが、多少の実験の誤差および偏差は言うまでもなく許容されるべきである。
【0094】
本発明の実施は、他に指示がない限り、蛋白質化学、生化学、遺伝子組換技術および薬理学の従来の方法を、従来技術のスキル内で利用する。このような技法は文献で完全に明らかである。例えば、
T.E. Creighton著、「蛋白質:構造および分子特性」(W.H. Freeman and Company, 1993年); A.L. Lehninger著、「生化学」(Worth Publishers, Inc. 現行版); Sambrook他著、「分子クローン化:実験室マニュアル」(2版、1989年); 「酵素学における方法論」(S. Colowick and N. Kaplan eds. Academia Press, Inc.); 「Remingtonの薬学」18版(Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company、1990年); Carey およびSundberg著「上級有機化学第3版」(Plenum Press)Vol.AおよびB(1992年)。
【0095】
実施例1:小分子蛋白質結合反応
本実施例は、センサ先端部に固定した小分子への、蛋白質の結合、および後続の多数の抗体の結合を検出する能力を実証する。光ファイバー先端部上の2層構成をこの試験に用いる。第1のTa25層の厚さは25nm、第2のSiO2層の厚さは770nmである。ファイバーは、Ocean Optics(Dunedin、 Florida)から購入した。それを長さ40mmの断片に手で切断した。これら断片の両端を標準ミラー面の品位にまで研磨した。ここで用いた研磨方法は、光学レンズおよびミラーで用いられるものと全く同一である。これらのファイバー断片の一面に、Ta25層、およびSiO2層を付けるために、光学コーティング企業に外注した。このベンダーは、Leybold社製のイオンビームアシスト物理蒸着(IAPVD)コーターを利用した。IAPVDは、反射防止および光フィルタ用の普通に用いられるコーティング技法である。実験のステップには以下が含まれる(特に注記しない限り、全てのステップを室温で実行する)。
【0096】
ファイバー先端部を、ビオチンで誘導体化した高分子の単層でコーティングした。高分子の単層は、ビオチニル化した脂質を用いて調整した(カスタム)。この脂質を用いて、水溶液の表面に脂質の単層を形成した。単層は15分間のUV光により15分架橋した。次いで、清浄な乾燥ファイバーを、浮遊させた薄膜と接触させ、ビオチン高分子をファイバー先端部に吸着させる。次いで、ファイバーを60℃で1時間乾燥させる。次いで、ファイバーを通常の周囲条件のもとで格納した。
【0097】
バイオセンサ先端部を、PBS(Invitrogen社、Carlsbad、CA;cat#14190078)中の50μg/mlのストレプトアビジン ストレプトアビジン(Pierce Biotechnology社、Rockford IL、cat#21122)に9分間浸漬し、続いて、PBSで簡単にすすぎを行った。
【0098】
同一の先端部を、PBS中の10μg/mlのラビット抗ストレプトアビジン溶液(AbCam社、Cambridge、MA;cat#ab6676−1000)に36分間浸漬し、次いで、PBSで簡単に洗浄した。
【0099】
最後に、先端部を、PBS中の50μg/mLのロバ抗ラビット抗体溶液抗体(Jackson ImmunoResearch社、West Grove、PA;cat#711−005−152)に25分間浸漬した。最後のすすぎをPBS溶液で10分間実行した。
【0100】
図6は、このシーケンス結合試験に対するリアルタイムの応答曲線を示す。縦軸は、7次のディップのナノメータ単位の位相シフトである。先端部上に既に固定されているビオチンへのストレプトアビジンの結合および、これに続くストレプトアビジンへの抗ストレプトアビジン抗体の結合、およびこの第1抗体への第2抗体の結合、を明瞭に示す。先端部からのストレプトアビジン層の解離は900秒で見ることができた(光学的厚さの僅かな減少)。
【0101】
実施例2:生体分子相互作用の動力学および親和性の生体分子相互作用分析法
本実施例は、生体分子相互作用の動力学および親和性を測定する生体分子相互作用分析法(BIA)を実行するために用いた本発明を説明する。実施例1で説明した同じ先端部構成を用いた。実験は以下のステップを含んでいた(特に注記のない限り、全てのステップを室温で実行する)。
【0102】
メルカプトシランでコーティングした先端部を、以下の手順を用いて生成した。清浄で乾燥したファイバーを、トルエン:ヘキサン酸:メルカプトプロピルトリオキシシラン(10:2:1容積比)の混合物内に、室温で24時間放置した。10mLトルエンで2回、各5分間、ファイバーをすすいだ。次いで、ファイバーを10mLエタノールでのすすぎを1回行って、アルゴン流のもとで乾燥し、通常の周囲条件で格納した。
【0103】
バイオセンサ先端部は、最初に、PBS中のラビットIgG(Jackson ImmunoResearch社、West Grove、PA;cat#309−005−003)10μg/ml溶液に1時間浸漬して誘導体化した。
【0104】
被覆先端部を、PBS中の10μg/mlのヤギ抗ラビット抗体(Jackson ImmunoResearch社、West Grove、PA;cat#111−005−003)溶液に浸し、15分間放置した。
【0105】
先端部を取り外してPBS中で洗浄した。第1抗体から第2抗体への容易な解離のために、PBSを手で20分間撹拌した。
【0106】
次いで、ヤギ抗ラビットのラビットIgGへの会合が再現可能なことを示すために、先端部を同じヤギ抗ラビット溶液に再度浸漬した。
【0107】
図7は、ラビットIgGおよびヤギ抗ラビットの会合および解離により生成したON−OFF曲線を示す。縦軸は、同じく7次ディップの位相シフトである。位相シフトは0.834の比をもつ平均厚さに直接関連している。ON−OFF曲線を高い信頼性で検出する能力は、相互作用の動力学および親和性を測定するための基本である。
【0108】
実施例3:抗体抗原の結合および開放曲線からの親和性定数計算
本実験は、2つの抗体およびそれぞれの抗原に対するON−OFF曲線測定による親和性定数計算を実証する。独自の抗体には、Ab−1、AB−2とラベル付けした。抗原の分子量は約30キロダルトンであった。実施例1で説明した同じ先端部構成を用いた。実施例2で説明したものと同一のメルカプトシランファイバー生成法を用いた。実験ステップには以下が含まれる(特に注記のない限り、全てのステップは室温で実行する)。
【0109】
ファイバー先端部を、抗原の共有結合のために活性化した。メルカプトシランでコーティングしたファイバーを、DMF(Sigma−Aldrich Chemical Company、St Louis、MO;cat#494488)中のスルホSMCC(Pierce Biotechnology、Rockford IL;Cat#22322)の50mg/mL溶液の50μL内にセンサ先端部を2時間浸漬させることにより活性化した。センサ先端部はDMF内で簡単にすすいで、乾燥させた。
【0110】
PBS中の抗原の20μg/ml溶液内に活性化した先端部を浸漬することにより、活性化したファイバー先端部に抗原を共有結合した。先端部をPBSで2分間すすいだ。PBSのすすぎに続いて、先端部を100μMエタノールアミンpH8.5(Sigma−Aldrich Chemical Company、St Louis、MO;cat#E9508)の水溶液で5分間急冷し、次いでPBS内で2分間再度すすいだ。
【0111】
会合試験のために同じ先端部を抗体に浸漬し、リアルタイムの結合データを9〜15分間記録した(抗体の身元および濃度に依存する)。これらのデータを記録すると、再度先端部をPBSに浸漬し、撹拌して、OFF曲線(すなわち、固定した抗原と、結合した抗体との間の解離)を9〜15分間測定する。結合(ON曲線)および解離(OFF曲線)測定を、抗体の様々な濃度(25nM、150nM、および430nM)により、かつAb−1、Ab−2と識別した2つの異なる抗体を用いて繰り返した。
【0112】
図8は、異なる濃度での会合および解離の曲線を示す。25nM Ab−2の試験は、この濃度では会合が極端に遅くて、完了しなかった。これらの図示の曲線は生データのプロットである。
【0113】
on、Koff、およびKDは、生データを1次指数関数に適合させることにより、これらの曲線から導いた。2セットのデータを平均することにより、動力学および親和性の係数が下記表1のように得られた。
【表1】

【0114】
実施例4:NHSエステル活性化先端部
実施例1で説明した同じ先端部構成を用いた。実施例2で説明したものと同一のメルカプトシランファイバー生成法を用いた。メルカプトシランでコーティングしたファイバーを、DMF(Sigma−Aldrich Chemical Company、St Louis、MO;cat#494488)中のスルホSMCC(Pierce Biotechnology、Rockford IL;Cat#22322)の50mg/mL溶液の50μL内にセンサ先端部を2時間浸漬させることにより活性化した。センサ先端部はDMF内で簡単にすすいで、乾燥させた。
【0115】
アミンを含む分子は、安定なアミド結合の形成を通じて、この表面に共有結合させることができる。遊離アミンを含まない分子は、NHS骨格では固定化されないが、それでも非特異的結合により、これらの分子を表面に結合できる。この非特異的結合は多層となり、一方、NHSエステルによる共有結合固定化は、NHSエステルの利用可能性およびアクセス性により制御される単層となる。
【0116】
この実験セットでは、ビスアミノPEG(MW3300)(Shearwater Polymers社、San Carlos、CA)を、活性化表面に共有結合する試験化合物として用いた。遊離アミノ基を含まないPEG(Sigma−Aldrich Chemical Company、St Louis、MO;cat#04162)を負の制御として用いた。この負の制御を用いて、この表面上のPEG高分子に本質的かもしれない何らかの非特異的、または多層の結合を探索した。
【0117】
図9は、試験分子で活性化したメルカプトシラン先端部の処理の時間過程を示す。活性化した先端部は、PBS中の0.1mg/mLビスアミノPEG(MW3300)に曝すと、光学的厚さが顕著な増加を示した。この増加は、ビスアミノPEG溶液がPBS緩衝液に置き換わると停止した。PBS中のアミンを含まない0.1mg/mLPEG(MW8000)に曝した活性化した先端部は、初めに僅かな光学的厚さの増加を示すが、曲線は急速に平坦になる。これにより、PEG高分子が本質的に非特異的結合を有していないこと、ビスアミノPEGに見られた結合が、アミン基の特異的共有結合固定化に起因すると、結論付けることができる。
【0118】
実施例5:NHSエステル化学反応を用いる抗体誘導体化先端部
本実施例は、固定化した大分子量の分子に結合する低分子量の分子の結合を説明する。実施例4で説明した同じNHSエステル終端面、および実施例1で説明した同じ先端部構成を用いて、抗ビオチン抗体を3本のファイバーに固定化した。抗体の固定化は、PBS中の、マウスの抗ビオチン抗体(Biodesign、SacoMN;cat#H61504M)の20μg/mL溶液に、活性化したファイバーを室温で1時間浸漬することにより達成した。先端部をPBSで2分間すすいだ。PBSのすすぎの後、先端部を100μMエタノールアミンpH8.5(Sigma−Aldrich Chemical Company、St Louis、MO;cat#E9508)の水溶液で5分間冷却し、次いで、PBS内で2分間再度すすいだ。
【0119】
第1ファイバーを、PBS中の200μg/mLビオチン(Pierce Biotechnology社、Rockford IL;cat#29129)の溶液に曝した。蔗糖(Sigma−Aldrich Chemical Company、St Louis、MO;cat#S8501)(2mg/mL)およびPBSの溶液を用いる制御を、第2および第3ファイバーに実行して、基線部のノイズを判定した。これらの試験によるデータを図10に示す。ビオチン結合に光学的厚さの増加が見られ、蔗糖への露出では基線を越える増加が検出されないことを示す(PBS)。
【0120】
上記の抗ビオチン抗体と同一の方法で固定化した無関係な抗体(Calbiochem、San Diego CA;cat#434636からの抗Lewis Y抗体)を用いて別の負の制御を実行した。この固定抗体は、200μg/mLビオチンの溶液に曝した。この抗体がビオチン結合を欠くということは、抗ビオチン抗体へのビオチン結合が特異的相互作用の結果であり、非特異的な結合ではないことを示す。
【0121】
好ましい実施例および各種の代替の実施の形態を参照して本発明を詳細に示し、説明してきたが、関連技術に習熟した者には言うまでもなく、形式および詳細の各種の変更を本発明の精神および範囲から逸脱することなく、実行することができる。
【0122】
本明細書の本文内で引用した全ての文献、発行済特許、および特許明細書は、その全てを全ての目的のために参照して本明細書に組み込む。
【符号の説明】
【0123】
20 干渉計装置
22 光源
26 光アセンブリ
28 検出器ユニット
30 光結合アセンブリ
32、34 ファイバー
36 光結合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉に基づき試料内の検体を検出する際に使用するアセンブリであって、
先端部を有する光ファイバーと、
前記光ファイバーの前記先端部に取り付け可能であって、前記光ファイバーの先端部のサイズに適合しており、前記光ファイバーを経由して光源に結合するようになされた光素子とを備えてなり、
前記光素子は、透明材料と、第1反射面と、該透明材料によって該第1反射面から隔てられた第2反射面とを備え、
前記第1および第2反射面は、少なくとも50nm離間されており、
前記第2反射面が、前記光素子の透明材料の屈折率を超える屈折率を有する材料層を備え、
前記第1反射面は検体結合分子層を備え、該検体結合分子層に試料内の検体が結合するに伴い、前記第1及び第2反射面からファイバーへと反射される光の干渉が変化する、ことを特徴とするアセンブリ。
【請求項2】
前記光素子の透明材料は、前記第1反射面と同様の屈折率を有する、請求項1のアセンブリ。
【請求項3】
前記第1および第2反射面の間の離間量が、100nmから5000nmまでの間である、請求項1のアセンブリ。
【請求項4】
前記第1および第2反射面の間の離間量が、400nmから1000nmまでの間である、請求項3のアセンブリ。
【請求項5】
前記光素子の透明材料の屈折率が、1.8未満である、請求項1のアセンブリ。
【請求項6】
前記光素子の透明材料が、SiO2および透明高分子から成るグループから選定した材料である、請求項5のアセンブリ。
【請求項7】
前記透明高分子が、ポリスチレンまたはポリエチレンを含む、請求項6のアセンブリ。
【請求項8】
前記第2反射面が、屈折率が1.8を超える材料の層を含む、請求項1のアセンブリ。
【請求項9】
前記第2反射面の層が、Ta25を含む、請求項8のアセンブリ。
【請求項10】
前記第2反射面の層の厚さが、5nmから50nmまでの間である、請求項9のアセンブリ。
【請求項11】
前記検体結合分子層が、蛋白質、小分子、核酸、および炭水化物から成るグループから選択した分子を含む、請求項1のアセンブリ。
【請求項12】
前記蛋白質は、アビジン、ストレプトアビジン、抗体、および抗体断片から成るグループから選択される、請求項11のアセンブリ。
【請求項13】
前記光素子を前記ファイバーに係合する機械的結合手段を更に具備する、請求項1のアセンブリ。
【請求項14】
前記機械的結合手段が、前記光素子と前記ファイバーとの間にエアギャップを提供する、請求項13のアセンブリ。
【請求項15】
前記エアギャップが100nm未満である、請求項14のアセンブリ。
【請求項16】
前記エアギャップが2μmを超える、請求項14のアセンブリ。
【請求項17】
前記検体結合分子層に検体が結合するに伴い、前記第1及び第2反射面の間の光路長が増大する、請求項1のアセンブリ。
【請求項18】
前記検体結合分子層に検体が結合するに伴い、前記第1及び第2反射面の間の物理的距離が増大する、請求項1のアセンブリ。
【請求項19】
前記検体結合分子層に検体が結合するに伴い、前記第1及び第2反射面の間の物理的距離が減少する、請求項1のアセンブリ。
【請求項20】
前記検体結合分子層に検体が結合するに伴い、前記第1及び第2反射面の間に配置した材料の屈折率が変化し、前記屈折率変化が、前記反射ビーム間の干渉の変化を引き起こす、請求項1のアセンブリ。
【請求項21】
前記検体結合分子層に検体が結合するに伴い、前記第1及び第2反射面の間に配置した材料の光吸収が変化し、前記光吸収変化が、前記反射ビーム間の干渉の変化を引き起こす、請求項1のアセンブリ。
【請求項22】
前記検体結合分子層に検体が結合するに伴い、前記検体結合分子層が膨潤し、前記膨潤が、前記反射ビーム間の干渉の変化を引き起こす、請求項1のアセンブリ。
【請求項23】
前記光素子が、前記光ファイバー端部へ恒久的に取り付けられる、請求項1のアセンブリ。
【請求項24】
前記光素子が、前記光ファイバー端部に脱着可能に取り付けることができる、請求項1のアセンブリ。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれかに記載されたアセンブリを複数個具備してなる2次元的アレイ。
【請求項26】
請求項1乃至24のいずれかに記載されたアセンブリと、
前記第1および前記第2反射面上に光を導くための光源と、
前記第1および前記第2反射面から光を受け取り、前記第1反射面を前記検体に曝した時の前記第1反射面の光学的厚さ変化を検出する検出器と
を備えることを特徴とする検体検出装置。
【請求項27】
請求項25に記載された2次元的アレイと、
前記第1および前記第2反射面上に光を導くための光源と、
前記第1および前記第2反射面から光を受け取り、前記第1反射面前記検体に曝した時の前記第1反射面の光学的厚さ変化を検出する検出器と
を備えることを特徴とする検体検出装置。
【請求項28】
請求項26に記載された検体検出装置を使用して、試料中の検体を検出するための方法であって、
試料を提供するステップと、
前記検体検出装置の前記第1反射面を前記試料に曝すステップと、
前記曝すステップを実行した結果、前記第1反射面の光学的厚さに変化が生じたかどうかを判定するステップと
を備える方法。
【請求項29】
請求項27に記載された検体検出装置を使用して、試料中の検体を検出するための方法であって、
試料を提供するステップと、
前記検体検出装置の前記第1反射面を前記試料に曝すステップと、
前記曝すステップを実行した結果、前記第1反射面の光学的厚さに変化が生じたかどうかを判定するステップと
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−103272(P2012−103272A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30021(P2012−30021)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【分割の表示】特願2006−538490(P2006−538490)の分割
【原出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(505398778)フォルテバイオ,インク. (6)
【Fターム(参考)】